JP2013241531A - 水溶性を有する熱可塑性ポリビニルアルコール組成物及び繊維 - Google Patents

水溶性を有する熱可塑性ポリビニルアルコール組成物及び繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】ゲル化等の問題なく長期間溶融成型、紡糸することの可能なPVA系水溶性組成物及び繊維を提供する。
【解決手段】粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.99モル%、ビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率が70〜99.9モル%であり、融点が160℃〜230℃であるポリビニルアルコール系重合体であって、かつアルカリ金属イオンナトリウム換算で0.0003〜1重量部含有されている水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、可塑剤(B)と、滑剤(C)と無機微粒子(D)とからなり、該(B)成分の含有量が1〜30重量%である組成物を少なくとも一成分として含み、該(C)成分の含有量が0.05〜5重量%である組成物を少なくとも一成分として含み該(D)成分の含有量が0.05〜10重量%である組成物を少なくとも一成分として含む水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール組成物および繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は特定の組成からなる水溶性の熱可塑性ポリビニルアルコール組成物及び繊維に関する。
従来、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略称することもある)系水溶性繊維としては、1)原液溶媒と固化浴のいずれもが水系である湿式・乾湿式紡糸法による繊維、2)原液溶媒が水系である乾式紡糸法による繊維、3)原液溶媒と固化浴のいずれもが非水溶媒系の湿式・乾湿式紡糸(ゲル紡糸)法による繊維が知られている。
これらのPVA系水溶性繊維は、ステープルまたはショートカット繊維として乾式不織布や紡績糸、製紙分野などで用いられたり、マルチフィラメントとして織物や編物に用いられている。特に80℃〜90℃の熱水に可溶のショートカット繊維は繊維状バインダーとして製紙工業において重要な位置を占め、マルチフィラメントもケミカルレースの基布として多く用いられている。また近年の環境問題において、環境にやさしい生分解性繊維としても注目されている。
しかしながら、一般的にこれらの紡糸方法では、例えば、500m/分を超えるような高速紡糸が困難であること、繊維断面の形状を自由にコントロールすることが困難であること、紡糸工程で使用される各種溶剤の回収のための設備が必要であることなどの点において、溶融紡糸法に比較すると種々の制限を受け、特別な配慮が必要であることは否めなかった。
一方、PVA系水溶性繊維を溶融紡糸によって得る方法も行われているが、PVAは熱安定性、曳糸性に乏しくゲル化などの問題がある。これを改善するためグリセリン、ジグリセリン等の可塑剤をPVAに配合し、流動性を上げることで紡糸温度を下げる工夫がなされている。しかしながら、グリセリン、ジグリゼリン等の可塑剤は、それ自身の熱安定性が低いため、繊維化工程で熱分解を起こし、可塑性、紡糸性の低下を招く。このような現象は分子量の低いグリセリンやグリセリンのエチレンオキサイド反応付加物を用いた場合に起こり易い。更に、PVA系水溶性繊維をゲル化等の問題なく溶融紡糸するために、PVAとの相溶性及び可塑化能に優れ、熱安定性の良好な可塑剤を開発するにあたり、ソルビトールに特定量のエチレンオキサイドを反応させた化合物が相溶性、可塑化能及び熱安定性の点でいずれも優れ、PVAに配合する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、長期生産性においてゲル化を抑制すること、短期間で機台分解清掃を実施しなければならない。という課題を解決する手段として本発明者らはPVAの流動性を向上させる滑剤として脂肪酸誘導体及び低分子量ポリオレフィンを配合することを提案しているが、用途によっては更に均斉度の高い物が望まれていた。
特開2001−089932号公報
本発明の課題はPVA系水溶性組成物及び繊維をゲル化等の問題なく長期間溶融成型、紡糸するためことにある。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、PVAとの相溶性及び可塑化能に優れ、熱安定性の良好な可塑剤ソルビトールに特定量のエチレンオキサイドを反応させた化合物をPVAに配合させ、なおかつPVAの流動性を向上させる滑剤として脂肪酸誘導体及び低分子量ポリオレフィンを配合することと、無機微粒子を配合することにより、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.99モル%、ビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率が70〜99.9モル%であり、融点が160〜230℃であるPVAで、かつアルカリ金属イオンがナトリウムイオン換算で0.0003〜1重量部含有されている水溶性熱可塑性PVA(A)と、可塑剤(B)と、滑剤(C)と無機微粒子(D)からなり、該(B)成分の含有量が1〜30重量%である組成物を少なくとも一成分として含み、該(C)成分の含有量が0.05〜5重量%である組成物を少なくとも一成分として含み、該(D)成分の含有量が0.05〜10重量%である組成物を少なくとも一成分として含む水溶性熱可塑性PVA組成物及び繊維である。
本発明においては、特定の可塑剤を添加した特定組成のPVAを用いることにより、水溶性熱可塑性PVA組成物及び繊維の溶融成型工程性、繊維化工程性、連続ランニング性を大きく向上させることができる。また、得られた組成物及び繊維は優れた水溶性を示すため、未溶解物が溶解処理系内に残り容器や被処理物に付着するという問題も殆どない。
本発明において用いられる水溶性熱可塑性PVAとは、PVAのホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、および後反応により官能基を導入した変性PVAも包含するものである。
本発明に用いられるPVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)は200〜500であり、230〜470が好ましく、250〜450が特にましい。重合度が200未満の場合には溶融成形性不良となり、溶融紡糸時には十分な曳糸性が得られず、繊維化できない。重合度が500を越えると溶融粘度が高すぎて、溶融成型金型、紡糸ノズルからポリマーを吐出することができない。また重合度500以下のいわゆる低重合度のPVAを用いることにより、水溶液で組成物、繊維を溶解するときに溶解速度が速くなるばかりでなく組成物、繊維が溶解する時の収縮率を小さくすることができる。
PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再鹸化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に達せられる。
本発明のPVAの鹸化度は90〜99.99モル%であることが必要であり、好ましくは93〜99.98モル%、より好ましくは94〜99.97モル%、特に好ましくは96〜99.96モル%である。鹸化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な溶融成型、溶融紡糸を行うことができないのみならず、後述する共重合モノマーの種類によってはPVAの水溶性が低下し、本発明の組成物及び繊維を得ることができない場合がある。一方、鹸化度が99.99モル%より大きいPVAは安定に製造することができず、安定した溶融成型化、繊維化もできない。
本発明において、トライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基とは、PVAのd6−DMSO溶液での500MHz プロトンNMR(JEOL GX−500)装置、65℃測定による水酸基プロトンのトライアッドのタクティシティを反映するピーク(I)を意味する。ピーク(I)はPVAの水酸基のトライアッド表示のアイソタクティシティ連鎖(4.54ppm)、ヘテロタクティシティ連鎖(4.36ppm)およびシンジオタクティシティ連鎖(4.13ppm)の和で表わされ、全てのビニルアルコールユニットにおける水酸基のピーク(II)はケミカルシフト4.05ppm〜4.70ppmの領域に現れることから、本発明のビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率は、100×(I)/(II)で表わされるものである。
本発明においては、水酸基3連鎖の中心水酸基の量を制御することで、PVAの水溶性、吸湿性など水に関わる諸物性、強度、伸度、弾性率など組成物及び繊維に関わる諸物性、融点、溶融粘度など溶融成形性、溶融紡糸性に関わる諸物性をコントロールできる。これはトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基は結晶性に富み、PVAの特長を発現させるためと思われる。
本発明の組成物及び繊維におけるPVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量は70〜99.9モル%であり、72〜99モル%が好ましく、74〜97モル%がより好ましく、75〜96モル%がさらに好ましく、76〜95モル%が特に好ましい。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が70モル%未満である場合には、ポリマーの結晶性が低下し、組成物の強度、繊維強度が低くなると同時に、溶融紡糸時に繊維が膠着して巻取り後に巻き出しできない場合がある。また本発明で目的とする組成物、繊維が得られない場合がある。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が99.9モル%より大の場合には、ポリマーの融点が高いため溶融成型温度、溶融紡糸温度を高くする必要があり、その結果、溶融成型時、溶融紡糸時のポリマーの熱安定性が悪く、分解、ゲル化、ポリマーの着色が起こる。
また、本発明のPVAがエチレン変性のPVAである場合、下記式を満足することで本発明の効果は更に高くなるものである。
−1.5×Et+100≧モル分率≧−Et+85
ここで、モル分率(単位:モル%)はビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率を表し、Etはビニルアルコール系共重合体が含有するエチレン含量(単位:モル%)を表す。
本発明に用いられるPVAの融点(Tm)は160〜230℃であり、170〜227℃が好ましく、175〜224℃がより好ましく、180〜220℃が特に好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し組成物、繊維強度が低くなると同時に、PVAの熱安定性が悪くなり、溶融成型化、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を越えると溶融成型温度、溶融紡糸温度が高くなり成型温度、紡糸温度とPVAの分解温度が近づくために目的とする組成物、繊維を安定に製造することができない。
PVAの融点は、DSCを用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
PVAは、ビニルエステル単位を鹸化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
本発明の組成物及び繊維を構成するPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性PVAであつてもよいが、溶融成型性、溶融紡糸性、水溶性、組成物物性、繊維物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキサン等のα−オレフィン類、アクリル酸およびその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アクリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、通常20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
これらの単量体の中でも、入手のしやすさなどから、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類に由来する単量体が好ましい。
特に、共重合性、溶融成型性、溶融紡糸性の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に0.1〜20モル%存在していることが好ましく、さらに4〜15モル%が好ましく、6〜13モル%が特に好ましい。さらに、α−オレフィンがエチレンである場合において、組成物物性、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用することが好ましい。
本発明で使用されるPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃−150℃の範囲が適当である。
本発明の組成物及び繊維におけるPVA中のアルカリ金属イオンの含有割合は、PVA100重量部に対してナトリウムイオン換算で0.0003〜1重量部であり、0.0003〜0.8重量部が好ましく、0.0005〜0.6重量部がより好ましく、0.0005〜0.5重量部が特に好ましい。アルカリ金属イオンの含有割合が0.0003重量部未満の場合には、得られた組成物、繊維が十分な水溶性を示さない場合がある。またアルカリ金属イオンの含有量が1重量部より多い場合には溶融成型時及び溶融紡糸時の分解及びゲル化が著しく溶融成型化、繊維化することができない。アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等があげられる。
本発明において、特定量のアルカリ金属イオンをPVA中に含有させる方法は特に制限されず、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中において鹸化するに際し、鹸化触媒としてアルカリイオンを含有するアルカリ性物質を使用することによりPVA中にアルカリ金属イオンを配合し、鹸化して得られたPVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含まれるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙げられるが後者のほうが好ましい。なお、アルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
鹸化触媒として使用するアルカリ性物質としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが挙げられる。鹸化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。鹸化触媒は、鹸化反応の初期に一括添加しても良いし、鹸化反応の途中で追加添加しても良い。鹸化反応の溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどがあげられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜1重量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.003〜0.9重量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.005〜0.8重量%に制御したメタノールが特に好ましい。洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エステル、ヘキサン、水などがあげられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。洗浄液の量としてはアルカリ金属イオンの含有割合を満足するように設定されるが、通常、PVA100重量部に対して、300〜10000重量部が好ましく、500〜5000重量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
また本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて銅化合物等の安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。特に熱安定剤としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅等のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞留安定性が向上するので好ましい。
さらに、本発明の組成物及び繊維においては、可塑剤(B)と滑剤(C)と無機微粒子(D)が特定量含有されていることが重要である。ソルビトール1モルにエチレンオキサイドを1〜30モル付加した化合物(B)のエチレンオキサイドの平均付加モル数が1未満では、相溶性は問題ないが、分子量が低いため、熱安定性に難がある。またエチレンオキサイドの平均付加モル数が30を超えると、SP値が低下するため、PVAとの相溶性が悪化し、溶融成型工程性、繊維化工程性に悪影響を及ぼすようになる。なお、付加モル数は、平均したものであって、付加モル数に分布があってもよいが、30モル以上の付加物が50重量%以上混入することは好ましくない。本発明の繊維には、可塑剤である該化合物(B)が組成物中に1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含有されている。含有量が1重量%未満では可塑化性が不十分であり、30重量%を超えると組成物強度、繊維強度が低下する問題が起こる。また、該化合物(B)の平均分子量は約200〜1500であることが好ましい。
滑剤(C)の脂肪酸誘導体としては、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレフィン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム等)、低分子量ポリオレフィンとしては、(例えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、又は、低分子量ポリプロピレン等)が挙げられるが必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の組成物及び繊維には、滑剤(C)が組成物中に0.05重量%〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%含有されている。含有量が0.05重量%未満ではPVAの流動性が上がらず可塑剤のみの場合と大差が無く長時間の連続運転が不可能である。5重量%を超えると溶融成型工程性、繊維化工程性が悪化し、組成物強度、繊維強度が低下する。
本発明の該無機微粒子(D)の一次平均粒子径(μm)とPVA中の無機微粒子含有量(重量%)が下式(1)〜(3)を満たす繊維が好ましい。
0.01≦一次平均粒子径(μm)≦5.0 (1)
0.05≦無機微粒子含有量(重量%)≦10.0 (2)
0.01≦X≦3.0 (3)
但し、X=一次平均粒子径(μm)×無機微粒子含有量(重量%)
無機微粒子の種類は、組成物及び繊維を形成するPVAに対して劣化作用などをもたず、それ自体で安定性に優れる無機微粒子であればいずれも使用できる。無機微粒子の代表例としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウムなどを挙げることができ、これらの無機微粒子は単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。2種以上を併用して用いる場合は、それぞれの無機微粒子の粒子径(a1、a2、・・・an)と含有量(b1、b2、…bn)の積の和が上記範囲を満たす必要がある。つまり、X=a1×b1+a2×b2+…an×bnのXが上記範囲を満たす事である。
また、無機微粒子の一次平均粒子径は0.01〜5.0μmであることが好ましく、0.03〜3.0μmであることがより好ましい。無機微粒子の一次平均粒子径が0.01μm未満であると、延伸を行うための加熱帯域の温度や糸条の走行速度、走行糸条にかかる張力などに僅かな変動が生じても、複合繊維にループ、毛羽、繊度斑などが発生しやすくなる。一方、無機微粒子の一次平均粒子径が3.0μmを超えると繊維の延伸性が低下して製糸性が不良になり、複合繊維の製造時に断糸などが発生し易くなる。ここで、無機微粒子の一次平均粒子径は、遠心沈降法を用いて測定したときの値をいう。
さらに、無機微粒子の含有量は、PVAの重量に基づいて、0.05重量%〜10.0重量%であることが好ましい。0.3重量%〜5.0重量%であることがより好ましい。無機微粒子の含有量がPVAの重量に基づいて、0.1重量%未満であると延伸を行うための加熱帯域の温度や糸条の走行速度、走行糸条にかかる張力などに僅かな変動を生じても、得られる複合繊維にループや毛羽、繊度斑などが発生するようになり、一方、無機微粒子の含有量が10.0重量%を超えると、繊維の延伸工程で無機微粒子が走行糸条と空気との間の抵抗を過度なものにして、毛羽の発生、断糸の発生などにつながり工程が不安定になる。
さらに、本発明においては無機微粒子の一次平均粒子径と含有量との積Xが特定の範囲内に納まることが望ましく、該積Xが0.01未満では、複合繊維にループや毛羽、繊度斑などが発生し工程性不良で好ましくないばかりでなく、得られた繊維中に未延伸部が多発し衣料用途には使用困難である。以上、説明したPVAを用いることが、本発明の重要な要件である。
可塑剤である該化合物(B)、滑剤である該化合物(C)無機微粒子(D)をPVA(A)に添加する方法としては、特に制限はないが、二軸押出機を用いて、マスターチップ化する方法が、可塑剤を均一分散させるという点で好ましい。本発明のPVAからなる繊維の製造にあたっては、公知の溶融紡糸装置を用いることができる。すなわち、溶融押出機でPVAペレットを溶融し、溶融ポリマーを紡糸頭に導き、ギヤポンプで計量し、ノズルから吐出させた糸条を巻き取ることで得られる。紡糸ノズルから吐出された糸条は延伸せずにそのまま高速で巻き取るか必要に応じて延伸される。延伸は破断伸度(HDmax)×0.55〜0.9倍の延伸倍率でガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸される。延伸倍率がHDmax×0.55未満では十分な強度を有する繊維が安定して得られず、HDmax×0.9を越えると断糸しやすくなる。延伸は紡糸ノズルから吐出された後に一旦巻き取ってから延伸する場合と、延伸に引き続いて施される場合があるが、本発明においてはいずれでもよい。延伸は通常熱延伸され、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいずれを用いて行ってもよい。
紡糸された繊維には、通常油剤が付与されるが、本発明のA成分ポリマーは水溶性であり、吸湿性も高いので、水を含まないストレート油剤を付与することが好ましい。油剤成分は水を含まない制電剤成分と平滑剤成分とからなるが、たとえば、ポリオキシエチレンラウリルホスフェートジエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンセチルホスフェートジエタノールアミン塩、アルキルイミダゾリウムエトサルフェート、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルカチオン化物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセライド、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールアルキルエステル、ポリオキシエチレンカスターワックス、プロピオンオキサイド/エチレンオキサイド(PO/EO)ランダムエーテル、PO/EOブロックエーテル、PO/EO変性シリコーン、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、高分子アマイド、ブチルセロソルブ、鉱物油、中性油から選んで配合したものを用いることができる。油剤を付与する方法は、通常行われているローラータッチ、烏口による方法でよい。
また、引取り速度は、一旦巻き取ってから延伸処理を行う場合、紡糸直結延伸の一工程で紡糸延伸して巻き取る場合、延伸を行わずに高速でそのまま巻き取る場合で異なるが、大凡500m/分から7000m/分の範囲で繊維化が可能である。500m/分未満で紡糸できないことはないが、生産性の点からは意味が少ない。一方、7000m/分を越えるような超高速では、繊維の断糸が起こりやすい。また、本発明におけるPVA繊維は、上記下組成物を一成分として含むものであれば、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の他の熱可塑性ポリマーをブレンドして紡糸したり、また、各種複合形態とした複合繊維としても差し支えない。さらに、繊維の断面形状は、丸断面のみならず3葉形、T形、4葉形、5葉形、6葉形、7葉形、8葉形等多葉形や十字形等各種の形状にすることが可能である。
上記のようにして得られる本発明のPVA繊維は優れた水溶性を示すものであり、その水溶性は、繊維1gと100gの水を容器に入れ、90℃の温度で1時間攪拌処理し、処理液を濾紙を用いて濾過した後、濾紙上の未溶解物を絶乾させて量を測り、溶解率を求めた場合に、80%以上の溶解率を示す点に特徴を有するものである。さらに、本発明のPVA繊維は溶解処理によって未溶解物として残るものが殆どないため、処理容器や被処理物への付着がなく、後工程でのトラブルを防ぐことができるという特徴をも有するものである。
以下に本発明の繊維について具体的に実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り重量に関するものである。
[PVAの分析方法]
PVAの分析方法は特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。変性量は変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用いて500MHzプロトンNMR(JEOL GX-500)装置による測定から求めた。アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光法で求めた。
[PVAのトライアッド表示による3連鎖の水酸基の割合]
PVAを鹸化度99.5モル%以上に鹸化後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間したPVAを用いて、d6−DMSOに溶解した後、500MHz プロトンNMR(JEOL社製「GX−500」)装置により65℃測定を行った。PVA中のビニルアルコールユニットの水酸基由来のピークはケミカルシフト4.05ppmから4.70ppmの領域に現れ、この積分値をビニルアルコールユニット量(II)とする。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基はそれぞれアイソタクティシティ連鎖の場合4.54ppm、ヘテロタクティシティ連鎖の場合4.36ppmおよびシンジオタクティシティ連鎖の場合は4.13ppmに現れる。この3者の積分値の和をトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基量(I)とする。本発明のPVAのビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率は、100×(I)/(II)で表される。
[融点 ℃]
PVAの融点は、DSC(メトラー社製「TA3000」)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度で表した。
[繊維化工程性評価]
100kgの繊維を紡糸する際に何回断糸するかによって、次のように評価した。
◎:0〜1回/100kg
○:2〜3回/100kg
△:4〜7回/100kg
×:8回以上/100kg
[繊維化工程連続ランニング性評価]
80kg/日で繊維を紡糸する際に何回断糸するかによって、次のように評価した。
◎:7日間の断糸回数が0〜5回
○:7日間の断糸回数が5〜7回
△:7日間の断糸回数が7〜20回
×:7日以内で断糸多発
[繊維強度]
JIS−L1013に準じて測定した。
[水溶性]
得られた繊維1gと100gの水を容器に入れ、90℃の温度で1時間攪拌処理し、処理液を濾紙を用いて濾過した後、濾紙上の未溶解物を絶乾させて量を測り、次式により溶解率を求めて評価した。また、容器中への付着物の量についても目視判断し、評価基準とした。
(1)溶解率=(1−X)×100(%)
X:絶乾した未溶解物の量(g)
評価;
○:溶解率80%以上
△: 〃 50%以上80%未満
×: 〃 50%未満
(2)容器中への付着物の量
○:全く無し
△:若干有り
×:非常に多い
実施例1
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kg/cmとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cmに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニルの酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加して鹸化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置して鹸化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾瀘別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVAを得た。
得られたエチレン変性PVAの鹸化度は98.4モル%であった。また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100重量部に対して0.03重量部であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は10モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ330であった。該精製PVAの1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を5000MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から前述のとおり求めたところ、それぞれ1.50モル%および83%であった。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ206℃であった(表1)。
Figure 2013241531
Figure 2013241531
Figure 2013241531
次に、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル付加した化合物を、二軸押出機を用いて上記で得られた変性PVAに5重量%、滑剤としてエチレンステアリン酸アミドを0.1重量%、無機微粒子としてシリカを1重量%添加して混練し、微粒子添加変性PVAを作成した。
さらに得られた上記変性PVAを溶融紡糸機により240℃で丸孔ノズルより吐出し紡糸した。該紡糸原糸をローラープレート方式で通常の条件により延伸し、75dtex/36fのマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、連続ランニング性、延伸性は良好で全く問題がなかった。また、水溶性についても90℃の水中で1時間処理した結果、96%の溶解率となり、容器への未溶解物の付着も認められなかった。
実施例2〜3
実施例1で添加した無機微粒子を表1に表す無機微粒子に変更し、表1に表す添加量にすること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、延伸性は良好であり、水溶性についても問題なかった。
実施例4〜7
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを用いること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、延伸性は良好であり、水溶性についても問題なかった。
実施例8〜10
表1に示すようにソルビトール/エチレンオキサイドの組成比及びその添加量を変更すること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、連続ランニング性、延伸性共に問題なく、水溶性も良好であった。
実施例11〜13
表1で示すように脂肪酸誘導体の種類を変更すること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、連続ランニング性、延伸性共に問題なく、水溶性も良好であった。
実施例14〜15
表1で示すように脂肪酸誘導体の添加量を変更すること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、連続ランニング性、延伸性共に問題なく、水溶性も良好であった。
実施例16
表1で示すように滑剤を分子量6500の低分子ポリエチレンに変更すること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、連続ランニング性、延伸性共に問題なく、水溶性も良好であった。
実施例17〜18
表1で示すように可塑剤の種類をポリグリセリンラウリン酸エステル、PO/EOランダム共重合物に変更すること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。得られた繊維の紡糸性、連続ランニング性、延伸性共に問題なく、水溶性も良好であった。
比較例1
実施例1で添加した無機微粒子を添加しないこと以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得たが、紡糸工程においてループや毛羽、繊度斑が発生し、工程性不良であり、延伸工程で未延伸部分が発生した。紡糸工程性、連続ランニング性、延伸性は無機微粒子を添加したものと比較すると劣るものであった。
比較例2〜3
表2で表すように無機微粒子の添加量を変更すること以外は実施例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。比較例2の無機微粒子の添加量が0.02重量%の場合、比較例1と同様に紡糸工程においてループや毛羽、繊度斑が発生し、工程性不良であり、延伸工程で未延伸部分が発生した。比較例3の繊維は無機微粒子の添加量が15重量%の場合紡糸、延伸工程時に無機微粒子が走行糸条と空気との間の抵抗を過度なものにして毛羽の発生、断糸が発生した。比較例3の場合無機微粒子が溶解せず溶解処理系内に残り容器や被処理物に付着するという問題が発生した。
比較例4〜9
実施例1で用いたPVAの代わりに表2に示すPVAを用いること以外は実施例1と同様に紡糸を実施した。比較例4及び5はPVAの溶融粘度が高すぎて巻取り不可であった。比較例5はPVAの溶融粘度が低すぎて曳糸性不良となり、単糸切れが頻発した。比較例6及び9はPVAが熱分解、ゲル化を起こして紡糸性が悪く巻き取れなかった。比較例7は、PVAの結晶性が低下しているためと推定される糸の膠着が起こり、解舒することが安定してできず、延伸性不良であった。比較例8は、紡糸性、延伸性は問題なかったが、90℃の水中で1時間処理しても、未溶解物が多く残り、水溶性不良であった。
比較例10〜11
表2に示すようにソルビトール/エチレンオキサイドの組成比及びその添加量を変更すること以外は実施例1と同様に紡糸を実施した。比較例10は可塑剤の量が少ないため、予想される可塑効果が得られず長時間紡糸においてゲル化の問題が生じた。比較例11は、紡糸性、延伸性に問題はなかったが、繊維強度が低く、実用性のないものであった。
比較例12〜14
表2で示すように脂肪酸誘導体の添加量を変更すること以外は実施例1と同様に紡糸を実施した。比較例12は脂肪酸誘導体を添加していないため短期間の繊維化工程性は良好であったが、連続ランニング4日目から断糸が多発した。比較例13は脂肪酸誘導体の添加量が少ないため、比較例12と同様連続ランニング4日目から断糸が多発した。比較例14は、脂肪酸誘導体の添加量が多いため、巻取り工程で糸が滑り、耳落ちが激しく長時間の巻取りができなかった。

Claims (8)

  1. 粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.99モル%、ビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率が70〜99.9モル%であり、融点が160℃〜230℃であるポリビニルアルコール系重合体であって、かつアルカリ金属イオンナトリウム換算で0.0003〜1重量部含有されている水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、可塑剤(B)と、滑剤(C)と無機微粒子(D)とからなり、該(B)成分の含有量が1〜30重量%である組成物を少なくとも一成分として含み、該(C)成分の含有量が0.05〜5重量%である組成物を少なくとも一成分として含み該(D)成分の含有量が0.05〜10重量%である組成物を少なくとも一成分として含む水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール組成物。
  2. 請求項1記載の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール繊維。
  3. ポリビニルアルコールが、炭素数4以下のαオレフィン単位及び/またはビニルエーテル単位を0.1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項1記載の繊維。
  4. ポリビニルアルコール系重合体(A)がエチレン単位を4〜15モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項3記載の繊維。
  5. 可塑剤(B)がソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを1〜30モル付加した化合物である請求項1記載の繊維。
  6. 滑剤(C)が脂肪酸誘導体である請求項1記載の繊維。
  7. 滑剤(C)が分子量500〜10000の低分子量ポレオレフィンである請求項1記載の繊維
  8. 該無機微粒子(D)の一次平均粒子径(μm)と無機微粒子含有量(重量%)が下記式(1)〜(3)を満たす1項に記載の繊維。
    0.01≦一次平均粒子径(μm)≦5.0 (1)
    0.05≦無機微粒子含有量(重量%)≦10.0 (2)
    0.01≦X≦3.0 (3)
    但し、X=一次平均粒子径(μm)×無機微粒子含有量(重量%)
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