JP2013239475A - 量子干渉装置、原子発振器、電子機器及び量子干渉方法 - Google Patents

量子干渉装置、原子発振器、電子機器及び量子干渉方法 Download PDF

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Abstract

【課題】周波数の短期安定度を維持しながら従来よりも周波数精度を向上させることができる量子干渉装置、原子発振器、電子機器及び量子干渉方法を提供すること。
【解決手段】原子発振器1(量子干渉装置の一例)は、制御信号に応じた周波数差の2光波を含む光を発生させる半導体レーザー110、半導体レーザーが発生させた光が入射するガスセル120(原子の集団)、ガスセルを透過した光を検出する光検出器130、2光波の周波数差を掃引するための掃引信号を生成する掃引信号生成部10、掃引信号に同期して光検出器の出力信号を検波する検波回路170、掃引信号と検波回路の出力信号とに基づいて、2光波が共鳴光対となるように制御信号を生成する周波数制御部20を含む。掃引信号は、ガスセルを透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における当該基準点の微分係数の絶対値よりも小さい。
【選択図】図1

Description

本発明は、共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる量子干渉装置、原子発振器、電子機器及び量子干渉方法に関する。
図10に示すように、アルカリ金属原子は、タームシンボル21/2で表される基底準位と、タームシンボル21/223/2で表される2つの励起準位とを有することが知られている。さらに、21/221/223/2の各準位は、複数のエネルギー準位に分裂した超微細構造を有している。具体的には、21/2はI+1/2とI−1/2の2つの基底準位を持ち、21/2はI+1/2とI−1/2の2つの励起準位を持ち、23/2はI+3/2,I+1/2,I−1/2,I−3/2の4つの励起準位を持っている。ここで、Iは核スピン量子数である。
21/2のI−1/2の基底準位にある原子は、D2線を吸収することで、23/2のI+1/2,I−1/2,I−3/2のいずれかの励起準位に遷移することができるが、I+3/2の励起準位に遷移することはできない。21/2のI+1/2の基底準位にある原子は、D2線を吸収することで、23/2のI+3/2,I+1/2,I−1/2のいずれかの励起準位に遷移することができるが、I−3/2の励起準位に遷移することはできない。これらは、電気双極子遷移を仮定した場合の遷移選択則による。逆に、23/2のI+1/2又はI−1/2の励起準位にある原子は、D2線を放出して21/2のI+1/2又はI−1/2の基底準位(元の基底準位又は他方の基底準位のいずれか)に遷移することができる。ここで、21/2のI+1/2,I−1/2の2つの基底準位と23/2のI+1/2又はI−1/2の励起準位からなる3準位(2つの基底準位と1つの励起準位からなる)は、D2線の吸収・発光によるΛ型の遷移が可能であることからΛ型3準位と呼ばれる。これに対して、23/2のI−3/2の励起準位にある原子は、D2線を放出して必ず21/2のI−1/2の基底準位(元の基底準位)に遷移し、同様に、23/2のI+3/2の励起準位にある原子は、D2線を放出して必ず21/2のI+1/2の基底準位(元の基底準位)に遷移する。すなわち、21/2のI+1/2,I−1/2の2つの基底準位と23/2のI−3/2又はI+3/2の励起準位からなる3準位は、D2線の吸収・放出によるΛ型の遷移が不可能であることからΛ型3準位を形成しない。
気体状のアルカリ金属原子に、Λ型3準位を形成する第1の基底準位(21/2のI−1/2の基底準位)と励起準位(例えば、23/2のI+1/2の励起準位)とのエネルギー差に相当する周波数(振動数)を有する共鳴光(共鳴光1とする)と、第2の基底準位(21/2のI+1/2の基底準位)と励起準位とのエネルギー差に相当する周波数(振動数)を有する共鳴光(共鳴光2とする)とを同時に照射すると、2つの基底準位の重ね合わせ状態、即ち量子コヒーレンス状態(暗状態)になり、励起準位への励起が停止する電磁誘起透過(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象(CPT(Coherent Population Trapping)と呼ばれることもある)が起こることが知られている。このEIT現象を起こす共鳴光対(共鳴光1と共鳴光2)の周波数差はアルカリ金属原子の2つの基底準位のエネルギー差ΔE12に相当する周波数と正確に一致する。例えば、セシウム原子は、2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数は9.192631770GHzであるので、セシウム原子に、周波数差が9.192631770GHzの2種類のD1線又はD2線のレーザー光を同時に照射すると、EIT現象が起こる。
従って、図11に示すように、周波数がf1の光と周波数がf2の光を気体状のアルカリ金属原子に同時に照射したとき、この2光波が共鳴光対となってアルカリ金属原子がEIT現象を起こすか否かでアルカリ金属原子を透過する光の強度が急峻に変化する。この急峻に変化する透過光の強度を示す信号はEIT信号(共鳴信号)と呼ばれ、共鳴光対の周波数差f1−f2がΔE12に相当する周波数f12と正確に一致するときにEIT信号のレベルがピーク値を示す。そこで、EIT信号のピークトップを検出し、アルカリ金属原子に照射する2光波の周波数差f1−f2がΔE12に相当する周波数f12と正確に一致するように制御することで、高精度な発振器を実現することができる。
図12は、従来のEIT方式による原子発振器の一般的な構成の概略図である。図12に示すように、従来のEIT方式による原子発振器は、電流駆動回路により発生した周波数f0(=v/λ0:vは光の速度、λ0は光の波長)を設定するための駆動電流に、周波数がfmの変調信号を重畳することにより、半導体レーザーに変調をかけて周波数がf0+fmの光と周波数がf0−fmの光の2光波を発生させる。この2種類の光はガスセルに同時に照射され、光検出器によりガスセルを透過した光の強度を検出する。ガスセルは気体状のアルカリ金属原子とこれを封入する容器とから構成されており、同時に照射された2種類の光が共鳴光対となれば、アルカリ金属原子がEIT現象を起こし、ガスセルを透過する光の強度が大きくなる。そこで、この原子発振器は、光検出器が検出する光の強度が最大になるように電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)の発振周波数を制御し、PLL(Phase Locked Loop)を介して周波数がfmの変調信号を生成する。この光検出器が検出する光の強度が最大になるタイミング、すなわち、EIT信号のピークトップを正確に検出するために、低周波発振器が発生させる数十Hz〜数百Hz程度の正弦波を変調信号として電圧制御水晶発振器(VCXO)の発振信号を周波数変調し、PLLに入力している。これにより、半導体レーザーが発生させる2光波の周波数差を正弦波の振幅によって決まる数百Hz〜数kHz程度の範囲で掃引し、検波回路により光検出器の検出信号を正弦波で同期検波することで、EIT信号のピークトップを正確に検出している。例えば、2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数と一致していれば、図13(A)に示すように、周波数がfs(周期が1/fs)の正弦波(掃引信号)のゼロクロス点a,c,eがEIT信号のピークトップに正確に一致する。この状態では、光検出器の検出信号には、直流成分と周波数が2fs(周期が1/2fs)の一定振幅の低周波数成分が含まれるが、周波数がfs(周期が1/fs)の低周波数成分は含まれない。従って、検波回路によってfsの周波数成分は検波されない。一方、2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数よりもわずかに低くなると、図13(B)に示すように、周波数がfs(周期が1/fs)の正弦波のゼロクロス点a,c,eがEIT信号のピークトップよりも低い方向にずれる。この状態では、光検出器の検出信号は、周波数が2fs(周期が1/2fs)で1/fs周期毎に振幅が変化する。つまり、光検出器の検出信号には、直流成分と2fsの周波数成分以外に、fsの周波数成分も含まれる。従って、検波回路によってfsの周波数成分が検波され、検波回路の出力信号の電圧値は、図13(A)の場合の電圧値(基準電圧値)よりも高い電圧値となる。この検波回路の出力信号が電圧制御水晶発振器(VCXO)に入力されるので、電圧制御水晶発振器(VCXO)の発振周波数は高い方向(2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数に一致する方向)に変化する。なお、図示を省略するが、2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数よりもわずかに高くなった場合、周波数がfs(周期が1/fs)の正弦波のゼロクロス点a,c,eがEIT信号のピークトップよりも高い方向にずれるので、光検出器の検出信号は、図13(B)の信号に対して位相が180度異なる信号となる。従って、検波回路の出力信号の電圧値は負(基準電圧値よりも低い電圧値)となり、電圧制御水晶発振器(VCXO)の発振周波数は低い方向(2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数に一致する方向)に変化する。このような構成によれば、半導体レーザーが出射する、周波数がf0+fmの光と周波数がf0−fmの光の周波数差2fmがΔE12に相当する周波数と一致するように、すなわち、変調信号の周波数fmがΔE12に相当する周波数の1/2の周波数と一致するように制御がかかる。従って、電圧制御水晶発振器(VCXO)の発振動作が極めて安定に継続し、周波数安定度が極めて高い発振信号を発生させることができる。このような原子発振器に関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
米国特許第6320472号明細書
ところで、掃引周期(検波周期)が短いほど周波数の短期安定度を高めることができるので、掃引信号の周波数(掃引速度)をできるだけ高くすることが望ましい。ところが、掃引周波数(掃引速度)が高すぎると、原子のラビ振動の周波数に対して無視できなくなり、観測されるEIT信号の対称性が崩れる現象が見られる。図14(A)〜図14(C)は、2光波の周波数差の掃引速度を変えて観測されるEIT信号のプロファイルのシミュレーション結果を示した図であり、図14(A)は掃引速度が最も遅く、図14(C)は掃引速度が最も速く、図14(B)は掃引速度が図14(A)と図14(C)の間の場合のシミュレーション結果である。図14(A)のように、十分にゆっくりと掃引すると正しい対称な信号プロファイルが得られる。一方、図14(B)や図14(C)のように、掃引速度が速すぎると共鳴点(EIT信号のピークトップ)を過ぎてから信号プロファイルが崩れ、正確な共鳴信号を取得できなくなる。これは、観測系が掃引中に平衡状態を保てなかったことによるもので、掃引速度に最も敏感なのは、共鳴点であるピークトップ近傍であることが知られている。
前述したように、従来の原子発振器では、掃引信号として正弦波を用いており、正弦波のゼロクロス点付近がEIT信号のピークトップ付近に対応している。ところが、正弦波のゼロクロス点は、時間変化率が最も大きいため、EIT信号のピークトップでの掃引速度が最も速く、掃引信号の周波数を高くするとEIT信号の対称性が崩れやすい。前述した検波の原理より、変調信号の周波数fmがΔE12に相当する周波数の1/2の周波数と正確に一致するように制御がかかるためには、EIT信号が左右対称であることが前提となっている。逆に、EIT信号が左右非対称であれば、変調信号の周波数fmとΔE12に相当する周波数の1/2の周波数がわずかにずれた状態で安定する可能性がある。このような状態では、電圧制御水晶発振器(VCXO)の発振周波数に誤差が生じ、周波数精度が劣化するという問題がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、周波数の短期安定度を維持しながら従来よりも周波数精度を向上させることができる量子干渉装置、原子発振器、電子機器及び量子干渉方法を提供することができる。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例に係る量子干渉装置は、共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる量子干渉装置であって、所与の制御信号に応じた周波数差の2光波を含む光を発生させる光発生部と、光発生部が発生させた光が入射する前記原子の集団と、前記原子の集団を透過した光を検出する光検出部と、前記2光波の周波数差を掃引するための掃引信号を生成する掃引信号生成部と、前記掃引信号に同期して前記光検出部の出力信号を検波する検波部と、前記掃引信号と前記検波部の出力信号とに基づいて、前記2光波が前記共鳴光対となるように前記制御信号を生成する周波数制御部と、を含み、前記掃引信号は、前記原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における前記基準点の微分係数の絶対値よりも小さい。
本適用例に係る量子干渉装置では、原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における当該基準点の微分係数の絶対値よりも小さい掃引信号を用いて、光発生部が発生させる2光波の周波数差を掃引する。これにより、掃引信号として正弦波を用いた従来の手法と比較して、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度を遅くすることができるので、EIT信号の対称性を維持できる掃引周波数の限界値を従来よりも高くすることができる。従って、本適用例に係る量子干渉装置によれば、周波数の短期安定度を維持しながら従来よりも周波数精度を向上させることができる。
例えば、前記周波数制御部は、前記検波部の出力信号に応じた周波数の発振信号を生成する周波数可変発振部と、前記周波数可変発振部の前記発振信号を前記掃引信号で変調する変調部と、前記2光波が前記共鳴光対となるように、前記変調部の出力信号を周波数変換して前記制御信号を生成する周波数変換部と、を含むようにしてもよい。
また、例えば、前記掃引信号生成部は、所与の周波数の発振信号を生成する発振部と、前記発振部の前記発振信号を波形整形し、当該発振信号と同期した前記掃引信号を生成する波形整形部と、を含み、前記検波部は、前記発振部の前記発振信号を用いて前記光検出部の出力信号を検波するようにしてもよい。
[適用例2]
上記適用例に係る量子干渉装置において、前記掃引信号は、前記基準点が、微分係数の絶対値が最も小さくてもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、基準点において微分係数の絶対値が最小となる掃引信号を用いることで、EIT信号のピークトップの掃引速度を最も遅くすることができる。
[適用例3]
上記適用例に係る量子干渉装置において、前記掃引信号は、三角波信号であってもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、比較的容易に生成可能な三角波信号を掃引信号として用いることで、正弦波を掃引信号として用いた場合と比較してEIT信号のピークトップの掃引速度を遅くすることができる。
[適用例4]
上記適用例に係る量子干渉装置において、前記掃引信号は、前記基準点から極値点まで微分係数の絶対値が単調増加するようにしてもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、基準点から極値点まで微分係数の絶対値が単調増加する掃引信号を用いることで、掃引速度に最も敏感なピークトップ付近では掃引速度を遅くし、ピークトップから離れるほど掃引速度を速くすることができる。従って、本適用例に係る量子干渉装置によれば、EIT信号の対称性を維持できる掃引周波数の限界値をより高くすることができるので、周波数の短期安定度をより向上させることができる。
[適用例5]
上記適用例に係る量子干渉装置は、共鳴信号の線幅に対応させて前記掃引信号の振幅を調整するための振幅調整情報が記憶されている記憶部を含み、前記掃引信号生成部は、前記振幅調整情報に応じた振幅の前記掃引信号を生成するようにしてもよい。
本適用例に係る量子干渉装置によれば、量子干渉装置毎のEIT信号の違い(ばらつき)を考慮し、振幅調整情報によりEIT信号の線幅に対応させて掃引信号の振幅を調整することで、EIT信号の対称性とピークトップの高い検出感度を維持することができる。従って、本適用例に係る量子干渉装置によれば、周波数の短期安定度を維持しながら周波数精度をより向上させることができる。
[適用例6]
本適用例に係る原子発振器は、共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる原子発振器であって、所与の制御信号に応じた周波数差の2光波を含む光を発生させる光発生部と、光発生部が発生させた光が入射する前記原子の集団と、前記原子の集団を透過した光を検出する光検出部と、前記2光波の周波数差を掃引するための掃引信号を生成する掃引信号生成部と、前記掃引信号に同期して前記光検出部の出力信号を検波する検波部と、前記掃引信号と前記検波部の出力信号とに基づいて、前記2光波が前記共鳴光対となるように前記制御信号を生成する周波数制御部と、を含み、前記掃引信号は、前記原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における前記基準点の微分係数の絶対値よりも小さい。
本適用例に係る原子発振器では、原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における当該基準点の微分係数の絶対値よりも小さい掃引信号を用いて、光発生部が発生させる2光波の周波数差を掃引する。これにより、掃引信号として正弦波を用いた従来の手法と比較して、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度を遅くすることができるので、EIT信号の対称性を維持できる掃引周波数の限界値を従来よりも高くすることができる。従って、本適用例に係る原子発振器によれば、周波数の短期安定度を維持しながら従来よりも周波数精度を向上させることができる。
[適用例7]
本適用例に係る電子機器は、上記の原子発振器を備える。
[適用例8]
本適用例に係る量子干渉方法は、共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる量子干渉方法であって、所与の制御信号に応じた周波数差の2光波を含む光を発生させる光発生ステップと、前記原子の集団に、前記2光波を含む光を照射する光照射ステップと、前記原子の集団を透過した光を検出する光検出ステップと、前記2光波の周波数差を掃引するための掃引信号を生成する掃引信号生成ステップと、前記掃引信号に同期して前記光検出ステップで得られた信号を検波する検波ステップと、前記掃引信号と前記検波ステップで得られた信号とに基づいて、前記2光波が前記共鳴光対となるように前記制御信号を生成する周波数制御ステップと、を含み、前記掃引信号は、前記原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における前記基準点の微分係数の絶対値よりも小さい。
本適用例に係る量子干渉方法では、原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における当該基準点の微分係数の絶対値よりも小さい掃引信号を用いて、光発生部が発生させる2光波の周波数差を掃引する。これにより、掃引信号として正弦波を用いた従来の手法と比較して、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度を遅くすることができるので、EIT信号の対称性を維持できる掃引周波数の限界値を従来よりも高くすることができる。従って、本適用例に係る量子干渉方法によれば、周波数の短期安定度を維持しながら従来よりも周波数精度を向上させることができる。
第1実施形態の原子発振器の構成例を示す図。 半導体レーザーの出射光の周波数スペクトラムの一例を示す概略図。 掃引信号の一例である三角波信号を示す図。 EIT信号の掃引についての説明図。 第2実施形態の原子発振器の構成例を示す図。 EIT信号の掃引についての説明図。 本実施形態の電子機器の模式図。 掃引信号の他の一例を示す図。 変形例における半導体レーザーの出射光の周波数スペクトルを示す概略図。 アルカリ金属原子のエネルギー準位を模式的に示す図。 EIT信号の一例を示す概略図。 従来のEIT方式による原子発振器の一般的な構成の概略図。 EIT信号の掃引についての説明図。 掃引速度とEIT信号の関係のシミュレーション結果を示した図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
以下では、量子干渉装置の一例である原子発振器を例に挙げて説明する。
1.第1実施形態
1−1.機能構成
図1は、本実施形態の原子発振器の構成例を示す図である。図1に示すように、第1実施形態の原子発振器1は、半導体レーザー110、ガスセル120、光検出器130、検波回路140、変調回路150、低周波発振器160、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、周波数変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210、駆動回路220、波形整形回路230を含んで構成されている。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図1の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
半導体レーザー110(光発光部の一例)は、複数の2光波を含む光を発生させ、ガスセル120に照射する。半導体レーザーとしては、端面発光レーザー(Edge Emitting Laser)や、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の面発光レーザーなどを用いることができる。特に、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)は、チップの上面に発光部を形成するので小型化に特に有利である。
ガスセル120は、容器中に気体状のアルカリ金属原子(ナトリウム(Na)原子、ルビジウム(Rb)原子、セシウム(Cs)原子等)(原子の集団の一例)が封入されたものであり、ガスセル120を透過した光は、光検出器130に入射する。
光検出器130(光検出部の一例)は、入射した光を検出し、光の強度に応じた検出信号を出力する。光検出器130として、フォトダイオード(PD:Photodiode)等が用いられる。
光検出器130の出力信号は検波回路140と検波回路170に入力される。検波回路140(検波部の一例)は、数Hz〜数百Hz程度の低い周波数で発振する低周波発振器160の発振信号を用いて光検出器130の出力信号を同期検波する。変調回路150は、検波回路140による同期検波を可能とするために、低周波発振器160の発振信号(検波回路140に供給される発振信号と同じ信号)を変調信号として検波回路140の出力信号を変調して駆動回路220に出力する。変調回路150は、周波数混合器(ミキサー)、周波数変調(FM:Frequency Modulation)回路、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)回路等により実現することができる。
検波回路170は、数Hz〜数百Hz程度の低い周波数で発振する低周波発振器200(発振部の一例)の発振信号を用いて光検出器130の出力信号を同期検波する。そして、検波回路170の出力信号の大きさに応じて、電圧制御水晶発振器(VCXO)180(周波数可変発振部の一例)の発振周波数が微調整される。電圧制御水晶発振器(VCXO)180は、例えば、数MHz〜数10MHz程度で発振する。
波形整形回路230(波形整形部の一例)は、低周波発振器200の発振信号(振幅がVS、周波数がfsの正弦波)を波形整形し、光検出器130の出力信号を極大にする(ガスセル120を透過する光の強度を極大にする)基準点(EIT信号(共鳴信号)のピークトップに対応する点)の微分係数(基準点における接線の傾き)の絶対値が、当該発振信号における当該基準点の微分係数の絶対値よりも小さい掃引信号を生成する。図3は、このような掃引信号の一例である三角波信号を示す図である。図3に示す三角波信号は、振幅がVS(正負のピーク値がそれぞれ+VS及び−VS)の三角波が周期Ts(=1/fs)で繰り返される周期信号であり、電圧vと時間tの関係は、次式(1)で表される。なお、式(1)において、nは0又は正の整数である。
Figure 2013239475
この三角波信号のゼロクロス点(基準点の一例)の微分係数(時間微分値)の絶対値は、4VSsである。一方、振幅がVS、周波数がfsの正弦波(図3の破線の波形)のゼロクロス点(基準点の一例)の微分係数(時間微分値)の絶対値は、2πVSsである。従って、式(1)で表される三角波信号は、本実施形態における掃引信号の要件を満たしている。
周波数変調回路190(変調部の一例)は、検波回路170による同期検波を可能とするために、波形整形回路230の出力信号(掃引信号)を変調信号として電圧制御水晶発振器(VCXO)180の出力信号を変調する。
周波数変換回路210(周波数変換部の一例)は、一定の周波数変換率で周波数変調回路190の出力信号を周波数変換して駆動回路220に出力する。周波数変換回路210は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路により実現することができる。
駆動回路220は、半導体レーザー110のバイアス電流を設定するとともに、変調回路150の出力信号に応じて当該バイアス電流を微調整して半導体レーザー110に供給する。すなわち、半導体レーザー110、ガスセル120、光検出器130、検波回路140、変調回路150、駆動回路220を通るフィードバックループ(第1のフィードバックループ)により、半導体レーザー110が発生させる光の中心波長λ0(中心周波数f0)が微調整される。
具体的には、アルカリ金属原子の23/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と21/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ1(周波数f1)、アルカリ金属原子の23/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と21/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ2(周波数f2)に対して、中心波長λ0が(λ1+λ2)/2とほぼ一致する(中心周波数f0が(f1+f2)/2とほぼ一致する)ように制御される。あるいは、アルカリ金属原子の21/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と21/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ1(周波数f1)、アルカリ金属原子の21/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と21/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ2(周波数f2)に対して、中心波長λ0が(λ1+λ2)/2とほぼ一致する(中心周波数f0が(f1+f2)/2とほぼ一致する)ように制御されるようにしてもよい。
駆動回路220は、さらに、バイアス電流に、周波数変換回路210の出力周波数成分(変調周波数fm)の電流(変調電流)を重畳して半導体レーザー110に供給する。この変調電流により、半導体レーザー110に周波数変調がかかり、中心周波数f0の光とともに、その両側にそれぞれ周波数がfmだけずれた周波数f0±fm、f0±2fm、・・・の光を発生させる。図2に、半導体レーザー110の出射光の周波数スペクトラムを示す。図2において、横軸は光の周波数であり、縦軸は光の強度である。
本実施形態では、半導体レーザー110、ガスセル120、光検出器130、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、周波数変調回路190、周波数変換回路210、駆動回路220を通るフィードバックループ(第2のフィードバックループ)により、波形整形回路230の出力信号を掃引信号として、半導体レーザー110が発生させる周波数f0+fmの光と周波数f0−fmの光の2光波の周波数差が掃引される。そして、検波回路170により光検出器130の検出信号を低周波発振器200の発振信号(正弦波)で同期検波することで、光検出器130が検出する光の強度が最大になるタイミング、すなわち、EIT信号のピークトップが正確に検出される。
例えば、掃引信号を三角波信号とした場合、2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数と一致していれば、図4(A)に示すように、三角波信号(掃引信号)のゼロクロス点a,c,eがEIT信号のピークトップに正確に一致する。この状態では、光検出器130の検出信号は、基本周波数が2fs(周期が1/2fs)の三角波信号となり、直流成分と2fsの周波数成分が大きいが、fsの周波数成分は小さい。従って、検波回路170によってfsの周波数成分はほとんど検波されない。一方、2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数よりもわずかに低くなると、図4(B)に示すように、三角波信号(掃引信号)のゼロクロス点a,c,eがEIT信号のピークトップよりも低い方向にずれる。この状態では、光検出器130の検出信号は、基本周波数が2fs(周期が1/2fs)で1/fs周期毎に振幅が変化する三角波信号となる。つまり、光検出器の検出信号には、直流成分と2fsの周波数成分だけでなく、fsの周波数成分も大きい。従って、検波回路170によってfsの周波数成分が検波され、検波回路170の出力信号の電圧値は、図4(A)の場合の電圧値(基準電圧値)よりも高い電圧値となる。この検波回路170の出力信号が電圧制御水晶発振器(VCXO)に入力されるので、電圧制御水晶発振器(VCXO)の発振周波数は高い方向(2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数に一致する方向)に変化する。なお、図示を省略するが、2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数よりもわずかに高くなった場合、三角波信号(掃引信号)のゼロクロス点a,c,eがEIT信号のピークトップよりも高い方向にずれるので、光検出器130の検出信号は、図4(B)の信号に対して位相が180度異なる信号となる。従って、検波回路170の出力信号の電圧値は基準電圧値よりも低い電圧値となり、電圧制御水晶発振器(VCXO)の発振周波数は低い方向(2光波の周波数差がΔE12に相当する周波数に一致する方向)に変化する。
このようにして検出されたEIT信号のピークトップをプローブとすることで、周波数f0+fmの光と周波数f0−fmの光の2光波がEIT発現効率を最大にする共鳴光対となるように、すなわち、この2光波の周波数差2fmがΔE12に相当する周波数f12と正確に一致するように微調整される。言い換えると、第2のフィードバックループにより、周波数変換回路210の出力周波数fmがf12/2と正確に一致するように微調整される。例えば、アルカリ金属原子がセシウム原子であれば、ΔE12に相当する周波数が9.192631770GHzなので、周波数変換回路280の出力信号の周波数が4.596315885GHzと一致した状態で安定する。
以上に説明したように、本実施形態の原子発振器では、三角波信号のように、ゼロクロス点(EIT信号のピークトップに対応する点)の微分係数の絶対値が、低周波発振器200の発振信号(正弦波)におけるゼロクロス点の微分係数の絶対値よりも小さい掃引信号を用いて、半導体レーザー110が発生させる周波数f0+fmの光と周波数f0−fmの光の2光波の周波数差を掃引する。これにより、掃引信号として低周波発振器の発振信号(正弦波)を用いる従来の原子発振器と比較して、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度を遅くすることができる。例えば、振幅がVs、周波数がfsの正弦波のゼロクロス点における微分係数の絶対値は2πVSsであるのに対して、基本周波数がfsの三角波信号のゼロクロス点における微分係数の絶対値は4VSsなので、掃引信号として三角波信号を用いることで、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度を従来の約64%まで遅くすることができる。
その結果、EIT信号の対称性を維持できる掃引周波数の限界値を従来よりも高くすることができる。従って、本実施形態の原子発振器によれば、周波数の短期安定度を維持しながら従来よりも周波数精度を向上させることができる。
なお、本実施形態では、低周波発振器200と波形整形回路230により、変調信号生成部10が構成されているが、掃引信号生成部10の構成は、これに限られず、光検出器130(光検出部)の出力信号を極大にする(ガスセル120を透過する光の強度を極大にする)基準点(EIT信号のピークトップに対応する点)の微分係数が、同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における当該基準点の微分係数よりも小さい掃引信号を生成する構成であればよい。また、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、周波数変調回路190、周波数変換回路210により、周波数制御部20が構成されているが、周波数制御部20の構成は、これに限られず、掃引信号と検波回路170(検波部)の出力信号とに基づいて、半導体レーザー110(光発生部)が発生させる2光波が共鳴光対となるように半導体レーザー110(光発生部)の制御信号を生成する構成であればよい。
2.第2実施形態
EIT信号のピークトップ付近の掃引速度の限界値は、EIT信号の線幅に依存する。例えば、EIT信号の線幅が10倍になれば、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度の限界値も10倍程度高くなる。掃引信号の振幅を大きくすれば、ゼロクロス点の微分係数の絶対値が大きくなるため、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度が速くなる。逆に、掃引信号の振幅を小さくすれば、ゼロクロス点の微分係数の絶対値が小さくなるため、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度が遅くなる。そこで、第2実施形態の原子発振器では、あらかじめ観測されたEIT信号の線幅に対応させて掃引信号の振幅を調整する。
図5は、第2実施形態の原子発振器の構成例を示す図である。図5において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。図5に示すように、第2実施形態の原子発振器1は、第1実施形態と同様の構成要素に加えて、記憶部30と振幅調整回路230が追加されている。なお、本実施形態の原子発振器は、適宜、図5の構成要素(各部)の一部を省略又は変更したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
記憶部30は、不揮発性の記憶部であり、振幅調整情報300が記憶されている。振幅調整情報300は、あらかじめ観測されたEIT信号の線幅(半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum))に対応させて掃引信号の振幅を調整するための情報である。例えば、原子発振器1の検査工程等においてEIT信号を観測し、観測されたEIT信号の線幅が広いほど掃引信号の振幅を大きくするような振幅調整情報300が記憶部30に書き込まれる。記憶部30は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)で実現することができる。
振幅調整回路230は、記憶部30に記憶されている振幅調整情報300に応じて、波形整形回路230が生成した掃引信号の振幅を調整する。例えば、振幅調整回路230は、振幅調整情報300に応じて可変利得増幅器の利得を変えることで掃引信号の振幅を調整するようにしてもよいし、振幅調整情報300に応じて可変アッテネーターの減衰量を変えることで掃引信号の振幅を調整するようにしてもよい。
例えば、掃引信号の振幅が、観測されたEIT信号の線幅に比例するように、振幅調整情報300を決定してもよい。例えば、図6(A)に示すように、あらかじめ観測されたEIT信号の線幅がAであれば、掃引信号の振幅がVsになるような振幅調整情報300を記憶部30に書き込み、図6(B)に示すように、あらかじめ観測されたEIT信号の線幅が2Aであれば、掃引信号の振幅が2Vsになるような振幅調整情報300を記憶部30に書き込めばよい。観測されたEIT信号の線幅に対応させて掃引信号の振幅を2倍にすると、掃引信号のゼロクロス点の微分係数の絶対値も2倍になる。そのため、EIT信号のピークトップ付近の掃引速度も2倍になるが、EIT信号の線幅が2倍になっているためその対称性は失われない。そして、掃引信号の振幅をEIT信号の線幅に比例させることで、掃引信号の振幅を固定した場合と比較して、掃引により光検出器130の検出信号に含まれる周波数成分のレベルを高くすることができるので、EIT信号のピークトップの検出感度を高くすることができる。
なお、必ずしも掃引信号の振幅をEIT信号の線幅に比例させなくてもよい。例えば、EIT信号の対称性が崩れない掃引信号の振幅の限界値(最大値)を検査しておき、掃引信号の振幅が当該限界値付近になるような振幅調整情報300を記憶部30に書き込んでもよい。このようにすれば、EIT信号のピークトップの検出感度を限界付近まで高くすることができる。
以上に説明したように、本実施形態の原子発振器によれば、原子発振器毎のEIT信号の違い(ばらつき)を考慮し、振幅調整情報300によりEIT信号の線幅に対応させて掃引信号の振幅を調整することで、EIT信号の対称性とピークトップの高い検出感度を維持することができる。従って、本実施形態の原子発振器によれば、周波数の短期安定度を維持しながら周波数精度をより向上させることができる。
3.電子機器
図7に、本実施形態の原子発振器を搭載した電子機器(携帯端末)の模式図を示す。図7において、携帯端末500(PHSを含む)は、複数の操作ボタン502、受話口504及び送話口506を備え、操作ボタン502と受話口504との間には表示部508が配置されている。最近では、このような携帯端末500においてもGPS機能を備えている。そこで、携帯端末500には、GPS回路のクロック源として本実施形態の原子発振器が内蔵されている。
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
[変形例1]
本実施形態の原子発振器では、掃引信号として三角波信号を用いているが、例えば、図8に示すような波形の掃引信号でもよい。図8に示す掃引信号は、振幅がVS(正負のピーク値がそれぞれ+VS及び−VS)の所定の波形が周期Ts(=1/fs)で繰り返される周期信号であり、電圧vと時間tの関係は、次式(2)で表される。なお、式(2)において、nは0又は正の整数である。
Figure 2013239475
この掃引信号のゼロクロス点(基準点)の微分係数は0である。一方、振幅がVS、周波数がfsの正弦波(図8の破線の波形)のゼロクロス点(基準点)の微分係数の絶対値は2πVSsである。従って、式(2)で表される信号は、本実施形態における掃引信号の要件を満たしている。
なお、式(2)で表される信号は、ゼロクロス点(基準点)の微分係数の絶対値が最小である。基準点において微分係数の絶対値が最小となる掃引信号を用いることで、EIT信号のピークトップの掃引速度を最も遅くすることができる。
また、式(2)で表される信号は、ゼロクロス点(基準点)から極大点まで微分係数が単調増加し、ゼロクロス点(基準点)から極小点まで微分係数が単調減少している。このように、基準点から極値点まで微分係数の絶対値が単調増加する掃引信号を用いることで、掃引速度に最も敏感なピークトップ付近では掃引速度を遅くし、ピークトップから離れるほど掃引速度を速くすることができる。従って、EIT信号の対称性を維持できる掃引周波数の限界値を高くすることができるので、原子発振器の周波数の短期安定度をより向上させることができる。
[変形例2]
本実施形態の原子発振器において、半導体レーザー110の中心波長λ0(中心周波数f0)が、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子の21/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と21/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ2(周波数f2)にほぼ一致するようにバイアス電流を設定するとともに、周波数変換回路210が周波数変調回路190の出力信号をΔE12に相当する周波数に等しい周波数の信号に変換するように変形してもよい。あるいは、本実施形態の原子発振器1において、半導体レーザー110の中心波長λ0(中心周波数f0)が、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子の21/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と21/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ1(周波数f1)にほぼ一致するようにバイアス電流を設定するとともに、周波数変換回路210が周波数変調回路190の出力信号をΔE12に相当する周波数に等しい周波数の信号に変換するように変形してもよい。
図9(A)は、前者のケースの半導体レーザー110の出射光の周波数スペクトルを示す概略図であり、図9(B)は、後者のケースの半導体レーザー110の出射光の周波数スペクトルを示す概略図である。図9(A)及び図9(B)において、横軸は光の周波数であり、縦軸は光の強度である。図9(A)の場合は、周波数f0+fmの光と周波数f0の光の周波数差fmがΔE12に相当する周波数に等しく、かつ、f0+fmがf1にほぼ等しく、かつ、f0がf2にほぼ等しいので、周波数f0+fmの光と周波数f0の光がガスセル120に封入されたアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる。一方、図9(B)の場合は、周波数f0の光と周波数f0−fmの光の周波数差fmがΔE12に相当する周波数にほぼ等しく、かつ、f0がf1にほぼ等しく、かつ、f0−fmがf2にほぼ等しいので、周波数f0の光と周波数f0−fmの光がガスセル120に封入されたアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる。
[変形例3]
本実施形態の原子発振器を電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)を用いた構成に変形してもよい。すなわち、半導体レーザー110は、周波数変換回路210の出力信号(変調信号)による変調がかけられず、設定されたバイアス電流に応じた単一周波数f0の光を発生させる。この周波数f0の光は、電気光学変調器(EOM)に入射し、周波数変換回路210の出力信号(変調信号)によって変調がかけられる。その結果、図2と同様の周波数スペクトルを有する光を発生させることができる。そして、この電気光学変調器(EOM)が発生させる光がガスセル120に照射される。この原子発振器では、半導体レーザー110と電気光学変調器(EOM)による構成が光発生部に相当する。
なお、電気光学変調器(EOM)の代わりに、音響光学変調器(AOM:Acousto-Optic Modulator)を用いてもよい。
5.応用例
本実施形態又は変形例の原子発振器の構成は、共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる様々な量子干渉装置に応用することができる。量子干渉装置とは、原子の量子干渉状態を利用するすべての装置であり、本実施形態で説明したEIT発現部(EIT発現装置)も量子干渉装置に含まれる。
[応用例1]
例えば、本実施形態又は変形例の原子発振器と同様の構成により、ガスセル120の周辺の磁場の変化に追従して電圧制御水晶発振器(VCXO)180の発振周波数が変化するため、ガスセル120の近傍に磁気測定対象物を配置することで磁気センサー(量子干渉装置の一例)を実現することができる。
[応用例2]
また、例えば、本実施形態又は変形例の原子発振器と同様の構成により、極めて安定した金属原子の量子干渉状態(量子コヒーレンス状態)を作り出すことができるので、ガスセル120に入射する共鳴光対を取り出すことで、量子コンピュータ、量子メモリー、量子暗号システム等の量子情報機器に用いる光源(量子干渉装置の一例)を実現することもできる。
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1 原子発振器、10 掃引信号生成部、20 周波数制御部、30 記憶部、110 半導体レーザー、120 ガスセル、121,123 ガスセルの底面、130 光検出器、140 検波回路、150 変調回路、160 低周波発振器、170 検波回路、180 電圧制御水晶発振器(VCXO)、190 周波数変調回路、200 低周波発振器、210 周波数変換回路、220 駆動回路、230 波形整形回路、240 振幅調整回路、300 振幅調整情報、500 携帯端末、502 操作ボタン、504 受話口、506 送話口、508 表示部

Claims (8)

  1. 共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる量子干渉装置であって、
    所与の制御信号に応じた周波数差の2光波を含む光を発生させる光発生部と、
    光発生部が発生させた光が入射する前記原子の集団と、
    前記原子の集団を透過した光を検出する光検出部と、
    前記2光波の周波数差を掃引するための掃引信号を生成する掃引信号生成部と、
    前記掃引信号に同期して前記光検出部の出力信号を検波する検波部と、
    前記掃引信号と前記検波部の出力信号とに基づいて、前記2光波が前記共鳴光対となるように前記制御信号を生成する周波数制御部と、を含み、
    前記掃引信号は、
    前記原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における前記基準点の微分係数の絶対値よりも小さい、量子干渉装置。
  2. 請求項1において、
    前記掃引信号は、
    前記基準点が、微分係数の絶対値が最も小さい、量子干渉装置。
  3. 請求項1又は2において、
    前記掃引信号は、三角波信号である、量子干渉装置。
  4. 請求項1又は2において、
    前記掃引信号は、
    前記基準点から極値点まで微分係数の絶対値が単調増加する、量子干渉装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項において、
    共鳴信号の線幅に対応させて前記掃引信号の振幅を調整するための振幅調整情報が記憶されている記憶部を含み、
    前記掃引信号生成部は、
    前記振幅調整情報に応じた振幅の前記掃引信号を生成する、量子干渉装置。
  6. 共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる原子発振器であって、
    所与の制御信号に応じた周波数差の2光波を含む光を発生させる光発生部と、
    光発生部が発生させた光が入射する前記原子の集団と、
    前記原子の集団を透過した光を検出する光検出部と、
    前記2光波の周波数差を掃引するための掃引信号を生成する掃引信号生成部と、
    前記掃引信号に同期して前記光検出部の出力信号を検波する検波部と、
    前記掃引信号と前記検波部の出力信号とに基づいて、前記2光波が前記共鳴光対となるように前記制御信号を生成する周波数制御部と、を含み、
    前記掃引信号は、
    前記原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における前記基準点の微分係数の絶対値よりも小さい、原子発振器。
  7. 請求項6に記載の原子発振器を備えた、電子機器。
  8. 共鳴光対によって原子に電磁誘起透過現象を発生させる量子干渉方法であって、
    所与の制御信号に応じた周波数差の2光波を含む光を発生させる光発生ステップと、
    前記原子の集団に、前記2光波を含む光を照射する光照射ステップと、
    前記原子の集団を透過した光を検出する光検出ステップと、
    前記2光波の周波数差を掃引するための掃引信号を生成する掃引信号生成ステップと、
    前記掃引信号に同期して前記光検出ステップで得られた信号を検波する検波ステップと、
    前記掃引信号と前記検波ステップで得られた信号とに基づいて、前記2光波が前記共鳴光対となるように前記制御信号を生成する周波数制御ステップと、を含み、
    前記掃引信号は、
    前記原子の集団を透過する光の強度を極大にする基準点の微分係数の絶対値が、当該掃引信号と同じ振幅かつ同じ周波数の正弦波における前記基準点の微分係数の絶対値よりも小さい、量子干渉方法。
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