JP2015169447A - マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックス - Google Patents

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【課題】マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスを提供する。【解決手段】マトリックスは、式(1)で表される、5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体。【選択図】図1

Description

本発明は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析において試料のイオン化に用いられるマトリックスに関する。
質量分析におけるイオン化法の1つとしてマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI=Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法が知られている。MALDI法は、レーザ光を試料に短時間照射して瞬間的に試料を気化させることにより、試料中の測定対象物質の分子を分解することなくイオン化するものである。
MALDI法では一般に測定対象物質の溶液をマトリックス溶液と混合し、さらに必要であれば別のイオン化助剤を混合した上で、試料プレート上に塗布し、溶媒を除去することにより試料を調製する。こうして調製された試料は、測定対象物質が多量のマトリックスとほぼ均一に混合された状態にある。この試料にレーザ光を照射すると、マトリックスがレーザ光のエネルギーを吸収して熱エネルギーに変換する。このときにマトリックスの一部が急速に加熱され、測定対象物質とともに気化する。その過程で測定対象物質がイオン化される。
こうしたMALDI法をイオン化に利用した質量分析装置、特に、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOFMS=Time of Flight Mass Spectrometer)は、タンパク質などの高分子化合物をあまり開裂させることなく分析することが可能であり、しかも微量分析にも好適であることから、近年、生命科学や工業材料の分野などで広範に利用されている(非特許文献1)。
従来、MALDI法においてマトリックスとして用いられている化合物は、例えば、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)、ジスラノール、2−(4−ヒドロキシルフェニルアゾ)安息香酸(HABA)などの、いわゆる低分子有機化合物が一般的である。また、MALDI法におけるイオン化効率やイオン化の安定性などを改善するために、従来より、マトリックスとして用いられる化合物の改良が試みられている(例えば特許文献1〜3、5参照)。
これまでMALDI法は、特に高分子化合物のイオン化に利用されてきたが、MALDI法が非常に簡便で且つ高感度なイオン化法であることから、近年、低分子化合物への適用の要望が非常に高まっている。上記のような従来のマトリックスを用いてMALDI−TOFMS分析を行った場合、マススペクトルにはマトリックス由来の夾雑物イオンピークが低質量領域(低 m/z領域)に顕著に観測される。測定対象物質が高分子化合物である場合には、そうした低質量領域の妨害ピークの存在は問題にならない。しかしながら、測定対象物質が生理活性アミン等の分子量が500以下の低分子化合物である場合には、マススペクトル上で、目的とする低分子化合物由来の各種分子イオンピークと上記妨害ピークとが混在したり、場合によっては重なったりしてしまい、目的ピークを正確に把握することができなくなる。このような理由により、従来のマトリックスを用いたMALDI−TOFMSで低分子化合物を適切に分析することは困難であった。
一方、有機化合物であるマトリックスを用いずにMALDI−TOFMSにより低分子化合物を分析する技術として、従来、いくつかの提案がなされている。例えば非特許文献2には、多孔質シリコン(ポーラスシリコン)を基板としたDIOS(Desorption/Ionization on Silicon)と呼ばれるレーザ脱離イオン化法が提案されている。また、非特許文献3には、「ナノ・フラワー」と名付けられた白金ナノ粒子を無機マトリックスとして用いたレーザ脱離イオン化法が提案されている。また、特許文献4には、分子線エピタキシー法を用いてシリコン単結晶上にGeナノドットを形成したプレートを使用したレーザ脱離イオン化法が提案されている。さらにまた、マススペクトル上で低質量領域にマトリックス由来のピークを生じさせないために、従来よりも分子量がかなり大きな、いわゆる高分子マトリックスを使用したレーザ脱離イオン化法の例も報告されている。
特開2010−204050号公報 特開2004−347595号公報 特開2008−261824号公報 特開2006−201042号公報 特開2013−234974号公報
Shrivas K, ほか4名、「イオニック・マトリックス・フォー・エンハンスド・マルディ・イメージング・マス・スペクトロメトリー・フォー・アイデンティフィケーション・オブ・フォスフォリピッズ・イン・マウス・リバー・アンド・セレベラム・ティッシュ・セクションズ(Ionic matrix for enhanced MALDI imaging mass spectrometry for identification of phospholipids in mouse liver and cerebellum tissue sections)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal Chem.)、2010年、第82(21)巻、pp.8800-8806 ウェイ(J.Wei)ほか2名、「デソープション-アイオナイゼイション・マス・スペクトロメトリー・オン・ポーラス・シリコン(Desorption-ionization mass spectrometry on porous silicon)」、ネイチャー(Nature)、1999年5月20日、第339巻、pp.243-246 カワサキ(H.Kawasaki)ほか3名、「プラチニウム・ナノフラワーズ・フォー・サーフェス-アシステッド・レーザ・デソープション/アイオナイゼイション・マス・スペクトロメトリー・バイオモレキュールズ(Platinum Nanoflowers for Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry of Biomolecules)」、ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー・C(The Journal of physical chemistry C)、2007年、第11巻、pp.16278-16283
しかしながら、上述したマトリックスを使用しない方法や無機マトリックスを使用する方法は、従来の有機化合物のマトリックスを用いたMALDI法に比べて分析コストがかなり高くなる。一方、高分子有機マトリックスを使用する方法では、マトリックスの粘性が高いために扱いにくく、試料の調製が難しいという問題がある。さらに、これら従来の方法では、いずれも生理活性アミンのイオン化が難しいという問題があった。
本発明はこうした点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分子量500以下の低分子化合物をMALDI−TOFMS分析の測定対象物質としても、該測定対象物質の分子イオンピークがマトリックス由来のピークによって妨害されることのない、低分子有機化合物である、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスを提供することにある。
現在、マトリックスとして使用されている2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)やα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)などの化合物は、ベンゼン環を基本として水酸基やカルボン酸などを含んだものである。特にカルボン酸は、測定対象物質の分子のイオン化時における該分子へのプロトン付加に寄与しているとされ、該分子のイオン化に重要な役割を担っていると考えられている。そこで本願発明者は、カルボン酸と同様の性質を有する官能基を有する低分子有機化合物を探索した。具体的には、カルボン酸は酸性基であるから、酸性を示し、MALDI−TOFMS分析に適するように沸点が高いこと、並びに、できるだけ分子量が小さいこと等を官能基の探索条件とした。
本願発明者は、上記条件に適合する化合物として、カルボン酸とほぼ同じpKaを有する5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン環に着目し、種々の低分子5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体について、実分析による実験を行った。その結果、MALDI−TOFMS分析の正イオン測定モードにおいてマトリックス由来のプロトン付加イオンによって妨害されることがなく、CHCAと同等の感度またはCHCAよりも高感度で生理活性アミン等の低分子化合物を測定することができる、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスとして好都合な5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体を見出し、本発明に至った。
即ち、上記課題を解決するために成された本発明に係るマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスは、一般式(1)
Figure 2015169447
で表される、5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体であることを特徴とする。
ここで、R1は酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表し、R2〜R6のうちの一つがトリフルオロメチル基を表し、残りが水素原子を表す。特に、R1が酸素原子、R3がトリフルオロメチル基、R2及びR4〜R6が水素原子である、下記式(2)で表される5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン、
Figure 2015169447
R1が硫黄原子、R2がトリフルオロメチル基、R3〜R6が水素原子である、下記式(3)で表される5−(2−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン、
Figure 2015169447
R1が酸素原子、R4がトリフルオロメチル基、R2、R3、R5、R6が水素原子である、下記式(4)で表される5−(4−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン
Figure 2015169447
は、MALDI−TOFMS分析の正イオン測定モードにおいてマトリックス由来のプロトン付加イオンが殆ど検出されることはなく、MALDI質量分析用マトリックスとして有用である。
本発明に係る5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体をマトリックスとして使用した場合、MALDI−TOFMS分析の正イオン測定モードにおいて、マトリックス由来のイオンは、測定対象物質の分子イオン検出を妨げない。このため、生理活性アミン等の分子量が500以下の低分子化合物を測定対象試料とする場合でも、この試料由来の分子イオンピークを正確に把握することが可能となる。従って、それまで困難であった低分子化合物のMALDI−TOFMS分析を容易に行うことができる。
また、本発明に係る5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体は比較的短いステップで合成できるため、安価に製造することができる。従って、従来の無機マトリックス又は高分子有機マトリックスを使用する方法に比べて分析コストを抑えることができる。さらに、本発明に係る5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体は分子量が500以下と低いため、従来の高分子有機マトリックスに比べて粘性が低く、取扱いが容易である。
本発明の一実施例に係る5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとし、生理活性アミン((a)セロトニン、(b)L−グルタミン酸、(c)ヒスタミン、(d)DL−アドレナリン)を測定対象物質として正イオン測定モードでMALDI−TOFMS分析を行って得られたマススペクトル。 CHCAをマトリックスとし、生理活性アミン((a)セロトニン、(b)L−グルタミン酸、(c)ヒスタミン、(d)DL−アドレナリン)を測定対象物質として正イオン測定モードでMALDI−TOFMS分析を行って得られたマススペクトル。
本発明に係るマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスは以下の一般式(1)で表される5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体である。
Figure 2015169447
一般式(1)において、R1は酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表し、R2〜R6のうち一つはトリフルオロメチル基を、残りは水素原子を表す。
特に、R1が酸素原子、R3がトリフルオロメチル基、R2、R4〜R6が水素原子である5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン、R1が硫黄原子、R2がトリフルオロメチル基、R3〜R6が水素原子である5−(2−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン、R1が酸素原子、R4がトリフルオロメチル基、R2、R3、R5、R6が水素原子である5−(4−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックスとして有用である。以下、これら5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体のうち5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンの実施例について説明する。
(1)5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンの製造方法
チアゾリジン−2,4−ジオン 1.0g、3−トリフルオロメチルベンズアルデヒド 1.78gおよびピペリジン 1mlをエタノール 20mlに加え、18時間加熱還流した後、室温まで冷却し、その後、水 80ml加えて水溶液とした。つづいて、この水溶液に濃塩酸を加えてpH2とし、析出した沈殿物を濾取した後、50℃に加温したエタノール 4mlに溶解し、室温に 4時間放置した。その後、析出した結晶を濾取し、減圧下で12時間乾燥して生成物 0.62gを得た。
この生成物の融点を測定したところ 183℃であった。
また、この生成物の1H-NMR、マトリックス支援レーザ脱離イオン化法(正イオン測定モード)による分析結果は次の通りであった。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム、δ):7.63(1H), 7.67(1H),7.70(1H),7.88(1H)
質量分析 マトリックス支援レーザ脱離イオン化法(陽イオン検出):m/z 274[M+H]+
以上の結果から、得られた化合物は、5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(分子式:C11NOS、分子量:273)であると同定された。
(2)生理活性アミンのMALDI−TOFMS分析
5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用い、生理活性アミンを測定対象試料として調製した測定試料をMALDI−TOFMSで測定した。
また、比較例として、CHCAをマトリックスとして用いた場合の生理活性アミンを測定対象試料として調製した測定試料をMALDI−TOFMSで測定した。
なお、生理活性アミンとして、セロトニン(分子量:176.22)、L−グルタミン酸(分子量:147.13)、ヒスタミン(分子量:111.15)並びにDL−アドレナリン(分子量:183.20)を用いた。
セロトニンは、動植物に広く分布する生理活性アミンであり、ヒトでは主に生体リズム、神経内分泌、睡眠、体温調節などに関与することが知られている。また、グルタミン酸は蛋白質の構成アミノ酸であり、動物においては興奮性の神経伝達物質として知られている。ヒスタミンは神経伝達物質としての他、過剰に発現するとアレルギー反応や炎症の発現に介在物質として働くことが知られており、受容体タンパク質と結合することでアレルギー疾患の原因となる。アドレナリンはホルモンまたは神経伝達物質であり、ストレス反応の中心的役割を果たし、血中に放出されると心拍数や血圧を上昇させることが知られている。これらの生理活性アミンは、いずれもCHCA等の従来のマトリックスを用いた分析では検出が困難であった。
測定試料の調製は以下のように行った。
マトリックス(5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン、CHCA)の 20μmol/mlアセトニトリル:水 50:50(v/v)溶液0.5μlをそれぞれステンレス試料板に滴下後、測定試料溶液 2μmol/ml 0.5μlを重ねて加え乾燥させた。測定対象試料のうちL−グルタミン酸は、0.01mol塩酸水溶液に溶解し、それ以外はアセトニトリル:水 50:50(v/v)に溶解した。
(2−1)セロトニンの測定結果
5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、及びCHCAをマトリックスとして用いた場合に正イオンモードで得られたセロトニンのマススペクトルを、それぞれ図1(a)及び図2(a)に示す。
図1(a)から明らかなように、5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、セロトニン由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+ のピークが m/z 177の位置に出現している。また、マトリックス由来と考えられるイオンのピークもいくつか観察されるが、これらはいずれも強度が低く、セロトニンの分子イオンの検出を妨害しない。従って、セロトニンの分子イオンピークを明確に検出することができる。
これに対して、図2(a)から明らかなように、CHCAをマトリックスとして用いた場合、セロトニン由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+のピークは m/z 177の位置に出現しているものの、マトリックス由来と考えられるイオンのピークも多数出現する。また、セロトニン由来のイオンピークは比較的低強度であり、マトリックス由来のイオンピークとの区別がつき難いため、同定が難しいことがわかる。
(2−2)L−グルタミン酸の検出結果
5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、及びCHCAをマトリックスとして用いた場合に、正イオンモードで得られたL−グルタミン酸のマススペクトルを図1(b)及び図2(b)に示す。
図1(b)から明らかなように、5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、L−グルタミン酸由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+ のピークが m/z 148の位置に出現している。また、マトリックス由来と考えられるイオンのピークもいくつか観察されるが、これらはいずれも強度が低いか、若しくはL−グルタミン酸の分子イオンのピークから離れているため、該L−グルタミン酸の分子イオンピークの検出を妨害しない。従って、L−グルタミン酸由来のイオンピークを明確に検出することができる。
これに対して、CHCAをマトリックスとして用いた場合は図2(b)から明らかなように、L−グルタミン酸のプロトン付加分子イオン[M+H]+ のピークが m/z 148の位置に出現しているものの、マトリックス由来と考えられるイオンのピークも多数出現している。これらマトリックス由来のイオンピークの強度に比べてL−グルタミン酸の分子イオンピークの強度は同程度かそれよりも低いため、マトリックス由来のイオンピークとの区別がつき難く、同定が難しいことがわかる。
(2−3)ヒスタミンの検出結果
5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、及びCHCAをマトリックスとして用いた場合に正イオンモードで得られたヒスタミンのマススペクトルを、それぞれ図1(c)及び図2(c)に示す。
図1(c)から明らかなように、5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、ヒスタミンのプロトン付加分子イオン[M+H]+のピークが m/z 112の位置に出現している。一方、マトリックス由来と考えられるイオンのピークは出現しないか、或いは出現したとしても非常に低強度である。従って、ヒスタミンの分子イオンピークを明確に検出することができる。
これに対して、図2(c)から明らかなように、CHCAをマトリックスとして用いた場合、ヒスタミンのプロトン付加分子イオン[M+H]+ のピークは m/z 112の位置に出現しているものの、マトリックス由来と考えられるイオンのピークが多数出現する。また、ヒスタミンの分子イオンピークは比較的低強度であり、マトリックス由来のイオンピークとの区別がつき難いため、同定が難しいことがわかる。
(2−4)DL−アドレナリンの検出結果
5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、及びCHCAをマトリックスとして用いた場合に正イオンモードで得られたDL−アドレナリンのマススペクトルを、それぞれ図1(d)及び図2(d)に示す。
図1(d)から明らかなように、5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いた場合、DL−アドレナリンのプロトン付加分子イオン[M+H]+ のピークが m/z 184の位置に出現している。また、マトリックス由来と考えられるイオンのピークもいくつか観察されるが、これらはいずれも強度が低く、DL−アドレナリン由来のイオンの検出を妨害しない。従って、DL−アドレナリンの分子イオンピークを明確に検出することができる。
これに対して、図2(d)から明らかなように、CHCAをマトリックスとして用いた場合、DL−アドレナリンのプロトン付加分子イオン[M+H]+のピークが m/z 184の位置に出現しているものの、マトリックス由来と考えられるイオンのピークも多数出現する。また、DL−アドレナリンの分子イオンピークは比較的低強度であり、マトリックス由来のイオンピークとの区別がつき難いため、同定が難しいことがわかる。
このように、本実施例に係る5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンをマトリックスとして用いて生理活性アミンのMALDI−TOFMS分析を行った場合、生理活性アミン由来のプロトン付加分子イオン[M+H]+のピークが出現するスペクトル領域において、該生理活性アミンの分子イオンピークの観察を妨害するピークはほとんど観察されない。このため、生理活性アミンを明確に検出することができ、5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンがマトリックスとして有用であることが分かる。
なお、ここでは、5−(3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンを例に挙げて説明したが、その他の5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体をマトリックスとして用いた場合も同様の作用、効果が得られる。また、上記実施例は本発明のいくつかの例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更、修正、追加を行っても当然に本願特許請求の範囲に包含される。

Claims (4)

  1. マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析に供する試料をイオン化するためのマトリックスであって、一般式(1)
    Figure 2015169447
    で表される、5−ベンジリデンチアゾリジン−4−オン誘導体。
    ここで、R1は酸素原子又は硫黄原子のいずれかを表し、R2〜R6のうちの一つはトリフルオロメチル基を、残りは水素原子を表す。
  2. R1が酸素原子、R3がトリフルオロメチル基、R2、R4〜R6が水素原子である請求項1に記載のマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックス。
  3. R1が硫黄原子、R2がトリフルオロメチル基、R3〜R6が水素原子である請求項1に記載のマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックス。
  4. R1が酸素原子、R4がトリフルオロメチル基、R2、R3、R5、R6が水素原子である請求項1に記載のマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析用マトリックス。
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