JP5112047B2 - 吸収性物品の表面シート - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品の表面シートに関する。特に、着用者の肌に直接当てて用いられる吸収性物品の表面シートに関する。
生理用ナプキン、パンティーライナー、及び使い捨ておむつといった吸収性物品は通常着用者の肌に当接して、液体の吸収保持等に用いられる。特に肌荒れのしやすいところに用いられることが多く、しかも長時間にわたって着用されることがある。そのため柔らかく肌あたりのやさしいものが望まれる。他方、吸収性物品には液吸収性及び液保持性が要求される。
上記のような機能性でありかつ触感のよい表面シートの開発が試みられている。例えば特許文献1には、2層の不織シートを複数の間欠的に設けたピンエンボスにより接合し、下層のシートを熱乾燥により選択的に収縮させて、上層のシートを波打つように離間させた表面シートが開示されている。特許文献2には、上層シート及び下層シートからなる表面シートであって、内部が空洞になっている多数の凸部を有する表面シートが開示されている。この特許文献2に記載の表面シートの凸部の底部は矩形であり、該凸部は全体として直方体又は截頭四角錐体状にされている。
しかしながら、特許文献1に記載の表面シートでは、凹部における接合部によってシート同士が固定されているが、それ以外の部位ではシートとシートの間が凸部のみならず尾根部においても離間しているため、外部からの圧力に弱く、構造が維持し難い。また、特許文献2に記載の表面シートで例示されている構造では、尾根部が中空構造であるため、高荷重下では賦形形状が潰れやすい傾向にある。
特開2002−165830号公報 特開2004−174234号公報
本発明は、吸収性物品の高い液吸収性及び液保持性を実現し、表面の液残りが抑制され、しかもクッション性に富み肌当たりがやさしく柔らかい吸収性物品の表面シートの提供を目的とする。また本発明は特に、なめらかでソフトな触感、表面の液残りの抑制、高粘性液の良好な透過処理性、及びドレープ性に優れ、凸部の構造に柔軟性を有するため着用者に違和感を与え難い吸収性物品の表面シートを提供する。さらには体圧がかかり表面シートが潰されるときであっても、潰れ難い構造部分を有するため液戻りしにくく、また、一度潰されてもシートの厚み及び柔らかさを回復しやすい、着用後にもソフトな触感が長時間持続され、シート面方向の通気性の良い吸収性物品の表面シートの提供を目的とする。
上記の課題は、繊維からなるシートであって、内部に空間を保持した凸部が略千鳥状に配置され、前記凸部のそれぞれはその方に内部が繊維で満たされた尾根部を有し、前記凸部は前記四方の尾根部により互いに連結され、前記シートが、前記凸部に囲まれた谷部を有し、前記谷部で互いに接合された上層シート及び下層シートからなる吸収性物品の表面シートによって解決された。
本発明の吸収性物品の表面シートは、吸収性物品の高い液吸収性及び液保持性を示すとともに表面の液残りを抑制し、しかもクッション性に富み、肌当たりが柔らかく、やさしい風合いを有する。また本発明の表面シートは、なめらかでソフトな触感、表面の液残りの抑制、高粘性液の良好な透過処理性、及びドレープ性に優れ、凸部の構造に柔軟性を有するため着用者に違和感を与え難い。さらには体圧がかかり、表面シートが潰されたときであっても潰れ難い構造部分を有するため液戻りしにくく、また、一度潰されてもシートの厚み及び柔らかさを回復しやすく、着用後にもソフトでサラッとした触感が長時間持続され、シート面方向の通気性が良いという優れた作用効果を奏する。
以下、本発明を、その好ましい実施形態を示す図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の吸収性物品の表面シートの一実施形態の要部を一部断面により模式的に示す斜視図である。本実施形態の表面シート10は上層シート1及び下層シート2を有する。この表面シート10は例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品に適用することが好ましく、下層シート2を吸収体の方に向け、上層シート1を着用者の肌に直接当てて使用することが好ましい。
本実施形態の表面シート10の上層シート1には、通常着用者の肌に当接する上層シート1外側に向け突出する多数の凸部3が略千鳥状に設けられている。凸部3は中空構造を有し、上層シート1の凹凸賦型により形成されたドーム形状の空間6を内部に保持しており、極めて柔らかく肌当たりの良い、やさしい触感が得られる。すなわち、凸部3がエアクッションとして作用し、着用者の肌の起伏があるところであっても、柔らかくフィットしてソフトな感触を与える。また凸部内部のドーム状空間6が空気を保持し、これが出入りしうる。また、軟便等の高粘性の液体や半固形物の排泄があっても、これをまず谷部にストックし、続いて粘性が低い液体を速やかに凸部内部の空間6や表面シートの下層シートへ移動させて隠蔽し、着用者に不快感を与えない。特に乳幼児に対しては、軟便や下痢便等がそのまま肌に触れ続けることが避けられ、肌を清潔に保ち、肌荒れやかぶれの抑制に効果的である。
本実施形態において上記の略千鳥状に配置された凸部3はその四方に尾根部5を有し、各凸部3が互いにこの四方の尾根部5により隣在する凸部3と連結されている。上記四方の尾根部5は、前記凸部3を前記略千鳥状の配列をなす面で略四等分する、すなわち凸部3を中心にそれぞれ約45°の角度をなす位置に配されている。このようにして表面シート10の上層シート1側(肌当接面側)に、あたかも多数の山が四方の尾根でつらなった網目状の山脈のような特有の表面形状が形成されている。さらに図1に示した断面においては上層シート1と下層シート2とが谷部(ヒートエンボス)4により間欠的に接合されているが、本発明においては上記凹凸賦形された上層シート1のみで表面シートが構成されて、下層に配される吸収体等と直接接合されていてもよい。
本実施形態の表面シート10は、その上層シートが下層シートと接合されて固定された部分と、下層シートと接触するのみで可動可能な部分とがある上述のような特有のシート形状を有しているためドレープ性(複雑な起伏を有する表面に対して、シート表面がやわらかく追従し、その表面の起伏形状が変わってもその追従状態が維持される性質)を有する。そのため、股間部のように肌の起伏が大きい部分に当接して用いるときに、特に上記ドレープ性による高い効果が発揮される。すなわち、表面シート10と肌との間に隙間を与えすぎずに肌に当接して良好なフィット感が得られる。そして着用者の運動等によりその起伏が変化しつづけるようなときにも、その起伏の変化に追従して表面シートが変形し良好なフィット性が持続される。さらに凸部3と尾根部5とを組み合わせて配した構造とすることで、表面シート全体としては低目付でも十分な厚みが実現され、しかも下層シートと固定された部分と接触する部分を有するため体圧で潰れにくく、上述のようにドレープ性やソフト感に優れる。さらに高粘性液等に対しては、谷部4に液を導きながら、粘性が低い液分については凸部3から谷部4にかけての密度勾配により非肌当接面側に引き込み移行する作用が高い。これにより液残り・液戻りが抑制され、しかも高粘性液の再付着による不快感を与えない。
本実施形態において凸部3は、稜のとがった直方体状ないし截頭四角錐体状ではなく、図示したように丸みを帯びたドーム状である。このようにすることで、凸部3の持つ上述のエアクッション機能が効果的に発揮され、肌への当りがやさしく、より柔らかな触感が得られる。
図2は図1の領域IIを拡大して示す断面図である。上述のように凸部3は連続したシートに設けられた突出部であり、同断面では2つの谷部4の間に挟まれた状態で凸部3が形成されている。そして各凸部3は機能的に、頂部3a、肩部(稜)3b、側壁部3cに区分することができる。本実施形態の凸部3は、特に頂部3aから肩部3bにかけて丸みを帯びた略山形の形状を有する。このように、丸みを帯びた稜(肩部)とすることにより、着用者の運動等により吸収性物品が多少ずれたときにも、擦れる感じが和らげ、滑らかさを与える。
また、凸部の頂部3aが山形に緩やかに突起した形状を有するため、着用者の肌との接触面積が、例えば直方体状ないし截頭四角錐体状のものと比べ大幅に低減される。このように表面シートと着用者との接触面積を減少させることにより、液体を一度吸収したシートが面接触してベタつく感じを大幅に低減し、適度な点接触となることにより良好なクッション感とともにサラッとした感触が実現される。
本実施形態の表面シートにおいては谷部4において上層シート1と下層シート2とが接合されているが、この接合方法は特に限定されず通常の方法によればよいが、液体の引き込み機能及び移行機能を高める点からはヒートエンボス法、超音波エンボス法、ホットメルト接着によることが好ましい。谷部の幅wは特に限定されないが、隣在する谷部の距離をwとしたときに、この距離wと谷部の幅wとの比(w/w)が0.1〜0.5となるようにすることが好ましい。具体的な谷部の幅wとしては0.5〜3.5mmであることが、wとしては2〜12mmであることが、通常の吸収性物品の寸法との関係を考慮したときに実際的である。
図3は図1におけるIII−III線断面を拡大して示した断面図である。同図に示した断面は、図2に示したものと異なり谷部4を介さずに、隣在する各凸部が尾根部5により連結されている。したがって凸部3は機能的に頂部3a及び肩部3bを有するが、側壁部3c(図2参照)はなく、尾根部5の一部として連続した状態になっている。そして尾根部5は上層シート1と下層シート2の接触が維持されていることによって、内部が繊維で満たされた状態となっており、内部に空洞を保持したトンネル状にはなっていない。本実施形態において、上層シート1と下層シート2とは尾根部5の領域において接合されていないが、接合によって形成される谷部4が下層シート2側に窪みを形成することによって上層シート1と下層シート2を押さえる役割を果たし接触が維持されている。また、谷部では下層シート2の上層シート1側にも窪み(図示せず)が形成されることがあるが、このようになされるとよりその接触が安定化される。ただし、尾根部5が有する各作用を維持する範囲で多少の間隔をおいて接触しない状態であってもよい。
本発明において凸部の内部の空間とは表面シートを構成する所定のシート(本実施形態においては上層シート1)の所定の面側(通常は肌当接面側)に突出した凸形状の賦形部に対応してこの裏面側(通常は非肌当接面側)に形成された凹形状の賦形部をいう。このように凸部が内部空間を有することを、凸部の中空構造ということもある。上記所定のシートの裏面(通常は非肌当接面)を別の所定の平面(例えば下層シート2ないしは吸収体の表面)に積層したときに、上記内部空間においては、両面の間に間隔ができる。この間隔は、凸部内部のドーム状空間6における最も広い部分における間隔h(図3参照)で0.2〜4.5mmであることが好ましい。
本実施形態の表面シートにおいては凸部3の高さhより尾根部5の高さhが低くなるようにされている。凸部3と尾根部5の高さの比(h/h)は90%〜15の範囲であることが好ましい。凸部3の具体的な高さhは特に限定されないが、0.5〜7mmであることが好ましい。尾根部5の具体的な高さhについても特に限定されないが、0.4〜6mmであることが好ましい。また、本実施形態の表面シートにおいて尾根部5の密度Dは凸部頂部3aの密度D以上である。具体的に、凸部頂部3aの密度Dと尾根部5の密度Dの比(D/D)は1.0〜0.4の範囲であることが好ましい。本実施形態の表面シート10においては、谷部4の密度が上記凸部頂部3a及び尾根部5より高いものとされており、例えば凸部頂部の密度Dの1.1倍以上にすることが好ましい。なお、本発明において「密度」とは特に断らない限り、繊維が存在する部分の所定領域における単位体積当りの質量、又は繊維がフィルム状にされた部分におけるフィルム状部の単位体積当りの質量をいう。また、本実施形態において、凸部頂部3aにおける繊維の繊維径は賦形加工により延伸され、尾根部5における繊維の繊維径より3%以上細くされていることが好ましい。凸部の頂点の間隔については特に限定されないが、先に述べた距離wとほぼ同じである。なお、本実施形態の表面シートにおいては凸部3の四方に尾根部5が配されており、したがって図1におけるIII−III線断面だけではなく、IV−IV線断面(図示せず)においても尾根部5を介して凸部3が連設した形態となり図3に示したものと同じ断面形状となる。
本実施形態の表面シートにおいては、凸部3の四方に高さが低く繊維の詰まった尾根部5がネットワークを構成し、凸部3の形状支持機能及び表面シートの屈曲復元機能を発現させている。具体的には、凸部3は上述のように内部に空間を保持しているため圧力を受けたときに柔らかく変形して硬さを感じさせない一方、この四方に繊維のつまった尾根部があることにより適度な高さでその変形が抑えられる。すなわち内部に空間6を保持することによる凸部3の変形性と、これを繊維で満たされた尾根部が適度に支える弾力性とが相互に作用し、極めて良好なクッション性が実現される。また、弾力性の尾根部5がネットワークをなすことにより、シートの不可逆的な変形を防ぎ、脱力された後には厚さと柔らかさのあるシート形状に回復する。またこのシートは、凸部3と尾根部5の高さと密度の差により屈曲し易く、MD・CD・斜め方向の何れの場合も折れ曲がり易く、折れ目がつきにくく感触的に良好なシートが得られる。ここでMD方向とは不織布等のシート材が製造時に流れる方向をいい、「Machine Direction」の略語であり、単にMDと表記してその方向を示すことがある。これに対して、CD方向とは上記MD方向に直交する方向であり、「Cross Direction」の略語であり、単にCDと表記してその方向を示すことがある。
上記の作用により、本実施形態の表面シート10を吸収性物品に適用しこれを肌に当接して用いたときに、小さな圧力に対しては厚みのある凸部3が変形してソフト感を与え、圧力が増すと尾根部5が支持しながら弾力的に圧力を吸収する。表面シート全体としては潰れにくく、厚みのある形状に復元しやすい。また、シートが折れ曲がった場合にも硬い折り目ができにくいため長時間良好な着用感が維持される。さらには、上述のように適度な高さで凸部3の変形が押さえられることにより、空間6に粘性の液体等を保持しているときには、これらの肌当接面側への逆戻りが抑制され、サラッとして清潔な着用状態が維持される。
上記のクッション作用、形状回復作用、逆戻り防止作用は、尾根部5の密度Dが凸部頂部の密度Dより高いことにより、一層良化する。また尾根部5の密度Dを凸部頂部の密度Dより高いものとすることにより、肌当接面側(表面シート上部)から非肌当接面側(表面氏と下部)への液体の引き込み力が増し、表面の液残り・液戻りが抑制される。さらにまた、凸部頂部の密度が低いことにより、高粘性液の空間6内への透過性が向上するため好ましい。
また、本実施形態の表面シートは先にも述べたとおりドレープ性が高い。これは、単に凸部3及び谷部4(図2参照)を千鳥状に配列しただけではなく、ここに上述の特有の表面形状をなす尾根部5(図3参照)によるネットワークを形成して初めて実現されるものであり、特に谷部4を高密度エンボスにしたときのドレープ性の低下の問題を克服し、シート全体として極めて高いドレープ性を示す。
本発明の吸収性物品の表面シートにおいては、上記の実施形態において示したように、凸部3を略千鳥状に配置する。ここで千鳥状とは、各列の凸部3が等間隔に配置され、隣在する列どうしで互いに凸部がずらされた(好ましくは半ピッチずらされた)配列をいう。さらに詳述すれば、各列の凸部3をこの列に直交する方向に投影したときに、特定の列の各凸部3の投影像の間に(好ましくは中間に)、これと隣在する列の凸部の投影像が配置されることをいう。そして略千鳥上というときには、上記完全な千鳥状の配置のみではなく、製造上不可避的なずれなど、わずかに上記の配列がずれている場合も含む意味である。このように凸部3を略千鳥格子状に配列することにより、着用者の肌に当接する圧力が均一に分散され良好なクッション性が実現され、また液体の吸収保持においても均一にシート全体においてその作用が発揮されるため好ましい。
本実施形態の表面シート10は上層シート1及び下層シート2との2層構造とされているが、上層シート1のみにより構成されていてもよい。その場合の使用形態としては、例えば吸収性物品において吸収体と上層シート1のみからなる表面シートとを、上層シート1の非肌当接面側(谷部4を形成している側)が接するように積層して用いることが挙げられる。このようにすることで、肌当接面側に突出するように配された凸部3、内部空間6、及び尾根部5のネットワーク構造によるクッション性や柔軟性といった作用効果は上述の2層構造と同様に発揮される。さらに液体や軟便等の処理機能についても、凸部のドーム状の内部空間6が示す作用効果は上記のものと同様である。特に上記の一層構造の表面シートを吸収体に積層した態様によれば、空間6の内部に隠蔽された軟便等が直接吸収体に接しているため移行しやすく、吸収体に速やかに吸収保持される点で好ましい。また、密度が高められた尾根部5や谷部4に移行した水分が下層シート2を介さずに、直接吸収体に吸収保持される点で好ましい。なお本実施形態の表面シートを上層シート1の1層構造として製造する好ましい製造方法については後述する。
図4は本実施形態の表面シートにおける4点エンボスパターンを模式化して示したパターン図である。同図においては12行×12列のマス目によりエンボスパターンが示されており、4点を1組としたエンボスパターンの各構成要素として示すと下記のとおりとなる。すなわち、エンボス(1,3),(3,1),(3,5),(5,3)の4点で第1要素が構成されており、その右隣りにおいてはエンボス(3,5)を共有して、(1,7),(3,9),(5,7)とともに第2要素を構成している。第1要素の下方には、第1要素の点(5,3)を共有して、(7,1),(7,5),(9,3)とともに第3要素を構成している。さらにこの右側の第4要素は、エンボス(3,5),(5,3),(7,5),(5,7)を第1〜3のいずれかと2点のエンボスを共有して構成されている。このようにして、隣在する4点のエンボスパターン要素が少なくとも1つのエンボスを互いに共有しながら広く4点エンボスパターンが形成されている。
そして、本実施形態においてはエンボスパターン要素の略中央に、前記の凸部頂部が配されることが好ましい。すなわち、図4の4点エンボスパターンの第1〜4の要素でいうと、第1要素の(3,3)、第2要素の(3,7)、第3要素の(7,4)、第4要素の(5,5)にそれぞれ凸部頂部が配されることが好ましい。そして各エンボスを通過する断面においては図2に示したように谷部4を介して凸部3が連設された形態となり、隣在するエンボスの中点を通る断面においては、図3に示したように尾根部5を介して凸部3が連設された形態となる。
このような凸部の配置形態とすることで、高い液漏れ防止作用を発揮する。詳しくは、吸収性物品の表面シート10を例えば使い捨ておむつ、特に高粘度の排泄物である軟便の排泄がある低月齢児用のおむつの表面シートとして用いた場合に、次のような作用を奏する。軟便は高粘度であることから、一般に表面シートを速やかに透過しづらくシート上に滞留して横流れを起こしやすい。これに対して、本実施形態の吸収性物品の表面シート10によれば、凸部3によって取り囲まれて形成されたすり鉢状の谷部4(図1、図2参照)に軟便が捕捉される。それにより横流れを起こしづらくなり、軟便に含まれる液体分の吸収体方向への移動が促進される。その結果、軟便からの液漏れを効果的に防止することができる。そして、凸部3の内部には空間であり、そこに軟便を吸収保持して、軟便を上層シートにより覆い隠し隠蔽することができる。このとき上述のように凸部側壁部3cに細孔及び薄部があることにより軟便等がドーム状の内部空間6にさらに移行しやすくなる。この隠蔽作用は凸部3単独でも発現するものであるが、千鳥格子状に凸部を配列することにより、一層その作用が高まりシート表面全域にわたり清潔な状態を維持することができる。上記作用について軟便を例に説明したが、それと同様に高粘度の排泄物である経血を吸収するための生理用ナプキンの表面シートとして用いたときにも同様の作用を奏する。
本実施形態の吸収性物品の表面シート10において、上層シート1を構成する繊維は特に限定されず、例えば1〜6dtexのものを用いることが好ましい。下層シート2を構成する繊維についても特に限定されず、例えば1〜6dtexのものを用いることが好ましい。本実施形態においては上層シート1及び上層シート2をそれぞれ1層構造のものとして示したが、各層を2層以上にしてもよく、また各層の間及び/又は外側に他の機能性の層を設けてもよい。上層シート1及び下層シート2の坪量は特に限定されないが、通常の吸収性物品に適用することを考慮すると上層シート1及び下層シートの坪量がそれぞれ8〜40g/mの範囲にあることが実際的である。
上層シート1及び下層シート2として不織布を用いることが好ましい。この不織布としてはカード法により製造されたエアースルー不織布やヒートボンド不織布、その他にスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、上層シート1と下層シート2とを後述するように熱融着によって接合する場合には、前記不織布に熱融着繊維が含まれることが好ましい。熱融着繊維としては、PET/PE、PP/PEなどの芯鞘構造のものが好ましい。また、前記不織布には、界面活性剤等を用いた親水化処理を施すことが好ましい。上層シート1及び下層シート2の構成繊維の種類のうち、好ましい組み合わせはPET/PE繊維どうしの組み合わせである。中でも、本発明においては所定方向における破断伸度(脱力状態にある不織布の元の長さをL1とし、伸長した時の長さをL2としたとき、特定の方向に不織布を伸長して破断させたときの伸長率((L2−L1)/L1))が100%以上である不織布を用いることが賦形形状の均一性の観点から好ましい。
次に、本実施形態の吸収性物品の表面シート10の好ましい製造方法を図面を参照しながら説明する。図5は本実施形態の吸収性物品用シートを製造する一実施態様を模式的に示す工程説明図である。同図に示すように、まず上層シート1を原反ロール(図示せず)から繰り出す。これとは別に、下層シート2を原反ロール(図示せず)から繰り出す。上層シート1及び下層シート2はそれぞれ、そのMD方向(方向d及びd)に沿って繰り出される。
繰り出された上層シート1を、周面が凹凸形状となっている第1ロール51と、その凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロール52との噛み合わせ部Pに噛み込ませて上層シート1を凹凸賦形する。第1ロール51における各歯車の歯溝部には吸引孔(図示せず)が形成されていることが好ましい。この歯溝部は、第1ロール51の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1ロール51(回転方向:矢印d)と第2ロール52(回転方向:矢印d)との噛み合い部Pから上層シート1と下層シート2とを接合した表面シートを送り出す部分Pに至るまで吸引されるように制御されていることが好ましい。これにより、第1ロールと第2ロールとの噛み合いによって凹凸賦形された上層シート1は、吸引孔による吸引力によって第1ロール51周面に密着したまま、その凹凸賦形された状態が保持される。上記周面に凹凸を有するロール51、52については、例えば特開2004−174234号公報の図2〜5に記載のものを用いることができる。
合流部Pでは、上層シート1を第1ロール51の周面に吸引密着させた状態で、別に供給されている下層シート2と積層する。ここで両シートを第1ロール51と第3ロール53とで挟圧することが好ましい。第3ロール53としては凹凸を有しないアンビルロールを用いることが好ましく、第3ロール53のみを所定温度に加熱しておくことが好ましい。これによって、第1ロール51の歯車の凸部先端に位置する上層シート1と下層シート2とが熱融着によって接合される。この押圧接合により表面シートとしたときに谷部4(図1、図2参照)が形成される。一方、歯車の凹部においては上層シート1及び下層シート2は挟圧されず、熱融着が起こらず凸部3(図1、図2参照)が形成される。すなわち、本実施態様においては第1ロール51と第2ロール52とによるシート賦形において圧熱加工はしていないため、凸部3の頂部において柔らかさが保たれる。したがって表面シートとして用いたときに、谷部4となる部分においては加熱狭圧され不織布繊維が熱溶融し硬化していても、凸部3は柔らかく突出しているため、硬い部分が直接肌に当接することなく良好な触感が実現される。なお尾根部5の形成については後述する。
本実施態様の製造方法においては、上層シート1と下層シート2とが貼り合わされた複合シートが、第1ロール51及び第4ロール54によって挟まれた部分Pで加熱挟圧される。このとき第4ロール54は第3ロール53と同様に外周に凹凸を有さないアンビルロールであることが好ましく、所定の温度に加熱されていることが好ましい。このようにして、しっかりと固定された接合部が形成され、凸部の形状安定性が維持される。
図6は本実施形態の吸収性物の表面シートを製造する別の実施態様を模式的に示す工程説明図である。同図に示すように、第1〜第4のロール(51,52,53,54)を用いる点で上記の図5に示した実施態様と共通する。しかし、図6に示した実施態様においては下層シート2を用いず、上層シート1のみが用いられており、この上層シート1に凸部3と谷部4となる凹凸が賦形されている。したがって、谷部4において他のシートと接合されていないが、第1ロール51と第3ロール53もしくは第4ロール54とで加熱狭圧され、不織布繊維が熱溶融され硬化した状態にされている。このようにして単に凹凸形状に屈曲させられているだけでなく、上述した表面シートとしたときに特定の機能を示す凸部3及び谷部4となるよう賦形される。その他、第1ロール51と第2ロール52との歯の噛み込みによるシート賦形及び第1ロール51によるP〜Pにかけての吸引は、図5に示した実施態様と同様である。
図7は図5に示した実施態様の製造方法において第1ロール及び第2ロールの歯が互いに噛み込む状態を模式的に示したパターン図である。図7においては、第1ロール及び第2ロールがかみこんでいる点Pにおける両ロールの歯の先端を図5の矢印VIIの方向から投影した状態で示しており、実線が第2ロール52の歯の先端52aを示し、点線が第1ロール51の歯の先端51aを示している。ただし、実際の両ロールは正面図(図5参照)において円形であり互いに1列の歯でのみ噛み合うが、図7においては、これを平板が面で噛み合うようにみたてて(あるいは点Pにおける噛み合い状態を時間的に連続してMD方向に送ってパターン図化して)示している。
以下に上記両ロールの歯の噛み合い状態についてさらに詳しく説明する。図7に示したパターン図においては、図5において方向VII(側面)から見た状態であるから、歯の先端52aが紙面奥側の方向に没入する方向に、歯の先端51aが紙面手前側に突出してくる方向に動作し、両者が噛み合うといえる。そして、歯の先端52aが紙面奥側に没入しながら上層シート1(図7では示されていない。)を押し込み表面シートとしたときに凸部3(図1参照)をなす局部的な屈曲形状を多数賦形する、一方、歯の先端51aが上層シートを紙面手前側に押し上げ表面シートとしたときに谷部4(図7では示されていない。)をなす局部的な屈曲形状を多数賦形する。このように凹凸賦形された上層シートが第1ロールとの密着状態を維持され、先に述べたように、別途送られてきた下層シート2と積層される(図5参照)。そのとき、第1ロール51の歯の先端51aと第3ロール53の周面とで両シートが加熱狭圧され、該歯の先端51aの部分で熱溶融接合されたエンボスが形成される。
ここで、更に詳しく、歯の先端52aのうちT〜Tを取り出していうと、歯の先端T〜Tがそれぞれ凸部3となる部分を形成する。このとき、歯の先端51a,52aで押し出される部分の不織布は引き伸ばされ、この先端部に位置する繊維の一部には両ロールの歯の隙間に入り込もうとする作用が生じる。この繊維の流動作用により、先に述べた歯の先端Tを例にいうと、該歯の先端Tの部分にあった繊維はこの周辺の領域71に押し出され、この領域71においては上層シート1の厚み及び密度が高まる。これを高密度化と呼ぶ。この繊維が密集した状態になった領域71が、表面シートとしたときに尾根部5を構成する(図1、図3参照)。これに対し、領域72においてはむしろシート内の繊維が引き出され疎になる作用が優位となり、薄くなるないしはシートに細孔が形成された状態になる。この部分が、好ましくは、表面シートとしたときに凸部側壁部3cにおける細孔ないしは薄部が形成された部分となる。また本実施態様の製造方法では、シートのMD方向にテンションがかけられ、これにより、上述した領域71ないし72の疎密が的確に調節される。また、上述のように不織布の繊維がシート内で局部的に延伸されながら移行するため、不織布のもみほぐし効果によりシート自体の柔らかさが増す点で好ましい。
この尾根部5となる領域71は本実施態様においては歯の先端Tの四方に形成されているが、本発明においては少なくとも二方に形成されていればよい。尾根部5の形状や1つの凸部3に対する数は、第1ロール及び第2ロールに形成する歯の配列や形状、又は歯と歯の空隙の形状や大きさを調節することにより適宜に変化させることができる。本発明においては表面シートとしたときの性能及び生産性の観点から、凸部の四方に尾根部5が配されるようにすることが好ましく、該四方の尾根部5を、これらの中心となる凸部3に対してシート面において四等分する、つまり略45°の角度で配置されることが好ましい。
繊維で満たされた尾根部5を確実に形成するためには、第1ロール51及び第2ロール52の歯の面積の比率、および繰り返し間隔を下記の条件のように設定することが好ましい。つまり、1つの歯(先端面)52aを囲む四つの歯(先端面)51aの中心を結んだ基本面積Aに対する51aの面積51Aの比S1(S1=51A/A)と基本面積Aに対する52aの面積52Aの比S2(S2=52A/A)がいずれも0.08〜0.2、より好ましくは0.1〜0.15の範囲であることが、繊維が満たされた尾根部5を安定して得ることができる点で好ましい。
S1が上記範囲より小さいと51a間の距離が長くて71部の面積が大きくなり、尾根部5が中空になり易い。S1が上記範囲より大きいと、尾根部5の高さが低くなり凸部のドレープ性やフィット感が悪くなる。また賦形の山のボリュームが小さくなる。S2が上記範囲より小さいと高密度化の作用が十分でないため、尾根部5が潰れやすくなる。S2が上記範囲より大きいと高密度化の作用は大きくなるが肩部3bが高くなり浮き上がるため、尾根部5が下層シート2と離れて尾根部5が中空になり易い。
間隔74は適宜に定めることができるが、例えば2.0〜12mm、より好ましくは2.8〜3.6mmである。
間隔75は、例えば0.5〜3.0mm、より好ましくは0.6〜1.2mmである。51aの幅76は、例えば0.5〜3.0mm、より好ましくは0.6〜1.4mmである。52aの幅77は、例えば0.5〜3.0mm、より好ましくは0.6〜1.4mmである。間隔78は、例えば0.5〜3.0mm、より好ましくは0.6〜1.4mmであることが好ましい。51aの長さ79は、例えば0.5〜3.5mm、より好ましくは0.6〜1.2mmであることが好ましい。52aの長さ73は、例えば0.5〜3.5mm、より好ましくは0.6〜1.4mmである。さらに第1ロール及び第2ロールの歯の高さは、目的とする表面シートの形態によって適宜に定めることができるが、例えば0.8〜9mmであることが好ましい。
なお、図7及びこれに基づき第1ロール及び第2ロールの歯の噛み込みによるシートの賦形について図5に示した実施態様の製造方法との関係で説明したが、このことは図6に示した実施態様の製造方法においても同様である。また、MDの破断伸長率が100%以上の不織布でも問題なく賦形することができ、MDの破断伸長率が100%未満の不織布に比べるとより均一な賦形形状に加工できる。
図8は本発明の吸収性物品の表面シートを用いた使い捨ておむつを一部切欠して模式的に示す斜視図である。同図に示した使い捨ておむつ80は、同物品において一般的な形態を有しており外包体81と吸収性部材88とを組み合わせて形成されている。
外包体81は1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。外包体81には横漏れ防止ギャザー84が設けられており、乳幼児の運動による液漏れの防止に効果を奏する。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。
さらに本実施形態のおむつはテープ型のおむつとして示しており、背側rのフラップ部にはテープ85が設けられている。このテープを腹側fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して装着固定することができる。このとき、おむつ中央cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収性部材88が乳幼児の臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。
吸収性部材88には、厚みのある吸収体83の表面に本実施形態の表面シート10が配設されている。通常吸収材自体は肌当りがあまり良くなく、液体を一度吸収した後にはベタついた感じを与えてしまうが、上記のように本実施形態の表面シートを乳幼児の肌に当接するように配設したことで肌触りが良化し、サラッとした触感となる。特に空間を保持した凸部と、谷部、及び特別の形状を有する尾根部とがネットワーク構造により、上述した多様な作用を発揮し、大幅に吸収性物品の着用感、フィット性、液体吸収性能等が向上する。しかも柔らかい肌あたりで運動などにより多少おむつの位置がずれたときにも違和感を与えない。さらには、丸みを帯びた凸部が多数表面に連設されているため、外観においても柔らかさを感じさせ、看者に対し肌にやさしい印象を与える。
本実施形態のおむつ80において、外包体81、テープ85、ギャザー84、吸収体83等に用いられる材料は通常おむつに用いられるものを用いることができ、特に限定されるものではない。本発明の吸収性物品の表面シートは、上記使い捨ておむつに限らず、ナプキン及びパンティーライナー等の各種の吸収性物品にも好適に用いることがきる。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
(実施例)
上層シートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量18g/mのエアースルー不織布を用いた。上層シートは賦形加工により、MD方向に折り曲げられ目付が上がるため賦形後は22g/mになった。(上層の繰出し速度は、下層シート繰出し速度の約20%増であった)。下層シートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量18g/mのエアースルー不織布を用いた。これらのシートを用い、図5に示す装置を用いて、図7に示す歯の噛み込みパターンとなる第1ロール及び第2ロールにより、図4に示す4点エンボスパターンの表面シート(試験材1)を作製した。得られた表面シート(試験材1)は図1〜図3に示したシートの形態を有し、凸部の高さhはおよそ1.80〜2.20mmであり、尾根部の高さhはおよそ1.00〜1.50mmであった。この表面シート(試験材1)の上層シート側の表面形状を表面形状解析顕微鏡(キーエンス社製、VHX−900(商品名))で測定し斜視図として画像化したものを図9に示す。同図中、「t」と記した位置に凸部(凸部の頂点)があることを示し、「b」が谷部、「o」が尾根部をそれぞれ示す。なお、図中における寸法の単位は「um」と表記されているが「μm」の意味である。
(比較例1)
上層シートを構成する繊維ウェブとして、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる7.7dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量16g/mに、下層シートを構成する繊維ウェブとして、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる3.3dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を坪量24g/mを積層したエアースルー不織布を用いた。これらのシートを用い、比較のための表面シート(試験材2)を得た。表面シート(試験材2)の厚みはおよそ1.0mmであった。
(比較例2)
上層シートと下層シートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量20g/mのエアースルー不織布を2枚重ね、超音波によりドットパターン接合(φ2mm、ピッチ7mmの千鳥配列パターン)したものを用いた比較のための表面シート(試験材3)を得た。表面シート(試験材3)の厚みはおよそ1mmであった。
〔表層液戻り試験〕
重量を測定した表面シート(試験材)を吸収材(フラッフパルプと高吸収性ポリマーとの積繊体であり、パルプの坪量及びポリマーの坪量をいずれも257g/mとしたものを用いた。)の上に載置した。次に、表面シートの中心部より定量ポンプを使い80gの人工尿を注入する。注入後、10分間放置する。その後、表面シートの重量を測定し評価前の重量を差し引いた。その値を不織布の表層液残り量とした。この液残り量が300mg以下であれば実用上の要求を満足し、150mg以下であれば実用上の要求を高いレベルで満足しうる。
〔横通気試験〕
表面シート(各試験材)について、KES圧縮試験機(カトーテック(株)社製、KES FB−3 AUTO−A(商品名)、接触部円形(面積2cm)を用い、35g/cmの荷重を加えたときの厚み測定した。次にガーレー試験機を用いる。アタッチメントを使いガーレ試験機の空気の通過面積を1cmにし、表面シートをKES圧縮試験機で測定した厚みに合せてガーレ試験機にセットする。ガーレ試験機で300ccの空気が通過する時間を測定する。この横通気試験の結果は表面シートにおける空気の移動しやすさを示し、横通気量が30cc/sec以上であれば実用上の要求を満足し、70cc/sec以上であれば実用上の要求を高いレベルで満足しうる。
〔KES厚み〕
各表面シート(各試験材)について、KES圧縮試験機(カトーテック(株)社製、KES FB−3 AUTO−A(商品名)、接触部円形(面積2cm)を用い、0.5g/cm及び、20g/cm、50g/cmの荷重をそれぞれ加えたときの厚み(凸部の高さh(図3参照)に下層シートの厚さを加えたサンプル厚さ)を測定した。この厚さの値が大きいほど、おむつを実際に着用して使用したときに良好なクッション性が維持される。具体的に、上記0.5g/cmの荷重条件でKES厚みが0.8以上であり、20g/cmの荷重条件でKES厚みが0.5以上であり、50g/cmの荷重条件でKES厚みが0.3以上であるとき、実用上の要求を満足しうる。上記0.5g/cmの荷重条件でKES厚みが1.2以上であり、20g/cmの荷重条件でKES厚みが0.8以上であり、50g/cmの荷重条件でKES厚みが0.5以上であるとき、極めて良好なクッション性を満足しうる。
〔圧縮硬さ(KES)試験〕
各表面シート(各試験材)について、KES圧縮試験機(カトーテック(株)社製、KES FB−3 AUTO−A(商品名)、接触部円形(面積2cm)を用い、50g/cm荷重までの圧縮特性を測定した。上記圧縮硬さ(KES)試験において、LCの値は小さい力での圧縮性を意味し、0.75以下であれば実用上の要求を満足しうる。WCの値はふんわり感を意味し、0.5gf・cm/cm以上であれば実用上の要求を満足し、1.0gf・cm/cm以上であれば実用上の要求を高いレベルで満足する。RCの値は圧縮回復性を意味し、30%以上であれば実用上の要求を高いレベルで満足する。
〔ドレープ性、KES曲げ特性B’試験〕
各表面シート(各試験材)について、KES圧縮試験機(カトーテック(株)社製、KES FB−2 AUTO−A(商品名)を用い、純曲げ理論に準じた一定曲率(最大曲率=±2.5cm−1)を与え測定した。上記ドレープ性、KES曲げ特性B’試験において、値が小さいほど曲がり易いことを意味し、一方向(MD方向)において0.35gf・cm/cm以下であれば実用上の要求を満足し、0.2gf・cm/cm以下であれば実用上の要求をで満足する。他の方向(CD方向)において0.20gf・cm/cm以下であれば実用上の要求を満足する。
〔座屈有無(MD2つ折り部)試験〕
各表面シート(各試験材)について、二つ折り(MD方向)にしたあと開いた時の折れ目の状態を確認した。この評価において○以上であれば実用上の要求を満足し、◎以上であれば実用上の要求を高いレベルで満足する。
×:折れ目が多数付いてシワや角ができ、折れ目の硬さを感じる。
△:折れ目が付いて複数のシワが残り、折れ目の硬さを少し感じる。
○:折れ目は付くがシワは付かない。折れ目の硬さは殆ど感じられない。
◎:折れ目が付かず元の状態のまま。折れ目の硬さは全く感じない。
〔手触り感触試験〕
上記の表層液残り量測定試験を行ったおむつの表面シートを手のひらで直接触って触感を確認した。おむつに組み込む前の表面シートの表面(上層の表面)を手のひらで直接触れ、その感触を以下の基準に従って判定した。判定は3人以上で行い、最も支持の多い意見を判定の結果とした。判定が1人ずつに分かれた場合は、それらの中間となる意見を判定結果とした。この評価において○以上であれば実用上の要求を満足し、◎以上であれば実用上の要求を高いレベルで満足する。
×:硬い。抵抗感(ざらざら感)がある。
△:やや硬い。抵抗感(ざらざら感)が少しある。
○:やや柔らかい。なめらかな感じが少しある。
◎:柔らかく、なめらかな感じがある。
実施例と同じ目付の比較例1と2を比べると、何れの性能も優れている。比較例1では、実施例の2.2dtexより太い7.7と3.3dtexを使用しているが、厚みが十分ではなく比較例2と殆ど同じである。また、太い繊維を使用するとドレープ性、座屈、感触が大きく低下する。
比較例2には、実施例と同じ繊維の太さ2.2dtexを用いている。超音波エンボス部分が折れの起点となり、ドレープ性と座屈折れについては良好な値を示しているが、エンボスにより厚みが少なく、液戻りが悪く、硬いエンボス部分に触れると硬さを感じるため感触が低下している。
上記の結果より、本発明による表面シート(試験材1)は、比較例のものに対して高い表面液戻り性及び横通気性を示すことが分かる。また、本発明の表面シート(試験材1)は、上記表面シートの各特性評価(KES厚み試験、圧縮硬さ試験、ドレープ性試験、座屈有無試験、及び手触り感触試験)において比較例のものに対して優れた結果を示し、肌の起伏に追従しやすく柔らかくなめらかな風合いを有するものであることが分かる。
本発明の表面シートの一実施形態における要部を一部断面により模式的に示す斜視図である。 図1の領域IIを拡大して示す断面図である。 図1のIII−III線断面を拡大して示す断面図である。 本実施形態におおける略千鳥状の4点エンボスパターンを模式化して示すパターン図である。 本実施形態の表面シート(2層構造)の好ましい製造方法を説明するための工程説明図である。 本実施形態とは別の実施形態の表面シート(1層構造)の好ましい製造方法を説明するための工程説明図である。 第1ロール及び第2ロールの歯が噛み込んだときの歯の先端の配列をパターン化して示すパターン図である。 本実施形態の表面シートを用いた使い捨ておむつを一部切欠して模式的に示す斜視図である。 実施例で作製した表面シート(試験材1)の表面形状を表面形状解析顕微鏡で測定し斜視図として画像化した表面形状解析図である。
符号の説明
1 上層シート
2 下層シート
3 凸部
3a 凸部頂部
3b 凸部肩部
3c 凸部側壁部
4 谷部
5 尾根部
6 凸部内部の空間
10 表面シート
51 第1ロール
51a 第1ロールの歯(歯の先端面)
52 第2ロール
52a 第2ロールの歯(歯の先端面)
53 第3ロール
54 第4ロール
80 使い捨ておむつ
81 外包体
83 吸収体
84 横漏れ防止ギャザー
85 テープ
88 吸収性部材

Claims (5)

  1. 上層シート及び下層シートからなり、
    前記上層シートは、繊維からな、内部に空間を保持した丸みを帯びたドーム状の凸部が略千鳥状に配置され、前記凸部がそれぞれその四方に内部が繊維で満たされた尾根部を有し、前記凸部が前記四方の尾根部により互いに連結され、前記尾根部の高さが、前記凸部の高さの15%〜90%であり、前記凸部に囲まれた谷部を有し、
    前記上層シートと前記下層シートとが前記谷部で互いに接合された吸収性物品の表面シート。
  2. 前記谷部の密度が前記凸部及び前記尾根部における密度よりも高い請求項1に記載の吸収性物品の表面シート。
  3. 前記尾根部の密度が、前記凸部頂部の密度以上である請求項1または2に記載の吸収性物品の表面シート。
  4. 破断伸度100%以上の伸度を有する不織布からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面シート。
  5. 前記四方の尾根部は、前記凸部を、該凸部が略千鳥状の配列をなす面で略四等分する位置に配された請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面シート。
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