JP2013216268A - 液圧制動装置の異常検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液圧検出センサを用いることなく、X配管の失陥を検出できる液圧制動装置の異常検出装置を提供する。
【解決手段】左前輪用のホイールシリンダおよび右後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第1配管系統12と、右前輪用のホイールシリンダおよび左後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第2配管系統14を含む液圧配管を有する液圧制動装置10の異常検出装置は、制動要求の大きさを検出するストロークセンサ18と、制動要求に応じて制動力が発生した場合に、その制動力の発生前と発生後とで回転トルクの値を検出するトルクセンサ44と、制動要求の大きさに対する回転トルクの値が所定値より大きい場合に第1配管系統または第2配管系統のいずれかに異常が発生したことを検出する異常検出部100を含む。
【選択図】図1
【解決手段】左前輪用のホイールシリンダおよび右後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第1配管系統12と、右前輪用のホイールシリンダおよび左後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第2配管系統14を含む液圧配管を有する液圧制動装置10の異常検出装置は、制動要求の大きさを検出するストロークセンサ18と、制動要求に応じて制動力が発生した場合に、その制動力の発生前と発生後とで回転トルクの値を検出するトルクセンサ44と、制動要求の大きさに対する回転トルクの値が所定値より大きい場合に第1配管系統または第2配管系統のいずれかに異常が発生したことを検出する異常検出部100を含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、液圧制動装置の異常検出装置、特にシンプルな構成で異常検出が可能な液圧制動装置の異常検出装置に関する。
車両のブレーキ装置として各車輪のホイールシリンダに作動液を供給して、その液圧によりピストンを動作させて摩擦部材を車輪側の回転部材に押圧することで制動力を発生させる液圧制動装置がある。この液圧制動装置は、作動液の液漏れ等の失陥が発生した場合でも確実に車両を減速または停止させられる制動力を確保するために複数系統の液圧配管を備えている。例えば、左前輪用のホイールシリンダおよび右後輪用のホイールシリンダに接続された配管系統と、右前輪用のホイールシリンダおよび左後輪用のホイールシリンダに接続された配管系統の2系統からなる、いわゆる「X配管」がある(例えば、引用文献1参照)。
液圧制動装置を搭載した車両において制動力を発生させると、制動時に車体重量が前方へ移動することにより、後輪の接地圧力が減少するのに対して前輪の接地圧力が増大する。そのため、後輪側よりも前輪側で大なる制動力を得ることが可能であり、前輪のブレーキの最大制動力、すなわち制動力容量もそれに見合う大きさに設定する必要がある。したがって、一般的には前輪側のブレーキ装置の制動能力が後輪側の制動能力より大きくなるようにブレーキ装置が選定されている。
前述したように、X配管においても車両の対角線に存在するブレーキ装置のうち前輪側が後輪側より制動能力が一般的に高い。そのため、X配管のいずれか一方の配管系統に失陥が生じた場合、一方の前輪の制動力が他方の前輪の制動力より小さくなってしまうので、制動時に車両を回転させるようなモーメントが発生し、車両を一方向に回頭しようとする力が働いてしまう場合がある。この場合、一方の配管系統による制動でも安全に減速または停止させる制動力は十分に発生できるが、制動時にハンドルが一方向にとられるような違和感をドライバに与えてしまうことがある。そのための、X配管に失陥が生じた場合には、早急に異常を検出し、ドライバに注意を喚起するとともに早急に修理等の対応をとらせることが望ましい。なお、近年の低コスト化やシステムのシンプル化の要請に対応し、前述したような異常検出は、液圧検出センサ等を用いることなくシンプルな構成で実現することが要望されている。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液圧検出センサを用いることなく、X配管の失陥を検出できる液圧制動装置の異常検出装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の液圧制動装置の異常検出装置は、車両の左前輪用のホイールシリンダおよび右後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第1配管系統と、右前輪用のホイールシリンダおよび左後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第2配管系統とを含む液圧配管を有する液圧制動装置の異常検出装置であって、前記車両に対する制動要求の大きさを検出する制動要求検出手段と、前記制動要求に応じて制動力が発生した場合に、その制動力の発生前と発生後とで操舵ハンドルの軸周りに発生する回転トルクの値を検出するトルク検出手段と、前記制動要求の大きさに対する前記回転トルクの値が所定値より大きい場合に前記第1配管系統または前記第2配管系統のいずれかに異常が発生したことを検出する異常検出手段と、を含む。
この態様によると、制動力の発生の後に回転トルクが所定値より大きく変化した場合に第1配管系統または第2配管系統のいずれかに異常が発生したことを検出する。その結果、液圧配管の液圧を測定することなく、液圧配管の失陥を検出することができる。
前記異常検出手段は、異常検出時の前記回転トルクの回転方向に基づいて異常が発生した配管系統を判別してもよい。たとえば、左前輪および右後輪に対応する配管系統に失陥が生じた場合に制動すると車両は右方向に旋回するような挙動を示し、ハンドルを右方向に回転させるような方向に回転トルクが発生する。逆に右前輪および左後輪に対応する配管系統に失陥が生じた場合に制動すると車両は左方向に旋回するような挙動を示し、ハンドルを左方向に回転させるような方向に回転トルクが発生する。したがって、制動時の回転トルクの回転方向により、いずれの配管系統に失陥が生じているかが特定できるので、異常検出後の対応を迅速に行うことができる。
前記異常検出手段は、前記車両の直進走行中に前記制動要求がなされたときに異常判定処理を実行してもよい。この場合、片側の配管系統の失陥に起因する回転トルクの変化が容易に検出可能となり、高精度に異常検出ができる。
前記異常検出手段は、前記制動要求の大きさが判定基準制動力を超えた場合に異常判定処理を実行してもよい。制動要求の大きさが小さい場合、失陥に伴う回転トルクの変化も小さく、配管系統の失陥以外が原因で回転トルクが変化する場合との判別がつきにくいことがある。したがって、制動力が判定基準制動力になってから異常判定を行うことで、誤差領域における異常判定処理を除くことが可能になり、高精度の異常判定を行うことができる。
本発明によれば、X配管における片側失陥をシンプルな構成で容易に精度よく検出できる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)に係る液圧制動装置および液圧制動装置の異常検出装置の概略構成図を示す。本実施形態の液圧制動装置の異常検出装置は、液圧制動装置10から得られる情報の一部を利用して異常検出処理を行う。本実施形態の液圧制動装置の異常検出装置は、いわゆる「X配管」を有する液圧制動装置における作動液(例えばブレーキ液)の漏れ等の失陥を検出する。X配管は、例えば、左前輪用のホイールシリンダおよび右後輪用のホイールシリンダにブレーキ液を供給する第1配管系統12と、右前輪用のホイールシリンダおよび左後輪用のホイールシリンダにブレーキ液を供給する第2配管系統14とを備える。
図1に示すように、液圧制動装置10は、ブレーキペダル16、ストロークセンサ18、マスタシリンダ20、液圧アクチュエータ22を備える。また、液圧制動装置10は、車両の左前輪、右後輪、右前輪、左後輪、(全て図示せず)に設けられたブレーキディスクFL,RR,FR,RLと、ブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ24FL,24RR,24FR,24RL(以下、適宜総称して「ホイールシリンダ24」という)とを含むブレーキ装置としてのディスクブレーキユニットを備える。各ホイールシリンダ24は、それぞれ異なるブレーキ液流路を介して液圧アクチュエータ22に接続されている。また、液圧制動装置10は、当該液圧制動装置10の各部の後述する制御弁やモータの動作を制御する制御部としてのブレーキECU26を備えている。なお、図1に示す液圧アクチュエータ22は、アンチロックブレーキシステム(ABS)を実現する液圧アクチュエータで、その中でもシンプルな構成のものを示している。
各ディスクブレーキユニットにおいては、ホイールシリンダ24に液圧アクチュエータ22からブレーキ液が供給され、ブレーキ液の液圧により各車輪と共に回転するブレーキディスクFL,RR,FR,RLにブレーキパッド(図示せず)が押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。各ブレーキディスクFL,RR,FR,RLの近傍には、各車輪の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速センサ28FL,28RR,28FR,28RL(以下、適宜総称して「車輪速センサ28」という)が備えられている。車輪速センサ28は、検出した車輪速度を表す信号をブレーキECU26に送信する。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニットを用いているが、例えばドラムブレーキなどの他の液圧制動力付与機構を用いてもよい。
ドライバによってブレーキペダル16が踏み込まれると、ブレーキペダル16の操作量であるペダルストロークがストロークセンサ18に入力される。ストロークセンサ18は、入力されたペダルストロークを表す信号をブレーキECU26に送信する。また、後述する異常検出手段として機能する異常検出部100にも同じ信号を送信する。
本実施形態において、ストロークセンサ18は車両に対する制動要求の有無を検出する制動要求検出手段として機能する。なお、ここではブレーキペダル16の操作量を検出するためのセンサとしてストロークセンサ18を用いたが、ブレーキペダル16の踏力(ドライバがブレーキペダル16を踏む力)を検知する踏力センサや、マスタシリンダ20内の液圧を検知する液圧センサ等であってもよい。
マスタシリンダ20は、ドライバによるブレーキペダル16の操作によってブレーキ液をホイールシリンダ24に向けて送出する。マスタシリンダ20は、プライマリ室20aと、セカンダリ室20bと、プライマリピストン20cと、セカンダリピストン20dと、スプリング20eとを備える。
マスタシリンダ20は、プライマリピストン20cおよびセカンダリピストン20dによってプライマリ室20aとセカンダリ室20bとに区画されたタンデムタイプのマスタシリンダである。プライマリピストン20cには、ブレーキペダル16から延びるプッシュロッドが接続されている。そして、プライマリピストン20cは、スプリング20eの弾性力を受けてブレーキペダル16が踏み込まれていないときにブレーキペダル16を初期位置側に戻すようにプッシュロッドを押圧している。セカンダリピストン20dもまた、スプリング20eの弾性力を受けてプライマリピストン20cを介してプッシュロッドを押圧している。ドライバによってブレーキペダル16が踏み込まれると、プッシュロッドがマスタシリンダ20に進入し、プライマリピストン20cおよびセカンダリピストン20dが押圧される。これにより、プライマリ室20aおよびセカンダリ室20bにマスタシリンダ圧が発生する。
マスタシリンダ20のプライマリ室20aとセカンダリ室20bには、それぞれ液圧アクチュエータ22に向けて延びる管路A、管路Bが連結されている。また、マスタシリンダ20は、ブレーキ液を貯留するリザーバタンク20fに接続されている。リザーバタンク20fは、ブレーキペダル16が初期位置にあるときにプライマリ室20aおよびセカンダリ室20bのそれぞれと図示しない通路を介して接続され、マスタシリンダ20内にブレーキ液を供給したり、マスタシリンダ20内の余剰ブレーキ液を貯留する。
液圧アクチュエータ22は、前述したように第1配管系統12と第2配管系統14を有し、マスタシリンダ20のプライマリ室20aとホイールシリンダ24FLおよびホイールシリンダ24RRを接続する管路Cを備える。また、セカンダリ室20bとホイールシリンダ24FRおよびホイールシリンダ24RLを接続する管路Dを備える。管路Cは、その一端が管路Aに連結され、他端は、ABS保持弁30FLが設けられた個別管路H1、ABS保持弁30RRが設けられた個別管路H2、及びポンプ32aが設けられた個別管路H3に接続されている。管路Dは、その一端が管路Bに連結され、他端は、ABS保持弁30FRが設けられた個別管路H4、ABS保持弁30RLが設けられた個別管路H5、及びポンプ32bが設けられた個別管路H6に接続されている。
個別管路H1,H2,H4,H5のABS保持弁30FL,30RR,30FR,30RLは、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開弁される常開型電磁制御弁である。開状態とされたABS保持弁30FL,30RR,30FR,30RLは、ブレーキ液を双方向に流通させることができる。つまり、プライマリ室20aから供給されるブレーキ液を管路Aを介してホイールシリンダ24FL,24RRに向けて流すことができる。また、セカンダリ室20bから供給されるブレーキ液を管路Bを介してホイールシリンダ24FR,24RLに向けて流すことができる。逆にホイールシリンダ24FL,24RRからプライマリ室20aへブレーキ液を戻し、ホイールシリンダ24FR,24RLからセカンダリ室20bへブレーキ液を戻すことができる。
ソレノイドが通電されてABS保持弁30FL,30RRが閉弁されると、プライマリ室20aとホイールシリンダ24FL、24RRにおけるブレーキ液の流通は遮断される。また、ソレノイドが通電されてABS保持弁30FR,30RLが閉弁されると、セカンダリ室20bとホイールシリンダ24FR、24RLにおけるブレーキ液の流通は遮断される。なお、ABS保持弁30FL,30RR,30FR,30RLと並列にそれぞれ逆止弁34FL,34RR,34FR,34RLが設けられている。逆止弁34FL,34RRは、ホイールシリンダ24FL,24RRからそれぞれ管路Aに向かうブレーキ液の流れのみ許容し、その逆の流れを防止する。したがって、ホイールシリンダ24FL側またはホイールシリンダ24RR側からブレーキ液をプライマリ室20aに向かって戻す場合に、逆止弁34FLまたは逆止弁34RRは、ABS保持弁30FLまたはABS保持弁30RRを介した戻り流路と同様に戻り流路を形成して、迅速にブレーキ液をプライマリ室20aに戻すことを可能にする。また、逆止弁34FR,34RLは、ホイールシリンダ24FR,24RLからそれぞれ管路Bに向かうブレーキ液の流れのみ許容し、その逆の流れを防止する。したがって、ホイールシリンダ24FR側またはホイールシリンダ24RL側からブレーキ液をセカンダリ室20bに向かって戻す場合に、逆止弁34FRまたは逆止弁34RLは、ABS保持弁30FRまたはABS保持弁30RLを介した戻り流路と同様に戻り流路を形成して、迅速にブレーキ液をセカンダリ室20bに戻すことを可能にする。
個別管路H1のABS保持弁30FLおよび逆止弁34FLよりホイールシリンダ24FL側には、ホイールシリンダ24FLと並列にABS減圧弁36FLが設けられている。また、個別管路H2のABS保持弁30RRおよび逆止弁34RRよりホイールシリンダ24RR側には、ホイールシリンダ24RRと並列にABS減圧弁36RRが設けられている。そして、ABS減圧弁36FL,36RRの下流側には流路内リザーバタンク38aに接続された個別管路H7が形成されている。同様に、個別管路H4のABS保持弁30FRおよび逆止弁34FRよりホイールシリンダ24FR側には、ホイールシリンダ24FRと並列にABS減圧弁36FRが設けられている。また、個別管路H5のABS保持弁30RLおよび逆止弁34RLよりホイールシリンダ24RL側には、ホイールシリンダ24RLと並列にABS減圧弁36RLが設けられている。そして、ABS減圧弁36FR,36RLの下流側には流路内リザーバタンク38bに接続された個別管路H8が形成されている。
ABS減圧弁36FL,36RR、36FR,36RLは、それぞれON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁とされる常閉型電磁制御弁である。ABS減圧弁36FL,36RRが閉状態であるときには、流路内リザーバタンク38aへ向かうブレーキ液の流通は遮断される。ソレノイドに通電されてABS減圧弁36FL,36RRが開弁されると、流路内リザーバタンク38aへのブレーキ液の流通が許容される。ABS減圧弁36FR,36RLが閉状態であるときには、流路内リザーバタンク38bへ向かうブレーキ液の流通は遮断される。ソレノイドに通電されてABS減圧弁36FR,36RLが開弁されると、流路内リザーバタンク38bへのブレーキ液の流通が許容される。流路内リザーバタンク38a,38bは、ABS制御時にホイールシリンダ24から戻られるブレーキ液を一時的に貯留しておくタンクである。そして、流路内リザーバタンク38a,38bには、それぞれ個別管路H3,H6が接続されている。個別管路H3には、ポンプ32aと、このポンプ32aの前後に逆止弁40が設けられている。個別管路H6には、ポンプ32bと、このポンプ32bの前後に逆止弁40が設けられている。ポンプ32a,32bは、モータ42の駆動により動作し、例えばブレーキペダル16が踏み込まれていないときにブレーキ液を流路内リザーバタンク38a,38bから汲み上げる。つまり、プライマリ室20aやセカンダリ室20bからホイールシリンダ24FL,24RR,24FR,24RL等に向かうブレーキ液の流れがないときに、ブレーキ液をプライマリ室20aやセカンダリ室20bに戻す。その結果、リザーバタンク20fのブレーキ液の必要貯留量を維持する。なお、逆止弁40は、マスタシリンダ20から流路内リザーバタンク38a,38b側へブレーキ液が逆流するのを防止している。
このように構成される液圧制動装置10の動作を説明する。
通常制動時、すなわちドライバがブレーキペダル16を踏み込んで制動を要求した場合、プライマリ室20aおよびセカンダリ室20bがプライマリピストン20cおよびセカンダリピストン20dの移動により圧縮されて、ブレーキ液が吐出される。ブレーキ液は、開弁状態のABS保持弁30FL,30RR,30FR,30RLを通過し、ホイールシリンダ24FL,24RR,24FR,24RLのそれぞれに供給される。その結果、各車輪で制動力が発生して車両を減速または停止させる。一方、ドライバがブレーキペダル16の踏み込みを緩めるまたは解除すると、プライマリ室20aおよびセカンダリ室20b側がホイールシリンダ24FL,24RR,24FR,24RL側より低圧になる。その結果、ホイールシリンダ24FL,24RR,24FR,24RLからブレーキ液がABS保持弁30FL,30RR,30FR,30RLおよび逆止弁34FL,34RR,34FR,34RLを通って、プライマリ室20aおよびセカンダリ室20bに戻り制動力が低下また消失する。
また、走行中に車輪のいずれかまたは全部がロックした場合、ブレーキECU26はABS制御を実行する。この場合、ドライバによりブレーキペダル16が踏み込まれているので、通常制動時と同様にプライマリ室20aおよびセカンダリ室20bからブレーキ液がホイールシリンダ24FL,24RR,24FR,24RLに供給され、制動力が発生している。ただし、ロックしている車輪のホイールシリンダ24は、ロックの解消のために制動力を低下させる必要がある。そのため、ブレーキECU26はロックしている車輪のホイールシリンダ24に対応するABS保持弁30およびABS減圧弁36のソレノイドをON/OFF制御して制動力を調整してロック状態を解消する。なお、ABS制御は、例えば、ブレーキペダル16の踏み込みが解除された場合、車両速度が所定低速度以下になった場合、車輪のロック状態が所定状態以下になった場合等に終了させる。
このように構成される「X配管」を含む液圧制動装置10において、第1配管系統12または第2配管系統14のいずれかに異常、例えば液漏れ失陥等が発生した場合、前述したように、車両の対角位置に配置されている制動力の大きな前輪用ブレーキ装置と制動力がそれより小さな後輪用ブレーキ装置の制動力差に起因して車両が一方向に曲がって行ってしまうことがある。このような制動時の車両進行方向の曲がりは、X配管の失陥と共に突然発生するため、「X配管」における失陥は早急に検出する必要がある。そこで、本実施形態の液圧制動装置10においては、異常検出装置を備えている。
前述したように、X配管の失陥に起因する制動力差が生じると、ハンドルが接続されたステアリングシャフトに、失陥に基づく旋回方向の回転トルクが発生する。本実施形態の異常検出装置は、このとき発生する回転トルクを用いてX配管の異常を検出する。具体的には、異常検出装置は、車両に対する制動要求の大きさを検出する制動要求検出手段と、制動要求に応じて制動力が発生した場合に、その制動力の発生前と発生後とで操舵ハンドルの軸周りに発生する回転トルクの値を検出するトルク検出手段と、制動要求の大きさに対する回転トルクの値が所定値より大きい場合に第1配管系統または第2配管系統のいずれかに異常が発生したことを検出する異常検出手段と、を含んで構成されている。
本実施形態の場合、ブレーキペダル16の踏み込み量、つまりドライバが要求する制動要求の大きさを検出するストロークセンサ18が制動要求検出手段として機能することができる。また、回転トルクを検出するトルクセンサ44が、トルク検出手段として機能することができる。X配管の片系統の失陥により車輪が旋回挙動を示す場合、その変化は、ハンドル側に伝達される。つまり、トルクセンサ44はX配管の片系統の失陥が原因となる回転トルクの変化も検出できる。
異常検出手段として機能する異常検出部100は、例えばブレーキペダル16の踏力の変化と回転トルクの変化の関係を示す異常検出マップを有し、取得した踏力の大きさに対する回転トルクの値が所定値より大きい場合にX配管のいずれかの配管系統に異常があると判定する。なお、図1の場合、異常検出部100は、ストロークセンサ18からの信号をブレーキECU26とは別途取得しているが、ブレーキECU26を介してこの信号を取得してもよい。また、図1の場合、ブレーキECU26と異常検出部100とを別構成にしている例を示しているが、ブレーキECU26の機能の一部として異常検出部100を含めるようにしてもよい。
前述したように、ドライバがブレーキペダル16を踏み込んで制動力を要求するとマスタシリンダ20がブレーキ液を第1配管系統12および第2配管系統14に送り出す。第1配管系統および第2配管系統のいずれにおいても異常がなければ、ブレーキ液は、第1配管系統12および第2配管系統14を通りホイールシリンダ24FL,24RR,24FR,24RLに供給される。その結果、左右前輪で同じ大きさの制動力が発生する。同様に、左右後輪で同じ制動力が発生する。つまり、ドライバがハンドル操作をしない限り、制動時に車両は回転トルクの変化を伴うことなく減速または停止する。
一方、第1配管系統12と第2配管系統14のいずれかに異常がある場合、例えば、第1配管系統12が液漏れ等の失陥を抱えている場合、左前輪および右後輪の制動力は発生しないか、発生したとしても右前輪および左後輪の制動力より小さい。そのため、制動に伴い右前輪の制動力が左後輪の制動力をより大きくなり車両は右方向に操舵した場合と同様に旋回し始める。その結果、トルクセンサ44で配管系統の失陥に伴う回転トルクが検出されるようになる。
図2は、X配管のいずれか一方の配管系統に失陥が生じている場合の制動時におけるブレーキペダル16の踏力F、つまり制動要求の大きさと、配管系統の失陥が原因で発生する回転トルクMTの変化の様子を説明する説明図である。なお、本実施形態において、配管系統の失陥とは、配管そのものにおける液漏れ等の失陥により制動要求量に対応する制動力が発生しない場合の他、ホイールシリンダ24等の不具合で制動要求量に対応する制動力が発生しない場合等も含むものとする。
ドライバがハンドル操作を行っていない場合、基本的には直進走行時にブレーキペダル16を踏み込むと、踏力Fの増加に伴い配管系統の失陥に伴う旋回が発生して、図2に示すようにトルクセンサ44の検出値である回転トルクMTが増加する。また、踏力Fが一定になると回転トルクMTも一定になる。そして、ブレーキペダル16の踏み込みを緩め、踏力Fが減少すると、回転トルクMTも減少する。なお、この場合、車両の構造上の特性により車輪は直進姿勢に戻るような挙動を示すことになる。もちろん、X配管の配管系統に失陥がなく正常に第1配管系統12および第2配管系統14が機能する場合には、ドライバがハンドル操作をしなければ、図2に示すような踏力Fと回転トルクMTの関係はない。
異常検出部100は、図3に一例で示すような異常判定を行うための異常領域マップを有している。ここでは、理解を容易にするために車両が直進走行している場合に異常判定処理を行う例を説明する。上述のように、X配管に異常がない場合は、踏力F(制動要求)の大きさの大小に拘わらず制動に伴う回転トルクMTの変化は基本的にはない。ただし、車輪のホイールバランスが適切でなかった場合やタイヤの偏摩耗の状態、ブレーキパッドの偏摩耗の状態、その他車両の特性によって制動時に回転トルクMTが多少変化する場合がある。したがって、本実施形態においては、X配管に異常がない場合にも回転トルクMTが変化する場合を考慮して、異常領域と正常領域を閾値ラインSによって分けている。つまり、踏力Fの大きさに対する回転トルクMTが閾値ラインSを超えた場合にX配管に異常があると判定する。なお、閾値ラインSは、例えば予め試験等により決定しておくことができる。ところで、第1配管系統12と第2配管系統14で、どちらに失陥が生じているかによって、左回転の回転トルクMTが生じるか右回転の回転トルクMTが生じるかが決まる。したがって、右回転の回転トルクMTが閾値ラインSを越えた場合は、つまり、右前輪に対する制動力が左前輪に対する制動力より大きい場合には、第1配管系統12に失陥が生じていると判定することができる。また、左回転の回転トルクMTが閾値ラインSを越えた場合は、つまり、左前輪に対する制動力が右前輪に対する制動力より大きい場合には、第2配管系統14に失陥が生じていると判定することができる。
ところで、ドライバは、走行中にハンドルが一方に取られるように感じた場合、その感覚がある程度大きくなると、不安を感じてハンドルを所望の進行方向、この場合は直進走行ができるように修正することがある。つまり、このときX配管の失陥により発生した回転トルクMTを相殺するような回転トルクをハンドル操作によって転舵装置に入力する。図4は、ドライバがハンドルの修正操作を行わない場合と、行う場合の回転トルクMTの変化の一例を示す説明図である。図4(a)は、X配管の失陥により回転トルクMTが発生してもドライバがハンドル修正操作を行わない場合の踏力Fと回転トルクMTと舵角Hの関係を示している。この場合、図2で示したように、踏力Fの増加に伴い、回転トルクMTが増加する。その結果、ハンドルの舵角Hも増加する。また、踏力Fが一定になると回転トルクMT、舵角Hも一定になる。そして、ブレーキペダル16の踏み込みを緩め、踏力Fが減少すると、回転トルクMT、舵角Hも減少する。すなわち、舵角≒0に戻る。図4(b)は、X配管の失陥により回転トルクMTが発生した場合に、ドライバがハンドル修正操作を行った場合の踏力Fと回転トルクMTと舵角Hの関係を示している。この場合、踏力Fの増加に伴い、回転トルクMTが増加する。その結果、ハンドルの舵角Hも増加する。しかし、ドライバが、ハンドルが取られた方向とは逆方向にハンドルを回転させる。つまり、ドライバがハンドルを直進方向に修正するように戻し、その位置でしっかり保持することにより、逆方向の回転トルクが発生する。その結果、失陥により生じた回転トルクMTは、逆回転トルクの入力により急激に減少する。つまり、失陥により発生する回転トルクと同等の回転トルクを逆方向にドライバ自身が発生させる。この場合、舵角は直進状態に戻るが回転トルクMTは、正負の反転タイミングを除いて発生続けることになる。このように、回転トルクMTを用いた異常検出においては、ドライバがハンドル修正を行っても回転トルクMTは生じ続けるので、ハンドル修正中でも異常検出を行うことができる。そして、ブレーキペダル16の踏み込みを緩め、踏力Fが減少すると、失陥による回転トルクMTが減少するので、それに伴いドライバがハンドルの舵角を維持するためにハンドルに入力している力も弱まり、トルクセンサ44で検出される回転トルクMTも減少する。なお、この場合、ドライバは依然として車両を直進させようとして、ハンドルを固定しているので、表面的な舵角Hの変化は現れない。このように、制動時の回転トルクの発生状態を検出することにより、X配管に失陥が生じていることが検出できる。
図5は、車両が走行中に一定周期(例えば0.05sec)で繰り返される異常判定処理を説明するフローチャートの一例である。異常検出部100は、車両走行中にトルクセンサ44からの信号あるいは各車輪速センサ28からの信号の比較、またはその両方の信号に基づき、車両が直進走行状態と見なせるか否か判定する(S100)。もし、直進走行状態と見なせない場合(S100のN)、例えばドライバが操舵を連続的に行い回転トルクを変化させながら旋回しているような場合は、回転トルクの変化が生じてしまい、ドライバの意図による回転トルクかX配管の失陥による回転トルクかの判別が付きにくい。したがって、車両が直進走行状態と見なせない場合は、異常判定処理を行うことなくこのフローを終了する。なお、別の実施例では、舵角固定で旋回しているような場合、例えば、高速道路等で大きなRのカーブを走行している場合は、舵角が一定に保たれて(一定舵角)走行しているので、回転トルクが旋回状態にしたがって一定になり、実質的に直進走行をしている場合と同じと見なせるので、異常判定を実施するようにしてもよい。
S100において、直進走行と見なせる場合(S100のY)、ストロークセンサ18からの信号の有無により制動要求があるか否か判定する(S102)。制動要求がない場合(S102のN)、このフローを終了する。一方、制動要求があった場合(S102のY)、異常検出部100は制動力が、判定基準制動力を超えているか否か判定する(S104)。例えば、制動力が小さい場合、もしX配管に失陥が生じていたとしても、それに伴う回転トルクの変化は小さく、X配管の失陥以外の要因、例えばホイールバランスやタイヤやブレーキパッドの偏摩耗が原因の回転トルクの変化がたまたま生じている場合との区別が付きにくい。そこで、本実施形態では、制動力がある程度大きい判定基準制動力を超えた場合のみ異常判定を行うようにしている。なお、判定基準制動力は、予め試験等を行い決定しておくことができる。制動力が判定基準制動力以下である場合(S104のN)、このフローを終了する。一方、制動力が判定基準制動力を超えている場合(S104のY)、異常検出部100は、トルクセンサ44からの信号に基づき、制動要求に応じて制動力が発生した場合に、その制動力の発生前と発生後における回転トルクの値を検出し、制動要求の大きさに対する回転トルクが図2における閾値ラインSを超えているか否か、つまり、回転トルクがX配管異常なしの判定をする標準領域内か否かを判定する(S106)。もし、制動要求の大きさに対する回転トルクが閾値ラインSを超えていない場合(S106のN)、X配管は異常なし、または緊急性は低いと判定して、このフローを終了する。
一方、制動要求の大きさに対する回転トルクが閾値ラインSを超えた場合(S106のY)、トルクセンサ44の出力している回転トルクの方向を判定する。もし、回転トルクの右回転が確認された場合(S108のY)、右前輪の大きな制動と左後輪のそれより小さな制動により右旋回が発生したと判定できる。つまり、第1配管系統の失陥であると判別できる(S110)。逆に、回転トルクの左回転が確認された場合(S108のN)、左前輪の大きな制動と右後輪のそれより小さな制動により左旋回が発生したと判定できる。つまり、第2配管系統の失陥であると判別できる(S112)。そして、異常検出部100は警告灯やディスプレイ表示器、音声装置等で異常警報をドライバに提供して(S114)、異常検出処理を終了する。異常警報は、単に異常があることを通知するのみでもよいし、異常と共にその異常系統を特定してもよい。このように、本実施形態によれば、液圧検出センサを用いることなく、X配管の失陥を容易に検出することができる。
なお、異常が検出された場合、例えば電動パワーステアリング装置(EPS)等を用いて、回転トルクの変化抑制を行って車両の回頭抑制を行ったり、ハンドルの操作感を変化させることでドライバにX配管の異常を通知すると共にハンドルの修正操作を促すようにしてもよい。具体的には、X配管の失陥により右回転の回転トルクが生じた場合、EPSを用いて右操舵を重くし、左操舵を軽くする。逆にX配管の失陥により左回転の回転トルクが生じた場合、左操舵を重くし、右操舵を軽くする。
ところで、制動を行いながらドライバがハンドルの切り増しを行い旋回する場合もある。このような場合でも、X配管に失陥が生じているときには、ハンドルの切り増しにより発生する回転トルクに失陥に起因する回転トルクが追加されることになる。例えば、図6(a)の場合は、失陥による旋回方向にさらに旋回をしようとしてドライバがハンドルの切り増しをした場合を示す。この場合、ハンドルの切り増しにより舵角Hが増加し、それに伴い回転トルクMTは、切り増しがないときに失陥により発生する回転トルクMT0に切り増しにより発生した回転トルクが加えられた値となる。したがって、X配管の異常検出中にハンドルが切り増しされた場合でも、ブレーキペダル16の踏力Fの変化に伴う回転トルクMTの変化が現れ、X配管の異常検出が可能となる。同様に、図6(b)の場合は、失陥による旋回方向とは逆方向に旋回をしようとしてドライバがハンドルの切り増しをした場合を示す。この場合、ハンドルの切り増しにより、舵角Hが失陥による旋回方向とは逆方向に増加する。それに伴い回転トルクMTは、切り増しがないときに失陥により発生する回転トルクMT0から急激に減少して、トルクセンサ44で検出される回転トルクが反転して現れる。したがって、X配管の異常検出中にハンドルが逆方向に切り増しされた場合でも、ブレーキペダル16の踏力Fの変化に伴う回転トルクMTの変化が現れ、X配管の異常検出が可能となる。
図1の説明では、ABS機能を有する液圧制動装置を例にとり説明したが、「X配管」を有する他の構成の液圧制動装置でも本実施形態と同様にX配管の異常を容易に検出することができる。
以上、本発明を上述の実施形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、実施形態や変形例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
10 液圧制動装置、 12 第1配管系統、 14 第2配管系統、 16 ブレーキペダル、 18 ストロークセンサ、 22 液圧アクチュエータ、 24 ホイールシリンダ、 26 ブレーキECU、 28 車輪速センサ、 44 トルクセンサ、 100 異常検出部。
Claims (4)
- 車両の左前輪用のホイールシリンダおよび右後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第1配管系統と、右前輪用のホイールシリンダおよび左後輪用のホイールシリンダに作動液を供給して制動力を発生させるための第2配管系統とを含む液圧配管を有する液圧制動装置の異常検出装置であって、
前記車両に対する制動要求の大きさを検出する制動要求検出手段と、
前記制動要求に応じて制動力が発生した場合に、その制動力の発生前と発生後とで操舵ハンドルの軸周りに発生する回転トルクの値を検出するトルク検出手段と、
前記制動要求の大きさに対する前記回転トルクの値が所定値より大きい場合に前記第1配管系統または前記第2配管系統のいずれかに異常が発生したことを検出する異常検出手段と、
を含むことを特徴とする液圧制動装置の異常検出装置。 - 前記異常検出手段は、異常検出時の前記回転トルクの回転方向に基づいて異常が発生した配管系統を判別することを特徴とする請求項1に記載の液圧制動装置の異常検出装置。
- 前記異常検出手段は、前記車両の直進走行中に前記制動要求がなされたときに異常判定処理を実行することを特徴とする請求項1または請求項2記載の液圧制動装置の異常検出装置。
- 前記異常検出手段は、前記制動要求の大きさが判定基準制動力を超えた場合に異常判定処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液圧制動装置の異常検出装置。
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