JP2013233104A - レトルト食品の製造方法、及びレトルト食品 - Google Patents

レトルト食品の製造方法、及びレトルト食品 Download PDF

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Abstract

【課題】 レトルト殺菌後も良好な食感を有し、その外観、香気および味も良好なレトルト食品を簡便かつ安価に作製できるレトルト食品の製造方法、および、レトルト食品を提供する。
【解決手段】 食品を容器に密封してレトルト殺菌処理を行うレトルト食品の製造方法であって、食品は、肉が表皮膜によって被覆されてなり、食品の水分を減少させる水分減少工程と、水分を減少させた食品を容器に入れて、次いで容器に気体を注入し、食品の周囲にヘッドスペースを形成して容器を密封する密封工程と、密封した容器を加熱及び加圧することで殺菌処理を行うレトルト殺菌工程とを有し、少なくともヘッドスペース内に食品から出た水分を分散させ、レトルト殺菌工程において食品から出た水分が食品に接触することを抑制する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、レトルト食品の製造方法に関し、特に肉が表皮膜によって被覆されてなる食品を容器に入れて密封した後に、加熱および加圧することで殺菌処理するレトルト食品の製造方法、及びレトルト食品に関する。
従来から、レトルト食品の製造においては、一般に食品を袋状の容器に入れて密封した後に、加熱および加圧することで殺菌処理を行う、いわゆるレトルト殺菌が行われている。
このレトルト殺菌では、例えば110〜130℃の温度で、数分〜数十分程度の熱水や蒸気による加熱が行われる。殺菌条件としては、原料を十分に殺菌できる条件を選択する必要があるが、一方で、殺菌処理後にその食品の品質が劣化しない条件を選択することが重要である。
レトルト殺菌は高温・高圧で行われるため、例えば原料の肉質に与える影響は無視できない。高温・高圧でレトルト殺菌を行うことで、原料の種類によっては硬化するものや、あるいは脆い食感を呈するものがあった。
レトルト食品は、鳥獣類や魚介類を含む動物性の食品など幅広い食品を対象に提供されている。特に、魚介類の中でもエビは、種々の食品に利用されるものであり、そのレトルト食品も数多く製造されている(特許文献1,2参照)。
例えばエビは、2分程度の煮沸であれば、筋肉タンパク質が変性して食感が良好となる。しかし、レトルト殺菌のように過度の加熱を行なう場合、エビの筋肉組織は脆弱化し、その持ち味である弾力性のある食感(プリプリ感)がなくなり、噛むとボロボロと崩れるような脆い食感(ボソボソ感)を呈することが多かった。また、食感だけでなく、色調、食味、香りについても劣化し易かった。
そこで、本願発明者らは、少なくとも筋基質タンパク質を有する動物性の食品が、低温に曝す低温乾燥処理もしくは食塩水中による煮沸処理による水分減少工程を行った後、収容容器に充填、密封後にレトルト殺菌を行うことにより、優れた食感を有するようになり、その外観、香気および味も良好なレトルト殺菌食品およびその製造方法を提案した。(特許文献3)
特開2009−240210号公報 特開2009−50173号公報 特開2012−34689号公報
前記特許文献3により、レトルト殺菌後も良好な食感を有し、その外観、香気および味も良好なレトルト殺菌食品およびその製造方法が提案できたが、食感を2分程度の煮沸の弾力感のある食感(プリプリ感)により近づけるために、更なる改良が求められた。
そこで、本発明者らは、エビなどの肉が表皮膜に被覆された食品について、レトルト殺菌処理による食感の劣化を抑止する方法を研究し、食品の水分を減少させた後、食品を容器に入れてヘッドスペースを形成し、レトルト殺菌時に食品からでる水分を容器内に分散させることによって、レトルト殺菌後も良好な食感が得られるレトルト食品を作成することに成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、肉が表皮膜に被覆された食品について、レトルト殺菌後も良好な食感、外観(色)、香気、味を有するレトルト食品の製造方法、及びレトルト食品の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のレトルト食品の製造方法は、食品を容器に密封してレトルト殺菌処理を行うレトルト食品の製造方法であって、食品は、肉が表皮膜によって被覆されてなり、食品の水分を減少させる水分減少工程と、水分を減少させた食品を容器に入れて、次いで容器に気体を注入し、食品の周囲にヘッドスペースを形成して容器を密封する密封工程と、密封した容器を加熱及び加圧することで殺菌処理を行うレトルト殺菌工程とを有し、少なくともヘッドスペース内に食品から出た水分を分散させ、レトルト殺菌工程において食品から出た水分が食品に接触することを抑制する方法としてある。
また、本発明のレトルト食品は、肉が表皮膜により被覆されてなる食品を密封したレトルト食品であって、水分を減少させた食品を容器に入れて、気体を注入して食品の周囲にヘッドスペースを形成して密封され、加熱及び加圧により殺菌処理を行うレトルト殺菌工程において食品から出た水分が、少なくともヘッドスペース内に分散され、食品に接触することが抑制されたものとしてある。
本発明によれば、肉が表皮膜によって被覆されてなる食品を用いてレトルト食品を製造するにあたり、レトルト殺菌後も良好な食感、外観(色)、香気、味を有するレトルト食品を得ることができる。
本発明の一実施形態のレトルト食品の製造方法によって得られるレトルト食品を示す模式図である。 原料エビのX線CT撮影写真を示す図である。 非加熱、2分間ボイル、及びレトルト殺菌をそれぞれ行った食品についての破断強度曲線とX線CT撮影写真を示す図である。 ヘッドスペースがそれぞれ0,15,20,25,35,75,100,300mlのレトルト食品についての官能検査結果及び破断強度曲線を示す図である。 各実施例の破断強度曲線に関し、歪み率50%までに出現するピークにおけるピーク値の減少割合を示す図である。 ヘッドスペース0mlと75mlの場合のレトルト殺菌前と殺菌中のレトルト食品の写真を示す図である。 水分減少工程に好適な煮沸条件を見出すための煮沸実験における各原料エビの含水率を示す図である。 水分減少工程に好適な煮沸条件を見出すための煮沸実験における各レトルト殺菌後のエビの官能評価(食味評価)を示す図である。 水分減少工程において、食塩濃度4%、加熱時間8分間の条件で煮沸処理を行った場合のレトルト食品についての破断強度曲線を示す図である。 煮沸処理の条件ごとの各レトルト殺菌後のエビのHyp量を示す図である。 水分減少工程において、低温乾燥処理を行った場合と行わなかった場合のレトルト食品についての破断強度曲線とX線CT撮影写真を示す図である。 低温乾燥処理の条件ごとの各レトルト殺菌後のエビの含水率、食感、香気、及びHyp量を示す図である。
以下、本発明のレトルト食品の製造方法、及びレトルト食品の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のレトルト食品の製造方法は、特定の食品をレトルト食品に加工する製造方法であり、食品の水分を減少させる水分減少工程と、食品を入れた容器にヘッドスペースを形成して容器を密封する密封工程と、密封した容器を加熱及び加圧することで殺菌処理を行うレトルト殺菌工程を有している。そして、ヘッドスペースにより、レトルト殺菌工程において食品から出た水分が食品に接触することを抑制して、食品におけるコラーゲンの分解を抑制するものである。
まず、本発明において、レトルト殺菌後でも良好な食感を有するレトルト食品が得られる作用について、エビを原料とする場合を例に説明する。
[本発明における食感向上の作用]
一般に、食肉タンパク質には、筋形質タンパク質・筋原繊維タンパク質・筋基質タンパク質の三種類が知られており、筋基質タンパク質にはコラーゲンが主成分として含まれている。この筋基質タンパク質は、筋原繊維を束ねる膜を形成し、筋原繊維同士を接着させている。このように、コラーゲンは、筋肉組織の強度に関わっており、コラーゲンが分解すると、筋肉は軟らかくなる。
また、コラーゲンは、60℃付近で急激に収縮することが知られている。コラーゲンは水に不溶性であるが、水分存在下で過加熱することにより水に可溶化(ゼラチン化)する。
ところで、レトルト殺菌は高温・高圧で行われるため、原料の肉質に与える影響は大きい。特にエビなどをレトルト殺菌する場合、弾力性のある食感(プリプリ感)を維持させることは重要である。しかしながら、レトルト殺菌では110〜130℃の温度で数分〜数十分程度の処理が行われることから、食品に含まれるコラーゲンは、食品中に含有される水分の存在により、可溶化して分解される。このため、筋基質タンパク質が含まれるエビなどの原料は、レトルト殺菌すると、噛むと脆い食感(ボソボソ感)を呈し、食感が悪くなってしまう性質を有している。
したがって、レトルト殺菌後においても良好な食感を維持させるためには、筋基質タンパク質の構造等が維持されていればよい。なお、エビは2分程度の煮沸であれば、筋肉タンパク質が変性して食感が良好となることが知られている。この状態ではコラーゲンの加水分解が進行していないため、筋原繊維を束ねた膜である筋基質の構造が維持される。よって、この場合には、エビの表面組織および筋繊維構造の崩壊が抑制され、優れた食感が得られる。
そこで、本発明のレトルト食品の製造方法では、食品の水分を減少させてからレトルト殺菌を行なう。また、レトルト殺菌を行う前に、この水分を減少させた食品を容器に入れ、ヘッドスペースが形成されるように気体を注入し、容器を密封する。このとき、食品を容器に入れて真空密着を行い、次いで気体を注入することで、ヘッドスペースを形成することが好ましい。あるいは、食品を容器に入れて真空密着した後、一旦密封し、次いで気体を注入してから再度密封しても良い。
なお、ヘッドスペースとは、容器内に形成される空間を意味する。缶詰などにおいては上方の空間を意味するが、パウチなどの可撓性容器においては一般的に上方のみを意味せず、容器に形成された内部空間がヘッドスペースと呼ばれている。
図1には、このようなレトルト食品の製造方法により得られるレトルト食品1の模式図が示されている。同図において、容器2の中に食品3が入れられ、この食品3の周囲にヘッドスペース4が形成されている。また、容器2におけるヘッドスペース4に隣接した外側領域5は、容器の2枚の内壁面が接触していない空隙や、接触した状態の部分が存在している。しかし、ヘッドスペース4の存在によって、この外側領域5に、容易に空間やより多くの空隙が形成され得るようになっている。
食品3の周囲にヘッドスペース4やヘッドスペース4の外側領域5が形成されることにより、発生した水分を水蒸気としてヘッドスペース4に拡散させることができる。拡散した水蒸気は、ヘッドスペース4の空間を漂い、あるいは容器の内壁面に水滴として付着するなどして、水分が食品に接触しにくくなる。
また、この食品から発生した水分は、レトルト殺菌工程中、及びレトルト殺菌工程の後、ヘッドスペース4を介して、ヘッドスペース4の外側領域5に、毛細管現象により移動する。これにより、水分が食品に接触することが抑制される。
前述の通り、図1では、容器におけるヘッドスペース4に隣接した外側領域5は、容器の2枚の内壁面接触した状態となっているが、レトルト殺菌工程でヘッドスペース4が膨張した際には、このヘッドスペース4の存在によって容易に空間が形成され得るようになっている。このため、ヘッドスペース4を形成することにより、食品3から発生した水分は、毛細管現象によってこのヘッドスペース4に隣接した外側領域5に移動させることも可能になる。そして、このヘッドスペース4に隣接した外側領域5のうち、食品3から一番遠い容器2の外周沿いに多くの水分を移動させることが可能になる。
このように、本発明のレトルト食品の製造方法では、ヘッドスペース内及びヘッドスペースに隣接する外側領域に食品から発生した水分を分散させることにより、レトルト殺菌工程において食品から発生した水分が食品に接触することを抑制している。
一方、容器にヘッドスペースを形成することなく、食品を真空密着させて密封工程を完了すると、食品は容器の内壁面と密着した状態であり、かつ、ヘッドスペースが存在することにより生じる空間や空隙が形成されないため、食品から生じた水分は食品の周りから移動しにくく、この食品から生じた水分により食品のコラーゲンが可溶化して分解されてしまい、食感が悪くなってしまう。
以上の通り、予め食品の水分量を減少させた状態でレトルト殺菌を行うことで、水分存在下で過加熱することにより水に可溶性となるコラーゲンが可溶化しにくくなる。また、ヘッドスペースを形成することで、レトルト殺菌によって食品から発生した水分が食品に接触しにくくなるため、コラーゲンの可溶化をさらに抑制することができる。
このように、本発明のレトルト食品の製造方法によれば、食品のコラーゲンの加水分解を極めて効果的に抑制することができ、レトルト殺菌後の食品の品質の低下を防止することが可能となる。
すなわち、この方法によれば、レトルト殺菌工程の後であっても、食品に含まれるコラーゲンの加水分解が極めて効果的に抑制された状態で保持されるため、筋原繊維を束ねた膜である筋基質の構造を維持することができる。このため、食品の表面組織および筋繊維構造の崩壊が抑制され、優れた食感・外観・香気および味を有するレトルト食品を製造することが可能となる。
[レトルト食品の原料]
次に、本実施形態のレトルト食品の製造方法において用いられる食品の原料について説明する。本実施形態で用いるレトルト食品の原料は、肉が表皮膜によって被覆されてなるものである。肉としては、コラーゲンが含まれるものであれば特に限定されないが、筋肉を含むものであることが好ましい。また、表皮膜は、生体組織を被覆する、生体成分からなる膜であれば良く、エビの表皮膜のように体全体を覆うものの他、牛、豚、鶏など鳥獣類や、カニ、貝類、魚類などの魚介類のような筋原繊維を束ねる筋基質タンパク質による膜や、ソーセージのような羊腸で覆われた加工肉など、体の一部の組織などを被覆するものであっても良い。この表皮膜にもコラーゲンが含まれる。
筋肉における筋繊維は、コラーゲンを主成分とする筋基質タンパク質が膜を形成して筋原繊維を束ねることによって接着されており、コラーゲンが筋肉の組織強度に関わっている。したがって、コラーゲンが分解すると、筋肉は軟らかくなる。
このような肉が表皮膜によって被覆されてなる食品としては、例えばエビを挙げることができる。上述の通り、食肉タンパク質として、筋形質タンパク質、筋原繊維タンパク質、筋基質タンパク質が知られており、筋基質タンパク質にはコラーゲンが主成分として含まれている。
本実施形態で用いるエビの種類としては、例えばウシエビ・クルマエビ・アマエビ・クマエビ・バナメイエビ・アカエビ・ヨシエビ・コウライエビ・シバエビ・ホワイトシュリンプ・イセエビ・タイショウエビ・ロブスター・セミエビなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本実施形態のレトルト食品の原料としてエビを用いる場合は、実質的に加熱処理がされていないエビ、生エビまたは凍結品の生エビを解凍して用いることが好ましい。解凍処理は、常法により行うことができる。例えば、溜め水や流水中に冷凍エビを浸漬して行う方法や、水を使用せずに常温や低温で放置する方法により行うことができる。原料エビは、必要に応じて頭部を除去する、殻を剥くなどの加工を施してもよい。原料エビのサイズは制限されるものではないが、取り扱いの容易さや流通量に鑑みて、数cm程度のものが一般に用いられる。
[レトルト食品の製造方法]
次に、本実施形態のレトルト食品の製造方法について、具体的に説明する。本実施形態のレトルト食品の製造方法は、以下の通り、水分減少工程、密封工程、及びレトルト殺菌工程を有している。
(1)水分減少工程
水分減少工程は、密封工程、及びレトルト殺菌工程に先立って行われ、食品の水分を減少させる工程である。
食品の水分を減少させる方法としては、食品を食塩水に浸して煮沸する煮沸処理、食品を低温にさらして乾燥させる低温乾燥処理、食品を焼成する焼成処理などの方法を挙げることができる。
煮沸処理としては、例えば食品を3%の食塩水に浸して6〜8分間煮沸する、もしくは、食品を4〜6%の食塩水に浸して4〜8分煮沸することにより行うことが好ましい。また、このような煮沸処理を行う場合、食品の含水率を、74重量%以下に減少させることが好ましい。
ここで、本明細書において、「低温」とは、室温より低い温度のことであり、例えば10〜20℃程度を意味する。
低温乾燥処理としては、食品を低温状態の空間にさらしたり、例えば20℃以下の冷風を食品に連続供給したりすることなどにより行うことができるが、食品を脱水させて水分量を減少させることができる手法であれば、特に限定されない。冷風は、例えば低温に設定されたエアコンや低温室内の扇風機からの送風により得ることができる。
このような低温乾燥処理を行う場合、食品の含水率を、65重量%以下に減少させることが好ましい。
なお、水分減少工程の処理時間は、食品の大きさなどに応じて、適宜設定することができる。
(2)密封工程
密封工程は、水分減少工程に続いて行われ、水分を減少させた食品を容器に入れて、次いで容器に気体を注入し、食品の周囲にヘッドスペースを形成して容器を密封する工程である。
具体的には、袋状の容器に、水分を減少させた食品を容器に入れて真空密着させ、次いで容器に気体を注入して密封する。このとき、注入する気体の量は、少なくとも、食品体積1mlあたり0.4ml以上とすることが好ましく、これにより食品の周囲に0.4ml以上のヘッドスペースを形成することが好ましい。一方、注入する気体の量が容器容量の6割以上になると、収容容器が膨満な状態に近づき、例えば輸送中に収容容器に衝撃などが与えられると収容容器が破損するおそれがあるため、容器容量の6割未満のヘッドスペースを形成することが好ましい。
このようなヘッドスペースにより、後のレトルト殺菌工程において、食品から出てきた水分を、ヘッドスペース内及びヘッドスペースの外側領域に分散させて、食品に接触することを抑制し、食品におけるコラーゲンの分解を抑制する。
また、食品を封入する容器としては、高温で加熱殺菌するため耐熱性を有し、常温流通ができる態様であり、酸素ガス、光を遮断するバリア性を有し、密封性と実用強度がある袋状のレトルトパウチなどを用いることができる。このような容器は、例えば食品側にはポリプロピレン、外側にはポリエステル(PET)などの合成樹脂や、アルミ箔を積層加工したフィルムなどから作製できる。
容器の容積は特に限定されるものではないが、例えば300〜600ml程度であればレトルト殺菌の際に扱い易い。
充填する気体は、空気、窒素ガスなどの不活性ガスであればよい。本発明では、このような気体を気体供給装置よりシリンジなどを介して容器に注入、あるいは、バキュームシーラーを用いて封入するなどの方法がある。
ヘッドスペースは、食品の容量に応じて、決定することが好ましく、上記の通り、食品1mlあたり0.4ml以上とすることが好ましい。ヘッドスペースが0.4mlよりも小さいと、食品から出てきた水分をヘッドスペース内及びヘッドスペースの外側領域に十分に分散させることができず、食品が水に接触する結果、食品におけるコラーゲンが可溶化してその食感が悪くなる。
容器の密封は、定法により行うことができる。また、食品を封入する際に粉末の調味料や乾燥食品等を同時に添加してもよい。
(3)レトルト殺菌工程
レトルト殺菌工程は、密封工程に続いて行われ、密封した容器を加熱及び加圧することで殺菌処理を行う工程である。
レトルト殺菌処理とは、耐熱性容器に充填した製品を品温上昇に伴う製品の内圧で容器が破損しないように加圧しながら110℃〜130℃程度の蒸気又は熱水で加熱し、少なくともF値=4以上となるように処理することをいう。このレトルト殺菌処理としては、バッチ式レトルト殺菌装置、連続式レトルト殺菌装置を用いることができる。
具体的な加熱の方法としては、常圧下で食品の内部温度が110℃〜130に達するまで加熱をすることは困難であるため、加圧条件下で行う。例えば、蒸気式、熱水式、シャワー式の加圧加熱殺菌機や加圧式の圧力釜等を用いるとよい。
[レトルト食品]
本実施形態のレトルト食品は、肉が表皮膜により被覆されてなる食品を密封したものであり、水分を減少させた食品を容器に入れて、気体を注入して食品の周囲にヘッドスペースを形成して密封される。そして、加熱及び加圧により殺菌処理を行うレトルト殺菌工程において食品から出た水分が、ヘッドスペース内及びヘッドスペースの外側領域により、食品に接触することが抑制され、食品におけるコラーゲンの分解が抑制されている。
したがって、このようなレトルト食品を開封して、肉を噛んだ場合、コラーゲンが損なわれていないため、まず表皮膜を噛む際に、弾力性のある食感を得ることができる。また、肉の中に筋基質タンパク質の膜で包まれた一又は二以上の筋肉等が存在する場合は、それぞれの筋肉等を噛む際にも弾力のある食感を得ることができる。
すなわち、本実施形態のレトルト食品は、肉が表皮膜により被覆されてなる食品を密封し、レトルト殺菌処理を行ったものであるが、食品のコラーゲンが損なわれず、弾力性のある食感を呈するものとなっている。
以上の通り、本実施形態のレトルト食品の製造方法、及びレトルト食品によれば、食品の水分を減少させた状態でレトルト殺菌工程を行うことができる。また、レトルト殺菌工程を行う前に、水分を減少させた食品を容器に入れて、食品の周囲にヘッドスペースが形成されるように気体を注入して密封する密封工程を行なっている。このため、レトルト殺菌中に食品から発生した水分を水蒸気としてヘッドスペースに拡散させることができる。拡散した水蒸気は、ヘッドスペースの空間を漂い、あるいは容器の内壁に水滴として付着して、食品に接触しにくくなる。また、レトルト殺菌工程中、及びレトルト殺菌工程の後、食品から出た水分は、ヘッドスペースを介して、容器におけるヘッドスペースの外側領域に毛細管現象により移動する。
このように、本実施形態によれば、予め食品の水分量を減少させた状態でレトルト殺菌を行うため、水分存在下で過加熱することにより水に可溶性となるコラーゲンが、可溶化しにくくなる。また、ヘッドスペースが形成され、レトルト殺菌によって食品から発生した水分が、食品に接触しにくくなるため、コラーゲンの可溶化をさらに抑制することが可能となっている。
[測定法]
(1)エビの体積
エビ1匹の重量を測った後、水を入れたメスシリンダーに浸漬し増加体積をエビの体積とし、重量と体積から密度を算出した。この方法をエビ10匹について行い、平均密度1.1を算出した。
容器に充填したエビの体積は、合計重量を平均密度で除して求めた。
(2)エビの含水率
水分含有エビを105℃オーブンで重量変化がなくなるまで乾燥した前後の重量から求めた。
(3)官能検査
評価は、食感、外観(色)、香気、味について行なった。パネラーは6人とした。評価は5段階評価で行い、5が最もよく、1が最も悪いものとした。
総合評価は上記4種の評価の合計とした。
(4)Hyp量
エビをホモジナイズし塩酸を加え減圧下で封管後,ヒートブロック(Pierce、Reacti−ThermTM)を用いて加熱分解し,中和したのち,HPLCを用いてHyp量を定量した。
(5)エビの筋肉組織観察
エビを、X線CT装置(ヤマト科学、TDM1000−IW)を使用してX線撮影した。当該撮影は、X線管電圧60000kV、X線管電流0.008mAの条件で行った。
(6)圧縮破断強度
食品の圧縮破断強度を測定することにより、その食品の食感が良好であるか否かを判断した。
圧縮破断強度は、レオメータ(株式会社山電製、REII―33005、ロードセル2kgf用)によって測定し、この圧縮は段強度から破断強度曲線を作成した。レオメータは、3mm径の円柱型プランジャーを備え、試料台移動速度1mm/秒の条件で、原料エビの腹部二節目中心部に対して左側面から右側面に向けてプランジャー進入率99%となるまで圧縮荷重を連続付加した(図2(b))。
食感の評価は、破断強度曲線に明確なピークが得られるものを良好とした。プランジャーを測定対象物である食品に進入させて破断強度曲線に明確なピークが得られるということは、食品の摂取者が感じる歯ごたえなどの食感を感じているものと見なすことができる。例えば、破断強度曲線に複数の明確なピークが得られた場合、その食品に対して摂取者は、咀嚼にメリハリを感じることができるため、弾力性のある好ましい食感が得られる食品であると判断することができる。
[試験1:各種状態におけるエビの組織強度の比較]
本実施形態のレトルト食品の製造方法についての試験に先立ち、非加熱のエビ、2分間ボイルのみを行ったエビ、及び従来の方法でレトルト殺菌処理を行ったエビの3ケースについて、それぞれのエビの組織強度を測定し、これらを比較する試験を行った。
エビは、頭部を除去したインドネシア産のクルマエビ科ウシエビ(Penaeus Monodon)の冷凍品を使用し、解凍した後に殻を剥いた状態の腹部を、試料(原料エビ)として供した。
まず、エビの筋肉組織の構造を調べるため、供した非加熱の原料エビを、X線CT装置を使用して撮影した。その結果を、図2((a)横断面、(b)水平縦断面)に示す。
得られたX線CT撮影像から、エビの腹部には、6種類の筋肉束が存在することが確認できた。6種類の筋肉束は、図2(a)の上側から順に、左半身前部前斜筋1、左半身中央筋2、左半身後部前斜筋3、右半身後部前斜筋4、右半身中央筋5、右半身前部前斜筋6である。
圧縮荷重の測定は、(a)非加熱の原料エビ、(b)原料エビを沸騰水中に投入して2分間ボイルしたもの、及び(c)原料エビをレトルト殺菌したものに対して行った。レトルト殺菌は121℃、12分(F値=6)の条件で行なった。
圧縮荷重を付加して得られた値を基に作成した破断強度曲線、及びそれぞれのX線CT撮影した結果(二節部拡大)を図3に示す。
同図において、(a)非加熱の原料エビでは、破断強度曲線において、歪み率(プランジャー進入率)55%付近において大きなピークが確認された。当該ピークの位置では、プランジャーに大きな圧縮荷重を付加し、その後、プランジャーに付加した圧縮荷重が減少していることから、当該位置にて原料エビの表皮膜が破断されたものと認められた。
このように、非加熱の原料エビの場合、表皮膜を噛むときに弾力性のある食感を得ることができる。
次に、(b)原料エビを沸騰水中に投入して2分間ボイルしたものでは、破断強度曲線において、5つのピーク(第一ピークa、第二ピークb、第三ピークc、第四ピークd、第五ピークe)が確認された。第二〜第五ピークは、非加熱の原料エビでは確認されなかったが、2分間ボイルした原料エビでは確認された。
その理由は、原料エビをボイルすることによって筋肉タンパク質が変性したためである。
すなわち、エビは2分間の煮沸により、適度な食感が得られる硬さを有する筋肉の層が形成されたことになる。図2(a)(横断面)に示した筋肉束と照合すると、第一ピークa〜第五ピークeは、それぞれ、表皮膜及び左半身前部前斜筋1、左半身中央筋2、左半身後部前斜筋3、右半身後部前斜筋4、右半身中央筋5を破断したときに対応するピークであると考えられた。
このように複数のピークが出現することにより、さらに良好な食感(プリプリ感)が得られる。
なお、第一ピーク値は、それ以降に出現する強度ピーク値(第二〜第五ピーク値)より大きくなっている。これは、第一ピーク値には、表皮膜を破断するためには大きな圧縮荷重が必要とされるためであると考えられる。
このように、原料エビを沸騰水中に投入して2分間ボイルしたエビの場合、複数回の弾力性が感じられ、非加熱の原料エビよりもさらに良好な食感を得ることができる。
次に、(c)原料エビをレトルト殺菌したものでは、破断強度曲線においてピークは確認できず、なだらかな曲線となった。また、X線CT撮影した結果から、表面組織の脱落および筋繊維構造の不明瞭さが確認された。すなわち、筋肉束中の細い繊維がほどけたようになっており、筋基質タンパク質の主成分であるコラーゲンが原料エビ中より流出しているものと認められた。これらのことから、本ケースでは、レトルト殺菌によりコラーゲンが熱分解されたために表面組織および筋繊維構造が崩壊し、筋組織が脆弱化したと考えられる。このようなピーク値がほとんどない物性の食品を咀嚼した場合、咀嚼にメリハリがほぼ感じられない。
このように、原料エビをレトルト殺菌したエビの場合、弾力性は失われ、良好な食感を得ることはできなかった。
[試験2:ヘッドスペースがレトルト殺菌後の食品の組織強度に与える影響]
次に、本実施形態のレトルト食品の製造方法について、ヘッドスペースの大きさが、レトルト殺菌後の食品の品質および組織強度に与える影響を調べるための試験を行った。具体的には、原料エビの水分量を低減させて容器に入れ、ヘッドスペースとして、0ml(比較例1),15ml(実施例1),20ml(実施例2),25ml(実施例3),35ml(実施例4),75ml(実施例5),100ml(実施例6),300ml(実施例7)の8通りのものを作製して密封し、それぞれレトルト殺菌工程を行って、レトルト食品を製造した。そして、これらのレトルト食品について、官能評価の実施及び破断強度曲線を作成した。
原料エビは、試験1で使用したエビと同様のもの(頭部を除去した冷凍品を解凍した後に殻を剥いた状態)を使用した。この原料エビを濃度4%の食塩水で8分間煮沸処理して含水率を71.0%とした。
次いで、この煮沸処理エビをそれぞれ3尾ずつ容器に入れて、上記の通り、各種サイズのヘッドスペースを有する容器を作成した。容器としては、容積が550mlのもの(アルミ積層スタンディングパウチ:ポリエチレンテレフタレート12μm/ナイロン15μm/アルミ箔7μm/ポリプロピレン60μm:140×180×38mm)を使用した。また、ヘッドスペースの形成は、シリンジにて窒素ガスをそれぞれの容器内に注入することにより行った。
レトルト殺菌処理は、130℃(F値=6)で行った。
官能評価結果および破断強度曲線を図4に示す。
官能評価結果からは、ヘッドスペース容量が0mlと比べて、ヘッドスペースを設けることにより総合評価結果が良好になることが分かる。
破断強度曲線においては、比較例1、及び実施例1については、破断強度曲線の歪み率50%までに明確なピークが確認されなかった。一方、実施例2−7については、破断強度曲線の歪み率50%までに出現するピークを有し、そのうち少なくとも1つはその強度ピーク値に対して所定の割合以上減少する物性を示すものと認められた。
ここで、実施例2−4,6,7について、歪み率50%までに出現するピークにおけるピーク値の減少割合を図5に示す。同図には、実施例ごとに最大の減少割合を示すピークについて表示した。
これらの実施例では、破断強度曲線の歪み率50%までに出現するピークにおいて、最大荷重値は4N以上であり、ピーク値の減少割合は7.2〜38.5%であった。一方、実施例1(15ml)におけるピーク値の減少割合は約3.7%(歪み率39%)であった。このため、破断強度曲線の歪み率50%までに出現するピークにおいて、ピーク値の減少割合が約5%以上であると良好な食感を有するレトルト食品であると推定される。
以上の結果から、実施例2−7によって得られたレトルト食品は、良好な食感を有するものと考えられる。したがって、ヘッドスペース容量が20ml以上の場合、すなわち食品体積1mlあたり0.4ml以上の場合に、食感が良好になると考えられる。
次に、比較例1(ヘッドスペース0ml)と実施例5(ヘッドスペース75ml)のそれぞれについて、レトルト殺菌前と殺菌中の状態を撮影した写真を図6に示す。
比較例1では、殺菌中にエビより発生した水蒸気によって、エビと容器が密着し、湿式加熱の様相を呈していた(図6(a))。
一方、実施例5では、殺菌中にエビより発生した水蒸気は、ヘッドスペースの空間を漂い、あるいは容器の内壁面に水滴として付着しており、乾式加熱の様相を呈していた(図6(b))。
このように、ヘッドスペースを設けない場合、食品は、その食品から発生した水分に接触した状態で加熱される。このため、食品に含まれるコラーゲンが可溶化し、食品の食感は、劣化すると考えられる。
これに対して、ヘッドスペースと設けた場合、食品から発生した水蒸気は、食品への接触が抑制される。このため、コラーゲンは可溶化しにくく、良好な食感が得られると考えられる。
また、ヘッドスペースが形成される場合には、ヘッドスペースにおいて食品からでた水分は、レトルト殺菌工程中に食品から発生して水蒸気としてヘッドスペースに拡散し、拡散した水蒸気はヘッドスペースの空間を漂い、あるいは容器の内壁面に水滴として付着するなどし、レトルト殺菌工程の後に、容器におけるヘッドスペースの外側領域、特に容器の外周沿いに毛細管現象によって移動し、食品に接触することが阻害されると考えられる。一方、比較例1のヘッドスペースが0mlの場合は、食品と容器が真空密着される結果、このような水分の移動は、生じにくくなっている。
なお、ヘッドスペース容量が20mlよりも小さい場合にもこのような毛細管現象は生じると考えられるが、既にレトルト殺菌工程において、食品が水分に接触した状態で加熱され、コラーゲンの可溶化による分解が進んでいることから、レトルト殺菌工程の後に水分が容器におけるヘッドスペースの外側領域に移動しても、食品の食感は良好にはならないと考えられる。
[試験3:煮沸処理による水分減少工程がレトルト食品に与える影響]
煮沸処理により水分減少工程を行う場合について、作製されたレトルト食品の味覚等を評価し、好適な煮沸条件を検討した。
すなわち、水分減少工程として各種条件の煮沸処理を行うことによって原料エビの水分を減少させ、得られたエビを容器に入れて真空密着し、容器内に所定のヘッドスペースが形成されるように気体を注入後、容器を密封してレトルト殺菌を行い、レトルト食品を作製した。
原料エビとしては、試験1で使用したものと同じエビを使用した。このエビを3尾ずつ、試験2で使用したものと同様の容器に入れ、ヘッドスペースを35ml形成して密封し、レトルト殺菌(121℃、12分(F値=6))を行った。
煮沸処理の条件は、食塩濃度として0%,2%,3%,4%,5%,6%,10%の7通り、加熱時間として0分間,2分間,4分間,6分間,8分間,10分間の6通りを設定し、合計42通りの条件によって、エビの水分を減少させ、それぞれについてレトルト食品を作製した。また、エビの含水率(重量%)を測定し、図7に示す。また、それぞれの条件により得られたレトルト食品の官能評価(味覚評価)の結果を図8に示す。
また、食塩濃度4%、加熱時間8分間の煮沸条件により得られたレトルト食品について、レオメータによる組織強度測定を行い、得られた破断強度曲線を図9に示す。さらに、食塩濃度0%、加熱時間2,8分間、及び食塩濃度4%、加熱時間2,8分間の煮沸条件により得られたレトルト食品について、Hyp量(%)を測定した。その結果を図10に示す。非加熱時の含有量を100%とした場合の割合を示した。なお、Hyp(ヒドロキシプロリン)は、生体内では大部分がコラーゲン中に特異的に存在するアミノ酸の一種で、Hyp量はコラーゲンを定量する際に指標として一般的に用いられるものであり、一般的にコラーゲンの約11〜14%を占めている。
図8に示されるように、食塩濃度が3〜10%である場合に、加熱時間を4〜10分間とすれば、概ねボソボソ感や硫黄臭がなく、テクスチャや香気が良好であった。しかし、食塩濃度が10%の場合、加熱時間を4〜10分間にすると塩辛い食味を感じることがあり、加熱時間10分の場合は、焦げ臭が認められた。
したがって、食塩濃度3%の場合、加熱時間6〜8分間が好適であり、食塩濃度4〜6%の場合、加熱時間4〜8分間が好適であることがわかる。
図7に示されるように、これらの条件に対応するエビの含水率は73.5重量%以下となっている。したがって、水分減少工程において、原料エビの含水率を74重量%以下に減少させれば、レトルト食品の食感などの品質が良好になると考えられる。
また、図9の破断強度曲線から、食塩濃度4%、加熱時間8分間の条件で得られたエビは、良好な食感が得られることがわかる。
さらに、図10に示されるHyp量の測定結果から、食塩濃度4%、加熱時間8分間の条件で得られたエビでは、97%ものHyp量が維持されている。このことから、コラーゲンの加水分解が良好に抑制されていることがわかる。
図7において、食塩濃度0%で加熱時間6〜8分間と食塩濃度4%で加熱時間4〜8分間の場合におけるエビの含水率を比較すると、いずれも74重量%以下の範囲となっている。しかし、官能評価では、食塩濃度4%の原料エビの方が優れた品質を有することが認められた。これは、食塩水による煮沸は、単に水分量を減少させてコラーゲンの加水分解を抑制するだけでなく、食塩によるコラーゲンの熱分解抑制効果が発揮されることによりコラーゲンの熱分解も抑制するためと考えられる。そして、これによって、レトルト殺菌後であっても原料エビが脆弱化することなく、食感などの品質が良好になったと考えられる。また、ヘッドスペースを設けることで、レトルト殺菌工程において、食品から発生した水蒸気が食品に接触することが抑制され、コラーゲンが可溶化しにくくなり、良好な食感が得られたと考えられる。
[試験4:低温乾燥処理による水分減少工程がレトルト食品に与える影響]
低温乾燥処理により水分減少工程を行う場合について、作製されたレトルト食品の食感等を評価した。
すなわち、水分減少工程として低温乾燥処理(18℃の雰囲気下、乾燥6時間)を行って原料エビの水分を減少させ、得られたエビを容器に入れて真空密着し、容器内に所定のヘッドスペースが形成されるように気体を注入後、容器を密封してレトルト殺菌を行い、レトルト食品を作製した。
原料エビとしては、試験1で使用したものと同じエビを使用した。このエビを3尾ずつ、試験2で使用したものと同様の容器に入れ、ヘッドスペースを35ml形成して密封し、レトルト殺菌(121℃、14分(F値=6))を行った。
低温乾燥条件としては、18℃の雰囲気下で、乾燥6時間と4時間の2通りについて、レトルト食品を作製した。また、低温乾燥処理を行っていない原料エビを容器に入れて、同様にヘッドスペースを形成してレトルト殺菌を行い、レトルト食品を作製した。
そして、これらのレトルト食品について、試験2と同様に、レオメータによる組織強度測定を行った。これによって得られた破断強度曲線と、各レトルト食品の筋線維組織を電子顕微鏡により撮影した写真を図11に示す。さらに、各レトルト食品に関し、食感と香気についての官能評価を行い、Hyp量を測定した。その結果を図12に示す。
まず、低温乾燥6時間の条件で作製したレトルト殺菌処理後のエビでは、破断強度曲線において複数のピークが確認された(図11(a))。また、食感にはプリプリ感があり、香気には焼きエビ臭があって、共に優れていた(図12)。このときの低温乾燥後のエビの含水率は64.3重量%であった。
次に、低温乾燥4時間の条件で作製したレトルト殺菌処理後のエビでは、破断強度曲線にピークが見られず(図11(b))、食感はボソボソ感が低減しているものの、香気にはレトルト臭(加熱不快臭)があった(図12)。このときの低温乾燥後のエビの含水率は69.4重量%であった。
一方、低温乾燥処理を行うことなく作製したレトルト殺菌処理後のエビでは、破断強度曲線にピークが見られず(図11(c))、食感にはボソボソ感があり、香気にはレトルト臭があった(図12)。
低温乾燥6時間で作製したレトルト食品では、食感も香気も良好であり、低温乾燥4時間で作製したレトルト食品では、ボソボソ感が低減している。このため、低温乾燥処理による原料エビの水分減少率を、65重量%以下程度にすることで、食感などの官能評価が良好になると考えられる。
さらに、低温乾燥6時間で作製したレトルト食品では、96%ものHyp量が維持されている。したがって、コラーゲンの加水分解が良好に抑制されていることがわかる。
このように、水分減少工程において、低温乾燥処理により食品の水分量を減少させることでも、得られるレトルト食品の食感などの品質を向上させることができた。これは、食品の水分量を低減させることで、コラーゲンの加水分解を抑制し、コラーゲンを膠着化させることで、レトルト殺菌後であっても食品が脆弱化することなく、食感などの品質が良好になったためであると考えられる。また、低温乾燥処理自体によってもコラーゲンの膠着化が起こっており、これもレトルト殺菌中のコラーゲン分解抑制効果をより助長していると考えられる。さらに、ヘッドスペースを設けることで、レトルト殺菌工程において、食品から発生した水蒸気が食品に接触することが抑制され、コラーゲンが可溶化しにくくなり、良好な食感が得られたと考えられる。
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、実施例ではエビを用いているが、肉が表皮膜により被覆されてなる食品であれば、同様に用いることが可能である。また、水分減少工程は、煮沸処理と低温乾燥処理により行っているが、水分を減少できる処理方法であればこれらに限定されず、食品を焼成する焼成処理など適宜変更することが可能である。
本発明は、肉が表皮膜で被覆されてなる食品を用いて、レトルト食品を製造する場合において、簡便かつ安価な方法により、レトルト殺菌後も良好な食感を有し、香気や味が良好なレトルト食品を製造するために、好適に利用することが可能である。
1 レトルト食品
2 容器
3 食品
4 ヘッドスペース
5 ヘッドスペースに隣接した外側領域

Claims (8)

  1. 食品を容器に密封してレトルト殺菌処理を行うレトルト食品の製造方法であって、
    前記食品は、肉が表皮膜によって被覆されてなり、
    前記食品の水分を減少させる水分減少工程と、
    水分を減少させた前記食品を前記容器に入れて、
    次いで前記容器に気体を注入し、
    前記食品の周囲にヘッドスペースを形成して前記容器を密封する密封工程と、
    密封した前記容器を加熱及び加圧することで殺菌処理を行うレトルト殺菌工程と、を有し、
    少なくとも前記ヘッドスペース内に前記食品から出た水分を分散させ、
    前記レトルト殺菌工程において前記食品から出た水分が前記食品に接触することを抑制する
    ことを特徴とするレトルト食品の製造方法。
  2. 前記密封工程において、前記ヘッドスペースが、
    少なくとも、
    水分を減少させた前記食品の体積1mlあたり0.4ml以上になるように、
    前記容器に気体を注入することを特徴とする請求項1記載のレトルト食品の製造方法。
  3. 前記ヘッドスペースにより、前記レトルト殺菌工程において、前記食品から出た水分を前記ヘッドスペース内で水蒸気にし、及び、前記容器の内壁に水滴として付着させ、前記食品に接触することを抑制することを特徴とする請求項1又は2記載のレトルト食品の製造方法。
  4. 前記レトルト殺菌工程中、及び前記レトルト殺菌工程の後、前記食品から出た水分を、前記ヘッドスペースを介して、前記容器における前記ヘッドスペースの外側領域に毛細管現象により移動させ、前記食品に接触することを抑制することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法。
  5. 前記水分減少工程おいて、前記食品を食塩水に浸して煮沸することにより、前記食品の含水率を74重量%以下に減少させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法。
  6. 前記食品は、コラーゲンを含み、
    前記ヘッドスペース内及び前記ヘッドスペースの外側領域に前記食品から出た水分を分散させて、前記レトルト殺菌工程において前記食品から出た水分が前記食品に接触することを抑制し、前記食品におけるコラーゲンの分解を抑制することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法。
  7. 肉が表皮膜によって被覆されてなる前記食品が、エビであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法。
  8. 肉が表皮膜により被覆されてなる食品を密封したレトルト食品であって、
    水分を減少させた前記食品を容器に入れて、
    気体を注入して前記食品の周囲にヘッドスペースを形成して密封され、
    加熱及び加圧により殺菌処理を行うレトルト殺菌工程において、
    前記食品から出た水分が、少なくとも前記ヘッドスペース内に分散され、
    前記食品に接触することが抑制された
    ことを特徴とするレトルト食品。
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