JP6555345B2 - 熱間鍛造用鋼材 - Google Patents
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Description
fn1=17C+Si+Mn+Cr (1)
fn2=0.25Mn−14Ti (2)
fn3=C+0.1Mn+0.28Cr (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Vを含有することなく高強度を得るためには、Cとともに、固溶強化元素であるSi、Mn及びCrの含有量を高めることが有効である。
fn1=17C+Si+Mn+Cr (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
(A)低温靭性及び常温靭性には、相関関係が必ずしも認められない。低温靭性を高めた場合、常温靭性が低下する場合があり、その逆もある。たとえば、後述の表2の試験番号40と試験番号41とに注目する。試験番号41では、試験番号40と比較してN含有量が低い。そのため、試験番号41の常温靭性(20℃でのシャルピー衝撃試験で得られたシャルピー衝撃値)は、試験番号40の常温靭性よりも優れる。しかしながら、試験番号40の低温靭性(−40℃でのシャルピー衝撃試験で得られたシャルピー衝撃値)は、試験番号41の低温靭性よりも低い。したがって、N含有量の低減は、常温靭性を高めるが、低温靭性を低下する。このように、常温靭性及び低温靭性には、相関関係が必ずしも得られない。したがって、常温靭性の改善策が低温靭性に与える影響を予測することは困難である。
fn2=0.25Mn−14Ti (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
fn3=C+0.1Mn+0.28Cr (3)
ここで、式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
fn1=17C+Si+Mn+Cr (1)
fn2=0.25Mn−14Ti (2)
fn3=C+0.1Mn+0.28Cr (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態による熱間鍛造用鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、機械構造用部品としての鋼の強度を高める。C含有量が0.30%以下であれば、この効果が得られない。さらに、フェライトが旧オーステナイト粒界に生成しやすくなり、パーライト粒を囲む。この場合、ネットワークフェライトが形成され、上述のとおり、鋼の低温靭性が低下する。一方、C含有量が0.40%以上であれば、鋼の低温靭性が低下する。したがって、C含有量は0.30超〜0.40%未満である。C含有量の好ましい下限は0.31%であり、さらに好ましくは0.32%である。C含有量の好ましい上限は0.39%であり、さらに好ましくは0.38%である。
シリコン(Si)は、フェライトを固溶強化して鋼の強度を高める。Si含有量が0.30%未満であれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が1.00%を超えれば、鋼の靭性が低下する。したがって、Si含有量は0.30〜1.0%である。Si含有量の好ましい下限は0.35%である。Si含有量の好ましい上限は0.95%である。
マンガン(Mn)は、鋼の強度を高める。Mn含有量が1.00%未満であれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が2.00%を超えれば、鋼の常温での靭性が低下する。そのため、常温での靭性の低下を抑制するためのMn含有量の上限は2.00%である。しかしながら、本実施形態の熱間鍛造用鋼材では、常温での靭性だけでなく、低温靭性の向上も求められる。Mn含有量が2.00%を超えれば、低温靭性が低下する。したがって、Mn含有量は1.00〜2.00%である。Mn含有量の好ましい下限は1.10%である。Mn含有量の好ましい上限は1.90%である。
燐(P)は、鋼中に不可避的に含有される。Pは鋼中で偏析しやすく、局所的に靱性を低下する。特に、P含有量が0.035%を超えれば、局所的な靱性低下が著しくなる。したがって、P含有量は0.035%以下である。Pの含有量の好ましい上限は、0.030%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
硫黄(S)は、鋼の被削性を高める。S含有量が0.050%未満であれば、この効果が得られない。一方、S含有量が0.100%を超えれば、鋼中に粗大な硫化物が生成して熱間鍛造時に割れが発生しやすくなる。したがって、S含有量は0.050〜0.100%である。Sの含有量の好ましい下限は0.055%であり、S含有量の好ましい上限は0.080%である。
アルミニウム(Al)は鋼中に不可避に含有される。Alは鋼を脱酸する。しかしながら、Al含有量が0.050%を超えれば、鋼中に粗大な介在物が生成し、熱間鍛造時に割れが発生しやすくなる。したがって、Al含有量は0.050%以下である。Al含有量の好ましい上限は0.045%である。本明細書におけるAl含有量は、全Al(total Al)の含有量を意味する。
チタン(Ti)は、窒化物を生成して熱間鍛造後の鋼材のパーライト粒を微細化し、鋼の低温靱性を高める。Ti含有量が0.002%未満であれば、この効果が得られない。一方、Ti含有量が0.020%を超えれば、粗大なTi炭窒化物が生成して鋼の低温靱性がかえって低下する。したがって、Ti含有量は0.002〜0.020%である。Ti含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.0080%超であり、さらに好ましくは0.0090%超である。Ti含有量の好ましい上限は0.018%である。
クロム(Cr)は、鋼中に固溶して熱間鍛造後の鋼を強化する。Cr含有量が0.02%未満であれば、この効果が得られない。一方、Cr含有量が1.49%を超えれば、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Cr含有量は0.02〜1.49%である。Cr含有量の好ましい下限は0.03%である。Cr含有量の好ましい上限は1.44%である。
バナジウム(V)は含有されなくてもよい。Vは高価であり、製造コストを高める。そのため、本実施形態では、V含有量はなるべく低い方が好ましい。したがって、V含有量は0.02%以下である。
窒素(N)は、Ti等と窒化物を生成して結晶粒を微細化し、低温靭性を高める。N含有量が0.003%未満であれば、この効果が得られない。一方、N含有量が高すぎれば、粗大な析出物(窒化物)を生成して常温靭性が低下する。N含有量が0.030%を超えれば特に、常温靭性が顕著に低下することを本発明者らは知見した。したがって、N含有量は0.003〜0.030%である。N含有量の好ましい下限は0.004%である。N含有量の好ましい上限は0.022%である。
酸素(O)は不可避的に含有される。Oは、粗大な酸化物系介在物を生成する。粗大な酸化物系介在物は割れの起点となり、鋼の疲労強度及び低温靭性を低下する。したがって、O含有量は0.0050%以下である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは鋼の被削性を高める。しかしながら、Ca含有量が0.0100%を超えれば、粗大な介在物が生成する。粗大な介在物は熱間鍛造時の割れ発生の原因となる。したがって、Ca含有量は0〜0.0100%である。上記効果をより有効に得るためのCa含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0095%である。
鉛(Pb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Pbは鋼の被削性を高める。しかしながら、Pb含有量が0.20%を超えれば、熱間鍛造性が低下する。したがって、Pb含有量は0〜0.20%である。上記効果をより有効に得るためのPb含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Pb含有量の好ましい上限は0.19%である。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuはフェライト中に固溶して鋼の硬さを高める。しかしながら、Cu含有量が0.20%を超えれば、熱間鍛造性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜0.20%である。上記効果をより有効に得るためのCu含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.07%である。Cu含有量の好ましい上限は0.19%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niはフェライト中に固溶して鋼の硬さを高める。しかしながら、Ni含有量が0.20%を超えれば、熱間鍛造性が低下する。したがって、Ni含有量は0〜0.20%である。上記効果をより有効に得るためのNi含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.07%である。Ni含有量の好ましい上限は0.19%である。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moはフェライト中に固溶して鋼の硬さを高める。しかしながら、Mo含有量が0.20%を超えれば、熱間鍛造性が低下する。したがって、Mo含有量は0〜0.20%である。上記効果をより有効に得るためのMo含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.07%である。Mo含有量の好ましい上限は0.19%である。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Nbは結晶粒を微細化して、鋼の低温靭性を高める。しかしながら、Nb含有量が0.050%を超えれば、粗大な析出物が生成する。粗大な析出物は割れの起点となり、鋼の低温靭性を低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.050%である。Nb含有量の好ましい下限は0.002%であり、さらに好ましくは0.005%である。Nb含有量の好ましい上限は0.045%である。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Bはオーステナイト粒界に偏析し、P等の粒界脆化元素を粒界から排除する。その結果、粒界が強化される。しかしながら、B含有量が0.0050%を超えれば、Bの粒界への偏析が強くなりすぎ、かえって粒界強度が低下する。したがって、B含有量は0〜0.0050%である。B含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0008%である。B含有量の好ましい上限は0.0045%である。
本実施形態の熱間鍛造用鋼材ではさらに、式(1)で定義されるfn1が7.1以上であり、式(2)で定義されるfn2が0.264以下であり、式(3)で定義されるfn3が0.49以上である。
fn1=17C+Si+Mn+Cr (1)
fn2=0.25Mn−14Ti (2)
fn3=C+0.1Mn+0.28Cr (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
fn1は鋼の強度の指標である。式(1)中のC、Si、Mn及びCrはいずれも、鋼の強度を高める。図1を参照して、fn1の上昇とともに、引張強度も上昇する。そして、fn1が7.1以上であれば、熱間鍛造用鋼材として十分高い700MPa以上の引張強度が得られる。したがって、fn1は7.1以上である。fn1の好ましい下限は7.3であり、さらに好ましくは7.4である。fn1の上限は特に限定されないが、上述の各元素(C、Si、Mn及びCr)含有量の上限値により決まる。
fn2は鋼のパーライト粒の細粒化による低温靭性の指標である。式(2)中のTiは窒化物を形成して、熱間鍛造後の鋼中のパーライト粒を微細化する。これにより、低温靭性が高まる。一方、Mn含有量が高すぎれば、低温靭性が低下し、Tiによる低温靭性の向上効果が低減される。
fn3はネットワークフェライトに起因した低温靭性の指標である。式(3)中のC、Mn及びCrのうち、Cはフェライトの生成を抑制してパーライト粒の周りに生成するフェライトを抑制する。この場合、フェライトが不連続に(断続して)生成し、隣り合うフェライトの間にパーライトが生成する。そのため、低温靭性の低下が抑制される。さらに、Mn及びCrはパーライトの強度を高めるため、フェライト間に形成されたパーライトでの亀裂進展が抑制される。そのため、低温靭性が高まる。fn3が0.49以上であれば、上記効果が得られる。fn3の好ましい下限は0.50であり、さらに好ましくは0.51である。fn3の上限は特に限定されないが、上述の各元素(C、Mn及びCr)含有量の上限値により決まる。
本実施形態の熱間鍛造用鋼材の製造方法の一例は次のとおりである。
[熱間鍛造用鋼材の製造]
表1及び表2に示す化学組成を有する150kgの溶鋼を真空溶解により製造し、インゴット(熱間鍛造用鋼材)とした。
各試験番号の丸棒鍛伸材から、JIS14号試験片を作製した。試験片の長手方向は、丸棒鍛伸材の長手方向と平行であった。試験片を用いて、JIS Z2241(2011)に準拠して、常温(20℃)、大気中にて引張試験を実施して、引張強度TS(MPa)を測定した。
各試験番号の丸棒鍛伸材から、JIS3号Uノッチシャルピー試験片を作製した。試験片を用いて、JIS Z2242(2005)に準拠したシャルピー衝撃試験を実施した。シャルピー衝撃試験では、各試験番号ごとに、常温(20℃)と−40℃とで実施し、常温での吸収エネルギー(J)と、−40℃での吸収エネルギー(J)とをそれぞれ求め、シャルピー衝撃値(J/cm2)を算出した。
表1及び表2を参照して、試験番号1〜4、7〜10、13〜16、20、21、23〜26、29〜32、35〜39、42、44、45、47〜49、51、53〜62の化学組成は適切であり、fn1〜fn3も適切であった。その結果、いずれの試験番号においても、強度は良好であり、引張強度TSが700MPa以上であった。さらに、20℃でのシャルピー衝撃値(常温靭性)は55J/cm2以上、−40℃でのシャルピー衝撃値(低温靭性)は35J/cm2以上であり、優れた常温靭性及び低温靭性を示した。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.30超〜0.40%未満、
Si:0.30〜1.00%、
Mn:1.09〜2.00%、
Ti:0.005〜0.020%、
P:0.035%以下、
S:0.050〜0.100%、
Al:0.050%以下、
Cr:0.03〜1.49%、
V:0.02%以下、
N:0.003〜0.030%、
O:0.0050%以下、
Ca:0〜0.0100%、
Pb:0〜0.20%、
Cu:0〜0.20%、
Ni:0〜0.20%、
Mo:0〜0.20%、
Nb:0〜0.050%、及び、
B:0〜0.0050%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
式(1)で定義されるfn1が7.1以上であり、
式(2)で定義されるfn2が0.264以下であり、
式(3)で定義されるfn3が0.49以上である、熱間鍛造用鋼材。
fn1=17C+Si+Mn+Cr (1)
fn2=0.25Mn−14Ti (2)
fn3=C+0.1Mn+0.28Cr (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載の熱間鍛造用鋼材であって、
Ca:0.0005〜0.0100%、及び、
Pb:0.02〜0.20%からなる群から選択される1種以上を含有する、熱間鍛造用鋼材。 - 請求項1又は請求項2に記載の熱間鍛造用鋼材であって、
Cu:0.05〜0.20%、
Ni:0.05〜0.20%、及び、
Mo:0.05〜0.20%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、熱間鍛造用鋼材。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱間鍛造用鋼材であって、
Nb:0.002〜0.050%、及び、
B:0.0005〜0.0050%からなる群から選択される1種以上を含有する、熱間鍛造用鋼材。
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