(第1実施形態)
以下、図面を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に適用されている。この電気自動車では、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給される電力を蓄電手段であるバッテリVに充電し、車両走行時にバッテリVに蓄えられた電力を走行用電動モータへ供給して走行する。
さらに、本実施形態の電気自動車では、バッテリVに蓄えられた電力(電気エネルギ)を、後述する空調制御装置50を介して車両用空調装置1の各種電動式の構成機器へ供給することによって、車両用空調装置1を作動させている。換言すると、本実施形態の車両用空調装置1は、バッテリVに蓄えられた電力を供給されることによって作動する。
次に、図1、図2を用いて車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、車室内へ送風される送風空気の温度を調整する温度調整手段としての蒸気圧縮式の冷凍サイクル10、冷凍サイクル10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すための室内空調ユニット30、および車両用空調装置1の各種電動式の構成機器の作動を制御する空調制御装置50等を備えている。
まず、冷凍サイクル10は、送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房モードにおける冷媒回路と送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房モードにおける冷媒回路とを切替可能に構成されている。なお、図1では、冷房モードにおける冷媒の流れを破線矢印で示し、暖房モードにおける冷媒の流れを実線矢印で示している。
冷凍サイクル10は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機11、送風空気を加熱あるいは冷却する室内熱交換器としての室内凝縮器13および室内蒸発器18、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての暖房用固定絞り14および冷房用固定絞り17、並びに、冷媒回路切替手段としての四方弁14および開閉弁20a等を備えている。
また、この冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、車室外となる車両ボンネット内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この周波数(回転数)制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
圧縮機11の吐出口側には、四方弁12が接続されている。この四方弁12は、冷房モードにおける冷媒回路と暖房モードにおける冷媒回路とを切り替える冷媒回路切替手段であって、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される電気式の四方弁である。
具体的には、四方弁12は、冷房モード時には図1の破線矢印で示すように圧縮機11の吐出口側と室外熱交換器16の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、暖房モード時には図1の実線矢印で示すように圧縮機11の吐出口側と室内凝縮器13の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替える。
なお、四方弁12と室外熱交換器16の冷媒入口側とを接続する冷媒通路には、四方弁12側から室外熱交換器16の冷媒入口側へ冷媒が流れることのみを許容する第1逆止弁15aが配置されており、室外熱交換器16の冷媒入口側から四方弁12側へ冷媒が逆流することが防止されている。
また、図1の実線矢印で示す冷媒回路のように、暖房モードにおける圧縮機11の吐出口側には、四方弁12を介して室内凝縮器13の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器13は、室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
室内凝縮器13の冷媒出口側には、暖房モード時に冷媒を減圧させる暖房用固定絞り14および第2逆止弁15bを介して室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。この暖房用固定絞り14としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。もちろん、暖房モード時に冷媒を減圧させる機能を発揮できれば、固定絞りに限定されることなく全開機能付き電気式膨張弁等の可変絞り機構を採用してもよい。
また、第2逆止弁15bは、暖房用固定絞り14側から室外熱交換器16側へ冷媒が流れることのみを許容している。室外熱交換器16は、車両ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動式送風機である。
室外熱交換器16の冷媒出口側には、冷房モード時に冷媒を減圧させる冷房用固定絞り17を介して室内蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。冷房用固定絞り17の基本的構成は暖房用固定絞り14と同様である。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器13の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器18の冷媒出口側には、アキュムレータ19の入口側が接続されている。アキュムレータ19は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。さらに、アキュムレータ19の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
また、本実施形態の冷凍サイクル10には、室外熱交換器16から流出した冷媒を、冷房用固定絞り17および室内蒸発器18とを迂回させてアキュムレータ19の冷媒入口側へ導くバイパス通路20が設けられている。換言すると、このバイパス通路20は、冷房用固定絞り17の上流側と室内蒸発器18の下流側とを接続するように設けられている。
さらに、バイパス通路20には、バイパス通路20を開閉する開閉弁20aが配置されている。この開閉弁20aは、四方弁12とともに冷媒回路切替手段を構成するもので、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される電磁弁である。具体的には、開閉弁20aは、冷房モード時には図1の破線矢印で示すようにバイパス通路20を閉じ、暖房モード時には図1の実線矢印で示すようにバイパス通路20を開く。
なお、開閉弁20aが開いた状態で冷媒がバイパス通路20を通過する際に生じる圧力損失は、開閉弁20aが閉じた状態で冷媒が冷房用固定絞り17および室内蒸発器18を通過する際に生ずる圧力損失に対して極めて小さい。従って、開閉弁20aが開いた状態では、室外熱交換器16から流出した冷媒のほぼ全流量がバイパス通路20を介してアキュムレータ19側へ流れる。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置され、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器18、室内凝縮器13、エアミックスドア34等を収容して構成されたものである。
ケーシング31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されており、その内部に車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成している。このケーシング31の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器18および室内凝縮器13が、送風空気の流れに対して、室内蒸発器18→室内凝縮器13の順に配置されている。換言すると、室内蒸発器18は、室内凝縮器13に対して、空気流れ上流側に配置されている。
また、ケーシング31内には、室内蒸発器18通過後の送風空気のうち、室内凝縮器13を通過させる風量と室内凝縮器13を通過させない風量との風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
具体的には、本実施形態では、冷房モード時には図1の破線で示すように、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器13を迂回させて下流側へ流す冷房位置にエアミックスドア34を変位させ、暖房モード時には図1の実線で示すように、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器13へ流入させる暖房位置にエアミックスドア34を変位させる。
さらに、ケーシング31の空気流れ最下流部には、室内凝縮器13を通過した送風空気あるいは室内凝縮器13を迂回した送風空気を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が設けられている。この開口穴としては、具体的に、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴37a、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴37b、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴37cが設けられている。
これらのデフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
デフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ上流側には、それぞれ、デフロスタ開口穴37aの開口面積を調整するデフロスタドア38a、フェイス開口穴37bの開口面積を調整するフェイスドア38b、フット開口穴37cの開口面積を調整するフットドア38cが配置されている。
これらのデフロスタドア38a、フェイスドア38bおよびフットドア38cは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吹出口モード切替手段によって切り替えられる吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が後述する操作パネル60に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。図2に示す空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された圧縮機11用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する四方弁12および開閉弁20a、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62〜64の作動を制御する。
つまり、本実施形態の圧縮機11(インバータ61)、四方弁12、開閉弁20a、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62〜64は、空調制御装置50を介してバッテリVから駆動用エネルギ(電気エネルギ)を供給されることによって車室内の空調を行うために作動する空調用構成機器を構成している。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出手段としての内気センサ51、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出手段としての外気センサ52、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出手段としての日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ56、圧縮機11の消費電力VAを検出する電力計57等の空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
なお、本実施形態の吐出冷媒圧力Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から冷房用固定絞り17入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となり、暖房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から暖房用固定絞り17入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。
また、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的には、室内蒸発器18の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器18のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器18を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。この操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するオートスイッチ、運転モードを切り替える運転モード切替スイッチ、吹出口モードを切り替える吹出モード切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段としての車室内温度設定スイッチ60a等がある。
なお、空調制御装置50は、その出力側に接続された各種空調用構成機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの空調用構成機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの空調用構成機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、本実施形態では、空調制御装置50のうち、圧縮機11の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が圧縮機制御手段50aを構成し、冷媒回路切替手段を構成する四方弁12および開閉弁20aの作動を制御する構成が冷媒回路制御手段50bを構成している。
次に、図3、図4を用いて、上記構成における本実施形態の作動を説明する。この制御処理は、操作パネル60の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されるとスタートする。なお、図3、図4中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述の空調制御用のセンサ群51〜57等の検出信号を読み込んでステップS4へ進む。
ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、内気温Trを速やかに乗員の所望の目標温度Tsetに近づけるために決定される値であって、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60aによって設定された車室内の目標温度であり、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)であり、Tamは外気センサ52によって検出された車室外温度(外気温)であり、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。また、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
つまり、本実施形態の制御ステップS4は、車室内へ吹き出される送風空気の目標吹出温度TAOを決定する目標吹出温度決定手段を構成している。換言すると、本実施形態の目標吹出温度決定手段では、内気温Tr、外気温Tam、日射量Tsおよび目標温度Tsetを用いて目標吹出温度TAOを決定している。
なお、上記数式F1にて算出された目標吹出温度TAOは、冷房モード時および暖房モード時の双方において用いることのできる制御目標値であるが、暖房モード時には消費電力の抑制のために上記数式F1にて算出された目標吹出温度TAOよりも若干低い値とする補正を行ってもよい。
続くステップS5〜S11では、空調制御装置50の出力側に接続された各種空調用構成機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40のROM内に記憶された制御マップを参照して、送風機32により送風される空気の目標送風量(すなわち、送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
具体的には、この制御マップでは、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の送風量が最大風量に近づくように制御する。さらに、目標吹出温度TAOが極低温域あるいは極高温域から中間温度域に向かうに伴って、ブロワモータ電圧を減少させて送風量を減少させるように制御する。
ステップS6では、吸込口モード、すなわち内外気切替装置33の切替状態を決定する。この吸込口モードも目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、目標吹出温度TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等には内気を導入する内気モードが選択される。
ステップS7では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
従って、目標吹出温度TAOが低温域となりやすい夏季は主にフェイスモード、目標吹出温度TAOが中温域となりやすい春秋季は主にバイレベルモード、そして、目標吹出温度TAOが高温域となりやすい冬季は主にフットモードが選択される。
さらに、車両窓ガラス近傍の相対湿度を検出する湿度検出手段を設け、湿度検出手段の検出値から算出される窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高いと判定された場合に、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
ステップS8では、エアミックスドア34の制御状態が決定される。前述の如く、本実施形態では、冷房モード時に室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器13を迂回させるようにエアミックスドア34を変位させ、暖房モード時に室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器13へ流入させるようにエアミックスドア34を変位させる。
ステップS9では、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して送風ファン16aの稼働率、すなわち送風ファン16aの回転数を決定する。具体的には、この制御マップでは、吐出冷媒温度Tdの上昇に伴って送風ファン16aの稼働率(回転数)が増加するように決定する。
ステップS10では、運転モード切替スイッチによって設定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である四方弁12および開閉弁20aの作動状態を決定する。具体的には、冷房モード時には、圧縮機11の吐出口側と室外熱交換器16の冷媒入口側との間を接続するように四方弁12の作動を制御するとともに、開閉弁20aを閉じる。一方、暖房モード時には、圧縮機11の吐出口側と室内凝縮器13の冷媒入口側との間を接続するように四方弁12の作動を制御するとともに、開閉弁20aを開く。
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。このステップS11のより詳細な制御内容については、図4を用いて説明する。まず、図4に示すステップS111では、現在の運転モードが冷房モードであるか暖房モードであるかが判定される。
ステップS111にて現在の運転モードが暖房モードであると判定された場合には、ステップS112へ進み、暖房モード時における圧縮機11の回転数変化量ΔIVRcalが決定される。一方、ステップS111にて現在の運転モードが冷房モードであると判定された場合には、ステップS113へ進み、冷房モード時における圧縮機11の回転数変化量ΔIVRcalが決定される。
より詳細には、ステップS111にて暖房モードであると判定された場合のステップS112では、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出圧力センサ55によって検出される吐出冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定する。
そして、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出し、今回算出された偏差Pnから前回算出された偏差Pn−1を減算した偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回(現在)の圧縮機回転数IVOoutに対する回転数変化量ΔIVRcalを求めて、ステップS114へ進む。
一方、ステップS111にて冷房モードであると判定された場合のステップS113では、ステップS4で決定した目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、蒸発器温度センサ56によって検出される冷媒蒸発温度Teの目標蒸発温度TEOを決定する。
そして、この目標蒸発温度TEOと冷媒蒸発温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回(現在)の圧縮機回転数IVOoutに対する回転数変化量ΔIVRcalを求めて、ステップS114へ進む。
ステップS114では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、圧縮機11の消費電力の上限値VAMAXを決定する。より詳細には、ステップS114では、図5に示すように、目標吹出温度TAOが極低温域(具体的には、TAO≦−18)および極高温域(具体的には、90≦TAO)で、上限値VAMAXを最大値(約2000W)とする。
また、目標吹出温度TAOが極低温域から中間温度域(具体的には、10≦TAO≦55)に向かって上昇した際には、目標吹出温度TAOの上昇に応じて上限値VAMAXを減少させる。目標吹出温度TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下した際には、目標吹出温度TAOの低下に応じて上限値VAMAXを減少させる。目標吹出温度TAOが中間温度域内に入ると、上限値VAMAXを最小値(約700W)にする。
次のステップS115では、上限値VAMAXと電力計57によって検出された圧縮機11の消費電力VAを用いて圧縮機11の最大回転数変化量ΔIVRLIMITを決定する。より詳細には、ステップS115では、図6に示すように、上限値VAMAXから消費電力VAを減算した減算値(VAMAX−VA)の低下に伴って、最大回転数変化量ΔIVRLIMITが小さくなるように決定している。
なお、図6の説明図から明らかなように、減算値(VAMAX−VA)が負の値になっているときは、圧縮機11の消費電力VAが上限値VAMAXを超えている時であるから、圧縮機11の消費電力VAを減らすため、最大回転数変化量ΔIVRLIMITも負の値になる。
つまり、減算値(VAMAX−VA)が負(マイナス)の値になっているときは、最大回転数変化量ΔIVRLIMITは圧縮機11の回転数を低下させるように決定される。従って、本実施形態の制御ステップS114は、圧縮機11へ供給される駆動用エネルギの上限値を決定する上限値決定手段を構成している。
次のステップS116では、前回(現在)の圧縮機回転数IVOoutに対して、制御ステップS112あるいはS113にて決定された回転数変化量ΔIVRcalおよび制御ステップS115にて決定された最大回転数変化量ΔIVRLIMITのうち、小さい方の値を加算した値を、次回の圧縮機回転数IVOoutと決定して、図3のステップS12へ進む
ステップS12では、上述のステップS5〜S11で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種空調用構成機器11(61)、12、20a、16a、32、62〜64に対して制御信号および制御電圧が出力される。続くステップS13では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2へ戻る。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御処理が実行されるので、運転モードに応じて以下のように作動する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置50が、圧縮機11の吐出口側と室外熱交換器16の冷媒入口側との間を接続するように四方弁12の作動を制御し、開閉弁20aを閉じる。さらに、空調制御装置50が、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13を迂回するようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、図1の破線矢印に示すように、圧縮機11(→四方弁12→第1逆止弁15a)→室外熱交換器16→冷房用固定絞り17→室内蒸発器18→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。つまり、室外熱交換器16を冷媒に放熱させる放熱器として機能させ、室内蒸発器18を冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
なお、この冷房モードの冷媒回路では、第2逆止弁15bの作用によって、圧縮機11から室外熱交換器16側へ流入した冷媒が室内凝縮器13側へ逆流することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒は、室外熱交換器16にて送風ファン16aから送風された外気と熱交換して冷却され、冷房用固定絞り17にて減圧膨張される。冷房用固定絞り17にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器18へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。この冷媒の吸熱作用により、室内蒸発器18を通過する送風空気が冷却され、車室内の冷房が実現される。
また、室内蒸発器18から流出した冷媒は、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(b)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置50が、圧縮機11の吐出口側と室内凝縮器13の冷媒入口側との間を接続するように四方弁12の作動を制御し、開閉弁20aを開く。さらに、空調制御装置50が、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13へ流入するようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、図1の実線矢印に示すように、圧縮機11(→四方弁12)→室内凝縮器13→暖房用固定絞り14(→第2逆止弁15b)→室外熱交換器16→バイパス通路20(開閉弁20a)→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。つまり、室内凝縮器13を放熱器として機能させ、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
なお、この暖房モードの冷媒回路では、第1逆止弁15aの作用によって、暖房用固定絞り14から室外熱交換器16側へ流入した冷媒がアキュムレータ19側へ逆流することはない。また、開閉弁20aが開いているので、室外熱交換器16から流出した冷媒のほぼ全流量がバイパス通路20を介してアキュムレータ19側へ流れる。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器13にて送風機32から送風された送風空気に放熱する。これにより、室内凝縮器13を通過する送風空気が加熱され、車室内の暖房が実現される。また、室内凝縮器13から流出した冷媒は、暖房用固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、開閉弁20aが開いているので、バイパス通路20(開閉弁20a)を介して、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動して、車室内の冷房および暖房を実現することができる。さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員の空調フィーリングの悪化を招くことなく、冷凍サイクル10の成績係数(COP)の悪化を抑制することができる。
このことをより詳細に説明すると、本実施形態では、上限値決定手段を構成する制御ステップS114にて、圧縮機11に供給される駆動用エネルギ(電気エネルギ)の上限値VAMAXを決定しているので、圧縮機11の消費電力VAが不必要に上昇してしまうことを抑制できる。
この際、制御ステップS114では、内気温Trを速やかに乗員の所望の目標温度Tsetに近づけるために決定された目標吹出温度TAOに基づいて、上限値VAMAXを決定しているので、空調負荷に応じて適切に上限値VAMAXを決定することができる。
具体的には、目標吹出温度TAOは、目標吹出温度決定手段を構成する制御ステップS4にて、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、目標温度Tsetを用いて決定されているので、上限値VAMAXを決定する際に、内気温Trや外気温Tamのみならず、日射量Tsの影響も反映させることができる。
さらに、制御ステップS114では、図5を用いて説明したように、目標吹出温度TAOが予め定めた第1所定温度(本実施形態では55℃)よりも上昇するに伴って上限値VAMAXを上昇させるように決定するとともに、目標吹出温度TAOが予め定めた所定値(本実施形態では10℃)よりも低下するに伴って上限値VAMAXを上昇させるように決定している。
従って、車室内の暖房時にも冷房時にも空調負荷の増加に伴って、上限値VAMAXを上昇させることができ、空調フィーリングの悪化を招くことなく冷凍サイクルのCOPの悪化を抑制できる。さらに、車両用空調装置1全体として、不必要なエネルギ消費を抑制できる。このことは、本実施形態の車両用空調装置1が適用される電気自動車では、航続距離(航行可能距離)を短縮化させないという点で極めて有効である。
さらに、本実施形態では、制御ステップS115にて図6を用いて説明したように、減算値(VAMAX−VA)が、予め定めた第1所定減算値(本実施形態では10)よりも増加するに伴って圧縮機11の回転数を増加させる側の最大回転数変化量ΔIVRLIMITを大きくし、減算値(VAMAX−VA)が、予め定めた第2所定減算値(本実施形態では0)よりも減少するに伴って圧縮機11の回転数を減少させる側の最大回転数変化量ΔIVRLIMITを大きくしている。
従って、減算値(VAMAX−VA)が0に近いときの圧縮機11の回転数の変化量を縮小させることができ、圧縮機11の回転数のハンチングを防止することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図7の全体構成図に示すように冷凍サイクル10の構成を変更している。本実施形態の冷凍サイクル10では、冷房モードの冷媒回路および暖房モードの冷媒回路の他に、室外熱交換器16に着霜が生じた際に、これを除霜する除霜モードの冷媒回路に切り替えることができる。なお、図7では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
具体的には、本実施形態の冷凍サイクル10では、第1実施形態に対して、四方弁12、開閉弁20a、第1、第2逆止弁15a、15bが廃止されている。従って、圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器13の冷媒入口側が接続され、室内凝縮器13の冷媒出口側には、暖房用固定絞り14を介して室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。
さらに、本実施形態では、室内凝縮器13から流出した冷媒を、暖房用固定絞り14を迂回させて室外熱交換器16の冷媒入口側へ導く上流側バイパス通路21が設けられている。この上流側バイパス通路21には、上流側バイパス通路21を開閉する上流側開閉弁21aが配置されている。上流側開閉弁21aの基本的構成は、第1実施形態の開閉弁20aと同様である。
従って、上流側開閉弁21が閉じている場合は、室内凝縮器13から流出した冷媒の全流量が暖房用固定絞り14へ流入し、上流側開閉弁21が開いている場合は、室内凝縮器13から流出した冷媒のほぼ全流量が上流側バイパス通路21を介して室外熱交換器16側へ流れる。つまり、上流側開閉弁21aは、本実施形態の冷媒回路切替手段を構成している。
なお、以下の説明では、上流側バイパス通路21と第1実施形態にて説明したバイパス通路20との相違を明確化するため、室外熱交換器16の冷媒流れ下流側に位置付けられるバイパス通路20を下流側バイパス通路20と表記する。
本実施形態では、下流側バイパス通路20の冷媒流れ最上流部に、三方弁20bを配置している。三方弁20bは、上流側開閉弁21aとともに本実施形態の冷媒回路切替手段を構成するもので、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される電気式の三方弁である。
具体的には、三方弁20bは、第1実施形態の開閉弁20aと同様に、冷房モード時には図7の破線矢印で示すように室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17の冷媒入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、暖房モード時には図7の実線で示すように室外熱交換器16の冷媒出口側とアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続する冷媒回路に切り替える機能を果たす。
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。本実施形態においても第1実施形態の図3、図4で説明した制御処理と同様に、操作パネル60の操作信号およびセンサ群51〜57等の検出信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調用構成機器の作動状態の決定→決定された作動状態が得られるように制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。
さらに、本実施形態では、暖房モード時に室外熱交換器16に着霜が生じていると判定されると除霜モードでの運転に切り替えられる。このような着霜の判定は、室外熱交換器16の温度あるいは室外熱交換器16を流通する冷媒の温度を検出する室外熱交換器温度検出手段を設け、これによって検出された温度が予め定めた基準温度(例えば、0℃)以下となった際に、室外熱交換器16に着霜が生じていると判定するようにすればよい。
以下に、本実施形態の各運転モードにおける作動を説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置50が、上流側開閉弁21aを開き、室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17の冷媒入口側とを接続するように三方弁20bの作動を制御する。さらに、空調制御装置50が、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13を迂回するようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、図1の破線矢印に示すように、圧縮機11(→室内凝縮器13→上流側バイパス通路21)→室外熱交換器16(→三方弁20b)→冷房用固定絞り17→室内蒸発器18→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。なお、冷房モードでは、エアミックスドア34の作用によって、送風空気が室内凝縮器13へ流入しないので、室内凝縮器13では冷媒は殆ど放熱しない。
従って、第1実施形態と同様に、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒は、室外熱交換器16にて放熱し、冷房用固定絞り17にて減圧膨張され、室内蒸発器18にて送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。この冷媒の吸熱作用により、室内蒸発器18を通過する送風空気が冷却され、車室内の冷房が実現される。その他の作動は第1実施形態と同様である。
(b)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置50が、上流側開閉弁21aを閉じ、室外熱交換器16の冷媒出口側とアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続するように三方弁20bの作動を制御する。さらに、空調制御装置50が、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13へ流入するようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、図1の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器13→暖房用固定絞り14→室外熱交換器16(→三方弁20b)→下流側バイパス通路20→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。なお、本実施形態の暖房モードでは、三方弁20bを採用しているので、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量がアキュムレータ19側へ流れる。
従って、第1実施形態と同様に、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器13にて送風機32から送風された送風空気に放熱する。これにより、室内凝縮器13を通過する送風空気が加熱され、車室内の暖房が実現される。その他の作動は第1実施形態と同様である。
(c)除霜モード
除霜モードでは、空調制御装置50が、上流側開閉弁21aを開き、室外熱交換器16の冷媒出口側とアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続するように三方弁20bの作動を制御する。さらに、空調制御装置50が、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13を迂回するようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、図1の二重線矢印に示すように、圧縮機11(→室内凝縮器13→上流側バイパス通路21)→室外熱交換器16(→三方弁20b)→下流側バイパス通路20→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するホットガスサイクルが構成される。なお、冷房モードでは、エアミックスドア34の作用によって、送風空気が室内凝縮器13へ流入しないので、室内凝縮器13では冷媒は殆ど放熱しない。
従って、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒は、室外熱交換器16へ流入して放熱する。これにより、室外熱交換器16が加熱されて室外熱交換器16の除霜が実現される。室外熱交換器16から流出した冷媒は、下流側バイパス通路20を介して、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入される。
本実施形態のような構成の冷凍サイクル10を備える車両用空調装置1であっても、第1実施形態と同様に、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、目標温度Tsetを用いて算出された目標吹出温度TAOを用いて、圧縮機11に供給される駆動用エネルギ(電気エネルギ)の上限値VAMAXを決定することで、乗員の空調フィーリングの悪化を招くことなく、冷凍サイクル10の成績係数(COP)の悪化を抑制することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、上限値決定手段を構成する制御ステップS114にて、目標吹出温度決定手段を構成する制御ステップS4にて決定(算出)された目標吹出温度TAOそのものを用いて上限値VAMAXを決定した例を説明したが、上限値VAMAXの決定はこれに限定されない。
例えば、上限値決定手段にて、目標吹出温度TAOと車室内温度Trとの差の絶対値の増加に伴って上限値VAMAXを上昇させるように決定してもよい。目標吹出温度TAOと車室内温度Trとの差の絶対値が増加することは、冷房モードであっても暖房モードであっても空調負荷が増加していることを意味するので、このように上限値VAMAXを決定しても、空調負荷に応じて上限値VAMAXを適切に決定できる。
また、目標吹出温度TAOと車室内温度Trとの差の絶対値が比較的大きい時は、空調の開始時のような過渡状態であることが多く、このような過渡状態に上限値VAMAXを上昇させることで、より一層空調フィーリングの悪化を抑制できる。
(2)上述の実施形態では、冷凍サイクル10として、冷房モードの冷媒回路と暖房モードの冷媒回路とを切替可能に構成されたものを採用した例を説明したが、もちろん、冷凍サイクル10は冷媒回路を切替可能に構成されたものに限定されない。
また、冷房モードの冷媒回路と暖房モードの冷媒回路とを切替可能に構成された冷凍サイクルにおいて、いずれか一方のモードにおいて、目標吹出温度TAOを用いて空調用構成機器(圧縮機11)に供給される駆動用エネルギの上限値を決定する制御を行ってもよい。
この場合は、暖房モードにて当該制御を行うことが望ましい。その理由は、暖房モードでは、一般的に、冷房モードよりも冷凍サイクルにおける高圧側冷媒圧力と低圧側冷媒圧力との圧力差(高低圧差)が広がるため、圧縮機の成績係数が悪くなりやすいからである。
(3)上述の実施形態の冷凍サイクル10では、冷媒回路切替手段を、四方弁12および開閉弁20a、あるいは、三方弁20bおよび開閉弁21aにて構成した例を説明したが、冷媒回路切替手段はこれに限定されない例えば、第2実施形態では、三方弁20bを廃止して、第1実施形態と同様の開閉弁20aを採用してもよいし、この他にも複数の開閉弁を組み合わせることによって構成してもよい。
(4)上述の実施形態では、上限値決定手段を構成する制御ステップS114にて、圧縮機11の駆動用エネルギの上限値を決定した例を説明したが、制御ステップS114では、圧縮機11の駆動用エネルギの上限値に加えて、他の空調用構成機器の駆動用エネルギの上限値を決定するようにしてもよい。
この際、空調用構成機器のなかで比較的消費電力の大きい送風機32および冷却ファン16aの駆動用エネルギ(消費電力)の上限値を決定するようにすれば、車両用空調装置1全体としての不必要なエネルギ消費を効果的に抑制できる。
さらに、冷凍サイクル10の他にも車室内へ送風される送風空気の温度を調整する別の温度調整手段を備える場合は、上限値決定手段にて、この別の温度調整手段の駆動用エネルギの上限値を決定するようにしてもよい。なお、別の温度調整手段としては、電力を供給されることによって発熱して送風空気を加熱する電気ヒータ(PTCヒータ)や、熱媒体(冷却水等)を電気ヒータ(PTCヒータ)にて加熱して加熱された熱媒体と送風空気を熱交換させて送風空気を加熱するヒータコア(加熱用熱交換器)等を採用できる。
(5)上述の実施形態では、圧縮機11として電動圧縮機を採用しているので、上限値決定手段にて圧縮機11に供給される電気エネルギの上限値を決定した例を説明したが、駆動用エネルギはこれに限定されない。
例えば、ベルトおよび電磁クラッチ等を介してエンジンから駆動力を得る圧縮機11を採用する場合には、電磁クラッチの稼働率(通電率)の上限値を決定することで、実質的に、エンジンから圧縮機11へ伝達される回転エネルギの上限値を決定するようになっていてもよい。
従って、本発明の車両用空調装置1の適用は電気自動車に限定されることなく、例えば、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータの双方から走行用の駆動力を得て走行するハイブリッド車両や、内燃機関から走行用の駆動力を得て走行する通常の車両に適用することができる。
(6)上述の実施形態では、各運転モード時におけるエアミックスドア34の位置を固定した例を説明したが、例えば、第2実施形態の冷房モード時にエアミックスドア34の開度を調整することによって、室内蒸発器18にて冷却された送風空気の一部を室内凝縮器13にて再加熱して、車室内へ吹き出される送風空気の温度を調整してもよい。