JP2013227345A - ハーフエステルの合成方法 - Google Patents

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Satomi Niwayama
聡美 庭山
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Abstract

【課題】ハーフエステルの合成方法の提供。
【解決手段】本発明は、エステルを加水分解する方法を提供するものであり、本発明が提供する方法によれば、第1のエステル部分及び第2のエステル部分を有する化合物Aについて、第1のエステル部分がカルボキシル部分に変換され、第2のエステル部分がそのまま残るように、Mの組成を有する塩基と、液状媒体中において反応させることにより行われる。なお、ここにおいて液状媒体中における比率[Xk−]:[A]が1.6以下であり、またk>0である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、一般的にはエステル類の化学合成方法に関し、詳細にはジエステルからハー
フエステルを合成する方法に関する。
ハーフエステルは化学合成において非常に汎用性の高い合成構造単位であり、広範な最
終化合物に対する有用な合成中間体である。ハーフエステル自身は、対称ジエステルの選
択的モノ加水分解反応により、都合良く合成することができる。対称ジエステルの多くは
安価な原料から容易に調製できるものであり、販売価格に見合った種々の品質のものが市
販されており、ハーフエステルを中間体として経由する合成法は、経済的且つ汎用的な付
加価値を高めるものである。
ジエステルからハーフエステルを合成する確立された方法としては、鹸化及びアルカリ
加水分解の両者が存在する。しかしながら、この方法を対称ジエステルからハーフエステ
ルの調製に適用すると、出発原料であるジエステルにおける二つの同一の官能基を化学的
に区別することが困難であることから、複雑化することとなる。その結果、この方法を適
用した場合には、一般的には、ジカルボン酸、モノカルボン酸、及び出発原料であるジエ
ステルの複雑な混合物が生成することとなってしまう。
ジカルボン酸や他の反応副生成物の生成による明白な収率ロスとはまた別に、化学的類
似性からみて、これら反応副生成物から目的とするハーフエステルを分離することは困難
である。事実、最近までは、文献に報告されている対称ジエステルからハーフエステルを
合成する唯一の有効な方法は、酵素を用いた方法であった。しかしながら、かかる合成方
法は、その反応性を予想することができない点で望ましいものとはいえない。
更に最近になって、対称ジエステルからハーフエステルを製造する新たな合成ルートが
提案されている。この方法は、ジエステルの選択的な加水分解と、それに引き続く酸性化
によるものであり、副生成物の生成が比較的無く、溶液中で比較的高収率でハーフエステ
ルを得る方法である(非特許文献1:S.ニワヤマ、「対称ジエステルの効率的、選択的
モノ加水分解」、J.Org. Chem., 2000, 5834頁を参照)。
この方法は、以下の合成スキームIに要約することができる。
(スキームI)
Figure 2013227345
S.ニワヤマ、「対称ジエステルの効率的、選択的モノ加水分解」、J. Org.Chem., 2000, 5834頁
本発明の一つの態様として、ジエステル類またはポリエステル類を加水分解して、カル
ボキシル部分及びエステル部分の両者を有するハーフエステル類または他の化合物を製造
する方法が提供される。本方法は、第1及び第2のエステル部分を有する化合物Aに適用
される。当該化合物Aは、第1のエステル部分がカルボキシル部分に変換され、第2のエ
ステル部分がそのまま残るように、Mの組成を有する塩基と液状媒体中で反応する
ことにより行われる。なお、ここにおいて、液状媒体中における比[Xk−]:[A]ま
たはXのAに対する当量数が1.6以下であり、またXアニオンの価数をkとしたときk
>0である。
本発明の他の態様として、エステルの加水分解方法が提供され、当該方法は、第1及び
第2のエステル部分を有する化合物において、化合物のモル当量数に対する塩基のモル当
量数の比が1.6以下で、当該化合物を塩基と反応させることからなる。
本発明の更なる態様として、エステルの加水分解方法が提供され、当該方法は、第1及
び第2エステル部分を有する化合物を、93容量%より多い水を含む水性媒体中で当該化
合物を塩基と反応させることからなる。
本発明の更に別の態様として、エステルの加水分解方法が提供され、当該方法は、(a
)第1及び第2のエステル部分を有する第1化合物に対して、(b)当該第1化合物のモ
ル当量数に対する塩基のモル当量数の比が3より大きくなるように水性媒体中で当該化合
物を塩基と反応させること、及び(c)総反応時間が90分以下となるように反応を終了
させることからなる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
第1及び第2のエステル部分を有する第1化合物Aに対して、当該化合物を液体媒体中
においてM の組成を有する塩基と反応させることにより、第1のエステル部分がカ
ルボキシル部分に変換され、第2のエステル部分がそのまま残る第2の化合物を得ること
を特徴とするエステルの加水分解方法であって、液状媒体中における比[X k− ]:[A
]が1.6以下であり、またk>0である、エステルを加水分解する方法。
(項目2)
X=OHであり、[A]:[OH ]が1.6以下である項目1に記載のエステルを
加水分解する方法。
(項目3)
[A]:[OH ]が約0.5〜1.6の範囲内である項目2に記載のエステルを加
水分解する方法。
(項目4)
[A]:[OH ]が約0.7〜1.5の範囲内である項目2に記載のエステルを加
水分解する方法。
(項目5)
[A]:[OH ]が約0.8〜1.4の範囲内である項目2に記載のエステルを加
水分解する方法。
(項目6)
[A]:[OH ]が約0.9〜1.3の範囲内である項目2に記載のエステルを加
水分解する方法。
(項目7)
[A]:[OH ]が約1.0〜1.2の範囲内である項目2に記載のエステルを加
水分解する方法。
(項目8)
Mが金属である項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目9)
Mがアルカリ金属である項目8に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目10)
塩基がLiOH、NaOH、KOH及びCsOHからなる群から選ばれるものである請
求項1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目11)
塩基がNaOHである項目10に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目12)
塩基がKOHである項目10に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目13)
k=1である項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目14)
化合物Aが以下の化学式:
Figure 2013227345

式中、Lは連結基であり、R 及びR は独立して置換又は非置換アルキル基、アリー
ル基、またはアルキルアリール基の群から選択される基を表す、
で示される項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目15)
式中、R 及びR が同一である項目14に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目16)
式中、Lが−[CH −構造を有する連結基であり、nは整数である項目14に
記載のエステルを加水分解する方法。
(項目17)
nが1〜約50の範囲内である項目16に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目18)
nが1〜約20の範囲内である項目16に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目19)
nが1〜約10の範囲内である項目16に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目20)
nが1〜5の範囲内である項目16に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目21)
連結基LがN、O及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む
連結基である項目15に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目22)
式中、R はメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基からなる群から選ばれる請
求項15に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目23)
式中、R が1〜20の炭素原子を有するアルキル基である項目14に記載のエステ
ルを加水分解する方法。
(項目24)
化合物Aがジエステルであり、当該化合物を塩基と反応させることからなる、次式:
Figure 2013227345

で示される化合物Bであるモノエステルを得る項目14に記載のエステルを加水分解す
る方法。
(項目25)
化合物Aがマロン酸ジメチルである項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目26)
化合物Bがマロン酸モノメチルである項目24に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目27)
化合物Aがマロン酸ジエチルである項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目28)
化合物Bがマロン酸モノエチルである項目27に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目29)
化合物Aがマロン酸ジプロピルである項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目30)
化合物Bがマロン酸モノプロピルである項目29に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目31)
化合物Aがマロン酸ジブチルである項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目32)
化合物Bがマロン酸モノブチルである項目31に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目33)
化合物Aを15℃未満の温度Tで塩基と反応させる項目1に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目34)
化合物Aを10℃未満の温度Tで塩基と反応させる項目1に記載のエステルを加水分
解する方法。
(項目35)
化合物Aを5℃未満の温度Tで塩基と反応させる項目1に記載のエステルを加水分解
する方法。
(項目36)
化合物Aを−15℃〜15℃の温度Tで塩基と反応させる項目1に記載のエステルを
加水分解する方法。
(項目37)
化合物Aを−10℃〜10℃の温度Tで塩基と反応させる項目1に記載のエステルを
加水分解する方法。
(項目38)
化合物Aを−5℃〜5℃の温度Tで塩基と反応させる項目1に記載のエステルを加水
分解する方法。
(項目39)
第1及び第2のエステル部分を有する化合物を、当該化合物のモル当量数に対する塩基
のモル当量数の比が1.6以下である塩基と反応させることを特徴とするエステルを加水
分解する方法。
(項目40)
化合物が直鎖状ジエステルである項目39に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目41)
反応によりハーフエステルが製造される項目40に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目42)
反応を水性媒体中で行う項目39に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目43)
反応を水及び、THF、CH CN、CH Cl 、メタノール、エタノール、1−プ
ロパノール、2−プロパノール及びDMSOからなる群から選ばれる第2物質を含む媒体
中で行われる項目39に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目44)
第2物質がTHF及びCH CNから選ばれるものである項目43に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目45)
混合前の反応媒体の成分の容量によって測定される第2物質の容量パーセントが7%未
満である項目43に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目46)
混合前の反応媒体の成分の容量によって測定される第2物質の容量パーセントが5%未
満である項目43に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目47)
混合前の反応媒体の成分の容量によって測定される第2物質の容量パーセントが3%未
満である項目43に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目48)
混合前の反応媒体の成分の容量によって測定される第2物質の容量パーセントが実質的
に100%である項目43に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目49)
第1及び第2のエステル部分を有する化合物を、93容量%より多い水を含む水性媒体
中で当該化合物を塩基と反応させることを特徴とするエステルを加水分解する方法。
(項目50)
当該媒体が95容量%より多い水を含むものである項目49に記載のエステルを加水
分解する方法。
(項目51)
当該媒体が97容量%より多い水を含むものである項目49に記載のエステルを加水
分解する方法。
(項目52)
当該媒体が実質的に100容量%の水を含むものである項目49に記載のエステルを
加水分解する方法。
(項目53)
化合物が直鎖状ジエステルであり、当該化合物を塩基と反応させ、ハーフエステルを製
造することからなる項目49に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目54)
化合物が環状ジエステルであり、当該化合物を塩基と反応させ、ハーフエステルを製造
することからなる項目49に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目55)
化合物のモル当量数に対する塩基のモル当量数の比が1.6以下である項目49に記
載のエステルを加水分解する方法。
(項目56)
第1及び第2のエステル部分を有する第1化合物に対して、
水性媒体中で当該第1化合物のモル当量数に対する塩基のモル当量数の比が3より大き
くなるような塩基と反応させること;および
総反応時間が90分以下となるように反応を終了させること、
からなることを特徴とするエステルを加水分解する方法。
(項目57)
当該第1化合物のモル当量数に対する塩基のモル当量数の比が5より大きいものである
項目56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目58)
当該第1化合物のモル当量数に対する塩基のモル当量数の比が7より大きいものである
項目56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目59)
当該第1化合物のモル当量数に対する塩基のモル当量数の比が10より大きいものであ
る項目56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目60)
当該第1化合物が環状化合物である項目56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目61)
当該第1化合物が二環式化合物である項目56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目62)
当該第1化合物が二環式ジエンである項目61に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目63)
当該第1化合物が環状ジエステルである項目56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目64)
総反応時間が60分以下である項目56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目65)
総反応時間が約10分〜約60分の範囲内である項目56に記載のエステルを加水分
解する方法。
(項目66)
総反応時間が約20分〜約60分の範囲内である項目56に記載のエステルを加水分
解する方法。
(項目67)
反応によりハーフエステルである第2化合物を製造することからなる項目56に記載
のエステルを加水分解する方法。
(項目68)
第1のエステル部分と第2のエステル部分が隣接する第1及び第2の炭素原子に結合し
ており、当該第1及び第2の炭素原子は互いに二重結合で結合しているものである項目
56に記載のエステルを加水分解する方法。
(項目69)
第1及び第2の炭素原子が環構造の一部である項目68に記載のエステルを加水分解
する方法。
(項目70)
環構造が二環式構造の一部である項目69に記載のエステルを加水分解する方法。
ジエステルのモノ加水分解反応の時間依存性を示すグラフである。
ジエステルのモノ加水分解反応の時間依存性を示すグラフである。
上記した合成スキームIに要約された方法は、対称ジエステルから様々なハーフエステ
ルを製造する非常に有効な合成方法であり、上記の非特許文献1において実施されている
ように、本方法は、ある種のハーフエステルに対して最適の収率が得られることが見出さ
れている。例えば、上記の非特許文献1では、ビシクロヘプタジエンジメチルカルボキシ
レート及びビシクロヘプタジエンジエチルカルボキシレートの各ハーフエステルの製造に
おいて、99%以上の高い収率を報告している。しかしながらその一方で、本非特許文献
1にあっては、コハク酸ジメチルのモノ加水分解によって形成されるモノエステルの生成
はたった70%の収率であることを報告している。さらに上記非特許文献1において実施
されているように、当該方法がマロン酸モノメチル等のある種の他のハーフエステルの合
成に適用した場合には、はるかに低い収率でしか得られておらず、それはわずか22%で
ある。
上記の合成ルートにおけるある種のモノエステルの生成収率が、反応溶液中における塩
基に対する出発原料のジエステルの比を調整すること、特に、溶液中の塩基の当量数(あ
るいは濃度)に対する出発原料のジエステルの当量数(あるいは濃度)の比を上げること
で、著しく向上することを見出した。
したがって、例えば、この方法を用いることで、マロン酸ジメチルに対応するハーフエ
ステルであるマロン酸モノメチルが、合成スキームIに要約された方法で得られるよりも
実質的に高い収率(THF溶媒中では84%、アセトニトリル溶媒中では85%)で得ら
れている。これらのパラメータを最適化することで、その収率はさらに向上することが期
待される。
また、あるケースの場合には、本発明が開示する合成方法論により、従来得られるもの
より、より安定な形態の目的化合物を製造することができることが判明した。したがって
、例えば、文献ではマロン酸モノメチルとマロン酸モノエチルの両者は不安定であると報
告されている(事実、マロン酸モノメチルは対応するカリウム塩として、しばしば市販さ
れている)が、驚くべきことに、本発明が開示する方法にしたがって合成すれば、これら
の化合物は実質的に安定性が向上することが判明した。
本発明が開示する方法は、以下の合成スキームIIに記載した方法であると理解された
い。その合成スキームにおいて理解されるように、本発明の方法は、第1及び第2のエス
テル部分を有する化合物Aに適用されるものである。当該化合物Aを、第1のエステル部
分がカルボキシル部分に変換され、第2のエステル部分はそのまま残るように、M
の組成を有する塩基と液状媒体中で反応させる。液状媒体中における比[Xk−]:[A
](または場合によっては、Aに対する塩基の当量数)は、典型的には1.6以下であり
(少なくとも直鎖状ジエステルの場合)、またk>0である。本反応は、その後酸性化す
ることで、モノエステルが得られる。
(スキームII)
Figure 2013227345
当該方法は、一般的に、第1及び第2のエステル基を有する化合物に適用することがで
き、またエステル基の一つをカルボン酸基に変換するのに使用することができる。第1及
び第2のエステル基は同一または異なっていてもよい。したがって、R及びRは同一
または異なっていてもよく、例えば、置換または非置換アルキル基、アリール基またはア
ルキルアリール基からなる群から独立的に選択されるものであってもよい。ある実施態様
においては、出発原料のエステルは2個より多いエステル基を有していてもよい。しかし
ながら、本発明が提供する方法は、特に対称ジエステルからハーフエステルを合成するの
に有用であることを理解されたい。これは上述したように、ハーフエステルを調製する従
来の方法を対称ジエステルに適用すると、当該物質における二つのエステル基を化学的に
区別しがたいことから、一般的には低収率となってしまうからである。そのようなハーフ
エステルとしては、例えば、マロン酸モノエチル、マロン酸モノプロピル、マロン酸モノ
ブチルのようなマロン酸モノアルキルエステル、並びにアジピン酸モノアルキルエステル
等が挙げられる。
連結基Lは種々の鎖長を有するものであってよく、ある実施態様においては、例えばN
、O、またはSなどの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。当該連結基は、種々の官
能基、芳香族基または不飽和基を包含していてもよく、これらの基は連結基の主鎖に含ま
れていてもよく、または有機連結基中の1以上の水素原子と置換されていてもよい。ある
実施態様においては、Lは環式または多環式部分であってもよい。また、他の実施態様に
おいては、Lは直鎖状部分であってもよい。
好ましくは、Lは1〜10の炭素原子を含む連結基、または、式:−[CH−(
式中、nは整数である)の構造を有する連結基である。ある実施態様においては、nは非
常に大きいものであってもよく、例えば100より大きく、さらには1000より大きな
ものであってもよい。しかしながら、通常は、nは1〜50程度の範囲であり、好ましく
は、nは1〜20程度の範囲であり、さらに好ましくは、nは1〜10程度の範囲であり
、最も好ましくは、nは1〜5の範囲である。
本発明が提供する方法において用いられる塩基としては、好ましくは1以上の水酸基を
有するものであり、さらに好ましくは金属水酸化物である。最も好ましくは、塩基として
は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、又は水酸化セシウムのような
アルカリ金属水酸化物である。しかしながら、ある実施態様においては、2価あるいは多
価金属水酸化物も用いることができる。その例としては、水酸化カルシウム、水酸化バリ
ウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウムなどである。また他の実施態様におい
ては、水酸化アンモニウムやある種の有機水酸化物などのような非金属水酸化物であって
もよい。
本発明の方法において、塩基は、好ましくは反応溶液中に少量ずつ添加される。そのよ
うな手段としては、個別かつ複数のバッチに塩基を加える方法、連続的に塩基を滴下して
加える方法、またはシリンジのような器具を用いて反応容器内にゆっくりと投入する方法
で行うことができる。塩基の添加にあたっては、反応溶液を磁気攪拌棒(マグネチックス
ターラー)による攪拌、或いは他の適切な手段によって継続的に攪拌するのがよい。
上記したように、液状媒体中における比[Xk−]:[A](または場合によっては、
Aに対する塩基の当量数)は、少なくとも直鎖状のジエステルの場合には、典型的には1
.6以下である。一般的に、この比は、約0.7〜約1.5の範囲内であり、より好まし
くは約0.8〜約1.4の範囲内であり、さらに好ましくは約0.9〜約1.3の範囲内
であり、最も好ましくは約1.0〜約1.2の範囲内である。
環状エステル、または炭素−炭素結合の回転が阻害されているか、若しくは立体的な障
害のあるエステルの場合(特に、エステル部分が、その様な結合の炭素原子に隣接して結
合している場合)、またはハーフエステル若しくは部分加水分解エステルが塩基存在下に
あって比較的安定である場合には、加水分解反応に際して、より多量の塩基を用いてもよ
い。そのような実施態様の場合、出発原料のエステルまたはジエステルのモル当量数に対
する塩基のモル当量数の比は、直鎖状ジエステルの場合よりも大きなものであってもよい
。その様な実施態様において用いる塩基の好ましい量は、塩基の種類、反応速度、塩基存
在下におけるハーフエステル又は部分加水分解エステルの相対的な安定性、用いる反応媒
体、反応媒体の温度などの要因に依存する。しかしながら、場合によっては、出発原料の
エステルまたはジエステルのモル当量数に対する塩基のモル当量数の比は、例えば、3よ
り大きく、5より大きく、7より大きく、または約10よりも大きくてもよい。
反応時間もまた、多くの要因、例えば塩基の種類、反応速度、塩基存在下におけるハー
フエステル又は部分加水分解エステルの相対的な安定性、用いる反応溶媒、反応溶媒の温
度等の要因に依存して変化させてもよく、反応は、所望の反応時間経過後に終了させるこ
とができる。しかしながら、一般的には、反応時間は90分以下であり、好ましくは約6
0分以下である。さらに好ましくは、反応時間は約10分〜約60分の範囲内であり、最
も好ましくは、反応時間は約20分〜約60分の範囲内である。
反応溶液は、塩基を添加する際、またはその後しばらくの間のいずれかの間、冷却され
るのが好ましい。これは例えば、反応容器を氷浴のような冷却浴に浸すことで行うことで
きる。一般的に、反応溶液は室温未満の温度、好ましくは15℃未満、より好ましくは1
0℃未満、さらに好ましくは5℃未満に冷却される。好ましくは、反応溶液は約−15℃
〜約15℃の範囲内の温度に冷却され、より好ましくは約−10℃〜約10℃の範囲内の
温度に、さらに好ましくは約−5℃〜約5℃の範囲内の温度に冷却される。最も好ましく
は、反応溶液は約0℃に冷却される。しかしながら、特別な場合における最適な温度は、
反応物質、溶媒系又は液状媒体の選択、所望の生成物などの要因に依存しうることを理解
されたい。
用いる反応溶液としては、好ましくはTHFと塩基の水溶液との混合物である。しかし
ながら、他の溶媒、共溶媒または液状媒体を上記混合物の代わりに、またはそれと組み合
わせて用いてもよいことを理解されたい。したがって、例えば反応は、THF、CH
N、CHCl、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、D
MSO及び前記した様々な混合物を含んでなる液状媒体中で行うことができる。ある実施
態様においては水を唯一の溶媒又は液状媒体として用いることができ、その様な実施態様
においては、特に環境に優しい化学の適用分野において望ましいものである。一般的に、
反応媒体は少なくとも70容量%の水を含むことができる。好ましくは、反応媒体は少な
くとも80容量%の水を含んでなり、さらに好ましくは少なくとも90容量%の水を含ん
でなり、最も好ましくは少なくとも約93容量%の水を含むことができる。しかしながら
、ある実施態様においては、水の容量をさらに高くすることができ、その様な実施態様に
おいては、反応媒体は少なくとも約97容量%の水を、また少なくとも約99容量%の水
を、または実質的に100容量%の水を含むことができる。
塩基との反応が完了した後、反応溶液は酸性化される。本発明が提供する方法における
種々の実施態様において、その目的のためには様々な酸を用いてもよいが、好ましくは、
HClを用いて行われる。また、その様な他の酸としては、特に限定されないが、硫酸、
硝酸及び種々のカルボン酸を挙げることができる。
これらの材料の調製は特に限定されないが、本発明が提供する方法は、特にマロン酸、
アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、及び他の直鎖状ジエステルのモノエステルを調製す
る際に有用であるが、これに限定されない。下記の合成スキームIIIには、本発明が提
供する方法によるマロン酸モノメチルの合成例を説明し、また同様の方法により調製する
ことができる他のマロン酸モノエステルの化学構造を示した。
(スキームIII)
Figure 2013227345
以下に、限定する意図のない具体的な例を説明することにより、本発明が開示、提供す
る方法の特徴を説明する。
[比較例1]
この比較例は、S.ニワヤマ、「対称ジエステルの効率的、選択的モノ加水分解」、J.
Org.Chem., 2000, 65, 5834-5836頁に報告されている方法による、マロン酸モノメチル
の合成を説明するものである。
マロン酸ジメチル(1.2mmol)をTHF2mLに溶解し、水20mLを加えた。
反応混合物を氷水浴に浸し0℃に冷却した。薄層クロマトグラフィーにて出発原料のジエ
ステルの消費が検出されるまで、この反応混合物に0.25MのNaOH8mLを少量ず
つ攪拌しながら加えた。反応を約30〜60分間、同じ温度で攪拌することにより行い、
反応混合物を0℃で1MのHClで酸性とした。NaClにより飽和溶液とし、酢酸エチ
ルで3〜4回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。抽出溶媒を減圧濃縮し、酢酸エチルを
溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、ハーフ
エステルであるマロン酸モノメチルを22%の収率で得た。
[実施例1]
この実施例は、本発明の方法によるマロン酸モノメチルの合成を説明するものであり、
比較例1に対して反応収率の点における改善を説明するものである。
マロン酸ジメチル(159mg、1.20mmol)をTHF2mLに溶解し、水20
mLを加えた。反応混合物を氷水浴中で0℃に冷却した。この混合物に、表3に示す各当
量の0.25MのNaOH、KOH、またはLiOH水溶液を加えた。各々のケースにお
いて、塩基は攪拌しながら滴下して加えた。反応混合物を30〜60分間攪拌した後、0
℃で1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸エチルで抽出し(4回)、Na
SOで乾燥した。この抽出溶媒を減圧下で濃縮し、ヘキサン:酢酸エチル(3:1)
、次いで酢酸エチルを典型的な溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー
で精製し、マロン酸モノメチルを得た。収量は119mg(84%)であり、比較例1の
収率より62%向上した。
[実施例2〜9]
これらの実施例は、本発明の方法によるモノエステルを合成する際の溶媒系の影響を説
明するものであり、特にTHFの比率変化による反応収率への効果を説明する。
古典的な鹸化と、本発明におけるモノ加水分解反応の好ましい実施態様との間の顕著な
相違点は、反応媒体である。特に、従来の固体塩基とアルコール系媒体の使用に対するも
のとして、0℃にてTHF水溶液媒体中に、好ましい実施態様としてNaOH、またはK
OH水溶液を用いることにより、実質的により純粋な反応混合物を作り出すことができる
以上の観点から、本反応系における溶媒の影響について、THFの比率を変化させて検
討を行った。特に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,5−ジエン−2,3−ジカルボ
ン酸ジメチルの選択的モノ加水分解において(下記合成スキームIV)、共溶媒としての
THFの比率を下記表1に記載するように変更して、S.ニワヤマ、J. Org. Chem., 200
0, 65,5834-5836頁に報告されている全般的な条件を追試した。
表1に示した結果から明らかなように、THFの比率を7%未満としても、反応速度は
顕著には影響を受けていない。一方、THFの比率を増やすと、反応速度は著しく低下し
、収率が下がった。理論的な点は別にして、この結果はTHFの水への溶解性を反映する
ものと考えられ、THFの比率が上がるとカルボメトキシ基がNaOH水溶液に曝される
ことが減ることによるものと考えられる。
表1:環状ジエステルのモノ加水分解におけるTHF量(容量)の影響
Figure 2013227345
a:ハーフエステルの単離収率。回収されたジエステルはカッコ内に示す。
b:実験の部における手順Bによって得られる。
c:実験の部における手順Cによって得られる。
d:S.ニワヤマ、J.Org. Chem., 2000, 65, 5834頁において報告されているものと同
一条件。
(スキームIV)
Figure 2013227345
[実施例10〜16]
これらの実施例は、本発明の方法におけるモノエステルの合成に対する溶媒系の影響を
説明するものであり、特に、共溶媒の変化による収率及び反応速度への効果を説明する。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,5−ジエン−2,3−ジカルボン酸ジメチルの選
択的モノ加水分解において(下記、合成スキームV)、上記の実施例7と同様の7%共溶
媒と反応温度の一般的な条件を用いて、様々な共溶媒について検討を行った。その結果を
、以下の表2に示す。
これらの結果から明らかなように、水との混和性がほとんど無い塩化メチレンは著しく
反応速度を低下させるものであり、カルボアルコキシ基がNaOH水溶液に曝されること
が減る結果によるものであることが再び考えられた。この結果は、表1に示したように、
THFの割合を増やした場合と同様である。他方、水との混和性が小さい、或いはある程
度大きい共溶媒の他の検討では、反応速度は著しく変化していないようである。ハーフエ
ステルの単離収率は、THF、アセトニトリルあるいは共溶媒無しの場合が最も高く、ア
ルコールを共溶媒として用いた場合には若干低下した。これらの結果から、収率が低下し
たのは少量の対応する二価酸(ジカルボン酸)が形成したためか、及び/又は生成物を抽
出することが困難であるためであろうと考えられる。全体としては、本実施例において検
討された溶媒の中で、THF及びアセトニトリルが選択的モノ加水分解反応に対して最も
よい共溶媒であるといえる。
理論的な点は別にして、上記の結果と実施例2〜9の結果を共に考えると、(a)反応
混合物中で少量のTHF、またはアセトニトリルが多量の水に溶解し、それによって一つ
の水相を形成し、(b)ジエステルが第2相として反応に関与し、(c)水相とジエステ
ルとの間の接触面においてモノ加水分解が起きる、ということを示唆しているように見受
けられる。共溶媒としてのTHF、またはアセトニトリルの主たる役割は、反応媒体全体
にわたって、よりスムースに出発原料のジエステルを分散することであるように思われる
。この役割は出発原料のジエステルが固体である場合に特に有効である。
この溶媒効果を、同様にマロン酸誘導体のジエステルの選択的モノ加水分解に適用した
。その結果、THFの代わりにアセトニトリルを用いると、ハーフエステルの収率が若干
改善されることが判明した。
近年、水を媒体とする反応は、環境に優しい化学(グリーンケミストリー)における環
境に優しい反応として重要になりつつある。本発明が提供する反応は、非対称化反応に適
用される水を媒体とする反応の最初の例示であると考えられる。
表2:マロン酸ジメチルのモノ加水分解における共溶媒の影響
Figure 2013227345
a:ハーフエステルの単離収率。回収されたジエステルはカッコ内に示す。
b:実験の部における手順Bによって得られる。
c:実験の部における手順Cによって得られる。
d:S.ニワヤマ、J.Org. Chem., 2000, 65, 5834頁において報告されているものと同
一条件。
(スキームV)
Figure 2013227345
[実施例17〜25]
これらの実施例は、本発明が提供するタイプのモノ加水分解反応において、異なる当量
で用いる、異なる塩基の収率に対する効果を説明するものである。
マロン酸ジメチルの選択的モノ加水分解を、S.ニワヤマ、J. Org. Chem., 2000, 65,
5834-5836頁に報告されている条件にしたがって行ったところ、対応するハーフエステル
が22%しか得られなかった。理論的な点は別にして、この結果は出発原料のジエステル
の理想的な配座の欠如に加え、脱カルボキシル化と塩基の過剰使用による可能性があると
考えられる。そこで、マロン酸ジメチルのモノ加水分解(下記、合成スキームVI)にお
ける、様々なアルカリ金属水酸化物を、様々な量で用いた場合(1.2、1.0又は0.
8当量)における反応収率に対する効果を調査した。反応操作は、上記した方法と同様で
ある。上記と同様に、その結果を下記表3に塩基の種類、当量、反応時間としてまとめて
示す。
表3:塩基の収率への影響
Figure 2013227345
a:ハーフエステルの単離収率。回収されたジエステルの量はカッコ内に示す(%)。
(スキームVI)
Figure 2013227345
これらの結果が示すように、同等の選択性において、反応性はKOHを用いるとNaO
Hより若干高くなり、一方、LiOHは選択性、反応性共に若干低くなった。これらの反
応において、ハーフエステル及びジエステルの単離収率によれば、二価酸(マロン酸)が
少量形成される可能性はあるが、処理段階では抽出されなかった。この結果は、この化合
物の小さな疎水性部分によるものかもしれないが、本反応の利点の一つを示すものである
。本モノ加水分解反応の生成物であるマロン酸モノメチル(実施例54参照)は、これら
の中でも最も多く有機合成に適用される。この方法は、わずか約1時間の反応時間で、マ
ロン酸モノメチルの非常に実用的な合成であるように見受けられ、モノ加水分解の合成的
有用性を説明するものである。
[実施例26〜37]
これらの実施例では、より高濃度でのマロン酸ジメチルのモノ加水分解に対する共溶媒
と塩基のタイプ及び当量数の効果を説明するものである。
実施例37は、以下の手順(合成スキームVII)にしたがって実施した。
マグネチックスターラーを備えた1Lの一口フラスコに、158.33g(1.2mo
l)のマロン酸ジメチルを入れ、10mLのアセトニトリルを加えてマロン酸ジメチルを
溶解させた。溶液を1分間攪拌した後、反応混合物を氷水浴で0℃に冷却した。この混合
物に、100mLの水を加え、30分間攪拌した。この反応混合物に、5MのKOH水溶
液(1.2mol)の240mLを、滴下ロートを用いて攪拌しながら15分間に渡って
滴下して加えた(5MのKOH溶液は0.5Mシュウ酸20mLで滴定した。シュウ酸は
マリンクロット社(ミズーリ州、ヘーゼルウッド)から購入した)。添加が完了した後、
反応混合物は更に60分間攪拌した。攪拌中は、ストッパーで覆いをして、氷水浴中に保
持した。
反応混合物を、氷水浴中で12MのHCl水溶液150mLで酸性とし、NaClで飽
和化させ、1Lの分液ロートを用いて500mLの酢酸エチルで5回抽出した。抽出液を
飽和NaCl水溶液500mLで洗浄した。酢酸エチル抽出液を約100gの無水硫酸ナ
トリウムで乾燥した。乾燥剤を重力濾過で濾別した後、酢酸エチル溶液をロータリーエバ
ポレータで濃縮し、さらに2.5mmHgの減圧下で蒸留した。沸点91〜92℃の画分
を集め、無色オイルとしてマロン酸モノメチルを得た。収率は114.77g(81%)
であり、45℃でマロン酸ジメチル4%を回収し、マロン酸1%が検出された。
実施例26〜36は、実施例37の一般的な手順を用い、また以下の表4に記した部分
的に変更された反応条件を用いて実施した。
表4:より高濃度条件下でのマロン酸ジメチルの加水分解
Figure 2013227345
(スキームVII)
Figure 2013227345
[実施例38〜53]
これらの実施例は、塩基としてNaOHまたはKOH水溶液を用いてマロン酸ジアルキ
ル及びその誘導体の幅広い範囲において、本発明の方法が適用されることを説明するもの
である。
実施例1の方法を、下記表5に示す様々なジエステルを用いて繰り返した。その結果を
表5に要約した。なお、これらのジエステルの大部分は市販されている。また、いくつか
のジエステルは標準的なフィッシャーのエステル合成法にしたがって調製した。
複雑な黄色の反応混合物を生成しがちな古典的モノ鹸化反応とは異なり、これらの反応
の全ての場合において、純粋なハーフエステルのみが生成し、そして(まれなケースでは
あるが)出発物質、及びもし生成しているのであれば、二価酸(ジカルボン酸)が回収さ
れた。いくつかのケースにおいては、生成したハーフエステルと回収したジエステルの収
率からみれば、少量の二価酸が生成しているようであるが、これらの二価酸は、反応混合
物の処理段階では抽出されなかった。生成したハーフエステルは、全てにおいて非常に高
い純度であり、元素分析でシャープな結果を得た。いずれのモノ加水分解反応においても
脱カルボキシル化された生成物は検出されなかった。
全体として、下記表5に示した結果から判明するように、KOHはNaOHよりも反応
性が高く、また若干選択性が高い傾向にある。この傾向はフェニルマロン酸ジエチルのモ
ノ加水分解(実施例50〜51)において最もよく認められたものであった。同じジエス
テルのモノ加水分解に際して、NaOHを用いて得た以前の結果と比べて、KOHを用い
ると反応性及び選択性共に向上したことを示した(上記参照)。
下記の表5の結果では、選択性は分子の疎水性に従って高くなることを示している。例
えば、ジエステルのモノ加水分解と比較して、ハーフエステルの収率は、より疎水性の高
いエステル基に従って高くなっている(表5、実施例50〜53参照)。ハーフエステル
の収率は、分子中にメチル基またはフェニル基が導入されると、さらに高くなる(実施例
42〜53参照)。理論的な点は別として、このモノ加水分解反応においては、疎水性置
換基同士の引き合いにより形成したアグリゲートが、さらなる加水分解を保護していると
考えられていることから、2つの同一のエステル基のモノ加水分解においては、分子の残
りの部分内で分子間及び/又は分子内疎水性引力相互作用が、この高選択性に重要な役割
を担いうると考えられる。したがって、この傾向によってそのような可能性のある疎水性
相互作用を説明しうる。
前記した見解に対する唯一の例外は、フェニルマロン酸ジプロピルのモノ加水分解の場
合である(実施例52及び53)。この結果は、反応時間の長さによるものと考えられ、
時として対応する二価酸が明らかに単離された。ここで、THFの代わりに共溶媒として
アセトニトリル(水と若干混和性を有する別の弱極性非プロトン性溶媒)を使用すること
で、若干反応時間を早めることができ、約10%ハーフエステルの収率を高めることがで
きた。なお、以前に、このモノ加水分解における共溶媒の影響を検討しており、水と若干
の混和性を有する弱極性非プロトン性溶媒が、有効な共溶媒となり得ることを見出してい
る。また、いくつかの嵩高い基の導入は、この選択性に対する好ましい配置を阻害する可
能性もある。
表5:ジエステルの加水分解
Figure 2013227345
a:ハーフエステルの単離収率。回収されたジエステルの量はカッコ内に示す(%)。
b:共溶媒としてTHFの代わりにアセトニトリルを使用した。
要約すれば、一連のマロン酸ジアルキル及びその誘導体の選択的モノ加水分解に対する
優れた実用的条件として、0℃にて、共溶媒としてTHFまたはアセトニトリルを用い、
KOHまたはNaOH水溶液を使用することが見出された。その場合の収率は、以前に報
告されている収率の中で、最も高いものである。生成した全てのハーフエステルは優れた
純度を示しており、長期間にわたり安定であった。また、一般的に選択性は、エステル基
の疎水性が高くなるにつれ高くなっていることが判明した。このような傾向からみて、疎
水性引力相互作用がこの選択性において重要な役割を担いうることを示している。
[実施例54]
本実施例は、マロン酸モノメチルの合成を説明するものである。
マグネチックスターラーを備えた100mLの一口フラスコに、マロン酸ジメチル(ア
クロスケミカルズ社より購入)を15.833g(0.12mol)を入れ、THF1m
Lを加えてこのマロン酸ジメチルを溶解させた。1分間攪拌した後、反応混合物を氷水浴
にて0℃に冷却した。この混合物に10mLの水を加えて30分間攪拌した。この反応混
合物に5MのNaOH水溶液(97%純度;EMDケミカルス社(ニュージャージー州、
ギブスタウン)より)の26.4mL(1.1当量)を攪拌下に5分間にわたり滴下して
加えた。滴下完了後、反応混合物を更に30分間攪拌した。攪拌中は、ストッパーで覆い
をして、氷水浴中に保持した。
反応混合物を、氷水浴中で6MのHCl水溶液30mLにて酸性とし、NaClで飽和
させ、250mLの分液ロートを用い、50mLの酢酸エチルで5回抽出した。酢酸エチ
ル抽出液を飽和NaCl水溶液50mLで洗浄し、約10gの無水硫酸ナトリウムで乾燥
した。乾燥剤を重力濾過で濾別した後、酢酸エチル溶液をロータリーエバポレータで濃縮
し、さらに2.5mmHgの減圧下で蒸留した。沸点91〜92℃の画分を集め、無色オ
イルとしてマロン酸モノメチルを得た。収率は82%であった。
マロン酸モノメチル:オイル状物質。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:3.47(2H,s),3.79(3H
,s),11.4(1H,br.s)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:40.50,52.50,167.03
,171.46、
IR(neat,cm−1):1741,1746,2960−3185、
元素分析:計算値(C):C,40.68;H,5.12、測定値:C,40
.51;H,5.34。
[実施例55]
本実施例は、マロン酸モノエチルの合成を説明するものである。
THF2mLにマロン酸ジエチル(192mg,1.2mmol)を溶解し、水20m
Lを加えた。反応混合物を氷水浴にて0℃に冷却し、この混合物に0.25MのNaOH
水溶液又はKOH水溶液の指示当量分を、攪拌しながら滴下して加えた。反応混合物を1
時間攪拌し、0℃にて1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸エチルで抽出
し(4回)、NaSOで乾燥した。この抽出物を減圧下で濃縮し、残渣を、初めにヘ
キサン:酢酸エチル(3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルカラムクロ
マトグラフィーにて精製し、マロン酸モノエチルを得た。
マロン酸モノエチル:オイル状物質。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.31(3H,t,J=7.2),3
.44(2H,s),4.25(2H,q,J=7.2),10.62(1H,br.s
)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:13.90,40.78,61.90,
166.87,171.48、
IR(neat,cm−1):1736,1741,2914−3182、
元素分析:計算値(C):C,45.46;H,6.10、測定値:C,45
.83;H,6.30。
[実施例56]
本実施例は、マロン酸モノプロピルの合成を説明するものである。
THF2mLにマロン酸ジプロピル(226mg,1.2mmol)を溶解し、水20
mLを加えた。反応混合物を氷水浴にて0℃に冷却し、この混合物に0.25MのNaO
H水溶液又はKOH水溶液の指示当量分を、攪拌しながら滴下して加えた。反応混合物を
30分から1時間攪拌し、0℃にて1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸
エチルで抽出し(4回)、NaSOで乾燥した。この抽出液を減圧下で濃縮し、残渣
を、初めにヘキサン:酢酸エチル(3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィーにて精製し、マロン酸モノプロピルを得た。
マロン酸モノプロピル:オイル状物質。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.96(3H,t,J=7.7),1
.70(2H,m),3.46(2H,s),4.15(2H,q,J=7.2),10
.18(1H,br.s)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:10.12,21.69,40.89,
67.42,166.81,171.74、
IR(neat,cm−1)1723,1740,2883−3181、
元素分析:計算値(C10):C,49.31;H,6.90、測定値:C,4
9.43;H,7.14。
[実施例57]
本実施例はメチルマロン酸モノメチルの合成を説明するものである。
THF2mLにメチルマロン酸ジメチル(175mg,1.2mmol)を溶解し、水
20mLを加えた。反応混合物を氷水浴にて0℃に冷却し、この混合物に0.25MのN
aOH水溶液又はKOH水溶液の1.2当量を、攪拌しながら滴下して加えた。反応混合
物を1.5時間攪拌し、0℃にて1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸エ
チルで抽出し(4回)、NaSOで乾燥した。この抽出液を減圧下で濃縮し、残渣を
、初めにヘキサン:酢酸エチル(3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカゲル
カラムクロマトグラフィーにて精製し、メチルマロン酸モノメチルを得た。
メチルマロン酸モノメチル:オイル状物質。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.43(3H,t,J=7.2),3
.47(1H,q,J=7.2),3.73(3H,s),9.42(1H,br.s)

13C NMR(75MHz、CDCl)δ:13.08,45.45,52.39,
170.16,175.38、
IR(neat,cm−1)1721,1739,2956−3202、
元素分析:計算値(C):C,45.46;H,6.10、測定値:C,45
.65;H,5.94。
[実施例58]
本実施例は、メチルマロン酸モノエチルの合成を説明するものである。
THF2mLにメチルマロン酸ジエチル(209mg,1.2mmol)を溶解し、水
20mLを加えた。反応混合物を氷水浴にて0℃に冷却し、この混合物に0.25MのN
aOH水溶液又はKOH水溶液の1.2当量を、攪拌しながら滴下して加えた。反応混合
物を1.5時間攪拌し、0℃にて1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸エ
チルで抽出し(4回)、NaSOで乾燥した。この抽出液を減圧下で濃縮し、残渣を
、初めにヘキサン:酢酸エチル(3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカゲル
カラムクロマトグラフィーにて精製し、メチルマロン酸モノエチルを得た。
メチルマロン酸モノエチル:オイル状物質。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.24(3H,t,J=7.2),1
.40(3H,d,J=7.5),3.44(1H,q,J=7.2),4.18(2H
,q,J=7.2),11.21(1H,br.s)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:13.44,13.90,45.93,
61.70,169.83,176.00、
IR(neat,cm−1)1722,1735,2946−3200、
元素分析:計算値(C10):C,49.31;H,6.90、測定値:C,4
9.68;H,6.75。
[実施例59]
本実施例は、メチルマロン酸モノプロピルの合成を説明するものである。
THF2mLにメチルマロン酸ジプロピル(243mg,1.2mmol)を溶解し、
水20mLを加えた。反応混合物を氷水浴にて0℃に冷却し、この混合物に0.25Mの
NaOH水溶液又はKOH水溶液の1.2当量を、攪拌しながら滴下して加えた。反応混
合物を1時間45分攪拌し、0℃にて1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢
酸エチルで抽出し(4回)、NaSOで乾燥した。この抽出液を減圧下で濃縮し、残
渣を、初めにヘキサン:酢酸エチル(3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メチルマロン酸モノプロピルを得た。
メチルマロン酸モノプロピル:オイル状物質。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.90(3H,t,J=7.5),1
.42(3H,d,J=7.2),1.64(2H,m),3.46(1H,q,J=7
.2),4.09(2H,q,J=7.2),10.62(1H,br.s)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:10.17,13.51,21.77,
45.94,67.24,169.93,175.96、
IR(neat,cm−1)1717,1739,2883−2971、
元素分析:計算値(C12):C,52.49;H,7.55、測定値:C,5
2.74;H,7.49。
[実施例60]
本実施例は、フェニルマロン酸モノメチルの合成を説明するものである。
THF2mLにフェニルマロン酸ジメチル(250mg,1.2mmol)を溶解し、
水20mLを加えた。反応混合物を氷水浴にて0℃に冷却し、この混合物に0.25Mの
NaOH水溶液又はKOH水溶液の1.2当量を、攪拌しながら滴下して加えた。反応混
合物を1時間攪拌し、0℃にて1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸エチ
ルで抽出し(4回)、NaSOで乾燥した。この抽出液を減圧下で濃縮し、残渣を、
初めにヘキサン:酢酸エチル(3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーにて精製し、フェニルマロン酸モノメチルを得た。
フェニルマロン酸モノメチル:白色固体、融点92〜93℃、
H NMR(300MHz、CDCl)δ:3.75(3H,s),4.65(2H
,s),7.4(5H,m),9.0(1H,br.s)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:53.06,57.33,128.55
,128.77,129.15,131.96,168.59,173.25、
IR(neat,cm−1)1717,1740,2956−3212、
元素分析:計算値(C1010):C,61.85;H,5.19、測定値:C,
61.92;H,5.40。
[実施例61]
本実施例はフェニルマロン酸モノエチルの合成を説明するものである。
THF2mLにフェニルマロン酸ジメチル(284mg,1.2mmol)を溶解し、
水20mLを加えた。反応混合物を氷水浴にて0℃に冷却し、この混合物に0.25Mの
NaOH水溶液又はKOH水溶液の1.2当量を、攪拌しながら滴下して加えた。反応混
合物を5時間攪拌し、0℃にて1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸エチ
ルで抽出し(4回)、NaSOで乾燥した。この抽出液を減圧下で濃縮し、残渣を、
初めにヘキサン:酢酸エチル(3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーにて精製し、フェニルマロン酸モノエチルを得た。
フェニルマロン酸モノエチル:白色固体、融点74℃(文献値:76−77℃)。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.25(3H,t,J=7.2),4
.24(2H,q,J=7.2),4.65(1H,s),7.4(5H,m),9.7
8(1H,br.s)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:13.81,57.51,62.10,
128.39,128.62,129.13,132.01,167.95,173.8
4、
IR(neat,cm−1)1717,1737,2941−3190、
元素分析:計算値(C1112):C,63.45;H,5.81、測定値:C,
63.30;H,5.80。
[実施例62]
本実施例は、フェニルマロン酸モノプロピルの合成を説明するものである。
アセトニトリル2mLにフェニルマロン酸ジプロピル(317mg,1.2mmol)
を溶解し、水20mLを加えた。反応混合物を冷却室内、氷水浴にて0℃に冷却した。こ
の混合物に0.25MのNaOH水溶液又はKOH水溶液の0.8当量を、攪拌しながら
滴下して加えた。反応混合物を4℃に維持しながら33時間冷却室内で攪拌し、0℃にて
1MのHClで酸性とし、NaClで飽和させ、酢酸エチルで抽出し(4回)、Na
で乾燥した。この抽出液を減圧下で濃縮し、残渣を、初めにヘキサン:酢酸エチル(
3:1)、次いで酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精
製し、フェニルマロン酸モノプロピルを得た。
フェニルマロン酸モノプロピル:オイル状物質。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.87(3H,t,J=7.5),1
.64(2H,m,J=7.2),4.11(2H,m),4.64(1H,s),7.
4(5H,m),8.02(1H,br.s)、
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:10.15,21.74,57.47,
67.72,128.48,128.74,129.12,132.21,168.41
,173.07、
IR(neat,cm−1)1717,1736,2881−3067、
元素分析:計算値(C1214):C,64.85;H,6.35、測定値:C,
65.17;H,6.61。
[実施例63〜65]
これらの実施例は、エステル基の疎水性が与える反応時間に対する効果を説明するもの
である。
以下に示す一般的な反応条件を用いて、順に疎水性が高くなるアルキル基を有する一連
のハーフエステルを調製し(合成スキームVIII)、エステル部分の一連の類似体に対
する反応時間を検討した。その結果を以下の表6に示す。
表6:カルボキシル基の疎水性の効果
Figure 2013227345
(スキームVIII)
Figure 2013227345
これらの結果から明らかなように、アルキル基Rの疎水性が高くなるにつれ、反応時間
が対応して長くなっていった。本反応に用いた環状ジエステルの場合には、反応時間は塩
基を追加することで、生成物の収率の顕著な減少を伴うことなく、短くすることができる
(後記の実施例82を参照)。これに対して、例えばマロン酸ジアルキルエステルやアジ
ピン酸ジアルキルエステルのような直鎖状ジエステルの場合には、塩基を追加すると生成
物の収率の減少を引き起こすことが観察された。
[実施例66〜81]
これらの実施例は、二価酸(ジカルボン酸)とハーフエステルとの生成比率に及ぼす、
反応時間並びに塩基の選択における効果を説明するものである。
以下の合成スキームIXに示す加水分解反応において、種々の塩基を使用した。生成し
た二価酸(ジカルボン酸)に対するハーフエステルの比率は、H NMRスペクトルに
よって求め、その結果を以下の表7〜表10に示す。
(スキームIX)
Figure 2013227345
表7:塩基としてLiOHを用いた場合の反応時間
Figure 2013227345
表8:塩基としてNaOHを用いた場合の反応時間
Figure 2013227345
表9:塩基としてKOHを用いた場合の反応時間
Figure 2013227345
表10:塩基としてCsOHを用いた場合の反応時間
Figure 2013227345
これらの結果から明らかなように、検討した上記の直鎖状ジエステルの場合においては
、反応時間がある時間以上長くなると、ハーフエステルの生成量が減少し、二価酸(ジカ
ルボン酸)の生成量が増えるものであった。この結果は、検討した上記の塩基4種の全て
で観察されていた。
[実施例82]
この実施例は、環状ジエステルのモノ加水分解の時間依存性を説明するものである。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,5−ジエン−2,3−ジカルボン酸ジメチル(1
.2mmol)をTHF2mLに溶解し、水20mLを加えた。反応混合物を氷水浴に浸
して0℃に冷却し、この混合物に攪拌下に、0.25MのNaOH水溶液8mLを少量ず
つ加えた。混合物の反応を、一定時間毎に終結させ、その時間の生成物をH NMRで
観察した。生成したジエステル、ハーフエステル及び二価酸(ジカルボン酸)に帰属され
るピークに対応する積分曲線により、ジエステル、ハーフエステル及び二価酸(ジカルボ
ン酸)の生成モル比を算出した。その結果を図1に示す。
図中に示した結果から明らかなように、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,5−ジエ
ン−2,3−ジカルボン酸ジメチルの加水分解の場合には、反応は実質的に完結しており
(この点は、原料のジエステルの残量で示される)、ハーフエステルの生成量は、経時的
に若干減少しており、それに伴い、二価酸(ジカルボン酸)の生成量が経時的に若干増加
しているのみであった。
他の環状エステルにおいても同様の結果が観察された。これらの結果から、このタイプ
のハーフエステルは比較的塩基に対して安定であることが示唆された。
[実施例83〜86]
これらの実施例は、直鎖状ジエステルのモノ加水分解の時間依存性を説明するものであ
る。
上記のビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,5−ジエン−2,3−ジカルボン酸ジメチ
ルに代えてアジピン酸ジメチルを用い、また、4種の異なる当量の塩基(0.7,1.0
,1.2及び1.5)を用いること以外は、実施例82と同様に実施した。生成したジエ
ステル、ハーフエステル及び二価酸(ジカルボン酸)に対応するピークをHPLCで観察
し、対応する生成比率を図2に示すようにプロットした。
図中に示した結果から明らかなように、使用する塩基の量が増えるに従って、二価酸(
ジカルボン酸)の収率も高くなった。
他の直鎖状ジエステルのモノ加水分解においても同様の結果が観察された。これらの結
果から、このタイプのハーフエステルは、実施例82で検討されたタイプの環状ジエステ
ルよりも塩基に対して安定性が低いことが示唆された。
したがって、環状ジエステルの場合には、塩基をさらに追加することで生成物収率に顕
著な悪影響を与えることなく反応速度を高めることが可能であるが、直鎖状ジエステルの
場合には、そのようなことは当てはまらないものといえる。
上記した本発明の開示内容は、例示的なものであって、これに限定することを意図して
いない。
したがって、本発明の範囲を逸脱することなく様々な付加、置換、変更を行い得るもの
であることを理解すべきであり、本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照して解釈され
るものである。

Claims (1)

  1. 本願明細書に記載された発明。
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