JP2013520574A - 転炉スロッピングの予測及びランスの最適化のためのシステム - Google Patents

転炉スロッピングの予測及びランスの最適化のためのシステム Download PDF

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Abstract

【課題】転炉スロッピングの予測及びランスの最適化のためのシステムの提供。
【解決手段】容器中の鉄鋼の表面に酸素を吹きつけるためのランスであって、ランスキャリッジに連結され、データ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある加速度計と通信状態にあるランスを準備し、上記容器に製鋼原料を仕込み、ランスを容器の中へ降下させて原料に酸素を注入し、ランス振動を示す加速度計からの信号を取得し、上記振動信号を処理してランス振動の周波数成分を決定し、該周波数成分のレベルと所望の動作値とを比較し、少なくとも1つの鉄鋼製造工程パラメータを、周波数成分のうちの少なくとも1つのレベルに基づいて調節することを含む、容器中で鉄鋼を製造する方法。
【選択図】図1

Description

鉄鋼製造における塩基性酸素転炉の制御、特に、ランス内の酸素流量の最適化、スロッピングの予測及び/又は検出、鉄鋼のバッチの終点の決定。
上吹き塩基性酸素鉄鋼製造工程において、容器に溶銑と言われる液体炭素飽和合金、屑鋼、及びこの工程にCaO及びMgOを供給するフラックスを仕込む。水冷されたランスを容器に差し込み、ランスを通じて超音速で酸素が注入される。上記ランスの先端には少なくとも1つの、大抵は複数の孔が設けられ、この孔から酸素が排出され、仕込み原料の表面に衝突する。酸素は仕込み原料の金属成分及び炭素成分と反応し、発熱反応により熱が発生する。酸素は徐々に化学的に反応し、仕込み原料中に金属状態で存在する全てのシリコン及びアルミニウムを実質的に酸化する。
さらに、仕込み原料中のほとんどの炭素は酸化され、典型的な仕上げ粗鋼の炭素含有量は約0.02%から約0.06%であり、この濃度において溶鋼はフラットバスと言われる。炭素含有量がこの低濃度に近づくと、酸素はさらに仕込み原料中のマンガン及び鉄とも反応する。フラットバス状態において、マンガンの多くは酸化され、スラグ中にMnOとして存在する。さらにフラットバスにおいて、鉄は鉄鋼中の酸素濃度との平衡に達する程度まで酸化される。例えば、鉄鋼中の酸素含有量は、ブロー工程の終了時のスラグ中に、酸化鉄濃度が約28%であるとともに、約0.08%に達してもよい。該スラグは各酸化物成分同士が溶融することにより形成され、約40%のCaO、26%のFeO、10%のSiO、10%のMgO、5%のAl、5%のMnO、及び残りを補填するいくつかの他の少量成分を含む。
このスラグは、リン及び他の不純物を鉄鋼から取り除く役割を効果的に果たすことができる。酸化、発熱及び精練の工程は複雑で、通常プロセスモデルによって監視及び制御される。プロセスモデルによって、終点を予測するために、マスバランス、熱平衡、熱力学的反応及び運動速度を考慮し、終点を予測し、最短時間そして最小限のコストで所望の結果を達成する。正確に測定できない多くの因子が工程に影響を及ぼすので、通常プロセスモデルは所望の結果を常に引き出すには不十分である。その結果、最終鉄鋼の化学的性質又は温度を調整するために再ブローが必要になることもある。これには費用も時間もかかる。さらに、この工程は、仕込み原料のスロッピング及び鉄鋼の噴出の原因となり、結果的に収率が悪くなり費用もかかる。スロッピングとは容器内で仕込み原料が左右に振動することであり、仕込み原料は容器の壁の反対側の部分に沿って前進および後退する。スロッピングが激しくなると、仕込み原料が容器の上部縁からあふれ出る可能性があり、その結果、溶鋼及びスラグが容器から噴出してしまう。
塩基性酸素転炉(通常BOFと呼ばれる)からの原料のスロッピング及び噴出に影響を与える因子は数多くある。例えば、酸素注入速度、仕込み原料のシリコン含有量、槽内容物から出ている部分のランスの高さ、BOFの有効体積に対する槽内容物の体積、BOF内部の形状及びアスペクト比、槽内容物の温度、一酸化炭素(CO)化合物がさらに酸化されてCOになる量、ランス先端の孔の摩耗量、酸素衝突の力によって形成される空洞の形状及び安定性、金属相及び酸化物相の乳化程度、及びスラグの化学組成などがある。
転炉内で起こるスロッピングによる原料の噴出の問題は業界周知であり、この問題の特性分析及び軽減するための試みが多くなされている。スロッピングは、仕込み原料中のシリコンが酸化された後の、酸素吹き込み工程の約30%から約60%が終わった時点で始まり、スラグが流体となり、CO発生率がピークに近づくことが観察されている。特許文献1において、Kimは、スロッピング防止のために、COの発生がピークである期間付近で、酸素吹き込み速度及び槽内容物からでているランスの高さを減少させることを教示している。これは有効である一方、工程を遅らせることになり、生産性が制限されることがある。さらに、吹き込み速度及びランス高さを減少させる対策を講じる時間は変動するものであり、よく分かっていない。
スロッピングを緩和する他の方法として、BOF内のスラグの化学的性質を制御する試みがある。例えば、酸素ジェットが充分深く槽内容物に差し込まれない場合、酸化鉄が過剰に形成されると考えられる。過剰な酸化鉄はスラグの化学的性質に影響を与える可能性があり、スロッピングの量を増加させる。特許文献2において、Bleeckらは、過剰なFeO含有量がスロッピングにより減り始める際に炭化カルシウムをBOF内のスラグに添加すると、スロッピングの程度が減少することを教示している。試薬の炭化カルシウムは高価で、その有効量は変動する可能性がある。さらに、添加の最適時間は分からない場合もあり、試薬は必要な実際の時間よりも前に消費されてしまう可能性もある。これらの事項及び他の理由により、この方法は通常当該技術分野では使用されていない。
通常、スロッピングの発生に先だって、スラグ内に高速でガスが発生し、スラグが発泡し、BOF容器の上方へと上昇する。そのため、容器内のスラグの量を監視できれば、スロッピングの発生を予測できるはずである。この目的のため、特許文献3において、Sakamotoらはマイクロ波測定装置を使用してBOF容器内のスラグの泡の高さを測定することを教示している。実際には、BOF容器内の環境は厳しく、マイクロ波装置を維持するのは難しい。特許文献4において、Aberlらは、BOF容器から発生する音を、サウンドピックアップ装置を使用して監視することを教示している。仕込み原料に酸素を吹き込む際に音が発生するが、その音はスラグが泡立ってランスを上がってくるに従って減衰する。Aberlらは、減衰量と容器内を上昇する時のスラグの量とを関連付け、それによってスロッピング発生前に緩和対策を講じることができる。しかし実際には、ピックアップ装置に達する音の速さ、周波数、又は強度に影響を与える側面が多くあり、例えば、温度や粉塵発生量などが挙げられる。結局、この方法の精度及び効率は充分でない可能性もある。さらに、ピックアップ装置は、設置されている環境が厳しいと故障しがちである。
スロッピング事象中の仕込み原料のはずみ(momentum)による容器及びランスの振動も、BOF容器内でのスロッピングの一側面である。このはずみは容器とランス装置の両方にかなりの振動を与える。特許文献5において、Emotoらは、加速度計を用いてBOFランスの水平運動を監視することを教示している。転炉内でのスロッピングアクションが原因でスラグがランスに衝突し、水平運動が生じるが、この水平方向のランス加速の程度は転炉内のスロッピングの程度と相関がある。この方法はシンプルかつ効率的であるが、問題がいくつかある。単軸方向での水平加速度は、転炉内のランス上での衝突角度及び運動量分散によるスロッピングの程度を示すのに不十分な場合がある。測定されたスロッピングの量は、転炉から噴出した原料の量とも鉄単位の損失とも相関はない。したがって、いつスロッピングの緩和対策を講じるかを厳密に決定できない。このように、この方法はスロッピングを予測するものではなく、むしろ既に進行中のスロッピング事象の指標となるものである。
ある特定の理屈に制約されることを望むわけではないが、出願人は、衝突空洞への酸素ジェットの衝突の指標となるランスの振動を監視する際に対象となる周波数があると判断している。この振動の強度は、発泡したスラグが酸素ランスを長さ方向に上がってくるにつれて減衰する。2つの周波数、すなわち、衝突空洞内の酸素衝突によって起こる振動を示す高い方の周波数と、スロッピングしている仕込み原料による衝撃で起こるランスの振動を示す低い方の周波数とを監視することで、より有益な情報が得られる(本概念は、非特許文献1において発表された。)。
高周波数領域の振幅の減衰は、低周波数領域の振幅の増加によって明らかになるスロッピングの発生に先行して起こり、また、その兆候を示すものであるとわかった。緩和対策はスロッピングが実際に発生する前に行われ、同時にその有効性はスロッピング強度を監視することによって測定できるので、これは重要な発見であった。しかし、引用文献に示されるように、まだこの方法には欠陥がある。スロッピング強度と転炉から噴出する原料の量およびタイミングとを関連づける決定的な証拠はない。全ての操作に、許容可能なレベルのスロッピングが発生し、さらに工程所要時間を最小限にし、酸素吹きつけ速度を最大にしたい、という要望もある。しかしながら、前述の非特許文献1の方法では、鉄鋼の製造を最大限に増やしたいという要望を満たしつつ、同時にコストを最小限に抑えるのに、どの程度までスロッピングが許容されるかは検討されていない。さらに、出願人の知る限りでは、公知技術において、酸素吹きつけ速度、ランス高さ、及びスロッピングの間に定量的相関関係があるとされた例はない。
仕込み原料の所望の化学的性質、及び注入できる状態の仕上げ鋼へと転換する処理量を維持しつつ、スロッピングの発生を検出でき、工程条件を調整してスロッピングによって容器からの鉄鋼が噴出するのを防止できる塩基性酸素転炉における鉄鋼製造の装置及び方法が依然として求められている。さらに、酸素が過剰に鉄鋼に導入されないように鉄鋼製造工程の終点をより確実に検出できる塩基性酸素転炉における鉄鋼製造の装置及び方法が求められている。
米国特許第5,584,909号明細書 米国特許第4,473,397号明細書 米国特許第4,210,023号明細書 米国特許第5,028,258号明細書 米国特許第4,398,948号明細書
"Vessel Slopping Detection" (本発明者との共著)、2005 Association for Iron and Steel Technology conference(ノースカロライナ州シャルロット)にて発表されたもの
したがって、本発明の下記の目的を少なくとも1つ以上満たすような、本発明の実施形態を提供する。
本発明は、垂直及び水平を含む三軸全て、及び複数の周波数におけるBOFランス振動を監視することを目的とする。
上記複数の周波数は、ランス上のスロッピング衝突を示す範囲、ランスを介した酸素ジェットフローによって消費されたエネルギーを示す範囲、及び槽内容物表面上への酸素ジェット衝突に起因する範囲を含む。
本発明はまた、容器から噴出する原料を記録し、BOF容器の周辺又は下の領域を撮像し、噴出された物質の相対量を決定するために画像解析を行い、原料が噴出した時間及び原料の噴出量と、対象となる周波数領域において観察された振動の増減との相関関係を求めることを目的とする。
本発明はまた、酸素ジェットフローがランス内を流れランス先端孔を通って排出され、ジェット衝突によって形成された空洞へ入ることによって起こるランスの振動を監視し、その振動の振幅を使用してランスを介した酸素流量を最適な量に調整することを目的とする。
本発明はまた、酸素ジェットが槽内容物表面に衝突した後、反射してランスの方へ戻ってくる際の反響エネルギーによって起こるランスの振動を監視し、この情報を利用して、スラグ高さの増加及びスロッピング事象の兆候を示すことを目的とする。
さらに、本発明は、槽内容物表面への酸素ジェットの衝突に対応するランスの振動を監視し、その振動と鉄鋼中の炭素の相対量との相関関係を明らかにすることにより酸素ブロー工程の終点を予測し、リブローの必要性を減少させることを目的とする。
より具体的には、本発明は鉄鋼製造容器内のスロッピングに関する前述のニーズを以下の方法により満たす。その方法とは、容器内で鉄鋼を製造する方法であって、容器中の鉄鋼の表面に酸素を吹きつけるためのランスであって、ランスキャリッジ(往復台)に連結され、データ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある加速度計と通信状態にあるランスを準備し、上記容器に製鋼原料を仕込み、ランスを容器の中へ降下させて上記原料に酸素を注入し、ランス振動を示す加速度計からの信号を取得し、上記振動信号を処理し、ランス振動の周波数成分を決定し、該周波数成分のレベルと所望の動作値とを比較し、少なくとも1つの鉄鋼製造工程パラメータを、周波数成分のうちの少なくとも1つのレベルに基づいて調節することを含む方法である。上記調節される鉄鋼製造工程パラメータは上記ランス内を通る酸素の流量であってよい。上記加速度計は三軸加速度計であってもよいし、あるいは上記ランスが3つの直交する軸方向の加速を測定する3つの一軸加速度計を備えていてもよい。
本発明によれば、初期のスロッピング事象を検出する、容器内で鉄鋼を製造する方法を提供する。その方法とは、容器中の鉄鋼の表面に酸素を吹きつけるためのランスであって、ランスキャリッジ(往復台)に連結され、データ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある加速度計と通信状態にあるランスを準備し、上記容器に製鋼原料を仕込み、ランスを容器の中へ降下させて前記原料に酸素を注入し、ランス振動を示す加速度計からの信号を取得し、振動信号を処理し、ランス振動の周波数成分を決定し、振動信号の長時間平均と短時間平均とを比較し、短時間平均信号の絶対値が第1の所定の閾値より小さくなったかどうか決定し、短時間平均信号の絶対値が上記第1の所定の閾値より小さくなった場合、容器内の初期スロッピング事象を示す第1の信号を生成する方法である。上記方法はさらに、短時間平均信号の絶対値が第2の所定の閾値より小さくなったかどうか決定し、もし小さくなっていたら、容器中のスロッピング事象の発生を示す第2の信号を生成することをさらに含んでもよい。上記方法はさらに、鉄鋼製造工程パラメータの少なくとも1つを調節し上記スロッピング事象を停止させることを含んでもよい。上記工程パラメータは上記ランス内を通る酸素の流量及び/又は容器中の前記ランスの位置であってもよい。上記加速度計は、上述の通り、三軸加速度計又は3つの一軸加速度計であってもよい。
本発明によると、鉄鋼中の酸素含有量の閾値レベルが検出される、容器内で鉄鋼を製造する方法を提供する。上記方法は、容器中の鉄鋼の表面に酸素を吹きつけるためのランスであって、ランスキャリッジ(往復台)に連結され、データ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある加速度計と通信状態にあるランスを準備し、上記容器に製鋼原料を仕込み、上記ランスを容器の中へ降下させて原料に酸素を注入し、ランス振動を示す加速度計からの信号を取得し、振動信号を処理してランス振動の周波数成分を決定し、振動信号の長時間平均と短時間平均とを比較し、短時間平均振動信号が鉄鋼中の酸素の量を示す所定の閾値を超えたかどうか決定すること、もし超えている場合は、鉄鋼中の酸素含有量を示す第1の信号を発生することから構成される方法である。上記方法はさらに、短時間平均振動信号が所定の閾値をどの程度超えたかを決定することと、その短時間平均振動信号が所定の閾値を超えた程度と鉄鋼中の酸素含有量との相関関係を示すことを含んでよい。上記方法はさらに、短時間平均信号の絶対値が所定の閾値に達した後に減少し始めるかどうかを決定すること、減少し始める場合は、上記鉄鋼中の余剰酸素含有量を示す第2の信号を発生することを含んでよい。上記方法はさらに、酸素の量を示す所定の閾値に達した後、上記ランス内を通過する酸素の注入を終了させることを含んでよい。上記加速度計は、前述したとおり、三軸加速度計又は3つの一軸加速度計であってよい。
本発明によると、さらに鉄鋼を製造するための装置を提供する。この装置は、容器と、その容器内に設置されたランスとからなり、容器内の鉄鋼の表面上へと酸素を吹き込むように構成されている。上記ランスは三軸加速度計を搭載するランスキャリッジ(往復台)に連結され、該加速度計はデータ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある。
当然のことながら、上記鉄鋼の製造方法は相反するものではなく、過剰なスロッピングが防止され、できる限り最短工程時間において、最適な鉄鋼の酸素含有量が達成される、最適な鉄鋼製造工程を実現するために、これらの方法は組み合わされてもよい。
本明細書は、下記図面が参照され、図面中、参照符号等は構成要素等を示す。
鉄鋼を製造するための塩基性酸素転炉の模式図であり、該転炉の監視及び制御のためのシステムである。 本発明による第1の鉄鋼製造方法のフローチャートである。 本発明による第2の鉄鋼製造方法のフローチャートである。 本発明による第3の鉄鋼製造方法のフローチャートである。
本発明は好ましい実施形態に関連して記載されているが、本発明は、記載された実施形態に何ら限定されるものではない。一方、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の趣旨および範囲に含まれるであろう全ての代替物、変更物、同等物を網羅することを意図する。
本発明の概略を理解するには図面を参照されたい。図面において、参照符号等は同一の構成要素を表すものとして終始使用される。さらに、本明細書において、全ての原料組成物のパーセント表示は、重量パーセントを表す。
まず図1を参照すると、塩基性酸素転炉容器5には、液状の溶銑と、スクラップと、フラックスからなる仕込み原料が供給される。酸素ランス3は、ランスキャリッジ4に保持されており、ランスキャリッジ4によって酸素ランス3は塩基性酸素転炉容器5の中に降下される。酸素は酸素ランス3内を通って注入され、酸素ランス3の先端22の孔(図示せず)を通して超音速で排出され、その衝突の力によって仕込み原料に空洞24が形成される。仕込み原料は化学反応及び該容器5内で発生する熱により溶鋼7及びスラグ6に変換される。この工程によって該容器5内に乱流が発生し、化学反応によるガスの発生によって、スラグ6の体積が増加する場合もある。スラグ6は該容器5内を動き、様々な強度で酸素ランス3に衝突する場合もある。
鉄鋼の製造工程において、様々な力が酸素ランス3にかかるため、ランスを支えているランスキャリッジ4にも力がかかる。これらの力によるBOF容器酸素ランスの加速は、加速度計センサ1によって監視されており、酸素ランス3と加速度計センサ1の両方が堅固にランスキャリッジ4に連結されていることによって、この加速度計センサ1は酸素ランス3との通信状態にある。(あるいは、酸素ランス3は3本の直交軸に沿って加速を測定する3つの一軸加速度計と通信状態にあってもよい。)この加速は、塩基性酸素転炉容器5内のスロッピング、酸素ランス3によって運ばれる酸素の衝突によって形成される空洞24の安定性、酸素ランス3内を通る酸素流量の適合性、及び、脱炭工程中にフラットバス状態に近づくことを予測し測定するのに用いられ、それによって吹き込みの終点を予測する。これらのパラメータは全て関連しており、ランス振動の強度を監視することにより、多くの情報を得ることができる。
さらに、本発明の装置及び方法を用いて最適な酸素の流量を適用できるので、それによってスロッピング傾向が減少し、ランス先端及び酸素噴出孔の摩耗率が減少し、脱炭工程が加速される。さらに、スロッピングが予測され、スロッピングの程度が測定され、塩基性酸素転炉容器5から排出される原料の量と関連付けられる。緩和対策は、大量のスロッピング及び原料の噴出の前兆を示す一定の閾値を超える周波数の測定(加速度計センサ1を使用して行う)に対する応答として適用できる。フラットバス及び脱炭の終点へ近づいていることは監視でき、BOFチャージモデルを管理するのに使用できるので、それによって、早発の酸素遮断及びそれに続く再吹き込みの要請、もしくは、所望の脱炭が達成された後の槽内容物の過剰酸化を防止する。
酸素ランス3はランスキャリッジ4に連結され、ランスキャリッジ4と通信状態にあり、酸素ランス3の振動は、効果的にランスキャリッジ4へと伝達される。ランスキャリッジ4は過剰な熱及びBOF工程で発生する粉塵から離れた、比較的安全な環境下にある。そのため、酸素ランス3の振動は加速度計センサ1をランスキャリッジ4上に設置することによって監視できる。加速度計センサ1は、ランスキャリッジ4の3つ全ての直交方向の振動を監視でき、従って酸素ランス3も監視できる三軸加速度計である。加速度計センサ1は、感度が100mV/gの三軸集積回路圧電型加速度計であってもよい。加速度計の感度は、ランスの質量に応じて、100〜1000mV/gであってもよい。
加速度計センサ1は、ケーブル17を介して、データ収集システム18及び中央演算処理装置(図示せず)を含むコンピュータ11と電気信号通信状態にある。あるいは、加速度計センサ1はデータ収集システム18及びコンピュータ11と無線通信状態にあってもよい。加速度計センサ1のアナログ振動信号はデータ収集システム18により分析され、デジタル化され、ケーブル19を介してコンピュータ11の中央演算処理装置に伝えられ、そこでフーリエ変換を用いて周波数領域ごとに分類される。
対象となる3つの周波数領域が特定されている。一つ目は、転炉の仕込み原料の6/7が酸素ランス3に衝突して発生する低周波数領域である。この対象となる領域は、通常4〜500Hzの領域にある。塩基性酸素転炉容器5中のスラグ6のスロッピングとは無関係の他の振動は、建造物振動による低周波ノイズや、60Hz程度の、完全には孤立していない電子機器に特有の電気ノイズ等として特定され、これらは対象の範囲から除外される。
2つ目の対象となる周波数領域は500〜5000Hz程度で、通常3000〜4000Hz程度のより狭い範囲である。特定の理論によって拘束されることは望まないものの、出願人は、対象となるこの周波数領域の振動は、酸素ランス3を下降しランス孔から排出される酸素フローによって生じる酸素ランス3の振動に対応するものと出願人は考えている。この振動の振幅は、酸素ランス3の先端22と酸素ジェットが槽内容物表面に衝突することで形成される空洞24との間の領域の背圧に影響を受ける。ランスの下に安定した空洞が形成される場合、背圧が酸素ランス3を安定化させ、この対象領域における振動強度を軽減する。もし酸素ランス3が槽内容物の6/7から離れすぎている、もしくは酸素の流量が低すぎると、安定化効果が小さくなり振動強度が増す。対象の低周波数領域において、対象の高周波数領域における外部振動が特定され、測定から除外される。例えば、酸素ランス3を水冷する場合、酸素ランス3内を流れる冷却水は、対象領域の周波数を含みうる周波数において有意の振動を引き起こすことがある。これらは特定され、対照測定値から除外される。
対象となる三つ目の周波数領域は特定され、酸素ジェットが空洞24から跳ね返り、酸素ランス3の先端22に衝突するときの反響又はエコー効果に起因すると考えられている。この対象となる第3の周波数領域もまた、500〜5000Hzあたりの領域にみられ、しばしば上記対象となる第2の領域を含む周波数領域の一部となる。ガス発生率の増加及び対応する泡の高さの増加は、酸素ランス3の先端22へ跳ね返ってくるジェットの衝突を減衰させることがわかる。したがって、この第3の周波数領域の振幅は初期のスロッピング事象が起こる可能性が高いことを示すものとして使用することができる。
振動振幅は、それぞれの対象の各領域内で、低周波数ランス振動信号及び2つの高周波数ランス振動信号と対応するように積分される。低周波数ランス振動信号は時間平均され、容器内のスロッピングの程度と相関している(図1において、スロッピングが両矢印26及び28を用いて模式的に示されている)。転炉から噴出するいくつかの原料に対応するレベルにおいて、厳格なスロッピング閾値が設定される。カメラ9を用いてBOF容器周辺の領域を撮像し、酸素ブロー工程中の相対的な原料噴出量を決定する。例えば、カメラ9は、噴出した原料がこぼれおちる塩基性酸素転炉容器5の下部にあるピット領域8、もしくは原料が上向き又は外向きに放出する該容器5の開口部30を撮像できる。どちらの場合でも、カメラ9はケーブル20を介してコンピュータ11と信号通信状態にある。コンピュータ11はカメラ9の画像を分析し、その画像から原料噴出の深刻度を計算する。
噴出した原料は、通常はスラグと金属の高温エマルジョンなので、カメラ画像では非常に明るく見える。画像の輝度は単位時間内に測定でき、吹き込み工程全体の時間で積分してもよい。瞬間輝度は、ある特定の噴出事象の深刻度を示し、積分輝度は特定のバッチの鉄鋼へのブロー工程中の全スロッピング量を示す。対象となる低周波数領域における正規化振動振幅によって測定される、絶対スロッピング指数は、スロッピングの程度と相関する。スロッピング指数と原料噴出量との関係は、スラグの化学的性質、全スラグ重量、温度、仕込み原料の重量、及び転炉内部の形状によっていくらか変化することから、絶対スロッピング指数の測定は、好ましくは工程パラメータの群ごとになされるべきである。
工程パラメータ及びそれらがスロッピング指数と原料噴出率の関係に与える影響を特定するのに、多変量解析が使用される。これはBOFプロセスモデルに取り込まれ、スロッピング指数を概算し、それを超えると緩和対策が必要となる閾値を特定する。オペレータインターフェース画面13(又は遠隔設置画面14)は、工程中のスロッピング指数を示し、スロッピングが算出された閾値を超えるほどスロッピングが過度に深刻になると、オペレータ(図示せず)は警報を受ける。その際、酸素流量を低下させたり、酸素ランス3を上昇させたり、二次燃焼を増加させたり、ライムストーン冷却剤を添加する等の緩和対策をが開始され、スロッピングを軽減する。
第1高周波数ランス振動信号は時間平均され、ランス/空洞システムの安定性と相関が求められる。先と同様に、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、出願人は、酸素ランス3の先端22に充分な背圧を有する安定な空洞24は、酸素ランス3内を降下し、ランスの先端孔を通過する酸素による振動強度の減少の原因となることを見いだした。与えられたランス高さ、ポート孔の摩耗、ポート構造において、酸素が流れ込む安定した空洞24を形成する最適な酸素流量があり、酸素ランス3の先端22への衝撃摩耗を最小限である最適な反応帯を形成する。
もし酸素フローが与えられた条件によって減少した場合、空洞24は変動し、酸素ランス3の先端22への背圧は変動しやすくなる。これにより、スラグ6及び鉄鋼7が酸素ランス3の先端22に跳ね返り、摩耗を生み出す可能性がある。さらに、バルク質量移動速度が悪影響を受けるので、空洞24がより不安定な場合、槽内容物6/7に残っている炭素に対して鉄が過剰に酸化される。この過剰酸化により塩基性酸素転炉容器5中の過剰な発泡及びそれに続くスロッピングが起こる可能性が高くなる。酸素の流量が増加し最適量を超えると、無秩序かつ過剰な力によって鉄鋼7が飛散し、反応空洞24が崩壊する原因となることもある。この場合、反応速度に対する影響はあまり大きくはないものの、酸素ランス3の先端22における摩耗が過剰になる可能性が高い。これらの理由により、最適な酸素の流量を確立することは重要である。酸素ランス3を槽内容物表面へとさらに降下させるにつれて、最適な酸素流量は減少する。使用によりランス孔が摩耗するに従って、最適な酸素流量は増加する。しかしながら、観察される全ての場合において、この対象周波数領域における振動信号を監視することにより、最適な酸素の流量を確立できる。
衝突空洞24の安定性に影響を与えうる他の因子は、鋼浴の表面張力である。炭素が除去され、溶存酸素が増加するにつれて、鉄鋼表面張力は減少し、空洞24は与えられた一組の加工条件に対してより不安定になる。高周波数領域において振動振幅が増加することにより、空洞24は不安定なものになる。これは工程の最後の方、フラットバス状態に近い状態で起こる。この時までに、スロッピングは弱まり酸素ランス3は最適化されるため、鉄鋼7中の酸素濃度と増加する振動強度との間に再現可能な相関を確立できる。もちろん、鉄鋼7中の炭素の量は酸素と相関があるので、この方法により終点を決定できる。酸素ランス3の振動振幅は、槽内容物の炭素濃度が約0.06%の時に特徴的に増加し始め、炭素含有量が約0.03%程度になるまで続く。塩基性酸素転炉容器5中の鉄鋼7のバッチの特定の条件において、この相関は酸素含有量と炭素含有量との関係に左右される。この関係は、当該技術分野において炭素酸素反応生成物として表現され、一般的には20〜30の値を有する。すなわち、鉄鋼7中の炭素百分率に鉄鋼7中の酸素の百万分率(ppm)を乗じると、工程パラメータに応じて、一般的には約25±5前後の値となる。この方法を用いると、対象となる高周波数領域の振動強度をプロセスモデルに入力でき、CO/CO比、温度、及び質量−エネルギーバランスといった他のパラメータとともに、バッチ終点を予測するために使用できる。
第2の高周波数ランス振動信号は時間平均され、初期のスロッピング事象の可能性が高いことを示す条件と相関する。スロッピングの発生に先立ち、塩基性酸素転炉容器5中のスラグの発泡の程度が急速に増加する場合もある。空洞24におけるガス発生率が増加し、発泡したスラグが酸素ランス3の長さを上昇するにつれて、酸素ランス3の先端22に衝突し、跳ね返ってくる酸素ジェットにより発生する振動信号は減衰する。この減衰は特に対象となる高周波数領域で頻繁に発生する。スロッピングが通常起こる処理段階において、酸素の流量が最適化されランス高さが所望の位置に固定された後、第2の高周波数振幅の減衰はスロッピングの発生の可能性を示すものである。閾値レベルは実験的に確立され、信号がスロッピングの前兆を示す閾値レベルより低くなると、オペレータは警報を受け、緩和対策が適用される。該緩和対策として、酸素ランス3を上昇させ、酸素の流量を減少させることを含んでもよい。一旦、振動強度が閾値を超えて再上昇した場合、最適なランス位置及び酸素フローが再度適用されてもよい。
本発明の下記実施例および態様は、本発明を例示する目的で提供されるものであるが、本発明は実施例に記載の装置及び方法に限定されるものではない。
実施例1:ランス内の酸素流量の最適化
溶銑と、スクラップと、フラックスを塩基性酸素転炉容器5に仕込んだ後、該容器5を垂直位置まで回転させ、酸素ランス3を該容器5の中に降下させた。酸素ランス3を通して酸素が注入され、その酸素が酸素ランス3の先端22の孔から排出される際の衝突力により、仕込み原料6/7の表面上に空洞24が形成された。該工程中に酸素が注入されるに従って、炭素の除去及び液体スラグ6の形成が進行した。
するため、ランスキャリッジ4に三軸集積回路圧電型加速度計センサ1を取り付け、酸素ランス3を流れる酸素フロー及び他の処理変数が原因で起こるランスキャリッジの振動を監視した。該振動は、アナログ電気信号に変換され、データ収集システム18及びコンピュータ11を用いてデジタル化された。
該デジタル信号は、周波数成分を決定するため、フーリエ変換を用いて処理された。3600〜4000Hzの周波数領域における振動振幅を積分することで、酸素ランス3を通り、ランス先端孔から排出され、酸素衝突によって形成された空洞24の中に可変背圧を発生させる酸素フローの振動特性を得た。振動レベルを最高レベルで除し正規化することで、0〜1の範囲の振動レベルを得た。多数のヒート(鉄鋼製造バッチ)を観察し、到達した最高値を記録することにより最高値を決定した。
オペレータインターフェース13に水平棒グラフを作成し、正規化された振動レベルを表示した。表示は振動レベルの範囲に応じて、赤、緑から赤への色調変化、緑を示した。最小振動レベルにおいて、インジケーターは緑の最大棒グラフを表示した。最大振動レベルにおいて、インジケーターは赤の小さい棒グラフを表示した。その間では、緑から赤へ色調が変化した。
酸素の流量を増減させることにより振動を最小限に抑えた。この操作はオペレータインターフェース13の棒グラフを使って行われた。緑の棒グラフが最大値を示す時、特徴的な周波数領域にある振動振幅は最小であり、ランス内の酸素フローは、特定の鉄鋼のバッチにおける現摩耗量が通常の範囲内にある酸素ランス3の先端22において至適であった。本実施例として示される場合において、該流量は1100立方メートル/分であった。
この実施例は、図2に示す、出願人による鉄鋼の製造方法の一実施形態を代表するものである。さらに図1を参照すると、方法100のステップ110において、塩基性酸素転炉容器5にはランスキャリッジ4に載置された酸素ランス3が設けられており、三軸加速度計センサ1を含む。ステップ120において、該容器5に溶銑、スクラップ、及びフラックスを仕込み、酸素ランス3を該容器5の中に降下させ、ステップ130において、仕込み原料の表面へ酸素を注入し始める。酸素流量の初期調整はステップ140で行われる。ステップ150において、ランス振動を示す加速度計からデータ信号を取得し、コンピュータ11に伝達する。データは処理され、ステップ160でランス振動の成分周波数を決定する。
ステップ163において、ランス振動の周波数レベルの比較を行う。そのレベルが所定の所望の範囲内にある場合は、いかなる対策も必要なく、振動データは引き続き取得され、ステップ150及び160に従って処理される。上記レベルが1つ以上所望の範囲を外れる場合、振動レベルが所望の範囲内に戻るように工程パラメータを調整してもよい。ステップ140では、その工程パラメータは酸素流量であってもよい。ステップ166にてさらに確認を行う。もし他のパラメータ、例えばランス振動(本明細書の実施例4参照)によって示されるバッチ中の酸素含有量等がバッチの完了を示すと、工程はステップ170で終了する。酸素ランス3を通る酸素フローを終了し、酸素ランス3を塩基性酸素転炉容器5から引き抜く。
実施例2:初期のスロッピング予測
溶銑と、スクラップと、フラックスを塩基性酸素転炉容器5に仕込んだ後、該容器5を垂直位置まで回転させ、酸素ランス3を該容器5の中に降下させた。酸素ランス3を通して酸素を注入し、その酸素がランス孔から排出される際の衝突力により、仕込み原料6/7の表面上に空洞24を形成した。本工程中に酸素が注入されるに従って、炭素の除去及び液体スラグ6の形成が進んだ。
ランスキャリッジ4に三軸集積回路圧電型加速度計センサ1を設置し、酸素ランス3を流れる酸素フローや他の処理変数が原因で起こるランスキャリッジの振動を監視した。該振動はアナログ電気信号に変換され、データ収集システム18及びコンピュータ11を用いてデジタル化された。
デジタル信号はフーリエ変換を用いて処理され、成分周波数を決定した。3800〜4000Hzの周波数領域における振動振幅を積分することで、空洞24から酸素ランス3へ跳ね返る酸素フローの振動特性を得た。長時間平均振動信号と短時間平均振動信号とを比較する。短時間平均信号の値が所定の閾値(この場合、長時間平均信号値の20%)以下に減少すると、オペレータに、初期のスロッピング事象が起こる兆候を示す警報が流れた。
この実施例は、図3に示す出願人による鉄鋼の製造方法の一実施形態を代表するものである。さらに図1を参照すると、方法200は図2の方法100に記載されたステップと実質的に同じステップ110〜150からなる。ステップ260において、短時間及び長時間振動信号は上記の方法で比較される。上記のステップ263における比較に基づいて、ステップ150及び260を続けてもよい。短時間平均信号の値が所定の閾値よりも小さくなると、容器内の初期のスロッピング事象が起こっていることを示す信号(ディスプレイ14上の表示、あるいは警告灯、又は警告音など)が伝達される。
実施例3:スロッピング検出
溶銑と、スクラップと、フラックスをBOF塩基性酸素転炉容器5に仕込んだ後、該容器5を垂直位置まで回転させ、酸素ランス3を該容器5の中に降下させた。酸素ランス3を通して酸素を注入し、その酸素がランス孔から排出される際の衝突力により、仕込み原料6/7の表面上に空洞24を形成した。該工程中に酸素が注入されるに従って、炭素の除去及び液体スラグ6の形成が進行した。
ランスキャリッジ4に三軸集積回路圧電型加速度計センサ1を設置し、酸素ランス3を流れる酸素フロー及び他の処理変数が原因で起こるランスキャリッジの振動を監視した。振動はアナログ電気信号に変換され、データ収集システム18及びコンピュータ11を用いてデジタル化された。
デジタル信号はフーリエ変換を用いて処理され、周波数成分を決定した。4〜500Hzの周波数領域における振動振幅を積分することで、酸素ランス3に衝突する原料、特にスラグと鉄鋼のエマルジョンのスロッピングの振動特性を得た。長時間平均振動信号と短時間平均振動信号とを比較する。短時間平均信号の値が所定の閾値(この場合、長時間平均信号値の80%)を超えると、オペレータに、初期のスロッピング事象が発生したことを示す警報が流れた。
80%という閾値は、ピットを観察し、その結果と長時間平均振動信号に対する短時間平均振動信号の増加の程度との相関関係を求めることにより決定した。
実施例4:終点測定
溶銑と、スクラップと、フラックスを塩基性酸素転炉容器5に仕込んだ後、該容器5を垂直位置まで回転させ、酸素ランス3を該容器5の中に降下させた。酸素ランス3を通して酸素を注入し、その酸素がランス孔から排出される際の衝突力により、仕込み原料6/7の表面上に空洞24を形成した。本工程において酸素が注入されるに従って、炭素の除去及び液体スラグ6の形成が進行した。
ランスキャリッジ4に三軸集積回路圧電型加速度計センサ1を設置し、ランスを流れる酸素フロー及び他の処理変数が原因で起こるランスキャリッジの振動を監視した。振動はアナログ電気信号に変換され、データ収集システム18及びコンピュータ11を用いてデジタル化された。
デジタル信号はフーリエ変換を用いて処理され、周波数成分を決定した。3600〜4000Hzの周波数領域における振動振幅を積分することで、ランス孔から排出され槽内容物に衝突する酸素が形成した空洞24の安定性の振動特性を得られた。長時間平均振動信号と短時間平均振動信号とを比較した。一旦短時間平均振動信号が所定の閾値を超えると、オペレータに、鉄鋼7中の酸素の量が増加し、フラットバス終点に近づいていることを示す警報が流れた。短時間平均信号の変化率が再度減少し始めるに従って、オペレータに、鉄鋼7の酸素含有量の過剰を引き起こすオーバーブロー状態になる可能性があることを示す警報が流れた。分析によると、実際、鉄鋼は、鉄鋼中の酸素濃度が900ppm超、炭素濃度が0.024%未満のオーバーブロー状態において完成されたことが明らかとなった。鉄鋼へのオーバーブローは収率損失を引き起し、試薬の需要が増加し、耐熱性ライニング摩耗が増加し、製造速度が減少するので、費用がかかってしまう。オペレータがフラットバス状態に近づいていることを示す信号に注意していたら、オーバーブロー事象を回避できたかもしれない。
この実施例は、図4に示す出願人による鉄鋼の製造方法の別の一実施形態を代表するものである。さらに図1を参照すると、方法300は前述の図2の方法100に記載されたステップ110〜150と実質的に同じステップからなる。ステップ360において、短時間及び長時間振動信号を上記のように比較する。上記ステップ363における比較に基づいて、ステップ150及び360を続けてもよい。又は、鉄鋼中の酸素含有量を示す短時間平均振動信号が所定の閾値を超えると、信号が供給され、オペレータに、鉄鋼7中の酸素の量が増加し、フラットバスの終点に近づいていることを示す警報が流れる。ステップ366において、バッチが完了したかどうかの決定がなされ、完了していれば、この工程はステップ170で終了する。
実施例5:追加バッチ実施例
溶銑と、スクラップと、フラックスを塩基性酸素転炉容器5に仕込んだ。その後、該容器5を垂直位置まで回転させ、酸素ランス3を容器の中に降下させた。酸素ランス3を通して酸素を注入し、その酸素がランス孔から排出される際の衝突力により、仕込み原料6/7の表面上に空洞24を形成した。本工程において酸素が注入されるに従って、炭素の除去及び液体スラグ6の形成が進行した。
ランスキャリッジ4に三軸集積回路圧電型加速度計センサ1を設置し、酸素ランス3を流れる酸素フロー及び他の処理変数が原因で起こるランスキャリッジの振動を監視した。振動はアナログ電気信号に変換され、データ収集システム18及びコンピュータ11を用いてデジタル化された。
コンピュータ11は、通信ネットワーク又はケーブル15を介してBOFプロセスコンピュータ10及びプログラマブル論理制御装置(PLC)からインプットを受信した。ブロー工程が開始した旨の指示を受信した時、コンピュータ11に存在する振動監視ソフトウエアが検出アルゴリズムを開始させた。ブロー工程が完了し停止したとPLC情報を受信するまで、振動監視及び分析は継続させた。その時には検出アルゴリズムも停止し、鉄鋼バッチ工程及び関連する振動指示の記録が行われ、レポートを作成した。
例えば、CaOがコンベヤーベルト(図示せず)によって容器に加えられ始めると、PLC10がコンピュータ11に知らせ、PLC10がコンベヤーの停止をコンピュータ11に知らせるまで、検出アルゴリズムは中断された。このPLC10との通信によって、外部振動による誤った結果を伴わずに、工程に起因するランス振動の正確な分析を容易に進めることができた。
デジタル信号はフーリエ変換を用いて処理され、周波数成分を決定した。3600〜4000Hzの周波数領域における振動振幅を取り出して使用することで、酸素ランス3を通りランス先端の孔から排出され、酸素衝突によって形成された空洞24の中の可変背圧を発生させる酸素フローの振動特性を得た。振動レベルを最高レベルで除し正規化することで、0〜1の範囲の振動レベルを得た。多数のヒートを観察し、達成した最高値を記録することによりあらかじめ最高値を決定した。
オペレータインターフェース13に水平棒グラフを作成し、正規化された振動レベルを表示した。表示は振動レベルの範囲に応じて、赤、緑から赤への色調変化、及び緑を示した。最小振動レベルにおいて、インジケーターは緑色の棒グラフの最大値を表示し、酸素ランス3内を通る最適な酸素流量が確立されたことを示した。最大振動レベルにおいて、インジケーターは赤色の短い棒グラフを表示し、酸素ランス3内を通る酸素の流量を最適化するために何らかの対策が必要であることを示した。その間では、棒グラフは緑から赤へ色調が変化した。
酸素の流量を増減することで、振動は最小限に抑えられた。この操作は上記オペレータインターフェース13の棒グラフを用いて行われた。緑の棒グラフが最大値を示した時、特徴的な周波数領域における振動振幅は最小であり、ランス内の酸素フローは、特定の鉄鋼のバッチにおける摩耗量が通常の範囲にある特定のランス先端において最適なレベルであった。本実施例として示される場合において、流量は1100立方メートル/分であった。
4〜60Hzの周波数領域における振動振幅を取り出すことによって、酸素ランス3に衝突する原料の振動特性(特にスラグと鉄鋼のエマルジョンのスロッピング)を得た。長時間平均振動信号と短時間平均振動信号とを比較した。短時間平均振動信号の値が所定の閾値(この場合、長時間平均信号値の175%)を超えると、オペレータに、初期のスロッピング事象が発生したことを示す警報が流れた。
閾値は、ピットカメラ9からの画像の分析により瞬間及び積分画像の輝度を観察し、その結果と、長時間平均振動信号に関連する短時間平均振動信号の増加の程度との相関関係を求めることにより決定された。
オペレータは、スロッピング事象が発生したことを示す警報を受けると、それを修正するための措置として、酸素ランス3を上昇させ酸素の流量を低下させた。
ランスの安定性を最適化するのに使用される3600〜4000Hzのランス周波数領域もまた、酸素ブロー工程の終点を示すために使用された。一旦ブロー工程が80%まで完了すると、それ以上のスロッピングが有意に生じる機会はなかった。ランス内の酸素フローは最適化された。長時間平均振動信号と短時間平均振動信号とをこの周波数領域で比較した。これまで短時間平均振動信号は、フラットバス状態に近づいていることを示す所定の閾値を超えることはなかった。それにもかかわらず、プロセスモデルはPLC10にブローを終了させるよう指示し、鉄鋼7のバッチは処理されたと見なされた。分析によると、鉄鋼の炭素含有量が高すぎ、仕様を満たさないことがわかった。炭素含有量の目標値は0.05%未満であるが、実際の炭素含有量は0.06%であった。酸素ランスを容器内に再度差し込み、さらに吹き込みを行うことにより化学的性質を適正化した。この再吹き込みは費用および時間がかかり、もしランス振動信号分析がプロセスモデルに組み込まれていたらこの再吹き込みは回避できたかもしれない。ランス振動分析によると、終点には到達していないことがわかった。
従って、本発明によると、鉄鋼製造における塩基性酸素転炉を制御するための装置及び方法が提供されることは明らかである。このように発明の基本概念を説明してきたが、前述の詳細な開示は実施例による方法のみによって表されることを意図しており、限定されるものではないことは当業者にとって明らかである。本明細書においては明示的に述べられていないものの、様々な変更、改良、修正がなされるであろうし、またこれらは当業者を対象とするものである。これらの変更、改良および修正は、本明細書によっても意図されているものであり、本発明の趣旨および範囲内にある。さらに、処理の要素やその流れの中で述べた順序、又は数字、文字、もしくはその他の記号の使用は、特許請求の範囲に規定される場合を除き、特許請求の範囲に係る処理をいかなる順序に限定するものでもない。
1 加速度計センサ
3 酸素ランス
4 ランスキャリッジ
5 塩基性酸素転炉容器
6 スラグ
7 鉄鋼
8 ピット領域
9 カメラ
10 BOFプロセスコンピュータ
11 コンピュータ
13 オペレータインターフェース画面
14 遠隔設置画面
15 通信ネットワーク又はケーブル
17 ケーブル
18 データ収集システム
19 ケーブル
20 ケーブル
22 酸素ランス3の先端
24 空洞
26 矢印
28 矢印
30 塩基性酸素転炉容器5の開口部
100 方法
110 ステップ
120 ステップ
130 ステップ
140 ステップ
150 ステップ
160 ステップ
163 ステップ
166 ステップ
170 ステップ
200 方法
260 ステップ
263 ステップ
300 方法
360 ステップ
363 ステップ
366 ステップ

Claims (14)

  1. 容器内で鉄鋼を製造する方法であって、
    a.容器中の鉄鋼の表面に酸素を吹きつけるためのランスであって、ランスキャリッジに連結され、データ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある加速度計と通信状態にあるランスを準備し、
    b.前記容器に製鋼原料を仕込み、
    c.ランスを容器の中へ降下させて前記原料に酸素を注入し、
    d.ランス振動を示す加速度計からの信号を取得し、
    e.前記振動信号を処理してランス振動の周波数成分を決定し、
    f.該周波数成分のレベルと所望の動作値とを比較し、
    g.少なくとも1つの鉄鋼製造工程パラメータを、周波数成分のうちの少なくとも1つのレベルに基づいて調節することを含む方法。
  2. 前記鉄鋼製造工程パラメータのうち少なくとも1つは、前記ランス内を通る酸素の流量であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 上記加速度計は三軸加速度計であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 容器中で鉄鋼を製造する方法であって、
    a.容器中の鉄鋼の表面に酸素を吹きつけるためのランスであって、
    ランスキャリッジに連結され、データ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある加速度計と通信状態にある前記ランスを準備し、
    b.前記容器に製鋼原料を仕込み、
    c.前記ランスを容器の中へ降下させて前記原料に酸素を注入し、
    d.ランス振動を示す加速度計からの信号を取得し、
    e.振動信号を処理してランス振動の周波数成分を決定し、
    f.振動信号の長時間平均と振動信号の短時間平均とを比較し、
    g.短時間平均信号の値が第1の所定の閾値より小さくなったかどうか決定し、
    h.短時間平均信号の値が上記第1の所定の閾値より小さくなった場合、容器中の初期スロッピング事象を示す第1の信号を生成することを含む方法。
  5. 上記加速度計は三軸加速度計であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 短時間平均信号の値が第2の所定の閾値を超えたかどうか決定し、容器中のスロッピング事象の発生を示す第2の信号を生成することをさらに含む請求項4に記載の方法。
  7. 鉄鋼製造工程パラメータの少なくとも1つを調節し、上記スロッピング事象を停止させることをさらに含む請求項6に記載の方法。
  8. 前記鉄鋼製造工程パラメータの少なくとも1つは前記ランス内を通る酸素の流量であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 前記鉄鋼製造工程パラメータの少なくとも1つは前記容器中の前記ランスの位置であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  10. 容器中で鉄鋼を製造する方法であって、
    a.容器中の鉄鋼の表面に酸素を吹きつけるためのランスであって、ランスキャリッジに連結され、データ収集モジュール及びコンピュータと信号通信状態にある加速度計と通信状態にあるランスを準備し、
    b.前記容器に製鋼原料を仕込み、
    c.前記ランスを容器の中へ降下させて前記原料に酸素を注入し、
    d.ランス振動を示す加速度計からの信号を取得し、
    e.振動信号を処理してランス振動の周波数成分を決定し、
    f.振動信号の長時間平均と振動信号の短時間平均とを比較し、
    g.短時間平均振動信号が鉄鋼中の酸素の量を示す所定の閾値を超えたかどうか決定し、
    h.短時間平均振動信号が上記所定の閾値を超える場合、鉄鋼中の酸素含有量を示す第1の信号を生成することを含む方法。
  11. どの程度短時間平均振動信号が所定の閾値を超えたかを決定し、その短時間平均振動信号が所定の閾値を超えた程度と、鉄鋼中の酸素含有量との相関関係を求めることをさらに含む請求項10に記載の方法。
  12. 短時間平均信号の値が所定の閾値に達した後に減少し始めるかどうかを決定し、短時間平均信号の値が所定の閾値に達した後減少し始めた場合、上記鉄鋼中の余剰酸素含有量を示す第2の信号を生成することをさらに含む請求項10に記載の方法。
  13. 酸素の量を示す所定の閾値に達した後に前記ランス内を通した酸素注入を終了させることをさらに含む請求項10に記載の方法。
  14. 上記加速度計は三軸加速度計であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
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