JP2014004490A - 賦形シート及びこれを用いた吸収性物品 - Google Patents

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【課題】各種用途に用いうる、繊維から構成される賦形シートを提供する。また、吸収性物品の高い液体等の吸収保持性を実現し、排泄された尿や軟便等が表面を伝って拡がり漏れることを抑制ないし防止し、排泄液等が逆戻りして肌に付着することを抑制して着用者の肌をカブレ等から保護することができる吸収性物品の表面シートとして好適に使用しうる賦形シートを提供する。また、上記の液体等の吸収機能とともに、柔軟性及びクッション性を有し肌触りが良く、ドレープ性を示してその良好な触感が長時間維持される吸収性物品の賦形シートを提供する。
【解決手段】繊維で構成されたシートであって、一方の面側に、多数の凸部3と、該凸部3同士を連結する障壁状連結部5とを有し、前記障壁状連結部5の繊維密度が前記凸部3の繊維密度より高い賦形シート。
【選択図】図1

Description

本発明は吸収性物品の表面シート等に好適に用いうる賦形シート及びこれを用いた吸収性物品に関する。
生理用ナプキン、パンティーライナー、及び使い捨ておむつ等といった吸収性物品において、賦形シートを適用したものがある。例えば、表面シートとして、シート状親水処理複合繊維不織布の表面に、熱エンボス加工により凹凸部を形成し、該凸部の先端上面部分をフィルム状化して、截頭円錐体状の凸部を設けたものが開示されている(特許文献1参照)。この表面シートは、該凸部が個々に独立しており、該凸部の先端部ではフィルム状化していることから繊維密度が非常に高い。
また、2層の不織シートを複数の間欠的に設けたピンエンボスにより接合し、下層のシートを熱乾燥により選択的に収縮させて、上層のシートを波打つように離間させた表面シートが開示されている(特許文献2参照)。さらに、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及びこれら両シート間に介在された液保持性の吸収体を具備し、肌当接面に、多数の凸部が規則的に形成された凹凸領域、及び該凹凸領域における凸部よりも高さの低い凸部が形成されているか又は凸部が形成されていない非凹凸領域を有する吸収性物品が開示されている(特許文献3参照)。この吸収性物品において前記凹凸領域は、肌側に配される第1層と吸収体側に配される第2層とが積層されて所定パターンの接合部で部分的に接合された積層シートから形成されており、該凹凸領域における多数の前記凸部は、第1層の前記接合部以外の部分が、第2層の収縮により凸状に変形して形成されたものである。特許文献2および特許文献3の表面シートは、下層の収縮によって上層の凹凸が形成されていることから、上層の繊維密度は均一となっている。
このほか、上層シート及び下層シートからなる表面シートであって、内部が空洞になっている凸部を有し、該凸部の底部が矩形であり、凸部全体の形状として直方体状又は截頭四角錐体状にされているものが開示されている(特許文献4参照)。
特開平11−347062号公報 特開2002−165830号公報 特開2003−275239号公報 特開2004−174234号公報
本発明は、各種用途に用いうる、繊維から構成される賦形シートの提供を目的とする。また、吸収性物品の高い液体等の吸収保持性を実現し、排泄された尿や軟便等が表面を伝って拡がり漏れることを抑制ないし防止し、排泄液等が逆戻りして肌に付着することを抑制し着用者の肌をカブレ等から保護することができる吸収性物品の表面シートとして好適に使用しうる賦形シートの提供を目的とする。また、本発明は上記の機能とともに、柔軟性及びクッション性を有し肌触りが良く、ドレープ性を示してその良好な触感が長時間維持される賦形シート及びこれを用いた吸収性物品の提供を目的とする。
上記の課題は、繊維で構成されたシートであって、一方の面側に、多数の凸部と、該凸部同士を連結する障壁状連結部とを有し、前記障壁状連結部の繊維密度が前記凸部の繊維密度より高い賦形シートによって解決された。
本発明の賦形シートは、各種用途に用いることができる。また、吸収性物品等の表面シートとして好適に使用することができ、高い液体等の吸収保持性を発現させ、とくに排泄された尿や軟便等が表面を伝って拡がり漏れることを抑制ないし防止し、排泄液等が逆戻りして肌に付着することを抑制し着用者の肌をカブレ等から保護することができる。また、本発明の賦形シートは上記の機能とともに、柔軟性及びクッション性を有し、肌触りが良く、ドレープ性を示してその良好な触感が長時間維持されるという優れた作用効果を奏する。
本発明の賦形シートの一実施形態における表面シートの要部を一部断面により模式的に示す斜視図である。 図1の賦形シートにおけるII−II線断面を拡大して示す断面図である。 図1の賦形シートにおけるIII−III線断面を拡大して示す断面図である。 図1の賦形シートにおけるIV−IV線断面を拡大して示す断面図である。 6点エンボスパターンを座標化して示すパターン図である。 本発明の賦形シートの製造方法の一実施態様を説明するための工程説明図である。 本発明の賦形シートにおける別の実施形態としての表面シートを一部切欠して模式的に示す斜視図である。 図7に示した賦形シートにおける領域VIIIを拡大して示す断面図である。 図7に示した賦形シートおけるIX−IX線断面を拡大して示した断面図である。 4点エンボスパターンを座標化して示すパターン図である。
以下、本発明を、その好ましい実施形態を示す図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の賦形シートの好ましい実施形態である吸収性物品の表面シートの要部を模式的に示す斜視図である。図2は図1の賦形シートにおけるII−II線断面を示す断面図である。図3は図1の賦形シートにおけるIII−III線断面を示す断面図である。図4は図1の賦形シートにおけるIV−IV線断面を示す断面図である。以下、本発明の賦形シートについて、上記図面に示された賦形シートの上層シート側の面を着用者の肌面に向けて用いる実施態様につき主に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
本実施形態の表面シート10は上層シート1及び下層シート2を有する。この表面シート10は例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品に適用することが好ましく、下層シート2の下面2b側に吸収体(図示せず)を配し、上層シート1の上面1a側を着用者の肌に直接当てて使用することができる。
本実施形態の吸収性物品の表面シート10の上層シート1側、すなわち着用者の肌に当接する側には、多数の凸部3が千鳥状に形成されている。上記の千鳥状に配置された凸部3は、その隣り合う2つが障壁状連結部5(第1の連結部11及び第2の連結部12)により連結されている。このとき本実施形態においては、連結された凸部3と第1の連結部11とが直線状の凸部列13を多数なしている(図1参照)。各凸部列13は並列し、凸部3ないしは第1の連結部11に挟まれるようにして、凹部4と第2の連結部12とを有する折れ線状の溝部8が形成されている(本発明においては、凸部及び第1の連結部が配置されていない領域を溝部という。なお、後述する別の実施形態の表面シート20においては凹部4がそのまま溝部8をなす形態とされている。)。そしてこの凸部3はドーム形状の空間6を内部に保持している。凹部4は、多数の凸部3の間に、上記の障壁状連結部5を避けるようにして配置されている。なお、多数の凸部は、賦形シートに凹凸が形成され、その立体賦形シートが所望の機能を示すよう複数の凸部が配置されていればよく、シート内での凸部の具体的な数ないし密度や分布が限定されるものではない。
上述のようにして、本実施形態の表面シート10は、凸部3と第1の連結部11とがなす山脈状の凸部列13が、緩やかに曲がった渓谷状の溝部8を介して並設されている(図1参照)。この溝部表面は平坦ではなく、隣り合った凸部3に連結する第2の連結部12が配され、起伏のある表面形状とされている。本実施形態の表面シート10は、このような凸部3、凹部4、障壁状連結部5(第1の連結部11及び第2の連結部12)、溝部8がなす特有の外表面形状により、排泄された尿や軟便、経血や下り物等を簡単には拡がらせず高い面方向への漏れ防止性を示すことができる。さらに詳しくいうと、表面シート10の肌面側に液体や半固形物が排泄されたとき、単に凸部を配しただけのシート上ではこの排泄液等がもつ流動性のため凸部の周辺を回り込んでシート上面に広く拡がっていこうとするが、本実施形態の表面シート10には凸部3が第1の連結部11を介して連結された山脈状の凸部列13が並列して配設されているため、この凸部列13に直交する方向への排泄液等の移行を極めて効果的に遮断することができる。また、凸部列13に並行する方向の排泄液等の拡散についても、上述した凹部4と第2の連結部12とによる溝部8内の起伏が移行の障害となり効果的に漏れにつながるような拡がりを堰止めることができる。
上述したような凸部列13に対して直交する方向と並行する方向とにおける排泄液等の拡散防止性の相違を吸収性物品に求められる機能に応じて効果的に使い分けてもよい。例えば、生理用のナプキンなどにおいて幅方向の横漏れ防止性が縦方向(長手方向)より重視されるようなときに、ナプキンの長手方向に凸部列13が延びるように表面シート10を配設し、経血等の横漏れを確実に防止することができる。しかも、長手方向には適度に経血等を移行させ、その下に配した吸収体の液吸収領域を広く有効に利用することができる。
本実施形態の表面シート10における凸部は、その内部に空間6を保持するが、この内部空間とは凸部の裏側に形成された凹状の空間をいい、上層シート1の下面1bと下層シート2の上面2aとが機能的な距離を維持して離間してなした空間であることが好ましい。内部空間6の下層シート2の上面2aからの最大離間距離hは特に限定されないが0.4〜2.8mmとすることが好ましい。このとき表面シートが上層シートのみにより構成される場合には、距離hは下層シートではなく例えば吸収体の肌側面と上層シート下面1bとの離間距離であってもよい。本実施形態の表面シート10においては、軟便等の半固形物の排泄があると、表面シートの外表面においては、繊維密度の低い凸部3から内部空間6取り込まれやすく、また、溝部8ないし凹部4の底の方に移行して留まり、その後上層シート1の繊維間を通過しながら軟便等が内部空間6に取り込まれていく。ここで内部空間6に収納された軟便等は次第に表面シートの下側に配される吸収体等によって、その水分が吸われていき、逆戻りしない状態に乾燥固化される。このような作用により、本実施形態の表面シート10においては、軟便や下り物に含まれる高粘性の液体や半固形物の排泄があっても、極めて良好な着用感及び肌の清潔な状態が長時間にわたって保たれる。
本実施形態の表面シート10において凸部3の高さhは特に限定されないが、0.6〜3.0mmであることが好ましい。また本実施形態において凸部の高さhより第1の連結部11の高さhが低くなるようにされており、凸部3と第1の連結部11の高さの比(h/h)は0.3〜0.8の範囲であることが好ましい(図2参照)。本発明において障壁状連結部5(第1の連結部11及び第2の連結部12)の形状は排泄液等を所望の程度堰き止めその移行を妨げる機能を示す形状であれば特に限定されず、その断面形状が矩形でなくてもよく、例えば本実施形態のように丸みを帯びた山形のものであってもよい(図1、図3参照)。
また本実施形態において、第2の連結部12の高さhは第1の連結部11の高さhより低くなるようにされており、両者の高さの比(h/h)は0.2〜0.9の範囲であることが好ましい(図2、図4参照)。
本実施形態における凸部3の形状について詳しくいうと、凸部3は機能的に頂部3a、肩部3b、側部3cに区分することができ(図3参照)、凸部3は頂部3aから肩部3bを通り側部3cにかけて丸みを帯びたドーム形の形状を有する。このように、丸みを帯びた凸部形状とすることにより、着用者の運動等により吸収性物品が多少ずれたときにも、肌に対して擦れる感じが抑えられ、なめらかな触感が得られる。そして特に凸部の肩部3bから頂部3aにかけて緩やかな曲線で突起した形状を有するため、着用者の肌との接触面積が小さくなる。このように表面シートと着用者との接触面積を減少させることにより、液体を一度吸収したシートが面接触してベタつく感じを大幅に低減し、サラッとした状態を実現する。また、見た目にも柔らかく、なめらかで、しかも優美な印象を与える。上述のような表面シートの、柔らかさ、なめらかさ、サラッとした触感、ないしはそのような印象を与える見た目の良さは、凸部を矩形基調の直方体状又は截頭四角錐体状ないしは截頭円錐体状としたのでは得がたい。また、本実施形態の表面シート10においては、凸部3の内部には空間6があり、内部に空気を保持した特有のクッション性が得られ、一層柔軟でソフトな肌触りが実現される。
本実施態様においては、凸部側部3cは、凸部の高さhの略中間点より下方(非肌面側)にあたる部分に配されている。そして凸部側部3cは溝部表面ないし凹部へと下る凸部の裾野にあたる位置にあり、この周辺において軟便等の粘性のある液体ないし半固形物が一時溜まる。このときに、凸部の側部3cの繊維密度を低くし細孔もしくは薄部を設けることが、そこを介して高粘性液等が効果的に通過し凸部の内部空間6に速やかに収納し隠蔽しうる点で好ましい。
本実施形態の表面シートは、凸部3を有する上層シート1と、該凸部3が突出する面の反対面側に配されたフラットな下層シート2とでなり、前記上層シート1と前記下層シート2とが前記上層シートの凹部4の少なくとも一部でエンボスにより接合されている。ただし、この接合方法は特に限定されず別の方法によるものでもよい。なお、本発明においてシートが「フラット」であるとは、シート材に凸部をなす賦形加工が施されておらず全体として実質的に平坦であることをいい、別のシート材との接合等による凹凸や、シート成形による不可避的な表面凹凸はあってもよい。これに対してシートが賦形されているとは、逆にシートがフラットではないことをいい、例えば自然形状のシート表面において、所定方向からの光の照射により凸部の陰影を目視認識しうる程度に起伏が形成されていることをいう。
凹部の幅wは特に限定されないが、隣接する構造部の距離をwとしたときに、この距離wと凹部の幅wとの比(w/w)が0.1〜0.7となるようにすることが好ましい。具体的な凹部の幅wとしては0.5〜2.0mmであることが、通常の吸収性物品の寸法との関係を考慮したときに実際的である。本実施形態の表面シートにおいて、第1の連結部11の幅Wは凸部3の幅Wより細いものとされており、例えば第1の連結11の幅Wと凸部3の幅Wとの比(W/W)を0.2〜0.8の範囲とすることが好ましい。この幅の比の好ましい範囲は、第2の連結部の幅W(図せず)との比(W/W)についても同様である。凸部3の具体的な幅Wは2〜6mmであることが実際的である。
本実施形態の表面シート10において溝部8には第2の連結部12が配設されている(図1及び図4参照)。本実施形態において、上層シート1の第2の連結部12の下面は下層シート2と接しているがエンボス接合はされていない。これに対し本実施形態においては、第1の連結部11の内部にはトンネル状空間7があり、これにより凸部3の内部空間6が連繁されているが、このトンネル状空間7はなくてもよい(図3参照)。このように、千鳥状の凸部3の配列中に高さや幅ないし内部空間の接合状態の異なる第1の連結部11や第2の連結部12を配設することにより、単に凸部のみを形成しただけではなし得ない漏れ防止性を発揮しうることは先に述べたとおりである。
さらにこのようなシートの厚みの異なる部分をネットワーク化して配置したことにより、本実施形態の表面シート10はドレープ性を発現しうる。これにより複雑な起伏を有する肌表面に対してシート表面がやわらかく追従し、その表面の起伏形状が変わってもその追従状態が維持される性質を示しうる。例えば、股間部のように肌の起伏の大きい部分に当接して用いるときにも表面シート10と肌との間に隙間を与えずにフィットするものとすることができる。また、着用者の運動等により肌の起伏状態が変化しつづけるようなときにも、その起伏の変化に追従して表面シートは変形し良好なフィット性が持続されうる。
本実施形態の表面シート10において、障壁状連結部5(第1の連結部11、第2の連結部12)の繊維密度Dは凸部の繊維密度Dより高くされている。そして、さらに凹部4の繊維密度Dが障壁状連結部5の繊維密度Dより高くなるようにされている。
本発明において、各部の「繊維密度」は、形状を変化させない状態において(例えば荷重をかけずに非接触にて)、各部の頂部の単位面積を光学顕微鏡にて観察し、所定のシート(本実施形態においては上層シート)部分または該シート表面の繊維の本数を測定することによって算出する。
障壁状連結部5の繊維密度Dと凸部の繊維密度Dの比D/Dは0.8〜0.3が好ましい。また、凹部4の繊維密度Dと障壁状連結部5の繊維密度Dの比D/Dは0.6〜0.1が好ましい。なお、障壁状連結部5の繊維密度Dは、第1の連結部11の密度Do1と第2の連結部12の密度Do2とに差があるときには、両者の平均値をいう。本実施形態においては第1の連結部の密度Do1が第2の連結部の密度Do2より低いことが好ましい。
このように表面シート10内の各構造部において繊維密度に勾配を設けることにより、例えば粘度の低い液体を高繊維密度にされた方へと、すなわち凸部から連結部を経て凹部4及びその周辺へと素早く移行させることができる。これにより表面のシート10の非肌当接面側に液体を引き込み、その下方に備えられる吸収体に速やかに液を移行させ吸収保持することができる。これに対し、軟便等の高粘性液ないし半固形物については、大ドームをなす凸部3の頂部周辺が低密度のためここを透過しやすく空間6への収納効果が高められる。このようにして、上記の繊維密度の勾配の示す液体引き込み性と、特有の表面シート形状が示す漏れ及び逆戻り防止性とが相互に作用し、粘性の異なる排泄物が共存するときにも、それらを共に的確に吸収保持することができる。また、肌に直接触れる凸部3の繊維密度が低いので、排泄された尿や軟便等が繊維間に残留しにくくなる。その結果、表面の液残りやべとつきを効果的に抑制し、肌に接する凸部頂部3aで特にサラッとした触感が得られる。また、肌を清潔な状態に維持して乳幼児や女性の肌をカブレ等から保護することができる。
本実施形態の表面シート10は、上記のように凸部3が千鳥状に配置されている。ここで千鳥状とは、各列の凸部3が等間隔に配置され、隣接する列どうしで互いに凸部が(好ましくは半ピッチ)ずらされている状態をいう。さらに詳述すれば、各列の凸部3をこの列に直交する方向に投影したときに、特定の列の各凸部3の投影像の間に(好ましくは中間に)、これと隣接する列の凸部の投影像が配置される状態をいう。ただし、製造上不可避的なずれなど、わずかに上記の配列がずれている場合も含む意味である。このように凸部3を千鳥状に配置することにより、着用者の肌に当接する圧力を均一に分散し、良好なクッション性を実現することができる。また液体の吸収保持においても均一にシート全体においてその作用が発揮されるため好ましい。
本実施形態の表面シート10は上層シート1及び下層シート2の2層構造とされているが、上層シート1のみにより構成された表面シートとしてもよい。その場合の使用態様としては、例えば上層シート1からなる表面シートを、その非肌面1bが接するように吸収体上面に積層して用いることが挙げられる。このとき、上層シート1からなる表面シートの裏面と吸収体上面とを接合してもよい。このように上層シート1のみからなる表面シートとすることで、肌面側に配された凸部3及びこれに対応する空間6、さらにはこれらが障壁状連結部5により連結されたことによる弾力性や柔軟性は上述の2層構造のものと同様に発揮されうる。また、液体や軟便等の透過処理機能についても、ドーム状空間6がなす作用を吸収体等との組み合わせにより発揮しうる。このとき特に空間6の内部に隠蔽された軟便等が直接吸収体に接するため水分が吸収体に移行しやすく、速やかに軟便等が乾燥していく点で好ましい。また、凸部頂部3aに対して繊維密度が高められた障壁連結部5や凹部4に移行した液が下層シート2を介さずに、直接吸収体に吸収保持される点でも好ましい。
図5は本実施形態の表面シートを平面視したときの6点エンボスαの配置を模式化して示したパターン図である。同図においては12行×12列のマス目によりエンボスパターンが示されており、6点を1組としたエンボスパターンの各構成要素として示すと下記のとおりとなる。エンボス(1,2),(1,4),(3,1),(3,5),(5,2),(5,4)の6点で第1の6点パターン要素(第1要素)が構成されている。ここで( )内の数値は、(行番号,列番号)を表す。そして右隣りの第2要素は、エンボス(1,8),(1,10),(3,7),(3,11),(5,8),(5,10)の6点で構成されている。さらに第1要素の下方の第3要素は、第1要素の下部の2点(5,2),(5,4)を共有するようにして、(7,1),(7,5),(9,2),(9,4)とともに6点で構成されている。さらにこの右の第4要素は、エンボス(3,5),(3,7),(5,4),(7,5),(5,8)を第1〜3要素のいずれかと共有し、エンボス(7,7)と合わせた6点で構成されている。このようにして各要素の一部(少なくとも2点)を互いに共有しつつ、6点パターンが広く繰り返され構成されている。
ここで、上記6点エンボスパターンを表面シート10の形態に合わせていうと、エンボスαが凹部4を構成する。そして、第1要素でいうとその中心になるβが凸部3(凸部頂部3a)をなし、その前後の位置γに第1の連結部11が配される。このとき、位置εには第2の連結部12が配設される。さらに第3要素の中心のβにも凸部3が配され、第1要素の凸部3と位置γに形成された第1の連結部11により連結される。このようにして、横軸の列3(座標)において延びたβとγとがなす列が表面シート10における凸部列13をなす。同様の凸部列13が列6(座標)、列9(座標)...と繰り返され、面方向に凸部3が千鳥状に広がり、さらに障壁状連結部5、凹部4とがなす特有の表面形状の表面シート10が構成される。
本実施形態の吸収性物品の表面シート10において、上層シート1もしくは下層シート2を構成する繊維は特に限定されず、例えば1.0〜7.8dtexのものを用いることが好ましい。本実施形態においては上層シート1及び上層シート2をそれぞれ1層構造のものとして示したが、2層以上にしてもよく、また各層の間及び/又は外側に他の機能性の層を設けてもよい。上層シート1及び下層シート2の坪量は特に限定されないが、通常の吸収性物品に適用することを考慮すると上層シート1及び下層シート2の坪量がそれぞれ10〜40g/mの範囲にあることが実際的である。
上層シート1及び下層シート2として不織布を用いることが好ましい。この不織布としては通常の不織布を使用することができる。例えばカード法により製造されたヒートボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、上層シート1と下層シート2とを後述するように熱融着によって接合する場合には、前記不織布に熱融着繊維が含まれることが好ましい。熱融着繊維としては、PET/PE、PP/PEなどの芯鞘構造のものが好ましい。また、前記不織布には、界面活性剤等を用いた親水化処理を施すことが好ましい。上層シート1及び下層シート2の構成繊維の種類のうち、好ましい組み合わせはPET/PE繊維どうしの組み合わせである。
次に、本発明の賦形シートとして好ましい本実施形態の吸収性物品の表面シート10の好ましい製造方法について図面を参照しながら説明する。図6は本実施形態の表面シート10を製造する一実施態様を模式的に示す工程説明である。同図に示すように、まず上層シート1を原反ロール(図示せず)から繰り出し、これとは別に下層シート2を原反ロール(図示せず)から繰り出す。上層シート1及び下層シート2はそれぞれ、そのMD方向(方向d及びd)に沿って繰り出される。ここでMD方向とは不織布等のシート材が製造時に流れる方向をいい、「Machine Direction」の略語であり、単にMDと表記してその方向を示すことがある。これに対して、CD方向とは上記MD方向に直交する方向であり、「Cross Direction」の略語であり、単にCDと表記してその方向を示すことがある。
繰り出された上層シート1を、周面が凹凸形状となっている第1ロール51と、その凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロール52との噛み合わせ部Pに噛み込ませて上層シート1を凹凸賦形する。第1ロール51における各歯車の歯溝部には吸引孔(図示せず)が形成されていることが好ましい。この歯溝部は、第1ロール51の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1ロール51(回転方向:矢印d)と第2ロール52(回転方向:矢印d)との噛み合い部Pから上層シート1と下層シート2とを接合した表面シートを送り出す部分Pに至るまで吸引されるように制御されていることが好ましい。これにより、第1ロールと第2ロールとの噛み合いによって凹凸賦形された上層シート1は、吸引孔による吸引力によって第1ロール51周面に密着したまま、その凹凸賦形された状態が保持される。上記周面に凹凸を有するロール51、52については、例えば特開2004−174234号公報の図2〜5に記載のものを用いることができる。
合流部Pでは、上層シート1を第1ロール51の周面に吸引密着させた状態で、別に供給されている下層シート2と積層する。ここで両シートを第1ロール51と第3ロール53とで挟圧することが好ましくい。第3ロール53としては凹凸を有しないアンビルロールを用いることが好ましく、第3ロール53のみを所定温度に加熱しておくことが好ましい。これによって、第1ロール51の歯車の凸部先端に位置する上層シート1と下層シート2とが熱融着によって接合される。この押圧接合により表面シートとしたときに凹部4が形成される。一方、歯車の凹部においては上層シート1及び下層シート2は挟圧されず、熱融着が起こらず凸部3が形成される。すなわち、本実施態様においては第1ロール51と第2ロール52とによるシート賦形において圧熱加工はしていないため、凸部3の頂部において柔らかさが保たれる。したがって表面シートとして用いたときに、凹部4となる部分においては加熱狭圧され不織布繊維が熱溶融し多少硬化していても、凸部3は柔らかく突出しているため、硬い部分が直接肌に当接することなく良好な触感が実現される。そして、上記の凹部4に挟まれるようにして第1の連結部11と第2の連結部12となる部分が賦形され、各凸部3が連結されるように配される。
本実施態様の製造方法においては、上層シート1と下層シート2とが貼り合わされた複合シートが、第1ロール51及び第4ロール54によって挟まれた部分Pで加熱挟圧される。このとき第4ロール54は第3ロール53と同様に外周に凹凸を有さないアンビルロールであることが好ましく、所定の温度に加熱されていることが好ましい。このようにして、しっかりと固定された接合部が形成され、凸部の形状安定性が維持される。
本実施形態の吸収性物の表面シートを製造する別の実施態様として、下層シート2を用いず、上層シート1のみを用い、この上層シート1に凸部3と凹部4となる凹凸を賦形することが挙げられる。このとき、第1〜第4のロール(51,52,53,54)を用いる点で図6に示した実施態様と共通する。しかし、凹部4において他のシートと接合されずに、第1ロール51と第3ロール53もしくは第4ロール54とで加熱狭圧され、上層シート1の不織布繊維が熱溶融され硬化した状態にされる。このようにして1層において凹凸形状に屈曲させられ、上述した特定の機能を示す凸部3及び凹部4を有する表面シートが製造される。
ここで例えば、ロール51の歯51aを図5に示したパターン図においてエンボスαとして示した部分に配置し、ロール52の歯52aを各パターン要素の中心となる部分βに配置して、上述した6ポイントシールパターンの表面シートとすることができる。これにより、上述した歯51aが凹部4を賦形し、歯52aが凸部3を内部空間6の側から賦形するようにして表面シート10とすることができる。このとき、図5に示したパターン図における位置γに第1の連結部11を、位置εに第2の連結部12をなすようにMD方向に所定のテンションをかけてもよい。
図7は本発明の賦形シートにおける別の実施形態(実施形態2)としての表面シート20を一部切欠して模式的に示す斜視図である。図8は図7の賦形シートにおける領域VIIIを拡大して示す断面図である。図9は図7の賦形シートおけるIX−IX線断面を拡大して示した断面図である。なお、本実施形態2の表面シート20において、先に述べた本実施形態1の表面シート10と機能的に共通する構造部や寸法線等は、同じ符号を付して示した。
本実施形態2の表面シート20においては、千鳥状に配置された凸部3がその四方に障壁状連結部5を有し、各凸部3が互いにこの四方の障壁状連結部5により隣接する凸部3と連結されている。上記四方の障壁状連結部5は、前記凸部3をシート面方向に略四等分する、すなわち凸部3を中心にそれぞれ約45°の角度をなす位置に配されている。このようにして表面シート20の上層シート1側(肌面側)に、あたかも多数の山が四方の尾根でつらなった網目状の山脈のような特有の表面形状が形成されている。ここで、上層シート1と下層シート2とが凹部4に形成されたエンボスにより間欠的に接合されているが、上記凹凸賦形された上層シート1のみで表面シートが構成されていてもよい。
本実施態様2において凸部3は上層シート1に設けられた肌側面に突出するように賦形された部分であり、図8に示した断面においては2つの凹部4の間に挟まれた状態で凸部3が形成されている(図8参照)。そして各凸部3は機能的に、頂部3a、肩部(稜)3b、側部3cに区分され、特に頂部3aから肩部3bにかけて丸みを帯びた略山形の形状を有する。他方、図9に示す断面においては、隣接する各凸部は障壁状連結部5により連結されている。このとき凸部3は頂部3a及び肩部3bを有するが、同断面において側部3cは障壁状連結部5と区別されず一体化され連続した状態になっている。そして障壁状連結部5は内部が繊維で満たされた状態となっている。本実施形態において、上層シート1と下層シート2とは障壁状連結部5の領域において接合されていないが、機能的に両シートは接触していることが好ましい。ただし、障壁状連結部5が有する各作用を維持する範囲で多少の間隔をおいて両シートが接触しない状態であってもよい。なお、図7に示したX−X線断面(断面図としては図示していない。)も、図9に示した断面と同様に凸部3が障壁状連結部5を介して連結された形状となる。
本実施形態2の表面シート20において、幅w及び幅wの寸法並びにそれらの比(w/w)の好ましい範囲は、先に述べた本実施形態1におけるものと同様である。ただし本実施態様2における、図9の断面における凸部の幅wは2〜4mmであることが好ましく、連結部の幅wは0.5〜2mmであることが好ましい。また、凸部内部のドーム状空間6における最も広い部分における間隔h、凸部3の高さh、障壁状連結部5の高さh、凸部3と障壁状連結部5の高さの比(h/h)についても本実施形態1と同様である。また、凸部頂部3aの密度D、障壁状連結部5の密度D、凹部の繊維密度Dについても、その好ましい範囲は先に述べた本実施形態1と同様である。
本実施形態2の表面シート20は、上述のような特有のシート外表面形状及び内面形状を有しており、尿や軟便等の面方向の拡がりを防ぐことができる。また、凸部3、障壁状連結部5、凹部4のもつ繊維密度の勾配がなす相互作用によりサラッとした肌触りを実現しうる。さらに、特有のシート内部空間と上記外表面形状がなす空間的ネットワークにより軟便等の処理性に優れ、高いドレープ性を示すものとすることができる。これらの作用については先に述べた本実施形態1と共通する。
本実施形態2における特有の作用として、障壁状連結部5が凸部3の四方に配されたため、軟便や尿等の排泄液等の拡散防止作用を凸部3の四方のすべてにおいて発揮しうる。また内部空間6が個々に独立しているため一度内部に保持された軟便等が面方向にひろがることを一層効果的に抑制しうる。このため、例えば軟便等を極力一箇所に留めて、面方向への広がりを厳格に抑制したいときには、本実施形態2の表面シートを吸収性物品に適用して使用することが好ましい。
本実施形態2の表面シート20は、先に述べた本実施形態1の表面シート10と同様にして製造することができ、例えば図6に示した工程を経て製造することができる。したがって、例えば凹部4をなすようロール51の歯51aを図10に示すようなエンボスαが4点で1つのパターン要素をなす4ポイントシールパターンに配列する。そしてロール52の歯52aを上記4点からなるパターン要素の中心位置βになるように配置し凸部3を内部の空間6の方から賦形する。このようにして、両方の歯51a及び52aを噛み合わせるようにして賦形して、位置γに障壁状連結部5を有する4ポイントシールパターンで賦形した表面シート20が得られる。なお、図10においてはエンボス(1,3)(3,1)(3,5)(5,3)の4点がなす第1要素についてのみ、凸部3(凸部頂部3a)をなす位置β及び障壁状連結部5をなす位置γを示したが、本実施形態においては、その他のエンボス要素においても同じように位置α、β、γがなす凸部3、連結部5、及び凹部4の構造が広く面方向に繰り返されている。
上記においては、本発明の賦形シートについて、その好ましい実施形態である吸収性物品用の表面シートにつき主に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば本発明の賦形シートはメカニカルフックとの系合に必要な部分に配するフック系合用シート、掃除用シート、皮膚清拭用シート、傷保護シート、クッキングシート、調理用油吸収シート等、またはこれらを構成するシート材料として用いることが好ましい。
本発明の賦形シートは、使い捨ておむつのほか、ナプキン及びパンティーライナー等の各種の吸収性物品に好適に用いることがきる。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
1.おむつ試験体の作製
(実施例1)
上層シートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtex×51mmの芯鞘型複合繊維6g/mと4.4dtex×51mmの芯鞘型複合繊維12g/mを積層した坪量18g/mのエアースルー不織布を用いた。上層シートは賦形加工により、MD方向に折り曲げられ目付が上がるため賦形後は22g/mになる(上層の繰出し速度は、下層シート繰出し速度の約20%増であった)。下層シートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量18g/mのエアースルー不織布を用いた。これらのシートを用い、図6に示す装置を用いて、図5に示す6点エンボスパターンの表面シート(試験材1)を作製した。得られた表面シート(試験材1)は図1〜図4に示した特有のシート形状を有し、凸部の高さhはおよそ1.7〜2.1mmであり、障壁状連結部の高さhはおよそ0.6〜1.0mmであった。光学顕微鏡((株)キーエンス社製,デジタルHFマイクロスコープVH−8000(商品名)により試験材1の所定のシート材部分を拡大撮影し(倍率:150倍)、この顕微鏡画像より求めた試験材1の凸部と障壁状連結部との繊維密度の比(Dt/Do)は約0.5であった。
ティッシュで包まれた100×150mmの吸収コア(パルプ200g/m、吸収ポリマー280g/m)と、その吸収コア上のサブレイヤー(40g/mのエアスルー不織布)と、その上の前記表面シート(試験材1)とからなる吸収体1を作製した。
100×330mmの外層シート(不織布と透湿シートの複合)の透湿シート上に、前記得られた100×150mmの吸収体1を載せ、おむつ試験体1を作製した。
なお、おむつ試験体1において、吸収体のパルプや吸収ポリマー、注入する人工尿が漏れないように、吸収体1周辺について吸収体1表面を10mm程度を覆うように、外層シートで封じた。
(比較例1)
上層シートを構成する繊維ウェブとして、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.0dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量10g/mに、下層シートを構成する繊維ウェブとして、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる5.6dtex×51mmの芯鞘型複合繊維と、芯がポリプロピレンで鞘がポリエチレンからなる5.6dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を同量混合した坪量15g/mを積層したエアースルー不織布を用いた。これらのシートを積層させ接合し、比較のための表面シート(試験材2)を得た。表面シート(試験材2)の厚みはおよそ1mmであった。
前記表面シート(試験材1)の代わりに、表面シート(試験材2)を用いる以外は実施例1と同様な構成からなる吸収体2を作製した。
100×330mmの外層シート(不織布と透湿シートの複合)の透湿シート上に、前記得られた100×150mmの吸収体2を載せ、おむつ試験体2を作製した。
なお、おむつ試験体2においても実施例1と同様に、吸収体のパルプや吸収ポリマー、注入する人工尿が漏れないように、吸収体2周辺表面を10mm程度を覆うように、外層シートで封じた。
2.大人前腕部での肌水分パッチ試験
上記得られた実施例1のおむつ試験体1及び比較例1のおむつ試験体2をパッチとし、モデル試験として、下記(1)〜(3)の手順により大人前腕部におけるパッチ後の肌水分量(肌の湿り)評価を行った。
(1)パッチとしたおむつ試験体1及び2それぞれに、40℃に保温した人工尿20mlを注入した。
(2)片腕に比較例1のおむつ試験体2のパッチ、もう片腕に実施例1のおむつ試験体1のパッチを巻きつけた。この時、前腕部の測定部位におむつ試験体1又は2のパッチの上記注入部を合わせるように、前記パッチを巻きつけ、端部をテープで止めた。また、前記パッチと腕との隙間が開かないようにパッチ周囲に絆創膏を貼った。
(3)3時間経過後前記パッチをはがし、直後の測定部位の肌水分をコルネオメーター(商品名:Corneometer MPA5;C+K社製)を用いて測定した。
(結果)
前記おむつ試験体のパッチを巻きつける前の測定部位の肌水分量は30であった。比較例1のおむつ試験体2を用いたパッチ後は82.4となり、肌水分量が52.4増加した。一方、実施例1のおむつ試験体1を用いたパッチ後は68.5となり、38.5の増加であった。なお、上記値は、被験者7名の平均値である。以下同様である。
前記値が75を超えると肌の湿り感が生じ、75以下であるとサラッと感となることが知られている。よって、実施例1のおむつ試験体1を用いたパッチでは、肌の湿り感がなくサラッと感があることが分った。
3.間接法(レプリカ法)による肌膨潤時の肌キメ平坦化抑制評価
上記パッチ試験後の肌表面に対し、肌用シリコン印象剤(商品名:ABS−01スカイブルー;アサヒバイオメッド社製)を用いて肌レプリカを作製し、解析装置(Skin Visiometer SV500、C+K社製)を用いて表面粗さRaを測定した。
(結果)
比較例1のおむつ試験体2のパッチを用いた肌レプリカでは、表面粗さが0.008μmであったのに対し、実施例1のおむつ試験体1のパッチを用いた肌レプリカでは0.011μmと粗く、肌キメの平坦化が抑制されていることが分った。
肌が水分で膨潤することによって肌キメが平坦化することが分っており、このことから実施例1のおむつ試験体1を用いたパッチでは、比較例1のおむつ試験体2のパッチに比較して、肌が膨潤しにくいということが分った。
4.肌膨潤時の角層厚み評価
パッチ試験後の肌角層厚みを低コヒーレンス光干渉法(Optical Coherence Tomography)(商品名:Skin Dex300;ISIS社製)により測定した。
(結果)
おむつ試験体のパッチを巻きつける前の肌角層厚みは13.7μmであった。比較例1のおむつ試験体2のパッチを巻きつけた肌角層厚みは19.2μmとなり、9.4μm増加した。一方、実施例1のおむつ試験体1のパッチを巻きつけた肌角層厚みは23.1μmとなり、5.5μmの増加であった。このことから、実施例1のおむつ試験体1のパッチでは、肌膨潤による肌角層厚みの増加が抑制されていることが分かる。
肌膨潤によって肌角層厚みが増加すると、肌の外部異物に対するバリア機能が低下することが知られており、実施例1のおむつ試験体1を用いたパッチでは、比較例1のおむつ試験体2のパッチに比較して、肌のバリア機能が低下しにくい事がわかる。
5.パネル試験
実施例1のおむつ試験体1を乳幼児に適用し、パネル(使い捨ておむつを使用中の乳幼児をもつ母親)14人による評価試験を行った。現在使用中の市販品に対する試験体1の評価として最も多い意見を判定の結果とした。
(1)試験体1の肌接触面の肌(手)触りは、布に近く、滑らかで、コットンのような肌触りであった。見た目に、吸収性がよく、かつ水分の逆戻りが起こらない印象を受ける。
(2)排尿後のおむつ表面部分を手のひらで直接触って触感を確認した結果、市販品に対して試験体1ではサラっと感が高く手に付着する水分が少なかった。また、乳幼児のおしりの肌にも湿り気が残らず、尿や軟便によるベトつきが抑えられた。
(3)おむつ試験体1では、市販品に対して乳幼児のおしりに付着して残る量が少なく、むしろおむつの肌接触面に便が付着していた。また、その付着は、おむつ試験体1の水分吸収により水分を帯びて広がることはなく、排泄時そのままの形で固化した泥状であった。その結果、乳幼児のおしりに付着する大便の拭き取りは容易であった。
1 上層シート
2 下層シート
3 凸部
4 凹部
5 障壁状連結部
6 凸部内部の空間
7 トンネル状空間
8 溝部
10、20 賦形シート(表面シート)
11 第1の連結部
12 第2の連結部
13 凸部列
51 第1ロール
52 第2ロール
53 第3ロール
54 第4ロール

Claims (7)

  1. 繊維で構成されたシートであって、一方の面側に、多数の凸部と、該凸部同士を連結する障壁状連結部とを有し、前記凸部の間に前記障壁状連結部を避けるように凹部が配設されており、前記障壁状連結部の繊維密度が前記凸部の繊維密度より高くされ、該障壁状連結部として、第1の連結部と、それより高さの低い第2の連結部とがあり、
    前記連結された凸部と前記第1の連結部とが直線状の凸部列を多数なしており、該凸部列は並列し、前記凸部及び第1の連結部に挟まれるようにして、前記凹部と前記第2の連結部とを有する溝部が配設されており、
    前記凸部列は山脈状とされ、渓谷状の前記溝部を介して配設されており、前記溝部表面は平坦でなく、隣り合った凸部に連結する第2の連結部が配され、起伏のある表面形状とされている吸収性物品用表面シート。
  2. 前記凹部の繊維密度が前記障壁状連結部の繊維密度より高められた請求項1記載の吸収性物品用表面シート。
  3. 前記凸部は、隣り合う凸部の全てと障壁状連結部を介して連結されている請求項1又は2に記載の吸収性物品用表面シート。
  4. 前記凸部が内部空間を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品用表面シート。
  5. 前記凸部が千鳥状に配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品用表面シート。
  6. 前記凸部を有する上層シートと、該凸部が突出する面の反対面側に配されたフラットな下層シートとでなり、前記上層シートと前記下層シートとが前記上層シートの凹部の少なくとも一部で接合されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品用表面シート。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品用表面シートを配した吸収性物品。
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