JP2013222044A - トナー用結着樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】トナーの低温定着性及び保存安定性を両立することができ、さらに耐フィルミング性が良好なトナー用結着樹脂、及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーを提供すること。
【解決手段】脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、フラン環を有する非晶質ポリエステルAと、式(I):
Figure 2013222044

(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物及びフマル酸から選ばれた1種又は2種以上のカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステルBとを含有してなるトナー用結着樹脂、及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナー。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーに関する。
近年、プリンターやコピー機の高速化及び省エネ化に伴い、低温定着性に優れたトナーがますます必要となってきている。しかし、通常トナーの結着樹脂を低温で溶融させるために低分子量化を行うと、樹脂のガラス転移温度が低下し、保存安定性が低下する。
この課題を解決するために、低分子量でも高ガラス転移温度のトナー用結着樹脂として、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香環を有するカルボン酸を原料モノマーとして用いて得られたポリエステルが汎用されている。
一方、特許文献1には、バイオマスを原料に用いて耐熱性、機械物性、耐候性に優れた、十分な分子量を有する熱可塑性樹脂を提供することを課題として、フラン構造を有し、還元粘度(ηsp/C)が0.48dL/g以上、末端酸価が200μeq/g未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂が開示されている。又、特許文献2には、フラン構造を有するジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂の製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、耐衝撃性に優れた成形品を製造するために用いることができる、新規なポリエステル樹脂を提供することを課題として、特定のフラン環の構造単位を有することを特徴とするポリエステル樹脂が開示されている。
特開2008−291243号公報 特開2008−291244号公報 特開2009−197110号公報
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の樹脂は、フィルム用途や射出成形品の用途を主として使用するものであり、また、特許文献3に記載の樹脂も、成形品用組成物であるため結晶性が高く、トナー用結着樹脂には適していない。
フラン環を有する非晶質ポリエステルは、分子構造が比較的硬く、低軟化点でありながら高ガラス転移温度とすることができ、トナーの低温定着性及び保存安定性が良好なトナーとすることができると考えられるが、低軟化点で高ガラス転移温度を達成するためには、フラン環を有する非晶質ポリエステルの分子構造の特異性から分子量を低くする必要がある。一方、トナーのフィルミング特性はガラス転移温度等に依存する熱的因子と結着樹脂の分子量等に依存する機械的因子によって決定されると考えられる。従って、フラン環を有する非晶質ポリエステル樹脂をトナーに用いるために、分子量を低く設定すると機械的因子に対して弱くなり、耐フィルミング性が悪化するという課題を有する。
本発明の課題は、トナーの低温定着性及び保存安定性を両立することができ、さらに耐フィルミング性が良好なトナー用結着樹脂、及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーを提供することにある。
本発明は、
〔1〕 脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、フラン環を有する非晶質ポリエステルAと、式(I):
Figure 2013222044
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物及びフマル酸から選ばれた1種又は2種以上のカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステルBとを含有してなるトナー用結着樹脂、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂を含有してなる、電子写真用トナー
に関する。
本発明のトナー用結着樹脂は、トナーの低温定着性及び保存安定性を両立することができ、さらに耐フィルミング性が良好であるという優れた効果を奏するものである。
本発明のトナー用結着樹脂は、アルコール成分に脂肪族ジオールを用いて得られる、フラン環を有する非晶質ポリエステルAと、アルコール成分にビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いて得られる非晶質ポリエステルBとを含有するものである。フラン環を有する非晶質ポリエステルは、前記の如く、低温定着性及び保存安定性の両立が可能である一方で、耐フィルミング性に課題がある。この課題に対して、分子量が高く機械的因子が良好なポリマーを併用することが考えられるが、特にビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いた非晶質ポリエステルBは、その分子骨格がバルキーとなり、かつ、低分子量のフラン環を有する非晶質ポリエステルAとの相溶性が特に良好なため、非晶質ポリエステルAの分子運動を束縛することにより、フラン環を有する非晶質ポリエステルの感光体への融着を防止して、耐フィルミング性を著しく向上するものと推測される。ただし、本発明は以上の発現機構に制限されるものではない。
本発明において、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最高ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「非晶質」の樹脂とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
樹脂の結晶性は、用いる原料モノマーの種類と組み合わせにより、容易に調整することができる。具体的には、分岐鎖構造を有するカルボン酸成分やアルコール成分、3価以上のカルボン酸成分やアルコール成分、例えば、アルキル又はアルケニルコハク酸や後述するような第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール、トリメリット酸、無水トリメリット酸等を適量用いることで、非晶質化を促進することができる。
「吸熱の最高ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最高ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質樹脂のガラス転移に起因するピークとする。
本発明において、フラン環を有する非晶質ポリエステルAは、脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる非晶質ポリエステルであり、カルボン酸成分とアルコール成分の少なくともいずれかに、フラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分が用いられた樹脂であることが好ましい。フラン環としては、式(a)又は(b):
Figure 2013222044
で表される構造が好ましい。
フラン環を有するカルボン酸化合物としては、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物(本明細書中、カルボン酸化合物はカルボン酸、カルボン酸と炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルコールとのエステル及び酸無水物を含む);2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフランカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物、3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロピオネート等のカルボン酸化合物(本明細書中、ヒドロキシカルボン酸化合物はカルボン酸化合物に含める)等が挙げられる。
これらの中では、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、トナーの保存安定性の観点からフランジカルボン酸化合物がより好ましい。
フラン環を有するアルコールとしては、ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;フルフリルアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。
これらの中では、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、フランジアルコール、ヒドロキシメチルフルフリルアルコール及びフルフリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、特にトナーの保存安定性の観点から、フランジアルコール及びヒドロキシメチルフルフリルアルコールがより好ましい。
式(a)で表わされるフラン環を有するカルボン酸化合物として、2,5-フラン-ジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物等が挙げられ、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、2,5-フランジカルボン酸及び2,5-フランジカルボン酸エチルエステルが好ましい。
式(a)で表わされるフラン環を有するアルコールとして、5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられ、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコールが好ましい。
式(b)で表わされるフラン環を有するカルボン酸化合物として、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物等が挙げられる。
式(b)で表わされるフラン環を有するアルコールとして、フルフリルアルコール等が挙げられる。
上記のカルボン酸化合物及びアルコールの中では、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、式(a)で表わされるフラン環を有する、カルボン酸化合物とアルコールとが好ましく、フランジカルボン酸化合物及びヒドロキシメチルフルフリルアルコールがより好ましく、フランジカルボン酸化合物がさらに好ましい。
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、トナーの保存安定性及び低温定着性の観点から、好ましくは10〜95モル%、より好ましくは15〜75モル%、さらに好ましくは20〜70モル%、よりさらに好ましくは30〜65モル%、よりさらに好ましくは40〜60モル%である。
アルコール成分は、脂肪族ジオールを含有する。脂肪族ジオールは、フレキシブルな構造を有しているため、低温定着性に優れる。
脂肪族ジオールとしては、炭素数2〜5の脂肪族ジオールが好ましい。
炭素数2〜5の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ブテンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられる。
これらの中で、フラン環とともに、樹脂の運動性をさらに低下させることで、トナーの保存安定性を向上させると共に樹脂の非晶質化を促進し、低温定着性を向上させる観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する炭素数3〜5の脂肪族ジオールが好ましい。かかる脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、炭素数3〜4がより好ましく、具体的例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等が挙げられ、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましく、さらに低温定着性の観点から、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、アルコール成分中、50〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましい。
アルコール成分がフラン環を有するアルコールを含む場合、フラン環を有するアルコール/脂肪族ジオール(モル比)は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、2/98〜50/50が好ましく、5/95〜40/60が好ましく、10/90〜30/70が好ましく、15/85〜25/75が好ましい。
非晶質ポリエステルAのアルコール成分には、後述の式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は含まれていないことが好ましく、含まれていても、アルコール成分中、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。
非晶質ポリエステルAのアルコール成分は、樹脂の非晶質化を促進し、トナーの低温定着性の観点から、3価以上の炭素数3〜5の多価アルコールを含有してもよい。
フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、20〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、70〜100モル%がさらに好ましい。
フラン環を有するカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
非晶質ポリエステルAのカルボン酸成分は、樹脂の非晶質化を促進し、トナーの保存安定性を高める観点から、3価以上の炭素数3〜5の多価カルボン酸化合物を含有していることが好ましい。3価以上の炭素数3〜5の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等が好ましく、トリメリット酸化合物が好ましく、無水トリメリット酸がより好ましい。3価以上の炭素数3〜5の多価カルボン酸化合物の含有量は、トナーの保存安定性の観点から、カルボン酸成分中、3〜30モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましく、5〜10モル%がさらに好ましい。
非晶質ポリエステルBは、式(I):
Figure 2013222044
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステルである。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。耐フィルミング性の観点から、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物が好ましく、低温定着性の観点から、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物が好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、トナーの低温定着性、保存安定性及び耐フィルミング性の観点から、アルコール成分中、20モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらにより好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のアルコール成分としては、脂肪族アルコール等が挙げられる。
非晶質ポリエステルBのカルボン酸成分は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物及びフマル酸から選ばれた1種又は2種以上のカルボン酸化合物を含有する。
非晶質ポリエステルBのカルボン酸成分は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、保存安定性及び耐フィルミング性の観点から、カルボン酸成分中、20〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、70〜100モル%がさらに好ましい。
また、非晶質ポリエステルBのカルボン酸成分は、トナーの低温定着性の観点から、フマル酸を含有していることが好ましい。
フマル酸の含有量は、トナーの低温定着性の観点から、カルボン酸成分中、20〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物とフマル酸とは併用されていてもよい。その場合、両者のモル比(芳香族ジカルボン酸化合物/フマル酸)は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、30/70〜90/10が好ましく、50/50〜70/30がより好ましい。
また、非晶質ポリエステルBのカルボン酸成分は、トナーの低温定着性の観点から、アルキルコハク酸及び/又はアルケニルコハク酸を含有していることが好ましく、アルケニルコハク酸がより好ましい。
アルキルコハク酸及び/又はアルケニルコハク酸は、アルキレン基を有する化合物(アルキレン化合物)と、マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物から選ばれる少なくとも一種とから得られるものであることが好ましく、アルキレン化合物とマレイン酸とから得られるものであることがより好ましく、該アルキレン化合物としては、炭素数9〜14のものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ノルマルブチレン等から得られるもの、例えばこれらのトリマー、テトラマー等が好ましく用いられる。
アルキルコハク酸及び/又はアルケニルコハク酸は、前記公知のアルキレン化合物と、マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物から選ばれる少なくとも一種とを混合し、加熱することで、エン反応を利用することにより得られるが、製造の容易性の観点から、前記公知のアルキレン化合物と、マレイン酸とを混合し、加熱することで、エン反応を利用することにより得られる方法が好ましい。
アルキルコハク酸及び/又はアルケニルコハク酸の含有量は、トナーの低温定着性の観点から、カルボン酸成分中、5〜40モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましく、20〜30モル%がさらに好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物及びフマル酸以外のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
なお、非晶質ポリエステルBのアルコール成分及びカルボン酸成分には、耐フィルミング性の観点から、フラン環を有する化合物は含まれていないことが好ましい。含まれていても、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、耐フィルミング性の観点から、30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
非晶質ポリエステルA及び非晶質ポリエステルBのいずれにおいても、分子量の調整や耐オフセット性向上の観点から、アルコール成分には1価の炭素数5以下のアルコールが、また、カルボン酸成分には1価の炭素数5以下のカルボン酸化合物が、適宜含有されていてもよい。
非晶質ポリエステルA及び非晶質ポリエステルBのいずれにおいても、カルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、反応性、分子量調整及び物性調整の観点から、0.6〜1.3が好ましく、0.7〜1.2がより好ましく、0.8〜1.1がさらに好ましい。
非晶質ポリエステルA及び非晶質ポリエステルBのいずれにおいても、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、なかでも、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、2-エチルヘキサン酸錫(II)が好ましい。エステル化助触媒としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、これらのなかでは、反応性の観点から、没食子酸が好ましい。エステル化触媒の使用量は、反応性、分子量調整及び物性調整の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましく、0.1〜1.0重量部がより好ましく、0.2〜0.7重量部がさらに好ましい。エステル化助触媒の使用量は、同様の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
本発明において、非晶質ポリエステルとは、アルコール成分とカルボン酸成分の縮重合によるポリエステルユニットを含む樹脂をいい、ポリエステルだけでなく、ポリエステル・ポリアミド等も含まれるが、これらの中では、トナーの保存安定性の観点から、ポリエステルが好ましい。
なお、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。
ポリエステル変性樹脂としては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分とビニル系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂等が挙げられる。
非晶質ポリエステルAは、低分子量であっても、高いガラス転移温度に調整することが可能であり、ガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、40〜100℃が好ましく、45〜90℃がより好ましく、50〜85℃がさらに好ましく、55〜80℃がさらにより好ましい。
非晶質ポリエステルAの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から180℃以下が好ましく、トナーの保存安定性の観点から80℃以上が好ましく、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、80〜180℃が好ましく、90〜160℃がより好ましく、95〜150℃がさらに好ましく、さらにトナーの低温定着性の観点から、100〜120℃がさらにより好ましい。
非晶質ポリエステルAの酸価は、トナーの低温定着性、保存安定性及び耐フィルミング性の観点から、0.5〜80mgKOH/gが好ましく、0.8〜70mgKOH/gがより好ましく、0.9〜60mgKOH/gがさらに好ましく、1〜25mgKOH/gがさらに好ましく、水酸基価は、上記同様の観点から、5〜80mgKOH/gが好ましく、5〜75mgKOH/gがより好ましく、10〜70mgKOH/gがさらに好ましく、30〜60mgKOH/gがさらに好ましい。
また、非晶質ポリエステルAの数平均分子量は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、800〜10000が好ましく、1000〜5000がより好ましく、1300〜4000がさらに好ましく、1400〜3000がさらにより好ましく、1400〜2800がさらにより好ましく、1600〜2700がさらにより好ましい。
非晶質ポリエステルBの軟化点は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、90〜160℃が好ましく、95〜150℃がより好ましく、100〜145℃がさらに好ましい。
非晶質ポリエステルBのガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、50〜80℃が好ましく、55〜75℃がより好ましい。
非晶質ポリエステルBの酸価は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、1〜40mgKOH/gが好ましく、1.5〜30mgKOH/gがより好ましく、2〜25mgKOH/gがさらに好ましい。水酸基価は、上記同様の観点から、10〜70mgKOH/gが好ましく、15〜60mgKOH/gがより好ましく、20〜58mgKOH/gがさらに好ましい。
また、非晶質ポリエステルBの数平均分子量は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、1000〜5000が好ましく、1500〜4000がより好ましく、1700〜3500がさらに好ましい。
なお、本発明に用いられる非晶質ポリエステルA及び非晶質ポリエステルBに、軟化点の高い樹脂(以下、高軟化点樹脂と称する)と軟化点の低い樹脂(以下、低軟化点樹脂と称する)とを併用することで、トナーの低温定着性及び保存安定性の点においてより優れるものとなる。高軟化点樹脂と低軟化点樹脂とを併用する場合、一方又は両者を2種以上用いてもよい。
高軟化点樹脂と低軟化点樹脂との軟化点の差は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20〜60℃である。
なお、非晶質ポリエステルの軟化点、ガラス転移温度、酸価、水酸基価及び数平均分子量は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。例えば、縮重合の反応温度を高めたり、反応時間を長くしたり、触媒量を増加させたり、助触媒を併用したりすることで、縮重合反応を進め、軟化点、ガラス転移温度を高めることができる。また、非晶質ポリエステルAの場合は、縮重合反応に用いられる、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中のフラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量を増加させることでガラス転移温度を高めることもできる。
本発明の結着樹脂において、非晶質ポリエステルAと非晶質ポリエステルBの重量比(非晶質ポリエステルA/非晶質ポリエステルB)は、トナーの低温定着性、保存安定性及び耐フィルミング性の観点から、99/1〜35/65が好ましく、95/5〜40/60がより好ましく、90/10〜50/50がさらに好ましく、85/15〜60/40がさらに好ましく、85/15〜70/30がさらにより好ましい。
本発明の結着樹脂を用いることにより、トナーの低温定着性及び保存安定性を維持しつつ、耐フィルミング性の良好な電子写真用トナーが得られる。
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結着樹脂以外の公知の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよいが、本発明の結着樹脂の含有量は、トナーの低温定着性、保存安定性及び耐フィルミング性の観点から、結着樹脂中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%がよりさらに好ましい。
本発明のトナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、画像品質を向上する観点及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性及び耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、結着樹脂中への分散性の観点、トナーの低温定着性及び耐オフセット性の観点から、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製);サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製);銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましく、0.3〜3重量部がさらに好ましく、0.5〜3重量部がよりさらに好ましく、1〜2重量部がよりさらに好ましい。
本発明には、帯電安定性を向上させるために、荷電制御樹脂を含有することが好ましい。荷電制御樹脂としては、スチレン系樹脂が好ましく、トナーの正帯電性発現の観点からは、4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂が好ましく、トナーの負帯電性発現の観点からは、スルホン酸基含有スチレン系樹脂が好ましい。
4級アンモニウム塩基含有スチレンアクリル系共重合体としては、例えば、「FCA-201PS」、「FCA-701PT」(以上、藤倉化成社製)が挙げられる。
その他のスチレンアクリル樹脂として、4級アンモニウム塩基を含有しないスチレンアクリル系共重合体である「FCA-1001NS」(藤倉化成社製)等が挙げられる。また、他の荷電制御樹脂としては、ポリアミン樹脂として、「AFP-B」(オリエント化学社製)等が挙げられ、フェノール樹脂として、「FCA-2521NJ」、「FCA-2508N」(以上、藤倉化成社製)等が挙げられる。
荷電制御樹脂として含有されるスチレン系樹脂の使用量は、トナーの帯電安定性向上の観点から、結着樹脂100重量部に対して、3〜40重量部が好ましく、4〜30重量部がより好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、画像品質を向上する観点から、3〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、無機微粒子を外添剤として用いるのが好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられ、これらの中では、シリカが好ましく、埋め込み防止の観点から、比重の小さいシリカが含有されているのがより好ましい。
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示され、具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
外添剤の平均粒径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10〜250nmが好ましく、10〜200nmがより好ましく、15〜150nmがさらに好ましい。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性、流動性及び転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜3重量部であり、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所製、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させる。その後、昇温速度50℃/分で昇温し測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した後、昇温速度10℃/分で昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。
〔樹脂の数平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、試料をクロロホルムに、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25JP)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:LC-9130NEXT(日本分析工業社製)
分析カラム:TSKGel HXL-H + GMHXL + G3000HXL(東ソー社製)
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔外添剤の平均粒径〕
平均粒径は、個数平均粒径を指し、外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の平均値をいう。長径と短径がある場合は長径を指す。
アルキレン化合物Aの製造例
プロピレンテトラマー(新日本石油株式会社製、商品名:「ライトテトラマー」)を用いて、183〜208℃の加熱条件で分留してアルキレン化合物Aを得た。得られたアルキレン化合物Aは、ガスクロマトグラフィー質量分析において、40個のピークを有していた。アルキレン化合物の分布は、C918:0.5重量%、C1020:4重量%、C1122:20重量%、C1224:66重量%、C1326:9重量%、C1428:0.5重量%であった。なお、ガスクロマトグラフィー質量分析は、特開2008−256845号公報に記載の方法に従って行った。
アルケニル無水コハク酸の製造例
1Lの日東高圧社製オートクレーブにアルキレン化合物A542.4g、無水マレイン酸157.2g、抗酸化剤としてチェレックス-O 0.4g(SC有機化学社製、Triisooctyl phosphite)、重合禁止剤としてブチルハイドロキノン0.1gを仕込み、加圧窒素置換(0.2MPaG)を3回繰り返した。60℃で撹拌開始後、230℃まで1時間かけて昇温して6時間反応を行った。反応温度到達時の圧力は、0.3MPaGであった。反応終了後、80℃まで冷却し、常圧(101.3kPa)に戻して1L容の4つ口フラスコに移し替えた。180℃まで撹拌しながら昇温し、1.3kPaにて残存アルキレン化合物を1時間で留去した。引き続き、室温(25℃)まで冷却後、常圧(101.3kPa)に戻して目的物のアルケニル無水コハク酸A 406.1gを得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸の平均分子量(Mw)は268であった。
樹脂製造例1〔樹脂A1、A3、A5、A6、A8〕
表1に示す無水トリメリット酸を除く原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、精留塔、脱水管、コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで10時間かけて昇温を行った。その後210℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、表1に示す無水トリメリット酸を投入した。1時間常圧にて反応を行った後、20kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
樹脂製造例2〔樹脂A2、A4、A7〕
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、精留塔、脱水管、コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで10時間かけて昇温を行った。その後210℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、20kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。
樹脂製造例3〔樹脂B1、B2〕
表2に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、脱水管、コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、8kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。
樹脂製造例4〔樹脂B3、B5〕
表2に示す無水トリメリット酸、アルケニル無水コハク酸A以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、脱水管、コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、8kPaにて1時間反応を行った。その後、210℃に冷却し、無水トリメリット酸又はアルケニル無水コハク酸Aを添加し、1時間常圧にて反応を行った後、20kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。
樹脂製造例5〔樹脂B4〕
表2に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、脱水管、コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温し、その後210℃まで、10℃/hで昇温した。210℃にて反応率が80%以上に到達したのを確認し、8kPaにて軟化点が107.8℃に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。
Figure 2013222044
Figure 2013222044
〔トナー製造例〕
実施例1〜14及び比較例1〜3
表に示す結着樹脂100重量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)1重量部、着色剤「Regal 330R」(キャボット社製、カーボンブラック)5重量部、及び離型剤「三井ハイワックスNP-055」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:125℃)2重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100重量部に、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:HMDS、平均粒子径:約30nm)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
実施例15
結着樹脂、着色剤等とともに、荷電制御樹脂「FCA-701PT」(藤倉化成社製、4級アンモニウム塩基含有スチレンアクリル系樹脂、軟化点:123℃)を5重量部使用し、負帯電性荷電制御剤の代わりに、正帯電性荷電制御剤「ボントロン P-51」(オリエント化学工業社製)1重量部を使用し、外添剤として「NAX-50」の代わりに、疎水性シリカ「TG-C243」(キャボット社製、平均粒径100nm、疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン+オクチルトリエトキシシラン)1.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
実施例16〜18
負帯電性荷電制御剤として、「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)の代わりに、実施例16及び18では「LR-147」(日本カーリット社製)1重量部、実施例17では「LR-297」(日本カーリット社製)1重量部を使用し、離型剤として、「三井ハイワックスNP-055」の代わりに、「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2重量部を使用し、着色剤として、カーボンブラック「Regal 330R」の代わりに、実施例16では、シアン顔料「Toner Cyan BG」(クラリアント社製、P.B.15:3)5重量部、実施例17では、マゼンタ顔料「スーパーマゼンタR」(大日本インキ化学工業社製、P.R.122)5重量部、実施例18では、イエロー顔料「Paliotol Yellow D1155」(BASF社製、P.Y.185)6重量部を使用し、外添剤として「NAX-50」の代わりに、疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、平均粒径16nm、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン)1.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置(但し、実施例15の評価については、非磁性一成分現像方式プリンター「HL-2040」(ブラザー工業社製)を改造した装置)にトナーを実装し、シャープ(株)製の紙[CopyBond SF-70NA(75g/m2)]上に、4cm×4cmのベタ印刷未定着画像を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を100℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、最低定着温度に達するまで、各温度で定着紙に未定着画像を定着させた。定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の画像の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、トナーの低温定着性を評価した。結果を表3に示す。
試験例2〔保存安定性〕
トナー4gを半径12mmの円筒型容器に入れ、温度55℃、湿度60%の環境下で72時間放置した。放置後、トナーを容器から取り出し、トナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、トナーの保存安定性を評価した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
A:72時間後も凝集は全く認められない。
B:48時間後で凝集は認められないが72時間後で凝集が認められる。
C:48時間後で凝集が認められる。
試験例3〔耐フィルミング性〕
非磁性一成分現像装置「MICROLINE 3010cW」(沖データ社製、A4 14枚/分)を用い(実施例15では非磁性一成分現像方式プリンター「HL-2040」(ブラザー工業社製)を改造した装置)、印字面積比率4%の文字画像を3000枚(A4用紙)印字し、1000枚印字及び3000枚印字の時点で、感光体へのフィルミング発生の有無を目視で確認した。以下の評価基準に従って、トナーの耐フィルミング性を評価した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
A:3000枚印字でも、フィルミングは未発生。
B:1000枚印字ではフィルミングは未発生だが、3000枚印字ではフィルミングが発生。
C:1000枚印字でフィルミングが発生。
Figure 2013222044
以上の結果より、比較例1〜3と対比して、実施例1〜18では、トナーの低温定着性及び保存安定性が良好であり、効果的に感光体へのフィルミングが抑制されていることが分かる。
本発明のトナー用結着樹脂は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーの結着樹脂として好適に用いられる。

Claims (10)

  1. 脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、フラン環を有する非晶質ポリエステルAと、式(I):
    Figure 2013222044
    (式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数である)
    で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物及びフマル酸から選ばれた1種又は2種以上のカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステルBとを含有してなるトナー用結着樹脂。
  2. 非晶質ポリエステルAと非晶質ポリエステルBの重量比(非晶質ポリエステルA/非晶質ポリエステルB)が、99/1〜35/65である、請求項1記載のトナー用結着樹脂。
  3. 非晶質ポリエステルAの数平均分子量が800〜10000である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂。
  4. 非晶質ポリエステルBの軟化点が90〜160℃、ガラス転移温度が50〜80℃である、請求項1〜3いずれか記載のトナー用結着樹脂。
  5. 脂肪族ジオールが、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する炭素数3〜5の脂肪族ジオールを含む、請求項1〜4いずれか記載のトナー用結着樹脂。
  6. カルボン酸成分とアルコール成分の少なくともいずれかが、少なくともフラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分である、請求項1〜5いずれか記載のトナー用結着樹脂。
  7. フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量が、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、10〜95モル%である、請求項6記載のトナー用結着樹脂。
  8. フラン環を有するカルボン酸化合物が、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項6又は7記載のトナー用結着樹脂。
  9. フラン環を有するアルコールが、フランジアルコール、ヒドロキシメチルフルフリルアルコール及びフルフリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項6〜8いずれか記載のトナー用結着樹脂。
  10. 請求項1〜9いずれか記載のトナー用結着樹脂を含有してなる、電子写真用トナー。
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