JP5329785B2 - 吸収性物品用シート - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品用シートに関する。特に、着用者の肌に当接させて用いられる吸収性物品用の表面シートに関する。
生理用ナプキン、パンティーライナ、及び使い捨ておむつといった吸収性物品は通常着用者の肌に当接して用いられる。特に肌荒れのしやすいようなところに用いられることが多く、しかも長時間に亙って着用されることがある。そのため肌あたりのやさしいものが望まれる。他方、吸収性物品には基本的な機能として液吸収性及び液保持性が要求される。
このような機能性でありかつ触感のよい表面シートの開発が試みられており、表面シートに用いられる不織布において繊維の親水度等を調節したもの(特許文献1参照)、シート材の伸縮性を調節して嵩高さを部分的に変化させた凹凸構造を有するものが提案された(特許文献2、3参照)。さらに、上述したような従来のシート材とは構造が異なる、シート材の内部に空洞を保持させた表面シートが開発された(特許文献4参照)。
特開2002−065738号公報 特開2004−166849号公報 特開2003−250836号公報 特開2004−174234号公報
本発明は、吸収性物品の高い液吸収性及び液保持性を実現することができ、さらに排泄液や軟便等の隠蔽性及び漏れ防止性に優れ、かつ表層の液残りが抑制される吸収性物品用シートの提供を目的とする。また、本発明は上記の機能を維持して、しかもクッション性に富み肌当りがやさしく、柔らかくサラッとした触感を与える吸収性物品用シートの提供を目的とする。
上記の目的は、外側層及び内側層を有する第1のシートが前記内側層側で第2のシートに間欠的に接合された吸収性物品用シートであって、該吸収性物品用シートには前記接合部間に形成された前記第1シート側に突出する凸部が連設され、かつ、前記第1のシートの外側層を構成する繊維は前記内側層を構成する繊維より細い繊維である吸収性物品用シートによって達成された。
本発明のシートは、吸収性物品の表面シート等として用いたとき、高い液吸収性及び液保持性を示し、さらに排泄液や軟便等の隠蔽性及び漏れ防止性に優れ、かつ液体吸収表面近傍の液残りを抑制しうる。また、本発明のシートは、上記の機能を維持して、しかもクッション性に富み肌当りがやさしく、柔らかくサラッとした触感を与える。
以下、本発明を、その好ましい実施形態を示す図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の吸収性物品用シートの一実施形態の要部を模式的に示す部分斜視図である。本実施形態の表面シート10は第1のシート7及び第2のシート3を有する。この表面シート10は例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品に適用することが好ましく、例えば第1シート7側を着用者の肌に向けて、肌に直接当てて使用されることが好ましい。
本実施形態の吸収性物品用シート10において、第1のシート7は外側層1と内側層2とからなる。ここで外側層を構成する繊維は、内側層を構成する繊維よりも、細くなっている。各繊維の具体的な径は吸収性物品の種類や用途に応じて適宜定めればよいが、好ましくは外側層に用いる繊維の繊度を、内側層に用いる繊維の繊度の10〜70%とすることが好ましく、20〜60%とすることがより好ましい。さらに詳しくは、外側層の繊維の繊度を1.0〜4.4dtexとすることが好ましく、1.2〜3.3dtexとすることがより好ましい。内側層に用いる繊維の繊度は2.2〜7.8dtexとすることが好ましく、3.3〜5.6dtexとすることがより好ましい。なお各層を構成する繊維が2種以上の異なる繊度の繊維からなる場合には、そのシートの繊度とは、各繊維の質量比率から繊度を平均し求めた値をいう。
このように、凸部を形成する第1のシートを少なくとも2層シート構造とし、その外側層1を構成する繊維を、内側層2を構成する繊維よりも細くすることにより、後述するように凸部の構造が有する機能と相互に作用しうる。
本実施形態の吸収性物品用シート10の第1のシート7側には、多数の凸部4が連設されている。本発明において凸部の連設とは、図示したもののように接合部6がなす谷部を介して凸部4が連続した状態のほか、例えば後述する略千鳥状パターンのように、断面方向によっては第1シートと第2シートとが接合していない谷部を介して凸部が連続した状態(つまり内部の空孔が隣接する凸部において互いに連続した状態)を含む。
本実施形態における凸部4について更に詳しくいうと、第1のシート7が賦型され、第2のシート3との間に空洞5を保持して形成されている。このとき図1に示した断面においては第1のシート7と第2のシート3とは接着部6により間欠的に接合されている。ここで上記両シートが部分的に接合された接着部6は、上述したように、(i)間欠的に接合部を設け、各接合部を独立して配設した状態であっても、(ii)凸部4の底面5aが連続的な接合部に取り囲まれた状態となるよう、接合部6を連続した状態で配設してもよい。
本実施形態のシート10においては、凸部4を後述するように歯車により賦型することができ、そのような加工法を採用したときには、通常の歯車の歯が略矩形の踏面になっているため内部空洞5の底面5aも通常略矩形となる。これに対し、凸部4は稜がとがった直方体状ではなく、図示したように丸みを帯びたこぶ状にすることが好ましい。このようにすることで、凸部4の持つエアクッション機能が効果的に発揮され、肌への当りがやさしく、柔らかな触感が得られる。
図2は図1の領域IIを拡大して示す断面図である。凸部4は連続したシートに設けられた突出部であり、図2に示した形態でいうと2つの谷部uの間の挟まれた部分となる。そして各凸部4は機能的に、頂部4a、肩部(稜)4b、壁部4cに区分することができる。
本実施形態の凸部4は上述したように丸みを帯びた略山形の形状を有する。これをさらに詳しくいうと、凸部の壁部が第2のシート3に対して直交した垂直壁の状態ではなく、図示したもののように、緩やかに傾斜したものであることが好ましい。そして凸部肩部4bは丸みを帯びていることが好ましく、上述のように凸部壁部がより傾斜した状態であると、肩部4bが丸みを帯びたものとなりやすく好ましい。具体的に稜の角度θが、95〜140°であることが好ましく、100〜130°であることがより好ましい。本発明において稜の角度θは、凸部4の頂点から、X方向に平行な方向に凸部4をカミソリ刃で切断し、頂点からXに平行に引いた直線と、壁部4cから伸ばした直線とが成す角の角度を測定した値とする(図2参照)。このように、丸みを帯びた稜(肩部)とすることにより、着用者の運動等により吸収性物品がずれるときにも違和感を与えず好ましい。
さらに、壁部4cを傾斜した形態とすることで(角度θを大きくすることで)、凸部頂部4aの面積を低減することができる。凸部頂部4aは着用者の肌と直接当接することになるが、上述のようにその面積を低減することにより、着用者との接触面積を減少させることができる。それにより、液体を一度吸収したシートが面接触してベタつく感じを避け、適度な点接触となることにより良好なクッション感とともにサラッとした感触を与える。さらには吸収性物品がずれるようなときにも表面シートの摩擦による違和感が低減され、触感及び装着感に優れたものとなる。
上述したような所望の丸みを帯びた凸部の形状は第1のシート7を1層構造としたのでは通常得られない。第1のシートを少なくとも2層構造とし、各シートの繊度を特定のものとすることにより上述した所望の凸部の形態が得られるが、その理由は必ずしも明らかではない。推定を含めていうと内部に空洞5を保持するため上層シート7は変形しやすく、シート内に剛性の勾配が生じたため、変形が生じることが考えられる。また、後述するように凸部4は吸引力を生じる歯車により賦型することができ、この吸引に対してシート表面が密着する状態がシート内の繊維径に勾配をつけたことにより変化し、得られる凹凸形状に影響することが考えられる。
本発明の吸収性物品用シートにおいては、上記の実施形態において示したように、凸部4を略千鳥状に配置することが好ましい(図1参照)。略千鳥状とは、完全な千鳥状のみではなく、製造上不可避的にわずかにずれている場合も含む意味である。なお、このような千鳥格子状の凸部配列は、後述するようなロール歯車による凸部の賦型についていうと、各歯車の歯幅を調節し、各歯車間での歯を交互に配置することにより形成することができる。例えばシートを上からみたときに図3のようなパターンになるように調節することにより形成することができる。
図3(A)は略千鳥状パターンとして6点シールのエンボスパターンを模式化して示したパターン図である。図3(A)について詳述すると、12行,12列でエンボスパターンが示されており、エンボス(1,2),(1,4),(3,1),(3,5),(5,2),(5,4)の6点で第1の6点パターン要素(第1要素)が構成されている。ここで( )内の数値は、(行番号,列番号)を表す。そして右隣りの第2要素は、エンボス(1,8),(1,10),(3,7),(3,11),(5,8),(5,10)の6点で構成されている。さらに第1要素の下方の第3要素は、第1要素の下部の2点(5,2),(5,4)を共有するようにして、(7,1),(7,5),(9,2),(9,4)とともに6点で構成されている。さらにこの右の第4要素は、エンボス(3,5),(3,7),(5,4),(7,5),(5,8)を第1〜3要素のいずれかと共有し、エンボス(7,7)と合わせた6点で構成されている。このようにして各要素の一部を互いに共有しつつ、6点パターンが広く繰り返され構成されている。
図3(B)は略千鳥状パターンとして4点シールのエンボスパターンを模式化して示したパターン図である。図3(B)について詳述すると、エンボス(1,3),(3,1),(3,5),(5,3)の4点で第1要素が構成されている。その右隣りにおいてはエンボス(3,5)を共有して、(1,7),(3,9),(5,7)とともに第2要素を構成している。第1要素の下方には、第1要素の点(5,3)を共有して、(7,1),(7,5),(9,3)とともに第3要素を構成している。さらにこの右側の第4要素は、エンボス(3,5),(5,3),(7,5),(5,7)を第1〜3のいずれかと共有し構成されている。このようにして、一部のエンボスを互いに共有しながら広く4点エンボスパターンが形成されている。
そして、本実施形態においては、上記のように6点ないし4点で構成されたエンボスパターン要素の略中央に、前記の凸部頂部が配されることが好ましい。すなわち、図3(A)の6点エンボスパターンの第1〜4の要素でいうと、第1要素の(3,3)、第2要素の(3,9)、第3要素の(7,3)、第4要素の(5,6)にそれぞれ凸部頂部が配されている。また、図3(B)の4点エンボスパターンの第1〜4の要素でいうと、第1要素の(3,3)、第2要素の(3,7)、第3要素の(7,4)、第4要素の(5,5)にそれぞれ凸部頂部が配されることとなる。そして凸部の連設形態についていえば、例えば図3(B)の4点パターンでいうと、エンボス(3,1)から(11,9)に引いた線の断面では、図2に示したような接合部がなす谷部を介した凸部の連設形態(連設形態(I))となる。一方、エンボス(5,1)から(11,7)に引いた線の断面では、接合部を介さず内部空洞が連続した凸部の連設形態(連設形態(II))となる。これらの凸部の連設形態における上記各パターンでの相違についていうと、6点エンボスパターンであっても、4点エンボスパターンであっても、連設形態(I)及び(II)となる断面を有する。ただし、4点エンボスパターンの方が、空洞が連続した連設形態(II)の割合が大きく、凸部間で排泄液等が移動しやすい。
このように凸部を千鳥格子状に配列することにより、着用者の肌に当接する圧力が均一に分散され一層良好なクッション性が実現され、また液体の吸収保持においても均一にシート全体においてその作用が発揮されるため好ましい。
このような凸部の配置形態とすることで、高い液漏れ防止作用を発揮する。詳しくは、吸収性物品用シート10を例えば使い捨ておむつ、特に高粘度の排泄物である軟便を排泄する低月齢児用のおむつの表面シートとして用いた場合に、次のような作用を奏する。
軟便は高粘度であることから、一般に表面シートを速やかに透過しづらくシート上に滞留して横流れを起こしやすい。これに対して、本実施形態の吸収性物品用シート10によれば、軟便が凸部4によって取り囲まれて形成された凹部(図1に示した接合部6表面近傍)に捕捉される。それにより横流れを起こしづらくなり、軟便に含まれる液体分の吸収体方向への移動が促進される。その結果、軟便からの液漏れを効果的に防止することができる。そして、凸部4はその内部が空洞であり、そこに軟便を吸収保持して、軟便を上層シートにより覆い隠し隠蔽することができる。この隠蔽作用は凸部4単独でも発現するものであるが、千鳥格子状に凸部を配列することにより、一層その作用が高まりシート表面全域に亙り清潔な印象を与えることができる。
上記作用について軟便を例に説明したが、それと同様に高粘度の排泄物である経血を吸収するための生理用ナプキンの表面シートとして用いたときにも同様の作用を奏する。
さらに本実施形態の吸収性物品用シート10においては第1のシート7を2層構造とし、その外側を細い繊維で、内側シートを太い繊維で構成したため、単層シートでは実現されない表面液残りの抑制・防止を達成しうる。とりわけ、本実施形態のシート10は凸部4内部に空洞5を有し、上述のようにその空洞5に液体を滲透保持する作用があり、一層効果的に表面の液残りを抑制する相互作用を発揮しうる。これにより、着用者の肌に直接当接する凸部4の頂部4a(図2参照)において特に表面の液残りが抑制され、しかも空洞5が液体を吸収した吸収体との距離をあけ、さらに通気性をも有し、そのエアクッション性と相俟って一度液体を吸収保持した後であっても柔らかな肌当りとサラッとした触感とが両立して実現される。
凸部4は、上述したような作用を考慮し、その高さh(図2)を0.6〜2.0mmとすることが好ましく、0.8〜1.8mmとすることがより好ましい。また、凸部の幅w(図2)を1.5〜4.0mmとすることが好ましく、2.0〜6.0mmとすることがより好ましい。
接合部(凹部)6の幅k(図1に示した移動部6のX方向の長さ)を0.5〜2.0mmとすることが好ましく、0.8〜1.4mmとすることがより好ましい。
第1のシート7(外側層1及び内側層2)及び第2のシート3は同じ種類の繊維材料からなるものであっても、異なる繊維材料からなるものであってもよいが、いずれのシートも実質的に伸縮しないシート材からなることが好ましい。このとき、各シートがMD(不織布等のシート材が製造時に流れる方向をいい、「Machine Direction」の略語である。流れ方向ともいう。)及びCD(上記MDに直交する方向であり、「Cross Direction」の略語である。)のいずれの方向にも実質的に伸縮しないものであってもよく、MD及びCDのうちのいずれか一方向にのみ伸縮するものであってもよい。一方向にのみ伸縮性を有する不織布であるとき第1のシート7及び第2のシート3を伸縮方向が一致するように積層することが好ましい。このようなシート材を用いることによって、後述するように吸引歯車及びそのロールにより賦型するに当り、所望形状に安定して且つ再現性良く凹凸賦型することができる。
伸縮性を有する不織布を用いるとき、その伸縮率は、その伸縮方向において105%を超え200%以下であることが好ましく、105%を超え120%以下であることがより好ましい。ここで、非伸縮性である不織布とは、伸縮率が105%以下であり、伸び率5%を超える伸長では材料破壊を起こすか又は永久歪みが発生するものをいう。ここで、伸縮率は、もとの材料の長さが2倍に伸張した場合、伸縮率200%となる。また、伸び率は、もとの材料の長さが2倍に伸張したとき100%となる。
前記不織布としては、前記の特性を有するものであれば、通常の不織布を使用することができる。例えばカード法により製造されたヒートボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、第1のシート7と第2のシート3とを後述するように熱融着によって接合する場合には、前記不織布に熱融着繊維が含まれることが好ましい。熱融着繊維としては、PET/PE、PP/PEなどの芯鞘構造のものが好ましい。また、前記不織布には、界面活性剤等を用いた親水化処理を施すことが好ましい。第1のシート7及び第2のシート3の構成繊維の種類のうち、好ましい組み合わせはPET/PE繊維どうしの組み合わせである。
本実施形態の吸収性物品用シート10の第1のシート7において、外側シート1及び内側シート2の坪量は、外側シート1の方が内側シート2よりも低いまたは同じであることが好ましい。厚さについていうと、外側シート1及び内側シート2の厚さが、外側シート1の方が内側シート2よりも薄いまたは同じであることが好ましい。
また、第1のシート7及び第2のシート3の坪量は、第1のシート7の方が第2のシート3よりも高いまたは同じであることが好ましい。厚さについていうと、第1のシート7及び第2のシート3の厚さが、第1のシート7の方が第2のシート3よりも厚いまたは同じであることが好ましい。
第1のシート7及び第2のシート3を構成する繊維の繊度は、第1のシート7の内側シート2を構成する繊維の方が、第2のシート3を構成する繊維よりも太いまたは同じであることが好ましい。
次に、本実施形態の吸収性物品用シート10の好ましい製造方法を図面を参照しながら説明する。図4は本実施形態の吸収性物品用シートを製造する一実施態様を模式的に示す側面図である。同図に示すように、まず第1のシート7を原反(図示せず)から繰り出す。これとは別に、第2のシート3を原反(図示せず)から繰り出す。第1のシート7及び第2のシート3はそれぞれ、そのMD方向(方向d及びd)に沿って繰り出される。繰り出された第1のシート7を、周面が凹凸形状となっている第1ロール11と、その凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロール12との噛み合わせ部Pに噛み込ませて第1のシート7を凹凸賦形する。
図5は第1ロール11の一実施形態における要部を拡大して模式的に示す斜視図である。第1ロール11は、所定の歯幅を有する平歯車11a,11b,・・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯幅は、所望の吸収性物品用シートの凸部の間隔に応じて定めることが好ましい。この態様においては隣り合う歯車は、その歯のピッチが半ピッチづつずれるように組み合わされている。
第1ロール11における各歯車の歯溝部には吸引孔13が形成されている。この歯溝部は、第1ロール11の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔13は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、図4に示すように、第1ロール11(回転方向:矢印d)と第2ロール12(回転方向:矢印d)との噛み合い部Pから第1のシート7と第2のシート3とを接合した表面シートを送り出す部分Pに至るまで吸引されるように制御されている。したがって、第1ロールと第2ロールとの噛み合いによって凹凸賦形された第1のシート7は、吸引孔13による吸引力によって第1ロール11周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。この場合、図5に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、第1のシート7に無理な伸長力や、ロールの凹凸噛み合いによる切断効果を加えることなく第1のシート7を第1ロール11の周面に密着させられる。空隙Gは歯車の全歯たけや第1のシート7の坪量にもよるが、第1のシート7に破断や損傷を与えることなく密着を行うことができるため、0.1〜50mmが好ましく、0.1〜5mm程度がより好ましい。
図6は、第1ロール11の別の実施形態の要部を拡大して示す斜視図である。本実施態様の第1ロール11は、平歯車からなる第1歯車11c及び第2歯車11dを複数枚組み合わせ、これらの歯車を回転軸15に同心状に取り付けてロール状に形成したものである。各歯車11c,11dはいずれも同じ歯幅を有している。各歯車11c,11dはその中心が開口しており、その開口部に回転軸15が挿入される。各歯車11c,11d及び回転軸15にはそれぞれ切り欠き部(図示せず)が形成されており、該切り欠き部にキー(図示せず)が挿入される。これによって各歯車11c,11dの空回りが防止される。
第2歯車11dの歯先円直径は、第1歯車11cの歯先円直径よりも小さくなっている。具体的には、第2歯車11d(スペーサー)の歯先円直径は、第1歯車11cの歯先円直径よりも0.5〜10mm小さくすることが好ましい。
本実施形態の第1ロール11においては、1枚の第2歯車11dに対してその両側にそれぞれ1枚ずつの第1歯車11cが配されて、これらの3枚の歯車を一組とした歯車群16が複数組配されている。各歯車群16においては、第1歯車11c及び第2歯車11dは、各歯車11c,11dの歯がロールの回転軸方向に並列するように配されている。これによって各歯車群16においては、ロール11の回転方向に沿って凸部17と凹部18とが交互に形成される。凸部17は、3枚の歯車(つまり2枚の第1の歯車11cと1枚の第2の歯車11d)それぞれの歯がロール11の回転軸方向に並列して形成されたものであるか(図6中、符号17aで示す)、或いは2枚の第1歯車11cの歯がロールの回転軸方向に並列して形成されたものである(図6中、符号17bで示す)。一方、凹部18は、2枚の第1の歯車11cの歯間で形成されたものである。凸部17の幅は、表面シート1の凸部4におけるY方向の寸法を決定する。
歯車群16は二組以上用いられる。各歯車群16は、隣り合う歯車群16,16における凹凸部のピッチが互いに異なるように配される。本実施形態においては隣り合う歯車群16,16は凹凸部が半ピッチずれている。
各歯車群16においては、2枚の第1の歯車11c間に、ロール11の回転方向に沿って一定の間隔をおいて空隙部19が複数形成されている。各空隙部19は、2枚の第1歯車11cと、これらの間に位置する第2の歯車11dとで形成されている。更に詳細には、各空隙部19は、2枚の第1歯車11cの相対向する側面と、第2歯車11dにおける隣り合う2つの歯によって画定される。従って空隙部19は、第2歯車11dの歯数と同数形成されることになる。空隙部19は、外部に向かって開口している。
第1歯車11cには、回転軸15が挿入される中心の開口部を取り囲むように複数の開口部20が形成されている。各開口部20は同径であり、歯車の中心からそれぞれ等距離の位置に形成されている。隣り合う開口部20,20と歯車の中心とがなす角度はいずれも等しくなっている。各歯車11cにおける開口部20の個数は、第2歯車11dの歯数と同数になっている。そして、各歯車群16を組み付ける場合には、各開口部20が、第2の歯車11dにおける隣り合う歯間にそれぞれ位置するように、第1及び第2の歯車11c,11dを配置する。このように各歯車群16を組み付け、更にそれぞれの歯車群16を凹凸部のピッチが互いに異なるように配した状態においては、それぞれの第1の歯車11cの開口20が、ロール11の回転軸方向に連なって、該回転軸方向に延びる複数の吸引路21がロール11の内部に形成される。そして各吸引路21は、先に述べた空隙部19と連通する。
吸引路21の少なくとも一端は、プロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じている。従って、吸引源を作動させて吸引操作を行うと、空隙部19から吸引路21を通じて空気が吸引される。
本実施形態の第1ロール11は特に小ピッチで小凸部を多数形成する場合に有効である。本実施形態の第1ロール11では、低モジュールな平歯車を用いても、第2の歯車11dの歯幅を大きくしたり、また歯数を少なくすることにより空隙部19を大きくできる。その結果、吸引孔の面積を充分に確保することができる。更に、歯車の組み合わせや幅を変更するだけの簡単な操作で、凸部のピッチや大きさを自由に変更できるという利点もある。
再び図4に戻ると、第1のシート7を、第1ロール11と第2ロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて第1のシート7を凹凸賦形する。この場合、第1ロール11を先に述べたように吸引しておく。吸引は、第1ロール11と第2ロール12との噛み合い部から第1のシート7と第2のシート3との合流部Pを経て両シートを貼り合わせた複合シート(吸収性物品用シート)を送り出す部分Pまでの間で行われるように制御することが好ましい。従って、第1ロール11と第2ロール12との噛み合いによって凹凸賦形された第1のシート7は、第1のロール11に形成された吸引部13(図5)もしくは空隙部19(図6)による吸引力によって第1ロールの周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。吸引を行わない場合には、上層が第1ロール11の周面から浮き上がってしまい、良好な凹凸形状を有するシートを得ることが困難である。
合流部Pでは(図4)、第1のシート7を第1ロール11の周面に吸引密着させた状態で、別に供給されている第2のシート3と積層するが、両シートを第1ロール11と第3ロール14とで挟圧することが好ましく、第3ロール14としては凹凸を有しないアンビルロールを用いることが好ましい。このとき、第1ロール11と第3ロール14の両方又は第3ロール14のみを所定温度に加熱しておくことが好ましい。これによって、第1ロール11の歯車の凸部先端に位置する第1のシート7と第2のシート3とが熱融着によって接合される。この接合によって接合部6(図1参照)が形成される。一方、歯車の凹部においては第1のシート7及び第2のシート3は挟圧されず、熱融着が起こりにくい。その結果、2つの接合部6間には非接合部が形成され、凸部4(図1、図2参照)が形成される。
図7は、図4に示したシート送り出し部Pの周辺を拡大して示す側面図である。本実施態様においては、第1のシート7と第2のシート3とが貼り合わされた複合シートが、第1ロール11及び第4ロール14によって再度この部分Pで加熱圧挟される。このとき第4ロール14は第3ロール13と同様に外周に凹凸を有さない平滑ロールであることが好ましく、所定の温度に加熱されていることが好ましい。このように送り出し部Pで合流部Pに引き続き再度加熱圧挟し両シートの接合加工を行うことで、適切に接着力を高めしっかりと固定された接合部が形成され、凸部の形状安定性が維持される。
なお、本製造方法においては、第1のシート7と第2のシート3とを熱融着によって接合することに代えて、ホットメルト接着剤による接着や超音波接合によってこれらの層を接合してもよい。
図8は本発明の吸収性物品用シートを表面シートとして用いた使い捨ておむつを一部切欠して模式的に示す斜視図である。同図に示した使い捨ておむつ70は、同物品において一般的な形態を有しており外包体71と吸収体78とを組み合わせて形成されている。
外包体7は1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。外包体7には横漏れ防止ギャザー74が設けられており、乳幼児の運動による液漏れの防止に効果を奏する。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。
さらに本実施形態のおむつはテープ型のおむつとして示しており、背側rのフラップ部にはテープ75が設けられている。このテープを腹側fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して装着固定することができる。このとき、おむつ中央cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収体78が乳幼児の臀部から下腹部に亙って沿わされるように着用する。これにより排泄物が的確に吸収体78に吸収保持される。
吸収体78には、厚みのある吸収材73の表面に本発明の表面シート10が配設されている。通常吸収材自体は肌当りがあまり良くなく、液体を一度吸収した後にはベタついた感じを与えてしまうが、上記のように本発明の表面シートを乳幼児の肌に当接するように配設したことで肌触りが良化し、サラッとした触感となる。特に空洞を保持した凸部と、表面シートの上層シートを特定のシートからなる2層構造との相互作用により、大幅に着用者の装着感が向上する。しかも柔らかい肌あたりで運動などにより多少おむつの位置がずれたときにも違和感を与えない。さらには、丸みを帯びた凸部が多数表面に連設されているため、外観においても柔らかさを感じさせ、看者に対し肌にやさしい印象を与える。
本実施形態のおむつにおいて、外包体71、テープ75、ギャザー74、吸収材73等に用いられる材料は通常おむつに用いられるものを用いることができ、特に限定されるものではない。
本発明の吸収性物品用シートについて、テープタイプの使い捨ておむつの吸収体における利点を説明したが、これに限らず、本発明のシートは吸収体以外の部分に用いてもよく、またパンツタイプのおむつや、その他ナプキン及びパンティーライナ等にも好適に用いることがきる。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
〔実施例・比較例〕
第1のシートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量6g/mのエアースルー不織布でなる外側シートと、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる4.4dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量12g/mのエアースルー不織布でなる内側シートとを張り合わせた2層シートを準備した。この第1のシートの厚みは0.6mmであった。第2のシートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量18g/mのエアースルー不織布を用いた。第2のシートの厚みは0.6mmであった。これらのシートを用い、図4に示す装置を用いて使い捨ておむつの吸収性物品用シート(試験体1)を作製した。得られたシート(試験体1)における凸部の高さhは1.4mm、X方向に沿う凸部の幅wは4.0mm、接合部(凹部)の幅kは1.0mmであった。
第1のシート及び第2のシートに用いた繊維の繊度及びシートの坪量、さらに上層シートのエアースルー温度を表1に記載のとおりに代えて、それ以外は試験体1と同様にして吸収性物品用シート(試験体2〜8)を作製した。なお、表中「×」は内層を用いずに外層として記載した層のみにより1層構造の第1層として作製したことを表す。
各シート(試験体)を表面シートとして第1のシートが肌当接面側になるように用いて使い捨ておむつを作製した。吸収材としては、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとの積繊体を用いた。パルプの坪量は257g/m、ポリマーの坪量は257g/mであった。この吸収材の表面に各シート試験体を配設した。外包体として坪量20g/mの透湿フィルムを用いた。得られた使い捨ておむつを用いて以下の試験を、それぞれの試験体について行った。これらの結果を表1に示す。
〔表層液残り量測定試験〕
おむつをその表面シートが上を向くように水平な台の上に載置した。その上に、内寸が20cm×10cmの矩形の枠を置いた。枠の内側を油性ペンでなぞり、表面シート上に枠の内側の形状を書き写した。次いで枠内に200gの人工尿を均一に注入した。注入後10分間放置した。枠は、注入後1分経過したところで取り外した。10分放置後、表面シートに書いた枠の形に沿って表面シートを切り出し、その質量を測定した。次いで、切り出した不織布を、キッチンペーパーに挟み、その状態下にマングル間を一往復させ人工尿をキッチンペーパーに吸収させた。この操作を2回行った。人工尿が吸収された後の不織布の質量を再び測定し、その質量を、初めに測定した不織布の質量から差し引いた。その値を不織布の表層液残り量とした。この値が0.20以下であれば着用者の要求を通常満足しうる。
〔触感試験〕
上記の表層液残り量測定試験を行ったおむつの表面シートを手のひらで直接触って触感を確認した。おむつに組み込む前の表面シートの表面(上層の表面)を手のひらで直接触れ、その感触を以下の基準に従って判定した。判定は3人以上で行い、最も支持の多い意見を判定の結果とした。判定が分かれた場合は、真ん中の意見を判定結果とした。×:硬い。抵抗感(ざらざら感)がある。△:やや硬い。抵抗感(ざらざら感)が少しある。○:やや柔らかい。なめらかな感じが少しある。◎:柔らかい。なめらかな感じがある。この結果が○以上であれば着用者の要求を通常満足しうる。
〔形状安定性測定試験〕
各表面シート(各試験体)について、KES圧縮機(KES FB−3 AUTO−A(商品名)、接触部円形(面積2cm)を用い、2.5kPaの荷重を加えたときの凸部の高さh(図2)に下層シートの厚さを加えたサンプル厚さを測定した。この厚さの値が大きいほど、おむつを実際に着用して使用したときに良好なクッション性が維持される。具体的にこの値が0.6以上であれば着用者の要求を通常満足しうる。
〔稜の角度の測定〕
凸部4の頂点から、X方向に平行な方向に凸部4をカミソリ刃で切断し、頂点からXに平行に引いた直線と、壁部4cから伸ばした直線とが成す角を稜の角度として測定した(図1、2参照)。なお、この値が95°以上であれば通常着用者に良好な触感を与えうる。
Figure 0005329785
表1に示す結果から分かるとおり、比較のための試験体5〜8は表面シートに要求される形状安定性(クッション性の維持性)、表層液残りの抑制、及び触感のいずれかにおいて要求レベルを満足しないものであった。
これに対し、本発明の吸収性物品用シート(試験体1〜4)は、凸部の形状安定性、表層液残りの抑制防止、及び触感のすべての項目において、実用上要求されるレベルを満足していた。さらに本発明によれば、第1のシートを構成する外側シート及び内側シートの繊度を調節することにより、極めて触感が良く、表層液残りの抑制効果を大幅に高められることが分かる(試験体1、2)。
本発明の吸収性物品用シートの一実施形態の要部を模式的に示す部分斜視図である。 図1の領域IIを拡大して示す断面図である。 略千鳥状のエンボスパターンを模式化して示すパターン図であり、図3(A)は6点パターンを示し、図3(B)は4点パターンを示す。 本実施形態の表面シートを製造する一実施態様を模式的に示す側面図である。 第1ロールの一実施形態における要部を拡大して模式的に示す斜視図である。 第1ロールの別の実施形態における要部を拡大して模式的に示す斜視図である。 図3に示したシート送り出し部Pの周辺を拡大して示す側面図である。 本発明のシートを表面シートに用いた使い捨ておむつを一部切欠して模式的に示す斜視図である。
符号の説明
1 外側層(外側シート)
2 内側層(内側シート)
3 第2のシート
4 凸部
5 空洞
6 接合部
7 第1のシート
10 表面シート
11 第1ロール
12 第2ロール
13 第3ロール
14 第4ロール
15 軸棒
16 歯車群
17 歯車凸部
18 歯車凹部
19 空隙部
20 開口部
21 吸引路
70 使い捨ておむつ
71 外包体
73 吸収材
74 横漏れ防止ギャザー
75 テープ

Claims (3)

  1. 外側層及び内側層を有する第1のシートが前記内側層側で第2のシートに間欠的に接合された吸収性物品用シートであって、該吸収性物品用シートには前記接合部間に形成された前記第1シート側に突出する凸部が連設されており該凸部には前記第1のシートと前記第2のシートとの間に空洞が配されており、前記凸部は、頂部、丸みを帯びた肩部、及び前記第2のシートに対して緩やかに傾斜した壁部からなる、丸みを帯びたコブ状であり、かつ、前記第1のシートの外側層を構成する繊維は前記内側層を構成する繊維より細い繊維であり、前記第1のシートの外側層を構成する繊維の繊度が1.0〜4.4dtexであり、内側層を構成する繊維の繊度が2.2〜7.8dtexである吸収性物品用シート。
  2. 前記凸部が千鳥状に配置された請求項1記載の吸収性物品用シート。
  3. 前記第1のシート及び第2のシートが非伸縮性のシート材からなる請求項1又は2記載の吸収性物品用シート。
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