JP2013228010A - 製紙機械用ころ軸受及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬質被膜を形成した製紙機械ころ軸受において、硬質被膜の剥離を抑えて耐久性を向上させる。
【解決手段】金属製の内輪、外輪及びころを備えるころ軸受であって、前記ころの転動面の表面粗さRaが0.1〜0.2μmで、炭素を主成分とする非晶質炭素被膜で被覆されており、かつ、前記非晶質炭素被膜の表面粗さRaが0.07μm以下であることを特徴とする製紙機械用ころ軸受。
【選択図】図1

Description

本発明は、抄紙工程で使用されるロールのような製紙機械に使用されるころ軸受、並びにその製造方法に関する。
抄紙工程では、パルプを含む水性スラリーをロールにより脱水して薄いシートに加工した後、シートを搬送する間に乾燥することが行われる。そのため、ロールを支持する軸受は、高荷重、水との接触、軽荷重と高荷重との繰り返し、高温のような厳しい条件で使用されている。
ロールの支持に使用される軸受としては、自動調心ころ軸受が使用されているが、上記のような使用条件では、ころの転動面や軌道面に、スミアリング(微小焼付き)や摩耗、剥離、割れ等の損傷が起こり易い。スミアリングや摩耗は軽度の損傷であるが、そのまま放置すると軸受機能を著しく低下させる剥離や割れに進展するおそれがある。このような不具合を防ぐために、ころの転動面や軌道面に、ダイヤモンドライクカーボン膜や炭窒化ホウ素膜等の硬質被膜を形成することが行われている(特許文献1、2参照)。
特開2005−337310号公報 特開2011−169398号公報
上記の被膜形成に際して、ころの転動面や軌道面の表面を粗面化し、その上に硬質被膜を形成してアンカー効果により硬質被膜との密着性を高めている。そのため、硬質被膜の表面は、粗面化された転動面や軌道面の表面の凹凸が反映されて凹凸になっている。
そして、硬質被膜の凸部に局所的に大きな接触面圧が加わると、凸部を起点として亀裂が進展して硬質皮膜の剥離が起こるようになる。
そこで本発明は、高荷重、水との接触、軽荷重と高荷重との繰り返し、高温のような厳しい条件下でのスミアリングや摩耗、剥離、割れ等の損傷を防止するために硬質被膜を形成した製紙機械用ころ軸受において、硬質被膜の剥離を抑えて耐久性を向上させることを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、下記を提供する。
(1)金属製の内輪、外輪及びころを備え、製紙機械に使用されるころ軸受であって、
前記ころの転動面の表面粗さRaが0.1〜0.2μmで、炭素を主成分とする非晶質炭素被膜で被覆されており、かつ、前記非晶質炭素被膜の表面粗さRaが0.07μm以下であることを特徴とする製紙機械用ころ軸受。
(2)非晶質炭素被膜が、ビッカース硬度Hv2500以下であることを特徴とする上記(1)記載の製紙機械用ころ軸受。
(3)金属製の内輪、外輪及び硬質被膜が形成されたころを備え、製紙機械に使用されるころ軸受の製造方法であって、
前記ころの転動面を、表面粗さRa0.1〜0.2μmに粗面化する工程と、
粗面化された転動面を、炭素を主成分とする非晶質炭素被膜で被覆さする工程と、
前記非晶質炭素被膜の表面に、球状の弾性体に砥粒が分散した研磨粒子を衝突させて、表面粗さRa0.07μm以下に調整する工程と
を備えることを特徴とする製紙機械用ころ軸受の製造方法。
本発明の製紙機械用ころ軸受は、高荷重、水との接触、軽荷重と高荷重との繰り返し、高温のような厳しい条件下でのスミアリングや摩耗、剥離、割れ等の損傷を防止するために硬質被膜を形成したものであるが、硬質被膜の表面の粗さを規定量以下として凸部に加わる接触面圧を小さくすることで、硬質被膜の剥離を抑え、耐久性が高まる。
製紙機械用ころ軸受の一例を示す部分断面斜視図である。 ころ表面の状態を模式的に示す断面図であり、(A)研磨直後の状態、(B)非晶質炭素被膜を形成した状態、(C)非晶質炭素被膜を研磨した後の状態を示す。 試験1で用いた試験装置(抄紙用ロールを想定)を示す模式図である。 試験2の結果を示すグラフである。
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
本発明において、製紙機械用ころ軸受の種類には制限はなく、例えば図1を例示することができる。図示される自動調心ころ軸受は、外周面に軌道面1aを有する内輪1と、内輪1の軌道面1aに対向する軌道面2aを内周面に有する外輪2と、両軌道面1a,2a間に複列に配置される複数のころ3と、保持器4とを備えている。内輪1、外輪2及びころ3は、SUJ2等の鋼製である。
本発明では、ころ3の転動面に硬質被膜である炭素を主成分とする非晶質炭素被膜を形成するが、転動面と非晶質炭素被膜との密着性を高めるために、図2(A)に示すように、転動面を表面粗さRa0.1〜0.2μm、好ましくは0.12〜0.15μmとなるように粗面化する。粗面化の方法には制限はないが、規定の表面粗さRaに制御しやすいことから、砥粒を吹き付ける方法が好ましい。
砥粒の平均粒径は、45μm以下が好ましい。平均粒径が小さくなるほど、緻密な凹凸を形成することができるが、処理時間がかかるようになる。また、材質はアルミナやダイヤモンド、炭化けい素が挙げられ、それぞれ単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
また、砥粒を吹き付けるときの角度(投射角度)は、転動面に対して略90°が好ましい。これにより、転動面に深い凹凸を効率よく形成することができる。
次いで、図2(B)に示すように、粗面化された転動面に、非晶質炭素被膜10を形成する。非晶質炭素被膜10は、ビッカース硬さHv2500以下であることが好ましく、Hv1500以下であることがより好ましい。Hv2500を超えると、非晶質炭素被膜10が硬すぎて、後述する研磨処理がし難くなり、更には被膜自体の内部応力が大きすぎて剥離しやすくなる。また、相手材である内輪軌道面及び外輪軌道面を損傷させやすくなる。一方、硬さの下限は、時間の経過とともに非晶質炭素被膜10が摩耗するため、Hv1000以上が望ましい。
非晶質炭素被膜10としては、タイヤモンドライクカーボン膜が好ましい。ダイヤモンドライクカーボンは、炭素からなり、ダイヤモンド構造のSP3結合とグラファイト構造のSP2結合が混在しているアモルファス構造を有する。また、ダイヤモンドライクカーボン膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法等により形成することができるが、成膜時のバイアス電圧を変えることにより、膜の硬さを変えることができる。
非晶質炭素被膜10を十分に厚くすることにより、転動面の凹凸を完全に埋めて平滑な表面にすることができるが、表面に微小な凹凸(表面粗さRa0.07μm以下)が残っていると、その凹部が油溜まりとなって機能して潤滑性が向上する。但し、本発明では、図2(C)に示すように、非晶質炭素被膜10を研磨して表面粗さRa0.07μm以下に調整するため、非晶質炭素被膜10が薄すぎると、研磨されて平坦になった部分10bの膜厚が不足して耐久性に劣るようになり、場合によっては地肌が露出するおそれがある。そのため、非晶質炭素被膜10の膜厚は、表面粗さRa0.07μm以下となるように研磨された後でも平坦な部分10bに十分な厚さの被膜が残存するように設定されるが、1〜2μmが適当である。
非晶質炭素被膜10を形成した後、図2(C)に示すように、非晶質炭素被膜10の表面を研磨して表面粗さRa0.07μm以下、好ましくは0.05μm以下に調整する。表面粗さRa0.07μmを超える粗面では、平坦な部分10bに接触面圧が局所的に加わり非晶質炭素被膜10が剥離しやすくなる。但し、非晶質炭素被膜10に微小な凹凸が残っていると、凹部が油溜まりとして機能するため、平滑すぎて好ましくない。そのため、非晶質炭素被膜10の表面粗さRaは0.03μm以上が好ましい。
非晶質炭素被膜10の研磨には、球状の弾性体に砥粒が分散した研磨粒子を用いることが好ましい。研磨粒子の平均粒径は0.02〜3mmが好ましく、0.5〜1mmがより好ましい。弾性体としてはゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。砥粒は、粒度が#2000以上、または平均粒径が6μm以下であることが好ましく、粒度が#3000以上、または平均粒径が4μm以下であることがより好ましく、粒度が#8000以上、または平均粒径が1μm以下であることが特に好ましい。砥粒をこのような粒径にすることにより表面粗さRa0.07μm以下に調整することができるようになる。砥粒の材質としては、アルミナやダイヤモンド、炭化けい素が挙げられる。また、研磨粒子に含まれる砥粒の割合としては、10〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
また、研磨粒子の投射角度は、転動面に対して0°以上90°以下となるようにが好ましく、45°以下がより好ましく、20°以下が更に好ましい。投射角度が小さいほど、投射される研磨粒子が転動面を滑走する距離が長くなり、研磨効率が向上する。
尚、図示は省略するが、非晶質炭素被膜10を形成する際に、クロム等からなる下地層を形成してもよい。
以上、自動調心ころ軸受を例示して説明したが、それ以外にも円筒ころ軸受等にも適用できる。例えば、ドライヤーロール用軸受では、中空軸内に熱媒(180℃程度)を通すため、軸伸びが発生して駆動側を自動調心ころで固定し、操作側は熱膨張を逃がすために円筒ころを使用することがあり、円筒ころ軸受についての同様の処理を行う。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(試験1)
試験軸受として、呼び番号「24144」の自動調心ころ軸受を次のようにして作製した。内輪、外輪及びころを、SUJ2からなる素材を通常の方法で加工した後、通常の熱処理をした。そして、ころについては、表面にダイヤモンド砥粒を吹き付けて粗面化し、その上に神戸製鋼所製アンバランスマグネトロンスパッタリング装置504を用いてダイヤモンドライクカーボン膜を形成した。その後、ダイヤモンドライクカーボン膜に、球状のゴムに#2000以上のダイヤモンド砥粒を分散させた砥粒粒子を吹き付けて粗面化した。転動面の表面粗さRa及びダイヤモンドライクカーボン膜の表面粗さRaは、表1に示すとおりであり、研磨時間や吹き付け圧力を調整するなどして変更した。尚、比較例6では、ダイヤモンドライクカーボン膜をパフ研磨して表面粗さをより小さくした。また、潤滑は、VG68による油浴潤滑とした。
そして、試験軸受を図3に示す抄紙用ロールを模した試験装置に装着し、スミアリングが発生するまでの時間を求めた。尚、図示される試験装置は、恒温恒湿下に、一対のサポート軸受の中央に試験軸受を配置し、試験軸受に所定の荷重を加える構成になっている。
試験は、試験軸受1個当たりラジアル荷重を236000N(F/C0r=0.074)負荷し、100℃(水蒸気雰囲気)、速度1200min−1で750時間回転することで行った。そして、所定時間毎に試験軸受を分解して洗浄、乾燥した後に、スミアリングの発生を目視にて確認し、スミアリングが発生するまでの時間を計測した。結果を表1に示すが、比較例1のスミアリング発生までの時間を1とする相対値で示した。
Figure 2013228010
表1から、本発明に従い、転動面の表面粗さRaが0.1〜0.2μmで、かつ、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面粗さRaが0.07μm以下であるころを用いた実施例は、スミアリング発生までの時間が比較例1と比べて20〜30倍にも伸びている。これは、ダイヤモンドライクカーボン膜が長く残存し、外輪との凝着が低い状態が長期間維持されたためと考えられる。また、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面の粗さが小さいため、潤滑効果が期待できない試験環境においても、相手材である外輪への攻撃性が低く、アブレッシブ摩耗が防止されたものと考えられる。
これに対し、比較例では、ころの転動面の表面粗さRaまたはダイヤモンドライクカーボン膜の表面粗さRaが本発明の範囲を逸脱しているため、スミアリングが早期に発生している。
(試験2)
円盤状のフラットディスクと、相手材としての3/8インチの軸受鋼球とを用いて、回転型摩擦摩耗試験機により相手材への攻撃性を評価した。フラットディスクは、その表面にダイヤモンド砥粒を吹き付けて表面粗さRaを0.15μmとし、その上に、神戸製鋼所製アンバランスマグネトロンスパッタリング装置504を用いてダイヤモンドライクカーボン膜を形成した。成膜に際し、バイアス電圧を変えることで膜の硬さをHv800〜3000まで変えた。その後、ダイヤモンドライクカーボン膜に、球状のゴムに#2000以上のダイヤモンド砥粒を分散させた砥粒粒子を吹き付けて表面粗さRa0.07μmに粗面化した。
そして、試験荷重10kg、滑り速度1.0m/s、潤滑油にVG32相当の無添加鉱油を用い、総回転数1×10revまで試験を行い、試験後のダイヤモンドライクカーボン膜の剥がれ面積及び軸受鋼球の摩耗量を測定した。尚、剥がれ面積は、接触面積に対する比率(%)とし、摩耗量は試験後に軸受鋼球を洗浄、乾燥した後に、質量を測定して試験前の質量との差から算出した。結果を図4に示すが、摩耗量はHv1000のダイヤモンドライクカーボン膜での値を1とする相対値で示した。
図示されるように、Hv2500以下の範囲でダイヤモンドライクカーボン膜の剥がれ、並びに軸受鋼球の摩耗量も少なくなっている。これに対し、Hv3000ではダイヤモンドライクカーボン膜が広範囲に剥がれており、軸受鋼球の摩耗量も多くなっている。
尚、Hv1000未満の範囲でも、ダイヤモンドライクカーボン膜の剥がれや、軸受鋼球の摩耗量が少ないものの、時間の経過とともにダイヤモンドライクカーボン膜の摩耗が進行することから、Hv1000以上が望ましい。
1 内輪
2 外輪
3 ころ
4 保持器

Claims (3)

  1. 金属製の内輪、外輪及びころを備え、製紙機械に使用されるころ軸受であって、
    前記ころの転動面の表面粗さRaが0.1〜0.2μmで、炭素を主成分とする非晶質炭素被膜で被覆されており、かつ、前記非晶質炭素被膜の表面粗さRaが0.07μm以下であることを特徴とする製紙機械用ころ軸受。
  2. 非晶質炭素被膜が、ビッカース硬度Hv2500以下であることを特徴とする請求項1記載の製紙機械用ころ軸受。
  3. 金属製の内輪、外輪及び硬質被膜が形成されたころを備え、製紙機械に使用されるころ軸受の製造方法であって、
    前記ころの転動面を、表面粗さRa0.1〜0.2μmに粗面化する工程と、
    粗面化された転動面を、炭素を主成分とする非晶質炭素被膜で被覆さする工程と、
    前記非晶質炭素被膜の表面に、球状の弾性体に砥粒が分散した研磨粒子を衝突させて、表面粗さRa0.07μm以下に調整する工程と
    を備えることを特徴とする製紙機械用ころ軸受の製造方法。
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