JP2023085910A - 制動制御装置 - Google Patents

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Shinji Ushirozako
将仁 寺坂
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Abstract

【課題】クロス配管の制動装置を備える車両の制動制御装置において、片方の制動系統が失陥している状態を精度良く判定する。【解決手段】制動制御装置10は、右前輪91frおよび左後輪91rlに付与する制動力を調整する第1制動系統71と、左前輪91flおよび右後輪91rrに付与する制動力を調整する第2制動系統72と、を有する車両90の制動装置80に適用される。制動制御装置10は、車両90に実際に作用するヨーレートを検出するヨーレート検出部として取得部11を備えている。制動制御装置10は、失陥判定部として失陥診断部13を備えている。失陥診断部13は、車両90を制動する際に、車輪速度とヨーレートとに基づいて、第1制動系統71および第2制動系統72のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態であるか否かを判定し、いずれか一つの制動系統が失陥状態である場合に片系統失陥状態であると判定する。【選択図】図1

Description

本発明は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1に開示されているように、右前輪および左後輪の制動力を調整する制動系統と、左前輪および右後輪の制動力を調整する制動系統と、を独立させた制動装置を備える車両が知られている。以下では、上記のような制動装置のことを、「クロス接続されている制動系統を有する制動装置」ということもある。また、クロス接続されている制動系統を有する制動装置を備える車両のことを、「クロス接続の制動装置を備える車両」ということもある。
特許文献1に開示されている制動制御装置は、クロス接続されている制動系統を有する制動装置におけるいずれか一方の制動系統が失陥した状態であるか否かを判定できる。失陥の判定は、制動装置における作動液の漏れを検出することによって行われている。具体的には、特許文献1に開示されている制動制御装置は、ブレーキペダルを踏んでいないときにリザーバタンクの液面低下を検出すると失陥が発生していると判定している。
特開2020-138657号公報
クロス接続の制動装置を備える車両において、いずれか一つの制動系統が失陥した状態である片系統失陥状態の場合には、制動の際に左右の車輪で制動力差が生じることから車両にヨーモーメントが発生する。このため、クロス接続の制動装置を備える車両では、片系統失陥状態は、車両の直進安定性に影響を及ぼす。
特許文献1に開示されている制動制御装置のようなリザーバタンクの液面検出を行う場合には、車両の揺れ、路面の傾斜等によって、液面を検出する精度にばらつきが生じると考えられる。液面を検出する精度のばらつきは、片系統失陥状態の判定精度を低下させるおそれがある。
クロス接続の制動装置を備える車両の挙動を不安定にする要因となる片系統失陥状態を、より精度よく判定することが求められている。
上記課題を解決するための制動制御装置は、車輪のうち右前輪および左後輪に付与する制動力を調整する第1制動系統と、前記車輪のうち左前輪および右後輪に付与する制動力を調整する第2制動系統と、を有する車両の制動装置に適用される制動制御装置であって、各車輪の速度を車輪速度として検出する車輪速検出部と、前記車両に実際に作用するヨーレートをヨーレート検出値として検出するヨーレート検出部と、前記車両を制動する際に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態であるか否かを前記車輪速度と前記ヨーレート検出値とに基づいて判定し、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態である場合に片系統失陥状態であると判定する失陥判定部と、を備えることをその要旨とする。
上記第1制動系統と第2制動系統とを有する制動装置を備える車両が片系統失陥状態に陥ると、第1制動系統と第2制動系統とが独立していることから、制動の際に左右の車輪速度間で大小関係が生じると考えられる。このため、車輪速度と車両に実際に作用するヨーレートとを用いることによって、片系統失陥状態である車両が示す挙動を捉えることができる。
上記構成によれば、車輪速度とヨーレート検出値とを用いて、片系統失陥状態であるか否かを判定することができる。すなわち、車輪速度とヨーレート検出値とを用いることによって片系統失陥状態である車両が示す挙動の変化を捉えて、片系統失陥状態を精度よく判定することができる。
図1は、制動制御装置の一実施形態と、同制動制御装置の制御対象である制動装置と、同制動装置を備える車両と、を示す模式図である。 図2は、同制動制御装置が実行する失陥判定処理の流れを示すフローチャートである。 図3は、片系統失陥状態にある車両の模式図である。 図4は、片系統失陥状態にある車両を制動する際の車輪速度とヨーレート検出値とを示す図である。 図5は、同制動制御装置がリアリフト抑制制御を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。 図6は、同制動制御装置が実行する補償制御の処理の流れを示すフローチャートである。 図7は、補償制御によって調整される制動力の推移を示す図である。 図8は、補償制御によって調整される制動力の推移を示す図である。
以下、制動制御装置の一実施形態について、図1~図8を参照して説明する。
図1は、制動制御装置10と、制動制御装置10が適用される車両90と、を示す。
車両90は、たとえば、四輪の車両である。車両90は、車輪として、右前輪91fr、左後輪91rl、左前輪91flおよび右後輪91rrを備えている。
車両90は、制動装置80を備えている。車両90は、車両90の運転者によって操作が可能な制動操作部材92を備えている。たとえば、制動操作部材92は、ブレーキペダルである。運転者は、制動操作部材92を操作することによって、制動装置80を介して制動力を発生させて車両90を制動することができる。
車両90は、報知装置93を備えていてもよい。報知装置93は、車両90の状態を運転者等に報知することを目的とした装置である。報知装置93としては、たとえば、警告灯、表示装置、スピーカ装置等が挙げられる。
〈制動装置〉
制動装置80の一例は、制動装置80の一例は、摩擦制動装置である。図1には、摩擦制動装置の一例として液圧制動装置を示している。
制動装置80は、右前輪91frおよび左後輪91rlに付与する制動力を調整する第1制動系統71と、左前輪91flおよび右後輪91rrに付与する制動力を調整する第2制動系統72と、を有する。第1制動系統71と第2制動系統72とは、独立した制動系統である。すなわち、制動装置80は、いわゆるクロス配管の制動装置である。クロス配管は、X配管、ダイアゴナル配管と呼ばれることもある。制動装置80は、クロス接続されている制動系統を有する制動装置の一例である。車両90は、クロス接続の制動装置を備える車両の一例である。
制動装置80は、液圧発生装置81を備えている。制動装置80は、ブレーキアクチュエータ70を備えている。制動装置80は、各車輪に対応した制動機構を備えている。
図1に示す第1制動機構84a、第2制動機構84b、第3制動機構84c、第4制動機構84dは、順に、右前輪91fr、左後輪91rl、左前輪91fl、右後輪91rrに対応した制動機構である。制動機構は、対応する車輪に制動力を付与することができる。各制動機構は、ホイールシリンダと、車輪と一体回転する回転体と、回転体に対して押し付けることができる摩擦材と、によって構成されている。制動機構の一例は、ディスクブレーキである。制動機構は、ドラムブレーキであってもよい。各制動機構は、ホイールシリンダ内の液圧に応じて対応する車輪に摩擦制動力を発生させることができる。各制動機構は、ホイールシリンダ内の液圧が高いほど、回転体に対して摩擦材を押し付ける力が大きくなるように構成されている。すなわち、各制動機構は、ホイールシリンダ内の液圧が高いほど大きな制動力を車輪に付与することができる。
液圧発生装置81は、ブースタ82とマスタシリンダ83とを備えている。ブースタ82は、制動操作部材92の操作を助勢して、助勢された操作力をマスタシリンダ83に伝達することができる。ブースタ82としては、負圧ブースタ、ハイドロリックブースタ、電動ブースタ等を採用することができる。マスタシリンダ83は、制動操作部材92の操作に応じて液圧を発生させる。マスタシリンダ83が発生させる液圧のことをMC圧Pmcという。マスタシリンダ83は、タンデム式のマスタシリンダである。マスタシリンダ83は、MC圧Pmcに応じた量の作動液を一方のポートから第1制動系統71に圧送する。マスタシリンダ83は、MC圧Pmcに応じた量の作動液を他方のポートから第2制動系統72に圧送する。
ブレーキアクチュエータ70は、マスタシリンダ83とホイールシリンダとの間に配置されている。ブレーキアクチュエータ70は、作動液の流路として、第1液圧回路61と、第2液圧回路62と、を備えている。ブレーキアクチュエータ70は、複数の電磁弁と、駆動モータ77と、駆動モータ77によって作動される第1ポンプ73および第2ポンプ74と、第1リザーバ75および第2リザーバ76とを備えている。
第1液圧回路61について説明する。第1液圧回路61は、第1制動系統71を構成している。第1液圧回路61は、第1制動機構84aに接続されている第1経路63aを備えている。第1液圧回路61は、第2制動機構84bに接続されている第2経路63bを備えている。
第1経路63aには、常開型の第1増圧弁64aと常閉型の第1減圧弁65aとが配置されている。第1制動機構84aのホイールシリンダは、第1増圧弁64aと第1減圧弁65aとの間に接続されている。
第2経路63bには、常開型の第2増圧弁64bと常閉型の第2減圧弁65bとが配置されている。第2制動機構84bのホイールシリンダは、第2増圧弁64bと第2減圧弁65bとの間に接続されている。
第1リザーバ75は、第1減圧弁65aを介して流出した作動液および第2減圧弁65bを介して流出した作動液を一時貯留する。
第1ポンプ73は、第1リザーバ75に一時貯留されている作動液を吸引して、第1液圧回路61における第1増圧弁64aおよび第2増圧弁64bとマスタシリンダ83との間に吐出する。
第1制動系統71における第1液圧回路61には、マスタシリンダ83から圧送される作動液の液圧を検出するMC圧センサSE7が接続されている。MC圧センサSE7からの検出信号は、制動制御装置10に入力される。MC圧センサSE7からの検出信号に基づいて、制動制御装置10は、MC圧Pmcを取得する。MC圧センサSE7は、マスタシリンダ83が発生させる液圧、すなわちMC圧Pmcを検出可能な液圧検出装置の一例である。MC圧センサSE7を備えている第1制動系統71は、MC圧Pmcを検出可能な制動系統である。
第2液圧回路62について説明する。第2液圧回路62は、第2制動系統72を構成している。第2液圧回路62は、第1液圧回路61とは異なりMC圧センサSE7を備えていない。第2液圧回路62は、第3制動機構84cに接続されている第3経路63cを備えている。第2液圧回路62は、第4制動機構84dに接続されている第4経路63dを備えている。
第3経路63cには、常開型の第3増圧弁64cと常閉型の第3減圧弁65cとが配置されている。第3制動機構84cのホイールシリンダは、第3増圧弁64cと第3減圧弁65cとの間に接続されている。
第4経路63dには、常開型の第4増圧弁64dと常閉型の第4減圧弁65dとが配置されている。第4制動機構84dのホイールシリンダは、第4増圧弁64dと第4減圧弁65dとの間に接続されている。
第2リザーバ76は、第3減圧弁65cを介して流出した作動液および第4減圧弁65dを介して流出した作動液を一時貯留する。
第2ポンプ74は、第2リザーバ76に一時貯留されている作動液を吸引して、第2液圧回路62における第3増圧弁64cおよび第4増圧弁64dとマスタシリンダ83との間に吐出する。
ブレーキアクチュエータ70を介してマスタシリンダ83からホイールシリンダに作動液が供給される。制動装置80では、マスタシリンダ83が発生させるMC圧Pmcに応じて車輪に付与される制動力としては、前輪に付与される制動力の方が後輪に付与される制動力よりも大きくなるように構成されている。
第1増圧弁64aおよび第1減圧弁65aを制御することによって、第1制動機構84aのホイールシリンダ内の液圧を、他のホイールシリンダ内の液圧とは別個に調整することができる。また、同様に、第2制動機構84b、第3制動機構84cおよび第4制動機構84dのホイールシリンダ内の液圧を、それぞれ、各増圧弁および各減圧弁を制御することによって、他のホイールシリンダ内の液圧とは別個に調整することができる。
〈センサ〉
車両90は、各種センサを備えている。図1には、各種センサの一例として、第1車輪速センサSE1、第2車輪速センサSE2、第3車輪速センサSE3、第4車輪速センサSE4、ヨーレートセンサSE5およびGセンサSE6を示している。各種センサからの検出信号は、制動制御装置10に入力される。
第1~第4車輪速センサSE1~SE4は、各車輪の速度を検出するセンサである。第1車輪速センサSE1、第2車輪速センサSE2、第3車輪速センサSE3、第4車輪速センサSE4は、それぞれ順に、右前輪91fr、左後輪91rl、左前輪91flおよび右後輪91rrに対応している。第1~第4車輪速センサSE1~SE4からの検出信号に基づいて、制動制御装置10は、車輪速度を取得することができる。
ヨーレートセンサSE5は、車両90のヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサSE5からの検出信号に基づいて、制動制御装置10は、ヨーレート検出値Yrsを取得することができる。ヨーレート検出値Yrsは、車両90が左方向に旋回している状態、すなわち車両90を上方から見たときに反時計回りの方向に旋回している状態の場合に、正の値を採るように設定されている。一方で、車両90が右方向に旋回している状態、すなわち車両90を上方から見たときに時計回りの方向に旋回している状態の場合には、ヨーレート検出値Yrsは、負の値を採るように設定されている。
GセンサSE6は、車両90の前後方向における加速度を検出するセンサである。GセンサSE6からの検出信号に基づいて、制動制御装置10は、車体減速度Gを算出することができる。車体減速度Gは、車両90の速度が減速方向に変化しているほど大きい値を採る。
〈制動制御装置〉
制動制御装置10は、各種の制御を実行する複数の機能部によって構成されている処理回路である。図1には、機能部の一例として、取得部11、算出部12、系統間車輪速度差判定部13、失陥診断部14、制動制御部15を示している。制動制御装置10が備える各機能部は、互いに情報の送受信が可能である。
取得部11について説明する。取得部11は、ヨーレート検出値Yrsを取得することができる。取得部11は、ヨーレート検出部の一例である。取得部11は、各車輪の車輪速度を取得することができる。取得部11は、車輪速検出部の一例である。
算出部12について説明する。算出部12は、車体減速度Gを算出することができる。算出部12は、各車輪の車輪速度に基づいて車体速度VSを算出することができる。
算出部12は、左右の車輪速度差に基づいて、車輪速度を基準とした推定のヨーレートを算出することができる。たとえば、算出部12は、左後輪91rlの車輪速度VWrlと右後輪91rrの車輪速度VWrrとの差分に基づいて、ヨーレート算出値Yrwを算出することができる。算出部12は、ヨーレート算出部の一例である。
系統間車輪速度差判定部13は、車両90の第1制動系統71および第2制動系統72のうち一方を選択して、選択した制動系統が系統間車輪速度差あり状態であるか否かを判定することができる。以下では、選択された一方の制動系統を対象系統ということがある。また、対象系統ではない他方の制動系統を非対象系統ということがある。
系統間車輪速度差あり状態について説明する。系統間車輪速度差あり状態とは、対象系統に属する前輪の車輪速度と、非対象系統に属する前輪の車輪速度との間で所定の車輪速度差が発生している状態であり、且つ、対象系統に属する後輪の車輪速度と、非対象系統に属する後輪の車輪速度との間で所定の車輪速度差が発生している状態である。
所定の車輪速度差が発生している状態とは、対象系統における車輪速度と非対象系統における車輪速度との間に所定の偏差があり、対象系統における車輪速度と非対象系統における車輪速度との大小関係も所定の状態にあることを言う。本実施形態では、所定の車輪速度差が発生している状態は、たとえば前輪に関して、対象系統によって制動力が付与される対象である前輪の車輪速度が、非対象系統によって制動力が付与される前輪の車輪速度よりも小さい状態とする。たとえば後輪に関しては、対象系統によって制動力が付与される対象である後輪の車輪速度が、非対象系統によって制動力が付与される後輪の車輪速度よりも小さい状態を、所定の車輪速度差が発生している状態とする。
系統間車輪速度差判定部13による判定の一例を具体的な例を用いて説明する。たとえば、系統間車輪速度差判定部13は、第1制動系統71を対象系統と選択した場合には、第2制動系統72によって制動力が付与される対象である左前輪91flの車輪速度が、第1制動系統71によって制動力が付与される対象である右前輪91frの車輪速度に所定の前輪速度差しきい値を加えた値よりも大きく、且つ、第2制動系統72によって制動力が付与される対象である右後輪91rrの車輪速度が、第1制動系統71によって制動力が付与される対象である左後輪91rlの車輪速度に所定の後輪速度差しきい値を加えた値よりも大きい場合に、第1制動系統71が系統間車輪速度差あり状態にあると判定する。
また、たとえば、系統間車輪速度差判定部13は、第2制動系統72を対象系統と選択した場合には、第1制動系統71によって制動力が付与される対象である右前輪91frの車輪速度が、第2制動系統72によって制動力が付与される対象である左前輪91flの車輪速度に所定の前輪速度差しきい値を加えた値よりも大きく、且つ、第1制動系統71によって制動力が付与される対象である左後輪91rlの車輪速度が、第2制動系統72によって制動力が付与される対象である右後輪91rrの車輪速度に所定の後輪速度差しきい値を加えた値よりも大きい場合に、第2制動系統72が系統間車輪速度差あり状態にあると判定する。
前輪速度差しきい値および後輪速度差しきい値は、適宜設定することができる。前輪速度差しきい値および後輪速度差しきい値は、「0」以上の値とすることができる。前輪速度差しきい値と後輪速度差しきい値とは、異なる値に設定してもよいし、同じ値に設定してもよい。
失陥診断部14について説明する。失陥診断部14は、制動装置80の第1制動系統71および第2制動系統72が失陥状態であるか否かを診断する機能を備えている。失陥状態とは、マスタシリンダ83のポートに接続されている液路から制動機構までの少なくとも一つの構成要素に発生した異常によって、車輪に制動力を付与する機能を発揮できない状態である。失陥診断部14は、失陥判定処理を実行して制動系統が失陥状態であるか否かを判定する。失陥診断部14は、第1制動系統71および第2制動系統72のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態であるか否かを判定する失陥判定部の一例である。失陥診断部14は、第1制動系統71および第2制動系統72のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態である場合に片系統失陥状態であると判定する失陥判定部の一例である。
失陥診断部14は、第1制動系統71および第2制動系統72のうち失陥状態にある制動系統を失陥系統として特定することもできる。失陥診断部14は、第1制動系統71および第2制動系統72のうち失陥状態にない制動系統を残存系統として特定することもできる。失陥診断部14は、失陥系統および残存系統を特定する特定部でもある。
制動制御部15は、制動装置80を制御する機能を備えている。たとえば、ブレーキアクチュエータ70の電磁弁を制御することによって、各車輪の制動力を別個に調整することができる。制動制御部15が実行する制御として、たとえば、アンチロックブレーキ制御、リアリフト抑制制御、補償制御が挙げられる。
アンチロックブレーキ制御は、車両90の制動中に車輪のロックを抑制する制御である。以下ではアンチロックブレーキ制御のことをABS制御という。制動制御部15は、ABS開始条件が成立した場合に、ABS制御を開始する。ABS開始条件は、たとえば、車体速度に対して車輪速度が落ち込んで、車輪のスリップ量がしきい値以上である場合に成立していると判定される。
リアリフト抑制制御は、リアリフトの発生を抑制する制御である。リアリフトは、車両90の制動中に、ピッチングモーメントによって後輪の荷重が減少した際に車両90の後輪が路面から浮き上がる現象である。リアリフト抑制制御では、車体減速度Gの目標値として目標減速度GTが設定される。制動制御部15は、車体減速度Gが目標減速度GTよりも大きい場合には制動力を抑制する。
補償制御は、片系統失陥状態を補うために実行される。制動制御部15は、片系統失陥状態である場合に、第1制動系統71および第2制動系統72のうちいずれの制動系統が残存系統であるかに応じて、残存系統に対応する補償制御を行うことによって車両90を安定させる。補償制御は、たとえば、残存系統における前輪の制動力を調整する制御である。詳細は後述するが、制動制御部15は、第1制動系統71が残存系統である場合には第1補償制御を実施する一方で、第2制動系統72が残存系統である場合には、第1補償制御とは異なる第2補償制御を実施する。制動制御部15は、補償制御部の一例である。
〈失陥判定処理〉
図2を用いて、失陥診断部14が実行する失陥判定処理の一例を説明する。本処理ルーチンは、所定の周期毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS101では、失陥診断部14は、判定開始条件が成立しているか否かを判定する。たとえば、失陥診断部14は、以下の(条件1)、(条件2)および(条件3)が全て成立している場合に判定開始条件が成立していると判定する。
(条件1)運転者による制動操作部材92の操作によって車両90が制動中である。
(条件2)車体速度VSが規定の判定車速よりも大きい。
(条件3)車体減速度Gが規定の判定減速度よりも大きい。
判定開始条件が成立していない場合には(S101:NO)、失陥診断部14は、本処理ルーチンを一旦終了する。判定開始条件が成立している場合には(S101:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS102に移行する。
ステップS102では、失陥診断部14は、ヨーレート検出値Yrsが示す車両90の旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す車両90の旋回方向とが反対方向であるか否かを判定する。具体的には、ここでは、ヨーレート検出値Yrsが「0」よりも大きい、すなわち正の値であり、且つヨーレート算出値Yrwが「0」よりも小さい、すなわち負の値であるか否かを判定する。
ステップS102の処理において、ヨーレート検出値Yrsが「0」よりも大きく、且つヨーレート算出値Yrwが「0」よりも小さい場合には(S102:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS103に移行する。一方、ヨーレート検出値Yrsが「0」よりも大きく、且つヨーレート算出値Yrwが「0」よりも小さい状況とは異なる場合には(S102:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS107に移行する。
ステップS103では、失陥診断部14は、第2制動系統72が系統間車輪速度差あり状態であるか否かを判定する。すなわち、ステップS103において失陥診断部14は、系統間車輪速度差判定部13を用いて、対象系統として第2制動系統72を選択させる。系統間車輪速度差判定部13は、対象系統として選択した第2制動系統72に属する車輪の車輪速度と、非対象系統である第1制動系統71に属する車輪の車輪速度との間で、前輪同士および後輪同士で共に所定の車輪速度差が発生しているか否かを判定する。
一例として、系統間車輪速度差判定部13は、第1制動系統71に属する右前輪91frの車輪速度が、第2制動系統72に属する左前輪91flの車輪速度に前輪速度差しきい値を加えた値よりも大きく、且つ、第1制動系統71に属する左後輪91rlの車輪速度が、第2制動系統72に属する右後輪91rrの車輪速度に後輪速度差しきい値を加えた値よりも大きい場合に、第2制動系統72が系統間車輪速度差あり状態であると判定する。
系統間車輪速度差判定部13は、対象系統に属する前輪の車輪速度と非対象系統に属する前輪の車輪速度との間に所定の車輪速度差が発生していない場合には系統間車輪速度差あり状態とは判定しない。このため、第1制動系統71に属する右前輪91frの車輪速度が第2制動系統72に属する左前輪91flの車輪速度に前輪速度差しきい値を加えた値以下の場合には、系統間車輪速度差あり状態とは判定されない。系統間車輪速度差判定部13は、対象系統に属する後輪の車輪速度と非対象系統に属する後輪の車輪速度との間に所定の車輪速度差が発生していない場合には系統間車輪速度差あり状態とは判定しない。このため、第1制動系統71に属する左後輪91rlの車輪速度が第2制動系統72に属する右後輪91rrの車輪速度に後輪速度差しきい値を加えた値以下の場合には、系統間車輪速度差あり状態とは判定されない。
第2制動系統72が系統間車輪速度差あり状態である場合には(S103:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS104に移行する。一方、第2制動系統72が系統間車輪速度差あり状態ではない場合には(S103:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS107に移行する。
ステップS104では、失陥診断部14は、MC圧Pmcが第1判定値KP1よりも小さいか否かを判定する。
MC圧Pmcおよび第1判定値KP1について説明する。仮に第1制動系統71が失陥していると、第1制動系統71が備えるMC圧センサSE7からの検出信号に基づいて取得されるMC圧Pmcは、マスタシリンダ83が実際に発生させている液圧とは異なる値になる。たとえば、制動中でありマスタシリンダ83が液圧を発生させていてもMC圧Pmcが「0」として取得される。すなわち、第1制動系統71が失陥している場合には、第1制動系統71が失陥していない場合と比較してMC圧Pmcが小さくなる。第1判定値KP1は、マスタシリンダ83が液圧を発生させている状態において、当該液圧をMC圧Pmcとして検出できているか否かを判定するためのしきい値として設定されている。第1判定値KP1は、予め実験等によって算出された値である。換言すれば、MC圧Pmcが第1判定値KP1よりも小さい場合には第1制動系統71が失陥している可能性がある値として、第1判定値KP1が設定されている。一例として第1判定値KP1は、「0」よりも僅かに大きい値である。
ステップS104において、MC圧Pmcが第1判定値KP1よりも小さい場合には(S104:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS105に移行する。一方、MC圧Pmcが第1判定値KP1以上である場合には(S104:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS107に移行する。
ステップS105では、失陥診断部14は、ヨーレート検出値Yrsが第1Yrしきい値KY1よりも大きいか否かを判定する。第1Yrしきい値KY1は、正の値である。第1Yrしきい値KY1は、車両90が左方向に旋回していることをヨーレート検出値Yrsが示しているかを判定するためのしきい値として設定されている。すなわち、ヨーレート検出値Yrsが第1Yrしきい値KY1よりも大きいことは、車両90が左方向に旋回していることを示す。ヨーレート検出値Yrsが第1Yrしきい値KY1よりも大きい場合には(S105:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS106に移行する。一方、ヨーレート検出値Yrsが第1Yrしきい値KY1以下である場合には(S105:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS107に移行する。
ここで、図3および図4を用いて、片系統失陥状態の車両90の挙動について説明する。図3には、第1制動系統71が失陥系統であり第2制動系統72が残存系統である状態の車両90を例示している。図4の(a)は、図3に例示する状態の車両90の車輪速度の推移を示す。図4の(b)は、図3に例示する状態の車両90のヨーレート検出値Yrsの推移を示す。図4は、タイミングt1から制動を開始している例を示す。
第1制動系統71が失陥状態であることから、車両90の制動が開始されても、図3に示すように、右前輪91frおよび左後輪91rlには制動力が付与されない。一方で、第2制動系統72によって、左前輪91flおよび右後輪91rrには制動力が付与されている。図3に示す左前輪制動力BFflは、左前輪91flに付与されている制動力の大きさを示している。図3に示す右後輪制動力BFrrは、右後輪91rrに付与されている制動力の大きさを示している。なお、第1制動系統71が失陥状態であるため、MC圧センサSE7ではマスタシリンダ83が実際に発生させている液圧が正確に検出されにくい。
図3に例示する車両90のヨーレート検出値Yrsについて説明する。右後輪制動力BFrrよりも左前輪制動力BFflが大きいため、車両90に実際に作用するヨーレートは、図3に実線の矢印で示すヨーレート検出値Yrsのように左方向への旋回、すなわち反時計回りの方向への旋回を示す。すなわち、車両90は、左側に偏向することになる。
図3に例示する車両90のヨーレート算出値Yrwについて説明する。上記のように、右後輪91rrには制動力が付与されている一方で、左後輪91rlには制動力が付与されていない。このため、図4の(a)に実線で示すように、右後輪91rrの車輪速度VWrrは、破線で示す左後輪91rlの車輪速度VWrlよりも小さくなる。すなわち、右後輪91rrの車輪速度VWrrと左後輪91rlの車輪速度VWrlとの間で大小関係が生じている。こうした右後輪91rrの車輪速度VWrrと左後輪91rlの車輪速度VWrlとの差分に基づいて算出されるヨーレート算出値Yrwは、図3に二点鎖線の矢印で示すように、右方向への旋回を示す値、すなわち負の値となる。一方で、ヨーレート検出値Yrsは、図4の(b)に示すように左方向への旋回を示す正の値である。
また、このとき、右後輪91rrの車輪速度VWrrが左後輪91rlの車輪速度VWrlよりも小さくなっている。さらに、左前輪91flの車輪速度が右前輪91frの車輪速度よりも小さくなっている。こうした車輪速度差に基づいて、系統間車輪速度差判定部13は、第2制動系統72に属する前輪および後輪の車輪速度と、第1制動系統71に属する前輪および後輪の車輪速度との間において前輪同士および後輪同士で共に所定の車輪速度差が発生している状態にあると判定する。すなわち、系統間車輪速度差判定部13は、右後輪91rrおよび左前輪91flが属する第2制動系統72が系統間車輪速度差あり状態であると判定する。第2制動系統72が系統間車輪速度差あり状態であると判定される状況は、図3に例示するように車両90の車輪のうち第2制動系統72に属する両輪のみに制動力が付与されていることで引き起こされる。
図2に戻り、ステップS106では、失陥診断部14は、第1系統失陥フラグF1をONにする。第1系統失陥フラグF1は、初期値がOFFである。第1系統失陥フラグF1は、第1系統失陥フラグF1がONである場合には、MC圧センサSE7を備えている第1制動系統71が失陥状態であることを示すフラグである。すなわち、失陥診断部14は、第1制動系統71が失陥系統であると特定して、第1系統失陥フラグF1をONにする。これは、図3に例示したような第1制動系統71が失陥状態である場合の挙動を車両90が示す際には、ステップS102~S105の処理において肯定判定されて処理がステップS106に移行されることによる。なお、第1系統失陥フラグF1をONにするとき、失陥診断部14は、第2制動系統72が残存系統であると特定しているといえる。失陥診断部14は、第1系統失陥フラグF1をONにすると、本処理ルーチンを終了する。
ステップS107では、失陥診断部14は、ヨーレート検出値Yrsが示す車両90の旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す車両90の旋回方向とが反対方向であるか否かを判定する。具体的には、ここでは、ヨーレート検出値Yrsが「0」よりも小さい、すなわち負の値であり、且つヨーレート算出値Yrwが「0」よりも大きい、すなわち正の値であるか否かを判定する。
ステップS107の処理において、ヨーレート検出値Yrsが「0」よりも小さく、且つヨーレート算出値Yrwが「0」よりも大きい場合には(S107:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS108に移行する。一方、ヨーレート検出値Yrsが「0」よりも小さく、且つヨーレート算出値Yrwが「0」よりも大きい状況とは異なる場合には(S107:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS112に移行する。
ステップS102からステップS107に処理が移行された際には、以下の場合にステップS112に処理が移行される。すなわち、ステップS102において否定判定されてからステップS107においても否定判定される。一例は、ヨーレート検出値Yrsおよびヨーレート算出値Yrwのうちいずれか一方の値が「0」の場合である。別の例は、ヨーレート検出値Yrsが示す車両90の旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す車両90の旋回方向とが同一方向の場合である。
ステップS108では、失陥診断部14は、第1制動系統71が系統間車輪速度差あり状態であるか否かを判定する。すなわち、ステップS108において失陥診断部14は、系統間車輪速度差判定部13を用いて、対象系統として第1制動系統71を選択させる。系統間車輪速度差判定部13は、対象系統として選択した第1制動系統71に属する車輪の車輪速度と、非対象系統である第2制動系統72に属する車輪の車輪速度との間で、前輪同士および後輪同士で共に所定の車輪速度差が発生しているか否かを判定する。
一例として、系統間車輪速度差判定部13は、第2制動系統72に属する左前輪91flの車輪速度が、第1制動系統71に属する右前輪91frの車輪速度に前輪速度差しきい値を加えた値よりも大きく、且つ、第2制動系統72に属する右後輪91rrの車輪速度が、第1制動系統71に属する左後輪91rlの車輪速度に後輪速度差しきい値を加えた値よりも大きい場合に、第1制動系統71が系統間車輪速度差あり状態であると判定する。
系統間車輪速度差判定部13は、対象系統に属する前輪の車輪速度と非対象系統に属する前輪の車輪速度との間に所定の車輪速度差が発生していない場合には系統間車輪速度差あり状態とは判定しない。このため、第2制動系統72に属する左前輪91flの車輪速度が第1制動系統71に属する右前輪91frの車輪速度に前輪速度差しきい値を加えた値以下の場合には、系統間車輪速度差あり状態とは判定されない。系統間車輪速度差判定部13は、対象系統に属する後輪の車輪速度と非対象系統に属する後輪の車輪速度との間に所定の車輪速度差が発生していない場合には系統間車輪速度差あり状態とは判定しない。このため、第2制動系統72に属する右後輪91rrの車輪速度が第1制動系統71に属する左後輪91rlの車輪速度に後輪速度差しきい値を加えた値以下の場合には、系統間車輪速度差あり状態とは判定されない。
第1制動系統71が系統間車輪速度差あり状態である場合には(S108:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS109に移行する。一方、第1制動系統71が系統間車輪速度差あり状態ではない場合には(S108:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS112に移行する。
ステップS109では、失陥診断部14は、特性値PGが第2判定値KP2よりも小さいか否かを判定する。
特性値PGおよび第2判定値KP2について説明する。特性値PGは、車体減速度Gと車両90の総制動力との関係を示す値である。特性値PGは、車体減速度GをMC圧Pmcで除算することによって算出できる。仮に第2制動系統72が失陥している場合の車体減速度Gは、MC圧Pmcが同じ値という条件として、第2制動系統72が失陥していない場合の車体減速度Gと比較して小さくなる。すなわち、第2制動系統72が失陥している場合には、第2制動系統72が失陥していない場合と比較して特性値PGが小さくなる。第2判定値KP2は、特性値PGが第2判定値KP2よりも小さい場合には第2制動系統72が失陥している可能性がある値として設定されている。第2判定値KP2は、予め実験等によって算出された値である。
ステップS109において、特性値PGが第2判定値KP2よりも小さい場合には(S109:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS110に移行する。一方、特性値PGが第2判定値KP2以上である場合には(S109:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS112に移行する。
ステップS110では、失陥診断部14は、ヨーレート検出値Yrsが第2Yrしきい値KY2よりも小さいか否かを判定する。第2Yrしきい値KY2は、負の値である。第2Yrしきい値KY2は、車両90が右方向に旋回していることをヨーレート検出値Yrsが示しているかを判定するためのしきい値として設定されている。すなわち、ヨーレート検出値Yrsが第2Yrしきい値KY2よりも小さいことは、車両90が右方向に旋回していることを示す。ヨーレート検出値Yrsが第2Yrしきい値KY2よりも小さい場合には(S110:YES)、失陥診断部14は、処理をステップS111に移行する。一方、ヨーレート検出値Yrsが第2Yrしきい値KY2以上である場合には(S110:NO)、失陥診断部14は、処理をステップS112に移行する。
ここで、図3に示す例とは異なり、第1制動系統71が残存系統であり第2制動系統72が失陥系統である状態の車両90について説明する。当該状態の車両90では、ヨーレート検出値Yrsとヨーレート算出値Yrwとの関係は次のようになる。ヨーレート検出値Yrsが右方向への旋回、すなわち時計回りの方向への旋回を示す負の値である一方で、ヨーレート算出値Yrwは、左方向への旋回を示す正の値である。また、左後輪91rlおよび右前輪91frの車輪速度が小さくなる。このことから、左後輪91rlおよび右前輪91frが属する第1制動系統71が系統間車輪速度差あり状態であると判定される。こうした状態は、車両90の車輪のうち第1制動系統71に属する両輪のみに制動力が付与されていることで引き起こされる。そして、片系統失陥状態ではない場合と比較して、特性値PGは小さくなる。
図2に戻り、ステップS111では、失陥診断部14は、第2系統失陥フラグF2をONにする。第2系統失陥フラグF2は、初期値がOFFである。第2系統失陥フラグF2は、第2系統失陥フラグF2がONである場合には第2制動系統72が失陥状態であることを示すフラグである。すなわち、失陥診断部14は、第2制動系統72が失陥系統であると特定して、第2系統失陥フラグF2をONにする。これは、上記のように第2制動系統72が失陥状態である場合の挙動を車両90が示す際には、ステップS107~S110の処理において肯定判定されて処理がステップS111に移行されることによる。なお、第2系統失陥フラグF2をONにするとき、失陥診断部14は、第1制動系統71が残存系統であると特定しているといえる。失陥診断部14は、第2系統失陥フラグF2をONにすると、本処理ルーチンを終了する。
ステップS112では、失陥診断部14は、第1系統失陥フラグF1および第2系統失陥フラグF2を初期値であるOFFのままにする。その後、失陥診断部14は、本処理ルーチンを終了する。
第1Yrしきい値KY1と第2Yrしきい値KY2との関係について説明する。一例として、第1Yrしきい値KY1および第2Yrしきい値KY2は、第1Yrしきい値KY1の絶対値が第2Yrしきい値KY2の絶対値よりも小さい関係が成立するように設定することができる。この場合にステップS105の処理とステップS110の処理とを比較すると、ステップS105では、ヨーレート検出値Yrsが「0」に近い値の場合にも肯定判定されやすくなる。すなわち、ステップS110の処理よりもステップS105の処理の方が、車両90が旋回しているか否かを判定する感度が高くなる。この結果として、第1制動系統71が失陥状態であると判定される感度が高くなる。その他の例として、第1Yrしきい値KY1の絶対値と第2Yrしきい値KY2の絶対値とが等しくてもよい。
なお、失陥診断部14は、上記の例では、ヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向に車両90が旋回していると仮定した場合に内側に位置する後輪が属する制動系統を対象系統として系統間車輪速度差判定部13に選択させる。換言すれば、失陥診断部14は、ヨーレート検出値Yrsが示す旋回方向に車両90が旋回していると仮定した場合に内側に位置する前輪が属する制動系統を対象系統として系統間車輪速度差判定部13に選択させる。このため、ステップS103の処理では、上記のように第2制動系統72が対象系統として選択される。ステップS108の処理では、上記のように第1制動系統71が対象系統として選択される。
失陥診断部14は、第1系統失陥フラグF1または第2系統失陥フラグF2がONである場合に報知装置93を制御してもよい。すなわち、失陥診断部14は、片系統失陥状態である場合に報知装置93を制御して、運転者等に対して制動系統が失陥していることの報知を行うこともできる。
〈補償制御〉
図5および図6を用いて、片系統失陥状態である場合に制動制御部15が実行する補償制御について説明する。
図5は、制動制御部15がリアリフト抑制制御を行う際の処理の一例を示す。図5に示す処理の流れは、第1制動系統71が残存系統である場合の第1補償制御を具体化した一例である。本処理ルーチンは、所定の周期毎に車両90が停止するまで繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS201では、制動制御部15は、リアリフト抑制制御の開始条件が成立しているか否かを判定する。たとえば、制動制御部15は、MC圧Pmcが第3判定値KP3よりも大きい場合にリアリフト抑制制御の開始条件が成立していると判定する。第3判定値KP3は、MC圧Pmcが第3判定値KP3よりも大きい場合にはリアリフトが発生しやすい値として、予め実験等によって算出されている値を用いることができる。
リアリフト抑制制御の開始条件が成立していない場合には(S201:NO)、制動制御部15は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、リアリフト抑制制御の開始条件が成立している場合には(S201:YES)、制動制御部15は、処理をステップS202に移行する。
ステップS202では、制動制御部15は、第2系統失陥フラグF2がONであるか否かを判定する。第2系統失陥フラグF2がONである場合、すなわち第1制動系統71が残存系統であり第2制動系統72が失陥系統である場合には(S202:YES)、制動制御部15は、処理をステップS203に移行する。ステップS203では、制動制御部15は、増加量KF2として第2増加量KF2bを設定する。その後、制動制御部15は、処理をステップS204に移行する。
一方、ステップS202の処理において、第2系統失陥フラグF2がOFFである場合には(S202:NO)、制動制御部15は、処理をステップS206に移行する。ステップS203では、制動制御部15は、増加量KF2として第1増加量KF2aを設定する。すなわち、第2制動系統72が失陥状態ではない場合の増加量KF2には、第1増加量KF2aが設定される。増加量KF2を設定すると、制動制御部15は、処理をステップS207に移行する。
増加量KF2は、リアリフト抑制制御において制動力を増加させる際に、単位時間あたりに増加させる制動力の大きさを設定する値である。たとえば、第2増加量KF2bは、第1増加量KF2aよりも小さい値である。この場合には、第2制動系統72が失陥状態であると、第2制動系統72が失陥状態ではない場合と比較して増加量KF2が小さくされることになる。この結果として、片系統失陥状態では制動力の増加が抑制される。
ステップS204では、制動制御部15は、当該ステップS204の処理が行われるのが失陥判定後の初回であるか否かを判定する。制動制御部15は、第2系統失陥フラグF2がONにされてからステップS204の処理が初めて実行される場合には、失陥判定後の初回処理であると判定する。
失陥判定後の初回処理である場合には(S204:YES)、制動制御部15は、処理をステップS205に移行する。ステップS205では、制動制御部15は、前輪目標制動力BFfTを初回減少量KF1だけ減少させる。この結果として、制動装置80によって、前輪に付与する制動力が減少される。具体的には、このときに残存系統である第1制動系統71が対象とする車輪である右前輪91frの制動力が減少される。
初回減少量KF1は、たとえば、前輪目標制動力BFfTが初回減少量KF1だけ減少されることによって前輪目標制動力BFfTが減少される前と比較して車両90の車体減速度Gが規定割合に減少するように設定するとよい。規定割合としては、60%程度を採用できる。規定割合の上限値は、たとえば、70%である。規定割合の下限値は、たとえば、50%である。制動制御部15は、初回減少量KF1を算出することができる。その他の例として、初回減少量KF1は、予め実験等によって算出されている一定の値でもよい。
制動制御部15は、前輪目標制動力BFfTを初回減少量KF1だけ減少させると、本処理ルーチンを終了する。
ステップS204の処理において失陥判定後の初回処理ではない場合、すなわち失陥判定後の二回目以降の処理である場合には(S204:NO)、制動制御部15は、処理をステップS207に移行する。
ステップS207では、制動制御部15は、車体減速度Gが、目標減速度GTから感度KGを減算した値よりも小さいか否かを判定する。目標減速度GTは、リアリフトの発生を抑制するために算出される車体減速度Gの目標値である。感度KGは、ヒステリシス幅を設定する値である。感度KGは、車体減速度Gを目標減速度GTに追従させるように制御した場合に、車体減速度Gが目標減速度GT付近であるときに制動力の増減が必要以上に繰り返されることがないように設定されている。感度KGは、たとえば、予め算出された値である。感度KGは、目標減速度GTが大きいほど大きい値として算出することもできる。
車体減速度Gが、目標減速度GTから感度KGを減算した値よりも小さい場合には(S207:YES)、制動制御部15は、処理をステップS208に移行する。ステップS208では、制動制御部15は、ステップS203またはステップS206において設定した増加量KF2を用いて、前輪目標制動力BFfTを増加量KF2だけ増加させる。この結果として、制動装置80によって、前輪に付与する制動力が増加される。具体的には、このときに残存系統である第1制動系統71が対象とする車輪である右前輪91frの制動力が増加される。前輪目標制動力BFfTを増加量KF2だけ増加させると、制動制御部15は、本処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS207の処理において、車体減速度Gが、目標減速度GTから感度KGを減算した値以上である場合には(S207:NO)、制動制御部15は、処理をステップS209に移行する。ステップS209では、制動制御部15は、車体減速度Gが目標減速度GTよりも大きいか否かを判定する。
車体減速度Gが目標減速度GTよりも大きい場合には(S209:YES)、制動制御部15は、処理をステップS210に移行する。ステップS210では、制動制御部15は、前輪目標制動力BFfTを減少量KF3だけ減少させる。この結果として、制動装置80によって、前輪に付与する制動力が減少される。具体的には、このときに残存系統である第1制動系統71が対象とする車輪である右前輪91frの制動力が減少される。前輪目標制動力BFfTを減少量KF3だけ減少させると、制動制御部15は、本処理ルーチンを終了する。
車体減速度Gが目標減速度GT以下である場合には(S209:NO)、制動制御部15は、処理をステップS211に移行する。ステップS211では、制動制御部15は、前輪目標制動力BFfTを増減することなく維持する。すなわち制動制御部15は、車体減速度Gが目標減速度GTから感度KGを減算した値以上であり、且つ、車体減速度Gが目標減速度GT以下である場合には、前輪目標制動力BFfTを維持する。その後、制動制御部15は、本処理ルーチンを終了する。
図6に示す処理の流れは、第2制動系統72が残存系統である場合の第2補償制御を具体化した一例である。本処理ルーチンは、所定の周期毎に車両90が停止するまで繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS301では、制動制御部15は、第1系統失陥フラグF1がONであるか否かを判定する。第1系統失陥フラグF1がOFFである場合には(S301:NO)、制動制御部15は、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、第1系統失陥フラグF1がONである場合、すなわち第1制動系統71が失陥系統であり第2制動系統72が残存系統である場合には(S301:YES)、制動制御部15は、処理をステップS302に移行する。
ステップS302では、制動制御部15は、ABS制御を実施中であるか否かを判定する。ABS制御を実施中ではない場合には(S302:NO)、制動制御部15は、処理をステップS304に移行する。ステップS304では、制動制御部15は、一定増圧制御を実施する。その後、制動制御部15は、本処理ルーチンを終了する。
一定増圧制御について説明する。一定増圧制御は、残存系統である第2制動系統72が対象とする車輪である左前輪91flの制動力の増加速度を規定の勾配に制限するものである。一定増圧制御では、制動制御部15は、左前輪91flの制動力が一定の増加勾配で増加し続けるよう制動装置80を制御する。左前輪91flの制動力は、第3増圧弁64cおよび第3減圧弁65cを制御することによって調整できる。たとえば、一定増圧制御では、制動制御部15は、所定の開弁時間だけ第3増圧弁64cを開弁状態に保持したあと、所定の保持時間だけ第3増圧弁64cを閉弁状態に保持することを繰り返す。増加勾配は、制動力が過度に大きくなることを抑制するように設定される。増加勾配は、一定増圧制御の実行によって制動力が増加されている車両90を運転者が操舵することによって、片系統失陥状態である車両90のヨーモーメントを小さく抑えることができる程度の大きさであることが好ましい。
ステップS302の処理において、ABS制御を実施中である場合には(S302:YES)、制動制御部15は、処理をステップS303に移行する。ステップS303では、制動制御部15は、一定増圧制御を終了する。その後、制動制御部15は、本処理ルーチンを終了する。すなわち、一定増圧制御の実行中にABS制御が開始されると、制動制御部15は、一定増圧制御を終了する。
なお、ステップS302の処理では、制動制御部15は、ABS制御を開始する条件が成立しているか否かを判定してもよい。この場合には、ABS制御を開始する条件が成立している場合に処理をステップS303に移行する一方で、ABS制御を開始する条件が成立していない場合に処理をステップS304に移行するとよい。
〈作用および効果〉
本実施形態の作用および効果について説明する。
制動制御装置10によれば、ヨーレート検出値Yrsが示す旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向とが反対方向であるか否かを判定することによって、片系統失陥状態を判定することができる。すなわち、車両90が片系統失陥状態である場合に示す挙動の変化を捉えて、片系統失陥状態を精度よく判定することができる。
制動制御装置10では、第1制動系統71および第2制動系統72のうち一方の制動系統を対象系統として選択する。そして、対象系統に属する前輪および後輪の車輪速度と、非対象系統に属する前輪および後輪の車輪速度との間において前輪同士および後輪同士で共に所定の車輪速度差が発生している系統間車輪速度差あり状態にあることを、片系統失陥状態であると判定する条件に含む。これによって、片系統失陥状態であるか否かを判定する精度を向上させることができる。換言すれば、片系統失陥状態ではない場合に片系統失陥状態であると誤って判定されることを抑制できる。
第1制動系統71は、MC圧Pmcを検出可能な制動系統である。このため、ステップS104の処理のようにMC圧Pmcが検出されているか否かを判定することによって、片系統失陥状態であるか否かを判定する精度を確保することができる。そこで、制動制御装置10では、第1Yrしきい値KY1の絶対値が第2Yrしきい値KY2の絶対値よりも小さい関係が成立するように、第1Yrしきい値KY1および第2Yrしきい値KY2を設定している。これによって、第1制動系統71が失陥状態であると判定される感度を高くすることができる。すなわち、第1制動系統71が失陥した場合に、より早く失陥系統を特定することが可能となる。
クロス接続の制動装置を備える車両において失陥系統を特定することができる制動制御装置10は、直進安定性が低下しやすいホイールベースが短い車両、たとえば小型のトラック等に適用することが特に有用である。
制動制御装置10は、失陥系統がMC圧Pmcを検出可能な制動系統であるか否かを特定できる。これによって、残存系統に応じた補償制御を実行することができる。
図7は、第1制動系統71が残存系統である場合にリアリフト抑制制御が実行される例を示す。図7に示す例では、タイミングt11からリアリフト抑制制御が開始されている。タイミングt12において、片系統失陥状態であると判定されて、さらに第2制動系統72が失陥系統であると特定されている。
図7の(a)には、目標減速度GTを破線で表示している。図7の(a)には、車体減速度Gを実線で表示している。
図7の(b)には、車両90の運転者が要求している制動力を破線で表示している。破線は、MC圧Pmcに対応している。図7の(b)には、前輪目標制動力BFfTを実線で表示している。
図7に示す例では、片系統失陥状態であると判定される前のタイミングt11からタイミングt12までの期間においては、実線で示す車体減速度Gを目標減速度GTに追従させるように前輪目標制動力BFfTが制御されている。
第2制動系統72が失陥系統であるため、図5に示すステップS203~S205の処理が実行される。
タイミングt12において第2制動系統72が失陥系統であると特定されると、前輪目標制動力BFfTが初回減少量KF1だけ減少される(S205)。このため、タイミングt12よりも後では、図7の(b)に示すように前輪目標制動力BFfTが大きく減少されている。前輪制動力が減少されることで、図7の(a)に示すように車体減速度Gが小さくなる。これによって、片系統失陥状態で大きな制動力が付与されることによるヨーモーメントが大きくなることを抑制できる。その後は、ステップS207~S211の処理が実行されることによって、目標減速度GTおよび車体減速度Gに応じて前輪目標制動力BFfTの調整が行われる。これによって、車両90の安定性が低下することを抑制しつつ、制動力を確保することができる。
片系統失陥状態である場合に増加量KFとして設定される第2増加量KF2bは、第1増加量KF2aと比較して小さい値である(S203)。これによって、片系統失陥状態である場合のリアリフト抑制制御では、前輪制動力の増加が抑制されている。すなわち、前輪制動力が急に大きくなることが抑制されている。
制動制御装置10によれば、片系統失陥状態である場合にMC圧Pmcを用いて残存系統を制御することができる。このため、車輪に付与されている制動力の絶対的な大きさを把握しながら、制動力を調整することができる。たとえば、前輪制動力を増加させるだけではなく、前輪制動力を減少させることもできる。
図8は、第2制動系統72が残存系統である場合に一定増圧制御が実行される例を示す。図8に示す例では、タイミングt21において、片系統失陥状態であると判定されて、さらに第1制動系統71が失陥系統であると特定されている。すなわち、タイミングt21から一定増圧制御が開始されている。また、タイミングt22においてABS開始条件が成立して、タイミングt22以降ではABS制御が実行されている。
図8の(a)には、車両90の運転者が要求している制動力を破線で表示している。破線は、MC圧Pmcに対応している。図8の(a)には、前輪目標制動力BFfTを実線で表示している。
図8に示す例では第1制動系統71が失陥系統であるため、図8の(b)に示すように、制動中であるにもかかわらずMC圧Pmcを検出することができていない。
第2補償制御が開始されるタイミングt21からABS制御が開始されるタイミングt22までの期間において、一定増圧制御が行われている。すなわち、前輪目標制動力BFfTの増加勾配が制限される。このため、図8の(a)に示すように、前輪目標制動力BFfTの増加速度が一定になるように制御される。これによって、MC圧Pmcを検出できない状態でも、前輪制動力が過度に大きくなることを抑制しつつ徐々に前輪制動力を増大させることができる。すなわち、車両90の安定性が低下することを抑制しつつ、制動力を確保することができる。
図7および図8に例示して説明したように、制動制御装置10によれば、片系統失陥状態である場合に補償制御によって制動力の増加が抑制される。このため、片系統失陥状態である車両90の運転者が操舵操作を行った場合に車両90を安定させやすくなる。
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・制動制御部15は、片系統失陥状態である場合に、失陥系統における増圧弁を閉弁するように制御してもよい。これによって、作動液の流路が遮断される。たとえば、ホイールシリンダ近傍の流路に失陥が発生した場合に作動液が流出するおそれがある。増圧弁の閉弁によって失陥系統の流路を遮断することで作動液の流出を抑制できる。
・上記実施形態では、ステップS105およびステップS110においてヨーレート検出値Yrsが示す車両90の旋回方向を特定して、旋回方向に基づいて失陥系統を特定する例を示した。具体的には、ヨーレート検出値Yrsが示す車両90の旋回方向が左方向である場合には、第1制動系統71が失陥系統であり、第2制動系統72が残存系統であると特定した。また、ヨーレート検出値Yrsが示す車両90の旋回方向が右方向である場合には、第1制動系統71が残存系統であり、第2制動系統72が失陥系統であると特定した。
これに替えて、ヨーレート算出値Yrwが示す車両90の旋回方向に基づいて失陥系統の特定を行うこともできる。この場合には、上記のように片系統失陥状態ではヨーレート検出値Yrsが示す旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向とが反対方向であることを考慮して失陥系統を特定する。すなわち、ヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向が左方向であれば、第2制動系統72が失陥系統であると特定する。この場合には、第1制動系統71が残存系統であると特定することにもなる。ヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向が右方向であれば、第1制動系統71が失陥系統であると特定する。この場合には、第2制動系統72が残存系統であると特定することにもなる。
・上記実施形態では、ヨーレート算出値Yrwを算出して失陥判定処理に用いる例を示したが、ヨーレート算出値Yrwを算出することは必須ではない。失陥判定処理では、ヨーレート算出値Yrwが示す車両90の旋回方向に基づく判定を行うことに替えて、車輪速度から推定される車両90の旋回方向に基づく判定を行ってもよい。たとえば、右後輪91rrの車輪速度VWrrと左後輪91rlの車輪速度VWrlとの間で生じている大小関係に基づいて、車両90の旋回方向を推定すればよい。具体的には、右後輪91rrの車輪速度VWrrが左後輪91rlの車輪速度VWrlよりも小さい場合には、車輪速度から推定される車両90の旋回方向は右方向である。右後輪91rrの車輪速度VWrrが左後輪91rlの車輪速度VWrlよりも大きい場合には、車輪速度から推定される車両90の旋回方向は左方向である。
・図2に示す失陥判定処理は一例である。たとえば、図2におけるステップS103~S105、およびステップS108~S110の処理のうち一つ以上の処理を省略してもよい。たとえば、片系統失陥状態である車両90は、ヨーレート検出値Yrsが示す旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向とが反対方向である。ヨーレート検出値Yrsが示す旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向とが反対方向である場合に片系統失陥状態であると判定することができる。
・上記実施形態では、失陥系統を特定する例を示した。失陥系統を特定することは必須ではない。失陥診断部14は、片系統失陥状態であるか否かを判定する処理を行うものでもよい。たとえば、失陥診断部14は、ヨーレート検出値Yrsが示す旋回方向とヨーレート算出値Yrwが示す旋回方向とが反対方向である場合に片系統失陥状態であると判定する処理を行ってもよい。
・上記実施形態における前輪速度差しきい値は、前輪が駆動輪であるか従動輪であるかによって異なる値を採用してもよい。一例として、前輪が駆動輪である場合の前輪速度差しきい値を前輪が従動輪である場合の前輪速度差しきい値よりも大きな値にするとよい。駆動輪の車輪速度は、エンジンブレーキ、回生ブレーキ等による影響を受ける。上記構成によれば、エンジンブレーキ、回生ブレーキ等による影響に起因する誤判定を抑制することができる。すなわち、所定の車輪速度差が発生しているか否かの判定が誤ったものになることを抑制できる。前輪速度差しきい値と同様に、後輪速度差しきい値についても、後輪が駆動輪であるか従動輪であるかによって異なる値を採用してもよい。
・処理回路である制動制御装置10は、以下[a]~[c]のいずれかの構成であればよい。[a]コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える回路。プロセッサは、処理装置を備える。処理装置の例は、CPU、DSPおよびGPU等である。プロセッサは、メモリを備える。メモリの例は、RAM、ROMおよびフラッシュメモリ等である。メモリは、処理を処理装置に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。[b]各種処理を実行する一つ以上のハードウェア回路を備える回路。ハードウェア回路の例は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等である。[c]各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行するハードウェア回路と、を備える回路。
・制動制御装置10が実現する機能の一部は、制動制御装置10と接続されている他の処理回路によって実現されてもよい。
・上記実施形態では、MC圧センサSE7が第1制動系統71に設けられている例を示した。MC圧センサSE7は、第2制動系統72に設けられていてもよい。また、MC圧センサSE7を備える制動系統は、片方の制動系統のみに限定されない。MC圧センサSE7を第1制動系統71および第2制動系統72に設けることは制限されるものではない。
・上記実施形態では、制動装置80として液圧制動装置を例示した。制動制御装置10を適用する制動装置は、液圧制動装置に限らず、クロス接続されている制動系統を有する制動装置であればよい。たとえば、制動装置は、電動モータの駆動量を機械的に伝達することによって摩擦材を回転体に押し付ける機械式の摩擦制動装置でもよい。具体的には、右前輪91frおよび左後輪91rlに付与する制動力を調整する制動機構に電力を供給する回路と、左前輪91flおよび右後輪91rrに付与する制動力を調整する制動機構に電力を供給する回路と、が独立していればよい。こうした構成の制動装置も、クロス接続されている制動系統を有する制動装置であるといえる。
(技術的思想)
上記実施形態および変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[A]車輪のうち右前輪および左後輪に付与する制動力を調整する第1制動系統と、前記車輪のうち左前輪および右後輪に付与する制動力を調整する第2制動系統と、を有する車両の制動装置に適用される制動制御装置であって、
各車輪の速度を車輪速度として検出する車輪速検出部と、
第1制動系統および第2制動系統のうち一方の制動系統を対象系統として選択し、前記対象系統に属する前輪および後輪の車輪速度と、前記対象系統ではない制動系統に属する前輪および後輪の車輪速度と、の間において前輪同士および後輪同士で共に所定の車輪速度差が発生している状態を系統間車輪速度差あり状態として、前記対象系統が前記系統間車輪速度差あり状態にあるか否かを判定する系統間車輪速度差判定部と、
前記車両を制動する際に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態であるか否かを判定し、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態である場合に片系統失陥状態であると判定する失陥判定部と、を備え、
前記失陥判定部は、前記対象系統が前記系統間車輪速度差あり状態である場合に、片系統失陥状態であると判定する制動制御装置。
[B]前記片系統失陥状態である場合に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にある制動系統を失陥系統として特定し、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にない制動系統を残存系統として特定する特定部を備え、
前記特定部は、
前記対象系統が前記系統間車輪速度差あり状態である場合には、前記対象系統が前記残存系統であり、前記対象系統ではない制動系統が前記失陥系統であると特定する[A]に記載の制動制御装置。
10…制動制御装置
11…取得部
12…算出部
13…系統間車輪速度差判定部
14…失陥診断部
15…制動制御部
61…第1液圧回路
62…第2液圧回路
70…ブレーキアクチュエータ
71…第1制動系統
72…第2制動系統
80…制動装置
81…液圧発生装置
83…マスタシリンダ
84a~84d…第1~第4制動機構
90…車両
91fl…左前輪
91fr…右前輪
91rl…左後輪
91rr…右後輪
SE1~SE4…第1~第4車輪速センサ
SE5…ヨーレートセンサ
SE6…Gセンサ
SE7…MC圧センサ

Claims (9)

  1. 車輪のうち右前輪および左後輪に付与する制動力を調整する第1制動系統と、前記車輪のうち左前輪および右後輪に付与する制動力を調整する第2制動系統と、を有する車両の制動装置に適用される制動制御装置であって、
    各車輪の速度を車輪速度として検出する車輪速検出部と、
    前記車両に実際に作用するヨーレートをヨーレート検出値として検出するヨーレート検出部と、
    前記車両を制動する際に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態であるか否かを前記車輪速度と前記ヨーレート検出値とに基づいて判定し、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれか一つの制動系統が失陥状態である場合に片系統失陥状態であると判定する失陥判定部と、を備える
    制動制御装置。
  2. 前記失陥判定部が前記片系統失陥状態であると判定する条件は、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち一方の制動系統によって制動力が付与される対象である前輪の車輪速度が他方の制動系統によって制動力が付与される対象である前輪の車輪速度よりも小さい状態であり、且つ前記一方の制動系統によって制動力が付与される対象である後輪の車輪速度が前記他方の制動系統によって制動力が付与される対象である後輪の車輪速度よりも小さい状態であることを含む
    請求項1に記載の制動制御装置。
  3. 前記左後輪の前記車輪速度および前記右後輪の前記車輪速度に基づいて、前記左後輪の前記車輪速度と前記右後輪の前記車輪速度との速度差を基準としたヨーレートをヨーレート算出値として算出するヨーレート算出部を備え、
    前記失陥判定部は、前記ヨーレート検出値が示す前記車両の旋回方向と、前記ヨーレート算出値が示す前記車両の旋回方向と、が異なる場合に、前記片系統失陥状態であると判定する
    請求項1または2に記載の制動制御装置。
  4. 前記片系統失陥状態である場合に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にある制動系統を失陥系統として特定し、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にない制動系統を残存系統として特定する特定部を備え、
    前記特定部は、
    前記ヨーレート検出値が示す前記車両の旋回方向が左方向である場合には、前記第1制動系統が前記失陥系統であり、前記第2制動系統が前記残存系統であると特定する一方で、
    前記ヨーレート検出値が示す前記車両の旋回方向が右方向である場合には、前記第1制動系統が前記残存系統であり、前記第2制動系統が前記失陥系統であると特定する
    請求項3に記載の制動制御装置。
  5. 前記片系統失陥状態である場合に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にある制動系統を失陥系統として特定し、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にない制動系統を残存系統として特定する特定部を備え、
    前記特定部は、
    前記ヨーレート算出値が示す前記車両の旋回方向が左方向である場合には、前記第1制動系統が前記残存系統であり、前記第2制動系統が前記失陥系統であると特定する一方で、
    前記ヨーレート算出値が示す前記車両の旋回方向が右方向である場合には、前記第1制動系統が前記失陥系統であり、前記第2制動系統が前記残存系統であると特定する
    請求項3に記載の制動制御装置。
  6. 前記片系統失陥状態である場合に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にある制動系統を失陥系統として特定し、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうち失陥状態にない制動系統を残存系統として特定する特定部と、
    前記片系統失陥状態である場合に、前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれの制動系統が前記残存系統であるかに応じて、該残存系統に対応する制御を行うことによって前記車両を安定させる補償制御部と、を備える
    請求項1~5のいずれか一項に記載の制動制御装置。
  7. 前記制動装置は、液圧発生装置を有し該液圧発生装置によって発生させた液圧に応じて制動力を付与する液圧制動装置であり、前記液圧を検出可能な液圧検出装置を前記第1制動系統および前記第2制動系統のうちいずれか一つの制動系統のみに備えるものであり、
    前記特定部は、前記液圧を検出可能な制動系統が前記失陥系統であるか前記残存系統であるかを特定する
    請求項4~6のいずれか一項に記載の制動制御装置。
  8. 前記液圧を検出可能な制動系統が前記残存系統ではない場合に、制動力の増加速度を規定の勾配に制限して制動力を増加させるよう前記残存系統を制御することによって、制動力の増加を抑制する補償制御部を備える
    請求項7に記載の制動制御装置。
  9. 前記液圧を検出可能な制動系統が前記残存系統である場合に、前記液圧に基づいて車体減速度の目標値として目標減速度を設定して、該目標減速度と前記車体減速度とに基づいて前記残存系統を制御することによって、制動力の増加を抑制する補償制御部を備える
    請求項7または請求項8に記載の制動制御装置。
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