JP2013234974A - チアゾリジン−2,4−ジオン誘導体及びマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックス - Google Patents

チアゾリジン−2,4−ジオン誘導体及びマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックス Download PDF

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Abstract

【課題】低分子量(特に分子量500以下)の化合物に対するMALDI質量分析を良好に行うための、マトリックス用の低分子有機化合物を提供する。
【解決手段】マトリックスとして、次の構造式を有するチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体を使用する。
Figure 2013234974

ここで、Rは水素原子、メチル基のいずれかを表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、チアゾリジン−2,4−ジオン誘導体に関し、より詳しくは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスとして用いられるチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体に関する。
質量分析におけるイオン化法の1つとしてマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI=Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法が知られている。MALDI法は、レーザ光を試料に短時間照射して瞬間的に試料を気化させることにより、試料中の測定対象物質の分子を分解することなくイオン化するものである。
MALDI法では一般に、測定対象物質の溶液をマトリックス溶液と混合し、さらに必要であれば別のイオン化助剤を混合した上で、試料プレート上に塗布し、溶媒を除去することにより試料を調製する。こうして調製された試料は、測定対象物質が多量のマトリックスとほぼ均一に混合された状態にある。この試料にレーザ光を照射すると、マトリックスによりレーザ光のエネルギーが熱エネルギーに変換される。このときにマトリックスの一部が急速に加熱され、測定対象物質とともに気化する。その過程で測定対象物質がイオン化される。
こうしたMALDI法をイオン化に利用した質量分析装置、特に、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOFMS=Time of Flight Mass Spectrometer)は、タンパク質及び合成高分子化合物などの高分子化合物を温和な条件でイオン化することが特徴であり、タンパク質などの高分子化合物をあまり開裂させることなく分析することが可能である。しかも微量分析にも好適であることから、近年、生命科学や工業材料の分野などで広範に利用されている。
従来一般的に、MALDI法においてマトリックスとして用いられている化合物は、例えば、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、ジスラノール(DIT)、2−(4−ヒドロキシルフェニルアゾ)安息香酸(HABA)などの、いわゆる低分子有機化合物であるが、MALDI法におけるイオン化効率やイオン化の安定性などを改善するために、マトリックスとして用いられる化合物の改良が試みられている(例えば特許文献1、2及び3参照)。
これまでMALDI法は、特に高分子化合物のイオン化に利用されてきたが、MALDI法が簡便で且つ高感度なイオン化法であることから、近年、低分子化合物への適用の要望が高まっている。上記のような従来のマトリックスを用いてMALDI-TOFMS分析を行った場合、マトリックス由来の分子イオンピークがマススペクトル上でm/z 100〜500の低質量領域に顕著に出現する。測定対象物質が高分子化合物である場合には、そうした低質量領域の妨害ピークの存在は問題にならない。しかしながら、測定対象物質が低分子化合物である場合には、マススペクトル上で、目的とする低分子化合物由来の各種分子イオンピークと上記妨害ピークとが混在したり場合によっては重なったりしてしまい、目的ピークを正確に把握することができなくなる。このような理由により、従来のマトリックスを用いたMALDI-TOFMS分析で低分子化合物を適切に分析することは困難であった。
一方、マトリックスを用いずに低分子化合物をレーザ脱離イオン化する技術として、従来、いくつかの提案がなされている。例えば非特許文献1には、マトリックスを用いない代わりに多孔質シリコン(ポーラスシリコン)を基板としたDIOS(Desorption/Ionization on Silicon)と呼ばれるレーザ脱離イオン化法が提案されており、特許文献4には、分子線エピタキシー法を用いてシリコン単結晶上にGeナノドットを形成したプレートを使用したレーザ脱離イオン化法が提案されている。
また、無機化合物をマトリックスとしてMALDI-TOFMS分析を行う技術として、「ナノ・フラワー」と名付けられた白金ナノ粒子を無機マトリックスとして用いたレーザ脱離イオン化法が提案されている(非特許文献2)。
さらにまた、マススペクトル上で低質量領域にマトリックス由来のピークを生じさせないために、従来よりも分子量がかなり大きな、いわゆる高分子有機マトリックスを使用したレーザ脱離イオン化法の例も報告されている。
特開2010-204050号公報 特開2004-347595号公報 特開2008-261824号公報 特開2006-201042号公報
ウェイ(J.Wei)ほか2名、「デソープション-アイオナイゼイション・マス・スペクトロメトリー・オン・ポーラス・シリコン(Desorption-ionization mass spectrometry on porous silicon)」、ネイチャー(Nature)、1999年5月20日、第339巻、p.243-246 カワサキ(H.Kawasaki)ほか3名、「プラチニウム・ナノフラワーズ・フォー・サーフェス-アシステッド・レーザ・デソープション/アイオナイゼイション・マス・スペクトロメトリー・バイオモレキュールズ(Platinum Nanoflowers for Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry of Biomolecules)」、ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー・C(The Journal of physical chemistry C)、2007年、第11巻、p.16278-16283
しかしながら、上述したマトリックスを使用しない方法や無機マトリックスを使用する方法は、従来の有機化合物のマトリックスを用いたMALDI法に比べて分析コストがかなり高くなる。一方、高分子有機マトリックスを使用する方法では、マトリックスの粘性が高いために扱いにくく、試料調製が難しいという問題がある。
本発明はこうした点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分子量500以下の低分子化合物をMALDI-TOFMS分析の測定対象物質としても、該測定対象物質の分子イオンピークがマトリックス由来の分子イオンピークによって妨害されることのない、低分子有機化合物であるマトリックスを提供することにある。
現在、マトリックスとして使用されている2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)やα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)などの化合物は、ベンゼン環を基本として水酸基やカルボン酸などを含んだものである。特にカルボン酸は、測定対象物質の分子のイオン化時における該分子へのプロトン付加に寄与しているとされ、該分子のイオン化に重要な役割を担っていると考えられている。そこで本願発明者は、カルボン酸と同様の性質を有する官能基を有する低分子有機化合物を探索した。具体的には、カルボン酸は酸性基であるから、酸性を示し、MALDI-TOFMS分析に適するように沸点が高いこと、並びに、できるだけ分子量が小さいこと、等を官能基の探索条件とした。
本願発明者は、上記条件に適合する化合物として、カルボン酸とほぼ同じpKaを有するチアゾリジン−2,4−ジオン環に着目し、種々の低分子チアゾリジン−2,4−ジオン誘導体をデザイン及び合成し、実分析による実験を行った。その結果、正イオン測定モードにおいてそれ自体はイオンとして殆ど検出されないという、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスとして好都合な新規チアゾリジン−2,4−ジオン誘導体を創製するに至った。
即ち、上記課題を解決するためになされた本発明に係る物質は、
一般式(1)
Figure 2013234974
(式中、Rは水素原子、メチル基のいずれかを表す。)
で表されるチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体であることを特徴としている。
また、上記課題を解決するためになされた本発明は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析に供する試料をイオン化するためのマトリックスであって、
一般式(1)
Figure 2013234974
(式中、Rは水素原子、メチル基のいずれかを表す。)
で表されるマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスであることを特徴とする。
本発明に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体をマトリックスとして使用した場合、MALDI-TOFMS分析の正イオン測定モードにおいて、マトリックス由来のプロトン付加分子イオン([M+H]+)は、全く検出されないか又は検出されても無視できる程度である。その一方、前記チアゾリジン−2,4−ジオン誘導体をマトリックスとして負イオン測定モードにてMALDI-TOFMS分析を行った場合、マトリックス由来のプロトン脱離イオン([M-H]-)がきわめて明瞭に検出される。これは、チアゾリジン−2,4−ジオン誘導体に含まれるプロトンがチアゾリジン−2,4−ジオン環から容易に脱離することを示すとともに、正イオン測定モードでは脱離したプロトンが測定対象物質の分子に移動することにより、分子のプロトン付加分子イオンの生成に寄与していることを示している。従って、本発明に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体は、低分子量を有する測定対象物質の分子を正イオン化するためのマトリックスとして好適であるといえる。
また、本発明に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体は比較的短いステップで合成できるため、安価に製造することができる。従って、従来の無機マトリックス又は高分子有機マトリックスを使用する方法に比べて分析コストを抑えることができる。さらに、本発明に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体は、いずれも分子量が500以下と低いため、従来の高分子有機マトリックスに比べて粘性が低く、取扱いが容易である。
本発明の実施例1に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体をマトリックスとし、プロプラノロールを測定対象物質として正イオン測定モードでMALDI-TOFMS分析を行って得られたマススペクトル。 本発明の実施例1に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体を(a)正イオン測定モード、及び(b)負イオン測定モードでMALDI-TOFMS分析して得られたマススペクトル。 本発明の実施例2に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体を(a)正イオン測定モード、及び(b)負イオン測定モードでMALDI-TOFMS分析して得られたマススペクトル。 本発明の実施例2に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体をマトリックスとし、プロプラノロールを測定対象物質として正イオン測定モードでMALDI-TOFMS分析を行って得られたマススペクトル。
本実施例に係るチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体は、
一般式(1)
Figure 2013234974
においてRを水素原子とした5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン、及びRをメチル基とした5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンの計2化合物である。これら2化合物の合成方法、化学構造同定に係る各種分析結果、及びマトリックスとして用いた場合のMALDI-TOFMS分析結果をそれぞれ実施例1及び実施例2に示す。
(1)5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンの合成方法
チアゾリジン−2,4−ジオン2.0gと2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド2.36gをエタノール40mLに溶解し、さらにピペリジン0.5mLを加え、窒素気流下で24時間還流した。この溶液を氷冷下で2時間撹拌したのち水60mLを加え、さらに濃塩酸で酸性溶液とした後、氷冷下にて2時間放置し、析出物を得た。前記析出物を濾別し、アセトン30mLに60℃にて熱時溶解し、室温で4時間放置して、再析出物0.97gを得た。この再析出物の融点を測定したところ、280℃以上であった。
(2)5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンの同定
得られた再析出物の化学構造を元素分析及びNMR分析にて同定した。
得られた再析出物の元素分析の結果を以下に示す。
元素分析:C49.97%、H3.14%、N5.73%
次にNMR分析の結果を以下に示す。なお、NMR分析試料調製用の溶媒として重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を使用した。なお、1H-NMR分析の結果に関しては、括弧の前の数字は各ピーク位置を示すケミカルシフト(δ:ppm)を、括弧内の記号は各ピークの多重線形状及び対応プロトン数を示す。また、13C-NMR分析の結果に関しては、各シグナル位置を示すケミカルシフト(δ:ppm)を示す。
1H-NMR in DMSO-d6:δ6.77(m,3H)、7.96(s,1H)、9.14(s,1H)、9.80(s,1H)、12.5(s,1H)
13C-NMR in DMSO-d6:δ113.3、117.2、120.0、120.1、121.5、127.3、150.2、150.6、167.7、168.4
上記の分析結果により、得られた再析出物は、
Figure 2013234974
に示される5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン(分子式:C10H7O4NS、分子量:237.23)であると同定された。
同定された分子式を元に、分子中のC、H及びNの構成比率の理論値を計算したところ、C50.63%、H2.97%、N5.90%であった。これらの値は、上述した元素分析の実測値とそれぞれよく一致した。
(3)5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンのMALDI-TOFMS分析結果
本発明の一実施例である5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして使用した場合に得られる、正イオン測定モードでのマススペクトルを図1に示す。なお、測定試料は以下の方法により調製した。
マトリックス溶液として、5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン(分子量:237.23)100mM/メタノール溶液を調製した。また、プロプラノロール(分子量:259.34)を測定対象物質とし、プロプラノロール塩酸塩1.OmM/50%アセトニトリル水溶液を調製した。両者を等量混合して得られた溶液1μLを、ステンレス製ターゲットプレート(株式会社島津製作所製)上に載せて風乾し、測定試料とした。この測定試料をMALDI-TOFMSの分析に供した。
なお、MALDI-TOFMS分析における分析条件は以下の通りである。
測定装置名:マトリックス支援レーザ脱離イオン化一飛行時間形質量分析計 株式会社島津製作所製AXIMA Performance(登録商標)
光源:パルスN2レーザ(波長:337nm、パルス幅:3nsec)
イオン極性:正イオン測定モード
飛行モード:リフレクトロン
被イオン化検体:50pmol/well
マトリックス:5μg/well
カチオン化剤:使用せず
図1のマススペクトルで明らかなように、測定対象物質であるプロプラノロール由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+のピークが、m/z 260.2の位置に出現している。一方、m/z 72.1などの同定不能のイオンを除き、m/z 23及び39にナトリウムイオン、カリウムイオンのピークが観測される以外に、低質量領域に明確なピークは観測されていない。これは、マトリックスである5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+が検出されないことを意味しており、これにより、本実施例に係る5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンが測定対象物質由来のイオンの検出を妨げないことが分かる。なお、m/z 72.1などの同定不能なイオンは、ターゲットプレートなどに起因する不可避のイオンであると考えられる。
次に図2において、本実施例に係る5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンを測定した場合に得られる、(a)正イオン測定モードでのマススペクトル、及び(b)負イオン測定モードでのマススペクトルを示す。測定試料は以下の方法により調製した。
5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン(分子量:237.23)100mM/メタノール溶液1μLを、ステンレス製ターゲットプレート(株式会社島津製作所製)上に載せて風乾し、測定試料とした。前記測定試料をMALDI-TOFMS(株式会社島津製作所製AXIMA Performance(登録商標))での分析に供した。なお、分析条件は上述した条件と同じであり、イオン極性について、正イオン測定モードとともに、負イオン測定モードでの測定を実施した。
5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンのみを用いて測定試料を調製した場合、図2(a)に示すように正イオン測定モードにおいては本マトリックスのピークは確認されない。一方、図2(b)に示すように負イオン測定モードでは、5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンのプロトン脱離イオン[M-H]-のピークであるm/z 236.6が明確に確認される。このことより、5−(2,5−ジヒドロキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンから1個のプロトンが容易に脱離することがより明確にわかる。
(1)5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンの合成方法
チアゾリジン−2,4−ジオン2.0gと2,5−ジメトキシベンズアルデヒド2.83gをエタノール40mLに溶解し、さらにピペリジン0.5mLを加え、窒素気流下で24時間還流した。この溶液を氷冷下で2時間撹拌したのち水60mLを加え、さらに濃塩酸で酸性溶液とした後、氷冷下にて2時間放置し、析出物を得た。前記析出物を濾別し、室温で4時間放置した後、さらに60℃で減圧下6時間乾燥して、生成物3.00gを得た。この生成物の融点を測定したところ、融点283℃であった。
(2)5−(2,5−ジメトキシシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンの同定
得られた生成物の化学構造を元素分析及びNMR分析にて同定した。
得られた生成物の元素分析の結果を以下に示す。
元素分析:C54.20%、H4.25%、N5.23%
次にNMR分析の結果を以下に示す。なお、測定試料調製用の溶媒として重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を使用した。NMR分析の結果の表記方法は実施例1と同じである。
1H-NMR in DMSO-d6:δ3.73(s,3H)、3.81(s,3H)、6.86(d,1H)、7.04(m,1H)、7.89(s,1H)、12.59(s,1H)
13C-NMR in DMSO-d6:δ113.4、113.6、118.0、122.3、124.2、126.8、152.8、153.4、167.7、168.4
上記の分析結果により、得られた生成物は、
Figure 2013234974
に示される5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン(分子式:C12H11O4NS、分子量:265.29)であると同定された。
同定された分子式を元に、分子中のC、H及びNの構成比率の理論値を計算したところ、C54.33%、H4.18%、N5.28%であった。これらの値は、上述した元素分析の実測値とそれぞれよく一致した。
(3)5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンのMALDI-TOFMS分析結果
5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンを測定した場合に得られる、(a)正イオン測定モードでのマススペクトル、及び(b)負イオン測定モードでのマススペクトルを示す。測定試料は、5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン(分子量:265.29)100mM/メタノール溶液1μLを、ステンレス製ターゲットプレート上に載せて風乾することにより調製した。なお、分析条件は実施例1において上述した条件と同じである。
図3(a)に示すように、正イオン測定モードにおいては、マトリックスである5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンのピークは確認されない。一方、図3(b)に示すように負イオン測定モードでは、5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンのプロトン脱離イオン[M-H]-のピークであるm/z 264.8が明確に確認される。このことより、5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンから1個のプロトンが容易に脱離することがわかる。
次に、5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとするとともにプロプラノロールを測定対象物質として使用した場合に得られる、正イオン測定モードでのマススペクトルを図4に示す。なお、測定試料の調製方法は、マトリックス溶液として5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン100mM/メタノール溶液を用いる以外は実施例1と同じである。また、測定条件も実施例1において上述した条件と同じである。
図4のマススペクトルで明らかなように、測定対象物質であるプロプラノロール由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+のピークが、m/z 260.6の位置に出現している。一方、m/z 71.6などの同定不能のイオンを除き、低質量領域に明確なピークは観測されていない。これは、マトリックスである5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオン(分子量:265.29)由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+が検出されないことを意味しており、これにより、本実施例に係る5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンが測定対象物質由来のイオンの検出を妨げないことが分かる。従って、MALDI-TOFMS分析において、5−(2,5−ジメトキシベンジリデン)−チアゾリジン−2,4−ジオンは低分子化合物の正イオン測定に有用なマトリックスであるといえる。

Claims (2)

  1. 一般式(1)
    Figure 2013234974
    (式中、Rは水素原子、メチル基のいずれかを表す。)
    で表されることを特徴とするチアゾリジン−2,4−ジオン誘導体。
  2. マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析に供する試料をイオン化するためのマトリックスであって、
    一般式(1)
    Figure 2013234974
    (式中、Rは水素原子、メチル基のいずれかを表す。)
    で表されることを特徴とするマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックス。
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