JP3900102B2 - 非調質鋼及び非調質鋼製品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非調質鋼及び非調質鋼製品に関し、詳しくは、被削性に優れ、高周波焼入れや軟窒化などの表面硬化処理を省略しても、優れた耐摩耗性を有する熱間加工用非調質鋼製品の素材となる非調質鋼及び上記の鋼を素材として、熱間加工及び機械加工によって部品形状に成形するだけで、高周波焼入れや軟窒化などの表面硬化処理を省略しても、優れた耐摩耗性を有する熱間加工用非調質鋼製品、なかでも軸受と摺動する部位において優れた耐摩耗性を有する熱間加工用非調質鋼製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のクランクシャフト、ハブなどの機械部品の製造に当たって、熱間加工後に行う「焼入れ−焼戻し」の調質処理を省略することを意図して、C含有量が0.4〜0.6質量%のいわゆる「中炭素鋼」をベースとするフェライト・パーライト型の非調質鋼が広く用いられている。
【0003】
上記クランクシャフトなどの機械部品においては、耐摩耗性が要求される。このため、従来は、機械加工の後で、高周波焼入れや軟窒化などの表面硬化処理が施されていた。
しかしながら、最近、工程の簡略化や省エネルギーの観点から、部品形状に成形した後の高周波焼入れや軟窒化といった表面硬化処理を施すことなく、所望の耐摩耗性を確保できる非調質鋼製品に対する要求が大きくなっている。
【0004】
一般に、鋼の硬さを高めることで耐摩耗性を向上させることができる。しかし、例えばCの含有量を増やして硬さを増大させても、被削性が低下するので、単に硬さを増大させるだけでは問題の解決にならない。
【0005】
一方、クランクシャフトを鋳鉄で製造することも行われている。鋳鉄の場合、鋳込み後の組織はグラファイトと硬質なパーライトとからなるため、表面硬化処理を施すことなく或る程度の耐摩耗性を確保することはできる。しかし、その耐摩耗性は表面硬化処理を施した場合に比べれば劣るものであり、更に、鋳鉄製の製品には多量のグラファイトが含まれることになるため剛性も低い。
【0006】
高周波焼入れや軟窒化などの表面硬化処理を省略して、非調質鋼製品に耐摩耗性を確保させる技術が特許文献1〜に開示されている。
【0007】
特許文献1には、特定の化学組成を有し、熱間鍛造後の組織がフェライト+パーライトであり、初析フェライトの面積率が10%以下である「耐摩耗性にすぐれた熱間鍛造用非調質鋼」が開示されている。しかし、特許文献1で提案された鋼は、単にフェライト+パーライト組織からなる非調質鋼の組織をパーライト主体の組織にしただけのものであり、必ずしも表面硬化処理を施した場合と同等の耐摩耗性が得られるというものでもなかった。
【0008】
特許文献2には、特定の化学組成を有し、酸化物系介在物であるAlとSiO の含有量を低く抑えた「耐摩耗性に優れたクランクシャフト用鋼」が開示されている。しかし、特許文献2で提案されたクランクシャフト用鋼は、その組織がV炭化物によって十分に析出硬化された単なるフェライト−パーライト組織でしかない。このため、エンジンの軽量化を目的にクランクシャフトの細軸化が進められている近年の過酷な条件下では、軟質のフェライト相から摩耗が進行し、十分な耐摩耗性を確保することが困難である。
【0009】
特許文献3には、特定の化学組成を有し、熱間鍛造後の組織が初析フェライト分率3%以下のパーライトを主体とし、厚み20μm以下の硫化物系介在物を含有する「被削性及び耐摩耗性に優れたクランクシャフト用鋼」及びこの鋼を用いて作成されたクランクシャフトが開示されている。しかし、この特許文献3で提案された鋼は、Cの含有量が0.62〜0.80%と高いので、直径の小さい深穴をドリル加工するような過酷な加工条件では、切り粉詰まりが発生するなど被削性の点で不十分な場合があるし、被削性の低下も免れない。
【0010】
また、特許文献4には、成分含有量とパーライトインデックスを規定した「耐摩耗性に優れた鍛造用鋼」が開示されている。しかし、この特許文献4で提案された鋼は、Tiを含んでいないためMnSを核として初析フェライトが析出しやすく、このため十分な耐摩耗性を確保できない場合があり、特にその実施例に記載されているようなTiを含まずにVを含むものには初析フェライトが多量に析出して耐摩耗性が低下する場合がある。
【0011】
特許文献5には、特定の化学組成を有する鋼に特定の条件で熱間鍛造と空冷とを施した、フェライト面積率が5%以下のパーライトを主体とする金属組織を有する粗部品における他部品との嵌合い部を、その嵌合い部の表面粗さが5から25μmの範囲内になるように仕上げ加工する「耐摩耗性に優れた熱間鍛造部品の製造方法」が開示されている。しかし、特許文献5の技術では、フェライト強化元素であるVの添加が必須である。Vを添加すると、後述のようにパーライト中のフェライトが強化されることにより、パーライトラメラー間隔の微細化が阻害され、顕著な耐摩耗性が期待できない。また、この技術は必ずしも被削性に配慮された技術ではない。
【0012】
なお、組織がパーライトからなる場合の耐摩耗性を高める技術が特許文献6に開示されている。
【0013】
すなわち、特許文献6には、重量%で、Cを0.85%を超えて1.20%以下含有し、その一部が少なくともパーライト組織を呈する鋼レールにおいて、上記パーライト組織のラメラー間隔と、パーライト組織中のフェライト厚さに対するセメンタイト厚さの比を規定した「高耐摩耗パーライト系レール」が開示されている。しかし、0.85%を超えて1.20%以下というC含有量は、前記の特許文献3における0.62〜0.80%というC含有量よりも更に高いものであり、したがって、深穴ドリル加工性、特に直径の小さい深穴をドリル加工する場合の加工性に極めて劣る。
【0014】
【特許文献1】
特開2000−265242号公報
【特許文献2】
特開平6−128690号公報
【特許文献3】
特開2002−194502号公報
【特許文献4】
特開平4−110444号公報
【特許文献5】
特開平10−137888号公報
【特許文献6】
特許第3078461号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、被削性に優れ、高周波焼入れや軟窒化などの表面硬化処理を省略しても、優れた耐摩耗性を有する熱間加工用非調質鋼製品の素材となる非調質鋼、及び上記の鋼を素材とし、熱間加工及び機械加工により部品形状に成形するだけで、表面硬化処理した場合と同等の優れた耐摩耗性を有する熱間加工用非調質鋼製品、特に、軸受と摺動する部位で優れた耐摩耗性を有する熱間加工用非調質鋼製品を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(4)に示す非調質鋼、並びに、(5)及び(6)に示す非調質鋼製品にある。
【0017】
(1)質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含み、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
【0018】
(2)質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含むとともに、Al:0.005%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
【0019】
(3)質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含むとともに、Ca:0.02%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
【0020】
(4)質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含むとともに、Al:0.005%以下及びCa:0.02%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
【0021】
(5)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の非調質鋼を素材とし、表層から200nmまでの領域におけるパーライトのラメラー間隔が30nm以下であることを特徴とする非調質鋼製品。
【0022】
(6)非調質鋼製品がクランクシャフトである上記(5)に記載の非調質鋼製品。
【0023】
ここで、定量金属組織学的検討から、或る相の体積割合は面積割合に等しいことが知られており、したがって、上記の初析フェライトが組織に占める割合は、例えば、通常の2次元的な評価方法、すなわち、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いた観察によって求めた初析フェライトの割合から決定すればよい。
【0024】
「フェライト・パーライト組織」とは、フェライトとパーライトの混合組織をいう。
【0025】
上記の「初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織」には、組織に占める初析フェライトの割合が0となる組織、すなわち、パーライト単相の組織を含む。
【0026】
以下、上記(1)〜(4)の非調質鋼に係る発明、並びに、(5)及び(6)の非調質鋼製品に係る発明をそれぞれ(1)〜(6)の発明という。
【0027】
本発明者らは、前記した課題を達成するために、材料の組織を種々変化させて被削性と耐摩耗性に及ぼす影響を調査した。その結果、下記(a)〜(e)の知見を得た。
【0028】
(a)鋼材の組織がマルテンサイトやベイナイトといった低温変態組織の場合よりも、特定割合以下の初析フェライトを含むフェライト・パーライト組織の場合に良好な被削性が得られる。
【0029】
(b)例えば自動車用機械部品として用いられるクランクシャフトなど非調質鋼製品の通常の使用環境を想定した場合、耐摩耗性に影響するのは表層から200nmまでの領域における組織である。
【0030】
(c)上記(a)と(b)から、良好な被削性と良好な耐摩耗性を兼備させるには、組織を特定割合以下の初析フェライトを含むフェライト・パーライト組織とし、且つ、表層から200nmまでの領域における組織を特定の組織とすればよい。
【0031】
(d)耐摩耗性を高めるためには、表層から200nmまでの領域におけるパーライトのラメラー間隔を微細化すればよい。
【0032】
(e)表層から200nmまでの領域におけるパーライトのラメラー間隔が30nmであれば、表面硬化処理した場合と同等の良好な耐摩耗性が得られる。
【0033】
更に、本発明者らは成分元素と耐摩耗性との関係を調査して次の知見(f)〜(h)を得た。
【0034】
(f)Si、Vなどフェライト強化元素の含有量を制限してフェライトの変形能を大きくすれば、研磨などの機械加工で前記の表層領域における混合組織中のパーライトのラメラー間隔を一層微細にすることができるので、耐摩耗性をより高めることができる。
【0035】
(g)Siを多く含む鋼の場合には、摩擦による温度上昇で機械的に脆い酸化層が表面に生じやすくなる。したがって、摩擦による温度上昇に伴う表面酸化を防止し、酸化層の脱離によって摩耗が促進することを防止するためにも、Siの含有量を制限することが極めて重要になる。
【0036】
(h)Tiを含むがVは含まない鋼の場合、Ti硫化物が初析フェライトの析出核になり難いので、組織に占める初析フェライトの割合を小さくすることができる。
【0037】
本発明は、上記(a)〜(h)の知見に基づいて完成されたものである。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学組成
C:0.35〜0.55%
Cはパーライト組織を得るのに最も有効な元素であるが、その含有量が0.35%未満では十分な効果が得られない。一方、0.55%を超えると鋼が硬化して被削性の低下を招く。したがって、Cの含有量を0.35〜0.55%とした。
【0039】
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸作用及び強化作用を有する。しかし、その含有量が0.05%未満ではこれらの効果が得難い。一方、0.50%を超えると、摩擦による温度上昇に伴う表面酸化が著しくなり、酸化層が脱離して摩耗が大きくなったり、フェライトが強化されてその変形能が小さくなるので、パーライトのラメラー間隔の微細化が困難になって、パーライトのラメラー間隔微細化による耐摩耗性の向上効果も小さくなることがある。したがって、Siの含有量を0.05〜0.50%とした。
【0040】
Mn:0.8〜2.0%
Mnは、強度及び靱性を高める作用がある。更に、焼入れ性を上げてCの共析濃度を下げ、初析フェライトの析出を抑制する作用も有する。これらの効果はMnの含有量が0.8%以上で得られる。一方、Mnの過剰な添加はベイナイト組織の生成を招いて耐摩耗性及び被削性に悪影響を及ぼすこととなり、特に、Mnの含有量が2.0%を超えると耐摩耗性及び被削性の低下が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.8〜2.0%とした。
【0041】
S:0.04〜0.3%
Sは、硫化物として析出して被削性を改善する作用がある。この効果を得るには0.04%以上の含有量が必要である。しかし、0.3%を超えると熱間加工性が低下する。したがって、Sの含有量を0.04〜0.3%とした。
【0042】
Cr:0.50%を超えて2.0%まで
Crは、強度及び靱性を向上させる作用がある。更に、焼入れ性を高めてCの共析濃度を下げ、初析フェライトの析出を抑制する作用も有する。しかし、その含有量が0.50%以下では添加効果に乏しい。一方、Crの過剰な添加はベイナイト組織の生成を招き、耐摩耗性及び被削性に悪影響を及ぼし、特に、その含有量が2.0%を超えると耐摩耗性及び被削性の低下が著しくなる。したがって、Crの含有量を0.50%を超えて2.0%までとした。
【0043】
Ti:0.003〜0.020
本発明においてTiは重要な意味を持つ元素である。すなわち、V非添加のTiを含む鋼においては、Ti硫化物が初析フェライトの析出核になり難く、したがって、組織に占める初析フェライトの割合が小さくなって、耐摩耗性を高めることができる。Tiには、Nと結合してTiNを形成し、Nのフェライト中への固溶量を抑制して耐摩耗性を高める作用もある。また、TiはAlNの形成を抑えるので、鋳造時に鋼塊の内部割れを防止する作用を有する。これらの効果を得るにはTiは0.003%以上の含有量が必要である。しかし、Tiを0.020%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Tiの含有量を0.003〜0.020%とした。
【0044】
N:0.005〜0.015%
Nは、窒化物や炭窒化物を形成して組織の微細化、或いは析出強化に寄与する。これらの効果はNの含有量が0.005%以上で得られる。しかし、Nを多量に添加すると青熱脆性が生じ、特に、その含有量が0.015%を超えると青熱脆性が顕著になることがある。したがって、Nの含有量を0.005〜0.015%とした。
【0045】
前記(1)の発明に係る非調質鋼は、上記のCからNまでの元素と、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼である。
【0046】
前記(2)の発明に係る非調質鋼は、脱酸作用を高めることを目的として、前記(1)の発明の鋼のFeの一部に代えて、Al:0.005%以下を含有させた化学組成を有する鋼である。
【0047】
上記のAlは脱酸作用を有するので、以下に述べる範囲内で含有させてもよい。
【0048】
Al:0.005%以下
Alは、添加すれば、脱酸作用を有する。この効果を確実に得るには、Alは0.002%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、その含有量が0.005%を超えると硬質のAlが多量に生成し、被削性の低下をきたす。したがって、Alを添加する場合には、その含有量を0.005%以下とするのが好ましい。
【0049】
前記(3)の発明に係る非調質鋼は、被削性を一層高めることを目的として、前記(1)の発明の鋼のFeの一部に代えて、Ca:0.02%以下を含有させた化学組成を有する鋼である。
【0050】
上記のCaは鋼の被削性を一段と高める作用を有するので、以下に述べる範囲内で含有させてもよい。
Ca:0.02%以下
Caは、添加すれば、被削性を高める作用を有する。また、MnSに固溶し、MnSの延伸抑制効果を発揮する。これらの効果を確実に得るには、Caは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Caの含有量が0.02%を超えても前記効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Caを添加する場合には、その含有量を0.02%以下とするのが好ましい。なお、被削性向上効果が著しいのは0.0030%以下であるため、Caの含有量の上限は0.0030%とするのがより好ましい。
【0051】
前記(4)の発明に係る非調質鋼は、脱酸作用を高めること、及び被削性を一層高めることを目的として、前述の(1)の発明の鋼のFeの一部に代えて、Al:0.005%以下及びCa:0.02%以下を含有させた化学組成を有する鋼である。
(B)鋼の組織
本発明に係る非調質鋼の組織は、初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織とする必要がある。
【0052】
先ず、フェライト・パーライト組織とするのは、被削性を良好にするためである。マルテンサイトやベイナイトといった低温変態組織を含む場合の被削性はフェライト・パーライト組織に比べて劣る。ここで、既に述べたように、「フェライト・パーライト組織」とはフェライトとパーライトの混合組織を指す。
【0053】
フェライト・パーライト組織において、初析フェライトが占める割合を3%以下とすることで、十分な硬さが確保され、耐摩耗性を高めることができる。
【0054】
したがって、本発明に係る非調質鋼においては、その組織を初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織とした。
【0055】
なお、初析フェライトの占める割合は、3%以下で小さければ小さいほど加工後の製品の表層部において高い硬さが安定、且つ確実に確保でき、組織に占める初析フェライトの面積率が0となる場合、すなわち、パーライト単相の組織が最も好ましい。前記した「初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織」に、組織に占める初析フェライトの割合が0となる組織、すなわち、パーライト単相の組織が含まれることは既に述べたとおりである。
(C)表層部の組織
非調質鋼を熱間加工して作製した粗成形品を、最終形状に仕上げ機械加工する場合、被加工材の組織がマルテンサイトやベイナイトといった低温変態組織の場合よりも、フェライト・パーライト組織の場合に良好な被削性が得られる。
【0056】
前記(5)及び(6)の発明においては、上記(B)項で述べた初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織を有する非調質鋼からなる粗成形品を最終形状の製品に機械加工した場合の、製品表層から200nmまでの領域におけるパーライトのラメラー間隔を規定する。
【0057】
すなわち、前記した(5)の発明及び(6)の発明に係る非調質鋼製品においては、表層から200nmまでの領域におけるパーライトのラメラー間隔を30nm以下とする。
【0058】
これは、表層から200nmまでの領域におけるパーライトのラメラー間隔が微細であると耐摩耗性が向上し、特に前記領域におけるパーライトのラメラー間隔が30nm以下であれば、表面硬化処理した場合と同等の良好な耐摩耗性が得られるからである。
【0059】
なお、上記組織におけるパーライトのラメラー間隔は微細であればあるほど好ましく、その下限値は特に規定しなくてもよい。
【0060】
前記(A)項で述べた成分組成からなる鋼は、通常の方法で熱間加工して粗成形品にした後、大気中放冷するだけで初析フェライトが3%以下のフェライト・パーライト組織になる。
【0061】
また、パーライト組織は、これに一方向の変形を加えることでそのラメラー間隔を小さくすることができる。したがって、最終の非調質鋼製品は、例えば、前記(1)〜(4)の発明に係る非調質鋼を素材とする粗成形品を切削加工した後、ラッピング加工して粗成形品の表層部に一方向の変形を加えることで、容易に表層から200nmまでの領域を所望の30nm以下のラメラー間隔とすることができる。
【0062】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0063】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する13種の鋼を150kgの真空誘導加熱炉で溶製し、直径210mmのインゴットにした。表1において、鋼A1〜A5は化学組成が本発明で規定する範囲内の本発明例の鋼であり、鋼B1〜B8は成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。
【0064】
【表1】
Figure 0003900102
【0065】
上記の各インゴットを通常の方法で1250℃に加熱した後、熱間鍛造して直径65mmの丸棒にした。なお、鍛造仕上げ温度は1000℃とし、熱間鍛造後は室温まで大気中放冷した。
【0066】
上記の直径65mmの丸棒に、通常の方法で旋削加工を施し、更にラッピング加工を行った。ここで、ラッピング加工は、ラッピング用砥石に対して旋削加工した丸棒を50MPaの一定荷重で押し付けた上、旋削方向と同一方向である一方向に回転させることで、直径53mmの丸棒に仕上げた。
【0067】
このようにして得た直径53mmの各丸棒について、組織を調査した。
【0068】
すなわち、ミクロ試料を切り出し、鏡面研磨した後ナイタルで腐食して光学顕微鏡観察して組織を判定するとともに写真を撮影し、画像解析して初析フェライトの面積率を測定した。
【0069】
パーライトのラメラー間隔は、透過型電子顕微鏡写真から測定した。すなわち、透過型電子顕微鏡観察用試料は、上記直径53mmのラッピング加工を施した丸棒の表層部を観察するために、集束イオンビーム加工(FIB加工)を行うことで断面に切り出し、その後通常のイオンミリング法を施すことで薄膜試料とし、透過型電子顕微鏡写真を撮影して、その写真からパーライトのラメラー間隔を求めた。
【0070】
前記直径53mmの各丸棒の被削性調査のためにドリル穿孔試験も行った。すなわち、通常の直径が5mmの高速度鋼(ハイス)製ドリルを用いて潤滑剤として水溶性切削油剤(エマルジョン型)を使用し、15m/分の周速、955rev/分の回転数、0.15mm/revの送りの条件で深さが50mmの孔を加工した。なお、異音を生じることなく穿孔可能な個数を調査し、150個の孔を穿孔しても異音が生じない場合には被削性良好として穿孔試験を中止した。
【0071】
前記直径53mmの各丸棒の耐摩耗性についても調査した。すなわち、通常の回転荷重試験機を用いて下記の条件で摩耗試験を行い、その時の摩耗量を摩耗深さとして測定した。試験は一般的な条件である35MPaの面圧、15m/秒の周速で20時間行い、軸受にはAl合金を用いて行った。なお、潤滑油にはモーターオイル#20を用い、入り口温度は130℃、給油圧を0.4MPaとした。
【0072】
なお、比較のために鋼B1の前記直径53mmの丸棒に、表面硬化処理として通常の高周波焼入れも行った。なお、この高周波焼入れ時の加熱温度は1000℃とした。
【0073】
上記の表層部を高周波焼入れした鋼B1の直径53mmの丸棒についても前述の方法で組織を調査した。
【0074】
この表面硬化処理した鋼B1の直径53mmの丸棒についても、既に述べた他の直径53mmの丸棒と同様に耐摩耗性を調査した。なお、被削性調査のためのドリル穿孔試験は行わなかった。
【0075】
表2に、上記の各試験結果を整理して示す。
【0076】
【表2】
Figure 0003900102
【0077】
表2から、本発明の条件を満たす試験番号1〜5の場合には、従来タイプの表面硬化処理した試験番号14と同等の良好な耐摩耗性が得られていることが明らかである。更に、ドリル穿孔試験結果から被削性も良好であることがわかる。
【0078】
これに対して、本発明で規定する条件から外れた試験番号6〜13の場合には、従来タイプの表面硬化処理した試験番号14試験と同等の耐摩耗性と良好な被削性との双方を兼備できないことが明らかである。
【0079】
【発明の効果】
本発明の非調質鋼製品は、熱間加工及び機械加工により部品形状に成形するだけで、表面硬化処理した場合と同等の優れた耐摩耗性を有するので、自動車のクランクシャフト、ハブ等の機械部品に用いることができる。本発明の非調質鋼製品は、本発明の非調質鋼を素材として比較的容易に製造することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含み、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
  2. 質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含むとともに、Al:0.005%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
  3. 質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含むとともに、Ca:0.02%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
  4. 質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜2.0%、S:0.04〜0.3%、Cr:0.50%を超えて2.0%まで、Ti:0.003〜0.020%及びN:0.005〜0.015%を含むとともに、Al:0.005%以下及びCa:0.02%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、組織が初析フェライトの割合が3%以下のフェライト・パーライト組織であることを特徴とする非調質鋼。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の非調質鋼を素材とし、表層から200nmまでの領域におけるパーライトのラメラー間隔が30nm以下であることを特徴とする非調質鋼製品。
  6. 非調質鋼製品がクランクシャフトである請求項5に記載の非調質鋼製品。
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