以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、図1〜図9により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に適用されている。この電気自動車では、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給される電力を蓄電手段であるバッテリBに充電し、車両走行時にバッテリBに蓄えられた電力を走行用電動モータへ供給することによって走行する。
さらに、本実施形態の電気自動車では、バッテリBに蓄えられた電力(電気エネルギ)を、後述する空調制御装置50を介して車両用空調装置1の各種電動式構成機器へ供給することによって、車両用空調装置1を作動させている。換言すると、本実施形態の車両用空調装置1は、バッテリBに蓄えられた電力を供給されることによって作動する。
次に、図1、図2を用いて車両用空調装置1の詳細構成を説明する。車両用空調装置1は、車室内へ送風される送風空気の温度を調整する温度調整手段としてのヒートポンプサイクル(蒸気圧縮式の冷凍サイクル)10、ヒートポンプサイクル10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すための室内空調ユニット30、および車両用空調装置1の各種電動式の構成機器の作動を制御する空調制御装置50等を備えている。
まず、ヒートポンプサイクル10は、送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房モードの冷媒回路、送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房モードの冷媒回路、さらに、暖房モード時にヒートポンプサイクル10にて冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する室外熱交換器16に着霜が生じた際に、これを除霜する除霜モードの冷媒回路を切替可能に構成されている。
なお、図1では、暖房モードにおける冷媒の流れを白抜き矢印で示し、冷房モードにおける冷媒の流れを黒塗り矢印で示し、さらに、除霜モードにおける冷媒の流れを網掛けハッチング付き矢印で示している。
ヒートポンプサイクル10は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機11、送風空気を加熱あるいは冷却する室内熱交換器としての室内凝縮器13および室内蒸発器18、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての暖房用固定絞り14および冷房用固定絞り17、並びに、冷媒回路切替手段としての開閉弁15aおよび三方弁20等を備えている。
また、このヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、車室外となる車両ボンネット内に配置され、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この周波数(回転数)制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
圧縮機11の吐出口側には、室内凝縮器13の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器13は、室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
室内凝縮器13の冷媒出口側には、暖房モード時に冷媒を減圧させる暖房用固定絞り14を介して室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。この暖房用固定絞り14としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。もちろん、暖房モード時に冷媒を減圧させる機能を発揮できれば、固定絞りに限定されることなく全開機能付き電気式膨張弁等の可変絞り機構を採用してもよい。
さらに、本実施形態では、室内凝縮器13から流出した冷媒を、暖房用固定絞り14を迂回させて室外熱交換器16の冷媒入口側へ導くバイパス通路15が設けられている。このバイパス通路15には、バイパス通路15を開閉する開閉弁15aが配置されている。
開閉弁15aは、冷房モードにおける冷媒回路、暖房モードにおける冷媒回路、および除霜モードにおける冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段を構成するもので、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される電磁弁である。具体的には、本実施形態の開閉弁15aは、冷房モード時および除霜モード時に開き、暖房モード時に閉じる。
なお、開閉弁15aが開いた状態で冷媒がバイパス通路15を通過する際に生じる圧力損失は、開閉弁15aが閉じた状態で冷媒が暖房用固定絞り14を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、開閉弁15aが開いた状態では、室外熱交換器16から流出した冷媒のほぼ全流量がバイパス通路15を介して室外熱交換器16の冷媒入口側へ流れる。
室外熱交換器16は、車両ボンネット内に配置されて、内部を流通する室内凝縮器13下流側の冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。この送風ファン16aは、例えば軸流ファンを電動モータ16b(図8参照)にて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。
室外熱交換器16の冷媒出口側には、三方弁20が接続されている。この三方弁20は、開閉弁15aとともに上述した各運転モードにおける冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段を構成しており、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される電気式の三方弁である。
具体的には、本実施形態の三方弁20は、冷房モード時には室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17とを接続する冷媒回路に切り替え、暖房モード時および除霜モード時には室外熱交換器16の冷媒出口側と圧縮機11の吸入口側に配置されたアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続する冷媒回路に切り替える。
冷房用固定絞り17は、暖房用固定絞り14と同様の構成の減圧手段である。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器13の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器であり、特許請求の範囲に記載された室内側熱交換器を構成している。
室内蒸発器18の冷媒出口側には、アキュムレータ19の入口側が接続されている。アキュムレータ19は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。さらに、アキュムレータ19の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置され、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器18、室内凝縮器13、エアミックスドア34等を収容して構成されたものである。
ケーシング31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されており、その内部に車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成している。このケーシング31の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器18および室内凝縮器13が、送風空気の流れに対して、室内蒸発器18→室内凝縮器13の順に配置されている。換言すると、室内蒸発器18は、室内凝縮器13に対して、空気流れ上流側に配置されている。
また、ケーシング31内には、室内蒸発器18通過後の送風空気のうち、室内凝縮器13を通過させる風量と室内凝縮器13を通過させない風量との風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の空気流れ最下流部には、室内凝縮器13を通過した送風空気あるいは室内凝縮器13を迂回させる冷風バイパス通路を通過した送風空気を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が設けられている。この開口穴としては、具体的に、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴37a、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴37b、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴37cが設けられている。
これらのデフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、冷房モード時には、エアミックスドア34の開度が調整されることによって、室内蒸発器18にて冷却された送風空気のうち室内凝縮器13にて再加熱される温風と室内凝縮器を迂回する冷風との風量割合が調整される。そして、この風量割合の調整によって、温風と冷風とを混合させた混合空気、すなわち車室内へ吹き出される送風空気の温度が調整される。
なお、冷房モード時には、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器13を迂回させて冷風バイパス通路側へ流す位置に、エアミックスドア34を変位させるようにしてもよい。
また、デフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ上流側には、それぞれ、デフロスタ開口穴37aの開口面積を調整するデフロスタドア38a、フェイス開口穴37bの開口面積を調整するフェイスドア38b、フット開口穴37cの開口面積を調整するフットドア38cが配置されている。
これらのデフロスタドア38a、フェイスドア38bおよびフットドア38cは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吹出口モード切替手段によって切り替えられる吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が操作パネルに設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。図2に示す空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された圧縮機11用のインバータ、冷媒回路切替手段を構成する開閉弁15aおよび三方弁20、送風ファン16a、送風機32、前述した各種電動アクチュエータ62〜65といった各種空調用構成機器の作動を制御する。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出手段としての内気センサ51、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出手段としての外気センサ52、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出手段としての日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ56、室外熱交換器16の室外器温度Toutを検出する室外熱交換器温度センサ57等の空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
なお、本実施形態の吐出冷媒圧力Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から冷房用固定絞り17入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となり、暖房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から暖房用固定絞り17入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。
また、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的には、室内蒸発器18の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器18のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器18を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。このことは室外熱交換器温度センサ57についても同様である。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するオートスイッチ、運転モードを切り替える運転モード選択手段としての運転モード切替スイッチ60a、吹出口モードを切り替える吹出モード切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内の目標温度である車室内目標温度Tsetを設定する温度設定手段としての温度設定スイッチ60b、空調のために消費されるエネルギの低減を要求する省エネルギ化要求手段であるエコノミースイッチ等がある。
ここで、乗員が温度設定スイッチ60bを操作して車室内目標温度Tsetを上昇させることは、乗員が車室内温度の上昇を要求していることを意味している。従って、本実施形態の温度設定スイッチ60bは、乗員の操作によって前記車室内の温度を上昇させることを要求する温度上昇要求手段としての機能を果たす。
なお、この空調制御装置50は、その出力側に接続された各種空調用構成機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの空調用構成機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの空調用構成機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、本実施形態では、空調制御装置50のうち、電動送風機である送風ファン16aの作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、送風機制御手段50aを構成している。また、本実施形態では、空調制御装置50のうち、冷媒回路切替手段を構成する開閉弁15aおよび三方弁20の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が冷媒回路制御手段50bを構成している。もちろん、送風機制御手段50aおよび冷媒回路制御手段50bを、空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
次に、図3〜図7のフローチャートを用いて、上記構成における本実施形態の作動を説明する。この制御処理は、車両停止時であっても、バッテリから空調制御装置50に電力が供給されていれば実行される。なお、図3〜図7の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマー等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時あるいは車両システムの停止時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述の空調制御用のセンサ群51〜57等の検出信号を読み込んでステップS4へ進む。
ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、内気温Trを速やかに乗員の所望の車室内目標温度Tsetに近づけるために決定される値であって、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内目標温度であり、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)であり、Tamは外気センサ52によって検出された車室外温度(外気温)であり、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。また、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
なお、目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1に要求される空調熱負荷を示す指標であると表現することもできる。また、上記数式F1にて算出された目標吹出温度TAOは、冷房モード時および暖房モード時の双方において用いることのできる制御目標値であるが、暖房モード時には消費電力の抑制のために上記数式F1にて算出された目標吹出温度TAOよりも若干低い値とする補正を行ってもよい。
次に、ステップS5では、ヒートポンプサイクル10の運転モードが決定される。ステップS5の詳細な制御内容については、図4を用いて説明する。まず、ステップS51では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50のROM内に記憶された制御マップを参照して、仮の運転モードを決定する。
具体的には、図4のステップS51に記載された制御特性図に示すように、目標吹出温度TAOが上昇過程にあるときは、目標吹出温度TAO≧基準温度KTAO(具体的には、30℃)であれば仮の運転モードを冷房モードから暖房モードへ切り替え、目標吹出温度TAOが下降過程にあるときは、基準温度KTAO−α≧目標吹出温度TAO(具体的には、α=5℃)であれば仮の運転モードを暖房モードから冷房モードへ切り替える。なお、αは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
次のステップS52では、ステップS51にて決定された仮の運転モードが冷房モードから暖房モードへ切り替えられたか否かが判定される。ステップS52にて、仮の運転モードが冷房モードから暖房モードへ切り替えられていないと判定された場合は、ステップS54へ進む。一方、ステップS52にて、仮の運転モードが冷房モードから暖房モードへ切り替えられたと判定された場合は、ステップS53へ進む。
ステップS53では、乗員が車室内目標温度Tsetを上昇させたか否かが判定される。より具体的には、ステップS2で読み込まれた今回の車室内目標温度Tsetが、前回読み込まれた前回の車室内目標温度Tsetよりも上昇しているか否かが判定される。ステップS53にて、乗員が車室内目標温度Tsetを上昇させたと判定された場合には、乗員が車室内の温度を上昇させることを要求しているものとして、ステップS54へ進む。
ステップS54では、ステップS51にて決定された仮の運転モードを、ヒートポンプサイクル10の運転モードに決定してステップS6へ進む。一方、ステップS53にて、乗員が車室内目標温度Tsetを上昇させていないと判定された場合には、ステップS55へ進み、ヒートポンプサイクル10の運転モードを変更することなく現状の運転モードを維持して、ステップS6へ進む。
なお、図4には図示していないが、このステップS5では、暖房モード時に室外熱交換器16に着霜が生じた際に、運転モードを除霜モードへ切り替える。このような着霜の判定は、室外熱交換器温度センサ57によって検出された室外器温度Toutが予め0℃以下に定めた着霜基準温度(例えば、−10℃)以下となった際に、室外熱交換器16に着霜が生じていると判定するようにすればよい。
続くステップS6〜S12では、空調制御装置50の出力側に接続された各種空調用構成機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、送風機32により送風される空気の目標送風量、すなわち送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定する。
ステップS6の詳細な制御内容については、図5を用いて説明する。まず、ステップS61では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かが判定される。ステップS61にて、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS62へ進み、操作パネル60の風量設定スイッチによって設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS7へ進む。
具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS61にてオートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS63へ進み、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、ステップS4で決定された目標吹出温度TAOに基づいて仮のブロワレベルf(TAO)を決定する。
より詳細には、図5のステップS63に記載された制御特性図に示すように、目標吹出温度TAOの極低温域(本実施形態では、−30℃以下)および極高温域(本実施形態では、80℃以上)で仮のブロワレベルf(TAO)を最大値付近として、送風機32の風量を最大値に近づける。
また、目標吹出温度TAOが極低温域から中間温度域(本実施形態では、10℃〜40℃)に向かって上昇するに伴って、仮のブロワレベルf(TAO)を減少させ、さらに、目標吹出温度TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下するに伴って、仮のブロワレベルf(TAO)を減少させて送風機32の風量を減少させる。また、目標吹出温度TAOが中間温度域内に入ると、仮のブロワレベルf(TAO)を最小値付近にして送風機32の風量を最小値に近づける。
ステップS64では、ステップS63にて決定されたブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50のROM内に記憶された制御マップを参照して、実際に送風機32の電動モータに印加されるブロワモータ電圧を決定して、ステップS7へ進む。
次に、図3に示すステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替ドア駆動用の電動アクチュエータ62に出力される制御信号を決定する。この吸込口モードも目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、目標吹出温度TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等には内気を導入する内気モードが選択される。
ステップS8では、吹出口モード、すなわち吹出モードドア駆動用の電動アクチュエータ63に出力される制御信号を決定する。この吹出口モードも目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
従って、目標吹出温度TAOが低温域となりやすい夏季は主にフェイスモード、目標吹出温度TAOが中温域となりやすい春秋季は主にバイレベルモード、そして、目標吹出温度TAOが高温域となりやすい冬季は主にフットモードが選択される。
さらに、車両窓ガラス近傍の相対湿度を検出する湿度検出手段を設け、湿度検出手段の検出値から算出される窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高いと判定された場合に、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
ステップS9では、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア駆動用の電動アクチュエータ63に出力される制御信号を決定する。本実施形態では、暖房モード時には、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13へ流入するようにエアミックスドア34を変位させる。
また、除霜モード時には、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13を迂回するようにエアミックスドア34を変位させる。さらに、冷房モード時には、室内へ送風される送風空気の温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくようにエアミックスドア34を変位させる。
なお、本実施形態では、送風空気の温度TAVとして、蒸発器温度Teおよび吐出冷媒温度Tdから算出された値を用いている。もちろん、車室内へ吹き出される送風空気の温度を検出する送風空気温度検出手段を設け、これによって検出された値を送風空気温度TAVとしてもよい。
ステップS10では、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の回転数を決定する。ここで、圧縮機11の基本的な回転数の決定手法を説明する。例えば、冷房モードでは、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
また、暖房モードでは、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定する。
そして、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出し、今回算出された偏差Pnから前回算出された偏差Pn−1を減算した偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量Δf_Hを求める。
このステップS10のより詳細な制御内容については、図6を用いて説明する。まず、ステップS101では、冷房モード時の回転数変化量Δf_Cを求める。図6のステップS101には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器26の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。
ステップS102では、暖房モード時および除湿モード時の回転数変化量Δf_Hを求める。図6のステップS102には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Pnと偏差変化率Pdotに基づいて高圧側冷媒圧力Pdの異常上昇が防止されるようにΔf_Hが決定される。
次に、ステップS103では、ステップS5で決定された運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。ステップS103にて、ステップS5で決定された運転モードが冷房モードであると判定された場合は、ステップS104へ進み、Δf_Cを圧縮機11の回転数変化量Δfに決定して、ステップS106へ進む。
一方、ステップS103にてステップS5で決定された運転モードが冷房モードでないと判定された場合は、ステップS105へ進み、Δf_Hを圧縮機11の回転数変化量Δfに決定して、ステップS106へ進む。ステップS106では、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されているか否かが判定される。
ステップS106にて、エコノミースイッチが投入されていない場合は、ステップS107へ進み、圧縮機11の回転数の上限値(MAX回転数)を10000rpmとし、エコノミースイッチが投入されている場合は、ステップS108へ進み、圧縮機11の回転数の上限値(MAX回転数)を7000rpmとする。
つまり、エコノミースイッチが投入されている場合は、投入されていない場合よりも圧縮機11の回転数の上限値を低下させて車室内の空調を行うために消費されるエネルギ(電気エネルギ)を低減させている。
次のステップS131では、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値と圧縮機11の回転数の上限値(MAX回転数)とを比較して、小さい方の値を、今回の圧縮機回転数fnと決定して、ステップS11へ進む。なお、ステップS10における圧縮機回転数fnの決定は、図7のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
次に、図3に示すステップS11では、冷媒回路切替手段の作動状態、すなわち開閉弁15aおよび三方弁20の作動状態が決定される。具体的には、前述の如く、本実施形態の開閉弁15aは、冷房モード時および除霜モード時に開き、暖房モード時に閉じる。
また、三方弁20は、冷房モード時には室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17とを接続する冷媒回路に切り替え、暖房モード時および除霜モード時には室外熱交換器16の冷媒出口側と圧縮機11の吸入口側に配置されたアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続する冷媒回路に切り替える。
次に、ステップS12では、送風ファン16aにより送風される空気の目標送風能力、すなわち送風ファン16aの電動モータ16bに印加する送風ファン電圧を決定する。ステップS12の詳細な制御内容については、図7を用いて説明する。まず、ステップS121では、現状の運転モードが、冷房モード、暖房モード、除霜モードのいずれであるかが判定される。
ステップS121にて、現状の運転モードが冷房モードであると判定された場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒圧力Pdに基づいて、予め空調制御装置50のROM内に記憶された制御マップを参照して、送風ファン電圧を決定する。
具体的には、図7のステップS122に記載された制御特性図に示すように、吐出冷媒圧力Pdが上昇過程にあるときは、吐出冷媒圧力Pd≧基準圧力KPd(具体的には、1.6MPa)であれば送風ファン電圧を高電圧(具体的には、12V)に設定し、吐出冷媒圧力Pdが下降過程にあるときは、基準圧力KPd−α≧吐出冷媒圧力Pd(具体的には、α=0.2Mpa)であれば送風ファン電圧を低電圧(具体的には、6V)に設定して、ステップS13へ進む。なお、αは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
一方、ステップS121にて、現状の運転モードが暖房モードであると判定された場合は、ステップS123へ進む。ステップS123では、送風ファン電圧を、低電圧(具体的には、6V)に設定して、ステップS13へ進む。
一方、ステップS121にて、現状の運転モードが除湿モードであると判定された場合は、ステップS124へ進む。ステップS124では、送風ファン電圧を0Vに設定して、ステップS13へ進む。
ところで、送風ファン16aは、図8に示すように、複数(本実施形態では、2つ)の電動モータ16bを有している。第1電動モータ161bの一方端子は、第1リレー16cを介してバッテリB側に接続されており、第1電動モータ161bの他方端子はグランド側へ接続されている。また、第2電動モータ162bの一方端子は、第2リレー16dを介してバッテリB側に接続されており、第2電動モータ162bの他方端子は第3リレー16eを介してグランド側へ接続されている。
第1リレー16cは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、第1電動モータ161bの通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。第2リレー16dは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、第2電動モータ162bの通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。第3リレー16eは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、共通接点cとa接点a、または、共通接点cとb接点bのいずれかと電気的に接続させるものである。
第1リレー16cおよび第2リレー16をともにON状態にし、第3リレー16eの共通接点cとa接点aとを接続することで、2つの電動モータ161b、162bが並列的に接続される。一方、第1リレー16cをOFF状態にし、第2リレー16をON状態にし、第3リレー16eの共通接点cとb接点bとを接続することで、2つの電動モータ161b、162bが直列的に接続される。そして、本実施形態では、ステップS12にて送風ファン電圧が高電圧に設定された際には、2つの電動モータ16bを並列的に接続し、ステップS12にて送風ファン電圧が低電圧に設定された場合には、2つの電動モータ16bを直列的に接続している。
ステップS13では、上述のステップS6〜S12で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種空調用構成機器11(61)、15a、20、16a、32、62〜64に対して制御信号および制御電圧が出力される。続くステップS14では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3へ戻る。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御処理が実行されるので、運転モードに応じて以下のように作動する。
(a)暖房モード
暖房モードでは、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路が、図1の白抜き矢印で示すように、圧縮機11→室内凝縮器13→暖房用固定絞り14→室外熱交換器16(→三方弁20)→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷媒回路に切り替えられる。つまり、室内凝縮器13を放熱器として機能させ、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
従って、暖房モード時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器13にて送風機32から送風された送風空気に放熱する。これにより、室内凝縮器13を通過する送風空気が加熱され、車室内の暖房が実現される。また、室内凝縮器13から流出した冷媒は、暖房用固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁20を介してアキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
上記の如く、本実施形態の暖房モードでは、室内側熱交換器に対応する室内蒸発器18へ冷媒が流入しないので、室内蒸発器18にて送風空気が冷却されることはない。従って、本実施形態の暖房モードは、非冷却モードの運転モードとなる。
(b)冷房モード
冷房モードでは、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路が、図1の黒塗り矢印で示すように、圧縮機11→室内凝縮器13(→バイパス通路15)→室外熱交換器16(→三方弁20)→冷房用固定絞り17→室内蒸発器18→アキュムレータ19→圧縮機11順に冷媒が循環する冷媒回路に切り替えられる。つまり、室内凝縮器13および室外熱交換器16を冷媒に放熱させる放熱器として機能させ、室内蒸発器18を冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
従って、冷房モード時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒が、室内凝縮器13にて室内蒸発器18通過後の送風空気の一部と熱交換して送風空気の一部が加熱される。さらに、室内蒸発器18から流出した冷媒は、バイパス通路15を介して室外熱交換器16へ流入し、室外熱交換器16にて送風ファン16aから送風された外気と熱交換して放熱する。
室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁20を介して冷房用固定絞り17へ流入し、冷房用固定絞り17にて減圧膨張される。冷房用固定絞り17にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器18へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。この冷媒の吸熱作用により、室内蒸発器18を通過する送風空気が冷却される。
そして、前述の如く、室内蒸発器18にて冷却された送風空気の一部が室内凝縮器13にて加熱されることによって、車室内へ送風される送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように調整され、車室内の冷房が実現される。また、室内蒸発器18から流出した冷媒は、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
上記の如く、本実施形態の冷房モードでは、室内側熱交換器に対応する室内蒸発器18にて冷媒を蒸発させることによって送風空気が冷却される。従って、本実施形態の冷房モードは、特許請求の範囲に記載された冷却モードに対応する運転モードとなる。
(c)除霜モード
除霜モードは、暖房モード時に室外熱交換器16に着霜が生じたことが判定された際に実行される。なお、本実施形態では、一旦、除霜モードに切り替えられると、予め定めた所定時間(本実施形態では、5分間)が経過するまでは他の運転モードに切り替えられることはない。
除霜モードでは、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路が、図1の網掛けハッチング付き矢印で示すように、圧縮機11(→室内凝縮器13→バイパス通路15)→室外熱交換器16(→三方弁20)→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷媒回路に切り替えられる。
なお、除霜モードでは、送風空気の全風量が室内凝縮器13を迂回するようにエアミックスドア34の作動が制御されているので、室内凝縮器13では冷媒は殆ど放熱しない。従って、室内凝縮器13にて送風空気が加熱されて車室内の暖房が実現されることもない。
従って、除霜モード時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒が、室外熱交換器16へ流入して放熱する。これにより、室外熱交換器16が加熱されて室外熱交換器16の除霜が実現される。室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁20を介してアキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入される。
上記の如く、本実施形態の除霜モードでは、室内側熱交換器に対応する室内蒸発器18へ冷媒が流入しないので、室内蒸発器18にて送風空気が冷却されることはない。従って、本実施形態の除湿モードは、非冷却モードの運転モードとなる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動して、車室内の冷房、暖房を実現することができるとともに、室外熱交換器16に着霜が生じた際には、除霜モードでの運転を実行することで室外熱交換器16を除霜することもできる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS12にて説明したように、運転モードが暖房モードとなっている際は、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が高いと判断し、送風ファン電圧を低電圧に設定している。一方、運転モードが冷房モードとなっている際は、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が低いと判断し、送風ファン電圧を高電圧または低電圧のいずれかに設定している。つまり、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が高い暖房モード時は、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が低い冷房モード時よりも、送風ファン電圧を低く設定し、電動送風機16aへ供給される電力を低下させている。
したがって、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が高い場合に、電動送風機16aの電動モータ16bに流れる電流を制限することができるので、電動モータ16bの焼損を抑制できる。
ところで、本実施形態では、制御ステップS12にて説明したように、送風ファン電圧として、高電圧を12Vに設定し、低電圧を6Vに設定しているが、これらの電圧は、以下に説明する送風ファン16aがロックした際の送風ファン電圧と電動モータ16bの焼損時間との関係に基づいて得られたものである。
ここで、本発明者の実験結果より、図9に示すように、一般的な自動車に搭載される電動モータに12Vの電圧を印可した場合、数分(具体的には、5分以下)で電動モータに焼損、発煙が生じてしまうことがわかった。一方、上記電動モータに6Vの電圧を印可した場合は、数時間(具体的には、150分以上)電圧を印可し続けても、電動モータに焼損、発煙が生じないこともわかった。
一般的に、ユーザの通勤時間は最大でも60分程度であるので、電動モータに印可する電圧を6Vに設定すれば、たいていの場合において電動モータに焼損、発煙が生じることを防止できる。したがって、本実施形態では、制御ステップS12において、低電圧を6Vに設定している。
また、制御ステップS12において、高電圧を低電圧の2倍である12Vに設定することで、高電圧から低電圧への切り替えを、2つの電動モータ16bの接続を切り替えることにより行うことができる。具体的には、上述したように、2つの電動モータ16bを並列的に接続している場合から、2つの電動モータ16bを直列的に接続している場合に切り替えることにより、1つの電動モータ16bに供給される電圧を、高電圧(12V)から低電圧(6V)に切り替えることができる。したがって、送風ファン電圧の切り替えを行うために、抵抗等を別途設ける必要がないので、部品点数低減によるコスト削減を図ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、図7の制御ステップS12に示す送風ファン電圧の決定処理が第1実施形態と異なっている。
本実施形態では、室外器温度Toutが0℃以下になると室外熱交換器16に着霜がより生じやすくなることに着眼し、運転モードが暖房モードであって、且つ、室外器温度Toutが0℃以下となっている際には、送風ファン電圧を低電圧に設定している。
本実施形態のステップS12の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。図10に示すように、ステップS121にて、現状の運転モードが暖房モードであると判定された場合には、ステップS1211へ進む。ステップS1211では、室外熱交換器温度センサ57によって検出された室外器温度Toutが0℃以下となっているか否かを判定する。
ステップS1211にて、室外器温度Toutが0℃以下となっていると判定された場合には、ステップS123へ進む。ステップS123では、送風ファン電圧を低電圧(具体的には、6V)に設定して、ステップS13へ進む。一方、ステップS1211にて、室外器温度Toutが0℃以下となっていないと判定された場合には、ステップS122へ進み、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒圧力Pdに基づいて、予め空調制御装置50のROM内に記憶された制御マップを参照して、送風ファン電圧を決定する。
なお、運転モードが冷房モード、または、除霜モードになっている際の送風ファン電圧の決定は、第1実施形態と同様であるため、本実施形態での説明を省略する。
以上説明した本実施形態では、運転モードが暖房モードであって、且つ、室外器温度Toutが0℃以下となっている際に、送風ファン電圧を低電圧に設定しているので、室外熱交換器16に着霜が生じる可能性がより高い場合にのみ、電動送風機16aの電動モータ16bに流れる電流を制限することができるので、電動モータ16bの焼損を確実に抑制しつつ、不必要な場合に電動送風機16aの稼働率が低下することを抑制できる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の第1実施形態では、制御ステップS12にて、運転モードが暖房モードとなっている際に、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が高いと判断して、送風ファン電圧を低電圧に設定した例について説明したが、着霜可能性の判断はこれに限定されない。
例えば、室外熱交換器温度センサ57によって検出された室外器温度Toutが0℃以下となっている際に、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が高いと判断して、送風ファン電圧を低電圧に設定してもよい。また、室外器温度Toutが予め0℃以下に設定された着霜基準温度KTout以下となっている際に、室外熱交換器16に着霜が生じている可能性が高いと判断して、送風ファン電圧を低電圧に設定してもよい。
また、外気温Tamから室外器温度Toutを引いた温度差が予め定めた所定値(例えば10℃)を上回った際に、送風ファン電圧を低電圧に設定してもよい。外気温Tamから室外器温度Toutを引いた温度差が大きい程、着霜が進行しやすいので、外気温Tamからと室外器温度Toutを引いた温度差が所定値を上回った際にのみ送風ファン電圧を低電圧とすることで、室外熱交換器16に生じた着霜が進行して送風ファン16aと接触する可能性が高い場合にのみ送風ファン電圧を低下させて、不必要な場合に送風ファン電圧を下げる必要がなくなる。したがって、電動送風機16aの電動モータ16bの焼損を確実に抑制しつつ、不必要な場合に電動送風機16aの稼働率が低下することを抑制できる。
(2)圧縮機11として電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11の形式はこれに限定されない。例えば、ベルトおよび電磁クラッチ等を介してエンジンから駆動力を得る圧縮機11を採用してもよい。従って、本発明の車両用空調装置1の適用は電気自動車に限定されない。
例えば、内燃機関(エンジン)から走行用の駆動力を得て走行する通常の車両、内燃機関および走行用電動モータの双方から車両走行用の駆動力を得るいわゆるハイブリッド車両、さらに、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給される電力をバッテリBに充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両に適用してもよい。
また、エンジンを備える車両では、送風空気の補助加熱手段として、室内凝縮器13に加えて、エンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱用熱交換器(ヒーターコア)を設けてもよい。
(3)上述の実施形態では、冷房モード時には、室内側熱交換器(室内蒸発器18)にて低圧冷媒を蒸発される冷媒回路に切り替え、暖房モード時には、室内側熱交換器(室内蒸発器18)にて冷媒を流入させない冷媒回路に切り替えるヒートポンプサイクル10を採用した例を説明したが、ヒートポンプサイクルはこれに限定されない。
例えば、冷房モード時には、室内側熱交換器(室内蒸発器18)にて低圧冷媒を蒸発される冷媒回路に切り替え、さらに、暖房モード時に室内側熱交換器(室内蒸発器18)へ圧縮機11吐出冷媒を流入させて送風空気を加熱する冷媒回路に切り替えるヒートポンプサイクルを採用してもよい。