JP2014005883A - ロータリダンパー - Google Patents

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Abstract

【課題】ダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長を簡単に変更することができるとともに作動音も静かにすることができるロータリダンパーを提供する。
【解決手段】ロータリダンパー100は、円筒状に形成されたハウジング101を備えている。ハウジング101の内側には、2つの壁状の固定ベーン104とハウジング101内に回転自在に支持されたローター110とによって流動体120を封入するための内室111が形成されている。固定ベーン104には、固定ベーン104の両側に形成される第1の領域E1と第2の領域E2との間で流動体120を相互に流通させるオリフィス105が形成されている。流動体120は、相対的に圧縮率が高い高圧縮率流動体121と相対的に圧縮率が低い低圧縮率流動体122とで構成されており、これらの各流動体は可動ベーン112に対して互いに異なる2つの大きさの抵抗を生じさせるように各分量が調整されている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、所定の回転位置からダンパー機能を発揮するツーモーション型のロータリダンパーに関する。
従来から、自動車などの車両の室内に設けられる車両用シートなどには、リクライニング操作時や折り畳み操作時におけるシートの変形動作を滑らかにするためにロータリダンパーが用いられている。ロータリダンパーは、回転運動する機構に制動力を作用させて回転運動を減衰させる機械装置であり、回転運動する機構に連結されるローターが機械的な摩擦力やオイルなどの流動体の流動抵抗に抗しながら回転するように構成されている。
このようなロータリダンパーの中には、ローターの回動開始位置から所定の回転位置までの範囲内において流動抵抗を抑えてダンパー機能を低減するとともにこのダンパー機能を制限した範囲外におけるローターの回転範囲において通常の大きな流動抵抗を生じさせてダンパー機能を発揮させる所謂ツーモーション型のロータリダンパーがある。例えば、下記特許文献1には、ローターに対して相対回転するハウジングの外周部にローターの回転方向に沿って案内溝を設けるとともにダンパー機能を作用させる対象となる相手部材に設けたストッパー部材を案内溝内に摺動するように配置することにより、ストッパー部材が案内溝内を摺動する間においてはダンパー機能を発揮させないように構成したツーモーション型のロータリダンパーが開示されている。
特開2007−50765号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されたツーモーション型のロータリダンパーにおいては、ダンパー機能の低減区間および有効区間における各区間長を変更する場合には、案内溝の長さなどの形状を変更しなければならないため変更作業が極めて煩雑であるとともに、ロータリダンパーの設置場所によっては他の部品との干渉を調整しなければならず、実質的に不可能であるという問題がある。また、上記特許文献1に開示されたツーモーション型のロータリダンパーにおいては、ストッパー部材が案内溝内を摺動する際の摺動音およびストッパー部材が案内溝の両端部に衝突した際に衝突音が生じるため、作動音が大きいとともにロータリダンパーが装着される製品の静粛性や高級感を損なうという問題があった。
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、ダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長を簡単に変更することができるとともに作動音も静かにすることができるロータリダンパーを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、流動体と、筒体で構成されて同筒体内に流動体を封入する内室が形成されたハウジングと、内室内における流動体を押しながら回転変位する可動ベーンを有してハウジングに対して相対回転可能に支持されたローターと、内室内にて流動体の流動を制限しつつ流通させるオリフィスとを備えたロータリダンパーにおいて、流動体は、互いに異なる2つの圧縮率のうちの相対的に高い圧縮率を有する高圧縮率流動体と相対的に低い圧縮率を有する低圧縮率流動体とを含んで構成されており、高圧縮率流動体および低圧縮率流動体は、内室内における可動ベーンに対して互いに異なる2つの大きさの抵抗を生じさせるために各分量が互いに調整されていることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、ロータリダンパーは、ローターが回転する際に可動ベーンに抵抗を負荷する流動体が相対的に圧縮率が高い高圧縮率流動体と相対的に圧縮率が低い低圧縮率流動体とを含んで構成されているとともに、これらの高圧縮率流動体および低圧縮率流動体が内室内における可動ベーンに対して互いに異なる2つの大きさの抵抗を生じさせるように各分量が互いに調整されている。これにより、ロータリダンパーは、ローターが回転するに際して高圧縮率流動体が低圧縮率流動体に比べて圧縮率が大きいため、主として高圧縮率流動体が圧縮されている間ダンパー機能が低く抑えられる。そして、ロータリダンパーは、高圧縮率流動体がある程度圧縮された後に圧縮される低圧縮率流動体の抵抗によってダンパー機能が発揮されてツーモーションが実現される。すなわち、本発明に係るロータリダンパーは、ダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長が高圧縮率流動体および低圧縮率流動体の各分量で規定される。そして、この場合、ロータリダンパーは、作動過程において内室内を可動ベーンおよび流動体がそれぞれ変位するのみであるため、従来のロータリダンパーにおける機械的な接触音および衝突音を生じることなく静かに作動する。また、ロータリダンパーは、内室に封入する高圧縮率流動体および低圧縮率流動体の各分量を調整するだけでダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長を簡単に設定することができる。これらの結果、本発明に係るロータリダンパーは、ダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長を簡単に変更することができるとともに作動音も静かにすることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパーにおいて、高圧縮率流動体は、気体であり、低圧縮率流動体は、液体であることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパーは、高圧縮率流動体が比較的圧縮率が大きい気体で構成されるとともに、低圧縮率流動体が比較的圧縮率が小さい液体で構成されている。これにより、ロータリダンパーは、気体と液体との圧縮率の差を利用してダンパー機能の低減区間での区間長と有効区間での区間長とを比較的容易かつ広範囲に設定することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパーにおいて、流動体は、低圧縮率流動体が好ましくは流動体全体の1割以上かつ9割以下、より好ましくは流動体全体の4割以上かつ8割以下を占めることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパーは、低圧縮率流動体が好ましくは流動体全体の1割以上かつ9割以下、より好ましくは流動体全体の4割以上かつ8割以下を占めて構成されている。このため、ロータリダンパーは、ローターの可動区間における好ましくは9割未満かつ1割を超える回転開始位置、より好ましくは6割未満かつ2割を超える回転開始位置からの可動区間においてダンパー機能の低減区間を容易に設定することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパーにおいて、内室は、可動ベーンの変位経路上にオリフィスまたは可動ベーンをバイパスして流動体を流通させるバイパス通路を有することにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパーは、内室における可動ベーンの変位経路上にオリフィスまたは可動ベーンをバイパスするバイパス通路を有して構成されている。これにより、ロータリダンパーは、ダンパー機能の低減区間での抵抗を高圧縮率流動体の種類に寄らずより効果的に低減することができるため、ダンパー機能の低減区間においてよりダンパー機能を低減することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパーにおいて、ハウジングおよびローターのうちの少なくとも一方は、樹脂材で構成されていることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパーは、ハウジングおよびローターのうちの少なくとも一方が樹脂材で構成されているため、ハウジングおよびローターを鉄鋼材や鋳物材などの金属材料で構成した場合に比べて軽量化することができる。すなわち、ロータリダンパー内に液体の流動体のみが充填された従来のロータリダンパーにおいては、ローターの回転駆動の開始によって内室内の圧力が急激に上昇するため、ハウジングおよびローターをこの急激な圧力上昇に耐え得る剛性に構成しておく必要がある。しかし、本発明におけるロータリダンパーによれば、ローターが回転駆動を開始した場合であっても高圧縮率流動体の圧縮によって内室内の圧力が急激に上昇することが緩和されるため、ハウジングおよびローターを従来よりも剛性の低い材料、例えば樹脂材を用いることができ、結果としてロータリダンパーを軽量化することができる。
本発明に係るロータリダンパーの全体構成の概略を示した斜視図である。 図1に示す矢印方向から見たロータリダンパーをプラグを省略して示した平面図である。 図2に示すA−A線から見たロータリダンパーの断面図である。 図2に示すB−B線から見たロータリダンパーの断面図である。 図2に示すロータリダンパーの作動過程における一つの状態を示すロータリダンパーの平面図である。 図2に示すロータリダンパーの作動過程における他の一つの状態を示すロータリダンパーの平面図である。 本発明の変形例に係るロータリダンパーをプラグを省略して示した平面図である。 図7に示すC−C線から見たロータリダンパーの断面図である。
以下、本発明に係るロータリダンパーの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るロータリダンパー100の全体構成を概略的に示した斜視図である。また、図2は、図1に示す矢印方向から見たロータリダンパー100をプラグ114を省略して示した平面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このロータリダンパー100は、例えば、自動車などの車両の室内に設けられる車両用シート(図示せず)などに取り付けられてリクライニング操作時や折り畳み操作時におけるシートの変形動作を滑らかにする機械装置であり、ローター110の回転変位区間においてダンパー機能が通常より抑えられた低減区間と同ダンパー機能が通常通り発揮される有効区間との2つの区間で構成された所謂ツーモーション型のロータリダンパーである。
(ロータリダンパー100の構成)
ロータリダンパー100は、ハウジング101を備えている。ハウジング101は、ロータリダンパー100の筐体を構成する円筒状の部品であり、亜鉛材を射出成形することにより成形されている。このハウジング101の外周部には、径方向外側に張り出した状態で可動片102が形成されている。可動片102は、ロータリダンパー100の取り付け対象となる2つの部品(図示せず)のうちの一方の部品にロータリダンパー100を連結するための部分であり、ハウジング101の外周部から径方向外側に向かって幅が狭くなる上面視略三角形状に形成されている。この可動片102の先端部には、ロータリダンパー100の取り付け対象となる前記一方の部品(図示せず)に連結する際に使用する連結用ピン103がハウジング101の軸方向に対して平行に突出した状態で形成されている。
一方、ハウジング101の内側は、図3に示すように、円筒面に形成されるとともにこの円筒面状の内周面上における互いに対向する位置に互いに張り出した状態で固定ベーン104がそれぞれ形成されている。固定ベーン104は、後述するローター110とともにハウジング101の内部を仕切る壁状の部分であり、ハウジング101の内周面上に同ハウジング101の軸線方向に沿って延びて凸状に形成されている。この場合、固定ベーン104における先端面は、ハウジング101の内周面に沿った円弧状に形成されている。そして、この固定ベーン104には、ハウジング101の内周面の周方向に貫通した状態でオリフィス105が形成されている。なお、図3においては、流動体120を省略して示している。
オリフィス105は、固定ベーン104を挟んで両側に形成される第1の領域E1と第2の領域E2との間で流動体120の流量を制限しつつ双方向に流通させるための溝状の切欠きである。このオリフィス105の断面積、換言すればオリフィス105における流動体120の流通量は、ロータリダンパー100のローター110に求められる回転時の負荷(トルク)の大きさに応じて適宜設定される。
このハウジング101の内部には、図4に示すように、ローター110が設けられている。ローター110は、ハウジング101の内部において回転する円筒体であり、亜鉛材を射出成形することにより成形されている。このローター110の外周部は、前記2つの固定ベーン104の各先端面にそれぞれ摺動接触する円筒面に形成されている。これにより、ハウジング101の内周面とローター110の外周面との間のリング状の空間には、固定ベーン104によって仕切られることによって第1の領域E1と第2の領域E2とからなる内室111が形成される。また、このローター110の外周部上には、円筒面状に形成された外周部上における互いに対向する位置に径方向外側に向かって張り出した状態で可動ベーン112がそれぞれ形成されている。
可動ベーン112は、ローター110が回転することにより第1の領域E1および第2の領域E2内をそれぞれ回転変位する壁状の部分であり、ローター110の軸線方向に沿って凸状に突出してそれぞれ形成されている。この場合、各可動ベーン112は、ハウジング101の内周面に摺動可能な突出量かつ先端面の形状がハウジンング101の内周面に対応する円筒面状にそれぞれ形成されている。一方、ローター110の内側には、ロータリダンパー100の取り付け対象となる2つの部品(図示せず)のうちの他方の部品に連結するために断面形状が六角形状に形成された筒状連結部113が形成されている。
そして、このローター110は、一方の端部がハウジング101の一方の端部に液密的かつ気密的に閉塞された状態で回転可能に支持されるとともに、他方の端部がハウジング101の他方の端部に平面リング状のプラグ114を介して液密的かつ気密的に閉塞された状態で回転可能に支持されている。これにより、ハウジング101とローター110との間に形成された内室111は、液密的かつ気密的に閉塞された空間に形成される。
内室111内には、流動体120が封入されている。流動体120は、内室111における第1の領域E1および第2の領域E2内をそれぞれ回転変位する可動ベーン112に対して抵抗を付与することによりロータリダンパー100にダンパー機能を作用させるための物質であり、互いに圧縮率が異なる2つの流動体である高圧縮率流動体121と低圧縮率流動体122とで構成されている。
これらのうち高圧縮率流動体121は、ローター110の回転時に可動ベーン112に対して低圧縮率流動体122よりも小さな抵抗を与えることによりローター110を低トルクで回転可能としてダンパー機能を低減させるための物質であり、低圧縮率流動体122よりも相対的に高い圧縮率を有する流動性物質で構成されている。本実施形態においては、高圧縮率流動体121は、空気によって構成されている。
一方、低圧縮率流動体122は、ローター110の回転時に可動ベーン112に対して高圧縮率流動体121よりも大きな抵抗を与えることによりローター110を高トルクで回転可能としてダンパー機能を発揮させるための物質であり、高圧縮率流動体121よりも相対的に低い圧縮率を有する流動性物質で構成されている。本実施形態においては、低圧縮率流動体122は、シリコーンオイルによって構成されている。
そして、これらの高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122は、ローター110におけるダンパー機能を低減する回転区間の範囲およびダンパー機能を十分に発揮させる回転区間の範囲に対応する各分量に調整されて内室111内に封入される。本実施形態においては、高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122は、内室111内に3:7の割合の分量で充填される。
(ロータリダンパー100の作動)
このように構成されたロータリダンパー100の作動について説明する。なお、ロータリダンパー100は、自動車などの車両の室内に設けられる車両用シート(図示せず)などに設けられるものであるが、本発明の説明には直接関わらないため、ロータリダンパー100の取り付け状態の説明は省略する。また、ロータリダンパー100は、ハウジング101とローター110とが相対的に回転するものである。したがって、本作動説明においては、ハウジング101を固定した状態でローター110が回転する場合について説明するが、ローター110が固定した状態でハウジング101が回転する場合であっても作動内容は実質的に同じである。
ロータリダンパー100は、図5に示すように、ローター110の各可動ベーン112が互に反対側の固定ベーン104側にそれぞれ位置した状態において、ローター110における筒状連結部114に図示破線矢印方向の回転駆動力が作用すると、内室111内における第1の領域E1および第2の領域E2内の各可動ベーン112がそれぞれローター110の回転方向と同じ回転方向に回転変位を開始する。この場合、内室111内における第1の領域E1および第2の領域E2内には、高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122がそれぞれ3:7の割合の分量で充填されている。
このため、第1の領域E1および第2の領域E2内の流動体120は、まず、高圧縮率流動体121が圧縮されるとともにオリフィス105の近傍に存在する高圧縮流動体121がオリフィス105を介して固定ベーン104の反対側の第2の領域E2および第1の領域E1にそれぞれ流通を開始する。これにより、ローター110は、回転開始直後は、高圧縮率流動体121の圧縮および前記他方の領域への流出による低トルクでの回転、すなわち、ダンパー機能が低減された状態で回転する。
次いで、第1の領域E1および第2の領域E2内においては、図6に示すように、第1の領域E1および第2の領域E2内での各可動ベーン112の回転変位(図示破線矢印参照)が進むにつれて圧力が高まり、圧縮された高圧縮率流体121がオリフィス105側に移動しつつ低圧縮流動体122が圧縮され始める。これにより、各可動ベーン112には、低圧縮率流動体122を圧縮するための反力および同低圧縮率流動体122をオリフィス105を介して固定ベーン104の反対側の第2の領域E2および第1の領域E1にそれぞれ流通させるための反力がそれぞれ作用する。
このため、ローター110は、低圧縮率流動体122の圧縮およびオリフィス105内の流通による高トルクでの回転、すなわち、ダンパー機能が発揮された状態で回転する。この後、ローター110は、各可動ベーン112が互に反対側の固定ベーン104側に位置するまでの間ダンパー機能を発揮した状態で回転する。すなわち、本発明に係るロータリダンパー100は、互いに圧縮率の異なる2つの流動体である高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122を用いることによってダンパー機能が低減された低減区間と有効に発揮される有効区間の2つの挙動で作動するツーモーションが実現されている。
そして、ロータリダンパー100は、各可動ベーン112が一方の固定ベーン104側から他方の固定ベーン104側に変位した後、反対方向に戻る回転変位を行う場合においても、前記と同様の挙動によってローター110が回転する。すなわち、ロータリダンパー100は、ローター110の回転開始から所定の回転変位区間においてダンパー機能が低減された状態で回転した後、ダンパー機能が発揮された状態で回転する。そして、ローター110におけるこれらのダンパー機能の低減区間および有効区間は、内室111内に充填される流動体120における高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122の各分量によって規定される。すなわち、高圧縮率流体121の分量はロータリダンパー100におけるダンパー機能の低減区間を規定し、低圧縮率流体122の分量はロータリダンパー100におけるダンパー機能の有効区間を規定している。したがって、ロータリダンパー100の製造者や利用者は、内室111内に封入する高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122の各分量を調節することにより、ロータリダンパー100におけるダンパー機能の低減区間および有効区間を自由に設定または変更を行うことができる。
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ロータリダンパー100は、ローター110が回転する際に可動ベーン112に抵抗を負荷する流動体120が相対的に圧縮率が高い高圧縮率流動体121と相対的に圧縮率が低い低圧縮率流動体122とを含んで構成されているとともに、これらの高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122が内室111内における可動ベーン112に対して互いに異なる2つの大きさの抵抗を生じさせるように各分量が互いに調整されている。これにより、ロータリダンパー100は、ローター110が回転するに際して高圧縮率流動体121が低圧縮率流動体122に比べて圧縮率が大きいため、主として高圧縮率流動体121が圧縮されている間ダンパー機能が低く抑えられる。そして、ロータリダンパー100は、高圧縮率流動体121がある程度圧縮された後に圧縮される低圧縮率流動体122の抵抗によってダンパー機能が発揮されてツーモーションが実現される。すなわち、本発明に係るロータリダンパー100は、ダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長が高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122の各分量で規定される。そして、この場合、ロータリダンパー100は、作動過程において内室111内を可動ベーン112および流動体120がそれぞれ変位するのみであるため、従来のロータリダンパーにおける機械的な接触音および衝突音を生じることなく静かに作動する。また、ロータリダンパー100は、内室111に封入する高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122の各分量を調整するだけでダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長を簡単に設定することができる。これらの結果、本発明に係るロータリダンパー100は、ダンパー機能の低減区間および有効区間の各区間長を簡単に変更することができるとともに作動音も静かにすることができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記各実施形態と同様の構成部分には対応する符号を付して、その説明は省略する。
例えば、上記実施形態においては、流動体120を構成する高圧縮率流動体121を空気で構成するとともに低圧縮率流動体122をシリコーンオイルで構成した。しかし、流動体120を構成する高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122は、ハウジング101内を回転駆動するローター110の可動ベーン112に対して負荷(トルク)を作用させることができる流動体であって、互いに異なる2つの圧縮率のうちの相対的に高い圧縮率を有する高圧縮率流動体と相対的に低い圧縮率を有する低圧縮率流動体とを含んで構成されていれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。そして、流動体120は、これらの高圧縮率流動体および低圧縮率流動体が可動ベーン112に対して互いに異なる2つの大きさの抵抗を生じさせるように各分量が互いに調整されていればよい。したがって、高圧縮率流動体121は、空気以外の気体(例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガス)や液体(例えば、水や油)などの流動性物質を用いることができる。また、低圧縮率流動体122は、シリコーンオイル以外の液体(例えば、水や油)などの流動性物質を用いることができる。これらの場合、高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122は、粘性を有している流動体であってもよい。
また、高圧縮率流動体121および低圧縮率流動体122の各分量の割合も、ロータリダンパー100に必要とされるダンパー機能の低減区間と有効区間に応じて適宜設定されればよい。この場合、ダンパー機能の有効区間を規定する低圧縮率流動体122は、流動体120の全体の好ましくは1割以上かつ9割以下、より好ましくは流動体全体の4割以上かつ8割以下の分量に設定するとよい。これによれば、ロータリダンパーは、ローターの可動区間における好ましくは9割未満かつ1割を超える回転開始位置、より好ましくは6割未満かつ2割を超える回転開始位置からの可動区間においてダンパー機能の低減区間を容易に設定することができる。
また、上記実施形態においては、ロータリダンパー100は、内室111に封入された流動体120が2つの固定ベーン104にそれぞれ形成されたオリフィス105を介して第1の領域E1と第2の領域E2とを相互に流通するように構成されている。この場合、ロータリダンパー100は、内室111における可動ベーン112の変位経路上にオリフィス105または可動ベーン112をバイパスして流動体120を流通させるバイパス通路を形成して構成することができる。例えば、図7および図8に示すロータリダンパー100においては、内室111の底部における可動ベーン112の変位経路上に可動ベーン112をバイパスして流動体120を流通させるための溝状のバイパス通路130を有して構成されている。これによれば、ロータリダンパー100は、可動ベーン112がバイパス通路130上を回転変位する際、可動ベーン112によって押された流動体120の一部がバイパス通路130を介して可動ベーン112の進行方向後側の領域にリークするため、ダンパー機能の低減区間におけるダンパー機能をより低減することができる。
また、このようなバイパス通路130を有するロータリダンパー100や上記実施形態におけるバイパス通路130を有さないロータリダンパー100においては、ハウジング101およびローター110のうちの少なくとも一方を樹脂材(例えば、POM樹脂やPEEK樹脂など)で構成することもできる。このように構成したロータリダンパー100によれば、ローターが回転駆動を開始した直後における高圧縮率流動体の圧縮によって内室内の圧力が急激に上昇することが緩和されるため、金属材料で構成された従来のハウジングおよびローターよりも剛性の低い材料でハウジングおよびローターを構成することができ、結果としてロータリダンパー100を軽量化することができる。
また、上記実施形態においては、ロータリダンパー100は、内室111に封入された流動体120が2つの固定ベーン104にそれぞれ形成されたオリフィス105を介して第1の領域E1と第2の領域E2とを相互に流通するように構成されている。これにより、ロータリダンパー100は、ローター110の2つの回転方向において同じ挙動、すなわち、ダンパー機能の低減区間と有効区間とを有して回転する。しかし、ロータリダンパー100は、オリフィス105に代えてまたは加えて一方向弁を採用することによってローター110の2つの回転方向のうち、一方の回転方向においてダンパー機能を発揮させるとともに、他方の回転方向においてダンパー機能を発揮させないように構成することができる。この場合、一方向弁は、流動体120の流通路を選択的に塞ぐボールで構成することができる。また、一方向弁をボールに代えて板バネ状の弾性体で構成することにより、ロータリダンパー100におけるダンパー機能の発揮量、すなわちトルク量を弾性体の変形量によって自動調整することもできる。
また、上記実施形態においては、ロータリダンパー100は、オリフィス105を固定ベーン104に形成して構成した。しかし、オリフィス104は、内室111内に封入された流動体120を第1の領域E1と第2の領域E2との間で相互に流通するように構成されていればよい。したがって、オリフィス105は、固定ベーン104以外の場所、例えば、可動ベーン112に設けることができる。これによれば、ハウジング101内において固定ベーン104を省略することができるため、ロータリダンパー100の構成を簡単にすることができる。また、オリフィス105の形状も、上記実施形態における溝状の他に孔状に形成することもできる。
また、上記実施形態においては、ロータリダンパー100は、ローター110に2つの可動ベーン112を設けて構成した。しかし、可動ベーン112は、内室111内において流動体120を押しながら回転変位するように構成されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ロータリダンパー100は、ローター110に1つまたは3以上の可動ベーン112を設けて構成することもできる。
E1…第1の領域、E2…第2の領域、
100…ロータリダンパー、101…ハウジング、102…可動片、103…連結用ピン、104…固定ベーン、105…オリフィス、
110…ローター、111…内室、112…可動ベーン、113…筒状連結部、114…プラグ、
120…流動体、121…高圧縮流動体、122…低圧縮流動体、
130…バイパス通路。

Claims (5)

  1. 流動体と、
    筒体で構成されて同筒体内に前記流動体を封入する内室が形成されたハウジングと、
    前記内室内における前記流動体を押しながら回転変位する可動ベーンを有して前記ハウジングに対して相対回転可能に支持されたローターと、
    前記内室内にて前記流動体の流動を制限しつつ流通させるオリフィスとを備えたロータリダンパーにおいて、
    前記流動体は、
    互いに異なる2つの圧縮率のうちの相対的に高い圧縮率を有する高圧縮率流動体と相対的に低い圧縮率を有する低圧縮率流動体とを含んで構成されており、
    前記高圧縮率流動体および前記低圧縮率流動体は、
    前記内室内における前記可動ベーンに対して互いに異なる2つの大きさの抵抗を生じさせるために各分量が互いに調整されていることを特徴とするロータリダンパー。
  2. 請求項1に記載したロータリダンパーにおいて、
    前記高圧縮率流動体は、気体であり、
    前記低圧縮率流動体は、液体であることを特徴とするロータリダンパー。
  3. 請求項1または請求項2に記載したロータリダンパーにおいて、
    前記流動体は、
    前記低圧縮率流動体が前記流動体全体の1割以上かつ9割以下を占めることを特徴とするロータリダンパー。
  4. 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパーにおいて、
    前記内室は、
    前記可動ベーンの変位経路上に前記オリフィスまたは前記可動ベーンをバイパスして前記流動体を流通させるバイパス通路を有することを特徴とするロータリダンパー。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパーにおいて、
    前記ハウジングおよび前記ローターのうちの少なくとも一方は、樹脂材で構成されていることを特徴とするロータリダンパー。
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