JP5925519B2 - 粒子検出装置 - Google Patents

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Description

この発明は粒子検出装置に関し、特に、生物由来の粒子を検出する粒子検出装置に関する。
生物由来の粒子である微生物を計数する装置として、たとえば特開2008−1287935号公報(以下、特許文献1)は、メンブレンフィルタなどの捕集手段の表面に微生物を固定して蛍光染色試薬を浸透させて、蛍光色素に対してレーザ光などの励起光を照射してその表面の蛍光像を取得し、蛍光像から発光点を抽出することで微生物を検出する技術を開示している。
特開2008−187935号公報
生物由来の粒子に励起光を照射して粒子からの蛍光を検知する手法において、励起光が受光部に到達するとノイズとなり、受光部における蛍光の検出感度が悪化する。特許文献1のように光源としてレーザ光源を利用する場合であってもノイズとなる成分は存在するものであり、特に高感度の測定ではそのノイズ成分が蛍光の検出感度へ影響する。
こうしたノイズ成分は、フィルタによる励起光の分離だけでは限度があり、十分な蛍光の検出感度を得られない場合がある。特に、高感度の測定では、検出精度の低下を招くことになる。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、高感度で生物由来の粒子を検出する粒子検出装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、粒子検出装置は、主表面を有し、主表面上に粒子を捕集するための捕集部材と、主表面上に捕集された粒子に励起光を照射するための照射部と、励起光を主表面上に捕集された粒子に照射することで粒子から発される蛍光を受光するための受光部と、主表面上に捕集された粒子を加熱するための加熱部と、加熱部による粒子への加熱前後での、受光部での蛍光強度の増加量に基づいて主表面上に捕集された粒子から生物由来の粒子を検出するための検出部とを備え、照射部と主表面との間に設置された、生物由来の粒子からの蛍光の波長成分のうちの加熱処理を施すことによって強度が増加する波長成分をカットするためのフィルタをさらに備える。
好ましくは、主表面は鏡面であって、励起光は主表面で鏡面反射する。
好ましくは、フィルタはローパスフィルタである。
より好ましくは、ローパスフィルタのカットオフ波長λsはλs≧430nmである。
好ましくは、粒子検出装置は主表面と受光部との間に設置されたハイパスフィルタをさらに備え、ローパスフィルタのカットオフ波長λsとハイパスフィルタのカットオフ波長λ1とはλ1≧λsを満たす。
この発明によると、高感度で生物由来の粒子を検出することができる。
加熱前後における生物由来の粒子の蛍光強度の変化と、加熱前後における粉塵の蛍光強度の変化とを示すグラフである。 生物由来の粒子を検出する捕集工程を示す図である。 生物由来の粒子を検出する蛍光測定工程(加熱前)を示す図である。 生物由来の粒子を検出する加熱工程を示す図である。 生物由来の粒子を検出する蛍光測定工程(加熱後)を示す図である。 生物由来の粒子を検出するリフレッシュ工程を示す図である。 加熱前後の蛍光強度の増大量ΔFと、生物由来の粒子濃度との関係を示すグラフである。 本実施の形態にかかる粒子検出装置での、理想状態での検出状態を説明するための図である。 クリーニング残渣による迷光の増加と蛍光強度のダイナミックレンジとの関係を表わした図である。 加熱前のクリーニング残渣のある捕集基板の表面の顕微鏡写真である。 加熱後のクリーニング残渣のある捕集基板の表面の顕微鏡写真である。 クリーニング残渣による加熱前後での迷光量の変化と蛍光強度の測定誤差との関係を表わした図である。 ロングパスフィルタのフィルタ特性の具体例を示すグラフである。 図13の曲線(2)に表わされた励起光の光スペクトル強度の低い部分を拡大して表わした図である。 実施の形態にかかる粒子検出装置の外観を示す斜視図である。 図15に示す粒子検出装置の分解状態を示す斜視図である。 粒子検出装置の構成の詳細を示す分解斜視図である。 粒子検出装置の断面図である。 粒子検出装置に含まれる光学系による光の挙動を示す模式図である。 基板の主表面における光の反射を示す模式図である。 粒子検出装置の励起光学系に含まれるフィルタのフィルタ特性の具体例を示すグラフである。 フレネルレンズの断面を示す模式図である。 粒子検出装置の受光光学系に含まれるフィルタのフィルタ特性の具体例を示すグラフである。 粒子検出装置の動作の流れを示すフローチャートである。 アオカビ菌の蛍光スペクトルの加熱処理前後の時間変化を示す図である。 蛍光発光する埃の加熱処理前の蛍光スペクトルを示す図である。 蛍光発光する埃の加熱処理後の蛍光スペクトルを示す図である。 粒子検出装置を含む空気清浄機の外観の具体例を示す図である。 空気清浄機の機能構成の具体例を示すブロック図である。 励起光学系に含まれるフィルタおよび受光光学系に含まれるフィルタのいずれもない状態(状態1)、前者のフィルタのみを設けて後者のフィルタを設けていない状態(状態2)、および両フィルタを設けた状態(状態3)の3つの状態で、迷光量を測定した結果を表わすグラフである。 励起光学系に含まれるフィルタおよび受光光学系に含まれるフィルタのいずれもない状態(状態1)、前者のフィルタのみを設けて後者のフィルタを設けていない状態(状態2)、および両フィルタを設けた状態(状態3)の3つの状態で、基板10で所定量のカビ菌を捕集した状態での蛍光強度を測定した結果を表わすグラフである。 受光光学系に含まれるフィルタであるIR(赤外線)フィルタとして4種類のフィルタ特性を表わした図である。 図32に表わされた4種類のフィルタそれぞれを用いたときの迷光量および蛍光強度の測定結果を表わしたグラフである。
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
[生物由来の粒子の検出原理について]
本実施の形態における粒子検出装置は、花粉や微生物、カビといった生物由来の粒子を検出するための装置である。最初に、本実施の形態における粒子検出装置を用いて生物由来の粒子を検出する原理について説明する。
図1は、加熱前後における生物由来の粒子の蛍光強度の変化と、加熱前後における粉塵の蛍光強度の変化とを示すグラフである。
空気中に浮遊する生物由来の粒子に紫外光または青色光を照射すると、生物由来の粒子は蛍光を発する。しかしながら、空気中には化学繊維の埃など(以下、粉塵ともいう)の、同様に蛍光を発する粒子が浮遊しており、蛍光を検出するのみでは、生物由来の粒子からのものであるのか粉塵からのものであるのかが区別されない。
一方、図1中に示すように、生物由来の粒子および粉塵に対してそれぞれ加熱処理を施し、加熱前後における蛍光強度(蛍光量)の変化を測定すると、粉塵から発せられる蛍光強度が加熱処理によって変化しないのに対して、生物由来の粒子から発せられる蛍光強度は、加熱処理によって増加する。本実施の形態における粒子検出装置では、生物由来の粒子と粉塵とが混合する粒子に対して、加熱前後の蛍光強度を測定し、その差分を求めることにより、生物由来の粒子の量を特定する。
図2〜図6は、生物由来の粒子を検出する工程を示す図である。図2を参照して、まず、粒子を捕集基板510に捕集する(捕集工程)。
本工程では、捕集基板510を静電針530に対向配置するとともに、捕集基板510および静電針530間に電位差を生じさせる。ファン500の駆動により、空気を捕集基板510に向けて導入すると、空気中に浮遊する粒子600は、静電針530の周囲にて帯電される。帯電された粒子600は、静電気力によって捕集基板510の表面に吸着される。捕集基板510に捕集された粒子600には、生物由来の粒子600Aと、化学繊維の埃などの粉塵600Bとが含まれる。
図3を参照して、次に、加熱前の粒子600から発せられる蛍光の強度を測定する(蛍光測定工程(加熱前))。本工程では、半導体レーザなどの発光素子550から捕集基板510に捕集された粒子600に向けて励起光を照射するとともに、粒子600から発せられた蛍光をレンズ560を通じて受光素子565にて受光する。
図4を参照して、次に、ヒータ520を用いて、捕集基板510に捕集された粒子600を加熱する。加熱後、捕集基板510を冷却する(加熱工程)。
図5を参照して、次に、加熱後の粒子600から発せられる蛍光の強度を測定する(蛍光測定工程(加熱後))。既に説明したように、粉塵600Bから発せられる蛍光強度が加熱処理によって変化しないのに対して、生物由来の粒子600Aから発せられる蛍光強度は、加熱処理によって増加する。このため、本工程では、図3中の蛍光測定工程(加熱前)で測定された蛍光強度よりも大きい値の蛍光強度が測定される。
図7は、加熱前後の蛍光強度の増大量ΔFと、生物由来の粒子濃度との関係を示すグラフである。図7を参照して、加熱前の蛍光強度と加熱後の蛍光強度との差から、蛍光強度の増大量ΔF1を算出する。予め用意した蛍光強度の増大量ΔFと生物由来の粒子濃度Nとの関係に基づき、算出された増大量ΔF1に対応する生物由来の粒子濃度N1を特定する。なお、増大量△Fと生物由来の粒子濃度Nとの対応関係は、予め実験的に決められる。
図6を参照して、次に、生物由来の粒子の検出を終えた粒子600を図示しないブラシで掻き出すことで捕集基板510から除去する(リフレッシュ工程)。
[課題の説明]
本実施の形態における粒子検出装置では上述の検出原理を利用して、花粉や微生物、カビといった生物由来の粒子を検出する。その際に半導体レーザなどの発光素子550から照射光にはノイズ成分が含まれ、そのノイズ成分が迷光として受光素子565での受光強度に含まれることになる。
図8は、理想状態での検出状態を説明するための図である。すなわち、図8を参照して、理想状態では、加熱前後の差分をとることで迷光成分が除去されて、加熱前後の蛍光強度の増加分のみが検出されることになる。
しかしながら、図6で表わされたリフレッシュ工程において図示しないブラシでのクリーニングで粒子600が完全に捕集基板510から除去されない場合、捕集基板510表面に残渣が蓄積されることになる。
クリーニング残渣が増加すると迷光が増加するという第1の課題が生じる。迷光の増加により蛍光強度のダイナミックレンジが低下することになる。
図9は、クリーニング残渣による迷光の増加と蛍光強度のダイナミックレンジとの関係を表わした図である。図9を参照して、クリーニング残渣に起因して迷光が増加すると、検出される蛍光強度のダイナミックレンジが低下し、蛍光強度の検出には不足する。これにより、蛍光強度の測定精度が低下することになる。
また、クリーニング残渣のサイズ(形状)が加熱によって変化することがある。図10および図11は、それぞれ、加熱前後のクリーニング残渣のある捕集基板510の表面の顕微鏡写真である。図10および図11に表わされるように、加熱によってクリーニング残渣の粒子サイズ(形状)が変化することが分かる。このため、クリーニング残渣によって加熱前後の迷光量が変化するという第2の課題が生じる。加熱前後での迷光量の変化は蛍光強度の測定誤差の増加を招くことになる。
図12は、クリーニング残渣による加熱前後での迷光量の変化と蛍光強度の測定誤差との関係を表わした図である。図12を参照して、加熱後の迷光量が加熱前の迷光量よりも低下することで、その減少分で蛍光強度の増加分が相殺されて蛍光の増加分が実際の増加分よりも少なく測定されることになる、という測定誤差が生じる。
上記第1の課題および第2の課題を解消する最も簡単な方法としてはクリーニング残渣をなくすことが挙げられる。このためにはブラシの性能を向上させることが必要であるが、捕集される粒子のみならず静電捕集時にオゾンに起因して硝酸や硝酸性化合物が捕集基板に生成されるものであるため、それらを完全に除去することは困難である。
そこで、本実施の形態にかかる粒子検出装置では、クリーニング残渣が捕集基板上に存在していても迷光とならないような光学系を備えることで、検出精度へのクリーニング残渣の影響を抑える。
クリーニング残渣によって迷光が発生する第1の原因としては、クリーニング残渣の凹凸により励起光が散乱されることが挙げられる。
上記第1の原因への対処として、受光素子の手前にロングパスフィルタを設置して励起光の受光素子への入光を遮断することが考えられる。図13は、ロングパスフィルタのフィルタ特性の具体例を示すグラフである。図13のグラフの横軸は光の波長を示す。波長の単位はnmである。図13のグラフの縦軸はフィルタの透過率および光のスペクトル強度を示す。フィルタの透過率の単位は%である。光のスペクトル強度は、励起光または蛍光のスペクトル強度が最大となる波長を100としたときの、各波長でのスペクトル強度の相対値を示す。図13中の曲線(1)がロングパスフィルタのフィルタ特性、曲線(2)が半導体レーザ素子による励起光のスペクトル強度、曲線(3)が励起光を照射された青カビ菌から発せられる蛍光のスペクトル強度を示す。
曲線(1)に示すフィルタ特性によると、ロングパスフィルタは、約440nm以下の波長を有する光をほぼ遮断し、約500nm以上の波長を有する光をほぼ透過させる特性を有する。ロングパスフィルタは、所定のしきい値以下の波長の光を遮り、当該しきい値以上の波長の光を透過させる、ハイパスフィルタ(またはローカットフィルタ)としての特性を有する。
曲線(2)に示すように、半導体レーザによる励起光は、約400nmの波長に光スペクトル強度のピーク値を有する。一方曲線(3)に示すように、青カビ菌からの蛍光Fは、約460nm以上の波長域においてスペクトルが測定され、約530nmの波長に光スペクトル強度のピーク値を有する。
曲線(1)のフィルタ特性を有するロングパスフィルタを用いることにより、曲線(2)に示す光スペクトル強度を有する励起光の大半がロングパスフィルタに吸収されて、受光素子への入光が概ね遮断される。一方、曲線(3)に示す光スペクトル強度を有する蛍光は光スペクトル強度をほぼ維持したまま受光素子へ入光する。
図14は、図13の曲線(2)に表わされた励起光の光スペクトル強度の低い部分を拡大して表わした図である。図14に表わされたように、曲線(2)に示される半導体レーザによる励起光は長波長側に微弱な低い成分を有する。この励起光に含まれる微弱な長波長成分は曲線(1)のフィルタ特性を有するロングパスフィルタでは遮断されないため、迷光の主要因であると考えられる。
そこで、本実施の形態にかかる粒子検出装置では、上記第1の原因への対処としてローパスフィルタ(またはハイカットフィルタ)を利用して、励起光の長波長成分の受光素子への入光を遮断する。
次に、クリーニング残渣による迷光の発生の第2の原因としてクリーニング残渣が励起光が照射されることで蛍光を発することが挙げられる。先述のように、上記原理を利用して粒子を捕集する際に捕集基板510および静電針530間に高電圧が印加されてコロナ放電されることでオゾンが発生する。オゾン生成時には窒素酸化物が生成され、その窒素酸化物が空気中の水分と反応することで硝酸が生成される。生成された硝酸は捕集基板に固着する。または、硝酸塩のような硝酸性化合物として捕集基板上に蓄積される。硝酸や硝酸性化合物は蛍光体であり、レーザ光が照射されることで赤外成分を多く含む蛍光を発することが知られている。
そこで、本実施の形態にかかる粒子検出装置では、上記第1の原因への対処として受光素子の手前にIR(赤外線)カットフィルタを設けて、受光素子への赤外成分の入光を遮断する。
[粒子検出装置の全体構造]
図15は、本実施の形態における粒子検出装置1の外観を示す斜視図である。図16は、図1に示す粒子検出装置1の分解状態を示す斜視図である。図17は、粒子検出装置1の構成の詳細を示す分解斜視図である。本実施の形態における粒子検出装置1は、花粉や微生物、カビといった生物由来の粒子を検出するための装置である。
本実施の形態における粒子検出装置1は、第一筐体としての上キャビネット2と、第二筐体としての下キャビネット5とを備える。上キャビネット2は、略矩形の平板形状を有する。下キャビネット5は、底を有しかつ一方向に開口する、略直方体の容器形状を有する。上キャビネット2が下キャビネット5の開口を蓋状に閉塞するように、上キャビネット2と下キャビネット5とが組み付けられて、略直方体の外形を有する中空のキャビネットが形成される。
捕集部60、励起光学系20、受光光学系30および清掃部96などの、粒子検出装置1を構成する各機器は、ファン92を除き、キャビネットの内部に収容される。一例として、キャビネットは、60mm×50mm(上キャビネット2の縦、横)×30mm(高さ)の大きさを有する。
上キャビネット2には、筒状部材としての捕集筒4が一体に形成されている。捕集筒4は、中空の円筒形状を有し、その一端が上キャビネット2の下面に取付けられて、上キャビネット2から粒子検出装置1の内部に向けて延びている。上キャビネット2には、上キャビネット2の一部を厚み方向に貫通する導入部3が形成されており、導入部3を介して粒子検出装置1の外部と捕集筒4の内部とが連通している。捕集筒4は、後述する静電針62を取り囲むように設けられている。粒子を含む空気は、導入部3から捕集筒4の内側へ導入される。捕集筒4は、静電針62と対向して位置決めされた基板10に向けて、粒子を含む空気を案内する。
ファン92は、下キャビネット5の底面外側に取付けられている。ファン92が取り付けられた下キャビネット5の底面には、開口部が形成されている。この開口部は、捕集筒4と向かい合う範囲と、後述するブラシ97と向かい合う範囲とを含むように開口し、捕集筒4と向かい合う範囲とブラシ97と向かい合う範囲とで連続的に形成されている。
ファン92は、正転方向および反転方向に回転駆動可能である。ファン92が正転方向に駆動されることにより、粒子検出装置1の内部空間の空気がファン92を通じて粒子検出装置1の外部に排出される。ファン92が反転方向に駆動されることにより、粒子検出装置1の外部の空気がファン92を通じて粒子検出装置1の内部空間に導入される。ファン92は、粒子検出装置1内への粒子の捕集、粒子の加熱後の冷却、および、粒子を捕集するための基板10のクリーニングのために、兼用して用いられている。これにより、粒子検出装置1の小型化および低コスト化が図られている。
粒子検出装置1は、捕集部60を備える。捕集部60は、空気中に含まれる粒子を、捕集部材としての基板10の主表面11上に捕集する。捕集部60は、高圧電源である捕集電源回路61と、放電電極としての静電針62とを有する。基板10は、主表面11を有する。基板10は、生物由来の粒子と化学繊維の埃などの粉塵とが混合した粒子を主表面11上に捕集する、捕集部材として設けられている。
基板10は、シリコン製の平板で形成されている。粒子を吸着する基板10の主表面11には、導電性の透明被膜が形成されている。基板10は、シリコンに限定されず、ガラス、セラミックまたは金属などから形成されてもよい。被膜は、透明被膜に限定されず、たとえば、セラミック等から形成された基板10の表面に、金属被膜が形成されてもよい。また、基板10が金属から形成される場合、その表面に被膜を形成する必要はない。基板10がシリコン基板であれば、材料自体安価であり、主表面11の鏡面加工と、主表面11への導電性被膜の形成が容易である。
捕集電源回路61は、基板10と静電針62との間に電位差を生じさせるための電源部として設けられている。静電針62は、捕集電源回路61から延出し、捕集筒4を貫通して捕集筒4の内部に達している。基板10は、静電針62と対向して配置される。本実施の形態では、静電針62が、捕集電源回路61の正極に電気的に接続されている。基板10の主表面11に形成された被膜は、捕集電源回路61の負極に電気的に接続されている。
なお、静電針62が捕集電源回路61の正極に電気的に接続され、基板10に形成された被膜が接地電位に接続されてもよい。または、静電針62が捕集電源回路61の負極に電気的に接続され、基板10に形成された被膜が捕集電源回路61の正極に電気的に接続されてもよい。
ファン92が正転方向に駆動されると、粒子検出装置1のキャビネット内部の空気が排気されると同時に、キャビネットの外部の空気が捕集筒4を通って基板10に向けて導入される。この際、捕集電源回路61によって静電針62と基板10との間に電位差を発生させると、空気中の粒子は、静電針62の周囲で正極に帯電される。正極に帯電された粒子が、静電気力によって基板10に移動し、基板10の主表面11に形成された導電性の被膜に吸着されることによって、基板10に捕集される。
このように本実施の形態における粒子検出装置1においては、静電気力を利用した帯電捕集により、粒子を基板10に捕集する。この場合、粒子の検出時に粒子を確実に基板10に保持するとともに、粒子の検出後には粒子を容易に基板10から除去することができる。放電電極として針状の静電針62を用いることによって、帯電した粒子を、静電針62に対向する基板10の表面であって、後述する発光素子の照射領域に対応した極めて狭い領域に吸着させることができる。これにより、蛍光測定工程において、吸着された微生物を効率的に検出することができる。
粒子検出装置1は、励起光学系20と、受光光学系30とを備える。励起光学系20は、基板10の主表面11上に捕集された粒子に向けて励起光を照射する、光照射部としての機能を有する。受光光学系30は、励起光学系20からの励起光の照射に伴って粒子から発せられる蛍光を受光する、受光部としての機能を有する。励起光学系20および受光光学系30は、基板10に捕集された粒子から発する蛍光を検出する蛍光検出部を構成する。励起光学系20および受光光学系30は、基板10に捕集された粒子の加熱前および加熱後の、粒子から発する蛍光の測定を実行する。
励起光学系20は、光源としての発光素子21と、励起部フレーム22,23と、集光レンズ24と、レンズ押さえ25と、フィルタ26とを有する。発光素子21としては、波長405nmの青色のレーザ光を発生する半導体レーザ素子が用いられる。または発光素子21は、LED(Light Emitting Diode)が用いられてもよい。発光素子21から発せられる光は、生物由来の粒子を励起して蛍光を発せさせるものであれば、紫外または可視いずれの領域の波長を有してもよい。
受光光学系30は、金属製のノイズシールド36と、受光素子34と、フィルタ37と、受光部フレーム33と、フレネルレンズ32と、レンズ押さえ31とを有する。受光素子34としては、フォトダイオードまたはイメージセンサなどが用いられる。受光素子34とノイズシールド36との間には、受光素子34で検出された信号を増幅するための増幅回路55が設けられている。
清掃部96は、粒子を基板10の主表面11から除去する。清掃部96は、清掃具としてのブラシ97と、ブラシ固定部98とを有する。清掃部96は、捕集電源回路61に対して固定支持されている。
ブラシ97は、導電性を有する繊維集合体から形成されている。ブラシ97は、たとえば、カーボンファイバから形成されている。ブラシ97を形成する繊維集合体の線径は、φ0.05mm以上φ0.2mm以下であることが好ましい。ブラシ97の一端は、ブラシ固定部98に支持され、他端はブラシ固定部98から垂れ下がる自由端として形成されている。ブラシ97の自由端が基板10の主表面11に接触した状態で、基板10に対しブラシ97が相対移動することにより、粒子が基板10から除去される。
基板10から粒子を除去する捕集具は、ブラシ97に限られるものではない。たとえば捕集具は、基板10の主表面11と接触する平板状のワイパーであってもよいし、基板10の主表面11に向けて空気を噴き出すノズルであってもよい。
粒子検出装置1は、基板10を搭載し保持する保持部材80と、基板10を移動させる移動機構部としての駆動部70とをさらに備える。駆動部70は、回転駆動可能な回転モータ71と、回転モータ71を保持するモータホルダ72と、回転モータ71の位置決めをするモータ押さえ73とを有する。
保持部材80は、回転ベース81を有する。回転ベース81は、熱伝導率の低い樹脂材料により形成されている。回転ベース81には、軸穴82が形成されている。軸穴82に回転モータ71の出力軸が挿通されることにより、回転モータ71と回転ベース81とが連結されている。回転モータ71の駆動に伴って、回転ベース81は、軸穴82の位置を中心に回転(正転、反転)する。
保持部材80は、回転ベース81の回転軸から離れる方向に延びるアーム部83を有する。アーム部83は、回転ベース81の回転軸に対し直交する径方向に延伸し、その先端に枠形状部を有する。枠形状部は、基板10を収容可能な形状に形成されている。基板10は、アーム部83の先端の枠形状部に収容されることにより、保持部材80に搭載される。
粒子検出装置1は、加熱部としてのヒータ91を備える。ヒータ91は、基板10の裏面側に配置され、基板10の主表面11上に捕集された粒子を加熱する。基板10の裏面には、ヒータ91が貼り合わされている。ヒータ91は、回転ベース81の回転時、基板10とともに移動する。ヒータ91には、ヒータ91への電力供給線や、ヒータ91に内蔵されたセンサの信号線を含む、複数の配線が接続されている。これら配線は、粒子検出装置1のキャビネットの外部に引き出されている。
下キャビネット5の側面には、位置センサ76が配置されている。基板10は、回転モータ71の回転により、粒子検出装置1のキャビネット内を移動する。基板10の現在位置を検出するために、位置センサ76が設けられている。
[蛍光検出部の構成]
図18は、粒子検出装置1の断面図である。図19は、粒子検出装置1に含まれる光学系による光の挙動を示す模式図である。図20は、基板10の主表面11における光の反射を示す模式図である。
上述したように、基板10の主表面11に励起光を照射するための励起光学系20は、発光素子21と、集光レンズ24と、フィルタ26とを有する。
フィルタ26のカットオフ波長λsは、後述するフレネルレンズ32に含まれる吸収剤32bの有するフィルタ機能でのカットオフ波長λ1以下(λ1≧λs)であればよい。好ましくは、フィルタ26のカットオフ波長λsは、λs≧430nmである。詳しくは、図21は、フィルタ26のフィルタ特性の具体例を示すグラフであって、光学軸と主面とのなす角度が20度および0度のときのそれぞれのフィルタ特性を表わしている。横軸は光の波長を示す。波長の単位はnmである。縦軸はフィルタの透過率を示す。フィルタの透過率の単位は%である。
図21に示されたように、フィルタ26は、一例として、約430nm(=λs)以上の波長を有する光をほぼ遮断し、約430nm(=λs)以下の波長を有する光をほぼ透過させる特性を有する。フィルタ26は、所定のしきい値以上の波長の光を遮り、当該しきい値以下の波長の光を透過させる、ローパスフィルタ(またはハイカットフィルタ)としての特性を有する。
半導体レーザ素子である発光素子21で発生した励起光ELは、フィルタ26を通過することで後述するフレネルレンズ32に含まれる吸収剤32bでは吸収されずにノイズ成分となる約500nm以上の波長がカットされる。
励起光ELは、フィルタ26を通過した後に集光レンズ24を経由して集光され、基板10の主表面11の励起光照射領域104に照射される。励起光ELは、基板10の主表面11に対して斜めに入射する。図19および図20において符号OD1が付された一点鎖線は、励起光ELの光線方向を示す。ここで、光線方向とは、光(この場合は励起光EL)の光束成分の進行する方向をいう。励起光ELの光線方向OD1は、励起光学系20の光軸ということもできる。
基板10の主表面11は、鏡面である。主表面11に対して入射角θで入射する励起光ELは、主表面11において鏡面反射する。主表面11で励起光ELが正反射した光は、反射光RLを形成する。図19および図20において符号OD2が付された一点鎖線は、反射光RLの光線方向を示す。励起光ELが基板10の主表面11に対して斜めに入射するため、主表面11で鏡面反射する反射光RLも主表面11に対して斜めに反射する。
図20において符号Aが付された一点鎖線は、受光光学系30の光軸、すなわちフレネルレンズ32の光軸を示す。励起光ELの光線方向OD1、および反射光RLの光線方向OD2は、光軸Aと交差している。光線方向OD1,OD2は、光軸Aに対して傾斜している。光線方向OD1,OD2は、基板10の主表面11の延びる方向に対して傾斜している。また図20には、基板10の主表面11とフレネルレンズ32との間の距離Tが図示されている。
主表面11が鏡面に形成されているので、主表面11において励起光ELが散乱することによる迷光の発生が防止される。そのため、迷光がノイズとなり粒子検出装置1の検出精度が低下することを防止できる構成とされている。主表面11が鏡面である場合、主表面11での励起光ELの反射の際に散乱光が殆ど発生しないので、励起光ELが主表面11で正反射した反射光RLのみの受光光学系30への混入を防止することで、迷光による混信を防止できる。
さらに、フィルタ26が設けられているので、基板10の主表面11にブラシ97でのクリーニング残渣があった場合に、その表面の凹凸によって散乱した励起光ELのうちの後述するフレネルレンズ32に含まれる吸収剤32bでは吸収されない成分がノイズとなって受光素子34へ入光することで粒子検出装置1の検出精度が低下することを防止できる構成とされている。
励起光照射領域104には、粒子100が捕集されている。粒子100は、微生物などの生物由来の粒子101と、化学繊維の埃などの非生物由来の塵埃102とを含む。図5において符号Fが付された矢印は、粒子100が発した蛍光を示す。蛍光Fは、粒子100の表面の励起光ELが照射された部分から全方位に向かって放出される。受光光学系30へ向かう蛍光Fは、フレネルレンズ32を経由して集光され、フィルタ37を経由して受光素子34により受光される。蛍光Fを集光するための集光レンズをフレネルレンズ32にすることで、集光レンズを薄型化できるので、粒子検出装置1の小型化および軽量化を達成できる。
蛍光Fは、励起光ELが照射された粒子100から、全方位に指向性なく放出される。蛍光Fの一部は、粒子100から直接フレネルレンズ32へ向かい、蛍光Fの他の一部は、粒子100から基板10の主表面11へ向かって放出される。主表面11が鏡面であれば、主表面11で蛍光Fが鏡面反射され、反射された蛍光Fはフレネルレンズ32へ向かうので、フレネルレンズ32で集光され受光素子34で受光される蛍光Fの強度を増大できる。これにより、受光素子34における蛍光Fの検出感度を向上することができる。
フレネルレンズ32を基板10の主表面11から距離Tだけ離れた位置に配置することにより、基板10の主表面11へ向かう励起光ELおよび主表面11で正反射した反射光RLは、フレネルレンズ32へ入射しない。フレネルレンズ32に入射する光は、粒子100が発する蛍光Fのみに限定され、励起光ELと反射光RLとの両方がフレネルレンズ32により集光されない。励起光ELと反射光RLとがフレネルレンズ32に入射されず、受光素子34が励起光ELと反射光RLとを受光しない位置に、受光光学系30が配置される。このようにすれば、励起光ELおよび反射光RLと蛍光Fとを確実に分離でき、励起光ELまたは反射光RLが蛍光Fの検出に対するノイズとなることを回避できるので、蛍光Fの検出感度を向上することができる。
図22は、フレネルレンズ32の断面を示す模式図である。フレネルレンズ32は、母材32aと、母材32a中に細かく分散された吸収剤32bとを有する材料により形成されている。母材32aは、フレネルレンズ32として使用できる任意の材料により形成されており、たとえば蛍光Fを透過するアクリル材またはガラス材で形成されてもよい。吸収剤32bは、励起光ELの波長を含む光線を吸収する。吸収剤32bは、励起光ELの波長を含む光線がフレネルレンズ32を透過するのを妨げる。フレネルレンズ32は、励起光ELおよび反射光RLを遮断するフィルタ機能を有している。
吸収剤32bは、図13の曲線(1)で表わされた、ロングパスフィルタのフィルタ特性を有する。すなわち、吸収剤32bは、曲線(1)に示すフィルタ特性によると、約440nm以下の波長を有する光をほぼ遮断し、約500nm以上の波長を有する光をほぼ透過させる特性を有する。吸収剤32bは、所定のしきい値以下の波長の光を遮り、しきい値以上の波長の光を透過させる、ハイパスフィルタ(またはローカットフィルタ)としての特性を有する。
曲線(2)に示されたように、半導体レーザによる励起光ELは、約400nmの波長に光スペクトル強度のピーク値を有し、他の波長域ではスペクトルが測定されない。一方曲線(3)に示されたように、青カビ菌からの蛍光Fは、約460nm以上の波長域においてスペクトルが測定され、約530nmの波長に光スペクトル強度のピーク値を有する。
曲線(1)のフィルタ特性を有する吸収剤32bをフレネルレンズ32に分散させることにより、曲線(2)に示された光スペクトル強度を有する励起光ELがフレネルレンズ32に入射すると、励起光ELは吸収剤32bに吸収されて遮断される。一方、曲線(3)に示された光スペクトル強度を有する蛍光Fがフレネルレンズ32に入射すると、蛍光Fは光スペクトル強度をほぼ維持したまま、フレネルレンズ32を透過する。
このようなフィルタ機能をフレネルレンズ32に持たせることで、フレネルレンズ32に誤って励起光ELまたは反射光RLが入射しても、フレネルレンズ32において励起光ELまたは反射光RLを遮断することができる。したがって、蛍光Fが選択的にフレネルレンズ32を透過する構成が提供されるので、蛍光Fを検出する受光素子34へのノイズの混入を抑制でき、蛍光Fの検出感度を向上することができる。
フィルタ37はIR(赤外線)カットフィルタであって、そのカットオフ波長λiは赤外線の波長(約780nm)以上であればよい。好ましくは、カットオフ波長λiは、λi≧650nmである。詳しくは、図23は、フィルタ37のフィルタ特性の具体例を示すグラフである。横軸は光の波長を示す。波長の単位はnmである。縦軸はフィルタの透過率を示す。フィルタの透過率の単位は%である。
図23に示されたように、この例でのフィルタ37は、約650nm(=λi)以上の波長を有する光をほぼ遮断し、約650nm(=λi)以上の波長を有する光をほぼ透過させる特性を有する。すなわち、フィルタ37は、赤外領域の波長の光を遮り、それ以下の波長の光を透過させる。
フレネルレンズ32を透過した光がフィルタ37を経由することで、フレネルレンズ32を透過した光から赤外成分がカットされて受光素子34へ入光する。そのため、基板10の主表面11にブラシ97でのクリーニング残渣である硝酸や硝酸性化合物があった場合に、それに対して励起光ELが照射されることで生じる赤外成分を多く含む蛍光がノイズとなって受光素子34へ入光することで粒子検出装置1の検出精度が低下することを防止できる構成とされている。
[粒子検出装置の動作]
以上の構成を有する粒子検出装置1を用いて生物由来の粒子101の量を検出する動作について説明する。図24は、粒子検出装置1の動作の流れを示すフローチャートである。
図24を参照して、まず、基板10の主表面11に、粒子100を捕集する(S101)。このとき、ファン92を正転方向に駆動させることによって、粒子検出装置1のキャビネット内に導入部3を経由させて空気を導入し、基板10の主表面11へ向かう空気の流れを形成する。加えて、静電針62を基板10の主表面11に対向配置するとともに、捕集電源回路61によって静電針62と基板10との間に電位差を発生させる。これにより、空気中に浮遊する粒子100を帯電させ、帯電された粒子100を静電気力によって基板10の主表面11に捕集する。
次に、励起光学系20によって、基板10に捕集された粒子100へ向けて励起光ELを照射するとともに、受光光学系30によって、励起光ELの照射に伴って粒子100から発せられる蛍光Fを受光する。半導体レーザ素子である発光素子21から励起光ELを粒子100に向けて照射し、このとき粒子100から発せられる蛍光Fをフレネルレンズ32を通じて受光素子34にて受光する。これにより、基板10に捕集された粒子100の加熱前の蛍光強度を測定する(S102)。
次に、ヒータ91に通電することによって、基板10に捕集された粒子100を加熱する(S103)。次に、ヒータ91への通電を停止して、基板10を冷却する(S104)。この際、ファン92を反転方向に駆動させることによって、ファン92を経由して空気を粒子検出装置1のキャビネット内に導入し、基板10の冷却を促進させる。
次に、励起光学系20によって、基板10に捕集された粒子100に向けて励起光ELを照射するとともに、受光光学系30によって、励起光ELの照射に伴って粒子100から発せられる蛍光Fを受光する。これにより、基板10に捕集された粒子100の加熱後の蛍光強度を測定する(S105)。加熱前の蛍光Fの強度と加熱後の蛍光Fの強度とを比較することにより、基板10に捕集された粒子100に含まれる生物由来の粒子101の量を算出する(S106)。
図25は、アオカビ菌の蛍光スペクトルの加熱処理前後の時間変化を示す図である。図25には、生物由来の粒子101の一例として、アオカビ菌を200℃にて5分間加熱処理したときの加熱処理前(曲線C1)および加熱処理後(曲線C2)の蛍光スペクトルの測定結果である。これらに示されるように、加熱処理を施すことによってアオカビ菌からの蛍光強度が大幅に増加していることが分かる。
図26は、蛍光発光する埃の加熱処理前の蛍光スペクトルを示す図である。図27は、蛍光発光する埃の加熱処理後の蛍光スペクトルを示す図である。図26および図27のそれぞれは、蛍光を発する埃を200℃にて5分間加熱処理したときの加熱処理前(曲線C3)および加熱処理後(曲線C4)の蛍光スペクトルの測定結果である。曲線C3により示された蛍光スペクトルと曲線C4により示された蛍光スペクトルとを重ねると、これらはほぼ重なることが検証される。すなわち、埃からの蛍光強度は加熱処理の前後において変化がないことが分かる。
空気中に浮遊する生物由来の粒子101に紫外光または青色光を照射すると、生物由来の粒子101は蛍光Fを発する。しかしながら、空気中には化学繊維の埃などの、同様に蛍光を発する塵埃102が浮遊しており、蛍光Fを検出するのみでは、生物由来の粒子101からのものであるのか塵埃102からのものであるのかが区別されない。
一方、生物由来の粒子101および塵埃102に対してそれぞれ加熱処理を施し、加熱前後における蛍光強度(蛍光量)の変化を測定すると、塵埃102から発せられる蛍光強度が加熱処理によって変化しないのに対して、生物由来の粒子101から発せられる蛍光強度は、加熱処理によって増加する。本実施の形態における粒子検出装置1では、生物由来の粒子101と塵埃102とが混合する粒子100に対して、加熱前後の蛍光強度を測定し、その差分を求めることにより、生物由来の粒子101の量を特定する。
生物由来の粒子101から発せられる蛍光Fの強度は、加熱処理によって増加する。このため、ステップ(S105)では、ステップ(S102)の加熱前の蛍光測定で測定された蛍光強度よりも大きい値の蛍光強度が測定される。加熱前の蛍光強度と加熱後の蛍光強度との差から、蛍光強度の増大量を算出する。予め用意した蛍光強度の増大量と生物由来の粒子濃度との関係に基づき、算出された増大量に対応する生物由来の粒子101の濃度を特定することができる。なお、増大量と生物由来の粒子濃度との対応関係は、予め実験的に決められる。
[粒子除去装置の構成]
本実施の形態における粒子検出装置1は、生物由来の粒子101を検出するための装置単体として用いられてもよいし、空気清浄機やエアーコンディショナ、加湿器、除湿機、掃除機、冷蔵庫、テレビなどの家電製品に組み込まれてもよい。図28は、粒子検出装置1を含む空気清浄機300の外観の具体例を示す図である。空気清浄機300は、粒子検出装置1により検出された生物由来の粒子101を効率的に除去するための、粒子除去装置の一例である。
空気清浄機300は、操作指示を受け付けるためのスイッチ310と、検出結果などを表示するための表示パネル330とを含む。その他、図示されない、空気を導入するための吸引口、排気するための排気口、などを含む。さらに、空気清浄機300は、記録媒体を装着するための通信部350を含む。通信部350は、インターネットを介して他の装置と通信するための通信回線を接続するためのものであってもよい。または、通信部350は、赤外線通信やインターネット通信などで他の装置と通信するためのものであってもよい。粒子検出装置1は、空気清浄機300の筐体の内部に配置される。生物由来の粒子101を精度よく検出できるとともに小型化を達成できる粒子検出装置1を備えることにより、空気清浄機300は、周辺の空気を効率よく清浄化できる。
図29は、空気清浄機300の機能構成の具体例を示すブロック図である。図29では、信号処理部50の機能が主に電気回路であるハードウェア構成で実現される例が示されている。しかしながら、これら機能のうちの少なくとも一部は、信号処理部50が図示しないCPU(Central Processing Unit)を備え、該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される、ソフトウェア構成であってもよい。また、測定部40の構成がソフトウェア構成である例が示されている。しかしながら、これら機能のうちの少なくとも一部は、電気回路などのハードウェア構成で実現されてもよい。
図29を参照して、信号処理部50は、受光素子34に接続される電流−電圧変換回路54と、電流−電圧変換回路54に接続される積分型の増幅回路55とを含む。
測定部40は、制御部41、記憶部42、およびクロック発生部43を含む。さらに、測定部40は、スイッチ310の操作に伴ったスイッチ310からの入力信号を受け付けることで情報の入力を受け付けるための入力部44と、表示パネル330に測定結果等を表示させる処理を実行するための表示部45と、通信部350に接続された外部装置とのデータ等のやり取りに必要な処理を行なうための外部接続部46と、ファン92およびヒータ91を駆動させるための駆動部48とを含む。
基板10の主表面11上に捕集された粒子100に対して発光素子21から励起光ELが照射されることで、励起光照射領域104にある当該粒子100からの蛍光Fが、受光素子34に集光される。受光素子34から、受光量に応じた電流信号が信号処理部50に対して出力される。電流信号は、電流−電圧変換回路54に入力される。
電流−電圧変換回路54は、受光素子34から入力された電流信号より蛍光強度を表わすピーク電流値Hを検出し、電圧値Ehに変換する。電圧値Ehは増幅回路55で予め設定した増幅率に増幅され、測定部40に対して出力される。測定部40の制御部41は信号処理部50から電圧値Ehの入力を受け付けて、順次、記憶部42に記憶させる。
クロック発生部43はクロック信号を発生させ、制御部41に対して出力する。制御部41は、クロック信号に基づいたタイミングで、ファン92を回転させるための制御信号を駆動部48に対して出力して、ファン92による空気の導入を制御する。また、制御部41は発光素子21および受光素子34と電気的に接続され、それらのON/OFFを制御する。
制御部41は計算部411を含み、計算部411において、記憶部42に記憶された電圧値Ehを用いて、導入された空気中の生物由来の粒子量を算出するための動作が行なわれる。
計算部411で算出された捕集された粒子100中の生物由来の粒子101の濃度は、制御部41から表示部45に対して出力される。表示部45は、入力された微生物の濃度を、表示パネル330に表示させるための処理を行なう。たとえば、表示パネル330には、濃度ごとのランプが備えられ、表示部45は、算出された濃度に対応したランプを点灯するランプとして特定し、該ランプを点灯する。他の例として、算出された濃度ごとに、ランプを異なる色に点灯させてもよい。また、表示パネル330はランプ表示に限定されず、数字を表示したり、濃度や対応して予め用意されているメッセージを表示したりしてもよい。また、測定結果は、外部接続部46によって、通信部350に装着された記録媒体に書き込まれてもよいし、通信部350を介して外部装置に送信されてもよい。
入力部44はスイッチ310からの操作信号に従って、表示パネル330での表示方法の選択を受け付けてもよい。または、測定結果を、表示パネル330に表示するか、外部装置に出力するか、の選択を受け付けてもよい。その内容を示す信号は、制御部41に対して出力され、制御部41から表示部45および/または外部接続部46に対して必要な制御信号が出力される。
粒子検出装置1は、生物由来の粒子101からの蛍光Fと蛍光Fを発する塵埃102からの蛍光Fとの加熱処理による性質の差を利用し、所定の加熱処理後の増大量に基づいて生物由来の粒子101を検出する。そのため、導入された空気中に蛍光Fを発する塵埃102が含まれている場合であっても、粒子検出装置1は、リアルタイムに、かつ精度よく、生物由来の粒子101を、蛍光を発する塵埃102から分離して検出する。
空気清浄機300は、この粒子検出装置1により検出された生物由来の粒子101の濃度を利用して、粒子検出装置1の出力に応じて運転状態を変化させることにより、生物由来の粒子101を効率的に除去することができる。すなわち、粒子検出装置1の出力が大きく生物由来の粒子101の濃度が高い場合には、たとえばファン92を高速回転させ通風量を増加させることにより、空気清浄機300による粒子除去能力を向上させることができる。粒子検出装置1の出力が小さく生物由来の粒子101の濃度が低い場合には、粒子除去能力を低下できるので、ファン92の回転数を低下させて通風量を減少させ、省電力化した運転を行なうことができる。
[実施の形態の効果を確認する実験]
粒子検出装置1にフィルタ26およびフィルタ37を設けたことによる効果を確認するために、フィルタ26およびフィルタ37のいずれもない状態(状態1)、フィルタ26のみを設けてフィルタ37を設けていない状態(状態2)、およびフィルタ26,37の両フィルタを設けた状態(状態3)の3つの状態で、迷光量および基板10で所定量のカビ菌を捕集した状態での蛍光強度を測定し、比較した。図30および図31は、それぞれの結果を表わしている。図30の縦軸は検出光量を示す。検出光量は、上記状態1での検出光量を100としたときの状態2,3での相対値を示す。図31の縦軸は蛍光強度に相当する信号強度を示す。信号強度は、上記状態1での信号強度を100としたときの状態2,3での相対値を示す。
詳しくは、図30を参照して、状態2での迷光量は状態1での迷光量の50%程度であることから、クリーニング残渣による迷光量は、フィルタ26を設けることで約50%減少することが分かった。また、状態3での迷光量は状態1での迷光量の20%程度であることから、クリーニング残渣による迷光量は、フィルタ26およびフィルタ37を設けることで約80%減少することが分かった。したがって、この実験より、フィルタ26を設けることで基板表面のクリーニング残渣の凹凸による励起光の散乱をカットできる効果があることが分かった。さらに、フィルタ37を設けることでこの効果がより増すことが分かった。
また、図31を参照して、状態2で基板10から測定された蛍光強度は状態1から大きく変化がないものの、状態3では基板10から測定された蛍光強度が状態1での90%程度である。このことから、フィルタ37を設けることで基板10から測定される蛍光強度が10%以上も減少し、クリーニング残渣である硝酸や硝酸性化合物からの蛍光がカットされることが分かった。したがって、この実験より、フィルタ26を設けることでクリーニング残渣である硝酸性化合物等からの蛍光をカットできる効果があることが分かった。さらに、フィルタ37を設けることでこの効果がより増すことが分かった。
さらに、フィルタ37でのカットオフ波長をさまざまに変化させて、迷光量および蛍光強度を測定した。図32は、フィルタ37として用いたIRフィルタのフィルタ特性を表わした図である。図32を参照して、この実験では、カットオフ波長が650nm、700nm、750nm、および780nmの4種類のIRフィルタを用いた。カットオフ波長が650nmのIRフィルタは約650nm以上の波長の光を遮断し、カットオフ波長が700nmのIRフィルタは約700nm以上の波長の光を遮断し、カットオフ波長が750nmのIRフィルタは約750nm以上の波長の光を遮断し、カットオフ波長が780nmのIRフィルタは約780nm以上の波長の光を遮断する。
図33は、フィルタ37としてこれら4種類のフィルタを用いたときの迷光量および蛍光強度の測定結果を表わしたグラフである。グラフの縦軸はIRフィルタを用いないときの測定値を100としたときの、各フィルタを用いたときの相対値を示す。
図33より、いずれのフィルタであっても、フィルタ37のない状態よりも迷光量および蛍光強度共に減少している。そのため、この実験より、フィルタ37を設けることで、クリーニング残渣である硝酸性化合物等からの蛍光や、基板表面のクリーニング残渣の凹凸による励起光の散乱をカットできる効果があることが分かった。また、フィルタ37のカットオフ波長λiがλi≧650nmである場合に、これらの効果があることが分かった。さらに、カットオフ波長が短くなるほど迷光量の低減率および蛍光強度の低減率が増加する、つまり上の効果がより増すことが分かった。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 粒子検出装置、2 上キャビネット、3 導入部、4 捕集筒、5 下キャビネット、10 基板、11 主表面、20 励起光学系、21,550 発光素子、22,23 励起部フレーム、24 集光レンズ、25,31 レンズ押さえ、26,37 フィルタ、30 受光光学系、32 フレネルレンズ、32a 母材、32b 吸収剤、33 受光部フレーム、34,565 受光素子、36 ノイズシールド、40 測定部、41 制御部、42 記憶部、43 クロック発生部、44 入力部、45 表示部、46 外部接続部、48,70 駆動部、50 信号処理部、54 電圧変換回路、55 増幅回路、60 捕集部、61 捕集電源回路、62,530 静電針、71 回転モータ、72 モータホルダ、73 モータ押さえ、76 位置センサ、80 保持部材、81 回転ベース、82 軸穴、83 アーム部、91,520 ヒータ、97 ブラシ、92,500 ファン、96 清掃部、98 ブラシ固定部、100,101,600,600A 粒子、102 塵埃、104 励起光照射領域、300 空気清浄機、310 スイッチ、330 表示パネル、350 通信部、411 計算部、510 捕集基板、560 レンズ、600B 粉塵。

Claims (4)

  1. 主表面を有し、前記主表面に対して対向配置された静電部により帯電された粒子を前記主表面上に静電捕集するための捕集部材と、
    前記主表面上に捕集された前記粒子に励起光を照射するための照射部と、
    前記励起光を前記粒子に照射することで前記粒子から発せられる蛍光を受光するための受光部と、
    前記粒子を加熱するための加熱部と、
    前記加熱部による前記粒子への加熱前後での、前記受光部での蛍光強度の増加量に基づいて前記主表面上に捕集された前記粒子から生物由来の粒子を検出するための検出部と
    前記照射部と前記主表面との間に設置された、前記励起光のピーク波長よりも長く、前記生物由来の粒子から発せられる蛍光の波長よりも短い所定波長をカットオフ波長とするローパスフィルタとを備え、
    前記受光部は、前記主表面と前記受光部との間に設置された、前記生物由来の粒子から発せられる蛍光のピーク波長よりも長い650nm〜780nmをカットオフ波長とする赤外線カットフィルタにより、前記励起光を照射することで前記主表面上の前記静電捕集時に生成された硝酸または硝酸性化合物から発せられる波長の光がカットされた蛍光を受光する、粒子検出装置。
  2. 前記主表面は鏡面であって、
    前記励起光は前記主表面で鏡面反射する、請求項1に記載の粒子検出装置。
  3. 前記所定波長は430nmである、請求項1または2に記載の粒子検出装置。
  4. 前記主表面と前記受光部との間に設置されたハイパスフィルタをさらに備え、
    前記ローパスフィルタのカットオフ波長λsと前記ハイパスフィルタのカットオフ波長λ1とはλ1≧λsを満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子検出装置。
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