従来一般的に知られている移動棚装置は、複数台の移動棚が集合離散可能に並べられていて、物品を出し入れするときは、物品を出し入れしようとする移動棚の前面にのみ必要な幅の作業通路を形成し、他の移動棚は集合させておくため、スペースの利用効率が高くなる。移動棚は、構成を工夫することによって次のような機能を持たせることができる。
(1)セキュリティ機能
複数台の移動棚を収束させ、その状態で移動不能にロックすることによりセキュリティ機能を持たせる。電動式移動棚を構成するすべての移動棚を収束させてロックしてもよいし、移動棚をブロック分けし、特定のブロックに属する移動棚を収束させてロックしてもよい。収束した移動棚のうち最も外側にある移動棚の収納物には触れることができないように、上記最も外側にある移動棚の物品出し入れ口すなわち間口は建物の壁面などに近接し、あるいは覆い板の類で塞がれている。上記ロックは機械的な施錠によって行うことができ、電動式移動棚の場合は、特定のキーにより、あるいは生体認識された特定の使用者のみがロックを解除することができるようになっている。
(2)多通路機能
電動式移動棚を構成する複数の移動棚を複数のブロックに区分し、各ブロック内で少なくとも1か所に作業通路を形成することができるようにし、少なくともブロック数に相当する複数の作業通路を形成することができる多通路機能を持たせる。例えば、モータを駆動源とする20台の移動棚で電動式移動棚装置が構成されている場合、5台の移動棚ごとに4ブロックに分け、ブロックごとに、他のブロックの移動棚の移動とは無関係にそのブロック内の移動棚を移動させ、各ブロックに少なくとも1つの作業通路を形成することができるようにする。
移動棚装置に上述のセキュリティ機能を持たせる場合も、多通路機能を持たせる場合も、移動棚装置を構成する移動棚の少なくとも1台を移動不能にロックする必要がある。移動棚のロック装置には、機構的にロックするものと、電動式移動棚の場合は回路的にモータの駆動を不能にするものがある。また、電動式移動棚の場合、ブレーキ装置付きのモータ(ブレーキモータ)を使用し、ブレーキ装置をロック装置として使用することが考えられる。
機構的なロック装置としては、回転操作されるハンドルから駆動車輪に至る動力伝達機構を作動不能にロックするもの、移動棚が備える閂状のロック部材を移動棚の設置床などに形成した穴に突き刺して移動棚を移動不能にロックするものなどがあり、具体的な構成にも各種のもがある。
移動棚は、移動方向前後に走行車輪を有し、通常、前後の車輪の片方が上記駆動輪になっている。上記機構的なロック装置が動力伝達機構をロックするものである場合、上記駆動輪が回転不能にロックされることになり、他方の車輪(これを上記駆動輪に対して「従動輪」という)は回転することができる。したがって、セキュリティ機能を持たせるために複数台の移動棚を収束させ、最も外側の移動棚の動力伝達機構をロックする構成にする場合、駆動輪が従動輪よりも外側に位置するように配慮する必要がある。その理由は、収束している移動棚のうち最も外側の移動棚に、他の移動棚から引き離す方向に引っ張り力または押圧力を加えると、駆動輪はロックされて回転することができないから、駆動輪とこの駆動輪が載っているレールとの接点に荷重がかかり、大きな制動力となるからである。仮に、上記最も外側の移動棚の従動輪が駆動輪よりも外側に位置しているものとすると、上記最も外側の移動棚に、他の移動棚から引き離す方向に力が加わると、従動輪がレール上で転動し制動力がかからない。
移動棚が備える閂状のロック部材を移動棚の設置床などに形成した穴に突き刺すロック装置の場合、ロックすることができる移動棚の位置があらかじめ定まる。そのため、セキュリティ機能を持たせるための複数の移動棚からなるブロック構成もあらかじめ定まり、ブロック構成を変更することができないという不自由さがある。
多通路機能を持った電動式移動棚も各種提案されている。特許文献1記載の発明はその一つで、隣り合う移動棚のいずれか一方の間口面に他方の棚との近接を検知する前後一対の近接センサを有し、少なくとも一方の近接センサの信号検出を条件として移動棚の移動を停止する多通路モードと、一対の近接センサの両方からの検出信号を条件として移動棚の移動を停止する1通路モードとの切り替えを行うモード切り替え手段を有することを特徴とするものである。
特許文献2には、隣接移動棚が一定の距離まで接近してきたことをセンサが検出したときその移動棚を隣接移動棚の移動の向きと同じ向きに移動させるとともに隣接移動棚との距離を一定に保つように制御し、相隣接する移動棚間の通路への進入を検出手段が検出したときその移動棚の駆動を拒否することによって多通路を実現する電動式移動棚が記載されている。駆動が拒否された移動棚で区分されている他の移動棚は、区分された移動棚群単位で任意に移動させることができるため、多通路方式の移動棚装置が実現する。
特許文献3には、隣接する移動棚の少なくとも一方において他方の移動棚との間に形成される通路幅を測定する通路幅測定手段を具備し、予め設定された隣接棚間の最大通路幅の範囲内で任意の幅の通路を任意数、任意の位置に形成することを許容し、上記通路幅測定手段の測定値が最大値に達するとその棚のモータの駆動を停止させるように構成した電動式移動棚が記載されている。
以下、本発明に係る棚装置の実施例について図面を参照しながら説明する。
本発明に係る棚装置の実施例の概要を図1に示す。図1に示す例では、A,B,C,D,Eで表す5台の移動棚10が、床に敷設されているガイドレールに沿って移動可能に並べられている。上記5台の移動棚10を挟んで移動方向前後に固定棚が設置され、これら固定棚間において上記5台の移動棚10が移動できるようになっている。各移動棚10は底部に適宜数の走行車輪を有していて、走行車輪はガイドレールの上に乗せられている。各移動棚10の走行車輪が駆動モータによって回転駆動されることにより、全走行車輪がガイドレール上で転動しながら各移動棚10が移動するように構成されている。駆動モータは各移動棚に設けられている。A,B,C,D,Eで表す5台の電動式移動棚のうちCで示す電動式移動棚100は、あたかも固定棚であるかのように扱うことができ、本発明に係る棚装置を構成する移動棚の中で特徴ある構成を備えている。
各移動棚10、100は、収納物品を出し入れする面を有していて、この面を間口面という。上記間口面を移動棚の正面とすると、図1は上記間口面に直交する方向から見た側面図であって、各移動棚10、100の側面には側パネルが取り付けられている。各移動棚10,100の側パネルには、ユーザーが起立した姿勢で操作しやすい高さ位置に、側パネルに向かって右側と左側にそれぞれ操作スイッチ41,42が取り付けられている。操作スイッチ41は、この操作スイッチを備えている移動棚を図1に示す側面から見て左向きに移動させ、その移動棚の右側に通路を形成するためのスイッチである。操作スイッチ42は、その移動棚を図1に示す側面から見て右向きに移動させ、その移動棚の左側に通路を形成するためのスイッチである。
操作スイッチ41,42を操作することにより移動棚を移動させ、所望の移動棚相互間に作業用の通路を形成することができる。操作スイッチの操作による作業通路形成制御方式には各種あるが、大きく分けると、次の二つである。一つは、操作スイッチ41を左に向かって押圧操作している間移動棚が左に移動し、他方の操作スイッチ42を右に向かって押圧操作している間移動棚が右に移動し、操作スイッチ41,42の操作を止めると移動棚が停止する方式である。他の一つは、一つの移動棚1の操作スイッチ41を押すと、その移動棚の右側に作業通路を形成するには、どの移動棚をどの向きに移動させればよいか、また、操作スイッチ42を押すと、その移動棚の左側に作業通路を形成するには、どの移動棚をどの向きに移動させればよいかを自動的に判断し、判断にしたがって各移動棚の移動を制御するものである。本発明で用いる電動式移動棚の駆動方式は任意で、どのような駆動方式であってもよい。
図1(a)に示す動作態様では、左側の固定棚12とAで示す移動棚10との間に作業通路1が、右側の固定棚12とEで示す移動棚10との間に作業通路2が形成されている。通常の電動式移動棚装置としての使用態様では、Cで示す移動棚100は、後で詳細に説明するように固定棚と実質的に同じであって、特別な切り替え操作を行って移動棚として動作可能なモードに切り替えない限り移動しない。したがって、図1(a)に示す動作態様では、移動棚100で区分された左側のブロック1と右側のブロック2でそれぞれ任意の移動棚の右側または左側に作業通路を形成することができる多通路方式の電動式移動棚装置を構成している。以下、上記電動式移動棚100を「可動固定棚」という。
図1(a)に示す動作態様において、セキュリティ機能を持たせるための操作、例えば収束操作部材が操作されたとする。この操作により、Cで示す可動固定棚100が図1(b)に矢印で示す左の向きに移動し始め、これに伴いA,Bで示す移動棚10も左の向きに移動する。この動作で図1(c)に示すようにブロック1を構成する各移動棚が固定棚に近接し、ブロック2では、2つの作業通路を、CとDで示す移動棚間と、Eで示す移動棚10と固定棚12との間に形成する。
上記収束動作が終了すると、Cで示す可動固定棚100への電源供給を停止するあるいは可動固定棚100のモータへの電源供給を停止するなどの動作により、可動固定棚100を移動不可能な状態にする。図1(d)は可動固定棚100が移動不可能な状態になっていることを示していて、上記可動固定棚100は、特定の使用者が所持しているキーなどの操作、あるいは生体認識による特定の者による操作でない限り、移動させることができない。こうして左側の固定棚12と、A,B,Cで示す移動棚が収束し、これらの棚に対する物品の出し入れが制限される。また、この動作態様において可動固定棚100の右側の間口面にパネルを嵌め、上記特定の者しか上記パネルを取り外すことができないように施錠することにより、セキュリティ効果を高めることができる。あるいは、特別なキーを使用するか、生体認識による特定の人でなければ可動固定棚100を移動させることができないようにすることによってセキュリティ効果を高めることもできる。
上記電動式移動棚装置の例における移動棚10は、従来知られている電動式移動棚の構成と同じものを適用可能であるが、Cで示す可動固定棚100の構成は本発明特有の特徴ある構成になっている。以下、上記可動固定棚100の駆動系および制御系について説明する。
図2は上記駆動系の例を示す。可動固定棚100は平面形状が長方形の台枠14をベースとして有していて、台枠14と、台枠14に立てられた適宜数の支柱16と、各支柱16の上端部を連結する天板によって可動固定棚100の骨組みが構成されている。間口方向に所定の間隔で並んでいる支柱16によって適宜段数の棚板(図示されず)が支持されている。可動固定棚100の一側面には側板15が被せられ、側板15の左右両側には適宜の高さ位置に前記操作スイッチ41,42が取り付けられている。側板15の内面側には制御部20が回路基板に組み込まれて配置されている。側板15にはまた、可動固定棚100を可動側と固定側に切り替える切り替えスイッチ38が取り付けられている。
台枠14には、台枠14の長手方向に2本の回転軸が支持されていて、各回転軸には一定間隔で走行車輪が固着されている。走行車輪はガイドレールに載せられ、ガイドレール上で走行車輪が回転することにより可動固定棚100は台枠14の幅方向すなわち間口面に直交する方向に移動することができる。上記2本の回転軸は可動固定棚100の移動方向前側と後ろ側に互いに平行に支持されている。2本の回転軸の一方には、モータ30の回転力が、ギヤあるいはスプロケットとチェーンなどからなる動力伝達機構を介して伝達される。2本の回転軸には長さ方向の同じ位置に同じ径のスプロケットが固着されていて、これらのスプロケットに無端のチェーン18がかけられている。したがって、モータ30の回転力は、一方の回転軸に伝達されるとともに、上記スプロケットとチェーン18を介して他方の回転軸にも伝達され、可動固定棚100の移動方向前後の前記走行車輪が共にモータ30によって回転駆動される駆動輪となっている。
可動固定棚100が備えている移動方向前側および後ろ側の走行車輪をそれぞれ一体回転可能に連結する車輪軸に一体に設けられたスプロケットと、各車輪軸のスプロケットを連結するチェーン19とで、可動固定棚100の移動方向前後の走行車輪軸を同期させて回転させる連結部材を構成している。
モータ30はブレーキ装置31を備えている。ブレーキ装置31はブレーキ制御部からの制御信号によってモータ30にブレーキ力を加える態様とブレーキ力をモータ30から解放する態様に切り替えられるように構成されている。モータ30は、出力軸とモータの回転子とを結合しまた切り離すことができるモータクラッチを内蔵している。
上記モータクラッチは例えば電磁クラッチであって、クラッチ制御部からの制御信号によってモータ30とその出力軸を結合する態様とモータ30とその出力軸を切り離す態様をとることができる。上記モータクラッチが存在する場合、ブレーキ装置31は常時ブレーキ力を付与する態様をとっていて、このブレーキ力を上記クラッチの動作によってモータ30の回転力を出力軸に伝達する態様と、モータ30から出力軸への回転力を遮断する態様に切り替えるようにする。あるいは、クラッチ制御部とブレーキ制御部による上記クラッチおよびブレーキ装置31の制御を同期させ、ブレーキ装置31がブレーキ力を解放すると同時にクラッチがモータ30とその出力軸を切り離すようにしてもよい。
ブレーキ装置31とモータクラッチの動作態様は、切り替えスイッチ38の切り替え態様に応じて切り替えられる。切り替えスイッチ38が可動固定棚100を可動側に切り替えている態様にあるときは、モータ30にブレーキ力が付加されるように上記ブレーキ制御部がブレーキ装置31の動作を制御し、また、モータ30とその出力軸を結合するようにクラッチ制御部がモータクラッチの動作を制御する。
次に、可動固定棚100に用いられている制御系の例について説明する。制御系の構成は、駆動系の構成とともにいくつかの例があるので、それぞれ異なる実施例として説明する。
図3、図4は第1の実施例を示す。図3において、符号20は可動固定棚100が備えている制御部を示している。制御部20はマイクロコンピュータあるいは中央処理ユニット(CPU)などからなり、回路基板に実装されている。制御部20は、図3において各ブロックで示す以下のような機能部を備えている。
右操作スイッチ41の操作を検出する右操作検出部21。
左操作スイッチ42の操作を検出する左操作検出部22。
切り替えスイッチ38の切り替え態様を検出するスイッチ検出部23。
通路幅を検出する超音波センサ43からの検出信号に基づいて可動固定棚100の位置を検出する位置検出部24。
右操作検出部21、左操作検出部22、位置検出部24からの信号に基づきモータ30の正転、逆転および停止を制御するモータ制御部27。
スイッチ検出部23からの信号に基づきブレーキ装置31の動作を制御するブレーキ制御部28。
上記右操作スイッチ41、左操作スイッチ42、超音波センサ43、進入センサ44、切り替えスイッチ38、モータ30、ブレーキ装置31は、制御部20の外部に配置され、制御部20に上記のように接続されている。モータ30は可動固定棚100の駆動用モータであって、前述のようにブレーキ装置31を備えている。モータ30は、モータ制御部27からの制御信号によって正転、逆転および停止が制御される。ブレーキ装置31は、ブレーキ制御部28からの制御信号によってオンオフすなわちモータ30に対するブレーキ力の付与とブレーキ力の解放が制御される。
モータ制御部27、ブレーキ制御部28は、適宜の駆動回路あるいはスイッチなどの動作を制御してモータ30、ブレーキ装置31の動作を制御するものであるが、上記駆動回路あるいはスイッチは、モータ制御部27、ブレーキ制御部28に含まれるものとして説明する。口述の他の実施例においても同様である。
切り替えスイッチ38は、可動固定棚100を可動棚として機能させるモードまたは固定棚として機能させるモードに切り替えるスイッチである。切り替えスイッチ38が固定側に切り替えられているときは、ブレーキ制御部28がブレーキ装置31をオンにし、モータ30にブレーキをかける。図2に示す駆動系の構成からわかるように、可動固定棚100の移動方向前後の回転軸がチェーン18とスプロケットを介して連結されることにより前後輪駆動方式になっているため、モータ30にブレーキ力がかかると前後輪にブレーキ力がかかり、可動固定棚100は実質的に固定棚とみなすことができる。
右操作スイッチ41、左操作スイッチ42については図1において説明した。超音波センサ43は、隣の移動棚に向かって超音波を出射し、出射時と隣の移動棚から反射されて戻ってきた時間の差によって距離を計測するためのセンサで、通路幅計測装置を構成している。通路幅計測装置として、超音波センサ43に代わり、隣り合う移動棚に設けられたスイングアームの先端同士を相対回転可能に連結し、隣り合う移動棚相互の距離に応じてスイングアームの回転角度が異なることを利用して隣り合う移動棚相互の距離を計測するようにした機構的な計測方式を採用してもよい。その他適宜の方式の通路幅計測装置を選択して採用することができる。
制御部20の位置検出部24は、超音波センサ43の検出信号に基づいて、可動固定棚100とこれに隣接する移動棚との間に形成される通路幅、停止位置などの位置関係を検出する。位置検出部24によって隣接する移動棚に所定の距離まで接近し、通路幅が狭くなって停止位置に達すると、モータ制御部がモータ30の駆動を停止し、移動棚の移動を停止させる。
制御部20は、隣り合う移動棚の制御部と信号をやり取りするための連絡路で接続してもよい。例えば、図3に示す例において、右通信線は、右操作検出部21で生成される右行き信号を右隣の棚に転送し、右隣の棚から転送される左行き信号を入力し、超音波センサ43の検出信号によって位置検出部24で生成した通路幅信号を右隣の棚に転送する。左通信線は、左操作検出部22で生成される左行き信号を左隣の棚に転送し、左隣の棚から転送される右行き信号を入力し、左隣の棚で生成される通路幅信号を入力する。また、左通信線は、Cで示す可動固定棚100の収束操作部材を操作したとき、左側に隣接するBで示す移動棚10に、左側に移動すべき旨の信号を伝達する連絡路として利用することができる。
図3に示す制御系の動作例を図4に示す。各ステップをS1,S2,S3,・・・のように表す。まず、前記切り替えスイッチ38がONかどうかを判断する(S1)。切り替えスイッチ38がONとは、移動棚100を可動側に切り替えることである。切り替えスイッチ38がONに切り替えられなければ、前記ブレーキ制御部28がブレーキ装置31によるブレーキ力を維持するようにブレーキ装置31の動作を制御し(S8)、移動棚100に実質的な固定棚としての機能を持たせる。
切り替えスイッチ38がONに切り替えられると、ブレーキ装置31によるブレーキ力を解放するようにブレーキ制御部28がブレーキ装置31を制御する(S2)。切り替えスイッチ38がONに切り替えられると、次に前記操作スイッチ41,42の何れかが操作されたか否かの判断ステップ(S3)に進む。このステップ(S3)で何れの操作スイッチ41,42も操作されないとステップS1に戻る。したがって、一旦切り替えスイッチ38がONに切り替えられた後、何れの操作スイッチ41,42も操作されることなく切り替えスイッチ38がOFFに戻されると、ブレーキ装置31がモータ30にブレーキ力を付加する(S8)。ステップ(S3)で操作スイッチ41,42の何れかが操作されると、操作スイッチ41または操作スイッチ42で指示される方向に可動固定棚100が移動するように、モータ制御部27がモータ30を駆動する(S4)。
モータ30の駆動によって可動固定棚100が指示された向きに移動する。前記位置検出部24が超音波センサ43からの検出信号に基づいて隣り合う移動棚との間隔を検出し、停止位置に至ったか否かを判断する(S5)。停止位置に至らなければ上記モータ30の駆動ステップ(S4)を継続する。停止位置に至ればモータ制御部27がモータ30の駆動を停止させる(S6)。さらに、切り替えスイッチ38の切り換え態様を確認し(S7)、切り替えスイッチ38がオンになっていなければ、すなわち固定側に切り替わっていなければ、前記ブレーキ制御部28がブレーキ装置31をオンにし(S8)、ブレーキ力をモータ30に付加する。さらに、隣接する棚との通信を遮断し(S9)、可動固定棚100を実質的に固定棚とする。
以上説明した第1の実施例によれば、切り替えスイッチ38の切り替えによって、可動固定棚100を実質的に固定棚として機能する態様と、移動棚として機能する態様に切り替えることができる。可動固定棚100の駆動系は、前述のように前後輪が共に駆動される形式になっていて、モータ30に加わるブレーキ力は前後輪にも加わるため、固定棚として機能する態様では、可動固定棚100を前後方向に押したり引いたりしても移動させることは困難である。そこで、可動固定棚100と従来の電動式移動棚の構造と同じ構造の他の移動棚とを収束させ、収束している一群の移動棚の外側に可動固定棚100を位置させてこれを特定のキーや生体認証などを使用しなければ移動棚として機能させることができないようにする。こうすることにより、一群の移動棚のセキュリティ効果を高めることができる。
また、可動固定棚100を境にしてその両側に複数の移動棚を配置し、可動固定棚100が固定棚として機能するように切り替えスイッチ38を切り換えておけば、可動固定棚100の両側にそれぞれ少なくとも一つの作業通路を形成することができる多通路方式の移動棚装置を構成することができる。可動固定棚100は、必要に応じて一時的に移動棚として機能させることもできるため、多通路方式移動棚装置のレイアウトを変更することも容易である。
図3に示す第1の実施例において、進入センサ44は、形成されている作業通路に人間その他の物体が進入したことを検出するものである。この検出信号によって、移動中の移動棚を緊急停止させ、あるいは上記検出信号によってインターロックをかけ、別の位置に作業通路を形成することができないようにするなどの機能を持たせることができるが、本発明とは関係がないので詳細な説明は省略する。
上記実施例において、ブレーキ装置31は、移動可能な棚を移動不可能にロックすることができるロック装置と実質的に変わりのないものとみてよい。次に説明する第2の実施例におけるブレーキ装置31についても同様である。
次に、図5に示す第2の実施例について説明する。この実施例が図3に示す第1の実施例と異なる点は、モータ30が出力軸との間にクラッチ32を備えていることと、振動センサ45を備えていることであり、また、制御部20が、振動検出部25、クラッチ制御部29を備えていることである。振動検出部25は、振動センサ45の検出信号から一定以上の振動を検出したとき信号を出力する。クラッチ制御部29は、電源検出部23、振動検出部25からの信号に基づきクラッチ32の動作を制御する。
クラッチ32はモータ30とその出力軸を結合しまたこの結合を解除するもので、クラッチ制御部29からの制御信号によってオンオフが制御される。振動センサ45は主として地震を検出するもので、振動センサ45の出力信号は振動検出部25に入力される。振動検出部25は一定の震度に達すると信号を出力し、この出力信号を受けたクラッチ制御部29がクラッチ32を作動させ、仮にモータ30とその出力軸をクラッチ32が結合していたとしても、モータ30とその出力軸を切り離すようになっている。
上記第2の実施例の動作を、図6を参照しながら説明する。まず、前記切り替えスイッチ38がONかどうかを判断する(S11)。切り替えスイッチ38がONに切り替えられると、ブレーキ装置31によるブレーキ力を解放するようにブレーキ制御部28がブレーキ装置31を制御する(S12)。次に前記操作スイッチ41,42の何れかが操作されたか否かの判断ステップ(S13)に進む。このステップ(S13)で何れの操作スイッチ41,42も操作されないとステップS11に戻る。
ステップ(S13)で操作スイッチ41,42の何れかが操作されると、クラッチON(S14)になる。すなわちクラッチ制御部29がクラッチ32を制御してモータ30とその出力軸を結合する。また、操作スイッチ41または操作スイッチ42で指示される方向に移動棚100が移動するように、モータ制御部27がモータ30を駆動する(S15)。
次に、振動検出ステップ(S16)に進む。このステップ(S16)では、振動検出部25が振動センサ45の検出信号を演算し、一定の震度以上の振動が発生したか否かを判断する。一定の震度以上の振動が発生した場合は、クラッチ32をオフすなわちクラッチ32によるモータ30とその出力軸の結合を解除する(S17)。これによってモータ30が走行車輪の駆動機構から解放されるため、可動固定棚100の走行車輪の回転抵抗が軽減され、地震によって床面とともにガイドレールが移動すると、走行車輪はガイドレール上を転動し、可動固定棚100は免震効果を得ることができる。
上記ステップS17の次に振動検出ステップ(S16)に戻り、検出される震度が一定以下に低下していれば上記免震のための動作ループを抜け、クラッチがオンか否かの判断ステップ(S29)に進む。地震によって上記免震動作が行われた場合はクラッチ32がオフになっているので、クラッチ32をオンにして(S31)、次の停止位置かどうかの判断ステップ(S19)に進む。免震動作が行われなかった場合、クラッチ32はオンになっているので、そのままステップS19に進む。
停止位置かどうかの判断ステップ(S19)において、可動固定棚100が停止位置に至っていなければステップ(S16)に戻る。停止位置に至ればモータ制御部27がモータ30の駆動を停止させ(S20)、次の切り替えスイッチ38がオンか否かの判断ステップ(S21)に進む。この判断ステップ(S21)では、切り替えスイッチ38がオフすなわち可動固定棚100が固定棚として機能するモードに切り替えられるのを待ち、切り替えスイッチ38がオフになると、ブレーキ装置31をオン(S22)にし、さらに隣接棚との通信を遮断して(S24)動作を終了する。ブレーキ装置31がオン、クラッチ32がオンになることにより、ブレーキ装置31のブレーキ力がモータ30、クラッチ32、モータ30の出力軸を介して走行車輪の駆動機構に付加され、さらに隣接棚との通信が遮断されることによって可動固定棚100が固定棚と実質同一になる。
ステップS11で切り替えスイッチ38がオンにならない、すなわち可動固定棚100が移動モードに切り換えられない場合は、ブレーキ装置31はオン(S25)、クラッチ32はオン(S26)になり、隣接棚との通信は遮断状態(S27)に維持される。この状態で振動検出ステップ(S28)に進み、一定の震度以上の振動が検出された場合は、クラッチ32をオフ(S30)にして免震効果を発揮させ、ステップS28に戻る。一定の震度以上の振動が続いている間は上記免震効果を発揮させる動作を続けるが、一定の震度以下になると上記免震のためのループを抜けてステップS11に戻る。
以上説明した第2の実施例によれば、前記第1の実施例にクラッチ32を加えるとともに、振動センサ45の検出信号によってクラッチ32を作動させ、モータ30とその出力軸を切り離すようにしたため、移動棚100に免震機能を持たせることができる。したがって、可動固定棚100が固定棚と実質同一の状態であったとしても、地震の発生によって免震機能を発揮する態様に切り替えられ、可動固定棚100の転倒、あるいは収納物の落下を防止することができる。
次に、図7に示す第3の実施例について説明する。この実施例が図3、図5に示す実施例と異なる点は、可動固定棚100が収束操作部材46を備えていて、この収束操作部材46を操作することにより、可動固定棚100を含む一群の移動棚が収束するように構成した点である。収束操作部材46は、一つのブロックを構成する複数の移動棚を収束させてセキュリティ機能を持たせる場合に操作されるもので、例えば、可動固定棚100の側パネルなどに取り付けられている。図7において、収束操作部材46の操作信号は制御部20に入力され、制御部20が備えている収束制御部26が、上記操作信号に基づいて可動固定棚100を所定の収束位置に向かって移動させるように、モータ30、ブレーキ装置31、クラッチ32を制御する。その他の構成は図5に示す実施例の構成と同じであるから説明を省略する。
上記第3の実施例の動作例について図8を参照しながら説明する。まず、前記切り替えスイッチ38がONかどうかを判断する(S41)。切り替えスイッチ38がONに切り替えられると、ブレーキ装置31によるブレーキ力を解放するようにブレーキ制御部28がブレーキ装置31を制御する(S42)。次に収束操作部材46が操作されたか否かの判断ステップ(S43)に進む。このステップ(S43)で収束操作部材46が操作されないとステップS41に戻る。
ステップ(S43)で収束操作部材46が操作されると、クラッチON、すなわちクラッチ制御部29がクラッチ32を制御してモータ30とその出力軸を結合する(S44)。また、所定の向きすなわち可動固定棚100を含む一群の移動棚が収束するように、可動固定棚100のモータ制御部27がモータ30を駆動し(S45)、可動固定棚100を指示方向に駆動する。
次に、振動検出ステップ(S46)に進む。以下の動作は前記第2の実施例の動作と同じで、ステップ(S46)で一定の震度以上の振動が発生したか否かを判断し、一定の震度以上の振動が発生した場合は、クラッチ32をオフすなわちクラッチ32によるモータ30とその出力軸の結合を解除する(S47)。こうしてモータ30が走行車輪の駆動機構から切り離されるため、地震によって床面とともにガイドレールが移動すると、走行車輪はガイドレール上を転動し、移動棚100は免震効果を得ることができる。
上記ステップS47の次に振動検出ステップ(S46)に戻り、検出される震度が一定以下に低下していれば上記免震のための動作ループを抜け、クラッチがオンか否かの判断ステップ(S59)に進む。地震によって上記免震動作が行われた場合はクラッチ32がオフになっているので、クラッチ32をオンにして(S61)次の停止位置かどうかの判断ステップ(S49)に進む。免震動作が行われなかった場合、クラッチ32はオンになっているので、そのままステップS49に進む。
停止位置かどうかの判断ステップ(S49)において、可動固定棚100が停止位置に至っていなければステップ(S46)に戻る。停止位置に至ればモータ制御部27がモータ30の駆動を停止させ(S50)、次の、切り替えスイッチ38がオンか否かの判断ステップ(S51)に進む。この判断ステップ(S51)では、切り替えスイッチ38がオフすなわち可動固定棚100が固定棚として機能するモードに切り替えられるのを待ち、切り替えスイッチ38がオフになると、ブレーキ装置31をオン(S52)、クラッチ32をオン(S53)、隣接棚との通信を遮断して(S54)動作を終了する。ブレーキ装置31がオン、クラッチ32がオンすることにより、ブレーキ装置31のブレーキ力がモータ30、クラッチ32、モータ30の出力軸を介して走行車輪の駆動機構に付加され、可動固定棚100が固定棚と実質同一になる。また、隣接棚との通信が遮断されることにより、上記可動固定棚100と、通信が遮断された上記隣接棚は、互いに別のブロックに属する棚となる。
ステップS41で切り替えスイッチ38がオンにならず、可動固定棚100が移動モードに切り替えられない場合は、ブレーキ装置31はオン(S55)、クラッチ32はオン(S58)に維持され、隣接棚との通信が遮断される(S57)。この状態で振動検出ステップ(S58)に進み、一定の震度以上の振動が検出された場合は、ブレーキ装置31をオフ(S59)、クラッチ32をオフ(S60)にして免震効果を発揮させ、ステップS56に戻る。一定の震度以上の振動が続いている間は上記免震効果を発揮させる動作を続けるが、上記一定の震度以下になると上記免震のためのループを抜けてステップS41に戻る。
収束操作部材46が操作されることによって可動固定棚100が所定の向きに移動するとき、可動固定棚100とともに一群をなす他の移動棚も可動固定棚100と同じ向きに移動して一群の移動棚が収束する。前に説明した図1(d)は、可動固定棚100を含む3台の移動棚A,B,Cが収束した状態を示しており、これらの移動棚が収束した後は、一群の移動棚A,B,CのうちCで示す外側の可動固定棚100のブレーキ装置31、クラッチ32がともにオンになり、可動固定棚100は固定棚と実質同一になる。したがって、特定のキーによりあるいは生体認識による特定の人間により操作された場合にのみ収束態様を解消することができないようにすれば、上記一群の移動棚に、その収納物を取り出すことができないセキュリティ機能を持たせることができる。この場合、可動固定棚100の間口面に扉やパネルなどを設け、上記キーや生体認識などによってのみ扉やパネルなどを開くことができないようにすれば、セキュリティ機能を一層高めることができる。
上記一群の移動棚が可動固定棚100とともに移動するときの可動固定棚100以外の移動棚は、可動固定棚100の押圧力で移動するようにしてもよいし、各移動棚個別の駆動力と制御によって移動するようにしてもよい。
以上説明した棚装置の実施例では、棚装置を構成する棚が電動式移動棚の例であったが、手動式移動棚にも本発明に係る技術思想を適用することができる。手動式移動棚の場合、駆動モータを備えていないので、上記可動固定棚100に相当する少なくとも一つの棚に、この棚を移動不可能にロックすることができるロック装置を設ける。このロック装置は、例えば、回転操作ハンドルの回転力を走行車輪軸に伝達する動力伝達機構の動作を拘束する機構であってもよいし、床などに設けた穴に閂を嵌める機構など、適宜の機構を採用することができる。動力伝達機構の動作を拘束するロック装置でロックした場合、ロックを解除した場合に比べて、約100倍の力量を加えなければ棚を移動させることができず、棚を移動させることは不可能と言ってよい。図9乃至図11は、本発明に係る技術思想を手動式移動棚に適用した例(第4の実施例)であって、前記可動固定棚100に組み込まれた機構の例を示している。
図9、図10において、符号50は棚の側板の一部を構成するハンドル支持パネルを示している。ハンドル支持パネル50の内面側には駆動機構のハウジング60が固定されている。ハウジング60は、前パネル61と、後パネル62と、これら前パネル61と後パネル62を一定の間隔をおいて連結する連結部材63によって、上下が開放した箱形に形成されている。
前パネル61と、後パネル62には、相対向する面の中心部にそれぞれ軸受53が取り付けられ、この一対の軸受53によって管軸51がその中心軸線の周りに回転可能に支持されている。管軸51の一端部はハンドル支持パネル50から外側に突き出ていて、この管軸51の突出端部には回転操作ハンドル55のハブ54が嵌め込まれている。回転操作ハンドル55とハブ54は複数本のスポーク56によって一体に連結されている。ハブ54と管軸51は一体に結合され、回転操作ハンドル55とともに管軸51が回転することができる。
管軸51の外周には、ハウジング60の前パネル61と後パネル62との間においてスプロケット52が固着されるとともにスプロケット52の後にスプロケット状のロック輪58が固着されている。したがって、回転操作ハンドル55とともにスプロケット52とロック輪58が一体に回転する。スプロケット52と、このスプロケット52の下方において図示されない走行車輪軸に固着されたスプロケットとの間にはチェーンが掛け渡されている。スプロケット52の径よりも走行車輪軸のスプロケットの径が大きく、また、スプロケット52の径よりも回転操作ハンドル55の径が大きく、回転操作ハンドル55から走行車輪軸のスプロケットに至る動力伝達機構は減速機構を構成している。上記走行車輪軸は上記棚の移動方向前後に配置され、前後の走行車輪軸は、図2について説明したように、同径のスプロケットとチェーンなどからなる連結部材によって、同期して回転可能に連結されている。
管軸51内にはロック装置を構成するロック軸65が管軸51に沿ってスライド可能に嵌められている。ロック軸65の前端部は管軸51の前端から突出していて、このロック軸65の突出端部にはロック操作つまみ67が固着されている。ロック軸65の後端部は前記後パネル62の背面側に突出するとともに、後パネル62の背面に沿って下方に直角に折り曲げられ、さらに直角に折り返されている。このロック軸65の折り返し部はロック端部66となっていて、後パネル62に形成されている孔を前記ハウジング60の内方に向かって貫通するとともに、ロック輪58の外周縁部に対向している。ロック輪58の外周縁部には一定間隔で切欠き59が形成されることによりロック輪58はスプロケット状に形成されている。ロック操作つまみ67を手動により外方に引っ張ると、ロック軸65が図9において左方にスライドし、ロック端部66が図9に示すようにロック輪58の切欠き59の一つに進入し、ハンドル55および上記動力伝達機構の回転を阻止する。ロック操作つまみ67を手動により内方に向かって押し込むと、ロック端部66がロック輪58の切欠き59から抜け出て、ハンドル55および上記動力伝達機構を回転可能な態様にする。
ハンドル支持パネル50には切り替えスイッチ70が取り付けられている。切り替えスイッチ70は特定のキーを挿入することによって操作することができるキースイッチであって、切り替えスイッチ70の切り換え操作によってソレノイド71への通電のオンオフが行われるように構成されている。ソレノイド71の駆動電源は、前記棚に内蔵されている電池その他適宜の電源装置から供給される。ソレノイド71はその下端から突出したプランジャ72を有していて、プランジャ72にはロック軸65の移動を規制することができる規制板73が固着されている。ソレノイド71に給電されていないときはプランジャ72および規制板73がロック軸65の後方直近位置に進出し、ロック軸65のロック端部66がロック輪58の切欠き59の一つに進入した態様を維持させる。ソレノイド71に給電されると、ソレノイド71はプランジャ72を吸引して規制板73をロック軸65のスライド範囲から上方に退避させ、ロック操作つまみ67を手動により内方に向かって押し込むことにより、ロック軸65のロック端部66をロック輪58の切欠き59から退避させることを可能にする。
ロック操作つまみ67およびロック端部66を有するロック軸65、ロック輪58は棚を移動不可能にロックすることができるロック装置を構成している。切り替えスイッチ70は棚を可動または固定に切り替えるものである。上記ロック装置が棚を移動不可能にロックしている状態で切り替えスイッチ70が固定側に切り替えられると、ソレノイド71への通電が断たれ、規制板73が上記ロック装置によるロック状態を維持する。切り替えスイッチ70が可動側に切り替えられると、ソレノイド71に通電されてプランジャ72がソレノイド71に吸引され、規制板73がロック軸65のスライド範囲から上方に逃げ、上記ロック装置によるロックを解除して棚を可動棚として機能させることができる。
図11は、上記第4の実施例の動作を示す。図11において、ステップS60で前記切り替えスイッチ70がオンになると前記ソレノイド71に通電されてロック解除可能な状態(S61)になる。ステップS62でロックが解除され、さらにステップS63で前記回転操作ハンドル55が回転操作されると、回転操作の向きに対応した向きに棚が駆動され(S64)る。ステップS62でロックが解除されなければステップS60に戻る。
棚が停止位置まで移動すると(S65)駆動を停止し(S66)、前記ロック装置によって棚が移動不可能にロックされるのを待ち(S67)、ロックされると切り替えスイッチ70がオンか否かの判断ステップ(S68)に進む。ステップS68で切り替えスイッチ70がオフになると、図9、図10について説明したとおり、ロック装置によって棚が移動不可能にロックされた状態が維持される(S69)。また、ステップS60で切り替えスイッチ70がオンにならずオフのままになっているときも、ロック装置によって棚が移動不可能にロックされた状態が維持される(S69)。
このように、複数の手動式移動棚からなる棚装置においても、少なくとも一つの手動式移動棚に図9、図10に示すようなロック装置を組み込み、図11に示すような動作を行わせることにより、セキュリティ機能や多通路機能を備えた棚装置を構成することができる。
手動式移動棚にロック装置を設けることは既に知られている。上記第4の実施例が公知の手動式移動棚におけるロック装置と異なる点は、切り替えスイッチ70、ソレノイド71、規制板73を備えている点である。ソレノイド71は、切り替えスイッチ70の切り換え態様に応じてロック装置をロック態様で規制しまたこのロック態様の規制を解除するためのアクチュエータとして設けられている。したがって、アクチュエータとして機能するものであればソレノイド限定されるものではなく、例えば、モータ、流体シリンダなどを用いることができる。
以上説明した手動式移動棚に本発明に係る技術思想を適用したものにおいては、本発明に係る技術思想を前述の電動式移動棚に適用した実施例におけるブレーキ装置に代えてロック装置を設けている。
また、上記ロック装置を電動式移動棚に適用してもよい。電動式移動棚装置においては、上記少なくとも一つの棚が機構的なロック装置によって移動不可能にロックされている状態で駆動モータに駆動電流が流れると、駆動モータが焼損する恐れがある。そこで、移動不可能にロックされている棚に隣接棚から移動指令信号が伝達されないように、ロック装置が働いている場合は隣接棚からの通信が遮断されるように構成されている。
以上説明した可動固定棚100は、通常は固定棚であって、必要に応じて一時的に移動棚として扱うこともできる。移動棚装置を構成する複数の移動棚のうちの一つとして可動固定棚100を用いることにより、上記第3の実施例のようにセキュリティ効果を得ることができる。また、複数の移動棚からなる移動棚装置を、可動固定棚100によっていくつかの移動棚群に区分すれば、多通路方式の移動棚装置を構成することができる。図12〜図15は、固定側にも可動側にも切り替えることができる可動固定棚100を用いた各種移動棚装置の例を示す。
図12は、多通路方式の電動式移動棚装置の例であって、(a)〜(d)の順に多通路の形成パターンの変更例を示す。A〜Iで示す9台の電動式移動棚が配置され、これらの電動式移動棚を挟んで両側に固定棚が配置されている。9台の電動式移動棚のうちCとGで示す電動式移動棚が可動固定棚であって、これらの可動固定棚を境にしてブロック1〜3で示す3群の移動棚に分けられている。図12(a)では、ブロック1ではAとB、BとCで示す移動棚間にそれぞれ作業通路が形成され、ブロック2ではDとE、EとFで示す移動棚間に、ブロック3ではGとHで示す移動棚間と、Iで示す移動棚と固定棚との間にそれぞれ作業通路が形成されている。これら各作業通路に番号1〜6を付している。
図12(b)(c)(d)は、各移動棚のレイアウトを、図12(a)に示すレイアウトから変更する過程を示しており、図12(d)は変更を完了したレイアウトを示している。図12(b)に示すように、C,Gで示す上記二つの可動固定棚をそれぞれ左、右に向かって移動させる。この可動固定棚の移動により、ブロック1とブロック3が狭められ、ブロック2が広げられる。図12(c)は、Cで示す可動固定棚がBで示す移動棚に近接し、Gで示す可動固定棚がHで示す移動棚に近接して停止した状態を示す。図12(d)は、C,Gで示す可動固定棚が固定側に切り替えられた状態を示す。
C,Gで示す可動固定棚が上記のように移動させられた後固定側に切り替えられることにより、ブロック1とブロック3では一つの作業通路のみが形成可能になり、ブロック2では四つの作業通路が形成可能になっている。複数の移動棚から構成される移動棚装置は、可動固定棚を移動させることにより、複数の作業通路の形成レイアウトを必要に応じて変更することができ、変更後は可動固定棚を固定側に切り替えることにより、上記レイアウトを維持することができる。
図13、図14は可動固定棚を含む移動棚装置の使用例を示す。図12の例と同様にA〜Iで示す移動棚と両側の固定棚を有してなる。C,Gで示す移動棚が可動固定棚である。図13は、C,Gで示す可動固定棚を、互いに連動することなく、かつ、他の移動棚とも連動することなく単独で移動させ、移動後は固定に切り替えることができるようにした移動棚装置を示す。このように、C,Gで示す可動固定棚が非連動で動く移動棚装置は図12に示す例と同様に複数の作業通路のレイアウトを必要に応じて変更することができ、変更後のレイアウトを維持することができる。
図14に示す例は、移動棚、可動固定棚、固定棚の配置が図13の配置と同じであるが、C,Gで示す可動固定棚を可動側に切り替えると、可動固定棚の移動に連動して他の移動棚が移動するように構成したものである。図14(a)に示す例では、B,C,Dで示す移動棚と、F,G,Hで示す移動棚が収束し、左端の固定棚とAで示す移動棚の間、A,Bで示す移動棚の間、D,Eで示す移動棚の間、E,Fで示す移動棚の間、H,Iで示す移動棚の間、Iで示す移動棚と右端の固定棚との間に作業通路が形成されている。この状態からCで示す可動固定棚を左方に向かって移動させると、左側に近接していたBで示す移動棚も連動して移動し、Aで示す移動棚に近接すると停止し、C,Dで示す移動棚間に作業通路が形成される。同様に、Gで示す可動固定棚を右方方に向かって移動させると、右側に近接していたHで示す移動棚も連動して移動し、Iで示す移動棚に近接すると停止し、F,Gで示す移動棚間に作業通路が形成される。このようにして、通常の多通路方式の電動式移動棚装置と同様に動作させることができるとともに、複数の作業通路の形成形態を任意に変更することができる。
図15に示す例は、電動式移動棚装置を構成する全ての移動棚を可動固定棚としたもので、それぞれの可動固定棚の切り替えスイッチを可動側に切り替えるか固定側に切り替えるかによって様々な使い方ができることを示している。図15(a)は、全ての可動固定棚を固定側に切り替えた例である。全ての可動固定棚の切り替えスイッチを可動側に切り替えれば、通常の電動式移動棚装置として動作させることができる。可動固定棚の一部を固定側に切り替え、他の可動固定棚を可動側に切り替えれば、多通路方式の電動式移動棚装置として動作させることができる。複数の可動固定棚を収束させ、少なくとも外側の可動固定棚を固定側に切り替えると、セキュリティ効果を得ることができる。