JP2014089117A - 皮膚検査キット - Google Patents

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竜司 米田
Kazuhiro Nishizono
和博 西薗
Akitsugu Yamamoto
顕嗣 山本
Takanori Yasuda
隆則 安田
Koji Niwa
広治 丹羽
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Abstract

【課題】 簡易な構成で正確な肌情報を入手可能な皮膚検査キットを提供する。
【解決手段】 皮膚組織を付着させることが可能な粘着部1aを有するテープ1と、粘着部1aを露出させた状態でテープ1を保持するテープ保持部10と、皮膚組織と呈色,発光または蛍光を伴う反応を生じる反応性物質が固定化された反応場30を有する台座部50と、反応を進行させるための反応液21を反応場30から分離した状態で保持する反応液保持部20と、反応液保持部20から反応場30に反応液21を導く反応液供給手段40とを有し、テープ保持部10と台座部50とは、粘着部1aと反応場30との間に反応液21を保持可能な近接状態に互いの距離を変化させることが可能であり、近接状態において粘着部1aと反応場30との間に反応液21を保持することによって反応を進行させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、皮膚のテープストリッピング操作後の検査及び結果表示を行うための皮膚検査キットに関する。
近年、皮膚に小型カメラを接触させて、皮膚組織を拡大観察したり、皮膚に電極を接触させて、電気抵抗等を測定したりすることにより、間接的に皮膚の状態を判断する技術がある。
また、皮膚組織を採取して、検査溶液に溶解した上で特定の蛋白質等を検出することで、皮膚疾患を判定したり、天然保湿因子(NMF)等の機能を判定したりする技術がある(例えば、特許文献1,2参照)。
国際公開2009/142268号 特開2009−36555号公報
しかし、前者の技術では、皮膚の状況を間接的な情報から推定することとなり、正確な皮膚(肌)情報を得ることはできなかった。
一方、特許文献1,2に開示された技術では、特定の物質を正確に測定することはできるが、検査にかかる工程が複雑かつ煩雑であるという問題点があった。
このため、簡易に正確な肌情報を得る技術が求められている。
本発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、簡易な構成で正確な肌情報を得ることのできる皮膚検査キットを提供することを目的とする。
本発明の実施形態の皮膚検査キットは、皮膚組織と呈色,発光または蛍光を伴う反応を進行させて皮膚の状態を検査する皮膚検査キットであって、皮膚組織を付着させることが可能な粘着部を有するテープと、前記粘着部を露出させた状態で前記テープを保持するテープ保持部と、皮膚組織と呈色,発光または蛍光を伴う反応を生じる反応性物質が固定化された反応場を有する台座部と、前記反応を進行させるための反応液を前記反応場から分離した状態で保持する反応液保持部と、前記反応液保持部から前記反応場に前記反応液を導く反応液供給手段とを有し、前記テープ保持部と前記台座部とは、前記テープの前記粘着部と前記反応場との間に前記反応液を保持可能な近接状態に互いの距離を変化させることが可能であり、前記近接状態において前記テープの前記粘着部と前記反応場との間に前記反応液を保持することによって前記反応を進行させるものである。
本発明によれば、簡易な構成で正確な肌情報を得ることのできる皮膚検査キットを提供することができる。
本発明の1つの実施形態に係る皮膚検査キットを示す斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る皮膚検査キットを示す斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る皮膚検査キットを示す斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る皮膚検査キットを示す要部拡大図であり、(a)は上面図、(b),(c)は断面模式図である。 (a)〜(c)はそれぞれ、図1に示す皮膚検査キットの反応液供給手段における変形例を示す要部拡大図である。 図1に示す皮膚検査キットの変形例を示す要部拡大図である。
本発明の皮膚検査キットの実施形態について、図面を参照しつつ、説明する。
(実施形態1)
本実施形態に係る皮膚検査キット100は、テープ保持部10と、反応液保持部20と、反応場30と、反応液供給手段40と、を有する。
テープ保持部10は、粘着テープ片1(以下、テープ1という)を保持するためのものであり、平面部11と留め具12とを有する。ここで、テープ1は、一方面に粘着性を有する粘着部1aを含む。言い換えると、テープ基体上に粘着部1aが形成されてなる。理由は後述するが、テープ1は、平面視でこの粘着部1aが位置する領域において透光性を有することが好ましい。このことから、テープ1のテープ基体の材質として光透過性等を考慮したシリコーン樹脂,シリコンアクリル樹脂,アクリル樹脂のいずれかが好ましいが、その他の樹脂であってもよい。なお、ここで「透光性」とは可視光に対するものに限定されず、後述の皮膚組織が関与する反応により生じる呈色、発光または蛍光を観察可能とする条件とする。このようなテープ1の形状及びサイズは、特に限定はされないが、皮膚に接触させて角質等の皮膚組織を採取するという目的から、数cm角内に収まるサイズであることが好ましく、鋭角を有さない形状、即ち矩形状や円形状,楕円形状等が好ましい。皮膚に粘着部1a全体を平均的に接触させることができるからである。また、矩形状や円形状,楕円形状等の場合には、検出する物質の面内における分布状態を評価するために適している。
このようなテープ1としては市販のセロハンテープや角質採取テープを用いればよい。この例では、テープ1は直径2.2cmの円形の角質採取テープとし、弦で区切られる2つの領域のうち大きい領域に粘着部1aを形成したものであり、テープ1に対する粘着部1aが占める面積の割合を80%以上としている。
このようなテープ1の粘着部1aを皮膚に貼付した後に剥離することで、皮膚の平面情報を粘着部1aに転写することができる。具体的には皮脂・角質等を採取することができる。このテープ1の貼付・剥離に先立ち、皮膚の汚れを取ることが望ましい。
テープ1は、他方の面を平面部11に向かい合わせて留め具12によりテープ保持部10に保持される。言い換えると、テープ1は粘着部1aが上側に向くようにテープ保持部10に保持される。保持方法は、平面視で粘着部1aの位置する領域以外に位置する留め具12を用いて、粘着部1aが露出するように保持できれば特に限定されない。例えば、平面視で平面部11の粘着部1aの位置する領域以外に、平面部11から延び、平面部11とテープ1の厚み以上の間隔を開けて平行に延びるフック状の留め具12を設けてもよいし、粘着テープからなる留め具12を設けてもよい。この例では、平面視で平面部11の粘着部1aの位置する領域を挟んだ両側に粘着テープからなる留め具12を設けている。具体的には留め具12は両面テープで、一方面が平面部11に貼付された状態であり、
他方の面は、剥離可能な保護テープで保護されている。テープ1を保持する際にこの保護テープを取り除き粘着テープ部を露出させて貼りあわせて保持する。留め具12をこのように構成することにより、平面部11とテープ1とを隙間なく保持することができるので好ましい。
平面部11はテープ1を保持でき、テープ1が保持される側の面に水を透過させないような撥水性を有し、後述の反応液21に対して化学的に安定であれば、その材料、形状等は適宜自由に選択できる。例えば、厚紙やプラスチック等を用い、粘着部1aは配置される領域が透光性を有する材料で形成されるようにすればよい。平面部11のサイズは特に限定されないが、簡易検査キットという性質上から片手で保持、取り扱いができることが好ましく、厚み0.01mmから1mm程度、平面視におけるサイズを数cm角内に収まる大きさとすることが望ましい。平面部11の材質は、反応液21に難溶で、指での押圧に対して強度が保持できることが望ましい。光透過性を考えるとアクリル樹脂が適当であるが、他の樹脂材料等でもよく、特段限定されるものではない。この例では短辺が5cm、長辺が9cmの矩形状であり、厚さ0.4mmのアクリル樹脂板を用いて説明している。
このようなテープ保持部10は台座部50とその主面同士を対向配置可能に保持される。具体的には、テープ保持部10の平面部11の一端が台座部50の一端で接続されている。この接続された部分を支点としてテープ保持部10のテープ1の粘着部1aが台座部50に対向するように折り畳めるように変位可能となっている。言い換えると、テープ保持部10に保持されたテープ1の粘着部1aと、台座部50に配置された後述の反応場30との距離を変えることができる。
台座部50は、その上面に反応場30と封止部51とを有する。反応場30は、粘着部1aと接触して、粘着部1aに転写され皮膚から採取された物質と反応を生じたり反応を促進させたりする反応性物質をその表面に保持するものである。ここで生じる反応は、呈色、発光、蛍光等、反応の結果、光学的に検出可能な現象を生じるものとする。反応性物質としては、酵素、触媒等が挙げられる。
特に反応性物質として酵素を用いることが好ましい。酵素は生体内で様々な化学反応を触媒し、生体の代謝維持に欠かすことができない。一方で、通常の状態では進行しない化学反応が、特定の酵素の存在によって、特異的に進行する場合が多々存在する。皮膚組織中の様々な物質は、皮膚中に存在する酵素が触媒として機能し、生化学的な反応が進行することで代謝が維持されている。逆に、皮膚組織中に存在する酵素と同一の酵素、あるいは同様の作用を有する特定の酵素を利用すれば、皮膚組織中の特定の物質(バイオマーカ)の存在を高精度で、定性的、あるいは定量的情報として得ることが可能となる。
ただし、これは酵素に限定した事柄ではなく、特定のバイオマーカに特異的に反応する皮膚組織と反応するその他の物質でもかまわない。特定のバイオマーカと特異的に化学反応し、かつその化学反応が検出可能な物質であればよく、たとえば、呈色、蛍光、発色試薬する検出試薬であってもよい。
反応場30は、金属上に皮膚から採取された物質中の特定の検出物質と特異的に反応を生じる反応性物質を固定化することで形成してもよいし、絶縁物質上に修飾基を介して皮膚から採取された物質中の特定の検出物質と特異的に反応を生じる反応性物質を固定化してもよい。この例では、反応場30として、台座部50上に配置されたカーボンまたはシリカゲルのポーラス層を形成し、その表面をカルボキシル基で修飾し、このカルボキシル基に、反応を促進する触媒的役割を果たす酵素が乾燥した状態でアミド結合により固定化されている。
この様に、反応場30において、反応性物質を固定化するための土台としてポーラス層を用いることにより、反応場30の単位面積あたりの表面積を格段に増大させることができる。これに伴い、固定化できる酵素の密度を大幅に向上させることができ、反応の効率化を実現できる。ポーラス層の孔の開口径は、その上に固定する反応性物質と同程度であることが好ましい。例えば、反応性物質として酵素を用いる場合には、数nmから数10nmとする。開口率は、固定化する酵素の設計密度できまるが、最大1×10から1×
1010個/mmである。
ポーラス層の孔の深さは、数nm〜100nmとする。反応による呈色、発光または蛍光を持続させるためには、反応性物質、皮膚組織、反応液21を近接配置させることが必要である。具体的には、これらを近接配置することにより、解離を繰り返す反応性物質に新たな基質を効率的に供給することができる。このようなポーラス層における孔は、反応場30の面内で均等に反応を進行させるために、秩序立って形成されていることが望ましい。このようなポーラス層の一例として、カーボンナノチューブを例示することができる。
反応液供給部20は、台座部50の上面のうち、反応場30よりもテープ保持部10との接続部側に配置される。反応液保持部20は、反応液21と反応液21を保持するフィルムからなる小胞部22とを有する。反応液21は、検出物質と反応場30に固定化された反応性物質または触媒物質との組み合わせにより適宜決定する。フィルムからなる小胞部22は台座部50に固定化されている。
小胞部22は、反応場30に均一に溶液を供給できるサイズにすることが望ましい。小胞部22は、円筒状のビニール袋に溶液を包含させた後に封止し、その一部の側面を台座部50に接着固定してもよい。また、予め半円筒状の空袋に反応液を注射針等で注入した後に袋を封止してもよい。反応液の液量は、反応場30が均一に濡れる程度が適当であり、多すぎると反応液が漏れ、少なすぎると十分な反応が生じなくなる恐れがある。
このように、小胞部22により、反応液21と反応場30とを分離して保持することができる。これにより、反応性物質を乾燥した状態で保存することができる。これにより、品質を維持した状態で長期保存が可能となる。また、両者が分離しているため、反応の進行に必要な物質をそれぞれの物質に応じた望ましい状態で準備することができる。すなわち、反応に必要な物質のうち、乾燥状態で保存することが好ましものや、反応液21中では不安定な物質は反応場30に固定化し、溶液中で安定して存在しうるものを反応液21中に溶解させた状態とすることができる。このように反応が進まない状態で準備可能であるため、必要なときに即座に反応をスタートさせることができる。
台座部50は上述のような各構成要素を保持し、かつ、少なくともその上面は、反応液21に対して透過性及び反応性の少ない材料で構成されている。本発明の皮膚検査キットは、簡便にその場で即時に診断できることを目指しているから、台座部50のサイズは、片手に載せることのできるサイズであることが望ましい。また、基体材質に特段の制限はなく、有機高分子樹脂、金属、セラミック、陶器、ガラス、その他の剛性を有するものであればよいが、簡便さの理由から有機高分子材料、たとえば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等々が好ましい。この例では短辺が5cm、長辺が9cmの矩形状であり、厚さ0.4mmのアクリル樹脂板を用いて説明している。
そして、台座部50の上面には、封止部51を有する。封止部51は、封止部51と、台座部50の上面と、テープ保持部10の一方主面とで、反応液保持部20,反応場30
が配置された領域を囲うように形成される。言い換えると、テープ1の粘着部1aと反応場30の周囲を囲繞して、粘着部1aと反応場30と反応液21を内部に収容するような収容空間を形成するために、台座部50とテープ保持部10とを近接状態としたときに生じる隙間を塞ぐように封止部51が配置される。この例では、テープ保持部10の外周部に沿うように形成されている。より具体的には、テープ保持部10と台座部50との一端が接続されているためその接続部を除くようなコの字状(U字状)に配置されている。封止部51により、反応液21の漏洩を防ぐとともに、反応場30がおかれた環境を一定とすることができる。
なお、この例では封止部51は台座部50の上面に配置されているが、テープ保持部10側に配置してもよいし、テープ保持部10と台座部50との双方に設けてもよい。
このような封止部51としては、両面テープが最も簡便であるが、弾性ゲル材を用いて封止してもよい。また周囲の一部に突起上の構造を形成してグリース等の封止材を用いることができる。
そして、テープ保持部10の平面部11のうち、テープ保持部10を台座部50と対向するように変位させたときに、小胞部22と当接する位置に反応液供給手段40を設ける。反応液供給手段40は突起構造41からなる。突起構造41は、小胞部22に当接させても変形しない強度を有する材料であれば特に材料は限定されず、例えばプラスチック等で形成される。
(操作方法)
このような皮膚検査キット100の動作について説明する。まずテープ1を用いてテープストリッピング操作を行い、皮膚組織の一部を粘着部1aに転写する。このテープ1を粘着部1aが露出するようにして、留め具12によりテープ保持部10に保持する。この工程においては、突起構造41は不図示の保護テープにより保護されていてもよい。
次に、突起構造41を露出させた状態で、テープ保持部10を台座部50側に折り重ねるように変位させる。言い換えると、テープ保持部10と台座部50とが互いに向き合う角度を変える。変位により、粘着部1aと反応場30とが近接状態で対向配置される。
ここで、近接状態とは、粘着部1aと反応場30との間に反応液21を保持可能な状態である。そして、この近接状態において粘着部1aと反応場30との間に反応液21を保持することで反応が進行する。具体的にこの近接状態とは、1nm〜100μm程度であり、反応液21が反応場30上に表面張力で保持可能な状態をいうものとする。
変位後に封止部51により収容空間内に反応場30、テープ1の粘着部1aを収容する。
そして、変位後に突起構造41を小胞部22に当接させ押圧することにより、小胞部22に孔を形成し、反応液21を自由に流動させる。反応液21は小胞部22から移動し反応場30と粘着部1aとの間隙に供給され充填される。これにより、粘着部1aに付着した皮膚採取物と、反応液21と、反応場30により、所定の反応が開始する。所定の時間が経過した後に反応の結果生じる、呈色、蛍光発光等の確認を行う。
ここで、テープ1が粘着部1a、基体のうち粘着部1aが形成されている領域(テープ1の粘着部1aの反対側の面)、テープ保持部10の粘着部1aが配置される領域は透光性を有している。このため、反応液21を封止した状態で反応を確認することができる。
このような構成・動作をする皮膚検査キット100を用いることにより、以下の2点の顕著な効果を有する。
まず、反応場30に高密度で反応性物質を固定化し、これに皮膚組織を近接配置した状態で反応を進めることができるので、効率よく反応を進めることができる。すなわち、短時間で測定可能であり、かつ低濃度の場合でも反応を進めて検出することができる。
次に、粘着部1aに皮膚組織を転写してそのままの状態で反応を進行させることができる。これにより、皮膚における検出希望物質の分布状態を二次元的に把握することができる。すなわち、単なる皮膚における検出希望物質の数値・平均値を得るのではなく、特異点の有無等まで把握することができる。
本実施形態の皮膚検査キット100は、このような優れた効果を有するものを簡易な構成で実現したものである。
(評価対象物)
上述の皮膚検査キット100で具体的に行われる反応の例について詳述する。
<NMF(天然保湿因子)バランス評価>
反応場30にアミノ酸、乳酸の脱水素酵素を固定する。具体的には、乳酸デヒドロゲナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼを固定化する。同様に、触媒であるジアホラーゼを固定する。
反応液21として、トリスーHClバッファ液、リン酸バッファ液、ホウ酸バッファ液のいずれか、または2種以上の混合液に、テトラゾリウム塩、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクロオチド酸化体)、トリトンX−100等の界面活性剤を添加したものを用いる。
このような酵素が固定化された反応場30と反応液21との組み合わせにより、粘着部1aに付着した皮膚からの採取した角質のNMF中のアミノ酸と乳酸とを検出することができる。具体的には、反応液21中のトリトンX−100等により角質の細胞膜を破壊する。そして、角質中の乳酸およびアミノ酸の脱水反応により、NAD+が還元され還元体であるNADHが生成する。このNADHが発生する蛍光により、乳酸およびアミノ酸量、粘着部1aにおける分布状況等を確認できる。
さらに、乳酸は、NADHとテトラゾリウムとの存在下において、ジアホラーゼを触媒として赤色を呈色するホルマゾン色素を生成する。
この蛍光強度、呈色強度等を測定することにより、1つの反応場30で、乳酸とアミノ酸とを区別してその量,比率および分布状態を検出することができる。
<皮脂バランス評価>
皮脂バランスをみるために、皮脂中の脂肪酸を区別して判別する。具体的には、反応場30に、アシルCoAシンセターゼ、アスコルビンオキシターゼ、アシルCoAオキシターゼ、ペルオキシターゼ、コレシテロールオキシターゼを固定化する。
反応液21として、トリスーHClバッファ液、リン酸バッファ液、ホウ酸バッファ液のいずれか、または2種以上の混合液に、ATP(アデニシン三リン酸)、ADHP(10−アシル−3,7−デヒドロキシフェノキサジン)、トリトンX−100,DMSO(ジメチルスルホキシド)を添加したものを用いる。
これら系により、コレステロールと遊離脂肪酸の分析が可能となる。皮膚中の遊離脂肪酸,あるいはコレステロールを基質として反応場30に固定されている酵素との反応を元に連鎖的に進行する反応の過程で発生した過酸化水素を用いて、呈色試薬ADHPを発色させ、目視にて存在、あるいは存在比を確かめることができる。
具体的には、反応場30にアシルCoAシンセターゼ、アスコルビンオキシターゼ、アシルCoAオキシターゼを含む群と、コレシテロールオキシターゼを含む群を分離して形成する。このような反応場に反応液21を供給する。この反応液21中のトリトンX−100等により皮膚組織の細胞膜を破壊する。皮膚中の遊離脂肪酸とATPとコエンザイムとにより、アシルCoAシンセターゼを触媒としてアシルCoAを生成する。このアシルCoAと酸素とがアセチルコリンオキシターゼの存在下でトランスエノイルCoAと過酸化水素とを生成する。この過酸化水素とADHPがペルオキシターゼの存在下でレゾルフィンと水とを生成する。このレゾルフィンの生成時に蛍光を生じる。
また、皮膚中のコレステロールは、コレシテロールオキシターゼの存在下で酸素と反応してトランスエノイルCoAと過酸化水素とを生成する。そして、この過酸化水素とADHPがペルオキシターゼの存在下でレゾルフィンと水とを生成する。このレゾルフィンの生成時に蛍光を生じる。
これらの蛍光を観察することにより、遊離脂肪酸とコレステロールとを確認することができる。
<紫外線ダメージ測定>
紫外線ダメージを評価するために、スクワレン(スクワレンヒドロペルオキシド)等、過酸化脂質を測定する。具体的には、反応場30として、チトクロムCまたはペルオキシターゼを固定化する。
反応液21として、トリスーHClバッファ液、リン酸バッファ液、ホウ酸バッファ液のいずれか、または2種以上の混合液に、ルミノール、ルシフェリン、p−ヨードフェニール、トリトンX−100,DMSO、エタノールを添加したものを用いる。
これらの系により、UV光被爆により生じた皮膚中の過酸化スクワレンの量を定量的に把握することができるようになる。具体的な反応経路を説明する。チトクロムCにより皮膚中の過酸化スクワレンからラジカル酸素を遊離させる。次にこのラジカル酸素がルミノールを酸化させることにより励起状態の3−アミノフタル酸を生成する。この、3−アミノフタル酸が励起状態から基底状態に遷移する際に蛍光を発生する(ルミノールの発光現象)。この蛍光を観察すればよい。
<セラミド生成能測定>
肌の潤いに関係するセラミドを生成するために必要な、スフィンゴミエリナーゼ活性を測定する。具体的には、反応場30として、アルカリフォスファターゼ、コリンオキシターゼ、ペルオキシターゼを固定する。
反応液21として、トリスーHClバッファ液、リン酸バッファ液、ホウ酸バッファ液のいずれか、または2種以上の混合液に、スフィンゴミエリン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、ADHP,トリトンX−100,DMSOを添加したものを用いる。
これらの系により、皮膚のセラミド生成能を定量的に捕らえることができ、生化学的に定量な肌年齢を評価することができる。反応液中に予め、基質であるスフィンゴミエリン
が包含されており、皮膚中の酵素であるスフィンゴミエリナーゼの活性を受け、セラミドに転換される。そのときの副生成物でホスホコリンを利用する。このホスホコリンがアルカリフォスファターゼの存在下でリン酸とコリンと転換される。このコリンは、コリンオキシターゼの存在下でトリメチルグリシンに転換する際に過酸化水素を生じる。この過酸化水素とADHPとがペルオキシターゼの存在下でレゾルフィンに転換する際に蛍光が発生する。このようにセラミドを生成する際の副生成物を利用して、呈色試薬ADHPを発色させ、目視にて存在と活性を定量的に把握できるようになる。
このような評価対象物に特化した皮膚検査キット100により、簡易な構成で正確な肌情報を得ることができるものとなる。
(実施形態2)
本発明の実施形態2の皮膚検査キット100Aについて、図2を用いて説明する。図1に示す皮膚検査キット100はテープ保持部10と台座部50とが一体である場合を例に説明したが、皮膚検査キット100Aは、テープ保持部10Aと台座部50Aとが別体となっている点で異なる。また、皮膚検査キット100は反応液保持部20が台座部50に固定化されているが、皮膚検査キット100Aは、反応液保持部20Aが台座部50とは別体となっている点で異なる。以下、実施形態1と異なる部分のみ説明し、重複する部分の説明は省略する。
皮膚検査キット100Aは、テープ保持部10Aと台座部50Aとが別体となっている。台座部50Aには封止部51Aが、反応場30を囲うように形成されている。
そして、反応液保持部20Aは、ゲル状のシートで構成される。反応液保持部20Aの形状は円形、矩形、その他任意の形状が考えられるが、反応液21を供給する機能を考慮すると出来るだけテープ1、もしくは反応場30と対称的な形状が望ましい。また、テープ1の粘着部1aと反応場30が均一に濡れる程度の反応液が供給できる程度のゲル厚みが適当であり、多すぎると反応液が漏れ、少なすぎると十分な反応が生じなくなる恐れがあるので、ゲル厚みは1mmから5mm程度が適当である。
反応液保持部20Aを構成するゲル剤については多糖類からなるアルギン酸ナトリウム、κ‐カラギーナン、ι‐カラギーナン、ジェランガム、寒天、アガロース、カルボキシメチルセルロースや水溶性高分子のポリアクリル酸ナトリウム等を例示できる。
また反応液保持部20Aは反応液21をゲルに含有させる方式とゲル膜内に反応液21を内包させた方式がある。反応液21をゲルに含有させる方式の場合は、ゲルは脆くなく若干の弾性を有するほうが好ましく、押圧のない状態ではゲルから反応液の離水が少ないことが望ましく、ι‐カラギーナン、アガロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等が適当である。ゲル膜内に反応液21を内包させる方式の場合は、二価金属イオンと架橋反応することで、素早く容易にゲル化し、取扱いが容易なアルギン酸ナトリウムが適当である。
反応液供給手段40Aは、反応液保持部20Aを粘着部1aと反応場30との間に挟持させた上で押圧する工程である。このような反応液供給手段40Aにより、ゲルを液状とすることできる。
このように反応液21の供給にゲルを用いることにより、より取扱いが容易となる。また、反応液保持部20Aのゲルを多重構造とすることで反応液21の流動性を制御することができる。
(実施形態3)
本発明の実施形態3の皮膚検査キット100Bについて、図3を用いて説明する。図1に示す皮膚検査キット100において、反応液保持部20は台座部50に配置されていたが、皮膚検査キット100Bでは、反応液保持部20Bが別体となっている点で異なる。以下、異なる点についてのみ説明し、重複する説明を省略する。
皮膚検査キット100Bは、反応液保持部20Bが、スポイト状となっており、その中に反応液21が充填されている。検査前は取り外し可能の蓋部で反応液21は密封されている。
テープ保持部10B、台座部50Bの一部に反応液保持部20Bのスポイトの出口形状に応じた変形部13B、52Bが形成されている。テープ保持部10Bを台座部50B側に変位させ、変形部13B、52Bが合わさることで、反応液保持部20Bのスポイトの出口形状と略同一の形状となる挿入口を形成する。そして、この挿入口が反応液供給手段40Bである流路を形成する。
反応液供給手段40Bである挿入口に、反応液保持部20Bであるスポイトの出口を挿入し、スポイトを押圧することで、スポイト内の反応液21を反応場30に供給することができる。
なお、この例では、反応液供給手段40Bである挿入口を、テープ保持部10B、台座部50Bの一部に形成した変形部13B、52Bで形成したが、封止部51に挿入口を形成してもよい。
(実施形態4)
本発明の実施形態4の皮膚検査キット100Cについて、図4を用いて説明する。図1に示す皮膚検査キット100において、反応液保持部20は台座部50に配置されていたが、皮膚検査キット100Cでは、テープ保持部10Cと一体となり形成されている点で異なる。以下、異なる点についてのみ説明し、重複する説明を省略する。
テープ保持部10Cの一方の面にはプラスチックまたは樹脂で形成された反応液保持部20Cが形成されている。反応液保持部20Cは、反応液収容部23Cと反応液収容部23Cに続く細長い形状の出口流路部24Cとで構成される。反応液収容部23Cはテープ保持部10Cの平面部11Cの外周部側に配置され、出口流路部24Cは平面部11Cののうち、テープ1が保持される領域に向かって延びている。そして、出口流路24Cと平面部11との接着強度は、反応液収容部23Cと平面部11Cとの接着強度に比べて小さくなるように設定されている。このような構成とすることにより、テープ保持部10Cを台座部50C側に変位させた後に、平面部11Cの留め具12が配置された面と反対側の他方主面側から、反応液収容部23Cと出口流路部24Cと間付近を押圧することにより、出口流路部24Cが平面部11Cから剥離し、出口流路部24Cが反応場30と粘着部1aとの間へと反応液21を導く流路となる。この例では、この一連の押圧、出口流路部24C剥離の工程が反応液供給手段40Cとなる。
(変形例1:反応液供給手段)
図1に示す例では、反応液供給手段40として突起構造41がその先端を上に向けた状態でテープ保持部10に設けられた例を説明したが、図5(a)に示すように、突起構造41Dがその先端部が面方向に延びるように配置され、テープ保持部10を台座部50側に変位させた後に、平面部11の他方主面側から、突起構造41Dの根本付近を押圧することにより、その先端を平面部11の面方向から台座部50側に立ち上がらせることにより、小胞部22に孔を設けてもよい。
また、図1に示す例では、突起構造41をテープ保持部10側に設けているが、図5(b),(c)に示すよう台座部50側に設けてもよい。台座部50側に重ねあわされるようにテープ保持部10が変位し小胞部22が押圧されたときに、小胞部22が変形する。台座部50側に設ける場合には、図5(b)に示すように、台座部50のうち、小胞部22が変形することにより初めて小胞部22に覆われる領域に突起構造41Eを設ければよい。また、図5(c)に示すように、小胞部22と台座部50との間に可撓性を有する弾性剤からなる小片42Fを設け、小片42Fに隣接配置するように突起構造41Fを設けてもよい。この場合には、小胞部22が押圧されたときに、小片42Fが変形し突起構造41Fの先端が露出させることができる。
(変形例2:反応液保持部)
反応液保持部20として、反応液21をゼラチンで固化して保持してもよい。その場合には、酵素反応が進行する反応温度付近(40度弱)では再溶融するので、反応場30に反応液21を溶液状で供給することができる。
(変形例3:反応場)
上述の実施形態によれば、反応場30が1つの例を用いて説明したが、図6に示すように、2以上設けてもよい。その場合には、標準試料と実検体資料との比較を行うことが可能となる。また、複数の皮膚採取箇所の測定を同時に行い、皮膚位置における比較を行うことができる。
(変形例4:台座部とテープ保持部との接合方法)
上述の実施形態1において、矩形状の台座部50とテープ保持部10との平面視における一辺を接合した例を説明したが、両者が近接状態を実現可能に変位可能であればその接続方法は限定されない。例えば、一方が他方に対してその平板の主面方向にスライド、回転させるような構成としてもよい。
(変形例5:台座部とテープ保持部との形状)
上述の実施形態によれば、台座部50とテープ保持部10との形状は矩形状の場合を例に説明したが、円形、楕円形とし、コンパクトを模した形としてもよい。
1・・・テープ
1a・・・粘着部
10・・・テープ保持部
20・・・反応液保持部部
30・・・反応場
40・・・反応液供給手段
50・・・台座部
100・・・皮膚検査キット

Claims (5)

  1. 皮膚組織と呈色,発光または蛍光を伴う反応を進行させて皮膚の状態を検査する皮膚検査キットであって、
    皮膚組織を付着させることが可能な粘着部を有するテープと、
    前記粘着部を露出させた状態で前記テープを保持するテープ保持部と、
    皮膚組織と呈色,発光または蛍光を伴う反応を生じる反応性物質が固定化された反応場を有する台座部と、
    前記反応を進行させるための反応液を前記反応場から分離した状態で保持する反応液保持部と、
    前記反応液保持部から前記反応場に前記反応液を導く反応液供給手段とを有し、
    前記テープ保持部と前記台座部とは、前記テープの前記粘着部と前記反応場との間に前記反応液を保持可能な近接状態に互いの距離を変化させることが可能であり、
    前記近接状態において前記テープの前記粘着部と前記反応場との間に前記反応液を保持することによって前記反応を進行させる、皮膚検査キット。
  2. 前記テープ保持部および前記台座部はいずれも平板状であって、互いが向き合う角度を変化させ得る状態で一端同士が接続されており、前記角度を変化させることによって前記テープの前記粘着部と前記反応場との距離を変化させる、請求項1記載の皮膚検査キット。
  3. 前記近接状態において、前記テープ保持部および前記台座部の少なくとも一方には、前記テープの前記粘着部および前記反応場の周囲を囲繞して、前記テープの前記粘着部および前記反応場とともに前記反応液を内部に収容する収容空間を形成する封止部が設けられている、請求項1または2に記載の皮膚検査キット。
  4. 前記反応性物質は、ジアホラーゼ、乳酸の脱水酵素およびアミノ酸の脱水酵素であり、前記反応液は、バッファ液とテトラゾリウム塩とニコチンアミドアデニンジヌクロオチド酸化体と細胞壁破壊可能な界面活性剤とを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の皮膚検査キット。
  5. 前記テープ保持部において前記テープは前記粘着部と反対側の面を前記テープ保持部に接しており、前記テープおよび前記粘着部ならびに前記テープ保持部のうち前記粘着部が配置される部分は透光性を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の皮膚検査キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020040136A1 (ja) * 2018-08-24 2020-02-27 国立大学法人 東京大学 対象の皮膚情報を検査するための検査キット
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