JP5459063B2 - 高周波焼入れ用圧延鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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・高い強度、
・高い母材靱性、
・高周波焼入れで生成する硬化層の靱性、
の全てに優れることが要求される。
fn1=C+(1/10)Si+(1/5)Mn+(5/22)Cr+1.65V−(5/7)S・・・(1)
ただし、上記(1)式中の、C、Si、Mn、Cr、V、Sは、それぞれの元素の質量%での含有量を表す。また、上記球状セメンタイトとは、長径Lと短径Wの比(L/W)が2.0以下であるセメンタイトを指す。
フェライト、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であり、ラメラーパーライトのうちのラメラー間隔が200nm以下のラメラーパーライトのミクロ組織に占める面積割合が20〜50%であり、かつ、球状セメンタイトの個数が4×10 5 個/mm 2 以上であるミクロ組織を有する高周波焼高周波焼入れ用圧延鋼材を製造する方法であって、
該全連続式熱間圧延方法が、下記の〔1〕および〔2〕を満足することを特徴とする高周波焼入れ用圧延鋼材の製造方法。
〔1〕各圧延工程中の被圧延材の表面温度が、650〜810℃の温度範囲内であること、
〔2〕総減面率が30%以上であること。
C:0.38〜0.55%
Cは、鋼の強度、高周波焼入れ性および高周波焼入れで形成された硬化層の強度を向上させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.38%未満では、前記作用による所望の効果が得られない。一方、Cの含有量が0.55%を超えると、母材靱性が低下するとともに、高周波焼入れで形成された硬化層が脆化する。したがって、Cの含有量を0.38〜0.55%とした。なお、前記の効果を安定して得るために、Cの含有量は0.40%以上、0.50%以下とすることが好ましい。
Siは、脱酸元素であり、さらに、固溶強化によってフェライトの強度を向上させる元素である。一方、Siは、含有量の増加に伴ってA3変態点を上昇させ、高周波焼入れ性および高周波焼入れで形成された硬化層の強度を低下させる元素でもある。そして、含有量の増加に伴ってA3変態点が上昇するため、加熱あるいは熱間圧延後の冷却過程で脱炭が生じやすいオーステナイトとフェライトが主たる構成相となる温度領域が広がるため、Siの含有量が高い鋼材では脱炭が生じやすくなる。特に、Siの含有量が1.0%を超える場合には、脱酸効果および固溶強化は期待できるものの、熱間圧延後の脱炭が生じやすくなって、高周波焼入れで生成する硬化層の靱性が低下する。したがって、Siの含有量を1.0%以下とした。なお、Si含有量は0.8%以下とすることが好ましい。一方、前記したSiの固溶強化作用を利用して強度確保を確実に行うためには、Siの含有量は0.03%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすれば一層好ましい。
Mnは、高周波焼入れ性および高周波焼入れで形成された硬化層の靱性を向上させるのに有効な元素であるとともに、固溶強化によってフェライトの強度を向上させる元素である。しかしながら、Mnの含有量が0.20%未満の場合、前記作用による所望の効果が得られない。一方、2.0%を超えてMnを含有させると、最終圧延後の冷却時にベイナイトを生成しやすくなり、靱性の劣化を招く。したがって、Mnの含有量を0.20〜2.0%とした。なお、合金コストを低く抑えたうえで前記の効果を安定して得るために、Mnの含有量は0.40%以上、1.50%以下とすることが好ましい。
Pは、不純物として含有され、粒界偏析および中心偏析を起こし、母材靱性および高周波焼入れで生成する硬化層の靱性の低下を招き、特に、その含有量が0.020%を超えると、母材靱性および高周波焼入れで生成する硬化層の靱性低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を、0.020%以下とした。なお、Pの含有量は、0.010%以下にするのが好ましい。
Sは、不純物として含有される。なお、Sを積極的に含有させるとMnと結合してMnSを形成し、被削性、なかでも切り屑処理性を高める作用を有するが、MnSを多く形成しすぎると、被削性は改善できても、母材靱性および高周波焼入れで生成する硬化層の靱性の低下を招き、特に、Sの含有量が0.10%を超えると、母材靱性および高周波焼入れで生成する硬化層の靱性低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を、0.10%以下とした。なお、Sの含有量は0.08%以下とすることが好ましい。一方、被削性を高める観点からは、Sは0.010%以上を含有させることが好ましく、0.015%以上含有させればより好ましい。
Crは、熱間圧延鋼材において球状セメンタイトを均一微細化させるために必要不可欠な元素である。さらに、Crは高周波焼入れ性を向上させる作用も有する。これらの効果はCrの含有量が0.10%以上で発揮される。しかしながら、Crの含有量が2.0%を超えると、前記した球状セメンタイトの均一微細化および高周波焼入れ性向上効果が飽和するうえに、母材靱性の低下が生じる。したがって、Crの含有量を0.10〜2.0%とした。なお、Crの含有量は0.20%以上、1.8%以下とすることが好ましい。
Alは、不純物として混入する元素である。また、Alは、脱酸のために添加する場合がある。さらに、Alは、鋼中のNと結合してAlNを形成し、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制して、高周波焼入れで生成する硬化層の靱性を向上させる効果を有する。しかしながら、Alは、A3変態点を上昇させ、高周波焼入れ性の低下を招く。特に、Alの含有量が0.10%を超える場合には、高周波焼入れ性の低下が著しくなり、さらに、母材靱性の劣化も招く。したがって、Alの含有量の上限を0.10%とした。なお、Alの含有量は0.08%以下とすることが好ましい。一方、高周波焼入れ時の結晶粒粗大化防止効果を得るためには、前記したAlNの確実な形成のためにAlの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Nは、鋼中のAlと結合してAlNを形成し、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制し、結晶粒の微細化によって高周波焼入れで生成する硬化層の靱性を向上させる効果を有する。しかしながら、Nの含有量が0.004%未満の場合には、その効果が不十分であり、一方、Nの含有量が0.03%を超えると、母材靱性の低下を招いてしまう。したがって、Nの含有量を、0.004〜0.03%とした。なお、Nの含有量は0.005%以上、0.02%以下とすることが好ましい。
本発明においては、fn1の値、つまり、
fn1=C+(1/10)Si+(1/5)Mn+(5/22)Cr+1.65V−(5/7)S・・・(1)
の式で表される値が大きくなりすぎると、過度に強化されるため、母材靱性の低下を招くことになる。本発明の高周波焼入れ用圧延鋼材は、後述するように「微細なフェライト、ミクロ組織に占める面積割合が20〜50%の微細ラメラーパーライト(つまり、ラメラー間隔が200nm以下であるラメラーパーライト)を含むラメラーパーライトおよび球状セメンタイト」で構成されるミクロ組織にすることで優れた「強度−靱性バランス」を確保するが、たとえこのようなミクロ組織を得ることができた場合でも、fn1の値が1.20を超えると目標とする母材靱性(2mmUノッチシャルピー衝撃試験片を用いたシャルピー衝撃試験における試験温度25℃での衝撃値が150J/cm2以上)を得ることができない。したがって、上記(1)で表わされるfn1の値を1.20以下とした。
第1群の元素であるCu、NiおよびMoは、高周波焼入れ性を向上させ、強度を高める作用を有するので、この効果を得るために、それぞれ、上記の範囲で含有させてもよい。以下、第1群の元素について詳しく説明する。
Cuは、CおよびMnと同様に、高周波焼入れ性を向上させ、強度を高める作用を有するので、高強度化のためにCuを含有してもよい。しかしながら、Cuの含有量が1.0%を超えると熱間加工性を劣化させる。したがって、含有させる場合のCuの量を1.0%以下とした。なお、含有させる場合のCuの量は0.80%以下とすることが好ましい。
Niは、CおよびMnと同様に、高周波焼入れ性を向上させ、強度を高める作用を有するので、高強度化のためにNiを含有してもよい。しかしながら、Niの含有量が3.0%を超えるとその効果が飽和するので、コストが嵩むばかりである。したがって、含有させる場合のNiの量を3.0%以下とした。なお、含有させる場合のNiの量は2.0%以下とすることが好ましい。
Moは、CおよびMnと同様に、高周波焼入れ性を向上させ、強度を高める作用を有するので、高強度化のためにMoを含有してもよい。しかしながら、Moの含有量が0.50%を超えた場合、前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、含有させる場合のMoの量を0.50%以下とした。なお、含有させる場合のMoの量は0.40%以下とすることが好ましい。
第2群の元素であるTi、NbおよびVは、結晶粒微細化作用を有するので、この効果を得るために、それぞれ、上記の範囲で含有させてもよい。以下、第2群の元素について詳しく説明する。
Tiは、鋼中の炭素あるいは窒素と結合して炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を形成し、熱間圧延あるいは高周波焼入れの際に結晶粒を微細化する作用を有するので、結晶粒微細化のためにTiを含有してもよい。しかしながら、0.10%を超える量のTiを含有させた場合、結晶粒の微細化効果は期待できるが、靱性の低下を招く。したがって、含有させる場合のTiの量を0.10%以下とした。なお、靱性低下の抑制という点から、含有させる場合のTiの量は0.08%以下とすることが好ましい。
Nbは、鋼中の炭素あるいは窒素と結合して炭化物あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化する作用を有する。また、Nbには、鋼の強度を向上させる作用もある。しかしながら、Nbの含有量が0.10%を超えるとその効果が飽和し、コストが嵩むのみならず、靱性の低下を招く。このため、含有させる場合のNbの量を0.10%以下とした。なお、含有させる場合のNbの量は0.08%以下とすることが好ましい。
Vは、鋼中の炭素あるいは窒素と結合して炭化物あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化する作用を有する。また、Vには、鋼の強度を向上させる作用もある。しかしながら、Vの含有量が0.30%を超えるとその効果が飽和し、コストが嵩むのみならず、靱性の低下を招く。このため、含有させる場合のVの量を0.30%以下とした。なお、含有させる場合のVの量は0.25%以下とすることが好ましい。
前項で述べた化学成分を有する本発明の高周波焼入れ用圧延鋼材のミクロ組織は、フェライト、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下、ラメラーパーライトのうちのラメラー間隔が200nm以下のラメラーパーライト(すなわち、微細ラメラーパーライト)のミクロ組織に占める面積割合が20〜50%および球状セメンタイトの個数が4×105個/mm2以上でなければならない。
前項で述べた本発明の高周波焼入れ用圧延鋼材のミクロ組織は、例えば、既に述べた化学成分を有する被圧延材を、次に述べる圧延方法で熱間圧延し、冷却することによって容易に得ることができる。
既に述べた化学成分を有する被圧延材を、オーステナイトとフェライトが主たる構成相となる670〜810℃の温度域に加熱した後、全連続式熱間圧延を開始する。
高周波焼入れ用圧延鋼材のミクロ組織を所望のものとするためには、既に述べた化学成分を有する被圧延材を、前記「3.1.」項に記載した条件で加熱した後、2以上の圧延工程を備える全連続式熱間圧延方法により圧延を行うに際して、当該全連続式熱間圧延方法が、下記の条件〔1〕および〔2〕を満たすようにするのがよい。
〔2〕総減面率が30%以上であること。
高周波焼入れ用圧延鋼材のミクロ組織を所望のものとするためには、既に述べた化学成分を有する被圧延材を、前記「3.1.」項に記載した条件で加熱した後、前記「3.2.」項に記載した条件で全連続式熱間圧延を行って所定の形状にした後、5s以内に鋼材表面温度を600℃以下でMs点を超える温度とし、その後、復熱により鋼材表面温度が500〜700℃の範囲となるように冷却するのがよい。
・第一中間圧延機列:2台の圧延機で構成、
・第二中間圧延機列:4台の圧延機で構成、
・仕上げ圧延機列:2台の圧延機で構成。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.38〜0.55%、Si:1.0%以下、Mn:0.20〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.10%以下、Cr:0.10〜2.0%、Al:0.10%以下およびN:0.004〜0.03%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(1)式で表されるfn1の値が1.20以下である化学成分を有し、ミクロ組織がフェライト、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であり、ラメラーパーライトのうちのラメラー間隔が200nm以下のラメラーパーライトのミクロ組織に占める面積割合が20〜50%であり、かつ、球状セメンタイトの個数が4×105個/mm2以上であることを特徴とする高周波焼入れ用圧延鋼材。
fn1=C+(1/10)Si+(1/5)Mn+(5/22)Cr+1.65V−(5/7)S・・・(1)
ただし、上記(1)式中の、C、Si、Mn、Cr、V、Sは、それぞれの元素の質量%での含有量を表す。また、上記球状セメンタイトとは、長径Lと短径Wの比(L/W)が2.0以下であるセメンタイトを指す。 - 化学成分が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:3.0%以下およびMo:0.50%以下のうちの1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れ用圧延鋼材。
- 化学成分が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.10%以下、Nb:0.10%以下およびV:0.30%以下のうちの1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高周波焼入れ用圧延鋼材。
- 請求項1から3までのいずれかに記載の化学成分を有する被圧延材を、670〜810℃の温度域に加熱した後、2以上の圧延工程を備える全連続式熱間圧延方法により圧延し、さらに、最終圧延工程における圧延を終了した後、5s以内に鋼材表面温度を600℃以下でMs点を超える温度とし、その後、復熱により鋼材表面温度が500〜700℃の範囲となるように冷却して、
フェライト、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからなり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であり、ラメラーパーライトのうちのラメラー間隔が200nm以下のラメラーパーライトのミクロ組織に占める面積割合が20〜50%であり、かつ、球状セメンタイトの個数が4×10 5 個/mm 2 以上であるミクロ組織を有する高周波焼入れ用圧延鋼材を製造する方法であって、
該全連続式熱間圧延方法が、下記の〔1〕および〔2〕を満足することを特徴とする高周波焼入れ用圧延鋼材の製造方法。
〔1〕各圧延工程中の被圧延材の表面温度が、650〜810℃の温度範囲内であること
〔2〕総減面率が30%以上であること
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