JP3150940B2 - 敏感肌の鑑別法 - Google Patents

敏感肌の鑑別法

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義和 平井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、敏感肌などの肌の
特性の鑑別に有益な、肌の鑑別法に関する。
【0002】
【従来の技術】肌の鑑別は、化粧料を的確に選択した
り、その肌の処置を的確に行うために必須のことであ
り、アンケートなどを含めた肌の鑑別のための技術が開
発されている。この様な鑑別としては、例えば、角質細
胞標本を作成し、その剥離状態等を指標にダメージを鑑
別したり、水分透過性やコンダクタンスを測定し肌の機
能を評価したりする手段などがその様な例として挙げら
れる。しかしながら、近年意識が高まってきている、敏
感肌などの鑑別手段は、「あなたは化粧品などにかぶれ
たことがありますか?」等のようなアンケートに頼って
いるのが現状であり、客観的な手段で鑑別する技術は無
く、この様な技術の登場が待たれていた。
【0003】一方、加齢変化と角質細胞の細胞面積の間
には、加齢に従って細胞面積が増大する傾向にあること
は既に知られていることであったが、年齢と細胞面積の
間に明確な相関関係は見いだせず、細胞面積のみから肌
の加齢状態、即ち、肌年齢を推定することは不可能であ
った。又、細胞面積が気温、天候により異なることは既
に知られていることであったが、具体的な細胞面積への
寄与状況は全く知られていなかった。更に、季節に分け
ることにより、細胞面積が年齢と極めて良い相関関係を
示すようになること、これを利用することにより年齢毎
の標準角質細胞面積が算出でき、これと実際の角質細胞
面積の差を指標として処理する事により、敏感肌か否か
等の肌の鑑別を為しうることは、全く知られていなかっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な状況
を踏まえて為されたものであり、客観的に敏感肌を鑑別
する手段を提供することを課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】かかる実状に鑑みて、本発明者らは
客観的に敏感肌を鑑別する手段を求め、鋭意研究を重ね
た結果、年齢に対する標準角質細胞面積と被験者より採
集した角質細胞の平均細胞面積との差を指標とすること
により、この様な鑑別が可能であることを見いだし、発
明を完成させるに至った。以下、本発明について、実施
の形態を中心に詳細に説明を加える。
【0006】
【発明の実施の形態】(1)表皮の角質細胞の細胞面積
と年齢との関係 本発明の指標の一つである、角質細胞の細胞面積は、テ
ープなどで皮膚より、上部角質細胞を剥離させ、これを
染色し、細胞の境界を明確にし、しかる後にこの面積を
計測し平均することにより求めることができる。この場
合の角質細胞標本は、通常知られているテープストリッ
ピング法、テープストリップ・テープ転写法等の方法で
採取することができるが、特に好ましい方法は形態維持
性のあるディスクの片面に粘着剤を塗布し、これを採取
部位に貼付して剥離し、これを粘着テープ上に転写する
方法である。これは、一様に押しつけられるため、ムラ
無く剥離できるからである。又、採取部位としては、後
記実施例に示す如く、上腕内側部などの非露出部よりも
顔の頬などの露出部の方が好ましい。露出部としては、
ある程度の面積の角質細胞が採集しうることから頬が特
に好ましい。かくして得られた標本は、通常知られてい
る方法に従って、細胞の境界面を明確にするために染色
すればよい。かかる染色方法としては、例えば、ヘマト
キシリン・エオシン染色やゲンチアナバイオレット染
色、ブリリアントグリーン染色などが好ましく例示でき
る。これらの内好ましい染色はゲンチアナバイオレット
及びブリリアントグリーンから選ばれる1種乃至2種に
よるものである。かかる標本を顕微鏡などで観察した
り、顕微鏡写真を画像をしてコンピューターに取り込み
画像解析等を行い、面積を測定すればよい。この際、顕
微鏡観察では計数板などを用いて面積測定を行えばよい
し、画像解析ではプログラムに従って面積を測定するこ
とができる。細胞面積は数点を測定して平均値を求める
のが好ましい。かくして得られた角質細胞の面積と年齢
とは、年齢が高くなるに従って角質細胞面積が増大する
傾向にあることを示すが、相関係数としては相関関係あ
りといえるものでは無かった。
【0007】(2)季節と角質細胞の細胞面積 上記の如く求めた角質細胞面積に対する、季節の要因の
影響は、次に示す表1の如く、夏、秋に比べ春、冬にば
らつきが大きくなる傾向にあることを本発明者らは見い
だした。このことは、即ち、季節により角質細胞面積が
変化することを物語っている。本発明者らは、この事実
に着目し、この因子を年齢因子に加えて、角質細胞面積
を解析すると、優れた、相関関係が存在することを見い
だした。即ち、このことは、肌年齢が季節毎に角質細胞
の面積を変数とする関数で表されることを意味する。
尚、表1の角質細胞面積は115名の平均データであ
り、細胞の採取部位は頬部、測定法は、粘着剤を塗布し
たディスクを頬部に貼付、剥離した後、粘着テープ上に
転写し、ゲンチアナバイオレットとブリリアントグリー
ンで染色を行い、その顕微鏡像をビデオ画像に取り込み
画像解析したものである。この結果より、年齢に対する
標準角質細胞面積が算出しうることがわかる。
【0008】
【表1】
【0009】この様な観点より、上記結果を季節毎に分
析し、得られた標準角質細胞面積と年齢の関係は直線回
帰の関係にあり、それぞれ次に示す式で表すことが出来
る。 <春:3月〜5月>標準角質細胞面積=661.65+
4.46×年齢 <夏:7月〜9月>標準角質細胞面積=678.67+
3.78×年齢 <秋:10月〜11月>標準角質細胞面積=630.3
7+4.77×年齢 <冬:12月〜2月>標準角質細胞面積=636.22
+5.24×年齢
【0010】(3)標準角質細胞面積と敏感肌の関係 敏感肌などの肌質と角質細胞面積の間の因果関係につい
て調べた結果、該角質細胞面積と標準細胞面積に差の大
きさが敏感肌と深く関係していることを本発明者らは見
いだした。又、かかる差の大きさは季節毎に正規分布に
従っていることも見いだした。即ち、敏感肌の人に於い
ては角質細胞面積が大きくなる傾向を認めた。即ち、角
質細胞面積の標準角質細胞面積から乖離度の大きさによ
り敏感肌を鑑別しうることがわかった。115名のにつ
いて、各季節毎に、上記の如く角質細胞を採集し、その
面積を測定し、上記式から算出した標準角質細胞面積と
の差を算出し、その分布特性を調べた結果を表2に示
す。更に、敏感、やや敏感、普通の何れかを問うた結果
とこの細胞面積の差との関係は、下記に示す直線式に回
帰した。併せて相関係数もしめす。これより、角質細胞
面積と標準細胞面積に差の大きさにより、どの程度敏感
肌かが鑑別することが出来ることがわかる。
【0011】
【表2】
【0012】<春>敏感肌の程度=64.37−25.
99×細胞面積の差 R=−0.21 <夏>敏感肌の程度=37.96−13.00×細胞面
積の差 R=−0.10 <秋>敏感肌の程度=83.17−34.87×細胞面
積の差 R=−0.29 <冬>敏感肌の程度=38.36−14.12×細胞面
積の差 R=−0.13
【0013】本発明の鑑別法は、上記式を利用して、敏
感肌の程度を連続的な数値として表すことにより、肌性
の鑑別を行うこともできるが、連続的な数値では、具体
的に敏感であるか、そうでないのかがわかりづらい為、
上述の正規分布性を利用して、角質細胞面積の標準角質
細胞面積との差をとり、正規分布にどの様な位置に位置
するのかを指標に、鑑別する方法がより簡便で実用的で
ある。即ち、この差の分布のどこに位置するかを、σ値
を指標に分類すればよい。実際の敏感肌の出現率と正規
分布の出現率と勘案すると、σ値に0.7を乗した値を
閾値として用いるのが良い。即ち、標準面積の0.7σ
より小さい方にずれるものを敏感肌であると鑑別するの
が好ましい。
【0014】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明について更に
詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限
定を受けないことは言うまでもない。
【0015】<実施例1>任意に選び出した23名につ
いて、上記の如く角質細胞を頬より採取し、マラカイト
グリーンで染色し、コンピューターに取り込んで角質細
胞の平均面積を測定した。これを上記式に従って算出し
た、標準角質面積との差を取り、これを上記細胞面積の
差の分布に従って、この分布のσの0.7倍より小さい
群(敏感肌群)を選び出したところ、6名であった。こ
れら23名に1%ラウリン酸ナトリウム水溶液と1%ラ
ウリン酸(ベヒクル:ワセリン)を24時間クローズド
パッチし、パッチ除去後1時間に本邦パッチテスト基準
に従って皮膚反応を判定した。即ち、++:浮腫を伴う
反応、+:明確な紅斑を伴う反応、±:微弱な紅斑を伴
う反応、−:無反応の基準である。結果を表3に示す。
これより、敏感肌群の方が強い反応を示しており、本発
明の鑑別法により敏感肌を的確に鑑別しうることがわか
る。
【0016】
【表3】
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、客観的に敏感肌を鑑別
する手段を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮澤 雅一 神奈川県横浜市神奈川区高島台27−1 ポーラ化成工業株式会社 横浜研究所内 (56)参考文献 特開 平9−38045(JP,A) 特開 平6−82443(JP,A) 特開 平11−299792(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/48 - 33/52 G01N 33/58 - 33/98 A61B 5/00 A61B 10/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被験者の年齢に対応する角質細胞一個の標
    準的な面積である標準角質細胞面積と、被験者より採集
    した角質細胞一個あたりの面積の平均値との差を指標と
    する、敏感肌の程度を鑑別する肌の鑑別法。
  2. 【請求項2】 年齢に対する標準角質細胞面積の値が、
    季節により異なることを特徴とする、請求項1に記載
    の、肌の鑑別法。
  3. 【請求項3】 年齢に対する標準角質細胞面積が、春、
    夏、秋、冬の4季に於いて、次の式で年齢の関数として
    算出されたものであることを特徴とする、請求項1又は
    2に記載の、肌の鑑別法。<春:3月〜5月>標準角質
    細胞面積=661.65+4.46×年齢<夏:7月〜
    9月>標準角質細胞面積=678.67+3.78×年
    齢<秋:10月〜11月>標準角質細胞面積=630.
    37+4.77×年齢<冬:12月〜2月>標準角質細
    胞面積=636.22+5.24×年齢
  4. 【請求項4】 採集した角質細胞一個あたりの面積の平
    均値が、標準角質細胞面積よりも小さい場合、敏感肌と
    鑑別することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項
    に記載の肌の鑑別法。
  5. 【請求項5】 角質細胞の面積が、頬に粘着剤を塗布し
    たディスクを貼付し、剥離した後、粘着テープ上に転写
    し、該転写物を染色剤で染色し、細胞の形状を計測し算
    出した値であることを特徴とする、請求項1〜4の何れ
    か一項に記載の肌の鑑別法。
  6. 【請求項6】 染色剤がゲンチアナバイオレット及び/
    又はブリリアントグリーンであることを特徴とする、請
    求項5に記載の肌の鑑別法。
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