JP2000212705A - 耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼及びその製造方法 - Google Patents

耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼及びその製造方法

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JP2000212705A
JP2000212705A JP11013501A JP1350199A JP2000212705A JP 2000212705 A JP2000212705 A JP 2000212705A JP 11013501 A JP11013501 A JP 11013501A JP 1350199 A JP1350199 A JP 1350199A JP 2000212705 A JP2000212705 A JP 2000212705A
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embrittlement resistance
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JP11013501A
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Ryuji Uemori
龍治 植森
Hidesato Mabuchi
秀里 間渕
Yukio Tomita
幸男 冨田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi
系調質鋼を提供する。 【解決手段】 重量%にて、C:0.05〜0.4%、
Si:0.02〜0.6%,Mn:0.02〜2.0
%、Mo:0.02〜3.0%、Cr:0.01〜5.
0%、Ni:3.0〜10.0%、P:0.001〜
0.03%、S:0.0005〜0.03%、N:0.
001〜0.015%を基本成分とし、残部がFe及び
不可避的不純物からなる鋼において、粒界Al量が0.
6%以上ないしは粒界での{Al−(Si+Mn+C
r)}量が−3%以上の値、あるいは粒界の(Si+M
n+Cr)量が3.5%以下であることを特徴とする耐
焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。さ
らに必要に応じてCu,Nb,V,Ti,Bの1種また
は2種以上を含有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐焼き戻し脆性及
び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼に関するものであ
り、詳しくは圧延又は鍛造材等によって製造される低合
金鋼で、鋼材加工時に溶接後熱処理(又は応力除去焼
鈍)又は高温使用に供されるNi系調質鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】近年科学技術の進歩に伴い、化学反応容
器等は次第に大型化される傾向にあり、又使用される鋼
材の環境もますます苛酷なものとなり、これら鋼材に対
して要求される材質は必然的に高度な要求が強く、就中
焼き戻し脆性及び水素脆性に対する要求は、鋼材の厚肉
化に伴う溶接後熱処理(応力除去焼鈍)の長時間化、使
用温度の高温化により、極めて厳しくその対策が困難に
なっているのが実状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】焼き戻し脆性は古くよ
り膨大な研究がなされてきており、その主因が鋼中の不
純物元素または合金元素の旧オーステナイト粒界への偏
析であることは良く知られている。また、水素脆性もP
やMn等の粒界脆化元素量に敏感であることから詳細が
不明にも関わらず、粒界偏析に帰着した現象と考えられ
ている。従って、耐焼き戻し脆性ないしは耐水素脆性を
鋼材に付与するためには粒界脆化元素を極力低減するこ
とが従来技術の基本であり、偏析量の低減に工夫がなさ
れてきた。
【0004】しかしながら、未だに抜本的な方法は確立
しておらず、上述したようにその対策は厳しいものにな
っている。したがって、本発明では実用鋼として広く使
用されているNi鋼に着目し、その耐粒界脆化特性を向
上させることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、Ni系調
質鋼の焼き戻し脆性及び水素脆性について詳細に鋭意検
討した結果、本発明をなすに至った。その特徴は次の通
りである。 (1)重量%にて、 C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、 Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、 Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、 P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、 N :0.001〜0.015% を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からな
る鋼において、旧オーステナイト粒界のAl量が0.6
〜5.0%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆
性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。 (2)重量%にて、 C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、 Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、 Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、 P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、 N :0.001〜0.015% を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からな
る鋼において、旧オーステナイト粒界の(Si+Mn+
Cr)量が0.05〜3.5%の値を有することを特徴
とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調
質鋼。
【0006】(3)重量%にて、 C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、 Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、 Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、 P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、 N :0.001〜0.015% を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からな
る鋼において、旧オーステナイト粒界の{Al−(Si
+Mn+Cr)}量が−3.0〜4.0%の値を有する
ことを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れ
たNi系調質鋼。 (4)重量%にて、さらに Cu:0.01%〜0.5%、 Nb:0.001%〜0.2%、 V :0.001%〜0.2%、Ti:0.001%〜0.2%、 B :0.0001%〜0.02% の一種又は二種以上を含有し、残部がFe及び不可避的
不純物からなることを特徴とする前記(1)〜(3)の
いずれか1項に記載の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に
優れたNi系調質鋼。
【0007】(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項
に記載の化学成分を有する鋼塊をAr 3 変態点以上に加
熱後焼き入れし、さらにAc1 以下の温度で焼き戻し処
理をすることを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆
性に優れたNi系調質鋼の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、Ni系調質鋼の耐焼き
戻し脆性及び耐水素脆性を改善するために、鋼中の旧オ
ーステナイト粒界におけるAl量を0.6%以上確保す
ることにより脆化を抑制せしめることにある。あるいは
粒界Al量を確保することにより、主要な脆化元素であ
る(Si+Mn+Cr)を低減させ、脆化を抑制するも
のである。
【0009】一般に、鋼中にはAlが含有されているの
が普通であり、この含有量を多くすることあるいはNと
の結合が強いことからAlNを形成させないことにより
十分な固溶Alを含有せしめることにより、旧オーステ
ナイト粒界にAlが偏析し、P,Sb,As等の不純物
元素の粒界偏析量が減少し、かつNi鋼で有害とされて
いるSi、Mn、Crのような合金元素の粒界偏析も抑
制されることになり、その結果Ni調質鋼の焼き戻し脆
性を著しく改善せしめることになる。
【0010】通常低合金鋼の焼き戻し脆性は、鋼材の加
工又は溶接後における長時間の熱処理(応力除去焼鈍、
溶接後熱処理)時、又は高温における使用時、更には圧
力容器等をシャットダウンする際の徐冷時に、鋼中の粒
界が持つエネルギー又は鋼中の元素間に働く相互作用
(斥力)によって、旧オーステナイト粒界にP,Sb,
As,Si,Mn及びCr等の不純物又は合金元素が偏
析して粒界の結合エネルギーを弱める結果、脆化が進行
するものである。
【0011】また、脆化度を表す指数としては、加速脆
化熱処理とステップクーリング前後における50%延性
−脆性破面遷移温度(FATT)の差ΔFATT、又は
400〜500℃における長時間(1000時間内外)
の恒温加熱処理前後におけるFATTの差ΔFATTが
使われる。
【0012】本発明者は、Ni系調質鋼の焼き戻し脆性
及び水素脆性について仔細に研究した結果、次式で定義
される固溶Alを0.15%以上含有せしめることによ
り、Ni系調質鋼の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性を著
しく改善できることが明らかになった。 固溶Al=Sol.Al−2N ここで、Sol.Al;酸可溶Al、N;鋼中Nであ
る。 固溶Al量が多いほどその効果が大きい理由は、平衡偏
析理論によると固溶Alが大きいほど粒界偏析Al量が
多くなり、これにより耐脆化特性が向上するためであ
る。
【0013】さて、鋼中Nレベルは、鋼の溶製法(平
炉、電気炉、転炉)、脱酸レベル、溶鋼の注入及び造塊
法によって大きく変動するものであり、単にAl含有量
の制御だけでは、該鋼の耐焼き戻し脆性および耐水素脆
性の改善は望めない。即ち、本発明が対象とするような
Ni調質鋼では、種々の熱処理が加えられるのが普通で
あり、溶体化処理後の圧延、又は鍛造に引き続く熱処理
(焼準、焼鈍、焼き入れ等)時の再加熱過程(フェライ
ト高温域)において、鋼中のAlとNとは結合し、Al
Nとして析出するため鋼中の固溶Al量は減少する。
【0014】従って、単なる鋼中の固溶Al量の制御だ
けでは、その効果はバラツキが大きく、鋼中Nとの関連
において、前述のように定義された固溶Al量0.15
%以上固溶せしめることが必要であり、この確保により
粒界偏析Al量が増大し、耐焼き戻し脆性および耐水素
脆性が著しく改善できる。
【0015】図1は、本発明者が得たΔFATTと粒界
偏析Al量の関係を模式的に示したものであり、粒界A
l量が増大するに従ってΔFATTが小さくなっている
ことが判る。また、粒界Al量だけでなく(Si+Cr
+Mn)量あるいは[ Al−( Si+Cr+Mn)}量
を横軸にとった場合にも、図2、図3の様に良い相関が
認められる。この場合はSi、Cr、Mnが脆化元素で
あることから、(Si+Cr+Mn)の値が小さい時に
ΔFATTが小さくなっている。
【0016】本発明では、ΔFATTとして100を基
準にとり、これ以下では十分な脆化特性を有しているも
のとして、Al量が0.6(重量%)、{Al−(Si
+Cr+Mn)}量が−3%を粒界脆化を抑制できる下
限値として評価した。また、(Si+Cr+Mn)量が
3.5%を粒界脆化を抑制できる上限値として評価し
た。なお、いずれの値も固溶Al量の影響を受け、さら
に粒界の偏析サイトが有限であることから、Alの粒界
偏析量の上限値によって(Si+Cr+Mn)量の下限
値と{Al−(Si+Cr+Mn)}量の上限値は自ず
と規定されることになる。
【0017】本発明では、種々の成分を有するNi鋼に
より粒界Al量を実験的に測定した結果、粒界偏析Al
量はバルクAl量に従って増加するがほぼ5%で飽和す
ることから、粒界偏析Alの上限値を5.0%に規定し
た。その結果、(Si+Cr+Mn)量の下限値と{A
l−(Si+Cr+Mn)}量の上限値もそれぞれ0.
05%、4.0%になることが実験的に判明した。それ
ぞれの粒界偏析量が以上の範囲内である場合には、Ni
系調質鋼の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性は飛躍的に向
上する。
【0018】以下に、これ以外の合金元素の限定条件に
付いて説明する。合金元素の含有量は全て重量%であ
る。Cは0.4%を超えると低温靱性及び溶接性を著し
く損ない、0.05%未満では必要な強度が確保できな
いため0.05〜0.4%と限定した。
【0019】Si及びMnは、焼き戻し脆性が(Si+
Mn)%に比例して悪化するため低い程好ましいが、製
鋼上0.02%以上は必要であり、また強度を確保する
ためにも更に0.02%以上添加される。しかし、0.
6%超のSi及び2%超のMnは低温靱性、溶接性をと
もに阻害することから、Siは0.02〜0.6%、M
nは0.02〜2%に限定することが好ましい。
【0020】Moは耐焼き戻し脆化及び耐水素脆化特性
を向上させるために0.02%以上とし、3%を超える
と低温靱性、溶接性を著しく阻害するため3%以下に限
定され、更に経済性の点から1%以下が好ましい。
【0021】Crは高温強度及びハイドロジェンアタッ
クの観点からは溶接性を阻害しない5%以下に限定する
が、Si、Mnが共存すると図2で説明した様に著しく
焼き戻し脆性を助長するためには1%以下にすることが
好ましい。しかし、0.01%未満では十分な高温強度
向上の効果が認められないことから、その下限を0.0
1%と限定した。
【0022】Niは低温靱性を改善する主要元素であ
り、その効果を発揮させるためには3%以上必要であ
り、10%を超えて添加しても強度、低温靱性が向上し
ないため、3〜10%に限定する。
【0023】Pは不純物元素で粒界破壊を生じやすくす
るため、低いほうが好ましい。0.03%超含有すると
粒界破壊による靱性低下が顕著となるので、上限値を
0.03%とした。また、下限値はコスト高になること
を考慮して0.001%にした。
【0024】SはMnSを生成して延性、特に、板厚方
向の伸びを低下させる上に、疲労破壊の起点となって疲
労強度のバラツキを大きくするので、低いほうが好まし
い。0.03%超含有するとこの影響が顕著となるの
で、上限値を0.03%とした。下限値はPの場合と同
様な理由から0.0005%にした。
【0025】Nは0.015%超含有すると、母相中に
固溶して靱性低下を来す。従って、上限値を0.015
%とした。下限値はPやSと同様にコスト高になること
を考慮して0.001%にした。
【0026】なお、C,Si,Mn,Cr,Mo及びN
iの含有量は、所定の強度及び用途の特性から上記成分
範囲内で適宜組み合わされることは言うまでもない。ま
た、上記成分の鋼に、他の合金元素(Cu,Nb,V,
Ti,B等)を一種乃至二種以上複合して含有させて
も、本発明の効果はいささかも損なわれない。
【0027】従って、Cu,Nb,V,Ti,Bの一種
又は二種以上を溶接性の観点からC,Cr,Mo等を減
少した場合や、焼き戻し脆性と水素脆性の観点からS
i,Mnを減少した場合に所定の強度を得るために適宜
選定して添加するものである。この場合、これら元素の
最大添加量は良好な溶接性及び靱性の両面を確保するた
めには、Cu,Nb,V,Ti,Bはそれぞれ0.5
%、0.2%、0.2%、0.2%、0.02%が限界
であり、一方添加量としてCuが0.01%、Nb、V
及びTiが0.001%、Bが0.0001%未満では
所定の強度上昇が望めないため、これらの値以上の添加
が必要である。
【0028】なお、長時間の溶接後熱処理又は高温使用
に供される低合金鋼の水素脆性は、粒界における不純物
の偏析と水素との複合作用によるものであるから、本発
明によるNi系調質鋼は耐焼き戻し脆性特性のみでな
く、優れた耐水素脆性も有することは明白である。
【0029】次に、本発明では焼き戻し脆性および水素
脆性特性の改善を図るために行う熱処理条件を限定した
理由について説明する。まず、焼き入れ前の温度をAc
3 以上に限定した理由は、母材組織をマルテンサイト主
体にし、十分な母材強度を得るための下限温度であり、
これ以下では十分な固溶Al量も確保されず、本発明の
効果が十分に反映されない。また、焼き戻し温度の下限
をAc1 以上に限定した理由は、十分な靭性を得るため
である。
【0030】なお、熱処理法としては、ここに示した焼
き入れ・焼き戻し(Quench−Temper:Q
T)だけでなく、Qを繰り返すQQT処理、圧延後の直
接焼き入れDQ+QT[DQQT処理]、QT間でAc
1 〜Ac3 での加熱後焼き入れ処理(L処理)を行う
[DQLT処理]等も有効である。さらに、大型化学反
応容器用等のNi鋼では従来利用されている焼ならし+
焼き戻し[NT処理]も利用できることは容易に類推で
きる。
【0031】
【実施例】(実施例1)本発明のNi系調質鋼A,B,
C,D,E,Fと、比較鋼G,H,Iを表1(表1−
1、表1−2)に示す。これらの各鋼を50mm厚さの鋼
板に圧延し、1000℃×2hrの焼き入れ及び650℃
×2hrの焼き戻し[QT処理]を行い、更に各鋼の半数
の試験片に480℃×1000hrの恒温時効を施し、衝
撃試験(JIS4号、C方向)及びWOL試験(23
℃、1気圧水素中)を行った結果を併せて示す。
【0032】鋼Cは比較例Gと同じレベルのSol.A
lを有しているが、AlNとしての消費量が少ないCは
固溶Alが多く、且つ粒界Al量が0.6%以上の値に
なっておりGより脆化度が著しく小さい。又、鋼Bは比
較例Hと同じレベルのNを含有し、AlNとしてのSo
l.Alの消費量は殆ど同じであるが、添加されている
Sol.Alが多く、結果的に粒界Alが多くなり、H
より脆化度が少ない。
【0033】また、同じ発明鋼でも、鋼A及びBは共に
同レベルのNを含有しているが、固溶Al量と粒界Al
量が多く、Aの方が更に優れていることが分かる。ま
た、以上の発明鋼では、いずれも{Al−(Si+Cr
+Mn)}の値が−3以上になっていることもわかる。
一方、発明鋼Eは粒界Al量が少ないが、同時に(Si
+Cr+Mn)量が少なく、逆にFは(Si+Cr+M
n)量が多いにも関わらず粒界Al量も顕著に多いた
め、いずれも耐脆化特性が優れている。
【0034】以上のように0.15%以上の固溶Alが
ある場合には、粒界のAl量が増加し、畢竟Si、C
r、Mn等の粒界脆化元素の粒界偏析率が低下し、耐焼
き戻し脆性及び耐水素脆性が改善される。本発明鋼Dは
バルクの(Si+Mn)量が低い場合に対応しており、
粒界Al量が多いために本発明例の中でも最も脆化度が
少ない。
【0035】比較例Iはバルクの(Si+Mn)量が
0.60%と比較的少ないが、本発明例に比べて粒界の
(Si+Cr+Mn)量が多いために脆化度は大きい。
即ち粒界のAl量の増加により更に耐焼き戻し脆性が改
善され、(Si+Mn)の値を低減することにより、そ
の効果を助長していることは明らかである。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】(実施例2)本発明のNi系調質鋼A、
B、C、Dと比較例E、F、G、Hを表2(表2−1、
表2−2)に示す。これらの各鋼を25mm厚さの鋼板に
圧延し、900℃×2hrの焼き入れ及び590℃×1hr
の焼き戻し[QT処理]を行った。更に実施例1と同様
の試験を行った結果を併せて示す。
【0039】鋼A,Eは9%Ni鋼他は5%Ni鋼であ
る。本発明鋼はいずれも比較例よりも固溶Alが多いこ
とにより粒界Al量が増加し、耐焼き戻し脆化、水耐素
脆化が改善されている。更に鋼D,Hは実施例1と同様
に(Si+Mn)の値が小さく、比較例Hも本発明鋼
B,Cよりも脆化度が小さいが、本発明鋼Dは更に優れ
た耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性を有しており、その効
果は実施例1と変わらないばかりか、低C化による靱性
レベル全体の改善が可能となった。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】(実施例3)本発明のNi系調質鋼A,
B,C,Dを表3(表3−1、表3−2)に示す。A〜
Cは5%Ni鋼、Dは9%Ni鋼であり、全て25mm厚
さの鋼板に圧延したものである。熱処理としてはAの場
合に900℃×2hrの焼き入れを行った後、さらに88
0℃×2hrの焼き入れ及び590℃×1hrの焼き戻し
(QQT処理)を行った。またB,C及びDはそれぞれ
圧延後900℃から直ちに焼き入れ、590℃×1hrの
焼き戻しを行ったもの(DQ処理)、900℃×2hrの
焼き入れ後、780℃で1時間加熱後焼き入れ、これに
590℃×1hrの焼き戻しを行ったもの(QLT処
理)、圧延後空冷した後に、590℃×1hrの焼き戻し
を行ったもの(NT処理)である。
【0043】本発明鋼はいずれも単純なQT処理ではな
いが、いずれも表1や表2の比較例よりも固溶Alが多
いことにより粒界Al量が増加し、耐焼き戻し脆化、水
耐素脆化が改善されている。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明鋼は旧オー
ステナイト粒界のAl量を高めることにより、耐焼き戻
し脆性及び耐水素脆化特性が著しく向上し、産業上の発
展に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】縦軸に脆化度、横軸に旧オーステナイト粒界に
おけるAl量をとり、脆化度が粒界Al量の増大に従っ
て低下していることを模式的に示す図。
【図2】縦軸に脆化度、横軸に旧オーステナイト粒界に
おける(Si+Cr+Mn)量をとり、脆化度が前記式
内の量の増加に従って増加していることを模式的に示す
図。
【図3】縦軸に脆化度、横軸に旧オーステナイト粒界に
おける{Al−(Si+Cr+Mn)}量をとり、脆化
度が前記式内の量の増加に従って低下していることを模
式的に示す図。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年1月26日(1999.1.2
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】
【表1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正内容】
【0037】
【表2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正内容】
【0040】
【表3】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正内容】
【0041】
【表4】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正内容】
【0044】
【表5】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正内容】
【0045】
【表6】

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、 C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、 Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、 Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、 P :0.001〜0.03%、 S :0.0005〜0.03%、 N :0.001〜0.015% を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からな
    る鋼において、旧オーステナイト粒界のAl量が0.6
    〜5.0%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆
    性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。
  2. 【請求項2】 重量%にて、 C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、 Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、 Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、 P :0.001〜0.03%、 S :0.0005〜0.03%、 N :0.001〜0.015% を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からな
    る鋼において、旧オーステナイト粒界の(Si+Mn+
    Cr)量が0.05〜3.5%の値を有することを特徴
    とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調
    質鋼。
  3. 【請求項3】 重量%にて、 C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、 Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、 Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、 P :0.001〜0.03%、 S :0.0005〜0.03%、 N :0.001〜0.015% を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からな
    る鋼において、旧オーステナイト粒界の{Al−(Si
    +Mn+Cr)}量が−3.0〜4.0%の値を有する
    ことを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れ
    たNi系調質鋼。
  4. 【請求項4】 重量%にて、さらに Cu:0.01〜0.5%、 Nb:0.001〜0.2%、 V :0.001〜0.2%、 Ti:0.001〜0.2%、 B :0.0001〜0.02% の一種又は二種以上を含有し、残部がFe及び不可避的
    不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれ
    か1項に記載の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れた
    Ni系調質鋼。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化
    学成分を有する鋼塊をAr3 変態点以上に加熱後焼き入
    れし、さらにAc1 以下の温度で焼き戻し処理をするこ
    とを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れた
    Ni系調質鋼の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2671963A1 (en) 2012-06-06 2013-12-11 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) High strength large steel forging
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