JP5927960B2 - ころ軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、内輪と、外輪と、内輪及び外輪の間に転動自在に配された複数のころと、内輪及び外輪の少なくとも一方に形成されたつばと、を備えるころ軸受に関する。
円すいころ軸受のようなころ軸受においては、内輪や外輪に設けられているつばところの端面とが、回転時に摺動して摩擦が発生する。低速回転域では、つばところの端面との摩擦が大きいので、低速回転域のトルクが大きくなる。なお、以降においては、つばのうち、ころの端面と摺接する面を「つば面」と記す。前記のような問題があることから、低速回転域のトルクを低減する技術が提案されている。
例えば特許文献1〜特許文献4は、内輪や外輪のつば面と、ころの端面とにショットブラスト工法、あるいはショットピーニング工法を行なうことで、それら摺動面の表面粗さを所定範囲に設定し、摺動面の摩擦抵抗を小さくすることで、円すいころ軸受の低速回転域のトルクを低くしている。特に、特許文献1,4では、表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値も規定している。
特開平08−232964号公報 特開2003−184883号公報 特開2004−316699号公報 特開2010−169182号公報
ところで、特許文献1〜特許文献4は、互いに摺動する内輪や外輪のつば面及びころの端面の両者に対してショットブラスト工法、あるいはショットピーニング工法を行なっているので、処理に時間を要してしまい、高コストで量産性が低い。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、表面仕上げ処理に要する時間を短くし低コストで量産性を高くしながら低速回転域のトルクを小さくすることができるころ軸受を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載のころ軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配置された複数のころと、前記内輪及び前記外輪の一方に形成したつばと、を備えたころ軸受において、前記つばのつば面の接触面積と、前記つば面に接触する前記複数のころのころ端面の接触面積とを比較し、前記接触面積が大きい面に、アヤメ模様状のキズ、若しくは凹部を持ち、前記接触面積が大きい面の表面粗さ(Ra,ring)0.05μm以上0.25μm以下であり、前記接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の中心線に対する上下のとがり程度を示すとがり度合い(Rku,ring)、3以上7以下であり、前記つばのつば面と、前記複数のころの前記ころ端面とのうち前記接触面積が大きい方の面積をAbとし、前記接触面積が小さい方の面積をAsとすると、Ab/As≧1.35の関係としている。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のころ軸受において、前記接触面積が大きい面にアヤメ模様状の前記キズをもつ場合には、前記接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)が−1.6以上−0.4以下であり、前記接触面積が大きい面に前記凹部を持つ場合には、前記接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)が−1.5以上−0.1以下に設定している。
本発明に係るころ軸受によれば、表面粗さが大きい(粗い)部位が、表面粗さが小さい(粗くない)部位を摩耗することで、すべり摩擦抵抗を小さくすることができ、短時間で低速回転域のトルクを小さくすることができる。
また、つばのつば面の接触面積と、つば面に接触する前記複数のころのころ端面の接触面積とを比較し、接触面積が大きい面のみに表面仕上げを行なうことで、表面仕上げ処理に要する時間を短くし、低コストで量産性を高くすることができる。
本発明に係るころ軸受の一実施形態である円すいころ軸受の構造を示す部分縦断面図である。 トルク試験に用いた試験機の構造を示す断面図である。 第1実施形態のトルク試験の結果を示すグラフである。 第2実施形態において研磨加工によりアヤメ模様状に多方向性に延在する研磨キズが形成されているつばのつば面、或いは、つば面に接触する複数のころのころ端面を示す図である。
以下、本発明に係るころ軸受の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るころ軸受の一実施形態である円すいころ軸受の構造を示す部分縦断面図である。図1の円すいころ軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1及び外輪2の間に転動自在に配された複数の円すいころ3と、内輪1及び外輪2の間に複数の円すいころ3を保持する保持器4と、で構成されており、内輪1の外周面及び外輪2の内周面の間に形成された軸受内部空間には、図示しない潤滑剤(例えば潤滑油,グリース)が封入されている。なお、保持器4は備えていなくてもよい。
また、内輪1の外周面の軸方向両端部には、大つば5a及び小つば5bが径方向外方に突出して設けられている。外輪2には、つばは設けられていない。ただし、図1の例とは逆に、外輪2の内周面の軸方向両端部につばを設け、内輪1にはつばを設けない構成としてもよいし、内輪1及び外輪2の両方につばを設ける構成としてもよい。
大つば5aの内周面には大つば面6a、小つば5bの内周面には小つば面6bが形成されており、大つば面6aには円すいころ3の大端面3aが当接し、小つば面6bには円すいころ3の小端面3bが当接することで、円すいころ3が案内保持されている。
次に、本発明に係る第1実施形態の円すいころ軸受について説明する。
本実施形態では、内輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの一方に、ショットブラスト加工により表面仕上げが行なわれている。この表面仕上げを行なうことで、大つば面6a及び円すいころ3の大端面3a、小つば面6b及び小端面3bのすべり摩擦抵抗を小さくし、円すいころ軸受の起動トルクを低くするようにしている。
ここで、大つば面6aと大端面3aの接触面積を比較し、接触面積が大きい方に、ショットブラスト加工を行なっている。これは、接触面積が大きい方にショットブラスト加工を行なうことで、すべり摩擦抵抗を小さくするという効果が持続しやすいからである。
そして、接触面積が大きい方のみにショットブラスト加工を行なっているので、表面仕上げ処理に要する時間を短くし、低コストで量産性を高くすることができる。
また、内輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの大きい方の接触面積をAbとし、小さい方の接触面積をAsとすると、Ab/As≧1.35の関係とすることが好ましい。
なお、内輪1の大つば面6a及び小つば面6bにショットブラスト加工を行なう場合には、大つば面6a及び小つば面6b囲まれている軌道面にはショットブラスト加工を行なわない。内輪1の軌道面にショットブラスト加工を行なわない理由は、クリーン寿命(潤滑剤に水や異物が混入しないクリーンな条件下での寿命)が低下するおそれがあるからである。
また、ショットブラスト加工を行なった大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bには凹凸が形成されるが、凸部の研磨をすることが好ましい。凸部の研磨方法としては、超仕上げ砥石による超仕上げ加工、砥粒を含有する弾性体粒子によるショットブラスト、微細砥粒によるショットブラスト、砥粒を含有する流体による液体ホーニング等が採用されている。
内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面粗さ(Ra,ring)は、0.05μm以上0.25μm以下に設定されていることが好ましい。表面粗さ(Ra,ring)が0.05μmを下回ると、相手部材との間の油溜まりの保持能力が低下するおそれがある。一方、表面粗さ(Ra,ring)が0.25μmを上回ると、音響の上昇し、油膜厚さが小さくなって焼きつきのおそれがある。
また、内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面粗さの分布曲線の中心線に対する上下のとがり程度を示すとがり度合い(Rku,ring)は、3以上7以下に設定されていることが好ましい。
また、内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)は、−1.5以上0.0以下に設定されていることが好ましい。ゆがみ値(Rsk,ring)が0.0を上回ると、油溜まりの効果を発揮することができない。一方、ゆがみ値(Rsk,ring)が−1.5を下回る表面形状を形成するためにはコストアップが上昇するおそれがある。
また、内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面仕上げをショットブラスト加工で行なう際に使用される投射材は、多角形状のセラミック製であることが好ましく、例えば、多角形状の炭化けい素(SiC)を用いることが好ましい。球形のAlやSiOで投射材を構成すると、投射材が割れるおそれがある。
また、ショットブラスト加工で使用する投射材の大きさは、10μm以上100μm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、投射材は、目開き75μmの篩を通過し、目開き20μmの篩は通過しないようにする。
また、投射材の投射速度は、50m/sec以上とすることが好ましい。さらに、投射材の投射圧力は、0.1MPa以上0.9MPa以下とすることが好ましい。このような投射材の大きさ、投射速度及び投射圧力とすることで、内輪1の大つば面6a及び小つば面6bの表面粗さ(Ra,ring)を0.05μm以上0.25μm以下に容易に形成することができる。
さらに、内輪1及び外輪2の間の軸受内部空間に封入されている潤滑剤の基油は、1000℃における動粘度が8mm/s以下のものが使用されている。動粘度が8mm/sを上回ると、輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの部材のうちの粗い部材が粗くない部材を摩耗するのが妨げられるので、すべり摩擦抵抗が大きくなり、低速回転域のトルクが高くなる。これに対して、動粘度が8mm/s以下では、輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの部材のうちの粗い部材が粗くない部材を摩耗することですべり摩擦抵抗が小さくなり、低速回転域のトルクを低くする。
なお、本発明に係るつば面が大つば面6a、小つば面6bに対応し、本発明に係るころが円すいころ3に対応し、本発明に係るころ端面が大端面3a、小端面3bに対応している。
また、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においてはころ軸受の例として円すいころ軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々なころ軸受に対して適用することができる。例えば、円筒ころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等である。ただし、本発明は、円すいころ軸受及び円筒ころ軸受に対してより好適であり、その中でも円すいころ軸受に対して特に好適である。
また、本実施形態では、ショットブラスト加工により内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面仕上げを行なっているが、ショットピーニング加工により表面仕上げを行なっても良い。
次に、円すいころ軸受を種々の回転速度で回転させて、その際のトルクを測定した。まず、このトルク試験に用いた試験機の構造を、図2を参照しながら説明する。
試験機20は、縦型内輪回転式の試験機である。試験機20では、支持軸受23に回転自在に支持された主軸24の端部24aは、試験軸受としての円すいころ軸受26の内輪26aに内嵌されている。内輪26aの外周面にはつば26dが形成されており、円すいころ26bに対して滑り接触を行う。内輪26a及び円すいころ26bと共に円すいころ軸受26を構成する外輪26cは、本体部28に内嵌されている。本体部28の軸方向上端面には静圧軸受31が設けられており、その上面にはアキシアル荷重が付与される。
また、本体部28の側面には棒材34を介してロードセル33が接続されており、本体部28に掛かる動摩擦トルクがロードセル33により検出される。さらに、本体部28には、円すいころ軸受26の転がり接触面及び滑り接触面に外部から潤滑油を供給するための通路36が形成されている。また、転がり接触面及び滑り接触面の温度を検出する熱電対38が、本体部28の側面から取り出されている。
上記構成を有する試験機20では、アキシアル荷重、ラジアル荷重、回転速度、潤滑油量を任意に変えて試験することができ、回転中の動摩擦トルク及び前記接触面の温度上昇を同時に測定することができる。
このような試験機20に、大つば5aの大つば面6aにショットブラストを施した内輪1、或いは大端面3aにショットブラストを施した円すいころ3を備える円すいころ軸受を試験軸受として装着し、以下の条件でトルク試験を行った。
(トルク試験の条件)
試験軸受の呼び大きさ:内径40、外径60
アキシアル荷重:4000N
ラジアル荷重:0N
回転速度 :0〜3000rpm
潤滑油 :ISO粘度グレードがISO VG32である鉱油
潤滑油量 :500ml/min
潤滑油温度 :50±5℃
(予備試験の条件)
アキシアル荷重:7000N
ラジアル荷重:25000N
回転速度 :0〜3000rpm
潤滑油 :ISO粘度グレードがISO VG32である鉱油(油浴試験)
潤滑油温度 :50±5℃
トルク測定に用いた軸受は、上記の予備試験の条件で500時間試験を行なった軸受を用いた。この理由は、ショットブラスト加工を行なった内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの経時変化を見極めるためである(ただ単に、トルク試験の条件で行なっても、ショットブラスト加工を行なった面の優劣はつかない)。なお、トルクの測定を行う前に、3000rpmで1時間以上回転させる慣らし運転を行い、十分にトルクが安定したことを確認した。また、軸受の個体差の影響を排除するため、以下のような手順でトルク試験を行った。すなわち、前記通常の円すいころ軸受に対して慣らし運転を行い、トルク試験(ショットブラスト処理前の軸受のトルク試験)を行った。その後、内輪のつばのうち、円すいころ3の小端面3bに摺接するつばを切除して円すいころを取り出した。そして、大つば5aの大つば面6a、或いは円すいころ3の大端面3aにショットブラストを施した後、先ほどの軸受に再度組み込んで再び慣らし運転を行い、トルク試験(ショットブラスト処理後の軸受のトルク試験)を行った。
結果を図3のグラフに示す。このグラフのころ軸受は、24個の円すいころ3を使用し、円すいころ3の大端面3a、小端面3bにショットブラスト加工を行なっている。このグラフから、ショットブラスト処理後の軸受は、処理前の軸受に比べて、低速回転域(250rpm)のトルクが10〜80%低減していることが分かる。
また、試験条件は上記と同一とし、材質、形状及び粒径が異なる投射材を使用して大つば5aの大つば面6a、或いは円すいころ3の大端面3aにショットブラストを施し、大つば面6a、或いは大端面3aを所定の表面形状(表面粗さRa、とがり度合いRku、ゆがみ値Rsk)とした円すいころ軸受を用いたトルク結果を表1に記載する。
ここで、トルク測定に用いた軸受は、円すいころ3の数を24個,12個,8個及び6個とすることで、大端面3a及び大つば面6aの接触面積の割合を変化させている。
例えば、実施例1に示すように、円すいころ3の数が24個の場合には、大端面3a(表1のころ頭部):大つば面6a(表1のつば部)=2.2:1.0である。この場合には、大端面3aの接触面積が大つば面6aの接触面積と比較して大きいので、大端面3aにショットブラスト加工を行なう。
また、実施例2に示すように、円すいころ3の数が6個の場合には、大端面3a(表1のころ頭部):大つば面6a(表1のつば部)=0.55:1.0である。この場合には、の接触面積が大端面3aの接触面積と比較して大きいので、大つば面6aにショットブラスト加工を行なう。
また、ショットブラストを行なうことで寿命の低下が懸念されるので、下記の条件でクリーンはくり寿命試験を行なった。
(クリーンはくり寿命試験の条件)
試験軸受の呼び大きさ:内径40、外径60
アキシアル荷重:5000N
ラジアル荷重:20000N
回転速度 :3000rpm
潤滑油 :ISO粘度グレードがISO VG32である鉱油
潤滑油量 :油浴潤滑
潤滑油温度 :80±5℃
表1で示した実施形態と比較例の一部のものについて、ワイブル分布の結果から実施例1の基本定格寿命L10を100とした場合の寿命比を、表1の右端に示した。
Figure 0005927960
表1から回転速度によりトルク低減率は異なるが、大つば面6aと大端面3aの接触面積を比較して接触面積が大きい方にショットブラスト加工を行い(大つば面6aが大きい場合には、大つば面6a及び小つば面6bにショットブラスト加工を行い、大端面3aが大きい場合には、大端面3a及び小端面3bにショットブラスト加工を行い)、接触面積が大きい面(大つば面6aと大端面3aの一方)の表面粗さ(Ra,ring)が、0.05μm以上0.25μm以下に設定され、接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の中心線に対する上下のとがり程度を示すとがり度合い(Rku,ring)が3以上7以下に設定され、接触面積が大きい方の面積をAbとし、接触面積が小さい方の面積をAsとするとAb/As≧1.35の関係とし、表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)が−1.5以上−0.1以下に設定され、0.1≦Ra,ring/Ra,roller≦1.0に設定され、投射材は、多角形状の炭化けい素(SiC)であり、投射材の大きさは10μm以上100μm以下に設定され、投射材の投射速度は50m/sec以上であり、投射材の投射圧力が0.1MPa以上0.9MPa以下であり、内輪1及び外輪2の間の軸受内部空間に封入されている潤滑剤の基油を1000℃における動粘度が8mm/s以下のものが使用されている場合に、トルク低減率が減少し、クリーンはくり寿命も向上することがわかる。
次に、本発明に係る第2実施形態の円すいころ軸受について説明する。
本実施形態では、内輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの一方に、研磨加工による表面仕上げが行なわれている。
本実施形態の研磨加工による表面仕上げは、図4に示すように、アヤメ模様状に多方向性に延在した研磨キズを形成する。
この多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行なうことで、大つば面6a及び円すいころ3の大端面3a、小つば面6b及び小端面3bのすべり摩擦抵抗を小さくし、円すいころ軸受の起動トルクを低くするようにしている。
そして、大つば面6aと大端面3aの接触面積を比較し、接触面積が大きい方に、多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行なっている。
ここで、内輪1の大つば面6aに表面仕上げを行う場合には、回転砥石の回転軸を揺動させながら大つば面6aに接触させることで、多方向性の研磨キズを形成する。
接触面積が大きい方に多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行なうことで、すべり摩擦抵抗を小さくするという効果が持続しやすい。
そして、接触面積が大きい方のみに多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行なっているので、表面仕上げ処理に要する時間を短くし、低コストで量産性を高くすることができる。
また、内輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの大きい方の接触面積をAbとし、小さい方の接触面積をAsとすると、Ab/As≧1.35の関係とすることが好ましい。
なお、内輪1の大つば面6a及び小つば面6bに多方向性の研磨キズが形成された表面仕上げを行なう場合には、大つば面6a及び小つば面6b囲まれている軌道面には、多方向性の研磨キズが形成された表面仕上げを行なわない。内輪1の軌道面に多方向性の研磨キズが形成された表面仕上げを行なわない理由は、クリーン寿命(潤滑剤に水や異物が混入しないクリーンな条件下での寿命)が低下するおそれがあるからである。
内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面粗さ(Ra,ring)は、0.05μm以上0.25μm以下に設定されていることが好ましい。表面粗さ(Ra,ring)が0.05μmを下回ると、相手部材との間の油溜まりの保持能力が低下するおそれがある。一方、表面粗さ(Ra,ring)が0.25μmを上回ると、音響の上昇し、油膜厚さが小さくなって焼きつきのおそれがある。
また、内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面粗さの分布曲線の中心線に対する上下のとがり程度を示すとがり度合い(Rku,ring)は、3以上7以下に設定されていることが好ましい。
また、内輪1の大つば面6a及び小つば面6b、或いは円すいころ3の大端面3a及び小端面3bの表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)は、−1.6以上−0.4以下に設定されていることが好ましい。ゆがみ値(Rsk,ring)が−0.4を上回ると、油溜まりの効果を発揮することができない。一方、ゆがみ値(Rsk,ring)が−1.6を下回る表面形状を形成するためにはコストアップが上昇するおそれがある。
さらに、内輪1及び外輪2の間の軸受内部空間に封入されている潤滑剤の基油は、1000℃における動粘度が8mm/s以下のものが使用されている。動粘度が8mm/sを上回ると、輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの部材のうちの粗い部材が粗くない部材を摩耗するのが妨げられるので、すべり摩擦抵抗が大きくなり、低速回転域のトルクが高くなる。これに対して、動粘度が8mm/s以下では、輪1の大つば面6a及び小つば面6bと、円すいころ3の大端面3a及び小端面3bとの部材のうちの粗い部材が粗くない部材を摩耗することですべり摩擦抵抗が小さくなり、低速回転域のトルクを低くする。
そして、試験条件は第1実施形態と同一とし、大つば5aの大つば面6a、或いは円すいころ3の大端面3aに多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行ない、大つば面6a、或いは大端面3aを所定の表面形状(表面粗さRa、とがり度合いRku、ゆがみ値Rsk)とした円すいころ軸受を用いたトルク結果及び寿命試験を表2に記載する。
なお、寿命試験は、第1実施形態と同様のクリーンはくり寿命試験である。
Figure 0005927960
表2から回転速度によりトルク低減率は異なるが、大つば面6aと大端面3aの接触面積を比較して接触面積が大きい方に多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行ない(大つば面6aが大きい場合には、大つば面6a及び小つば面6bに多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行ない、大端面3aが大きい場合には、大端面3a及び小端面3bに多方向性の研磨キズを形成した表面仕上げを行ない)、接触面積が大きい面(大つば面6aと大端面3aの一方)の表面粗さ(Ra,ring)が、0.05μm以上0.25以下に設定され、接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の中心線に対する上下のとがり程度を示すとがり度合い(Rku,ring)が3以上7以下に設定され、接触面積が大きい方の面積をAbとし、接触面積が小さい方の面積をAsとするとAb/As≧1.35の関係とし、表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)が−1.6以上−0.4以下に設定され、内輪1及び外輪2の間の軸受内部空間に封入されている潤滑剤の基油を1000℃における動粘度が8mm/s以下のものが使用されている場合に、トルク低減率が減少し、クリーンはくり寿命も向上することがわかる。
1…内輪、2…外輪、3…円すいころ、3a…大端面、3b…小端面、4…保持器、5a…大つば、5b…小つば、6a…大つば面、6b…小つば面

Claims (2)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配置された複数のころと、前記内輪及び前記外輪の一方に形成したつばと、を備えたころ軸受において、
    前記つばのつば面の接触面積と、前記つば面に接触する前記複数のころのころ端面の接触面積とを比較し、前記接触面積が大きい面に、アヤメ模様状のキズ、若しくは凹部を持ち、前記接触面積が大きい面の表面粗さ(Ra,ring)0.05μm以上0.25μm以下であり、前記接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の中心線に対する上下のとがり程度を示すとがり度合い(Rku,ring)、3以上7以下であり、前記つばのつば面と、前記複数のころの前記ころ端面とのうち前記接触面積が大きい方の面積をAbとし、前記接触面積が小さい方の面積をAsとすると、Ab/As≧1.35の関係としていることを特徴とするころ軸受。
  2. 前記接触面積が大きい面にアヤメ模様状の前記キズをもつ場合には、前記接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)が−1.6以上−0.4以下であり、
    前記接触面積が大きい面に前記凹部を持つ場合には、前記接触面積が大きい面の表面粗さの分布曲線の対称性を示すゆがみ値(Rsk,ring)が−1.5以上−0.1以下に設定していることを特徴とする請求項1記載のころ軸受。
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