JP2013253287A - 大型高強度鍛鋼品 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度及び靭性が高次元でバランスされ、かつ高い疲労強度を有する大型高強度鍛鋼品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、Al及び不可避的不純物としてのSの含有量を特定した組成を有し、マルテンサイト組織、又はマルテンサイトとベイナイトとの混合組織からなり、旧オーステナイト結晶粒径が19μm以上70μm以下、マルテンサイトの最大ブロック径が15μm以下、最小ブロック径が0.5μm以上の大型高強度鍛鋼品である。
【選択図】なし

Description

本発明は、大型高強度鍛鋼品に関する。
船舶や発電機に用いられる大型クランク軸や中間軸等には高い強度が要求され、これらは鍛造用鋼の鍛造により製造されるのが一般的である。これらの大型鍛鋼品には、今日ではさらなる強度の向上に加え、通常この強度とトレードオフの関係にある靭性にも優れているものが求められている。
そこで、鍛鋼品の強度や靭性を高めるべく、(1)成分組成を限定した大型鍛鋼品用高強度鋼(特開2005−344149号公報参照)、(2)成分組成の限定と共にベイナイト及びマルテンサイト主体の組織に限定した鍛造用鋼(特許第3896365号公報参照)、(3)成分組成の限定と共に旧オーステナイト粒の結晶粒度を限定したクランク軸(特開2010−248540号公報参照)、(4)粒界アルミニウム量を特定したニッケル系調質鋼(特開2000−212705号公報参照)、(5)マグネシウム及びアルミニウムの濃度を特定した鍛造用鋼(特開2008−25021号公報及び特開2009−173961号公報参照)、及び(6)硫黄等の含有率及び熱間鍛造条件等を特定した鍛造品(特開2003−147436号公報参照)が開発されている。
しかしながら、上記(1)〜(3)の鋼等でも、形成される組織のブロック径や粒径が適当でないためか、十分に強度を発揮できるとは言えず、靭性及び疲労強度をバランスよく高めることができない。その他、上記(4)の鋼においては、アルミニウム含有量が高いため、非金属介在物や金属間化合物が生成し、靭性や疲労強度が低下する場合がある。(5)の鋼は高強度化するとされているが、高靱性化を図るものではない。(6)の鍛鋼品は、高強度かつ高靱性であるとされているものの、所定量の硫黄の存在がMnS等の非金属介在物を発生させ、その結果、疲労強度が低下する。このように、従来の鍛鋼品は、いずれも強度、靭性及び疲労強度をバランスよく高めたものではない。
特開2005−344149号公報 特許第3896365号公報 特開2010−248540号公報 特開2000−212705号公報 特開2008−25021号公報 特開2009−173961号公報 特開2003−147436号公報
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、強度及び靭性が高い次元でバランスされ、かつ高い疲労強度を有する大型高強度鍛鋼品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
C:0.31質量%以上0.5質量%以下、
Si:0.02質量%以上0.2質量%以下、
Mn:0.1質量%以上0.6質量%以下、
Ni:2.6質量%以上3.4質量%以下、
Cr:0.8質量%以上1.9質量%以下、
Mo:0.25質量%以上0.8質量%以下、
V:0.05質量%以上0.2質量%以下、及び
Al:0.005質量%以上0.1質量%以下
を基本成分、残部をFe及び不可避的不純物とし、この不可避的不純物としてのSの含有量が0.008質量%以下である組成を有し、
マルテンサイト組織又はマルテンサイトとベイナイトとの混合組織からなり、
旧オーステナイト結晶粒径が19μm以上70μm以下であり、
マルテンサイトの最大ブロック径が15μm以下、最小ブロック径が0.5μm以上である大型高強度鍛鋼品である。
当該大型高強度鍛鋼品は、上記の組成及び組織を上述のように限定し、旧オーステナイト結晶粒径及びブロック径を上記範囲とすることで、強度及び靭性が共にバランスよく優れ、加えて高い疲労強度を備えている。
ここで、大型高強度鍛鋼品における「大型」とは、直径が150mm以上の球状又は円柱状部分を有するものや、厚みが150mm以上の板状部分を有するもの、及びこれらと同等以上の大きさのものをいう。
以上説明したように、本発明の大型高強度鍛鋼品は、強度及び靭性が共にかつバランスよく優れており、加えて高い疲労強度を有している。従って、当該大型高強度鍛鋼品は船舶や発電機等に用いられる大型クランク軸や中間軸等として好適に用いることができる。
大型高強度鍛鋼品における表面から中心部までの距離に対する深さの比xとマルテンサイト組織分率f(x)(%)との関係を示すグラフ 実施例又は比較例の試験片で測定したマルテンサイトブロックの最大径とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示す図 実施例又は比較例の試験片で測定した引張強度とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示す図 実施例又は比較例の試験片で測定した引張強度と疲労強度との関係を示す図 実施例4の試験片の結晶方位図 実施例11の試験片の結晶方位図 比較例3の試験片の結晶方位図 比較例7の試験片の結晶方位図 比較例9の試験片の結晶方位図 解析例の解析条件に用いたTTT線図 解析例の解析条件に用いた各物性値の温度依存性を示す図 解析例の解析条件に用いた各相の塑性挙動を示す図 解析例における解析条件A及びBを示す図(a)、及びこの解析結果を示す図(b) 参考実施例の大型高強度鍛鋼品の深さとブリネル硬度との関係を示す図(a)、及びその深さとマルテンサイト組織分率との関係を示す図(b)
以下、本発明の大型高強度鍛鋼品の実施の形態について詳説する。
<組成>
当該大型高強度鍛鋼品は、C:0.31質量%以上0.5質量%以下、Si:0.02質量%以上0.2質量%以下、Mn:0.1質量%以上0.6質量%以下、Ni:2.6質量%以上3.4質量%以下、Cr:0.8質量%以上1.9質量%以下、Mo:0.25質量%以上0.8質量%以下、V:0.05質量%以上0.2質量%以下、及びAl:0.005質量%以上0.1質量%以下の基本成分と、Fe及び不可避的不純物の残部とから構成される。各成分の限定理由は、以下のとおりである。
(C:0.31質量%以上0.5質量%以下)
炭素(C)の含有量の下限としては、0.31質量%とされ、0.33質量%が好ましい。一方、炭素(C)の含有量の上限としては、0.5質量%とされ、0.4質量%が好ましい。炭素(C)は、焼入性を高めると共に強度向上に寄与する。炭素含有量が上記下限未満の場合は、十分な焼入性と強度を得ることが困難になる。逆に、炭素含有量が上記上限を超えると、靭性が極端に低下すると共に大型鋳塊では逆V偏析を助長することとなる。
(Si:0.02質量%以上0.2質量%以下)
ケイ素(Si)の含有量の下限としては、0.02質量%とされ、0.06質量%が好ましい。一方、ケイ素(Si)の含有量の上限としては、0.2質量%とされ、0.16質量%が好ましい。ケイ素(Si)は、脱酸及び強度向上に寄与する。ケイ素含有量が上記下限未満の場合は、この効果を十分に発揮させることができない。逆に、ケイ素含有量が上記上限を超えると、逆V遍析が著しくなり、清浄な鋼塊が得られがたくなる。
(Mn:0.1質量%以上0.6質量%以下)
マンガン(Mn)の含有量の下限としては、0.1質量%とされ、0.3質量%が好ましい。一方、マンガン(Mn)の含有量の上限としては、0.6質量%とされ、0.45質量%が好ましい。マンガン(Mn)は、焼入性及び強度を向上させる。マンガン含有量が上記下限未満の場合は、上記効果を発揮しがたい。逆に、マンガン含有量が上記上限を超えると、焼き戻し脆化を助長することとなる。
(Ni:2.6質量%以上3.4質量%以下)
ニッケル(Ni)の含有量の下限としては、2.6質量%とされ、2.8質量%が好ましい。一方、ニッケル(Ni)の含有量の上限としては、3.4質量%とされる。ニッケル(Ni)は、焼入性、強度及び靭性を向上させる。ニッケル含有量が上記下限未満の場合は、上記効果を十分に発揮することができない。逆に、ニッケル含有量が上記範囲を超えると適度なサイズの旧オーステナイト結晶粒が得られにくくなる。また、上記上限未満とすることで、高価なNiの使用量を抑え、生産コストを抑えることができる。
(Cr:0.8質量%以上1.9質量%以下)
クロム(Cr)の含有量の下限としては、0.8質量%とされ、1.4質量%が好ましい。一方、クロム(Cr)の含有量の上限としては、1.9質量%とされ、1.65質量%が好ましい。クロム(Cr)は、焼入性及び靭性を向上させる。クロム含有量が上記下限未満の場合は、上記効果を十分に発揮することができない。逆に、クロム含有量が上記上限を超えると、逆V偏析を助長することとなる。
(Mo:0.25質量%以上0.8質量%以下)
モリブデン(Mo)の含有量の下限としては、0.25質量%とされ、0.4質量%が好ましい。一方、モリブデン(Mo)の含有量の上限としては、0.8質量%とされ、0.6質量%が好ましい。モリブデン(Mo)は、焼入性、強度及び靭性を向上させる。モリブデン含有量が上記下限未満の場合、上記効果を十分に発揮することができないことに加え、逆V遍析を助長する。逆に、モリブデン含有量が上記上限を超えると、鋼塊中のミクロ遍析を助長するとともに、重量遍析が生じやすくなる。
(V:0.05質量%以上0.2質量%以下)
バナジウム(V)の含有量の下限としては、0.05質量%とされ、0.07質量%が好ましい。一方、バナジウム(V)の含有量の上限としては、0.2質量%とされ、0.13質量%が好ましい。バナジウム(V)は、少量の添加で焼入性及び強度を著しく向上させるが、平衡分配係数が小さいのでミクロ遍析を生じやすい。バナジウム含有量が上記下限未満の場合、十分な強度を確保することができない。逆に、バナジウム含有量が上記上限を超えると、ミクロ遍析の発生を助長する。
(Al:0.005質量%以上0.1質量%以下)
アルミニウム(Al)の含有量の下限としては、0.005質量%とされ、0.008質量%が好ましい。一方、アルミニウム(Al)の含有量の上限としては、0.1質量%とされ、0.03質量%が好ましい。アルミニウム(Al)は、脱酸元素として用いられる。また、アルミニウムはAlN等の微細な化合物を生成させ、このAlNが、結晶粒の成長を止め、結晶を細粒化させることができる。アルミニウム含有量が上記下限未満の場合は、この効果を十分に発揮させることができない。逆に、アルミニウム含有量が上記上限を超えると、アルミニウムは、酸素などの他の元素とも結合するため、酸化物や金属間化合物を生成し、靭性や疲労強度を低下させる場合がある。
当該大型高強度鍛鋼品の基本成分は上記の通りであり、残部成分は実質的に鉄(Fe)であるが、微量の不可避的不純物(例えば、S、O、P、Cu、Sn、N等)が含有されていてもよい。また、当該大型高強度鍛鋼品の作用効果に悪影響を与えない範囲で、さらに他の元素を積極的に含有していてもよい。このような他の元素としては、Ti、Ca、Mg等が挙げられるが、粗大介在物の生成抑制という観点から不可避的不純物の合計で0.5質量%以下に抑えることが好ましい。
(S:0.008質量%以下)
硫黄(S)の含有量としては、0.008質量%以下とされ、0.003質量%以下が好ましい。硫黄(S)は、当該鍛鋼品中でMnSを形成するため、含有量が上記上限を超えると疲労強度の低下を招く。但し、工業的にこの含有量が0質量%となることはない。
また、その他の不可避的不純物の含有量は以下のとおりであることが好ましい。
(O:0.0025質量%以下)
酸素(O)の含有量としては、0.0025質量%以下が好ましく、0.002質量%以下がより好ましい。酸素(O)は、種々の元素と結合し、非金属介在物となって疲労強度を低下させる。従って、酸素含有量は上記上限以下とすることが好ましい。但し、工業的にこの含有量が0質量%となることはない。
(P:0.02質量%以下)
リン(P)の含有量の上限としては、0.02質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましい。リン(P)の含有量が上記上限を超えると熱間延性が低下し、鍛造時の割れ等が生じやすくなる。
(Cu:0.1質量%以下)
銅(Cu)の含有量の上限としては、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。銅(Cu)の含有量が上記上限を超えると熱間加工時に割れ等が生じやすくなる。
(Sn:0.03質量%以下)
スズ(Sn)の含有量の上限としては、0.03質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましい。スズ(Sn)の含有量が上記上限を超えると靱性が低下する場合がある。
(N:0.02質量%以下)
窒素(N)の含有量の上限としては、0.02質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましい。窒素(N)の含有量が上記上限を超えると熱間延性が低下し、鍛造時の割れ等が生じやすくなる。
<組織>
次に、当該大型高強度鍛鋼品の組織について説明する。
当該大型高強度鍛鋼品は、マルテンサイト組織、又はマルテンサイトとベイナイトとの混合組織からなる。当該大型高強度鍛鋼品がこの2種の組織のみからなることで強度と靭性とのバランスを両立することができる。当該大型高強度鍛鋼品においてフェライトやパーライト等の他の組織が存在すると、強度と靭性とを両立させることができない。
当該大型高強度鍛鋼品の旧オーステナイト結晶粒径(平均粒径)は、19μm以上70μm以下である。旧オーステナイト結晶粒径はブロック径に影響を与える。旧オーステナイト結晶粒径が粗大になると、ブロック径も大きくなり十分な靭性が得られないため、この上限を70μmとする。逆に、結晶粒径が19μm未満と微細になりすぎると、焼入性が低下して初析フェライトが混在し、その結果、強度と靭性とのバランスが低下することとなる。なお、この旧オーステナイト結晶粒径は実施例に記載の方法で測定することができる。
当該大型高強度鍛鋼品を形成するマルテンサイト組織の下部組織であるマルテンサイトブロック径においては、その最大ブロック径が15μm以下、最小ブロック径が0.5μm以上である。マルテンサイトブロック径を上記範囲とすることで、強度、靭性及び疲労強度をバランスよく高めることができる。特に、この最大ブロック径を15μm以下に微粒化することで、安定した靭性を発揮することができる。一方、このブロック径を微細化しすぎると粒界密度が高くなり、亀裂進展速度が高まるため、最小ブロック径を0.5μm以上とする。
当該大型高強度鍛鋼品において、表面から中心部までの距離に対する深さの比をx(0≦x≦1)としたときのマルテンサイト組織分率f(x)(%)が、
0≦x≦0.1のとき;f(x)=100、
0.1<x≦0.15のとき;104−40x≦f(x)≦100、
0.15<x≦0.2のとき;122−160x≦f(x)≦100、
0.2<x≦0.3のとき;230−700x≦f(x)≦100、
0.3<x≦0.35のとき;110−300x≦f(x)≦112−40x、
0.35<x≦0.5のとき;(22−20x)/3≦f(x)≦105−20x、
0.5<x≦0.8のとき;(32−40x)/3≦f(x)≦95、及び
0.8<x≦1のとき;0≦f(x)≦95
であることが好ましい(図1における範囲(a))。なお、残組織はベイナイト組織である。このマルテンサイト組織分率は、実施例に記載の方法、すなわち硬度の測定結果から混合則を用いて測定することができる。
大型高強度鍛鋼品の「中心部」とは、表面の各位置から最も深い位置をいい、例えば大型高強度鍛鋼品が球状部分を有する場合はその中心点をいい、円柱状部分を有する場合はその中心軸をいい、板状部分を有する場合はその両面から等距離にある中心面をいう。「表面から中心部までの距離」とは、表面の各部分から中心部への垂直距離を意味し、例えば球状又は円柱状部分を有する場合はその半径、板状部分を有する場合はその板厚の半分である。
当該大型高強度鍛鋼品は、このようにマルテンサイト組織分率f(x)を制御した場合、表面から中心までの全体としての内部応力の発生を低減させることができ、その結果、強度、靭性及び疲労強度のバランスをより高めることができる。
マルテンサイト組織分率が上記範囲未満である深さ領域を含む場合は、表面近傍、特にx=0.2付近の領域に引張応力が残留する場合がある。この残留引張応力は、疲労強度の低下を招くこととなる。大型高強度鍛鋼品は、クランク軸等として好適に用いられるが、クランク軸には曲げ応力がフィレット部に繰り返し加わるため、特にフィレット部表面の高い疲労強度が求められる。このクランク軸等は、熱処理後に機械加工により仕上げられるため、表層は研削される。そこで、表面からの一定の深さ(0≦x≦0.3程度)の範囲までの残留引張応力を低減させると、クランク軸等に用いた場合もさらに高い疲労強度を備えることができる。一方、マルテンサイト組織分率が上記範囲を超える深さ領域を含む場合は、焼入れによる内部の変態応力が大きくなり、焼き割れが生じやすくなる場合がある。
当該大型高強度鍛鋼品において、表面から中心までの全体としての内部応力の発生をより低減させるには、上記マルテンサイト組織分率f(x)が、
0≦x≦0.1のとき;f(x)=100、
0.1<x≦0.15のとき;104−40x≦f(x)≦100、
0.15<x≦0.2のとき;122−160x≦f(x)≦100、
0.2<x≦0.3のとき;150−300x≦f(x)≦100、
0.3<x≦0.35のとき;105−150x≦f(x)≦112−40x、
0.35<x≦0.5のとき;105−150x≦f(x)≦105−20x、
0.5<x≦0.8のとき;80−100x≦f(x)≦170−150x、及び
0.8<x≦1のとき;0≦f(x)≦130−100x
であることが好ましい(図1における範囲(b))。
マルテンサイト組織分率を上記下限値以上とすることで、表面近傍の引張応力の発生をより低減させることができる。一方、マルテンサイト組織分率を上記上限値以下とすることで、内部の引張応力が小さくなり、焼き割れの危険性をより低減させることができる。
また、上記作用効果(表面から中心までの全体としての内部応力の発生の低減)をより高めるためには、0≦x≦1において、d(f(x))/dx≦0であることが好ましい。
<性能、用途等>
当該大型高強度鍛鋼品は、上記組成及び組織を有することで強度及び靭性が共に優れ、かつ高い疲労強度を有する。この強度(引張強度)としては、1,050MPa以上であることが好ましく、1,080MPa以上がさらに好ましい。なお、引張強度は、JIS−Z2241(1998)に基づいて測定される値をいう。
当該大型高強度鍛鋼品は、上述のように優れた強度、靭性及び疲労強度を兼ね備えるため、船舶や発電機に用いられる大型クランク軸や中間軸等として好適に用いることができる。特に、例えば大型クランク軸には、船舶用ディーゼルエンジンや陸発用ディーゼルエンジン等の出力向上、コンパクト化等を実現するためにより一層の疲労強度及び引張強度の高さ(例えば引張強度950MPa以上)が求められており、当該大型高強度鍛鋼品は十分にこれに対応することができる。
<製造方法>
当該大型高強度鍛鋼品の製造方法としては特に限定されず、上記組成に調製した鋼を鍛造及び熱処理して得ることができる。以下に、当該大型高強度鍛鋼品が直径150mm以上の一体型クランク軸である場合とした製造方法の一例を説明する。
まず、電気炉、高周波熔解炉、転炉などを用いて上述した所定成分組成に調製した鋼を熔解する。この後、真空精錬等により不純物(硫黄、酸素等)の除去(低減)を行う。不純物の除去後、この鋼を鋳造により造塊する。この鋳造方法としては、主としてインゴット鋳造が用いられるが、比較的小型の鍛鋼品の場合は連続鋳造法を用いてもよい。
次に、クランク軸を形成する前の丸棒素材を鍛造する。この際の加熱温度としては、鋼の変形能が良好な範囲で鍛造を行うために1,150℃以上、より好ましくは1,200℃以上とするとよい。この加熱温度が低い場合は、変形抵抗の増大を招来し、製造効率が低下する。また、加熱時間としては3時間以上とするとよい。この加熱時間は、鋼塊の表面と内部との温度を均一化するために必要である。この加熱時間は、一般的に被加工物の直径の二乗に比例するとされ上記大型クランク軸の製造の際は、例えば3時間以上とされる。
丸棒素材に鍛造した後、一体型クランク軸の形状に鍛造される。この鍛造は、好ましくはCGF(Continuous Grain Flow)鍛造法により行われる。CGF鍛造法とは、鋼塊の軸心が一体型クランク軸の軸心部となるように鍛造加工し、中心偏析により特性の劣化を起こし易い部分を一体型クランク軸の全ての軸心部となる様に一体に鍛造加工する方法である。上記CGF鍛造としては、RR鍛造法や、TR鍛造法等が挙げられる。これらは、クランク軸表層側を清浄度の高い部分で占めさせることができ、強度や疲労特性に優れた一体型クランク軸が得られ易いので好ましい。
以下、RR鍛造法を例に具体的に鍛造方法を説明する。
RR鍛造においては、得られた鍛造素材を1,150℃以上で3時間以上加熱し、各スローブを熱間成形する。具体的手順としては、まず、上述の手順で得られた丸棒素材を機械加工し、RR鍛造用素材とする。その後、一気筒分に相当するピン軸、一対のブロック部及びジャーナル軸を部分加熱し、プレスの圧下力をくさび機構により横方向の力に変換することで、RR素材に横圧縮力と偏芯力とを同時に加えて一気筒を鍛造する。この作業を必要な気筒数回繰り返して、一本のクランク軸に仕上げる。ここで、加熱温度は、鋼の変形能が良好な範囲で鍛造を行うために1,150℃以上、より好ましくは1,200℃以上とするとよい。この加熱温度が低い場合は、変形抵抗の増大を招来し、製造効率が低下する。この加熱時間は、鋼塊の表面と内部との温度を均一化するために必要であり、大型クランク軸の製造の際は、例えば3時間以上とされる。
RR鍛造後、調質処理(焼入れ、焼戻し処理)を行う前に、鍛造物に含まれる残留オーステナイト(γ)を分解する処理を行ってもよい。組織微細化のためには調質処理の際の相変態が活用されるが、鍛造後に存在する残留γが安定である場合は、調質処理加熱時に残留γはAc1温度を超えるまで存在し続ける。この残留γは鍛造熱処理中のγが残ったものであり、鍛造後の旧オーステナイト粒内ではそもそも同一方位を有する。そのため、γ変態が進行し残留γ同士が接すると、その界面は粒界となりえず、γ変態完了時のγ粒径は元のγ粒径と同様に粗大なものとなる。このため、残留γを分解する処理を行う。
残留オーステナイトを分解する方法として、例えば、Ac1変態点以下の温度(600〜680℃)で加熱保持する時効処理等を挙げることができる。この際の加熱保持時間としては、5時間以上であり、好ましくは20時間以上とするとよい。このような時効処理により、残留オーステナイトが分解され、残留オーステナイトを体積率で1%以下にすることができる。その他、残留オーステナイトを分解する方法として、サブゼロ処理を用いることができる。
次いで、調質処理(焼入れ・焼戻し処理)を行う。まず、焼入れ前に、Ac3変態点以上の温度(840〜940℃)まで徐加熱(昇温速度30〜70℃/時間)し、一定時間(3〜9時間)保持する。旧オーステナイト粒結晶粒粗大化抑制の観点から、焼入れはこのようにAc3以上の比較的低温(840〜940℃)で処理することが好ましい。また、大型品の場合、加熱時に材料の内外で温度差が生じるため、焼入れ前の加熱温度まで徐加熱し、鋼材の表面と内部の温度を均一にするために一定時間保持する。なお、必要な保持時間は、鋼材直径等に依存し、大型材ほど保持時間は長くなる。このため、十分な保持時間をとり、鋼材内部まで温度が均一になってから以下の焼入れを行う。
焼入れは、油又はポリマー等の冷媒を使用して行い、マルテンサイト組織、又はマルテンサイトとベイナイトとからなる組織を得る。このような組織を得るためには、焼入れにおける平均冷却速度を3℃/分以上で行う。この冷却速度は5℃/分以上100℃/分以下がより好ましく、10℃/分以上60℃/分以下がさらに好ましい。
大型鍛鋼品では、水焼入れを行うと割れる危険性があることから、大型クランク軸の焼入れは油焼入れや、ポリマー焼入れ等が一般的である。焼入れの際の冷却速度は鍛鋼品のサイズによって異なるが、直径500mmクラスのクランク軸においては、800〜500℃間の平均冷却速度は、油の場合約20℃/分程度、ポリマーの場合約50℃/分となり、それより更に大きい直径(例えば、1,000mm)になると冷却速度は更に小さなものとなる。
当該大型高強度鍛鋼品における強度及び靭性を両立させるためには、マルテンサイト組織、又はマルテンサイトとベイナイトとの混合組織に制御することが必要となる。そこで、例えば直径150mm以上の大型クランク軸に適用するために焼入れ冷却速度が20℃/分程度であっても(油焼入れの場合)こうした組織を実現するための条件について検討した結果、上記のような化学成分組成に到達した。
また、焼入れに際しては、200℃以下まで冷却後、焼戻しすることが好ましい。このように200℃以下まで冷却することで、完全に変態を完了させることができる。冷却が不十分である場合、未変態の残留オーステナイトが残存し、特性がばらつく原因となる。
焼戻しは、所定の温度(550℃〜620℃)まで徐加熱(昇温速度30〜70℃/時間)し、一定時間保持(5〜20時間)する。この焼戻しは、強度と靭性とのバランスを調整するとともに、焼入れ時の内部応力(残留応力)を除去するために、550℃以上で行う。ただし、高温すぎると、炭化物の粗大化、転位組織の回復などにより、軟化し、十分な強度が確保できないため、620℃以下にする。
このように調質処理された鍛造品から、必要に応じ、表層の少なくとも一部の研削を含む仕上げ機械加工を施すことで、当該大型高強度鍛鋼品を得ることができる。なお、本発明の大型高強度鍛鋼品は、上述の製造方法に限定されることはなく、例えば自由鍛造によって製造することもできる。また、大型クランク軸以外の大型高強度鍛鋼品も同様の製造方法等によって得ることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法]
実施例で行った各測定は以下の方法でそれぞれ行った。
1.旧オーステナイト(γ)結晶粒径(μm)
ASTM(E112−96)に基づき、以下の手順により、比較法にて粒度番号を判定した後、旧オーステナイト結晶粒の結晶粒径(公称粒径)を求めた。
(1)光学顕微鏡による倍率100倍の写真と標準図と比較して、相当する粒度番号Nを判定する。
(2)粒度番号Nは、顕微鏡の100倍で観察した25mm平方(625mm:顕微鏡視野)中の結晶粒の数nに基づいて決められており、下記式(1)が成り立つ。
(3)62,500μm中にn個の粒があると考えられるので、結晶粒径d(μm)は、下記式(2)により算出できる。
なお、なお、旧オーステナイト結晶粒径については、10箇所(10視野)測定し、それぞれの平均粒径を求めた。
2.マルテンサイトブロック径(μm)
マルテンサイトの下部組織で、ほぼ同一方位のラス集団は、ブロック(マルテンサイトブロック)と呼ばれている。ブロック間の方位差は、15°以上(大角粒界)である。そこで、FESEM−EBSP法により得られる結晶方位マップから、以下の方法によりマルテンサイトブロック径(μm)を求めた。
(1)120μm×120μmの視野を0.3μmステップでEBSP測定を行い、結晶方位図を求める。
(2)結晶方位図から、隣接する結晶との方位差が15°以上で囲まれる領域を識別し、その面積をそれぞれ求める。
(3)上記各面積の平方根をとり(√(面積))、ブロック径を求める。
なお、マルテンサイトブロック径については、10箇所(10視野)測定し、各視野におけるブロックの最大径及び最小径を求め、それぞれの平均径(最大径の平均及び最小径の平均)を求めた。
3.引張特性(0.2%耐力:YS(MPa)、引張強度:TS(MPa)、伸び:EL(%)及び絞り:RA(%))
JIS−Z2241(1998)に基づいて測定した。試験片形状はJIS−Z2201(1998)記載の14号試験片でφ6×G.L.30mmとした。
4.シャルピー吸収エネルギー:vE(J)
JIS−Z2242(2005)に基づいて測定した。試験片形状はJIS−Z2242(2005)記載の2mmVノッチを採用した。試験は各3本実施し、吸収エネルギーはその平均値とした。
5.回転曲げ疲労強度FS(MPa)及び耐久限度比
以下に示す試験方法にて回転曲げ疲労試験を行い、疲労強度を評価した。
試験片:φ10mm×G.L.30mm平滑試験片(5本)
試験方法:回転曲げ(応力比=−1、回転数=3,000〜3,600rpm)
評価方法:階差法(階差応力20MPa)
疲労強度〔FS〕=破断応力(MPa)−階差応力(MPa)
耐久限度比=疲労強度〔FS〕/引張強度〔TS〕
[実施例1〜13及び比較例1〜14]
表1に示した成分の鋼種a〜qを溶製した。なお、表1中「−」は検出限界値以下であることを示す。鋼種aは、電気炉で溶解及び取鍋精錬を行い、70ton鋼塊を鋳造した。また、鋼種b〜qは、それぞれ高周波炉を用いて溶製し、40kg鋼塊を鋳造した。
鋼種aの鋼塊(70ton)は熱間鍛造を施して直径500mmの丸棒状の鍛造材とした。また、鋼種b〜qについては、90mm×90mm×600mmにまで鍛造した後、大気中で放冷した。鋼種a〜qそれぞれの鍛造材について、室温まで冷却した後、各鍛造材から、20mm×20mm×180mmの小片を切り出した。各小片について、クランク軸の鍛造工程を模擬した表2に示す条件で加熱処理を行い、これを炉冷することにより試料片を作製した。
その後、それぞれの試料片に対して、クランク軸の強度を確保するための調質処理(焼入れ・焼戻し処理)を行った。焼入れ条件については、直径500mmのクランク軸の加熱・冷却速度を模擬した焼入れ処理を施した。具体的には、小型シミュレート炉を用いて、昇温速度40℃/時間で870〜940℃まで昇温し、その温度で3〜8時間保持後、870〜500℃の温度範囲の平均冷却速度が20〜50℃/分となる冷却で、焼入れ処理を実施した。焼戻し処理は、560〜610℃の温度で13時間保持し炉冷した(各試料片に対する処理条件について、表2に示す)。このような方法にて、実施例1〜13及び比較例1〜14の試料片(鍛鋼品)を得た。
実施例1〜13及び比較例1〜14の試料片について、ミクロ組織(マルテンサイト組織(M)又はベイナイト組織(B))の状態を観測した。また、上記測定方法にて、旧オーステナイト結晶粒径、マルテンサイトブロック径、引張特性、シャルピー吸収エネルギー並びに疲労特性(疲労強度FS及び耐久限度比)を評価した。測定結果を表3に示す。なお、表3中「−」は未測定を示す。
実施例又は比較例の試験片で測定したマルテンサイトブロックの最大径とシャルピー吸収エネルギーとの関係を図2に示す。実施例又は比較例の試験片で測定した引張強度とシャルピー吸収エネルギーとの関係を図3に示す。実施例又は比較例の試験片で測定した引張強度と疲労強度との関係を図4に示す。
実施例4の試験片の結晶方位図を図5に、実施例11の試験片の結晶方位図を図6に、比較例3の試験片の結晶方位図を図7に、比較例7の試験片の結晶方位図を図8に、比較例9の試験片の結晶方位図を9に示す。
[考察]
図2に示されるように、マルテンサイトの最大ブロック径が15μm以下の場合、良好な靭性(シャルピー吸収エネルギー)が得られることがわかる。また、図3に示されるように、本発明の大型鍛鋼品用高強度鋼は、従来鋼よりも高強度(1,050MPa以上の強度)でも、良好な靭性(衝撃特性)を有していることがわかる。一般的に、材料は強度が高まると靭性は低下するが、化学成分および金属組織を最適化することにより、強度と靭性とのバランスに優れた(例えば強度1,050MPa以上の)大型高強度鍛鋼品を提供できる。
図4に、引張強度と疲労強度との関係を示す。本発明の鍛鋼品の疲労強度は従来鋼に対して約10%以上向上している。また,耐久限度比(=疲労強度/引張強度)は従来鋼と同等であり、引張強度と疲労強度の比例関係が維持されている。すなわち、高強度化に伴う切欠き感受性の増大は認められない。
[解析例]
焼入れによる鋼材内部の変態応力について、汎用プログラムFORGE2009を用いて伝熱・熱応力解析を実施した。具体的条件としては以下のとおりである。丸棒形状を想定し、2次元軸対称モデルを用いてモデル化を行い、軸方向は単位長さのみモデル化し上下面断熱とした。初期温度を870℃均一として常温付近まで冷却を行う伝熱・熱応力解析を行った。また、解析に用いた各材料物性値について図10〜図12に示す。解析は、下記解析条件A及びBにおいて行った。
(解析条件A)
図13(a)の点線で示すような、表面から中心部までの距離に対する深さの比が0〜0.35まではマルテンサイト組織100%、中心部はマルテンサイト組織95%及びベイナイト組織5%である丸棒鋼材内部の組織分率
(解析条件B)
図13(a)の実線で示すような、表面から中心部までの距離に対する深さの比が0〜0.1まではマルテンサイト組織100%、中心部はベイナイト組織100%としたときの丸棒鋼材内部の組織分率
解析条件A及びBにおける解析結果を図13(b)に示す。この図13(b)に示されるように、解析条件Aの場合は内部の変態応力が大きくなる。また、解析条件Bの場合は深さの比0.2近傍に応力が残留することがわかる。解析条件AとBとの間の組織分率とすることで、表面から中心まで全体の内部応力を低く制御できる。
[参考実施例1]
上記表1に示す成分組成を有する鋼種aを電気炉で溶解及び取鍋精錬を行い、70ton鋼塊を鋳造した。鋼種A(70ton)鋼塊は、自由鍛造プレスにより、熱間鍛造を施して直径500mm(半径250mm)の丸棒鍛造材にした後、大気中で放冷した。この丸棒鍛造材は、RR鍛造前の加熱を模擬して、1,280℃で3時間の加熱処理を行った。焼入れ・焼戻し処理の前に、時効処理(650℃の温度で20時間保持)し、室温まで冷却した。焼入れ条件については、40℃/時間の昇温速度で加熱し、870℃で8時間保持後に、ポリマー焼入れを実施した。その後、焼戻し処理として、580℃にて15時間保持した後、350℃まで炉冷、その後は室温まで空冷し、参考実施例1の大型高強度鍛鋼品を得た。
得られた大型高強度鍛鋼品について、表面から中心方向へ各深さ(25mm、40mm、70mm、100mm、130mm、160mm、190mm、220mm及び250mm)が表面となるように研削した。それぞれの深さにおけるブリネル硬度HB、引張強度(MPa)、組織分率(%)及び旧オーステナイト(γ)結晶粒径(μm)を測定した。なお、この参考実施例1の大型高強度鍛鋼品における引張強度については、測定したブリネル硬度HBから硬さ換算表(SAE J 417)に基づいて算出した換算値である。ブリネル硬度とマルテンサイト組織分率の測定及び算出方法は以下のとおりである。測定結果を製造の際の熱処理条件と共に表4に示す。
ブリネル硬度
JIS−Z2243(2008)に基づいて測定した。
マルテンサイト組織分率(%)
組織分率は、硬度(ブリネル硬度:HB)測定の結果から、混合則により下記式を用いて算出した。なお、マルテンサイト組織以外をベイナイト組織として、ベイナイト組織分率(%)も併せて算出した。
HB=HB×f(x)/100+HB×(1−f(x)/100)
(x):マルテンサイト組織分率(%)
HB:マルテンサイトのブリネル硬度
(フルマルテンサイトの部分の硬度実測値:368)
HB:ベイナイトのブリネル硬度
(フルベイナイトの部分の硬度実測値:352)
また、参考実施例1の大型高強度鍛鋼品のそれぞれの深さとブリネル硬度との関係を図14(a)に、及びそれぞれの深さとマルテンサイト組織分率との関係を図14(b)に示す。
本発明の大型高強度鍛鋼品は、強度及び靭性が共に優れ、かつ高い疲労強度を有する。従って、当該大型高強度鍛鋼品は、船舶や発電機に用いられる大型クランク軸や中間軸等として好適に用いることができる。

Claims (1)

  1. C:0.31質量%以上0.5質量%以下、
    Si:0.02質量%以上0.2質量%以下、
    Mn:0.1質量%以上0.6質量%以下、
    Ni:2.6質量%以上3.4質量%以下、
    Cr:0.8質量%以上1.9質量%以下、
    Mo:0.25質量%以上0.8質量%以下、
    V:0.05質量%以上0.2質量%以下、及び
    Al:0.005質量%以上0.1質量%以下
    を基本成分、残部をFe及び不可避的不純物とし、この不可避的不純物としてのSの含有量が0.008質量%以下である組成を有し、
    マルテンサイト組織又はマルテンサイトとベイナイトとの混合組織からなり、
    旧オーステナイト結晶粒径が19μm以上70μm以下、
    マルテンサイトの最大ブロック径が15μm以下、最小ブロック径が0.5μm以上である大型高強度鍛鋼品。

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