本実施形態を以下に図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。また、重複した説明は、必要に応じて行う。
<第1の実施形態>
図1乃至図13を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第1の実施形態では、上部電極16が犠牲層15を除去するための第2開口部(ホール17、スリット37)を有し、下部電極12が第2開口部に対応する位置に第1開口部(ホール13、スリット33)を有する。これにより、下部電極12の面積を縮小し、寄生容量の低減を図ることができる。以下に、第1の実施形態について詳説する。
[構造]
まず、図1乃至図3を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図であり、主に上部電極16の構造を示す図である。図2は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図であり、主に下部電極12の構造を示す図である。図3は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図1および図2におけるA−A線に沿った断面図である。
図1乃至図3に示すように、第1の実施形態に係るMEMS素子は、半導体基板10上の層間絶縁層11上に設けられた下部電極12および上部電極16を備える。
半導体基板10は、例えば、シリコン基板である。層間絶縁層11は、例えば、SiH4やTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を原料とした酸化シリコン(SiOX)で構成される。以下の説明において、半導体基板10および層間絶縁層11を基板と称する場合がある。
半導体基板10の表面には、電界効果トランジスタなどの素子が設けられてもよい。それらの素子は、ロジック回路や記憶回路を構成する。層間絶縁層11は、それらの回路を覆うように、半導体基板10上に設けられる。それゆえ、MEMS素子は、半導体基板10上の回路の上方に設けられる。
なお、例えば、オシレータのようなノイズの発生源になる回路は、MEMS素子の下方に、配置しないことが望ましい。また、半導体基板10と層間絶縁層11との間にシールドメタルを設けて、下層の回路からのノイズが、MEMS素子に伝播することを抑制してもよい。
下部電極12は、基板上に形成され、固定される。下部電極12は、例えば基板の表面に平行した平板形状である。下部電極12は、例えばアルミニウム(Al)、Alを主成分とする合金、銅(Cu)、金(Au)、または白金(Pt)で構成される。下部電極12は、下部電極12と同じ材料で構成された配線27に接続され、それを介して種々の回路に接続される。下部電極12の表面には、例えば、SiOX、窒化シリコン(SiN)、またはSiOXやSiNよりも高誘電率を有するhigh−k材料で構成される下部電極保護層14が形成される。
上部電極16は、下部電極12の上方に形成され、中空状態に支持され、上下方向(基板に対して垂直方向)に可動である。上部電極16は、基板10の表面に平行した平板形状であり、下部電極12に対向して配置される。すなわち、上部電極16は、第1方向(図1および図2における左右方向(長手方向))および第1方向に直交する第2方向(図1および図2における上下方向(短手方向))に広がる平面(基板10の表面に平行した平面、以下、単に平面と称す)において下部電極12にオーバーラップしている。上部電極16は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成される。すなわち、上部電極15は、延性材料で構成される。延性材料とは、その材料からなる部材に応力を与えて破壊する場合に、その部材が大きな塑性変化(延び)を生じてから破壊される材料のことである。しかし、これに限らず、上部電極15は、タングステン(W)等の脆性材料で構成されてもよい。
なお、図面において、下部電極12および上部電極16の平面における形状は、長方形であるが、これに限らず、正方形、円形、または楕円形であってもよい。
中空に支持された可動な上部電極16には、第1ばね部24および複数の第2ばね部21が接続される。これら第1ばね部24および第2ばね部21は、異なる材料で構成される。
第1ばね部24の一端は、上部電極16の第1方向の一端(端部)に接続される。第1ばね部24は、例えば、上部電極16と一体に形成される。すなわち、上部電極16と第1ばね部24とは、1つに繋がった単層構造であり、同レベルに形成される。第1ばね部24は、例えば、メアンダ状の平面形状を有する。言い換えると、第1ばね部24は、平面において、細くかつ長く形成され、曲がりくねった形状を有する。
第1ばね部24は、例えば、導電性を有する延性材料から構成され、上部電極16と同じ材料で構成される。すなわち、第1ばね部24は、例えば、Al、Alを主成分とする合金、Cu、AuまたはPtなどの金属材料で構成される。
第1ばね部24の他端には、第1アンカー部25が接続される。この第1アンカー部25によって、上部電極16が支持される。第1アンカー部25は、例えば、第1ばね部24と一体に形成される。このため、第1アンカー部25は、例えば、導電性を有する延性材料から構成され、上部電極16および第1ばね部24と同じ材料で構成される。第1アンカー部25は、例えば、Al、Alを主成分とする合金、Cu、AuまたはPtなどの金属材料で構成される。なお、第1アンカー部25は、上部電極16および第1ばね部24と異なる材料で構成されてもよい。
第1アンカー部25は、配線26上に設けられる。配線26は、層間絶縁層11上に設けられ、下部電極12と同じ材料で構成される。配線26表面は、図示せぬ絶縁層によって、覆われている。絶縁層は、例えば下部電極保護層14と一体に形成される。この絶縁層には開口部が設けられ、この開口部を経由して第1アンカー部25は、配線26に直接接触する。すなわち、上部電極16は、第1ばね部24および第1アンカー部25を介して配線26に電気的に接続され、種々の回路に接続される。これにより、上部電極16には、配線26、第1アンカー部25、および第1ばね部24を介して電位(電圧)が供給される。
また、長方形状の上部電極16の四隅(第1方向および第2方向の端部のそれぞれ)に、第2ばね部21が1つずつ接続される。なお、本例では、第2ばね部21が4個設けられているが、この個数に限定されない。
第2ばね部21の一端は、上部電極16上に設けられる。このため、第2ばね部21と上部電極16との接合部は、積層構造になっている。第2ばね部21の他端は、第2アンカー部23上に設けられる。このため、第2ばね部21と第2アンカー部23との接合部は、積層構造になっている。この第2アンカー部23によって、上部電極16が支持される。また、第2ばね部21は、上部電極16と第2アンカー部23との間において、中空状態であり、上部電極16と同レベルに形成される。また、第2ばね部21は、上部電極16と第2アンカー部23との間において、例えば、メアンダ状の平面形状を有している。
第2アンカー部23は、ダミー電極22上に設けられる。ダミー電極22は、層間絶縁層11上に設けられ、下部電極12と同じ材料で構成される。このダミー電極22は、回路等と絶縁分離され、浮遊状態である。ダミー電極22表面は、例えば下部電極保護層14と一体に形成される絶縁層によって、覆われている。この絶縁層には開口部が設けられ、この開口部を経由して第2アンカー部23は、ダミー電極22に直接接する。なお、第2アンカー部23は、ダミー電極22に直接接触していなくてもよい。
第2ばね部21は、例えば、脆性材料で構成される。脆性材料とは、その材料からなる部材に応力を与えて破壊する場合に、その部材が塑性変化(形状の変化)をほとんど生じないで破壊される材料のことである。
第2ばね部21として脆性材料を用いることにより、延性材料を用いた場合に発生するばね部でのクリープ現象を抑制することができる。なお、材料のクリープ現象とは、経年変化、または、ある部材に応力が与えられたときに、部材の歪み(形状の変化)が増大する現象のことである。
なお、第2ばね部21は延性材料で構成されてもよいし、第2ばね部21が導電性の材料である場合、第1ばね24は形成されなくてもよい。
第1の実施形態において、上部電極16は、その上面から下面まで貫通するホール17を有する。このホール17は、後述する製造工程において、下部電極12と上部電極16との間に形成された犠牲層15を除去するためのものである。すなわち、このホール17を介した等方的なエッチングにより、犠牲層15を除去することができる。
なお、図面において、上部電極16は4つのホール17を有しているが、これに限らず、1〜3つまたは5つ以上であってもよい。また、上部電極16を複数の領域に分割した場合、複数のホール17は各領域において均等に配置されることが望ましい。これにより、犠牲層15のエッチングレートを大きくすることができる。また、上部電極16の平面における形状は、正方形であるが、これに限らず、長方形、円形、または楕円形であってもよい。
一方、下部電極12は、その上面から下面まで貫通するホール13を有する。このホール13は、平面においてホール17に対応する位置に形成される。すなわち、ホール13とホール17とは、平面においてオーバーラップしている。言い換えると、ホール13以外の下部電極12とホール17以外の上部電極16とは、オーバーラップしている。また、ホール13の面積は、ホール17の面積と同等またはホール17の面積よりも大きいことが望ましいが、これに限らず、ホール13の面積は、ホール17の面積よりも小さくてもよい。このとき、平面において、面積が大きいほうのホール(例えばホール13)は、面積が小さいほうのホール(例えばホール17)をその領域内に含むように形成される。また、下部電極12の平面における形状は、上部電極16と同様に正方形であるが、これに限らず、長方形、円形、または楕円形であってもよい。
MEMS素子の実質容量は上部電極16と下部電極12とのオーバーラップ面積に比例し、MEMS素子の寄生容量は下部電極12の面積に比例する。すなわち、MEMS素子の実質容量を大きくするためにはオーバーラップ面積を大きくする一方、寄生容量を小さくするためには下部電極12の面積を小さくする必要がある。
第1の実施形態では、下部電極12において上部電極16のホール17に対応する位置にホール13を設けることにより、MEMS素子の実質容量を低減することなく、寄生容量を低減することができる。MEMS素子における実質容量および寄生容量の詳細については、後述する。
[製造方法]
次に、図4乃至図7を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造方法について説明する。ここでは、主に下部電極12に設けられるホール13および上部電極16に設けられるホール17の形成方法について説明する。
図4乃至図7は、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図であり、図1および図2におけるA−A線に沿った断面図である。
まず、図4に示すように、例えばP−CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により、半導体基板10上に、層間絶縁層11が形成される。層間絶縁層11は、例えば、SiH4やTEOSを原料としたSiOXで構成される。その後、例えばスパッタ法により、層間絶縁層11上に一様に、金属層12aが形成される。金属層12aは、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成される。
次に、図5に示すように、例えば、リソグラフィおよびRIE(Reactive Ion Etching)により、金属層12aがパターニングされる。これにより、層間絶縁層11上に、下部電極12が形成される。また、同時に層間絶縁層11上に、ダミー電極22、配線26,27が形成される。
このとき、下部電極12に、その上面から下面まで貫通するホール13が形成される。ホール13は、後述する上部電極16に形成されるホール17に対応する位置に設けられる。ホール13の平面における形状は、正方形であるが、これに限らず、長方形、円形、または楕円形であってもよい。
次に、図6に示すように、例えばP−CVD法により、全面に下部電極保護層14が形成される。これにより、下部電極12、ダミー電極22、および配線26,27の表面が、下部電極保護層14によって覆われる。下部電極保護層14は、例えば、SiOX、SiN、またはhigh−k材料で構成される。その後、例えばリソグラフィおよびRIEにより、下部電極保護層14がエッチングされる。これにより、配線26およびダミー電極22の上部に位置する下部電極保護層14に開口部が形成され、配線26およびダミー電極22が露出する。なお、このとき、ダミー電極22は露出されなくてもよい。
次に、下部電極保護層14上に、犠牲層15が塗布される。犠牲層15は、例えばポリイミドなどの有機材料で構成される。その後、例えばリソグラフィおよびRIEにより、犠牲層15がパターニングされる。これにより、下部電極保護層14の開口部上の犠牲層15がエッチングされ、配線26およびダミー電極22が露出する。言い換えると、犠牲層15に、下部電極保護層14の開口部に連接する開口部が形成される。
次に、図7に示すように、例えばスパッタ法により、全面に、金属層が形成される。より具体的には、金属層は、開口部外の犠牲層15の上面上、および開口部内の犠牲層15(および下部電極保護層14)の側面上に形成される。これにより、金属層は、開口部の底面において、配線26およびダミー電極22に接して形成される。金属層は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成される。
次に、例えばリソグラフィおよびウェットエッチングにより、金属層がパターニングされる。これにより、犠牲層15上に下部電極12に対向する上部電極16が形成される。また、開口部のダミー電極22上に、第2アンカー部23が形成される。また、開口部の配線26上に第1アンカー部25が形成され、犠牲層15上に上部電極16と第1アンカー部25とを接続する第1ばね部24が形成される。
このとき、上部電極16に、その上面から下面まで貫通するホール17が形成される。ホール17は、下部電極12に形成されたホール13に対応する位置に設けられる。ホール17の平面における形状は、正方形であるが、これに限らず、長方形、円形、または楕円形であってもよい。
なお、上部電極16等を構成する金属層のパターニングは、犠牲層15がエッチングされないようにウェットエッチングにより行われることが望ましいが、これに限らない。また、一般的にウェットエッチングよりもRIEのほうが、エッチング精度が高い。このため、下部電極12をRIEによりパターニングし、上部電極16をウェットエッチングによりパターニングする場合、上部電極16よりも下部電極12のほうが小さくなるように形成されることが望ましい。言い換えると、上部電極16に設けられるホール17よりも下部電極12に設けられるホール13のほうが大きくなるように形成されることが望ましい。すなわち、ウェットエッチングによる上部電極16のエッチング量をRIEによる下部電極12のエッチング量よりも小さくすることで、プロセスばらつきを低減することができる。
次に、例えばP−CVD法により全面に脆性材料で構成される層が形成された後、リソグラフィおよびRIEにより脆性材料で構成される層がエッチングされる。これにより、上部電極16と第2アンカー部23とに接続される第2ばね部23が形成される。より具体的には、第2ばね部23は、上部電極16上、犠牲層15上、および第2アンカー部23上に連接するように形成される。
次に、図3に示すように、等方的なドライエッチング、例えばO2系およびAr系のアッシング処理により、端部側およびホール17を介して犠牲層15が除去される。このとき、上部電極16を複数の領域に分割した場合、複数のホール17は各領域において均等に配置されることで、犠牲層15のエッチングレートを大きくすることができる。これにより、第1ばね部24、第2ばね部23、および上部電極16を中空状態にする。言い換えると、下部電極12と上部電極16との間(上部電極16下)に、上部電極16の可動領域が形成される。
なお、実際には上部電極16上にも可動領域を形成する必要がある。上部電極16上の可動領域の形成方法に関しては、周知である種々の方法によって形成されるため、詳細は省略する。
例えば、脆性材料を用いた第2ばね部23の形成後に、上部電極16、第1ばね部24、および第2ばね部23上に、図示せぬ犠牲層が形成され、犠牲層上に図示せぬ絶縁層が形成される。その後、パターニング加工により絶縁層に貫通孔が形成され、犠牲層15および図示せぬ犠牲層を、等方的なドライエッチング、例えばO2系およびAr系のアッシング処理により一括除去する。これにより、上部電極16下だけでなく、上部電極16上にも、上部電極16の可動領域が形成される。
このようにして、第1の実施形態に係るMEMS素子が形成される。
[効果]
上記第1の実施形態によれば、上部電極16が犠牲層15を除去するためのホール17を有し、下部電極12がホール17に対応する位置にホール13を有する。これにより、以下の効果を得ることができる。
図8は、比較例1におけるMEMS素子の構造を示す断面図である。
図8に示すように、比較例1におけるMEMS素子において、第1の実施形態と異なる点は、基板上に、下部電極12aおよび下部電極保護層14aが上部電極16の下方にべたで(一面に)形成されている点である。
ここで、図8に示すように、比較例1におけるMEMS素子の容量Caは、MEMS素子の実質容量Ca
MEMS(下部電極12aおよび上部電極16間の容量)と、MEMS素子の寄生容量Ca
PARA(下部電極12aおよび半導体基板10間の容量)とを用いて、以下の(1)式で表される。
ここで、g0は下部電極保護層14aの上面と上部電極16の下面との距離、tdie1は下部電極保護層14aの膜厚、tdie2は層間絶縁層11の膜厚(下部電極12aの下面と半導体基板10の上面との距離)、Sa1は下部電極12aと上部電極16とのオーバーラップする面積(上部電極16の面積)、Sa2は下部電極12aの面積、ε0は真空の誘電率、εdie1は下部電極保護層14aの比誘電率、εdie2は層間絶縁層11の比誘電率を示している。
これに対し、図3に示すように、第1の実施形態におけるMEMS素子の容量Cは、MEMS素子の実質容量C
MEMS(下部電極12および上部電極16間の容量)と、MEMS素子の寄生容量C
PARA(下部電極12および半導体基板10間の容量)とを用いて、以下の(2)式で表される。
ここで、S1は下部電極12と上部電極16とのオーバーラップする面積、S2は下部電極12の面積を示している。
MEMS素子において、上部電極16を動かしてg0を変化させることで、容量Cを可変にする。すなわち、実質容量CMEMSを可変にすることでMEMS素子を動作させている。一方、寄生容量CPARAは、不変である。このため、MEMS素子の動作において、容量Cに対して、可変である実質容量CMEMSの寄与を大きくし、不変である寄生容量CPARAの寄与を小さくすることが必要である。
(2)式に示すように、MEMS素子の寄生容量CPARAは下部電極12の面積S2に比例する。すなわち、寄生容量CPARAの寄与を小さくするために、面積S2を小さくする必要がある。第1の実施形態におけるMEMS素子では、下部電極12はホール13を有する。このため、第1の実施形態における下部電極12の面積S2は、パターン形成されていないべたの状態で形成される比較例1における下部電極12aの面積Sa2よりもホール13の面積分小さい。これにより、比較例1における寄生容量CaPARAに対して、第1の実施形態における寄生容量CPARAを小さくすることができる。
より具体的には、図9に示すように、比較例1における寄生容量CaPARAに対して、第1の実施形態における寄生容量CPARAを30%程度低減することができる。これは、比較例1における下部電極12aの面積Sa2に対して、第1の実施形態における下部電極12の面積S2を30%程度小さくしたためである。
また、(2)式に示すように、MEMS素子の実質容量CMEMSは下部電極12と上部電極16とのオーバーラップする面積S1に比例する。すなわち、実質容量CMEMSの寄与を大きくするために、面積S1を小さくしないようにする必要がある。第1の実施形態におけるMEMS素子では、下部電極12のホール13は、上部電極16のホール17に対応する位置に設けられる。上部電極16のホール17部分は、もともと実質容量CMEMSに寄与しない部分である。すなわち、下部電極12のホール13を上部電極16のホール17に対応する位置に設けても、第1の実施形態におけるオーバーラップ面積S1は、小さくならず、比較例1におけるオーバーラップ面積Sa1と同程度にすることができる。
すなわち、第1の実施形態では、下部電極12が上部電極16のホール17に対応する位置にホール13を有することで、実質容量CMEMSを低減することなく、寄生容量CPARAを低減することができる。これにより、実質容量CMEMSの寄与を大きくし、寄生容量CPARAの寄与を小さくすることができる。
なお、下部電極12の面積と上部電極16の面積とが同程度でもよく、下部電極12の面積が上部電極16の面積よりも小さくてもよく、下部電極12の面積が上部電極16の面積よりも大きくてもよい。言い換えると、ホール13の面積とホール17の面積とが同程度でもよく、ホール13の面積がホール17の面積よりも大きくてもよく、ホール13の面積がホール17の面積よりも小さくてもよい。
より具体的には、実質容量CMEMSの寄与を大きくし、寄生容量CPARAの寄与を小さくすることを考慮して、下部電極12の面積と上部電極16の面積とが同程度であることが望ましい。また、寄生容量CPARAの寄与を小さくすることを考慮して、下部電極12の面積を上部電極16の面積よりも小さくすることが望ましい。しかし、これらに限らず、下部電極12の面積および上部電極16の面積(ホール13の面積とホール17の面積)は、適宜設定可能である。
また、第1の実施形態は、上部電極16に犠牲層15の除去用のホール17を有するMEMS素子に適用可能である。このようなMEMS素子としては、例えば、比較的面積が大きい上部電極16を有する可変容量等が挙げられる。
[変形例1]
次に、図10乃至図12を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例1について説明する。
図10は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例1を示す平面図であり、主に上部電極16の構造を示す図である。図11は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例1を示す平面図であり、主に下部電極12の構造を示す図である。図12は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例1を示す断面図であり、図10および図11におけるB−B線に沿った断面図である。
図10乃至図12に示すように、変形例1において、上部電極16は、その上面から下面まで貫通するスリット37を有する。このスリット37は、製造工程において、下部電極12と上部電極16との間に形成された犠牲層15を除去するためのものである。すなわち、このスリット37を介した等方的なエッチングにより、犠牲層15を除去することができる。
スリット37は、平面において上部電極16の長手方向に延在するように形成される。また、スリット37は、平面において上部電極16の短手方向における中央部に形成される。なお、ここで、スリットとは、上述したホールよりも大きい面積を有するものを示し、その平面形状が長方形または楕円形であるものを示す。
一方、下部電極12は、その上面から下面まで貫通するスリット33を有する。このスリット33は、平面においてスリット37に対応する位置に形成される。すなわち、スリット33とスリット37とは、平面においてオーバーラップしている。言い換えると、スリット33以外の下部電極12とスリット37以外の上部電極16とは、オーバーラップしている。また、スリット33の面積は、スリット37の面積と同等またはスリット37の面積よりも大きいことが望ましいが、これに限らず、スリット33の面積は、スリット37の面積よりも小さくてもよい。このとき、平面において、面積が大きいほうのスリット(例えばスリット33)は、面積が小さいほうのスリット(例えばスリット37)をその領域内に含むように形成される。
変形例1によれば、以下の効果を得ることができる。
上部電極16がスリット37を有する場合、スリット37を有していない場合よりも短手方向において撓みやすい。すなわち、スリット37を有する上部電極16は、上下方向に動く際、短手方向において湾曲しやすい。
より具体的には、上部電極16を下部電極12に引きつける際、下部電極12に駆動電圧が印加される。これにより、上部電極16と下部電極12との間に静電引力が発生し、上部電極16が下部電極12に引きつけられる。このとき、まず、スリット37が設けられた部分、すなわち上部電極16の短手方向における中央部が撓む。そして、上部電極16における中央部と下部電極12との隙間50の寸法が小さくなる。ここで、静電引力は、上部電極16の主面と下部電極12の主面との間に形成される隙間50の寸法の二乗に反比例する。そのため、隙間50の寸法がより小さくなれば、より大きな静電引力が発生する。これにより、上部電極16がより容易に下部電極12に引きつけられる。そして、スリット37が設けられた部分に牽引されることで、上部電極16が湾曲するようにして撓む。続いて、隙間50の寸法がより小さくなる部分、すなわちより大きな静電引力が発生する部分が漸次短手方向の周縁部に拡大していく。これにより、容易に上部電極16を下部電極12に引きつけ、ダウンステートの状態にすることができる。すなわち、駆動電圧の低減を図ることができる。
次に、上部電極16を下部電極12から離隔する際、下部電極12への駆動電圧の印加が停止される。これにより、上部電極16と下部電極12との間に静電引力が解かれる。そして、駆動電圧による静電電圧が小さくなることで、上部電極16が下部電極12から離隔される。このとき、まず、上部電極16の周縁部が、第2ばね部21の弾性力により下部電極12から離隔する。そして、上部電極16の周縁部と下部電極12との隙間50の寸法が大きくなる。そのため、上部電極16が下部電極12から離隔した部分(周縁部)における静電引力が小さくなり、上部電極16が容易に下部電極12から離隔できる。そして、上部電極16が下部電極12から離隔した部分に牽引されることで上部電極16が湾曲するようにして撓む。続いて、隙間50の寸法がより大きくなる部分、すなわち静電引力がより小さくなる部分が漸次短手方向の中央部に拡大していく。これにより、容易に上部電極16を下部電極12から離隔し、アップステートの状態にすることができる。
なお、下部電極12の面積と上部電極16の面積とが同程度でもよく、下部電極12の面積が上部電極16の面積よりも小さくてもよく、下部電極12の面積が上部電極16の面積よりも大きくてもよい。言い換えると、スリット33の面積とスリット37の面積とが同程度でもよく、スリット33の面積がスリット37の面積よりも大きくてもよく、スリット33の面積がスリット37の面積よりも小さくてもよい。
より具体的には、実質容量CMEMSの寄与を大きくし、寄生容量CPARAの寄与を小さくすることを考慮して、下部電極12の面積と上部電極16の面積とが同程度であることが望ましい。また、寄生容量CPARAの寄与を小さくすることを考慮して、下部電極12の面積を上部電極16の面積よりも小さくすることが望ましい。しかし、これらに限らず、下部電極12の面積および上部電極16の面積(スリット33の面積とスリット37の面積)は、適宜設定可能である。
[変形例2]
次に、図13乃至図15を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例2について説明する。
図13は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例2を示す平面図であり、主に上部電極16の構造を示す図である。図14は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例2を示す平面図であり、主に下部電極12の構造を示す図である。図15は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例2を示す断面図であり、図13および図14におけるC−C線に沿った断面図である。
図13乃至図15に示すように、変形例2において、上部電極16は、その上面から下面まで貫通するホール17およびスリット37を有する。これらホール17およびスリット37は、製造工程において、下部電極12と上部電極16との間に形成された犠牲層15を除去するためのものである。すなわち、これらホール17およびスリット37を介した等方的なエッチングにより、犠牲層15を除去することができる。
スリット37は、平面において上部電極16の長手方向に延在するように形成される。また、スリット37は、平面において上部電極16の短手方向における中央部に形成される。ホール17は、平面において上部電極16の周縁部に形成される。すなわち、ホール17は、スリット37の周辺に設けられる。また、ホール17の面積は、スリット37の面積よりも小さい。
一方、下部電極12は、その上面から下面まで貫通するスリット33を有する。このスリット33は、平面においてスリット37に対応する位置に形成される。すなわち、スリット33とスリット37とは、平面においてオーバーラップしている。言い換えると、スリット33以外の下部電極12とスリット37およびホール17以外の上部電極16とは、オーバーラップしている。また、スリット33の面積は、スリット37の面積と同等またはスリット37の面積よりも大きいことが望ましいが、これに限らず、スリット33の面積は、スリット37の面積よりも小さくてもよい。このとき、平面において、面積が大きいほうのスリット(例えばスリット33)は、面積が小さいほうのスリット(例えばスリット37)をその領域内に含むように形成される。
変形例2によれば、変形例1と同様の効果を得ることができる。
さらに、変形例2において、下部電極12は、上部電極16のホール17に対応する位置にホール13を有さない。言い換えると、下部電極12は、上部電極16のホール17およびスリット37のうち、スリット37に対応するスリット33のみを有する。これは、ホール17よりもスリット37のほうが大きい面積を有するためである。すなわち、変形例2では、プロセスの容易性の観点から、MEMS素子における寄生容量を低減させるために、下部電極12により大きい面積を有するスリット37に対応するスリット33のみを優先的に形成する。なお、プロセスの容易性の観点から、できる限り、上部電極16のホール17に対応する位置にホール13も形成することが望ましい。
[変形例3]
次に、図16および図17を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例3について説明する。
図16は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例3を示す平面図であり、主に上部電極16の構造を示す図である。図17は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例3を示す平面図であり、主に下部電極12の構造を示す図である。
図16および図17に示すように、変形例3において、上部電極16は、その上面から下面まで貫通するスリット37を有する。このスリット37は、製造工程において、下部電極12と上部電極16との間に形成された犠牲層15を除去するためのものである。すなわち、このスリット37を介した等方的なエッチングにより、犠牲層15を除去することができる。スリット37は、平面において上部電極16の長手方向に延在するように形成される。また、スリット37は、平面において上部電極16の短手方向における中央部に形成される。さらに、スリット37は、平面において上部電極16の長手方向の一端を開口する。言い換えると、上部電極12は、長手方向の一端側でスリット37により短手方向において分離する。
一方、下部電極12は、その上面から下面まで貫通するスリット33を有する。このスリット33は、平面においてスリット37に対応する位置に形成される。すなわち、スリット33とスリット37とは、平面においてオーバーラップしている。言い換えると、スリット33以外の下部電極12とスリット37以外の上部電極16とは、オーバーラップしている。また、スリット33の面積は、スリット37の面積と同等またはスリット37の面積よりも大きいことが望ましいが、これに限らず、スリット33の面積は、スリット37の面積よりも小さくてもよい。このとき、平面において、面積が大きいほうのスリット(例えばスリット33)は、面積が小さいほうのスリット(例えばスリット37)をその領域内に含むように形成される。
なお、ここで、スリット37の面積とは、図16に示すように、上部電極16の長手方向の一端において端部を結んだ破線で区画される領域を示す。また、スリット33の面積とは、図17に示すように、下部電極12の長手方向の一端において端部を結んだ破線で区画される領域を示す。
変形例3によれば、変形例1と同様の効果を得ることができる。
[変形例4]
次に、図18を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例4について説明する。
図18は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例4を示す平面図であり、主に上部電極16の構造を示す図である。
図18に示すように、変形例4において、上部電極16は、その上面から下面まで貫通するホール17およびスリット37を有する。これらホール17およびスリット37は、製造工程において、下部電極12と上部電極16との間に形成された犠牲層15を除去するためのものである。すなわち、これらホール17およびスリット37を介した等方的なエッチングにより、犠牲層15を除去することができる。
スリット37は、平面において上部電極16の長手方向に延在するように形成される。また、スリット37は、平面において上部電極16の短手方向における中央部に形成される。さらに、スリット37は、平面において上部電極16の長手方向の一端を開口する。言い換えると、上部電極12は、長手方向の一端側でスリット37により短手方向において分離する。
ホール17は、平面において上部電極16の周縁部に形成される。すなわち、ホール17は、スリット37の周辺に設けられる。また、ホール17の面積は、スリット37の面積よりも小さい。また、複数のホール17のうち、上部電極16の端部を開口するホール17があってもよい。この上部電極16の端部を開口するホール17は、例えば、上部電極16の長手方向の他端を開口する。言い換えると、上部電極12は、長手方向の他端側でホール17により短手方向において分離する。なお、ここで、上部電極16の端部を開口するホール17の面積とは、図18に示すように、上部電極16の長手方向の他端において端部を結んだ破線で区画される領域を示す。
一方、変形例4における下部電極12は、変形例3における図17と同様の構造を有する。すなわち、下部電極12は、その上面から下面まで貫通するスリット33を有する。このスリット33は、平面においてスリット37に対応する位置に形成される。
変形例4によれば、変形例2と同様の効果を得ることができる。
[変形例5]
次に、図19を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例5について説明する。
図19は、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例5を示す平面図であり、主に上部電極16の構造を示す図である。
図19に示すように、変形例5において、上部電極16は、その上面から下面まで貫通するスリット37およびスリット47を有する。このスリット37およびスリット47は、製造工程において、下部電極12と上部電極16との間に形成された犠牲層15を除去するためのものである。すなわち、このスリット37およびスリット47を介した等方的なエッチングにより、犠牲層15を除去することができる。
スリット37は、平面において上部電極16の長手方向に延在するように形成される。また、スリット37は、平面において上部電極16の短手方向における中央部に形成される。
スリット47は、平面において上部電極16の短手方向に延在するように形成され、スリット37と交差する。また、スリット47は、例えば3つ形成される。3つのスリット47はそれぞれ、例えば、平面においてスリット37の長手方向における一端部、中央部、および他端部に交差するように形成される。
一方、変形例5における下部電極12は、変形例2における図14と同様の構造を有する。すなわち、下部電極12は、その上面から下面まで貫通するスリット33を有する。このスリット33は、平面においてスリット37に対応する位置に形成される。
変形例5によれば、変形例2と同様の効果を有する。
さらに、変形例5によれば、上部電極16がスリット47を有する。このスリット47は、長手方向において、スリット37の短手方向における効果と同様の効果を有する。すなわち、変形例2と比べて、より容易に上部電極16を下部電極12に引きつけ、ダウンステートの状態にすることができ、より駆動電圧の低減を図ることができる。また、より容易に上部電極16を下部電極12から離隔し、アップステートの状態にすることができる。
<第2の実施形態>
図20乃至図24を用いて、第2の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第2の実施形態では、下部電極12におけるホール13の中央部にダミー電極41が設けられる。これにより、犠牲層15の平坦性を向上させ、上部電極16を所望の形状に形成することができる。以下に、第2の実施形態について詳説する。なお、第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。
[構造]
まず、図20乃至図22を用いて、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
図20は、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図であり、主に上部電極16の構造を示す図である。図21は、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図であり、主に下部電極12の構造を示す図である。図22は、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図20および図21におけるD−D線に沿った断面図である。
図20乃至図22に示すように、第2の実施形態において、上記第1の実施形態と異なる点は、下部電極12におけるホール13の中央部にダミー電極41が設けられる点である。
より具体的には、ダミー電極41は、層間絶縁層11上におけるホール13の中央部に形成される。このダミー電極41は、下部電極12と同時に形成される。このため、ダミー電極41は、下部電極12と同レベルで形成され、下部電極12と同材料で構成される。また、ダミー電極41は、下部電極12と絶縁分離され、浮遊状態である。言い換えると、ダミー電極41と下部電極12との間に溝42が形成され、溝42内に下部電極保護層14が形成されることで、ダミー電極41と下部電極12とは分離される。
[製造方法]
次に、図23および図24を用いて、第2の実施形態に係るMEMS素子の製造方法について説明する。ここでは、主に下部電極12に設けられるホール13(溝42)および上部電極16に設けられるホール17の形成方法について説明する。
図23乃至図24は、第2の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図であり、図20および図21におけるD−D線に沿った断面図である。
まず、第1の実施形態における図4の工程が行われる。すなわち、半導体基板10上に、層間絶縁層11および金属層12aが順に形成される。
次に、図23に示すように、例えば、リソグラフィおよびRIEにより、金属層12aがパターニングされる。これにより、層間絶縁層11上に、下部電極12が形成される。また、同時に層間絶縁層11上に、ダミー電極22、配線26,27が形成される。
このとき、下部電極12に、その上面から下面まで貫通するホール13が形成され、ホール13の中央部にダミー電極41が形成される。言い換えると、下部電極12とダミー電極41が分離するように、その間に溝42が形成される。
ホール17内のダミー電極41は、その後に形成される犠牲層15の平坦性、および下部電極12とのカップリング容量を考慮して形成される。すなわち、ダミー電極41と下部電極12とのカップリング容量が無視できる程度に、ダミー電極41をその平面寸法が大きくなるように形成する。言い換えると、ダミー電極41と下部電極12とのカップリング容量が無視できる程度に、溝42をその平面寸法(幅)が小さくなるように形成する。
次に、図24に示すように、例えばP−CVD法により、全面に下部電極保護層14が形成される。これにより、下部電極12、ダミー電極22,41、および配線26,27の表面が、下部電極保護層14によって覆われる。その後、例えばリソグラフィおよびRIEにより、下部電極保護層14がエッチングされる。これにより、配線26およびダミー電極22の上部に位置する下部電極保護層14に開口部が形成され、配線26およびダミー電極22が露出する。なお、このとき、ダミー電極22は露出されなくてもよい。
次に、下部電極保護層14上に、犠牲層15が塗布される。犠牲層15は、例えばポリイミドなどの有機材料で構成される。このとき、下部電極12のホール13内にダミー電極41が形成されている。このため、犠牲層15がホール13の上方において凹部を形成することなく、平坦に形成される。
その後、例えばリソグラフィおよびRIEにより、犠牲層15がパターニングされる。これにより、下部電極保護層14の開口部上の犠牲層15がエッチングされ、配線26およびダミー電極22が露出する。言い換えると、犠牲層15に、下部電極保護層14の開口部に連接する開口部が形成される。 次に、例えばスパッタ法により、全面に、金属層が形成される。より具体的には、金属層は、開口部外の犠牲層15の上面上、および開口部内の犠牲層15(および下部電極保護層14)の側面上に形成される。
次に、例えばリソグラフィおよびウェットエッチングにより、金属層がパターニングされる。これにより、犠牲層15上に下部電極12に対向する上部電極16が形成される。また、開口部のダミー電極22上に、第2アンカー部23が形成される。また、開口部の配線26上に第1アンカー部25が形成され、犠牲層15上に上部電極16と第1アンカー部25とを接続する第1ばね部24が形成される。
このとき、上部電極16に、その上面から下面まで貫通するホール17が形成される。ホール17は、下部電極12に形成されたホール13に対応する位置に設けられる。
次に、例えばP−CVD法により全面に脆性材料で構成される層が形成された後、リソグラフィおよびRIEにより脆性材料で構成される層がエッチングされる。これにより、上部電極16と第2アンカー部23とに接続される第2ばね部23が形成される。
次に、図22に示すように、等方的なドライエッチング、例えばO2系およびAr系のアッシング処理により、端部側およびホール17を介して犠牲層15が除去される。これにより、第1ばね部24、第2ばね部23、および上部電極16を中空状態にする。
このようにして、第2の実施形態に係るMEMS素子が形成される。
[効果]
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第2の実施形態では、下部電極12におけるホール13の中央部にダミー電極41が設けられる。これにより、以下の効果を得ることができる。
図25は、比較例2におけるMEMS素子の製造工程を示す断面図である。
図25に示すように、比較例2におけるMEMS素子の製造工程において、ホール13を有する下部電極12を形成した後に犠牲層15bを形成した場合、ホール13の上方において犠牲層15bに凹部が形成されてしまうことがある。すなわち、犠牲層15bの平坦性が劣化する。この凹部を有する犠牲層15b上に、ホール17bを有する上部電極16bを形成した場合、所望の形状の上部電極16bを形成することができない。その結果、MEMS素子の上部電極16bがダウンステートになった場合、上部電極16bと下部電極保護層14とが密着せず、隙間が生じ所望の特性が得られなくなる。
これに対し、第2の実施形態では、下部電極12のホール13内にダミー電極41が設けられる。これにより、その上方に形成される犠牲層15に凹部を形成することなく、その平坦性を向上することができる。
なお、第2の実施形態を第1の実施形態における変形例1乃至変形例5に適用することも可能である。
その他、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。