JP2013247900A - 検出装置および検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】蛍光を利用し、リアルタイムに生物由来の粒子を蛍光を発する埃から分離して検出することのできる検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置100は、導入された空気中の粒子を加熱するための加熱部91,92と、発光素子6と、蛍光を受光するための受光素子9と、加熱部での加熱を制御し、また、受光素子での受光量を用いて導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出するための測定部40とを備える。加熱部ではN回(NはN≧2の整数)導入された空気中の粒子を加熱し、測定部は、2回目以降の加熱の前後での受光量の変化量に基づいて、導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する。
【選択図】図1
【解決手段】検出装置100は、導入された空気中の粒子を加熱するための加熱部91,92と、発光素子6と、蛍光を受光するための受光素子9と、加熱部での加熱を制御し、また、受光素子での受光量を用いて導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出するための測定部40とを備える。加熱部ではN回(NはN≧2の整数)導入された空気中の粒子を加熱し、測定部は、2回目以降の加熱の前後での受光量の変化量に基づいて、導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する。
【選択図】図1
Description
この発明は検出装置および検出方法に関し、特に、空気中の生物由来の粒子を検出する検出装置および検出方法に関する。
従来、空気中の微生物の検出においては、落下菌法、衝突法、スリット法、多孔板法、遠心衝突法、インピンジャ法、およびフィルタ法などの方法で空気中の微生物を採取した後、培養し、出現するコロニーの計数を行なう。しかしながら、この方法では、培養に2日から3日が必要であり、リアルタイムでの検出は難しい。そこで、近年、特開2003−38163号公報(特許文献1)、特表2008−508527号公報(特許文献2)のように、空気中の微生物に紫外光を照射して、微生物からの蛍光発光を検出して個数を計測する装置が提案されている。
特許文献1、2で提案されているような従来装置では、浮遊粒子が生物由来のものかどうかを判定する手段として、紫外線の照射により蛍光を発光するかどうかを判断する手法が採用されている。
しかしながら、実際に空気中に浮遊する埃には、紫外光の照射により蛍光を発する化学繊維のくずなどが多く含まれている。それ故、特許文献1、2で提案されているような従来装置を用いると、空気中に存在する生物由来の粒子に加え、蛍光を発する埃も検出されてしまう。すなわち、特許文献1、2で提案されているような従来装置では、空気中に存在する生物由来の粒子だけを正確に評価できないという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、蛍光を利用し、リアルタイムに、生物由来の粒子を、蛍光を発する埃から分離して検出することのできる検出装置および検出方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、検出装置は、導入された空気中の粒子を加熱するための加熱部と、発光素子と、蛍光を受光するための受光素子と、加熱部での加熱を制御するための制御部と、受光素子での受光量を用いて導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出するための検出部とを備える。制御部は、加熱部でN回(NはN≧2の整数)、導入された空気中の粒子を加熱し、検出部は、N回の加熱のうちの2回目以降の加熱であるM回目(Mは2≦M≦Nの整数)の加熱の前後での受光素子での受光量の変化量に基づいて、導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する。
好ましくは、検出部は、M回目をN回目として、N回の加熱のうちのN回目の加熱の前後での受光素子での受光量の変化に基づいて導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出し、制御部は、N回の加熱のうちの1回目〜(N−1)回目の加熱で空気中の粒子に与えられる熱量の総量が、N回目の加熱で空気中の粒子に与えられる熱量よりも小さくなるよう、加熱部での1回目〜(N−1)回目の加熱を制御する。
好ましくは、検出部は、N回の加熱のうちの(M−1)回目までの加熱後の受光量の変化量の、M回目の加熱後の受光量の変化量に対する割合を用いて、M回目の加熱の前後での受光素子での受光量の変化量を補正する。
好ましくは、検出部は、予め記憶している、生物由来の粒子の種類に応じた粒子量と受光素子での受光量との関係を用いて、M回目の加熱の前後での受光素子での受光量の変化量を指定された生物由来の粒子の種類での変化量に換算する。
好ましくは、検出装置は導入された空気中の埃量の検出結果を入力するための入力部をさらに備え、制御部は、予め記憶している、埃量と加熱部での加熱量との関係を用いて、加熱部でN回の加熱の条件を特定する。
好ましくは、検出装置は導入された空気中の粒子を捕集するための捕集部材をさらに備え、加熱部は、捕集部材を、発光素子および受光素子から遠い側より加熱する。
好ましくは、検出装置は導入された空気中の粒子を捕集するための捕集部材をさらに備え、加熱部は、捕集部材を発光素子および受光素子から遠い側より加熱するための第1の加熱部と、捕集部材を発光素子および受光素子から近い側より加熱するための第2の加熱部とを含み、制御部は、M回目の加熱では第1の加熱部を用いて捕集部材を加熱し、それ以外の加熱では第2の加熱部を用いて捕集部材を加熱する。
本発明の他の局面に従うと、検出方法は検出装置を用いて導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する方法であって、検出装置は、導入された空気中の粒子を加熱するための加熱部と、発光素子と、蛍光を受光するための受光素子とを含む。検出方法は、加熱部でN回(NはN≧2の整数)、導入された空気中の粒子を加熱するステップと、N回の加熱のうちの2回目以降の加熱であるM回目(Mは2≦M≦Nの整数)の加熱の前後での受光素子での受光量の変化量に基づいて、導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出するステップとを備える。
この発明によると、生物由来の粒子を、蛍光を発する埃等から分離して、より精度よく検出することができる。
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
<装置構成>
図1は、本実施の形態にかかる検出装置100の概略を表わした図である。
図1は、本実施の形態にかかる検出装置100の概略を表わした図である。
図1を参照して、検出装置100は、一例として、一方端に導入孔10、他方端に空気導入機構としてのファン50が配された排出孔11を備えた、内空状の筒状筐体5Aを有し、その内部に、捕集機構として針状の放電電極1および捕集治具12が配備されている。導入孔10にはフィルタ(プレフィルタ)が設けられてもよい。
放電電極1は高圧電源2の正極に電気的に接続される。捕集治具12と高圧電源2の負極に電気的に接続される。
ファン50の図示しない駆動機構は測定部40によって制御され、その回転が制御される。ファン50が回転することによって、図中の点線矢印で表わされたように、導入孔10から外部空気が筒状筐体5A内に導入され、排出孔11から筒状筐体5A外に排気される。好ましくは、ファン50で導入する空気の流速は1L(リットル)/minから50m3/minである。
空気導入機構としては、たとえば、検出装置100外に設置されたポンプおよびその駆動機構などであってよい。またたとえば、検出装置100内に組み込まれた熱ヒータやマイクロポンプ、マイクロファン、およびその駆動機構などであってもよい。また、当該検出装置100が空気清浄機や空気調和機などに組み込まれるものである場合、ファン50は、空気清浄機等の空気清浄装置部分の空気導入機構と共通とする構成であってもよい。
図1の例では、筒状筐体5A内のその高さ方向を遮る位置に略中央に孔を有する絞り板が設けられ、放電電極1は、その孔をくぐるように設置されている。これにより、導入孔10から導入された空気の流路は絞り板の孔の径に狭められ、絞り板を通過する際に放電電極1にて電荷される。そして、その狭められた流路のまま捕集治具12に到達するため、捕集治具12上のある程度狭い範囲に浮遊粒子が吸着することになる。
捕集治具12は、導電性の透明の皮膜を有する、ガラス板などからなる支持基板である。支持基板は、ガラス板には限定されず、その他、セラミック、金属等であってもよい。また、支持基板表面に形成される皮膜は、透明に限定されない。他の例として、支持基板は、金属皮膜をセラミック等の絶縁材料の上に形成して構成されてもよい。また、支持基板が金属材料の場合は、その表面に皮膜を形成する必要もない。
捕集治具12の皮膜側は高圧電源2の負極に電気的に接続される。これにより、放電電極1と捕集治具12との間に電位差が発生し、これらの間に図1では上向きの電界が構成される。
ファン50の駆動によって導入孔10から導入された空気中の浮遊粒子は、放電電極1付近にて負に帯電される。負に帯電した粒子は静電気力で捕集治具12の方向に移動して導電性の皮膜に吸着されることで、捕集治具12上に捕集される。ここで、放電電極1として針状電極を用いることによって、帯電した粒子を捕集治具12の放電電極1に対面する、(後述する)発光素子の照射領域15に対応したきわめて狭い範囲に吸着させることができる。これにより、後述する検出工程において、吸着された微生物を効率的に検出することができる。
さらに、検出機構として、光源である発光素子6と受光素子9とが配される。発光素子6は好適には半導体レーザが用いられ、レーザ光を照射する。またはLED(Light Emitting Diode)素子を含むものであってもよい。波長は、浮遊微粒子の生物由来の微粒子を励起して蛍光を発させるものであれば、紫外または可視いずれの領域の波長でもよい。好ましくは、特表2008−508527号公報に開示されているように、微生物中に含まれ、蛍光を発するトリプトファン、NaDH、リボフラビン等が効率よく励起される300nmから450nmである。受光素子9は、従来用いられている、フォトダイオード、イメージセンサなどが用いられる。
発光素子6の発光は捕集治具12の表面に照射され、捕集治具12上に照射領域を形成する。照射領域の形状に限定はなく、円形、楕円形、四角形などであってよい。照射領域は特定のサイズに限定されないが、好ましくは、円の直径または楕円の長軸方向の長さまたは四角形の1辺の長さが約0.05mmから50mmである。
受光素子9は好適にはフォトダイオードが用いられ、蛍光を受光する。
なお、図1において発光素子6と受光素子9とは筒状筐体5Aの外部に配されている例が示されている。これは、図の概略化のためにそのように表わされているだけであって、発光素子6と受光素子9とは筒状筐体5Aの内部に配置されていてよい。
なお、図1において発光素子6と受光素子9とは筒状筐体5Aの外部に配されている例が示されている。これは、図の概略化のためにそのように表わされているだけであって、発光素子6と受光素子9とは筒状筐体5Aの内部に配置されていてよい。
または、図1に表わされた構成のまま、つまり、発光素子6と受光素子9とが筒状筐体5Aの外部に配された構成としてもよい。
この構成の場合、図1に表わされたように、筒状筐体5Aの外部にある発光素子6から筒状筐体5A内の捕集治具12の表面まで照射光を導入するためのガイド6Aが設けられる。または、筒状筐体5Aの壁面の、少なくとも発光素子6から捕集治具12の表面までの間に存在する部分が照射光の透過率の高い素材で形成されていてもよい。
同様に、筒状筐体5A内の捕集治具12の表面から筒状筐体5Aの外部にある受光素子9まで蛍光を導出させるためのガイド9Aが設けられる。または、筒状筐体5Aの壁面の、少なくとも捕集治具12の表面から受光素子9までの間に存在する部分が蛍光の透過率の高い素材で形成されていてもよい。
受光素子9は信号処理部30に接続され、受光量に比例した電流信号を信号処理部30に対して出力する。信号処理部30は測定部40に接続されて、電流信号を処理した結果を測定部40に対して出力する。従って、導入された空気中に浮遊し、捕集治具12表面に捕集された粒子に発光素子6から光が照射されることによって該粒子から発光された蛍光は、受光素子9において受光され、信号処理部30においてその受光量が検出される。
捕集治具12の放電電極1より遠い側には加熱機構としてのヒータ91が配され、捕集治具12とヒータ91とを含んだユニットが捕集ユニット12Aを構成している。ヒータ91は測定部40に電気的に接続され、測定部40によって加熱量(加熱時間、加熱温度等)が制御される。
図2(A)および図2(B)は捕集ユニット12Aの構成を表わす概略図であって、図2(A)は捕集ユニット12Aの放電電極1側から見た平面図、図2(B)は断面図を表わしている。
図2(A)を参照して、捕集治具12は断熱材上に配置されて、両端が捕集板押さえ板電極で放電電極1側から断熱材に向かう方向に押さえられている。
図2(B)を参照して、捕集治具12の放電電極1の反対側には、間に断熱材を挟まずにヒータ91が配され、ヒータ91の周囲が断熱材で覆われている。
断熱材としては、好適にはガラスエポキシ樹脂が用いられる。このように構成することによって、セラミックヒータであるヒータ91が約2分で200℃に到達したときに断熱材を介してヒータ91に接続される部分(図示せず)の温度が30℃以下であったことを発明者らが確認している。
ヒータ91としては、好適にはセラミックヒータが用いられる。ヒータ91は、捕集治具12上に捕集された空気中の浮遊粒子を加熱し得る位置であって、発光素子6、受光素子9等のセンサ機器から何かによって隔てられる位置に配備される。好ましくは、図1に表わされたように、捕集治具12の放電電極1から遠い側の面に配備される。
さらに図1を参照して、検出装置100には、ヒータ91とは別に、捕集治具12を加熱するためのランプ92が捕集治具12の上方からの熱源として設けられる。ランプ92として、好適にはハロゲンランプが用いられる。ハロゲンランプの他、赤外ランプなどの照射光源が考えられる。また、上方からの熱源はランプに限定されず、ヒータ91と同じような板状ヒータなどが用いられてもよい。
図1の例では、一例として、ランプ92が筒状筐体5Aとは異なる筒状筐体5B内に設けられる例が示されている。この例において、筒状筐体5Aは捕集治具12より上方の一部が着脱可能に構成され、筒状筐体5Bはその部分と同形状を有している。図1では、筒状筐体5Aの絞り板よりも上方が着脱可能な構成となっており、その部分と筒状筐体5Bとは、回転部材5B’を挟んで接合されている。
回転部材5B’は測定部40からの制御信号に従って回転可能であって、回転することで、捕集治具12の上方に絞り板を含んだ筒状筐体5Aの上方部分がある状態と、筒状筐体5Bがある状態とに切り替わる。筒状筐体5B内にはランプ92が含まれるため、捕集の後に回転部材5S’が回転することで、捕集治具12上にランプ92が位置するようになる。
ランプ92の図示しない駆動機構は測定部40に接続されており、測定部40からの制御信号に従った照射量の光を照射する。
なお、図1の例ではランプ92が筒状筐体5A外に設置される例が示されている。このように構成することで、捕集の際にランプ92が気流の妨げとならず、効率的な捕集が可能となる。
しかしながら、ランプ92の配置は図1のような配置に限定されず、予め筒状筐体5A内に設置されていてもよい。この場合、好ましくは、絞り板に設けられている孔の直下以外の位置に設けられる。このようにすることで、気流の妨げとなることを防止すると共に、図1の例のようなランプ92の付け替え動作を不要とすることができる。
さらに、他の例として、検出装置100にランプ92が設けられておらず、後述する予備加熱で本加熱と同様にヒータ91が用いられてもよい。
なお、以上に説明した装置構成は一例であって、検出装置100の構成はこの構成のみに限定されるものではない。
<検出原理>
検出装置100を用いて空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する原理については、本願発明者らの出願による国際公開2011/104770号に開示されている方法を用いる。すなわち、当該公報において、生物由来の粒子と蛍光を発する化学繊維の埃などとのそれぞれに対して加熱処理を施し、加熱の前後における蛍光の変化の測定結果が開示されている。その測定結果より、埃は加熱処理によって蛍光強度が変化しないのに対して、生物由来の粒子は加熱処理によって蛍光強度が増加することが見出されたことが開示されている。
検出装置100を用いて空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する原理については、本願発明者らの出願による国際公開2011/104770号に開示されている方法を用いる。すなわち、当該公報において、生物由来の粒子と蛍光を発する化学繊維の埃などとのそれぞれに対して加熱処理を施し、加熱の前後における蛍光の変化の測定結果が開示されている。その測定結果より、埃は加熱処理によって蛍光強度が変化しないのに対して、生物由来の粒子は加熱処理によって蛍光強度が増加することが見出されたことが開示されている。
その測定結果を引用すると、図3は、生物由来の粒子として、大腸菌を200℃にて5分間加熱処理したときの、加熱処理前(曲線71)および加熱処理後(曲線72)の蛍光スペクトルの測定結果である。図3に表わされた測定結果より、加熱処理を施すことによって大腸菌からの蛍光強度が大幅に増加していることが分かった。また、図4(A)に示された加熱処理前の蛍光顕微鏡写真と、図4(B)に示された加熱処理後の蛍光顕微鏡写真との比較によっても、加熱処理を施すことによって大腸菌からの蛍光強度が大幅に増加していることが明らかとなっている。
同様に、図5は、生物由来の粒子として、バチルス菌を200℃にて5分間加熱処理したときの加熱処理前(曲線73)および加熱処理後(曲線74)の蛍光スペクトルの測定結果であり、図6(A)が加熱処理前、図6(B)が加熱処理後の蛍光顕微鏡写真である。また、図7は、生物由来の粒子として、アオカビ菌を200℃にて5分間加熱処理したときの加熱処理前(曲線75)および加熱処理後(曲線76)の蛍光スペクトルの測定結果であり、図8(A)が加熱処理前、図8(B)が加熱処理後の蛍光顕微鏡写真である。また、生物由来の粒子として、スギ花粉を200℃にて5分間加熱処理したときの、図9(A)が加熱処理前、図9(B)が加熱処理後の蛍光顕微鏡写真である。これらに示されるように、他の生物由来の粒子でも大腸菌と同様に加熱処理によって蛍光強度が大幅に増加することが分かった。
これに対して、図10(A)および図10(B)は、それぞれ、蛍光を発する埃を200℃にて5分間加熱処理したときの加熱処理前(曲線77)および加熱処理後(曲線78)の蛍光スペクトルの測定結果であり、図11(A)が加熱処理前、図11(B)が加熱処理後の蛍光顕微鏡写真である。図10(A)に示された蛍光スペクトルと図10(B)に示された蛍光スペクトルとを重ねると図12に示されるように、これらはほぼ重なることが検証された。すなわち、図12の結果や図11(A)、図11(B)の比較に示されるように、埃からの蛍光強度は加熱処理の前後において変化がないことが分かった。
国際公開2011/104770号に開示された検出装置は、この現象を利用して空気中の粒子を捕集してその加熱前後の蛍光量の変化量と、予め記憶している生物由来の粒子量と蛍光量の変化量との間の対応関係とを比較して、検出装置に導入された空気中の生物由来の粒子量を検出するものである。
<課題の説明>
本願発明者らは、図13に示される検出装置100’を用いて国際公開2011/104770号に開示された方法に基づく図14に表わされた検出動作を行ない、検出結果を得た。
本願発明者らは、図13に示される検出装置100’を用いて国際公開2011/104770号に開示された方法に基づく図14に表わされた検出動作を行ない、検出結果を得た。
すなわち、図13を参照して、検出装置100’は、本実施の形態にかかる検出装置100のランプ92を有しない構成である。その他、図1と同じ参照符号の付された構成は、検出装置100の構成と同様である。
検出装置100’では、装置内に導入された外気に含まれる粒子が針状の放電電極1付近にて負に帯電され、放電電極1と捕集治具12との間に構成された電界によって捕集治具12に捕集される。
捕集治具12上に捕集された粒子は、発光素子6からのレーザ光等により蛍光を発する。蛍光は発光素子6によって検出される。
検出装置100’を用い、図14の検出動作を行なった。すなわち、図14を参照して、捕集前の捕集治具12からの蛍光強度を、初期蛍光強度として測定する(#1)。この蛍光強度を表わす信号値(Vm)をV0とする。
次に、放電電極1および捕集治具12に印加してファン50を駆動させる捕集動作を15分行なう(#2)。その後、捕集後の捕集治具12からの蛍光強度を測定する(#3)。この蛍光強度を表わす信号値(Vm)をV1とする。
その後、ヒータ91を駆動させて捕集治具12を200℃で2分間加熱する(#4)。そして、捕集治具12を冷却した後、加熱後の捕集前の捕集治具12からの蛍光強度を測定する(#5)。この蛍光強度を表わす信号値(Vm)をV2とする。
加熱による蛍光強度の増加分△V(=V2−V1)を、検出装置100’での検出値として算出する(#6)。
上記動作によって得られる信号値V0,V1,V2は、概ね、図15に示されたようになった。すなわち、加熱前の蛍光強度を表わす信号値V1よりも加熱後の蛍光強度を表わす信号値V2の方が大きくなるという結果が得られた。
これは、上述した検証結果から得られた検出原理に従って、空気中の粒子のうちの微生物等の生物由来の粒子は加熱によって蛍光強度が増加するためであると考察される。
しかしながら、測定環境によっては図16に表わされた検出結果も得られた。すなわち、図16を参照して、捕集後の信号値V1が大きく、ある程度の微生物が捕集されていると考えられるにもかかわらず、加熱後の信号値V2との差が小さいか同程度であるという結果が得られた。この場合、信号値に基づいて正確に生物由来の粒子の検出ができているかどうか疑わしいという課題が生じた。また、測定環境によっては、信号値V1が信号値V2よりも大きくなる場合もあった。
上述の検出原理より、初期の蛍光強度を表わす信号値V0に対して捕集後の蛍光強度を表わす信号値V1が増加するのは、捕集された生物由来の粒子からの蛍光に加えてその他捕集物の散乱などによる蛍光の増加と考えられる。加熱前の信号値V1は、生物由来の粒子からの蛍光に化学繊維などからの蛍光や散乱光等が加わったものであり、加熱後の信号値V2は、加熱によって増加した生物由来の粒子からの蛍光に化学繊維などからの蛍光や散乱光等が加わったものになる。このことから、捕集後の信号値からある程度の微生物の捕集が期待されるにもかかわらず、加熱後の信号値V2と加熱前の信号値V1との信号差が小さくなる要因として、加熱によって発生した捕集治具12表面の空気の熱対流や捕集した粒子の昇華等によって、捕集された生物に由来しない粒子の一部が消失することが考えられた。また、上記仮説では、信号値V2と信号値V1との関係は、測定環境中の生物由来粒子と埃との量的な関係に依存することから、測定環境により、上記関係が変わることが説明できる。
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、上記検出原理を利用してより精度よく生物由来の粒子を検出する検出装置および検出方法を提供することを目的とする。
<検出動作概要>
検出装置100では、上述の検出原理を利用しての検出動作を行なうにあたって、捕集治具12の加熱(以下、この加熱を「本加熱」とも称する)よりも以前に捕集後の捕集治具12に対して、捕集された粒子のうちの生物由来でない粒子を捕集治具12から熱離脱させるために予備加熱を行なう。予備加熱は、本加熱よりも以前に行なわれるものであって、本加熱よりも低い温度であったり、短い時間であったり、捕集治具12に与えられる熱量が少なくとも本加熱で与えられる熱量を超えない加熱を指す。
検出装置100では、上述の検出原理を利用しての検出動作を行なうにあたって、捕集治具12の加熱(以下、この加熱を「本加熱」とも称する)よりも以前に捕集後の捕集治具12に対して、捕集された粒子のうちの生物由来でない粒子を捕集治具12から熱離脱させるために予備加熱を行なう。予備加熱は、本加熱よりも以前に行なわれるものであって、本加熱よりも低い温度であったり、短い時間であったり、捕集治具12に与えられる熱量が少なくとも本加熱で与えられる熱量を超えない加熱を指す。
なお、以下の例では、本加熱の前に1回予備加熱がなされる、つまり、一連の検出動作に予備加熱1回および本加熱1回の2回の加熱のみが含まれるものとして説明しているが、予備加熱はトータルの熱量が本加熱での熱量を超えないような2回以上行なわれてもよい。つまり、一連の検出動作に複数回の加熱が行なわれればよい。
<機能構成>
図17は、上述の検出動作を行なうための検出装置100の機能構成を示すブロック図である。
図17は、上述の検出動作を行なうための検出装置100の機能構成を示すブロック図である。
図17では、信号処理部30の機能が主に電気回路であるハードウェア構成で実現される例が示されている。しかしながら、これら機能のうちの少なくとも一部は、信号処理部30が図示しないCPU(Central Processing Unit)を備え、該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される、ソフトウェア構成であってもよい。また、測定部40の構成がソフトウェア構成である例が示されている。しかしながら、これら機能のうちの少なくとも一部は、電気回路などのハードウェア構成で実現されてもよい。
図17を参照して、信号処理部30は、受光素子9に接続される電流−電圧変換回路34と、電流−電圧変換回路34に接続される増幅回路35とを含む。
測定部40は、制御部41、記憶部42、およびクロック発生部43を含む。さらに、測定部40は、ファン50、ヒータ91、およびランプ92を駆動させるための駆動部48とを含む。
測定部40の制御部41は発光素子6および受光素子9と電気的に接続され、後述するクロック発生部43からのクロック信号に基づいて予め規定されたタイミングでそれらのON/OFFを制御する。
受光素子9は捕集治具12からの蛍光を受光し、その受光量に応じた信号を信号処理部30に対して出力する。該信号は、電流−電圧変換回路34に入力される。
電流−電圧変換回路34は、受光素子9からの信号より蛍光強度を表わすピーク電流値Hを検出し、電圧値Ehに変換する。電圧値Ehは増幅回路35で予め設定した増幅率に増幅され、測定部40に対して出力される。
測定部40の制御部41は信号処理部30から電圧値Ehの入力を受け付けて、順次、記憶部42に記憶させる。
クロック発生部43はクロック信号を発生させ、制御部41に対して出力する。制御部41は、クロック信号に基づいて、予め規定され基づいたタイミングでファン50を回転させるための制御信号を駆動部48に対して出力して、ファン50による空気の導入を制御する。
また、制御部41は、クロック信号に基づいて予め規定されタイミングでヒータ91およびランプ92のON/OFFを制御する。
制御部41は計算部411を含み、計算部411において、記憶部42に記憶された電圧値Ehを用いて、導入された空気中の生物由来の粒子量が算出される。
<検出動作>
図18は、検出装置100での検出動作の概要を表わした図である。
図18は、検出装置100での検出動作の概要を表わした図である。
図18を参照して、始めに、捕集前の捕集治具12からの蛍光強度を初期蛍光強度として測定して、この蛍光強度を表わす信号値V0を得る(S1)。
次に、放電電極1および捕集治具12に印加してファン50を駆動させる捕集動作を規定時間、行なう(S2)。ここでは、一例として15分が挙げられる。なお、この捕集動作の後、参考値として捕集治具12からの蛍光強度を測定して、捕集後の蛍光強度を表わす信号値V1を得てもよい。
検出装置100での検出動作では、この後、ランプ92を点灯して捕集治具12を予備加熱として、所定量、加熱する(S3)。そして、予備加熱後に捕集治具12を冷却し、その後に、捕集治具12からの蛍光強度を測定して、予備加熱後の蛍光強度を表わす信号値V1’を得る(S4)。
その後、ヒータ91を駆動させて捕集治具12を本加熱として、所定量、加熱する(S5)。そして、捕集治具12を冷却した後、本加熱後の捕集前の捕集治具12からの蛍光強度を測定して、本加熱後の蛍光強度を表わす信号値V2を得る(S6)。
その後、本加熱による予備加熱後の蛍光強度からの蛍光強度の増加分△V(=V2−V1’)を、検出装置100での検出値として算出する(S7)。
<予備加熱の検証>
発明者らは、検出装置100での予備加熱の効果を検証するため、予備加熱の熱量を変化させて検出を行った。すなわち、15分間、導入された空気中の粒子を捕集した後、200℃で3秒、5秒、および10秒の各時間、予備加熱を行ない、捕集治具12を冷却した後に検出動作を検出装置100で行ない、その後、200℃で1分間、本加熱を行なう検出動作を検出装置100で行なった。
発明者らは、検出装置100での予備加熱の効果を検証するため、予備加熱の熱量を変化させて検出を行った。すなわち、15分間、導入された空気中の粒子を捕集した後、200℃で3秒、5秒、および10秒の各時間、予備加熱を行ない、捕集治具12を冷却した後に検出動作を検出装置100で行ない、その後、200℃で1分間、本加熱を行なう検出動作を検出装置100で行なった。
図19は、上記検出動作の各工程での検出結果を表わしており、各工程での検出結果として、予備加熱前の捕集治具12で捕集された粒子数N0を1として、N0に対する、予備加熱後の粒子数N1および本加熱後の粒子数N2それぞれの比率(N1/N0、N2/N0)を残留比率として表わしている。
図19の結果から、予備加熱後の粒子数N1の比率より、予備加熱がいずれの時間であっても予備加熱によって捕集治具12上の粒子数が初期の個数から減少することが分かる。
また、予備加熱後の粒子数N1の比率から本加熱後の粒子数N2の比率の変化より、予備加熱がいずれの時間であっても本加熱を行なうことで、従来では本加熱によって消失されていた粒子の大部分が本加熱前の予備加熱によって消失されることが分かった。
従って、上記の検出動作より、200℃で1分間の本加熱の前に200℃で3秒、5秒、および10秒のいずれの予備加熱も、本加熱での粒子の消失を抑えるという効果があることが検証された。
さらに、図20は、上記の検出動作の各工程での信号値を表わした図である。図20より、200℃で1分間の本加熱の前に200℃で3秒、5秒、および10秒のいずれの予備加熱を行なった場合も、本加熱後の信号値V2は、予備加熱後の信号値V1’よりも大きくなる結果が得られている。これより、信号値V1’から信号値V2の増加分△Vによって、生物由来の粒子を加熱したことによる蛍光量の増大が検出されていることが分かる。すなわち、検出装置100では、予備加熱を行なって予備加熱後の信号値V1’を基準値として本加熱後の信号値V2との差分△Vを用いて算出することで、生物由来の粒子の加熱に起因した信号値の変化が差分△Vとして検出できることが分かった。
<予備加熱による影響の補正>
一方で、予備加熱よって、捕集された生物由来の粒子の蛍光強度の増加が進行している可能性が考えられる。特に、予備加熱によって与えられる熱量が大きいほど蛍光強度の増加の進行度合いが高いと考えられる。
一方で、予備加熱よって、捕集された生物由来の粒子の蛍光強度の増加が進行している可能性が考えられる。特に、予備加熱によって与えられる熱量が大きいほど蛍光強度の増加の進行度合いが高いと考えられる。
そこで、好ましくは、この進行度合いを予め確認しておき、その進行度合いを用いて蛍光強度の増加分を表わす差分△V(=|V2−V1’|)を補正することで、より精度よく生物由来の粒子量を検出することができる。
ここで、進行度合いを表わす係数として、蛍光強度の増加率αを用いる。増加率αは、一例として、予め検出動作を行なって予備加熱前(捕集後)の信号値V1、予備加熱後の信号値V1’、および本加熱後の信号値V2を用い、本加熱後の信号値V2の予備加熱前(捕集後)の信号値V1からの増加量を△V0(=|V2−V1|)、予備加熱後の信号値V1’の予備加熱前(捕集後)の信号値V1からの増加量を△V1’(=V1’−V1)とすると、増加率αは、
α=△V1’/△V0=(|V1’−V1|)/(|V2−V1|) …式(1)
で定義される。
α=△V1’/△V0=(|V1’−V1|)/(|V2−V1|) …式(1)
で定義される。
すなわち、蛍光強度の増加率αは、予備加熱前(捕集後)の蛍光強度からの予備加熱後の蛍光強度の増加の、予備加熱前の蛍光強度からの本加熱後の蛍光強度の増加に対する割合に相当する。
増加率αは、予め検出装置100で上述の検出動作を行なって各工程の信号値V1、V1’、およびV2を得ておくことで、上記式(1)を用いて予め算出しておくことができる。
そして、本加熱での蛍光増加から予備加熱での蛍光増加の影響を排する補正式として、増加率αを用いて、
△V=(V2−V1’)/(1−α) …式(2)
が得られる。
△V=(V2−V1’)/(1−α) …式(2)
が得られる。
測定部40の記憶部42に予め増加率αを記憶させておくことで、計算部411は、上記式(2)に算出された増加率αを適用して蛍光強度の増加分を補正することができる。すなわち、加熱による生物由来の粒子の蛍光強度の変化を表わす信号値の差分△Vを得ることができる。そして、補正された差分を用いて粒子量を算出することで、予備加熱による蛍光増加の影響を排して生物由来の粒子量を検出することができる。
<標準微生物への換算>
信号値の差分△Vで表わされる蛍光の増大量△Fと生物由来の粒子量Cとの対応関係は、粒子の種類(たとえば菌種)によって異なる可能性がある。そこで、好ましくは、いずれかの生物由来の粒子を標準微生物と規定して、増大量△Fと該標準微生物量との対応関係を用いて検出結果を標準微生物量の検出結果へと換算する。標準微生物での本加熱後の信号値V2と予備加熱後の信号値V1’との差分△Vは、標準微生物量Cへ換算するための係数βを用いて、
C=β△V=β(V2−V1’) …式(3)
によって得られる。これにより、様々な環境における生物由来の粒子量が、標準微生物を基準として換算された粒子量として算出される。その結果、様々な環境を比較することが可能となり、環境管理が容易となる。式(3)は、一次式でも良く、この場合、切片は検出装置の検出限界を示す。
信号値の差分△Vで表わされる蛍光の増大量△Fと生物由来の粒子量Cとの対応関係は、粒子の種類(たとえば菌種)によって異なる可能性がある。そこで、好ましくは、いずれかの生物由来の粒子を標準微生物と規定して、増大量△Fと該標準微生物量との対応関係を用いて検出結果を標準微生物量の検出結果へと換算する。標準微生物での本加熱後の信号値V2と予備加熱後の信号値V1’との差分△Vは、標準微生物量Cへ換算するための係数βを用いて、
C=β△V=β(V2−V1’) …式(3)
によって得られる。これにより、様々な環境における生物由来の粒子量が、標準微生物を基準として換算された粒子量として算出される。その結果、様々な環境を比較することが可能となり、環境管理が容易となる。式(3)は、一次式でも良く、この場合、切片は検出装置の検出限界を示す。
さらに、上述のように予備加熱による蛍光増加の影響を排すると、上記式(3)は上述の蛍光強度の増加率αを用いて、
C=β(V2−V1’)/(1−α) …式(4)
となる。
C=β(V2−V1’)/(1−α) …式(4)
となる。
発明者らは、標準微生物へ換算するための係数βを特定するため、検出装置100を用いて次の要領で蛍光量を測定した。すなわち、1m3のチャンバー内で検出装置100を用いて、チャンバー内をヘパフィルターにてクリーンにした後、アオカビを空気中に飛散させ検出装置100で静電捕集して200℃で5秒間、および10秒間の各時間、予備加熱を行ない、その後、200℃で1分間の本加熱を行なって各工程の蛍光量を測定した。
図21はこの検出での結果を表わした図である。図21を参照して、予備加熱を200℃で5秒間行なった場合には、蛍光強度の増加率αは0.49、予備加熱を200℃で10秒間行なった場合には、蛍光強度の増加率αは0.65と算出された。
200℃で5秒間予備加熱を行なった場合の結果から得られる増加率αを用いて、標準微生物をアオカビとして測定結果を換算すると、
C=β(V2−V1’)/(1−0.65) …式(5)
となる。
C=β(V2−V1’)/(1−0.65) …式(5)
となる。
図22は、1m3のチャンバー内で検出装置100を用いて、チャンバー内をヘパフィルターにてクリーンにした後、アオカビを空気中に飛散させ、蛍光強度を測定したときの、アオカビの噴霧濃度Cと信号値[mV]との関係を示した図である。図22の横軸(x軸)は信号値[mV]、縦軸(y軸)はパーティクルカウンタにより求めたアオカビの濃度である。
図22より、アオカビの噴霧濃度Cと信号値[mV]との実測値の近似線がy=102.15xで得られており、これから、アオカビを標準微生物とした場合の係数βは、β=102個/m3/mVで得られる。
標準微生物とする生物由来の粒子の種類ごとに上記測定を行なうことで、標準微生物とする生物由来の粒子の種類ごとに係数βが得られる。測定部40の記憶部42に、予め標準微生物ごとの係数βを記憶させておくことで、計算部411は、指定された微生物を標準微生物として測定された蛍光強度の差分を換算することができる。そして、換算された差分を用いて粒子量を算出することで、標準微生物とした場合の粒子量を検出することができる。
さらに、その際に、上記蛍光強度の増加率αを用いることで、予備加熱による蛍光増加の影響を排して標準微生物とした場合の粒子量を検出することができる。
<実施の形態の効果>
発明者らは、検出装置100で本加熱の前に予備加熱を行なう効果を検証するため、検出装置100にアオカビを噴霧し、125℃、150℃で、それぞれ、5分間、1分間、予備加熱を行ない、その後に200℃で1分間の本加熱を行なう検出動作を行なった。図23は125℃の予備加熱を行なう場合の各工程での蛍光強度の測定結果を表わし、図24は150℃の予備加熱を行なう場合の各工程での蛍光強度の測定結果を表わしている。
発明者らは、検出装置100で本加熱の前に予備加熱を行なう効果を検証するため、検出装置100にアオカビを噴霧し、125℃、150℃で、それぞれ、5分間、1分間、予備加熱を行ない、その後に200℃で1分間の本加熱を行なう検出動作を行なった。図23は125℃の予備加熱を行なう場合の各工程での蛍光強度の測定結果を表わし、図24は150℃の予備加熱を行なう場合の各工程での蛍光強度の測定結果を表わしている。
図23を参照して、125℃で予備加熱を行なった場合、予備加熱後の信号値V1’は予備加熱前(捕集後)の信号値V1からいったん小さくなり、その後、本加熱によって信号値V2に増加している。このとき、本加熱後の信号値V2はいずれも予備加熱前(捕集後)の信号値V1よりも小さい。
従って、もしも予備加熱を行なっていなかったら、本加熱前後の信号値の差分△V(=V2−V1)は小さい値となり、正確に生物由来の粒子量が検出されない。
しかしながら、検出装置100では予備加熱を行なって予備加熱後と本加熱後との信号値の差分△V(=V2−V1’)を用いることで生物由来の蛍光増加を反映した値が得られている。
従って、この予備加熱の例の場合、予備加熱を行なうことで精度よく生物由来の粒子量を検出することが可能となったことが検証された。
また、図24で表わされた150℃で予備加熱を行なった場合も、同様に、予備加熱を行なっていなかったら本加熱前後の信号値の差分△V(=V2−V1)はいずれの場合も小さい値となるのに対して、予備加熱を行なって予備加熱後と本加熱後との信号値の差分△V(=V2−V1’)を用いることで生物由来の蛍光増加を反映した値が得られている。
従って、この予備加熱の例の場合も、予備加熱を行なうことで精度よく生物由来の粒子量を検出することが可能となったことが検証された。
すなわち、これらの検証より、検出装置100での検出では、捕集された粒子のうち、蛍光を発し、かつ、加熱により飛散または昇華等して消失する生物由来でない粒子が、予備加熱によって、本加熱よりも以前に消失させることができる。そのため、本加熱での蛍光強度の変化から上述の生物由来でない粒子の寄与を抑えることができ、より精度よく、蛍光強度の変化を用いて生物由来の粒子量を検出することができる。
なお、上記式(1)を用いて、この検出で得られた125℃、150℃それぞれの予備加熱での、200℃で1分間の本加熱に対する蛍光強度の増加率αをそれぞれ算出し、その結果が図25に示されている。
図25を参照して、蛍光強度の増加率αは125℃、150℃それぞれの予備加熱において、加熱時間に概ね比例して増加することが分かった。つまり、予備加熱の時間が長いほど、本加熱での蛍光増加に予備加熱での蛍光増加がより大きく影響を及ぼすことが分かった。また、予備加熱の温度が高いほど、本加熱での蛍光増加に予備加熱での蛍光増加がより大きく影響を及ぼすことが分かった。
なお、125℃、150℃いずれの予備加熱でも蛍光強度の増加率αは20%以下である。そのため、アオカビに関しては、予備加熱による本加熱での蛍光増加に対する影響を排除するための補正は不要とすることが可能であることが分かった。
なお、予備加熱条件(予備加熱温度、予備加熱時間)については、使用環境や対象とする生物由来の粒子の種類(微生物の種類)等に応じて実験的に予め設定するものであるが、発明者らは、予備加熱条件(予備加熱温度、予備加熱時間)様々として検出装置100での検出動作を行なうことで、予備加熱温度については、100℃〜250℃の範囲で、かつ、本加熱温度を超えないように設定されることが効果的であることが検証された。より、好ましくは125℃〜200℃の範囲で設定されるものであることが得られた。
予備加熱時間は、設定温度に対して実験的に設定されるものであるが、通常1秒〜30分の範囲で設定されるものとする。好ましくは、発明者らの検出によって5秒〜5分の範囲で設定されるものであることが得られた。
なお、本加熱温度は、100℃から250℃の範囲で設定され、好ましくは150℃〜200℃の範囲で設定されるものとする。本加熱時間は、30秒〜30分の範囲で設定され、好ましくは1分〜10分の範囲で設定される。
従来、捕集板上に生物由来の粒子以外の粒子が付着することによる散乱光の入光を抑えて検出精度を向上させる仕組みとしてフィルターを設ける構成が一般的になされている。しかしながら、本検出装置100では、上述のように、好適には300nmから450nmの波長のレーザ光(いわゆるブルーレーザ光)が用いられ、レーザ光中にはグリーンの成分が微量含まれていることが知られている。そこで、従来の検出装置のようにフィルタのみを用いる場合、捕集板上の粒子による散乱光中のグリーン成分がフィルタを透過して入光するため、検出結果に影響を及ぼすことになる。すなわち、フィルタのみでは捕集板上の粒子による散乱光の影響を完全に除去することが難しい。
これに対して、本実施の形態にかかる検出装置100では本加熱の前に予備加熱を行なうことで捕集された粒子のうち、蛍光を発し、かつ、加熱により飛散または昇華等して消失する生物由来でない粒子を、本加熱よりも以前に消失させる構成であるため、この粒子の散乱光の影響を除去することができ、より検出精度を向上させることができる。
<変形例>
上述のように、検出装置100では、捕集された粒子のうち、蛍光を発するか、または回折、散乱を起こし、かつ、加熱により飛散または昇華等して消失する生物由来でない粒子を、予備加熱により予め消失させることである。
上述のように、検出装置100では、捕集された粒子のうち、蛍光を発するか、または回折、散乱を起こし、かつ、加熱により飛散または昇華等して消失する生物由来でない粒子を、予備加熱により予め消失させることである。
このような生物由来でない粒子は、埃が多い環境下で多く存在し、少ない環境下では、少ないと考えられる。そのため、変形例として、検出環境に応じて予備加熱の条件を制御する検出装置100Aについて説明する。
図26は、変形例にかかる検出装置100Aの構成の具体例を示す図である。
図26を参照して、変形例にかかる検出装置100Aは、測定部40に通信部60が接続されており、埃センサ81、空気導入機構82、および通信部83を有する検知装置80をさらに含む。その他の構成は、検出装置100の構成と同様とすることができる。
図26を参照して、変形例にかかる検出装置100Aは、測定部40に通信部60が接続されており、埃センサ81、空気導入機構82、および通信部83を有する検知装置80をさらに含む。その他の構成は、検出装置100の構成と同様とすることができる。
なお、図26では、検知装置80が筐体5Aや筐体5Bの外部に設けられる例が示されているが、いずれか筐体内部に設けられてもよい。
また、生物由来粒子の検出装置が搭載される空気清浄機などの空調機器に内蔵された埃センサを利用してもよい。
埃センサ81は、一般的な構成のものを採用することができる。一例として、特開2000−356583号公報等に開示されている埃センサを採用するものとして説明する。
具体的には、埃センサ81は発光素子および受光素子を内包し、検出領域からの反射光を用いて埃を検出する。
発光素子からは所定のパルス周期T・パルス幅Pwのパルス光が照射され、検出領域から発生する反射光つまり被検出物(ほこりや煙粒子)で反射された反射パルス光が受光素子で検出される。その検出信号(パルス信号)は発光素子の出力パルス光のパルス周期Tと同期したタイミングで採り込まれ、その採取した信号のレベル(パルス波高値)と、予め記憶されている基準レベルとの比較に基づいて埃等の有無が判定される。そして、受光素子からのパルス信号のレベルに基づいて埃量が測定されて、通信部83で測定部40に送信される。
検出装置100Aでは、通信部60が検知装置80の通信部83と通信することで、測定部40は検知装置80で得られた検出環境における埃量を得る。
検知装置80の通信部83と測定部40の通信部60との間の通信は無線であっても有線であってもよい。
測定部40の記憶部42には、予め埃量に応じた予備加熱温度、予備加熱時間などの予備加熱条件が記憶されており、制御部41は、得られた埃量に対応した予備加熱条件を特定して、その条件となるように駆動部48に制御信号を出力する。なお、予備加熱条件の内には、予備加熱の要否も含まれる。
このような制御がなされることで、変形例にかかる検出装置100Aは、室内など環境の変化の少ない場所では、予め設定した予備加熱条件で検出動作を行ない、埃の多い場所では、より熱量の多い(長時間、高温)の予備加熱とすることができる。
すなわち、このようにすることで、検出装置100Aを用いて様々な環境下で検出を行なった場合であっても、環境の影響を抑え、より精度のよい検出結果を得ることが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 放電電極、2 高圧電源、5A,5B 筐体、5B’ 回転部材、6 発光素子、6A,9A ガイド、9 受光素子、10 導入孔、11 排出孔、12 捕集治具、12A 捕集ユニット、15 照射領域、30 信号処理部、34 電圧変換回路、35 増幅回路、40 測定部、41 制御部、42 記憶部、43 クロック発生部、48 駆動部、50 ファン、60,83 通信部、71,72,73,74,75,76,77,78 曲線、80 検知装置、81 埃センサ、82 空気導入機構、91 ヒータ、92 ランプ、100,100A 検出装置、411 計算部。
Claims (8)
- 導入された空気中の粒子を加熱するための加熱部と、
発光素子と、
蛍光を受光するための受光素子と、
前記加熱部での加熱を制御するための制御部と、
前記受光素子での受光量を用いて前記導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出するための検出部とを備え、
前記制御部は、前記加熱部でN回(NはN≧2の整数)、前記導入された空気中の粒子を加熱し、
前記検出部は、前記N回の加熱のうちの2回目以降の加熱であるM回目(Mは2≦M≦Nの整数)の加熱の前後での前記受光素子での受光量の変化量に基づいて、前記導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する、検出装置。 - 前記検出部は、前記M回目をN回目として、前記N回の加熱のうちのN回目の加熱の前後での前記受光素子での受光量の変化に基づいて前記導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出し、
前記制御部は、前記N回の加熱のうちの1回目〜(N−1)回目の加熱で前記空気中の粒子に与えられる熱量の総量が、N回目の加熱で前記空気中の粒子に与えられる熱量よりも小さくなるよう、前記加熱部での1回目〜(N−1)回目の加熱を制御する、請求項1に記載の検出装置。 - 前記検出部は、前記N回の加熱のうちの(M−1)回目までの加熱後の前記受光量の変化量の、前記M回目の加熱後の前記受光量の変化量に対する割合を用いて、前記M回目の加熱の前後での前記受光素子での受光量の変化量を補正する、請求項1または2に記載の検出装置。
- 前記検出部は、予め記憶している、生物由来の粒子の種類に応じた粒子量と前記受光素子での受光量との関係を用いて、前記M回目の加熱の前後での前記受光素子での受光量の変化量を指定された生物由来の粒子の種類での変化量に換算する、請求項1〜3のいずれかに記載の検出装置。
- 前記導入された空気中の埃量の検出結果を入力するための入力部をさらに備え、
前記制御部は、予め記憶している、埃量と前記加熱部での加熱量との関係を用いて、前記加熱部でN回の加熱の条件を特定する、請求項1〜4のいずれかに記載の検出装置。 - 前記導入された空気中の粒子を捕集するための捕集部材をさらに備え、
前記加熱部は、前記捕集部材を、前記発光素子および前記受光素子から遠い側より加熱する、請求項1〜5のいずれかに記載の検出装置。 - 前記導入された空気中の粒子を捕集するための捕集部材をさらに備え、
前記加熱部は、前記捕集部材を前記発光素子および前記受光素子から遠い側より加熱するための第1の加熱部と、前記捕集部材を前記発光素子および前記受光素子から近い側より加熱するための第2の加熱部とを含み、
前記制御部は、前記M回目の加熱では前記第1の加熱部を用いて前記捕集部材を加熱し、それ以外の加熱では前記第2の加熱部を用いて前記捕集部材を加熱する、請求項1〜5のいずれかに記載の検出装置。 - 導入された空気中の粒子を加熱するための加熱部と、発光素子と、蛍光を受光するための受光素子とを含んだ検出装置を用いて、前記導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出する方法であって、
前記加熱部でN回(NはN≧2の整数)、前記導入された空気中の粒子を加熱するステップと、
前記N回の加熱のうちの2回目以降の加熱であるM回目(Mは2≦M≦Nの整数)の加熱の前後での前記受光素子での受光量の変化量に基づいて、前記導入された空気中の粒子から生物由来の粒子を検出するステップとを備える、検出方法。
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