<第1実施形態>
以下、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態におけるエンジンの排気還流装置(EGR装置)を含む過給機付エンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に、吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気によりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体的に回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウェイストゲートバルブ12が設けられる。ウェイストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気が調節されることにより、タービン9に供給される排気流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ13が設けられる。このインタークーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、インタークーラ13の下流側であってサージタンク3aの上流側には、電動式のスロットル弁である電子スロットル装置14が設けられる。この電子スロットル装置14は、吸気通路3に配置されるバタフライ形のスロットル弁21と、そのスロットル弁21を開閉駆動するためのステップモータ22と、スロットル弁21の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ23とを備える。この電子スロットル装置14は、運転者によるアクセルペダル26の操作に応じてスロットル弁21がステップモータ22により開閉駆動され、開度が調節されるように構成される。この実施形態で、スロットルセンサ23は、スロットル弁21の開度を検出するための本発明のスロットル弁開度検出手段に相当する。この電子スロットル装置14の構成として、例えば、特開2011−252482号公報の図1及び図2に記載される「スロットル装置」の基本構成を採用することができる。タービン9の下流側の排気通路5には、排気を浄化するための排気触媒としての触媒コンバータ15が設けられる。
この実施形態において、大量EGRを実現するためのEGR装置は、エンジン1の燃焼室16から排気通路5へ排出される排気の一部を吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させる排気還流通路(EGR通路)17と、EGR通路17における排気流量(EGR流量)を調節するためにEGR通路17に設けられた排気還流弁(EGR弁)18とを備える。EGR通路17は、タービン9の上流側の排気通路5と、サージタンク3aとの間に設けられる。すなわち、排気通路5を流れる排気の一部をEGRガスとしてEGR通路17を通じて吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させるために、EGR通路17の出口17aが、電子スロットル装置14の下流側にてサージタンク3aに接続される。また、EGR通路17の入口17bは、タービン9の上流側における排気通路5に接続される。
EGR通路17の入口17bの近傍には、EGRガスを浄化するためのEGR用触媒コンバータ19が設けられる。また、EGR用触媒コンバータ19より下流のEGR通路17には、同通路17を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。この実施形態で、EGR弁18は、EGRクーラ20より下流のEGR通路17に配置される。
図2に、EGR通路17の一部であってEGR弁18が設けられる部分を拡大して断面図により示す。図1、図2に示すように、EGR弁18は、ポペット弁により、かつ、電動弁により構成される。すなわち、EGR弁18は、ステップモータ31により駆動される弁体32を備える。弁体32は、略円錐形状をなし、EGR通路17に設けられた弁座33に着座可能に設けられる。ステップモータ31は直進的に往復運動(ストローク運動)可能に構成された出力軸34を備え、その出力軸34の先端に弁体32が固定される。出力軸34は軸受35を介してEGR通路17を構成するハウジングに支持される。そして、ステップモータ31の出力軸34をストローク運動させることにより、弁座33に対する弁体32の開度が調節されるようになっている。EGR弁18の出力軸34は、弁体32が弁座33に着座する全閉状態から、弁体32が軸受35に当接する全開状態までの間で所定のストロークL1だけストローク運動可能に設けられる。この実施形態では、大量EGRを実現するために、従前の技術に比べて弁座33の開口面積が拡大されている。それに合わせて、弁体32が大型化されている。このEGR弁18の構成として、例えば、特開2010−275941号公報の図1に記載された「EGRバルブ」の基本構成を採用することができる。この実施形態では、構造上、EGR弁18の閉弁速度が電
子スロットル装置14の閉弁速度よりも遅くなっている。
この実施形態では、エンジン1の運転状態に応じて電子スロットル装置14とEGR弁18をそれぞれ制御するために、電子スロットル装置14のステップモータ22とEGR弁18のステップモータ31のそれぞれが電子制御装置(ECU)41により制御されるようになっている。ECU41は、中央処理装置(CPU)と、所定の制御プログラム等を予め記憶したり、CPUの演算結果等を一時的に記憶したりする各種メモリと、これら各部と接続される外部入力回路及び外部出力回路とを備え、本発明の制御手段に相当する。外部出力回路には各ステップモータ22,31が接続される。外部入力回路には、スロットルセンサ23をはじめエンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段に相当する各種センサ27,51〜53が接続され、各種信号が入力されるようになっている。また、ECU41は、ステップモータ31を制御するために、所定の指令信号をステップモータ31へ出力するようになっている。ECU41は、このステップモータ31への指令信号に基づきEGR弁18の弁体32の開度を実開度(出力軸34のストローク位置に相関する。)TTegrとして検出するように構成され、本発明の排気還流弁開度検出手段に相当する。
ここで、各種センサとして、スロットルセンサ23の他に、アクセルセンサ27、吸気圧センサ51、回転速度センサ52及び水温センサ53が設けられる。アクセルセンサ27は、アクセルペダル26の操作量であるアクセル開度ACCを検出する。アクセルペダル26は、エンジン1の動作を操作するために運転者により操作される。吸気圧センサ51は、サージタンク3aにおける吸気圧PMを検出する。回転速度センサ52は、エンジン1のクランクシャフト1aの回転角(クランク角)をエンジン回転速度NEとして検出し、本発明の回転速度検出手段に相当する。水温センサ53は、エンジン1の冷却水温THWを検出する。
次に、上記のように構成したエンジンの制御装置につき、ECU41が実行するEGR制御の処理内容について説明する。図3に、EGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ100で、ECU41は、エンジン1の運転状態を示す各種信号を取り込む。
次に、ステップ110で、ECU41は、EGRオン条件が成立したか否かを判断する。すなわち、エンジン1の運転状態がEGRを行うべき状態であるか否かを判断する。ECU41は、この判断を、取り込んだ各種信号に基づいて行う。この判断結果が否定である場合、EGRを行わないために、ECU41は、処理をステップ160へ移行する。
そして、ステップ160で、ECU41は、ステップモータ31を制御することにより、EGR弁18を閉弁制御する。すなわち、EGR弁18の弁体32を全閉とし、EGRを遮断(EGRカット)する。
一方、ステップ110の判断結果が肯定である場合、EGRを行うために、ECU41は、処理をステップ120へ移行する。そして、ステップ120で、ECU41は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLを取り込む。ここで、エンジン負荷KLは、エンジン回転速度NEと吸気圧PMとの関係から求めることができ、ECU41が算出する。
次に、ステップ130で、ECU41は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLに応じたEGR弁18の目標開度Tegrを求める。ECU41は、この処理を、予め設定された関数データである目標開度マップを参照して行う。図4に、一例として、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLと目標開度Tegrとの関係を目標開度マップにより示す。図4に示すように、目標開度マップは、概略的には、高負荷の場合(120%、140%)を除けば、エンジン負荷KLを一定とした場合に、エンジン回転速度NEが上限値へ向けて高くなるに連れて目標開度Tegrの数値が徐々に大きくなるように、かつ、エンジン回転速度NEを一定とした場合に、エンジン負荷KLが上限値へ向けて大きくなるに連れて目標開度Tegrの数値が徐々に大きくなるように設定されている。
次に、ステップ140で、ECU41は、ステップモータ31を制御することにより、EGR弁18を目標開度Tegrに制御する。
そして、ステップ150で、ECU41は、エンジン1の急減速か否かを判断する。ECU41は、この判断を、アクセル開度ACC及びスロットル開度TAに基づいて行う。この判断結果が肯定である場合、EGRを遮断するために、ECU41は、ステップ160の処理を実行する。この判断結果が否定となる場合、ECU41は、処理をステップ100へ戻す。
上記したEGR制御によれば、ECU41は、エンジン1の運転状態に応じてEGR弁18を制御するようになっている。また、ECU41は、電子スロットル装置14のスロットル弁21が全閉となるエンジン1の急減速に際して、EGR弁18を閉弁制御するようになっている。
次に、ECU41が実行するスロットル制御の処理内容について説明する。図5に、スロットル制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ200で、ECU41は、アクセル開度ACCを取り込む。
次に、ステップ210で、ECU41は、アクセル開度ACCに応じた電子スロットル装置14の目標開度Ttaを求める。ECU41は、この処理を、予め設定された関数データである目標開度マップ(図示略)を参照して行う。
次に、ステップ220で、ECU41は、電子スロットル装置14のステップモータ22を制御することにより、スロットル弁21を目標開度Ttaに制御する。
次に、ステップ230で、ECU41は、EGRオン条件が成立したか否かを判断する。すなわち、エンジン1の運転状態がEGRを行うべき状態であるか否かを判断する。この判断結果が否定である場合、ECU41は、処理をステップ200へ戻す。この判断結果が肯定である場合、ECU41は、処理をステップ240へ移行する。
そして、ステップ240で、ECU41は、エンジン1の急減速か否かを判断する。ECU41は、この判断を、アクセル開度ACC及びスロットル開度TAに基づいて行う。この判断結果が否定となる場合、ECU41は、処理をステップ200へ戻す。この判断結果が肯定である場合、電子スロットル装置14のスロットル弁21を全閉にするために、ECU41は、処理をステップ250へ移行する。
ステップ250で、ECU41は、エンジン1の急減速判断直後の急減速初期におけるEGR弁18の弁体32の実際の開度(初期実開度)TTegrsを求める。ECU41は、ステップモータ31への指令信号に基づきこの初期実開度TTegrsを求める。
次に、ステップ260で、ECU41は、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じた電子スロットル装置14のスロットル弁21の基本閉弁速度TAspdを求める。この基本閉弁速度TAspdは、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じた閉弁速度であって所期の閉弁速度よりも遅い一定の閉弁速度である。ここで、「所期の閉弁速度」は、電子スロットル装置14を通常プログラムで制御した場合の閉弁速度を意味する。ECU41は、この処理を、予め設定された関数データである基本閉弁速度マップを参照して行う。図6に、一例として、EGR弁18の初期実開度TTegrsとスロットル弁21の基本閉弁速度TAspdの関係を基本閉弁速度マップにより示す。図6に示すように、基本閉弁速度マップは、概略的には、EGR弁18の初期実開度TTegrsが、全閉から所定値C1になるまでの間で基本閉弁速度TAspdが所定の一定値となり、初期実開度TTegrsが所定値C1よりも大きくなるに連れて基本閉弁速度TAspdが徐々に小さくなるように設定されている。
そして、ステップ270で、ECU41は、ステップモータ22を制御することにより、電子スロットル装置14のスロットル弁21を基本閉弁速度TAspdで閉弁させて全閉にする。
上記したスロットル制御によれば、ECU41は、エンジン1の運転状態に応じて電子スロットル装置14を制御するようになっている。また、ECU41は、検出される運転状態に基づいてエンジン1の急減速時と判断したときに、電子スロットル装置14のスロットル弁21を、閉弁開始から、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じた閉弁速度であって所期の閉弁速度よりも遅い一定の基本閉弁速度TAspdで閉弁させるようになっている。
以上説明したこの実施形態におけるエンジンの制御装置によれば、エンジン1の運転時であって過給機7の非作動時に、EGR弁18が開いているときは、電子スロットル装置14より下流のサージタンク3aで発生する負圧がEGR通路17の出口17aに作用し、排気通路5を流れる排気の一部がEGRガスとして、EGR用触媒コンバータ19、EGR通路17及びEGRクーラ20を通じてサージタンク3aへ引き込まれる。このため、過給機7の非作動時に、EGR通路17を通じて適量のEGRガスを吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させることがきる。このとき、EGR通路17におけるEGR流量は、EGR弁18の開度を適宜制御することで任意に調節することができる。
一方、エンジン1の運転時であって過給機7の作動時に、EGR弁18が開いているときは、排気通路5における過給排気圧がEGR通路17の入口17bに作用し、排気通路5を流れる排気の一部が、EGRガスとして、EGR用触媒コンバータ19、EGR通路17及びEGRクーラ20を通じてサージタンク3aへ押し込まれる。このため、過給機7の作動時に、EGR通路17を通じて適量のEGRガスを吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させることがきる。このとき、EGR通路17におけるEGR流量は、EGR弁18の開度を適宜制御することで任意に調節することができる。
この実施形態によれば、EGR弁18がポペット弁により構成されるので、その開閉によるEGR流量の特性は、一般的には、開度に対して徐々に変化する。また、EGR弁18がステップモータ31により駆動される電動弁により構成されるので、その開度を連続的に可変とすることができる。このため、EGR弁18の開度を制御することにより、EGR通路17における大量のEGR流量を徐々に変化させて調節することができる。これにより、エンジン1の全運転領域において、主としてエンジン1の排気中の窒素酸化物(NOx)を低減させて排気エミッションの悪化を防止することができ、エンジン1の燃費向上を図ることができる。
この実施形態によれば、ECU41により、各種信号に基づきエンジン1の急減速時と判断されたときに、ECU41により、電子スロットル装置14のスロットル弁21が、閉弁開始から、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じた閉弁速度であって所期の閉弁速度よりも遅い一定の基本閉弁速度TAspdで閉弁されると共に、EGR弁18が閉弁される。従って、スロットル弁21が、所期の閉弁速度よりも遅い一定の基本閉弁速度TAspdで閉弁されるので、スロットル弁21の閉弁に対するEGR弁18の閉弁遅れが短縮される。また、スロットル弁21の一定の基本閉弁速度TAspdが、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じて変わるので、全開等、EGR弁18の開度が大きい状態からでもEGR弁18の閉弁遅れが有効に短縮される。更に、スロットル弁21が、閉弁開始から一定の基本閉弁速度TAspdで閉弁されるので、エンジン1の減速感が途中で変わることがない。このため、エンジン1の急減速時にEGRの遮断遅れによるエンジン1の減速失火を抑えることができ、併せて、エンジン1の減速感の悪化を防止することができる。
図7に、アクセル開度ACC、スロットル開度TA及びEGR弁18の開度の挙動をタイムチャートにより示す。図7(a)において、時刻t1で、アクセルペダル26の踏み込みが解除されると、アクセル開度ACCが所定値から全閉へ向けて低下し始める。その後、時刻t2で、アクセルペダル26の全閉(減速)判定がなされると、図7(b)に示すように、EGR弁18が開弁状態から閉弁を開始する。この実施形態では、アクセルペダル26の踏み込みを解除してから、電子スロットル装置14のスロットル弁21が開弁状態から閉弁を開始してスロットル開度TAが全閉へ向けて低下し始めるまでに、図7(a)に示すように、例えば「32 ms」の動作遅れが存在する。従って、スロットル弁21は、この動作遅れを経過した時刻t3で、閉弁を開始することになる。ここで、図7(a)に実線で示すように、仮に、スロットル弁21が所期の閉弁速度で閉弁したとすると、スロットル弁21の閉弁は、時刻t4で完了する。これに対し、この実施形態では、所期の閉弁速度よりも遅い一定の基本閉弁速度TAspdで閉弁するので、図7(a)に実線(太線)で示すように、スロットル弁21の閉弁は、時刻t4よりも後の時刻t5で完了する。一方、図7(b)に示すように、時刻t2から開始したEGR弁18の閉弁は、時刻t6で完了する。このため、図7(b)に示すように、スロットル弁21が所期の閉弁速度で閉弁した場合のEGR弁18のスロットル弁21に対する閉弁遅れ時間Td1が、時刻t4から時刻t6までの時間になるのに対し、本実施形態の場合のEGR弁18のスロットル弁21に対する閉弁遅れ時間Td2は、時刻t5から時刻t6までの短い時間になることが分かる。このようにEGR弁18の閉弁遅れ時間Td2を短縮できることから、その分だけエンジン1の急減速時におけるEGRの遮断遅れを抑えることができ、エンジン1の減速失火を抑えることができるのである。
<第2実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に説明する各実施形態において前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
この実施形態では、スロットル制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。図8に、スロットル制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図8に示すフローチャートでは、図5に示すフローチャートとステップ200〜ステップ260の処理内容について共通し、ステップ300〜ステップ330の処理内容について相違する。
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ200〜ステップ260で、ECU41は、図5のフローチャートに示す内容と同様の処理を実行する。
そして、ステップ260から移行してステップ300で、ECU41は、エンジン回転速度NEを取り込む。
次に、ステップ310で、ECU41は、エンジン回転速度NEに応じた回転補正係数Kspdを求める。ECU41は、この処理を、予め設定された関数データである回転補正マップを参照して行う。図9に、一例として、エンジン回転速度NEと回転補正係数Kspdの関係を回転補正マップにより示す。図9に示すように、回転補正マップは、概略的には、エンジン回転速度NEが、「0」から所定値N1になるまでの間で回転補正係数Kspdが「1.0」で一定となり、エンジン回転速度NEが所定値N1よりも大きくなるに連れて回転補正係数Kspdが徐々に小さくなるように設定されている。
次に、ステップ320で、ECU41は、電子スロットル装置14のスロットル弁21の最終閉弁速度TASPDを求める。ECU41は、基本閉弁速度TAspdと回転補正係数Kspdを乗算することによりこの最終閉弁速度TASPDを求める。
そして、ステップ330で、ECU41は、ステップモータ22を制御することにより、電子スロットル装置14のスロットル弁21を最終閉弁速度TASPDで閉弁させて全閉にする。
上記したスロットル制御によれば、ECU41は、エンジン1の運転状態に応じて電子スロットル装置14を制御するようになっている。また、ECU41は、エンジン1の急減速時と判断したときに、電子スロットル装置14のスロットル弁21を、閉弁開始から、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じた基本閉弁速度TAspdをエンジン回転速度NEに応じた回転補正係数Kspdで補正した、所期の閉弁速度よりも遅い一定の最終閉弁速度TASPDで閉弁させるようになっている。
以上説明したこの実施形態におけるエンジンの制御装置によれば、ECU41により、エンジン1の急減速時と判断されたときに、電子スロットル装置14のスロットル弁21が、所期の閉弁速度よりも遅い一定の最終閉弁速度TASPDで閉弁される。この最終閉弁速度TASPDは、エンジン1の急減速時におけるEGR弁18の初期実開度TTegrsに応じて求められた一定の基本閉弁速度TAspdが、エンジン回転速度NEに応じた回転補正係数Kspdにより補正されたものである。ここで、エンジン1の急減速時において、エンジン負荷KLは、エンジン回転速度NEが高くなるほど減衰速度が大きくなり、それに伴いEGR率の増加もより急激なものとなる(後述する図10(c),(d)参照)。すなわち、EGRはエンジン回転速度NEが高くなるほど多くなる。従って、電子スロットル装置14のスロットル弁21の閉弁時における一定の最終閉弁速度TASPDが、エンジン回転速度NEに応じた回転補正係数Kspdにより補正されるので、例えば、エンジン回転速度NEが高い状態でもEGR弁18の閉弁遅れが有効に短縮される。また、スロットル弁21の最終閉弁速度TASPDが、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じて変わるので、全開等、開度が大きい状態からでもEGR弁18の閉弁遅れが有効に短縮される。更に、スロットル弁21が、閉弁開始から一定の最終閉弁速度TASPDで閉弁させられるので、エンジン1の減速感が途中で変わることがない。このため、エンジン1の急減速時にEGRの遮断遅れによるエンジン1の減速失火をより有効に抑えることができ、併せて、エンジン1の減速感の悪化を防止することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、第1実施形態のそれと同じである。
図10に、アクセル開度ACC、スロットル開度TA、EGR弁18の開度、エンジン負荷KL及びEGR率の挙動をタイムチャートにより示す。図10(a)において、時刻t1で、アクセルペダル26の踏み込みが解除されると、アクセル開度ACCが所定値から全閉へ向けて低下し始める。その後、時刻t2で、アクセルペダル26の全閉(減速)判定がなされると、図10(b)に示すように、EGR弁18が開弁状態から閉弁を開始し、時刻t7で閉弁を完了する。この実施形態では、アクセルペダル26の踏み込みを解除してから、電子スロットル装置14のスロットル弁21が開弁状態から閉弁を開始してスロットル開度TAが全閉へ向けて低下し始めるまでに、図10(a)に示すように、例えば「32 ms」の動作遅れが存在する。従って、スロットル弁21は、この動作遅れを経過した時刻t3で、閉弁を開始することになる。ここで、仮に、スロットル弁21が、第1実施形態の基本閉弁速度TAspdで閉弁したとすると、例えば、図10(a)に2点鎖線で示すように、スロットル弁21が比較的急激に閉弁して時刻t5で全閉となる。これに対し、この実施形態では、スロットル弁21が、基本閉弁速度TAspdに回転補正係数Kspdを乗算して補正した最終閉弁速度TASPDで閉弁される。また、エンジン回転速度NEが所定値N1よりも高い高回転側では、エンジン回転速度NEが高くなるほど最終閉弁速度TASPDが遅くなる。これにより、図10(a)に実線で示すように、スロットル弁21が、時刻t5よりも遅い時刻t6で全閉となる。このため、図10(b)に示すように、スロットル弁21の閉弁に対するEGR弁18の閉弁遅れ時間Td2を、エンジン回転速度NEが高くなるほどより短い閉弁遅れ時間Td3に短縮できる。この結果、EGR弁18の閉弁遅れ時間Td3をより短縮できる分だけ、エンジン1の急減速時におけるEGRの遮断遅れをより有効に抑えることができ、エンジン1の減速失火をより有効に抑えることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、スロットル制御の処理内容の点で第1及び第2の実施形態と構成が異なる。図11に、スロットル制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図11に示すフローチャートでは、図5に示すフローチャートとステップ200〜ステップ260の処理内容について共通し、ステップ400〜ステップ440の処理内容について相違する。
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ200〜ステップ260で、ECU41は、図5のフローチャートに示す内容と同様の処理を実行する。
そして、ステップ260から移行してステップ400で、ECU41は、エンジン急減速初期におけるスロットル弁21のスロットル開度TAを初期スロットル開度TAsとして取り込む。
次に、ステップ410で、ECU41は、スロットル弁21とEGR弁18の開弁比T/Eを求める。すなわち、ECU41は、エンジン1の急減速判断直後の急減速初期におけるEGR弁18の初期実開度TTegrsに対する、急減速初期におけるスロットル弁21の初期スロットル開度TAsの比を開弁比T/Eとして算出する。
次に、ステップ420で、ECU41は、開弁比T/Eに応じた開弁比補正係数Ktaegrを求める。ECU41は、この処理を、予め設定された関数データである開弁比補正マップを参照して行う。図12に、一例として、開弁比T/Eと開弁比補正係数Ktaegrの関係を開弁比補正マップにより示す。図12に示すように、この開弁比補正マップは、概略的には、開弁比T/Eが、「0〜1.0」の間では、開弁比補正係数Ktaegrが「0〜1.0」の範囲内で下限値から徐々に増加し、開弁比T/Eが「1.0」よりも大きくなるに連れて開弁比補正係数Ktaegrは「1.0」よりも大きい所定範囲内で上限値まで徐々に増加する。
次に、ステップ430で、ECU41は、電子スロットル装置14の最終閉弁速度TASPDを求める。ECU41は、基本閉弁速度TAspdと開弁比補正係数Ktaegrを乗算することによりこの最終閉弁速度TASPDを求める。
そして、ステップ440で、ECU41は、ステップモータ22を制御することにより、電子スロットル装置14のスロットル弁21を最終閉弁速度TASPDで閉弁させて全閉にする。
上記したスロットル制御によれば、ECU41は、エンジン1の運転状態に応じて電子スロットル装置14を制御するようになっている。また、ECU41は、エンジン1の急減速時と判断したときに、電子スロットル装置14のスロットル弁21を、閉弁開始から、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じた基本閉弁速度TAspdを開弁比T/Eに応じた開弁比補正係数Ktaegrで補正した、所期の閉弁速度よりも遅い一定の最終閉弁速度TASPDで閉弁させるようになっている。
以上説明したこの実施形態におけるエンジンの制御装置によれば、ECU41により、エンジン1の急減速時と判断されたときに、ECU41により、電子スロットル装置14のスロットル弁21が、所期の閉弁速度よりも遅い一定の最終閉弁速度TASPDで閉弁される。この最終閉弁速度TASPDは、エンジン1の急減速時におけるEGR弁18の初期実開度TTegrsに応じて求められた一定の基本閉弁速度TAspdが、EGR弁18とスロットル弁21の開弁比T/Eに応じた開弁比補正係数Ktaegrにより補正されたものである。ここで、エンジン1の急減速時において、この開弁比T/Eが小さくなるほどスロットル弁21の閉弁が速くなる。また、エンジン1の急減速時において、エンジン負荷KLは、開弁比T/Eが小さくなるほど減衰速度が大きくなり、それに伴いEGR率の増加もより急激なものとなる(後述する図13(c),(d)参照)。従って、電子スロットル装置14のスロットル弁21の閉弁時における一定の最終閉弁速度TASPDが、EGR弁18とスロットル弁21の開弁比T/Eに応じた開弁比補正係数Ktaegrにより補正されるので、例えば、開弁比T/Eが小さくなってもEGR弁18の閉弁遅れが有効に短縮される。また、スロットル弁21の最終閉弁速度TASPDが、EGR弁18の初期実開度TTegrsに応じて変わるので、全開等、開度が大きい状態からでもEGR弁18の閉弁遅れが有効に短縮される。更に、スロットル弁21が、閉弁開始から一定の最終閉弁速度TASPDで閉弁させられるので、エンジン1の減速感が途中で変わることがない。このため、エンジン1の急減速時にEGRの遮断遅れによるエンジン1の減速失火をより有効に抑えることができ、併せて、エンジン1の減速感の悪化を防止することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、第1実施形態のそれと同じである。
図13に、アクセル開度ACC、スロットル開度TA、EGR弁18の開度、エンジン負荷KL及びEGR率の挙動をタイムチャートにより示す。図13(a)において、アクセル開度ACCが比較的大きくてスロットル開度TAが比較的大きい場合、時刻t1で、アクセルペダル26の踏み込みが解除されると、アクセル開度ACCが所定値から全閉へ向けて低下し始める。その後、時刻t3で、アクセルペダル26の全閉(減速)判定がなされると、図13(b)に実線(太線)で示すように、EGR弁18が開弁状態から閉弁を開始し、時刻t11で閉弁を完了する。この実施形態では、アクセルペダル26の踏み込みを解除してから、電子スロットル装置14のスロットル弁21が開弁状態から閉弁を開始してスロットル開度TAが全閉へ向けて低下し始めるまでに、図13(a)に示すように、例えば「32 ms」の動作遅れが存在する。従って、スロットル弁21は、この動作遅れを経過した時刻t4で、閉弁を開始する。ここで、開弁比T/Eが大きい場合に、スロットル弁21が、開弁比補正係数Ktaegrで補正した最終閉弁速度TASPDで閉弁すると、例えば、図13(a)に2点鎖線(太線)で示すように、スロットル弁21が比較的急激に閉弁して時刻t7で全閉となる。これに対し、開弁比T/Eが小さい場合に、スロットル弁21が、開弁比補正係数Ktaegrで補正した最終閉弁速度TASPDで閉弁すると、例えば、図13(a)に実線(太線)で示すように、スロットル弁21が比較的緩やかに閉弁する。これは、開弁比T/Eが小さくなるほど開弁比補正係数Ktaegrが小さくなり、最終閉弁速度TASPDが遅くなるからである。これにより、図13(a)に実線(太線)で示すように、スロットル弁21が、時刻t7よりも遅い時刻t9で全閉となる。このため、図13(b)に示すように、スロットル弁21の閉弁に対するEGR弁18の閉弁遅れ時間Td4を、閉弁比T/Eが小さくなるほどより短縮できる。この結果、EGR弁18の閉弁遅れ時間Td4をより短縮できる分だけ、エンジン1の急減速時におけるEGRの遮断遅れをより有効に抑えることができ、エンジン1の減速失火をより有効に抑えることができる。
同様に、図13(a)において、アクセル開度ACCが中程度でスロットル開度TAが中程度の場合、時刻t1で、アクセルペダル26の踏み込みが解除されると、アクセル開度ACCが所定値から全閉へ向けて低下し始める。その後、時刻t2で、早めにアクセルペダル26の全閉(減速)判定がなされると、図13(b)に2点鎖線(太線)で示すように、EGR弁18が開弁状態から閉弁を開始し、時刻t10で閉弁を完了する。そして、スロットル弁21は、図13(a)に2点鎖線で示すように、動作遅れ後の時刻t4で、閉弁を開始する。ここで、開弁比T/Eが大きい場合に、スロットル弁21が、開弁比補正係数Ktaegrで補正した最終閉弁速度TASPDで閉弁すると、例えば、図13(a)に2点鎖線で示すように、スロットル弁21が比較的急激に閉弁して時刻t5で全閉となる。これに対し、開弁比T/Eが小さい場合に、スロットル弁21が、開弁比補正係数Ktaegrで補正した最終閉弁速度TASPDで閉弁すると、例えば、図13(a)に実線で示すように、スロットル弁21が比較的緩やかに閉弁する。これは、開弁比T/Eが小さくなるほど開弁比補正係数Ktaegrが小さくなり、最終閉弁速度TASPDが遅くなるからである。これにより、図13(a)に実線で示すように、スロットル弁21が、時刻t5よりも遅い時刻t8で全閉となる。このため、図13(b)に示すように、スロットル弁21の閉弁に対するEGR弁18の閉弁遅れ時間Td5を、閉弁比T/Eが小さくなるほどより短縮できる。この結果、EGR弁18の閉弁遅れ時間Td5をより短縮できる分だけ、エンジン1の急減速時におけるEGRの遮断遅れをより有効に抑えることができ、エンジン1の減速失火をより有効に抑えることができる。
上記のように、この実施形態では、EGR弁18に対するスロットル弁21の開弁比T/Eが小さくなるほど、図13(d)に示すように、エンジン1の急減速時におけるEGR率が過剰に上昇するので、減速失火の点で条件が厳しい。そこで、基本閉弁速度TAspdを開弁比T/Eに応じた開弁比補正係数Ktaegrで補正することにより最終閉弁速度TASPDを求め、その最終閉弁速度TASPDでスロットル弁21を閉弁するようにしている。ここで、スロットル弁21の全開時における流路面積に比べ、EGR弁18の全開時における流路面積は小さい。そのため、EGR率が同じでも、エンジン1の運転条件によっては、開弁比T/Eが異なることがある。そこで、この実施形態では、エンジン1の運転条件にかかわらず、開弁比T/Eが小さくなるほど、スロットル弁21の最終閉弁速度TASPDが遅くなるようになっている。
<第4実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図14に、この実施形態におけるEGR装置を含む過給機付エンジンシステムを概略構成図により示す。図14に示すように、この実施形態では、エンジン1の出力を変速するための変速機61と、その変速機61の変速位置を検出するための本発明の変速位置検出手段に相当する変速位置センサ62とを備え、ECU41が、変速位置センサ62からの信号をEGR制御に反映させている点で前記各実施形態と構成が異なる。この実施形態で、変速機61は、1速1st、2速2st、3速3st、4速4st、5速5st及び6速6stと、低速側から高速側まで6速に変速可能に構成される。従って、変速位置センサ62は、1速1st〜6速6stの変速位置SPを検出し、その検出信号をECU41へ出力するように構成される。
また、この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。図15に、EGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図15に示すフローチャートでは、図3に示すフローチャートとステップ100〜ステップ160の処理内容について共通し、ステップ500〜ステップ530の処理内容について相違する。
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100〜ステップ130で、ECU41は、図3のフローチャートに示す内容と同様の処理を実行する。
そして、ステップ130から移行してステップ500で、ECU41は、変速機61の変速位置SPを取り込む。
次に、ステップ510で、ECU41は、変速位置SPに応じたEGR弁18の上限開度Tegrmaxを求める。ここで、上限開度Tegrmaxとは、EGR弁18が開弁を許容される最大開度を意味する。ECU41は、この処理を、予め設定された上限開度マップを参照して行う。図16に、一例として、変速位置SPと上限開度Tegrmaxとの関係を上限開度マップにより示す。この上限開度マップでは、変速位置SPの1速1st〜6速6stに対して、上限開度Tegrmaxが「50%、60%、80%、90%、100%、100%」と設定されている。すなわち、変速位置SPが低速側ほど上限開度Tegrmaxが小さくなるように設定されている。
次に、ステップ520で、ECU41は、目標開度Tegrが上限開度Tegrmax以下の値になるか否かを判断する。この判断結果が肯定の場合、ECU41は、そのままステップ140へ移行する。この判断結果が否定の場合、ECU41は、ステップ530で、上限開度Tegrmaxの値を目標開度Tegrとして設定し、ステップ140へ移行する。
そして、ステップ520又はステップ530から移行してステップ140で、ECU41は、ステップモータ31を制御することにより、EGR弁18を目標開度Tegrに制御し、ステップ150へ移行する。
上記したEGR制御によれば、ECU41は、エンジン1の運転状態に応じてEGR弁18を制御するようになっている。また、ECU41は、検出される変速位置SPが低速側になるほどEGR弁18の上限開度Tegrmaxが小さくなるようにEGR弁18を制御するようになっている。
以上説明したこの実施形態におけるエンジンの制御装置において、エンジン1の減速時における減速要求は、変速機61の変速位置SPが低速側になるほど強くなる。また、変速位置SPが低速側になるほど、エンジン回転速度NEは高くなるので、エンジン1の減速時における吸気負圧の上昇が速くなり、EGR通路17を流れるEGR流量が多くな
る。従って、変速位置SPが低速側になるほど、エンジン1の減速時にEGR弁18の閉
弁遅れによりエンジン1の減速失火が起きやすくなる。この実施形態では、変速位置SPが低速側になるほど、EGR弁18の許容されるべき上限開度Tegrmaxが全開(100%)よりも小さい開度に抑えられるので、その分だけEGR弁18の閉弁が速くなり、スロットル弁21の閉弁に対するEGR弁18の閉弁遅れが短縮される。この結果、スロットル弁21を所期の閉弁速度よりも遅い一定の閉弁速度で閉弁させることと相俟って、エンジン1の急減速時にEGRの遮断遅れによるエンジン1の減速失火をより有効に防止することができる。
<第5実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図17に、この実施形態におけるEGR装置を含む過給機付エンジンシステムを概略構成図により示す。図17に示すように、この実施形態では、EGR装置の配置の点で前記各実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態で、EGR通路17は、その入口17bが触媒コンバータ15より下流の排気通路5に接続され、その出口17aが過給機7のコンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。その他の構成については、前記各実施形態のそれと同じである。
従って、この実施形態によれば、エンジン1の運転時であって、過給機7の作動時にEGR弁18が開いているときは、過給吸気圧による負圧が、コンプレッサ8より上流の吸気通路3にてEGR通路17の出口17aに作用し、触媒コンバータ15より下流の排気通路5に流れる排気の一部がEGR通路17、EGRクーラ20及びEGR弁18を介して吸気通路3へ引き込まれる。ここで、高過給域であっても触媒コンバータ15の下流側では、触媒コンバータ15が抵抗となって排気圧力がある程度低減される。このため、高過給域までEGR通路17に過給吸気圧による負圧を作用させてEGRを行うことができる。また、触媒コンバータ15で浄化される排気ガスの一部がEGR通路17に導入されるので、第1実施形態と比較して、EGR通路17からEGR用触媒コンバータ19を省略することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、第1実施形態のそれと同じである。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することができる。
(1)前記各実施形態では、本発明のEGR装置を過給機7を備えたエンジン1に具体化したが、本発明のEGR装置を過給機を備えていないエンジンに具体化することもできる。
(2)前記各実施形態では、ECU41により本発明の排気還流弁開度検出手段を構成したが、EGR弁の弁体のストローク位置を検出する位置センサを排気還流弁開度検出手段として設けることもできる。
(3)前記第2実施形態では、スロットル制御において、基本閉弁速度TAspdに回転補正係数Kspdを乗算して補正することにより、最終閉弁速度TASPDを求めた。これに対し、基本閉弁速度TAspdに、回転補正係数Kspdと開弁比補正係数Ktaegrを乗算して補正することにより、最終閉弁速度TASPDを求めるようにしてもよい。また、この場合のEGR制御において、EGR弁18の開度を上限開度Tegrmaxに制限するようにしてもよい。