以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.本実施形態の比較例
まず、本実施形態の比較例として、通常のオーバーサンプリングを行うA/D変換回路について説明する。図1は、比較例のA/D変換回路が行う16倍のオーバーサンプリング動作を模式的に表したタイミングチャートである。
図1に示すように、比較例のA/D変換回路は、入力電圧を一定の間隔で連続的にサンプル・ホールド(S/H)し、1回のサンプル・ホールドに対して1回のA/D変換動作を行う。A/D変換で得られるデータは、14ビットのデータである。後段のデジタルフィルター(デシメーションフィルター)は、この14ビットのデータを受けて、16回のサンプリングにつき1回のレートで、最終的な16ビットの出力データDFQ1、DFQ2、・・・を出力する。
このようなA/D変換回路が有効な出力データを得るためには、入力電圧を一定の間隔でサンプリングし続ける必要がある。例えば、サンプリングを開始してから最初に有効データが出力されるまでには、デジタルフィルターの群遅延分の時間が必要である。そのため、少なくとも1つの有効データを得るためには、サンプリング開始から群遅延分の時間、入力電圧を一定の間隔でサンプリングし続けなければならない。即ち、1回だけ入力電圧をサンプリングして1つの出力データを得る(以下では適宜、ワンショットのA/D変換と呼ぶ)という使い方は不可能ということである。
例えば温度センサーなど、センサー出力の変化が比較的緩やかなセンサーでは、センサー出力を不定期にA/D変換すればよいという用途が考えられる。このような用途では、1回のサンプリングで1つの出力データが得られることが理想であり、上記比較例のA/D変換回路は不向きである。比較例のA/D変換回路でワンショットのA/D変換を実現する手法として、A/D変換後の14ビットデータを出力データとすることが考えられるが、オーバーサンプリングを行った場合に比べて出力データのビット数が異なる上、ビット数が減った分当然のことながら分解能が低下してしまう。
2.A/D変換回路の基本構成
そこで本実施形態では、1回のサンプリング動作に対して複数回のA/D変換動作を行い、1つのm+jビットデータ(mは2以上の自然数、jは自然数)を出力することで、ワンショットのA/D変換を実現する。なお以下ではm=14ビット、m+j=16ビットであり、1回のサンプリング当たり16回のA/D変換動作を行う場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。即ち、1回のサンプリング当たりのA/D変換動作は任意のk回(kは2以上の自然数)であり、m+jが、k倍のオーバーサンプリングを行った場合の出力データのビット数に相当すればよい。
図2に、本実施形態のA/D変換回路の基本構成例を示す。図2のA/D変換回路は、比較回路10、制御部20、S/H(サンプル・ホールド)回路30、出力部40、D/A変換回路DACを含む。なお、本実施形態のA/D変換回路は図2の構成に限定されず、その一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば図12で後述する構成例のように、S/H回路30の構成要素を省略し、D/A変換回路DACに入力信号VINのサンプル・ホールド機能を持たせてもよい。
S/H回路30は、A/D変換の対象となる入力信号VINをサンプル・ホールドする回路である。なお電荷再分配型の場合にはS/H回路30の機能はD/A変換回路により実現できる。
D/A変換回路DACは、制御部20からの逐次比較用データRDAのD/A変換を行い、逐次比較用データRDAに対応したアナログ信号のD/A出力信号DQを出力する。例えば、D/A変換回路DACは、キャパシターアレイを用いた電荷再分配型であってもよいし、その一部がラダー抵抗型であってもよい。
比較回路10は、コンパレーターにより実現され、例えば信号SINと信号DQの比較処理を行う。例えば、コンパレーターはラッチ型コンパレーターである。比較回路10は、入力信号VINのサンプリング信号SINとD/A出力信号DQとを比較する処理を行う。具体的には、比較回路10は、第1の入力端子に入力されるサンプリング信号SINと第2の入力端子に入力されるD/A出力信号DQを比較する。なお、電荷再分配型(例えば図12)の場合等では、比較回路10は、サンプリング信号SINとD/A出力信号DQの差分信号と、基準信号(例えばグランド電圧)と、を比較する処理を行ってもよい。また、差動型(例えば図17)の場合には、比較回路10は、SINとDQの差分信号の正信号及び負信号を比較する処理を行ってもよい。
制御部20は、逐次比較レジスターSAR(Successive Approximation Register)を有し、逐次比較用データRDAをD/A変換回路DACに対して出力する。逐次比較レジスターSARは、比較回路10からの比較結果信号CPQによりそのレジスター値が設定されるレジスターである。例えば比較回路10が、MSBのビットからLSBのビットに至るまでの逐次比較処理を行った場合に、各ビットにおける比較処理結果(「1」、「0」)が、逐次比較レジスターSARの各レジスター値として記憶される。制御部20は、逐次比較用データRDAのLSBビットまで逐次比較が終了すると、その逐次比較用データRDAを、14ビット(広義にはmビット)のA/D変換データQDAとして出力する。
また制御部20は、A/D変換回路の各回路ブロックの制御処理を行う。例えば、1回のサンプル・ホールドにつき16回(広義にはk回)のA/D変換動作を行う制御処理を、各回路ブロックに対して行う。あるいは、制御部20は、A/D変換動作において、D/A変換回路DACに含まれるスイッチ素子(例えば図12のスイッチアレイ51〜53)のオン・オフ制御を行う。
ここでA/D変換動作とは、逐次比較の開始からA/D変換データQDAの出力までの一連の動作であり、1つのA/D変換データQDAを得る動作が1回のA/D変換動作である。
出力部40は、1回のサンプル・ホールドに対する16回のA/D変換動作で得られた16個のA/D変換データQDAに基づいて、16ビット(広義にはm+jビット)の出力データDOUTを出力する。具体的には、出力部40は、16個のA/D変換データQDAに対して移動平均処理を行い、その移動平均処理の結果を出力データDOUTとして出力する。
図3に、本実施形態のA/D変換回路の動作を表したタイミングチャートを示す。図3に示すように、制御部20は、S/H回路30がサンプル・ホールドしたサンプリング信号SIN1に対して、16回のA/D変換動作を行い、16個のA/D変換データQDAを出力する。
さて、1回のサンプル・ホールドに対して16回のA/D変換動作を行うので、16個のA/D変換データQDAの期待値は同一となるはずである。期待値が同一であれば、16個のA/D変換データQDAの値がほぼ同一となってしまうので、出力データDOUT1を16ビットに拡張しても、ビット数の拡張に伴うA/D変換特性(例えばS/N)の向上は得られないと考えられる。
そこで本実施形態では、制御部20が、D/A変換回路DACのスイッチ制御を行うための制御信号SSWを出力し、D/A変換回路DACは、この制御信号SSWに基づいて、A/D変換動作の各回で異なるスイッチ制御を行う。即ち、仮にA/D変換動作の各回で同一のA/D変換データQDAが得られる場合であっても、逐次比較におけるDACのスイッチのオン・オフ動作は、A/D変換動作の各回で異なったものとなる。例えば本実施形態では、後述するように、DEM(Dynamic Element Matching)やコードシフトによりスイッチ制御を変化させている。
出力部40は、上記のようにして得られた16個の値が異なるA/D変換データQDAを順次ラッチし、その16個のA/D変換データQDAの移動平均値を求め、最終的な出力データDOUT1を出力する。
本実施形態では、このような疑似的なオーバーサンプリングを行うことにより、オーバーサンプリングを行った場合と同等のA/D変換特性が期待できる。即ち、1つのサンプリング信号SIN1に対して、値が異なる16個のA/D変換データQDAを得ることが可能となり、同一のA/D変換データQDAが得られることを回避できる。また、真値のA/D変換データQDAを中心としてバラツキが生じるようにスイッチ制御を変化させることで、16個のA/D変換データQDAを平均すると真値に近い値を得ることが可能である。
また、疑似的なオーバーサンプリングで得られた出力データDOUT1は、14ビットのA/D変換回路で16倍のオーバーサンプリングを行った場合と同等の16ビットのデータである。これにより、オーバーサンプリングを行った場合と同様の周辺回路をそのまま用いることが可能である。また、後段のデジタルフィルターが不要であるため、群遅延が生じず、ワンショットのA/D変換が可能になる。
3.A/D変換回路の詳細な構成
図4に、本実施形態のA/D変換回路の詳細な構成例を示す。図4のA/D変換回路は、比較回路10、制御部20、S/H回路30、出力部40、第1のD/A変換回路DAC1、第2のD/A変換回路DAC2を含む。なお、図2で説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
ここで、以下ではA/D変換回路がDEM制御及びコードシフトを行う場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、例えばDEM制御及びコードシフトのうち一方のみを行ってもよい。コードシフトを行わない場合、コードデータ生成部90と第2のD/A変換回路DAC2は省略される。
制御部20は、逐次比較レジスターSARと、DEMのスイッチ制御を行うDEM制御部80と、コードシフトを行うためのコードデータを生成するコードデータ生成部90と、を含む。
DEM制御部80は、D/A変換回路DAC1のスイッチアレイに対して制御信号DMPを出力する。D/A変換回路DAC1は、DEM制御部80からの制御信号DMPに基づいて、逐次比較用データRDAの上位側ビットの各ビットに対するキャパシターの割り当てを動的に変化させる。なお、DEM制御の詳細については図14等で後述する。
このようにキャパシターの割り当てを動的に変化させると、ユニットキャパシターの容量バラツキ(例えば製造バラツキ)が動的に分散される。これは、A/D変換動作の各回で別個のD/A変換回路を用いることに相当するため、同一のサンプリング信号SINに対して値が異なる複数のA/D変換データQDAを得ることが可能になる。また、DEM制御により、A/D変換回路のINL(Integral Non Linearity)特性やDNL(Differential Non Linearity)特性を向上できる。
コードデータ生成部90は、A/D変換動作の各回で異なる値のコードデータCDAを出力する。D/A変換回路DAC2は、コードデータCDAのD/A変換を行う。比較回路10は、サンプリング信号SINとコードデータCDAのD/A変換信号SCDとの加算信号SADDと、逐次比較用データRDAのD/A変換信号DQとを比較する。A/D変換信号QDAは、コードデータCDAの分だけ大きい値となるので、制御部20は、A/D変換信号QDAからコードデータCDAを減算し、最終的なA/D変換信号QCとして出力する。出力部40は、16個のA/D変換信号QCの平均値DOUTを出力する。なお、コードシフトの詳細については図11等で後述する。
コードシフトでは、サンプリング信号SINに対して意図的にオフセット信号SCDが加算され、そのオフセット信号SCDによって逐次比較用データRDAが変化する。このオフセット信号SCDをA/D変換動作の各回で変えることにより、D/A変換回路DAC1では、A/D変換動作の各回で異なる逐次比較用データRDAのD/A変換を行うことになる。これにより、DAC1の入力データに対するD/A変換特性をシフトさせることと同等の効果が得られるため、同一のサンプリング信号SINに対して値が異なる複数のA/D変換データQDAを得ることが可能になる。また、コードシフトにより、A/D変換回路のINL特性やDNL特性を向上できる。
図5に、図4のA/D変換回路の動作を表したタイミングチャートを示す。図5に示すように、クロックCK3の立ち上がりに同期してサンプル・ホールド動作が行われ、16個のクロックCK2の立ち上がりに同期して16回のA/D変換動作が行われ、14個のクロックCK1の立ち上がりに同期して14ビットの逐次比較が行われる。クロックCK1〜CK3は、例えばシステムから供給されるシステムクロックに基づいて制御部20が生成する。
具体的には、図5のA1に示すように、クロックCK3の立ち上がりでサンプリング信号SIN1がサンプル・ホールドされる。A2に示すように、1個目のクロックCK2の立ち上がりは、クロックCK3の立ち上がりと同じタイミングである。この1個目のクロックCK2の立ち上がりで1回目のA/D変換動作が開始され、A3に示すように、DEM制御信号DEM1がD/A変換回路DAC1に入力され、A4に示すように、コードデータCDA1がD/A変換回路DAC2に入力される。
A5に示すように、14個のクロックCK1は、クロックCK2の立ち上がりから次のクロックCK2の立ち上がりまでの間に生成される。A6に示すように14個のクロックCK1の立ち上がりで14ビットの逐次比較用データRDAが逐次比較される。逐次比較の間、D/A変換回路DAC1はDEM1に基づいてキャパシターの割り当てを行い、D/A変換回路DAC2はCDA1をD/A変換した信号SCDを出力する。A7に示すように、逐次比較用データRDAの全ビットの比較が終了すると、1個目のA/D変換データQC1が出力される。A8に示すように、2個目のクロックCK2の立ち上がりでA/D変換データQC1がラッチされる。
以上の動作を、2〜16個目のクロックCK2の立ち上がりでDEM制御信号及びコードデータを変化させながら行い、2〜16個目のA/D変換データQC2〜QC16を出力する。A9に示すように、16個目のA/D変換データQC16がラッチされるタイミングで、出力データDOUT1が出力される。A10に示すように、クロックCK3の立ち上がりで次のA/D変換動作を開始する。
例えば、図4の出力部40は、下式(1)で表される移動平均フィルターにより出力データDOUT1を求める。下式(1)において、“z−i”は、クロックCK2のi周期前に求められたA/D変換データQCを表し、“1”は最新のA/D変換データQCを表す。“z−i”や“1”で表されるデータは、出力部40の図示しないラッチ回路やレジスターに記憶される。下式(1)では、16個の14ビットデータを加算すると最大で18ビットのデータとなり、それを4で除算(2ビットシフト)するので、16ビットのDOUTが求められる。
DOUT=(1+z−1+z−2+・・・+z−15)/4 (1)
図6(A)に、通常のオーバーサンプリングを行った場合のシミュレーション結果を示す。本実施形態の疑似的なオーバーサンプリングと比べるために、本実施形態と同じデータ出力レートにする理想間引きフィルターが後段に設けられると仮定し、本実施形態と同じ帯域となるように帯域制限してA/D変換特性を求めている。また、図6(B)に、本実施形態の疑似的なオーバーサンプリングを行った場合のシミュレーション結果を示す。
図6(A)、図6(B)に示すように、通常のオーバーサンプリングに比べて、疑似的なオーバーサンプリングではSNR(Signal to Noise Ratio)や有効ビット数ENOBが若干低下するものの、それほど大きくは低下せず、実用に耐えるレベルである。このように、例えばワンショットのA/D変換など、通常のオーバーサンプリングでは実現できない用途でも、疑似的なオーバーサンプリングを行うことにより実用的なA/D変換特性を得ることができる。
以上の実施形態によれば、図4に示すように、A/D変換回路は、逐次比較における比較動作を行う比較回路10と、逐次比較により更新される逐次比較用データRDAを記憶する逐次比較レジスターSARを有する制御部20と、逐次比較の結果(A/D変換データQC)に基づいて、出力データDOUTを出力する出力部40と、を含む。図5で説明したように、制御部20は、A2に示すサンプリング動作からA10に示す次のサンプリング動作までの間に、A5〜A7に示すmビット(mは2以上の自然数。例えばm=14)のA/D変換動作を、複数回(例えば16回)行う制御処理を行う。出力部40は、複数回のA/D変換動作により得られた複数のmビットデータQC1〜QC16に基づいて、m+jビット(jは自然数。例えばm+j=16)の出力データDOUTを出力する。
このようにすれば、疑似的なオーバーサンプリングを行うことが可能になり、後段のデジタルフィルターを省略できる。即ち、1回のサンプル・ホールドに対して得た複数のA/D変換データから、通常のオーバーサンプリングを行った場合と同一ビット数の出力データを得ることができる。これにより、ユーザーは、出力データを、通常のオーバーサンプリングを行った場合と同様に扱うことができ、利便性を低下させることがない。また、1回のサンプル・ホールドだけで1つの出力データを取得するワンショットのオーバーサンプリングが可能になる。
例えば、図3等で説明したように、制御信号SSW(例えば図4のDMP、CDA)によりD/A変換回路のスイッチ制御を異ならせながら複数回のA/D変換動作を行うことで、同一サンプリング信号SINに対して、値が異なる複数のA/D変換データを得ることができる。これにより、図6等で説明したように、通常のオーバーサンプリングに近いA/D変換特性を達成できる。
また本実施形態では、図4に示すように、A/D変換回路は、逐次比較用データRDAのD/A変換を行うD/A変換回路DAC1を含む。D/A変換回路DAC1は、比較回路10の比較ノード(後述する図12の比較ノードNC)に接続される。D/A変換回路DAC1は、キャパシターアレイ部(図12のキャパシターアレイ部41)とスイッチアレイ部(図12のスイッチアレイ部51)とを有する。図4等で説明したように、制御部20は、複数回のA/D変換動作において、逐次比較用データRDAの各ビット(後述する図14〜図16(B)のビット5〜ビット10の各ビット)に対するキャパシターアレイ部のキャパシターの割り当てを動的に変化させる制御(即ちDEM制御)を、スイッチアレイ部に対して行う。
このようにすれば、逐次比較用データRDAの同一コードに対するキャパシター(図14のユニットキャパシター1C1〜1C15、3C1〜3C16)の割り当てを、A/D変換動作の各回で変化させることができる。図4等で説明したように、ユニットキャパシターの容量値は、製造誤差等によりバラツキがあるため、同一サンプリング信号SINに対して、値が異なる複数のA/D変換データを得ることができる。
また本実施形態では、図4に示すように、A/D変換回路は第2のD/A変換回路DAC2を含む。第2のD/A変換回路DAC2は、比較回路10の比較ノード(後述する図12の比較ノードNC)に接続され、キャパシターアレイ部(図12のキャパシターアレイ部43)とスイッチアレイ部(図12のスイッチアレイ部53)とを有する。図4等で説明したように、制御部20は、複数回のA/D変換動作の各回で異なるスイッチ制御を、第2のD/A変換回路DAC2のスイッチアレイ部に対して行う。
具体的には、図4に示すように、制御部20は、複数回のA/D変換動作の各回で異なるコードデータCDAを生成するコードデータ生成部90を有する。制御部20は、コードデータCDAに基づいて第2スイッチアレイ部(図12のスイッチアレイ部53)のスイッチ制御を行う。第2のD/A変換回路DAC2は、制御部20によるスイッチ制御によりコードデータCDAのD/A変換を行う。
このようにすれば、図4等で説明したように、コードデータCDAのD/A変換信号SCDが変化するため、逐次比較用データRDA(比較コード)の値をA/D変換動作の各回で変化させることができる。比較動作を行うアナログ回路(D/A変換回路DAC1、比較回路10)は静的な非線形性を有するため、比較コードが変化することにより、同一サンプリング信号SINに対して、値が異なる複数のA/D変換データを得ることが可能になる。
4.変換予測処理
次に、本実施形態のA/D変換回路が行う変換予測処理について説明する。
通常の逐次比較シーケンスでは、毎回、フルスケールで逐次比較を行う。即ち、逐次比較用データRDAのMSBからLSBまで全ビットについて順次比較していく。一方、本実施形態では、1つのサンプリング信号に対して16回のA/D変換を行うため、2回目以降のA/D変換データの値を予測することが可能である。そこで、2回目以降の逐次比較シーケンスでは、フルスケールで変換を行わず、予測値に基づいた変換予測範囲で変換を行う。
具体的には、図7に示すように、入力電圧(入力信号)のフルスケールVFSに対して、A/D変換データのフルスケール0〜16383(214−1)が対応している。1回目の逐次比較を行った結果、データQD1(図4のQDAに対応する)が得られたとする。データQD1はコードデータCS1だけコードシフトされており、2回目の逐次比較ではコードデータCS2だけシフトされたデータが得られる。そのため、2回目の逐次比較で得られるデータを、QD2’=QD1+CS2−CS1であると予測する。この予測値QD2’に対して±ESTRNG(例えばESTRNG=16)の範囲を持たせ、QD2’−ESTRNG〜QD2’+ESTRNGの変換予測範囲で、2回目の逐次比較を行う。3〜16回目の逐次比較についても、同様にして変換予測範囲を設定し、逐次比較を行う。
このような変換予測処理を行うことで、逐次比較を行うデータ範囲を限定できるので、逐次比較用データRDAの一部のビットについて比較を行えばよくなり、逐次比較シーケンスを短縮できる。これにより、A/D変換の効率化や、A/D変換の高速化を図ることができる。
図8に、変換予測処理を行う場合のA/D変換動作のフローチャートを示す。図8に示す処理が開始されると、変換予測範囲の上限値を格納する比較上限値レジスターと、変換予測範囲の下限値を格納する比較下限値レジスターを初期化する(ステップS1)。即ち、比較上限値レジスターに上限値14b11_1111_1111_1111を設定し、比較下限値レジスターに下限値14b00_0000_0000_0000を設定する。
次に、疑似オーバーサンプリング動作を開始し(ステップS2)、逐次比較動作を開始する(ステップS3)。逐次比較動作を開始すると、上限値と下限値から比較コードu(逐次比較用データ)を生成する(ステップS4)。具体的には、上限値と下限値の各ビットをMSB側から比較していき、同一データのビットまでは、そのデータを比較コードuの対応ビットに代入する。最初にデータが異なるビットでは、比較コードuの対応ビットに“1”を代入し、それ以降の比較コードuのビットには“0”を代入する。上限値14b11_1111_1111_1111、下限値14b00_0000_0000_0000の場合、最初にデータが異なるビットはMSBなので、比較コードu=14b10_0000_0000_0000となる。
次に、D/A変換回路に比較コードuを入力し(ステップS5)、S/H回路とD/A変換回路とコンパレーターで構成されるアナログ回路が比較動作を行う(ステップS6)。次に、コンパレーター出力がHレベル/Lレベルのいずれであるかを判定する(ステップS7)。コンパレーター出力がHレベルの場合、比較コードuをD/A変換した信号レベルよりもサンプリング信号のレベルが小さいので、上限値をu−1に更新する(ステップS8、S9)。比較コードu=14b10_0000_0000_0000の場合、上限値14b01_1111_1111_1111、下限値14b00_0000_0000_0000となる。この場合、次の比較コードはu=14b01_0000_0000_0000となる。一方、コンパレーター出力がLレベルの場合、比較コードuをD/A変換した信号レベルよりもサンプリング信号のレベルが大きいので、下限値をuに更新する(ステップS10)。比較コードu=14b10_0000_0000_0000の場合、上限値14b11_1111_1111_1111、下限値14b10_0000_0000_0000となる。この場合、次の比較コードはu=14b11_0000_0000_0000となる。
次に、上限値と下限値が一致するか否かを判定し(ステップS11)、一致しない場合には、ステップS3〜S11の逐次比較動作を行う。一方、一致した場合には、逐次比較動作を終了する。1回目の逐次比較動作では、上記のように14ビットデータをMSBから全ビットについて逐次比較するので、ステップS3〜S11を14回繰り返すことになる。逐次比較動作を終了すると、比較コードuからコードデータCS(n)を減算したu−CS(n)を、移動平均フィルターに格納する(ステップS12、S13)。移動平均フィルターには、u−CS(n)をデータ“1”として格納し、過去15回分の変換データ“z−1”〜“z−15”と移動平均して、出力データを出力する(ステップS14)。
次に、変換データ(比較コードu)を使って上限値及び下限値を更新する(ステップS15)。即ち、n+1回目(次回)の逐次比較動作に用いるコードデータCS(n+1)と、1回目の逐次比較動作に用いたコードデータCS(1)とから、変換予測範囲の上限値をu+CS(n+1)−CS(1)+ESTRNGに設定する(ステップS16)。また、変換予測範囲の下限値をu+CS(n+1)−CS(1)−ESTRNGに設定する(ステップS17)。次に、n=16であるか否かを判定し(ステップS18)、n=16でない場合にはステップS2〜S18の疑似オーバーサンプリング動作を行い、n=16である場合には、処理を終了する。
n=2〜16における逐次比較動作では、±ESTRNGの幅の変換予測範囲において逐次比較が行われることになる。例えば、ステップS16、S17において、上限値14b10_0010_1111_1111、下限値14b10_0010_0000_1011が設定されたとする。MSB側から見て最初にデータが異なるのは7ビット目なので、次にステップS4を実行するとき、MSBから6ビット目までがスルーされ、MSBから8ビット目以降が“0”に設定され、比較コードu=14b10_0010_1000_0000が生成される。この場合、少なくとも上位6ビットについては逐次比較を行う必要がないため、最大でも下位8ビットの逐次比較を行えばよいことになる。このように、n=2〜16における逐次比較動作では、ステップS3〜S11のループ回数が14回よりも小さくなり、逐次比較シーケンスが短縮される。
図9に、変換予測処理を行う場合のA/D変換動作のタイミングチャートを示す。図9のB1に示すように、サンプル・ホールドが行われると16回のA/D変換動作が開始される。B2に示すように2回目のA/D変換動作では、14ビットよりも少ないビット数(例えば8ビット)の比較を行うだけで逐次比較が終了する。この場合、クロックCK1のクロック数は、比較を行うビット数と同数(例えば8個)である。そのため、2〜16回目のA/D変換動作では、クロックCK2の周期(例えばB3の立ち上がりからB4の立ち上がりまで)が短縮される。この短縮によって、B5に示すクロックCK3の立ち上がりよりも前に、B6に示す出力データDOUT1を出力することができる。B6に示す出力データDOUT1の出力から、B5に示すクロックCK3の立ち上がり(次のサンプリング動作)までの期間TLPでは、A/D変換動作を行う必要がないので、A/D変換回路をディセーブル状態又は低消費電力モードに設定する。このようにして、変換予測処理によりA/D変換動作の低消費電力化を実現できる。
図10に、変換予測範囲の幅ESTRNGに対する、逐次比較のサイクル数の特性を示す。逐次比較のサイクル数は、1回のサンプル・ホールドに対して行われる逐次比較のサイクル数であり、図8においてn=1〜16のA/D変換動作で実行されるステップS3〜S11のループ回数の合計である。図10のD1には、サイクル数の最大値を示し、D2には、サイクル数の平均値を示す。
図10に示すように、ESTRNGを小さくするほどサイクル数が減少し、逐次比較シーケンスが短縮される。例えばESTRNG=16に設定した場合、サイクル数の最大値は110サイクルである。変換予測を行わない場合には、14ビット×16回=224サイクルが必要なので、変換予測を行わない場合よりも半分程度の時間でA/D変換動作を終了できることになる。なお、ESTRNGを小さくしすぎると、変換データが変換予測範囲に入らない可能性があるため、回路特性等を考慮して変換データが変換予測範囲に入る適切なESTRNGを設定すればよい。
以上の実施形態によれば、図8等で説明したように、制御部20は、逐次比較を行うデータ範囲(変換予測範囲)を決める上限値及び下限値を、n回目のA/D変換動作により得られたデータ(比較コードu)に基づいて更新する(ステップS15〜S17)。制御部20は、n+1回目(次回)のA/D変換動作(ステップS2〜S18)において、その更新したデータ範囲で逐次比較(ステップS3〜S11)を行う。
具体的には、図8等で説明したように、制御部20は、次のA/D変換動作により得られるデータの予測値[u+CS(n+1)−CS(1)]を含むデータ範囲の、上限値[u+CS(n+1)−CS(1)+ESTRNG]及び下限値[u+CS(n+1)−CS(1)−ESTRNG]を設定する(ステップS16、S17)。
より具体的には、制御部20は、A/D変換動作により得られたデータ(比較コードu)と、A/D変換動作におけるコードデータCS(n)と、次のA/D変換動作におけるコードデータCS(n+1)とに基づいて、予測値[u+CS(n+1)−CS(1)]を求める。
このように、疑似的なオーバーサンプリングでは変換予測を行うことができる。即ち、同一のサンプリング信号SINに対して得られる2回目以降のA/D変換データを、1回目のA/D変換データから予測することができるため、その予測値を用いて2回目以降の逐次比較を行うデータ範囲を狭めることができる。これにより、A/D変換動作の開始から出力データを得るまで(図9のB1からB6まで)の時間を短縮できる。
また本実施形態では、図9等で説明したように、B6に示すように出力データDOUTを出力してから、B5に示す次のサンプリング動作までの間(期間TLP)、A/D変換回路がディセーブル状態又は低消費電力モードに設定される。
ここで、ディセーブル状態とは、A/D変換回路の構成要素が非動作状態に設定された状態のことであり、例えば、システムから制御部20に供給されるディセーブル信号により設定される。あるいは、制御部20がクロック生成回路を有し、そのクロック生成回路が、システムから供給されるクロックに基づいてクロックCK1〜CK3を生成してもよい。この場合、クロック生成回路が、クロックCK1〜CK3の供給を停止(マスク)することで、A/D変換回路の構成要素が非動作状態に設定されてもよい。また、低消費電力モードとは、A/D変換回路が動作しているときの消費電力よりも、小さい消費電力となるモードのことである。例えば、A/D変換回路を構成するアナログ回路に電力が供給されない(又は低下する)モードである。
このようにすれば、A/D変換動作の開始から出力データを得るまでの時間が短縮されたことにより空いた時間に、A/D変換回路の消費電力を低下させることができる。即ち、疑似的なオーバーサンプリングでは変換予測処理により低消費電力化を行うことができる。
5.コードシフト手法
本実施形態が行うコードシフトの詳細について、A/D変換のビット数が8ビットである場合を例にとり説明する。図11(A)には、本実施形態の比較例として、A/D変換回路がコードシフトを行わない場合のDNL特性及びINL特性を示す。図11(A)に示すように、例えばDNLの誤差等が原因で特定のコードでミッシングコードが発生する。例えばDNLが1LSBを超えると、出力コードが存在しないコードが発生するというミッシングコードの現象が生じる。
この点、本実施形態によれば、図4等で説明したように、時間的に変化するコードデータCDAのD/A変換信号SCDを、サンプリング信号SINに加算することで、図11(B)に示すようなコードシフトが行われる。なお図11(B)の実線はコードシフト後の特性を表すものであり、破線はコードシフト前の特性を表すものである。
即ち、本実施形態では、1又は複数回のA/D変換タイミング毎にコードデータCDAを異なった値にすることで、図11(B)に示すように、ミッシングコードが発生するコードの場所が1又は複数回のA/D変換タイミング毎に変化する。例えば00010000のコードでミッシングコードが発生したとしても、その場所が、00010001や00010010や00001111の場所にシフトする。この結果、長い時間範囲で見ると、図11(C)に示すようにDNLやINLが改善され、ミッシングコードの現象が生じない良好な特性を得ることができる。即ち、ある特定のコードで発生していたDNL特性の悪化(ミッシングコード)を、時間的に変化するコードデータCDAにより周囲のコードに拡散させることで、特性の改善を図っている。
つまり、図11(A)に示すようにミッシングコードが発生している状態で、入力電圧に意図的にオフセット電圧を加えた場合を考える。その時のDNL、INL特性は、図11(B)に示すように、あたかも加えたオフセット電圧に相当するコードだけシフトしたようになる。この場合に、A/D変換回路で変換されたデジタルデータは、オフセット電圧に相当するコードが加えられているので、オフセット電圧に相当するコードを減算することで最終結果が得られる。本実施形態のコードシフト手法は、この特性を利用し、入力電圧に毎回異なるオフセット電圧を加える。これを行うことで、図11(C)に示す特性のA/D変換回路で、見かけ上、変換を行っていることになる。
例えば、ミッシングコードが発生しているコードに対応する電圧をA/D変換する場合を考える。コードシフトを行わない場合、この入力電圧周辺では非線形な変換が行われてしまう。これに対して、ある値だけコードシフトを行った場合、上記の入力電圧周辺では、線形性が良い変換が行われる。つまり、さまざまな値でコードシフトさせることで、あるコードシフト値では非線形であるが、大半のコードシフト値では線形な変換が行われる。最終的に、コードシフトを行うことで、本来ミッシングコードが発生している入力電圧においても比較的線形な変換が行われるようになる。
以上のように、本実施形態によれば、コードデータCDAを発生して加算するという簡素な処理により、ミッシングコードの発生を防止し、A/D変換回路のDNLやINLの特性を改善することに成功している。
6.D/A変換回路
図12に本実施形態のD/A変換回路の詳細な構成例を示す。図12は、A/D変換のビット数が8ビットである場合の構成例であり、図4のDAC1、DAC2、比較回路10の詳細な構成例を示すものである。DAC1、DAC2は電荷再分配型のD/A変換回路により構成される。
具体的には第1のD/A変換回路DAC1は、第1のキャパシターアレイ部41と第1のスイッチアレイ部51を含む。また比較ノードNCと第1のノードN1との間に設けられる第1の直列キャパシターCS1を含む。またDAC1は、第2のキャパシターアレイ部42と第2のスイッチアレイ部52を含む。またサンプリング期間において、ノードNC、N1をGND(AGND)に設定するためのスイッチ素子SS1を含む。
DAC1の第1のキャパシターアレイ部41は、複数のキャパシターCA1〜CA4を含む。これらのキャパシターCA1〜CA4は、その一端が比較回路10の比較ノードNCに接続される。ここで比較ノードNC(サンプリングノード)は、比較回路10の第1の入力端子(反転入力端子)に接続されるノードであり、比較回路10の第2の入力端子(非反転入力端子)はGNDに設定される。またキャパシターCA1〜CA4はバイナリーで重み付けされており、例えばCA1、CA2、CA3、CA4の容量値は、4ビットの場合にはC、2C、4C、8Cになっている。また第1のキャパシターアレイ部41は、ダミーキャパシターCDMも含む。
DAC1の第1のスイッチアレイ部51は、複数のスイッチ素子SA1〜SA4を含む。これらのスイッチ素子SA1〜SA4は、第1のキャパシターアレイ部41のキャパシターCA1〜CA4の他端に接続される。そしてスイッチ素子SA1〜SA4は、逐次比較用データRDAの上位ビットのデータ(例えばRDAが8ビットの場合には上位の4ビットのデータ)に基づきスイッチ制御される。
DAC1の第2のキャパシターアレイ部42は、複数のキャパシターCB1〜CB4を含む。これらのキャパシターCB1〜CB4は、その一端が第1のノードN1に接続される。ここで第1のノードN1は、一端が比較ノードNCに接続される直列キャパシターCS1の他端側のノードである。またキャパシターCB1〜CB4はバイナリーで重み付けされており、例えばCB1、CB2、CB3、CB4の容量値は、4ビットの場合にはC、2C、4C、8Cになっている。
DAC1の第2のスイッチアレイ部52は、複数のスイッチ素子SB1〜SB4を含む。これらのスイッチ素子SB1〜SB4は、第2のキャパシターアレイ部42のキャパシターCB1〜CB4の他端に接続される。そしてスイッチ素子SB1〜SB4は、逐次比較用データRDAの下位ビットのデータ(例えばRDAが8ビットの場合には下位の4ビットのデータ)に基づきスイッチ制御される。
第2のD/A変換回路DAC2は、比較ノードNCと第2のノードN2との間に設けられる第2の直列キャパシターCS2を含む。また第3のキャパシターアレイ部43と第3のスイッチアレイ部53を含む。
DAC2の第3のキャパシターアレイ部43は、複数のキャパシターCC1〜CC4を含む。これらのキャパシターCC1〜CC4は、その一端が第2のノードN2に接続される。ここで第2のノードN2は、一端が比較ノードNCに接続される直列キャパシターCS2の他端側のノードである。またキャパシターCC1〜CC4はバイナリーで重み付けされており、例えばCC1、CC2、CC3、CC4の容量値は、4ビットの場合にはC、2C、4C、8Cになっている。
DAC2の第3のスイッチアレイ部53は、複数のスイッチ素子SC1〜SC4を含む。これらのスイッチ素子SC1〜SC4は、第3のキャパシターアレイ部43のキャパシターCC1〜CC4の他端に接続される。そしてスイッチ素子SC1〜SC4は、コードデータCDAに基づきスイッチ制御される。
即ち図4のコードデータ生成部90は、D/A変換回路DAC2に対してコードデータCDAを出力し、このコードデータCDAに基づいてスイッチ素子SC1〜SC4はスイッチ制御される。例えばコードデータ生成部90は、逐次比較用データRDAの下位ビットデータのデータ範囲内において、1又は複数回のA/D変換タイミング毎に異なった値になるデータを、コードデータCDAとして出力する。
具体的には図12の8ビットのA/D変換の場合には、逐次比較用データRDAの下位の4ビットのデータ範囲内において、コードデータCDAを変化させる。例えば0000〜1111のデータ範囲内(或いは0000〜1111よりも狭いデータ範囲内)においてコードデータCDAをランダムに変化させて、D/A変換回路DAC2のスイッチアレイ部53のスイッチ素子SC1〜SC4をスイッチ制御する。このときD/A変換回路DAC1のスイッチアレイ部52のスイッチ素子SB1〜SB4も、逐次比較用データRDAの下位の4ビットのデータによりスイッチ制御される。このように、コードデータCDAを変化させる範囲を、DAC1のスイッチ素子SB1〜SB4をスイッチ制御する逐次比較用データRDAのデータ範囲内に設定することで、ミッシングコードの発生を効果的に防止できる。
なお、D/A変換回路DAC1の最小分解能(LSBに相当する電圧、量子化電圧)をRS1とし、D/A変換回路DAC2の最小分解能をRS2としたとする。この場合に図11ではRS2=RS1になっている。具体的には例えば直列キャパシターCS1とCS2の容量値は同一(ほぼ同一)になっており、DAC1のLSBに相当するキャパシターCB1の容量値と、DAC2のLSBに相当するキャパシターCC1の容量値も同一(ほぼ同一)になっている。即ちDAC2は、DAC1の最小分解能RS1(LSB)未満のノイズ電圧ではなく、ノイズ電圧よりも大きなコード電圧を出力している。このようにすることで図11(B)に示すようなコードシフトを実現できる。なおRS2=RS1には限定されず、RS2≧RS1であってもよい。
次に、図13を用いて本実施形態の動作について詳細に説明する。図13に示すように、入力信号VINのサンプリング期間では、メインのD/A変換回路DAC1のスイッチ素子SS1がオンになり、ノードNC、N1がGNDに設定される。またD/A変換回路DAC1のスイッチ素子SA1〜SA4、SB1〜SB4を介して、キャパシターCA1〜CA4、CB1〜CB4の他端がVINの電圧レベルに設定される。
これにより入力信号VINのサンプリングが行われる。そしてスイッチ素子SA1〜SA4、SB1〜SB4がオフすると、そのタイミングでの入力信号VINの電圧がホールドされる。なおサンプリング期間では、ダミーキャパシター用のスイッチ素子SDMを介して、ダミーキャパシターCDMの他端がVINの電圧レベルに設定される。
またサンプリング期間では、コードシフト用のD/A変換回路DAC2のスイッチ素子SC1〜SC4を介して、キャパシターCC1〜CC4の他端がGNDに設定される。これによりキャパシターCC1〜CC4の両端がGNDに設定され、電荷が蓄積されない状態になる。
次に、A/D変換の逐次比較期間になると、メインのD/A変換回路DAC1のスイッチ素子SS1がオフになる。またダミーキャパシター用のスイッチ素子SDMの他端はGNDに設定される。
そして、逐次比較用データRDAの各ビットに基づいて、DAC1のスイッチ素子SA1〜SA4、SB1〜SB4がスイッチ制御され、キャパシターCA1〜CA4、CB1〜CB4の他端はVREF又はGNDに設定される。
例えば逐次比較用データがRDA=10000000である場合には、RDAのMSBに対応するキャパシターCA4の他端は基準電圧VREFに設定される。また、他のキャパシターCA3〜CA1、CB4〜CB1の他端はGNDに設定される。
また逐次比較用データがRDA=10001000である場合には、キャパシターCA4とCB4の他端はVREFに設定される。また、他のキャパシターCA3〜CA1、CB3〜CB1の他端はGNDに設定される。
またA/D変換の逐次比較期間になると、コードデータCDAの各ビットに基づいて、コードシフト用のD/A変換回路DAC2のスイッチ素子SC1〜SC4がスイッチ制御され、キャパシターCC1〜CC4の他端はVREF又はGNDに設定される。
例えばコードデータがCDA=1000である場合には、キャパシターCC4の他端はVREFに設定され、他のキャパシターCC3〜CC1の他端はGNDに設定される。またコードデータがCDA=1100である場合には、キャパシターCC4、CC3の他端はVREFに設定され、他のキャパシターCC2、CC1の他端はGNDに設定される。
この場合にコードデータCDAは、図13に示す1回のA/D変換タイミング毎に変化する。即ちサンプリング期間及び逐次比較期間により構成される1回のA/D変換期間毎にコードデータCDAは変化する。なお複数回のA/D変換タイミング毎にコードデータCDAを変化させてもよい。
7.DEM手法
次に本実施形態のDEM(ダイナミック・エレメント・マッチング)手法の詳細について説明する。図14に、図12の上位ビット側の第1のキャパシターアレイ部41、第1のスイッチアレイ部51と、図4のDEM制御部80の詳細な構成例を示す。
キャパシターアレイ部41は、第1型キャパシター1C1〜1C15と、第2型キャパシター3C1〜3C16を有する。第2型キャパシター3C1〜3C16は、第1型キャパシター1C1〜1C15とは容量値が異なっており、例えば第1型キャパシター1C1〜1C15の3倍(広義には整数倍)の容量値になっている。そして第1型キャパシター1C1〜1C15、第2型キャパシター3C1〜3C16の一端は出力ノードNCに接続される。
スイッチアレイ部51は、スイッチ素子SWX1〜SWX15、SWY1〜SWY16を有する。これらのスイッチ素子SWX1〜SWX15、SWY1〜SWY16は、第1型キャパシター1C1〜1C15、第2型キャパシター3C1〜3C16の他端に接続される。そして、スイッチ素子SWX1〜SWX15、SWY1〜SWY16は、入力デジタルデータの上位ビット側(ビット5〜ビット10)であるD4〜D9により生成された信号DX1〜DX15、DY1〜DY16に基づいて、スイッチ制御される。
具体的にはスイッチ素子SWX1〜SWX15、SWY1〜SWY16は、サンプリング期間においては、第1型キャパシター1C1〜1C15、第2型キャパシター3C1〜3C16の他端を、入力信号VINに接続する。
またスイッチ素子SWX1〜SWX15、SWY1〜SWY16は、逐次比較期間(変換期間(変換期間)においては、第1型キャパシター1C1〜1C15、第2型キャパシター3C1〜3C16の他端を、VREF又はGNDに接続する。例えば信号DX1〜DX15、DY1〜DY16の論理レベルが「1」である場合には基準電圧VREFに接続し、信号DX1〜DX15、DY1〜DY16の論理レベルが「0」である場合にはGNDに接続する。
DEM制御部80は、第1、第2の割り当て決定回路21、22と、第1、第2のカウンター23、24を含む。
第1のカウンター23は、カウント処理を行って、第1のカウント値CTXを第1の割り当て決定回路21に出力する。第1の割り当て決定回路21は、第1のカウンター23からの第1のカウント値CTXに基づいて、入力デジタルデータD4〜D9の各ビット(ビット5〜ビット10)に対する第1型キャパシター1C1〜1C15の割り当てを決定する処理を行う。
第2のカウンター24は、カウント処理を行って、第2のカウント値CTYを第2の割り当て決定回路22に出力する。第2の割り当て決定回路22は、第2のカウンター24からの第2のカウント値CTYに基づいて、入力デジタルデータD4〜D9の各ビット(ビット5〜ビット10)に対する第2型キャパシター3C1〜3C16の割り当てを決定する処理を行う。
このように第1、第2の割り当て決定回路21、22が、入力デジタルデータの各ビットへの第1型キャパシター1C1〜1C15、第2型キャパシター3C1〜3C16の割り当て決定処理を行うことで、キャパシターアレイ部41のキャパシターのDEMが実現される。これらの第1、第2の割り当て決定回路21、22による割り当て決定処理は、例えば入力デジタルデータD4〜D9を用いたビットローテーション処理により実現できる。
なお、第1のカウンター23の総カウント数を第1の総カウント数とし、第2のカウンター24の総カウント数を第2の総カウント数とした場合に、第1、第2のカウンター23、24は、第1、第2の総カウント数が異なるカウンターである。具体的には、第1、第2のカウンター23、24は、第1、第2の総カウント数の最大公約数が1となるカウンターである。例えば第1のカウンター23の第1の総カウント数は15であり、第2のカウンター24の第2の総カウント数は16である。そして、第1の総カウント数=15と第2の総カウント数=16は、その最大公約数が1になっている。なお、第1、第2の総カウント数は15、16には限定されず、少なくとも異なる総カウント数であればよく、望ましくはその最大公約数が1になる総カウント数であればよい。
次に、本実施形態のDEM手法について図15(A)〜図16(B)を用いて詳細に説明する。なお以下では、第1型キャパシター1C1〜1C15を、適宜、「1C」と総称し、第2型キャパシター3C1〜3C16を、適宜、「3C」と総称する。
図15(A)に、入力デジタルデータの各ビット5〜10への第1型キャパシター1C、第2型キャパシター3Cの割り当て数の例を示す。前述したように、第2型キャパシター3Cの容量値は、第1型キャパシター1Cの容量値の3倍になっている。
例えば入力デジタルデータのビット5(D4)には、1個の第1型キャパシター1Cが割り当てられる。同様に、ビット6、7(D5、D6)には、各々、2個、4個の第1型キャパシター1Cが割り当てられる。これにより、1:2:4というようにバイナリーに重み付けされた図2のキャパシターCA1、CA2、CA3が実現される。即ち、キャパシターCA1、CA2、CA3は、図15(A)のビット5、6、7に対応し、各々、1個、2個、4個の第1型キャパシター1Cにより実現される。
入力デジタルデータのビット8(D7)には、2個の第1型キャパシター1Cと2個の第2型キャパシター3Cが割り当てられる。同様にビット9(D8)には、4個の第1型キャパシター1Cと4個の第2型キャパシター3Cが割り当てられ、ビット10(D9)には、2個の第1型キャパシター1Cと10個の第2型キャパシター3Cが割り当てられる。これにより、8:16:32というようにバイナリーに重み付けされたキャパシターCA4、CA5、CA6が実現される。即ち、キャパシターCA4、CA5、CA6は、各々、図15(A)のビット8、9、10に対応し、CA4、CA5、CA6の各キャパシターは、2個と2個、4個と4個、2個と10個というような第1型キャパシター1Cと第2型キャパシター3Cのペアーにより実現される。
なお図15(A)では、第2型キャパシター3Cが第1型キャパシター1Cの3倍の容量値を有するキャパシターである場合について示したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば図9(B)では、第2型キャパシター6Cは第1型キャパシター1Cの6倍の容量値を有するキャパシターになっており、図15(B)には、この場合の入力デジタルデータの各ビット5〜10への第1型キャパシター1C、第2型キャパシター6Cの割り当て数の例が示されている。図15(B)の割り当てによっても、1:2:4:8:16:32というようにバイナリーに重み付けされたキャパシターアレイ部41のキャパシターCA1、CA2、CA3、CA4、CA5、CA6を実現できる。
図16(A)は、図14の第1の割り当て決定回路21の動作を説明する図である。第1の割り当て決定回路21は、0、1、2・・・14というように順次インクリメントされる第1のカウンター23からのカウント値CTXに基づいて、信号DX1〜DX15を生成して、スイッチアレイ部51に出力する。
例えばカウント値CTX=0の場合には、信号DX1によって、図14の第1型キャパシター1C1は、図16(A)に示すように入力デジタルデータのビット5(D4)に割り当てられる。具体的には、信号DX1により制御されるスイッチ素子SWX1は、入力デジタルデータのビット5が「1」である場合には第1型キャパシター1C1の他端に基準電圧VREFを接続し、「0」である場合には1C1の他端にGNDを接続する。
またカウント値CTX=0の場合に、信号DX2、DX3によって、図14の第1型キャパシター1C2、1C3は、図16(A)に示すように入力デジタルデータのビット6(D5)に割り当てられる。具体的には、信号DX2、DX3により制御されるスイッチ素子SWX2、SWX3は、入力デジタルデータのビット6が「1」である場合には1C2、1C3の他端にVREFを接続し、「0」である場合には1C2、1C3の他端にGNDを接続する。
同様に、カウント値CTX=0の場合に、信号DX4〜DX7、DX8〜DX9、DX10〜DX13、DX14〜DX15によって、第1型キャパシター1C4〜1C7、1C8〜1C9、1C10〜1C13、1C14〜1C15は、各々、入力デジタルデータのビット7、8、9、10に割り当てられる。
以上のようにすることで、図15(A)に示すようなビット5〜10への第1型キャパシター1Cの割り当てが実現される。
そして、カウント値CTXがインクリメントされると、入力デジタルデータの各ビットに対する第1型キャパシター1Cの割り当て状態が変化する。即ち図16(A)に示すように、カウント値CTXがインクリメントされるごとに、DX1〜DX15による各ビットへの第1型キャパシター1Cの割り当て状態(DX1〜DX15の信号状態)が、順次左方向にシフトして行き、これにより入力デジタルデータの各ビットに対する第1型キャパシター1Cの割り当てが動的に変化するようになる。
例えば図16(A)に示すようにカウント値CTX=1の場合には、信号DX1、DX2によって、第1型キャパシター1C1、1C2は入力デジタルデータのビット6に割り当てられる。即ちカウント値CTX=0の場合には、1C1はビット5に割り当てられていたが、カウント値がCTX=1にインクリメントされると、1C1はビット6に割り当てられるようになる。
またカウント値CTX=1の場合には、信号DX3〜DX6によって、第1型キャパシター1C3〜1C6は入力デジタルデータのビット7に割り当てられる。即ちカウント値CTX=0の場合には、1C3はビット6に割り当てられていたが、カウント値がCTX=1にインクリメントされると、1C3はビット7に割り当てられるようになる。
そして、カウント値がCTX=1からCTX1=2にインクリメントされると、今度は、信号DX1によって1C1がビット6に割り当てられ、信号DX2〜DX5によって1C2〜1C5がビット7に割り当てられるようになる。従って、入力デジタルデータの各ビットに対する第1型キャパシター1Cの割り当てが動的に変化し、DEMが実現されるようになる。即ち、第1型キャパシター1C1〜1C15が入力デジタルデータの上位側のビット5〜10に対して均等に使用されるようになるため、見かけ上の容量比精度を向上できる。
図16(B)は、図14の第2の割り当て決定回路22の動作を説明する図である。第2の割り当て決定回路22は、0、1、2・・・15というように順次インクリメントされる第2のカウンター24からのカウント値CTYに基づいて、信号DY1〜DY16を生成して、スイッチアレイ部51に出力する。
例えばカウント値CTY=0の場合には、信号DY1、DY2によって、第2型キャパシター3C1、3C2は入力デジタルデータのビット8に割り当てられる。具体的には、信号DY1、DY2により制御されるスイッチ素子SWY1、SWY2は、入力デジタルデータのビット8が「1」である場合には第2型キャパシター3C1、3C2の他端に基準電圧VREFを接続し、「0」である場合には3C1、3C2の他端にGNDを接続する。
そして、カウント値CTYがインクリメントされると、入力デジタルデータの各ビットに対する第2型キャパシター3Cの割り当て状態が変化する。即ち図16(B)に示すように、カウント値CTYがインクリメントされるごとに、DY1〜DY16による各ビットへの第2型キャパシター3Cの割り当て状態(DY1〜DX16の信号状態)が、順次左方向にシフトして行き、これにより入力デジタルデータの各ビットに対する第2型キャパシター3Cの割り当てが動的に変化するようになる。
例えば図16(B)に示すようにカウント値CTY=1の場合には、信号DY1によって第2型キャパシター3C1はビット8に割り当てれ、信号DY2〜DY5によって、第2型キャパシター3C2〜3C5はビット9に割り当てられる。即ちカウント値CTY=0の場合には、3C2はビット8に割り当てられていたが、カウント値がCTY=1にインクリメントされると、3C2はビット9に割り当てられるようになる。従って、入力デジタルデータの各ビットに対する第2型キャパシター3Cの割り当てが動的に変化し、DEMが実現されるようになる。
8.全差動型D/A変換回路
図17に全差動型のD/A変換回路の詳細な構成例を示す。図17は、A/D変換のビット数が8ビットである場合の構成例であり、図4のDAC1、DAC2、比較回路10の詳細な構成例を示すものである。図17のD/A変換回路は、比較回路10の非反転入力端子に接続されるメインのD/A変換回路DAC1Pと、反転入力端子に接続されるメインのD/A変換回路DAC1Nを含む。また、比較回路10の非反転入力端子に接続されるコードシフト用のD/A変換回路DAC2Pと、反転入力端子に接続されるコードシフト用のD/A変換回路DAC2Nを含む。
非反転側(正側)のメインのDAC1P及び反転側(負側)のメインのDAC1Nの構成は、図11のメインのDAC1と同様に、キャパシターアレイ部とスイッチアレイ部を含む。そしてDAC1Pには、差動信号を構成する非反転側(正側)の入力信号PINが入力され、DAC1Nには、差動信号を構成する反転側(負側)の入力信号NINが入力される。
そしてサンプリング期間では、DAC1PのノードNCP、N1Pは、スイッチ素子SS1P、SS2Pによりコモン電圧(中間電圧)VCMに設定される。またDAC1NのノードNCN、N1Nは、スイッチ素子SS1N、SS2Nによりコモン電圧VCMに設定される。
またサンプリング期間では、DAC1Pのスイッチ素子SA1P〜SA4P、SB1P〜SB4Pの一端は、差動信号の非反転側の信号PINに接続され、DAC1Nのスイッチ素子SA1N〜SA4N、SB1N〜SB4Nの一端は、差動信号の反転側の信号NINに接続される。
一方、逐次比較期間では、DAC1Pのスイッチ素子SA1P〜SA4P、SB1P〜SB4Pの一端は、逐次比較用データの対応するビットが「1」である場合にはVREFに接続され、「0」である場合にはGNDに接続される。
これに対して、DAC1Nのスイッチ素子SA1N〜SA4N、SB1N〜SB4Nの一端は、逐次比較用データの対応するビットが「1」である場合にはGNDに接続され、「0」である場合にはVREFに接続される。
非反転側のコードシフト用のDAC2P及び反転側のコードシフト用のDAC2Nは、図11のコードシフト用のDAC2と同様に、キャパシターアレイ部とスイッチアレイ部を含む。
そしてサンプリング期間では、DAC2PのノードN2Pは、スイッチ素子SS3PによりVCMに設定される。またDAC2NのノードN2Nは、スイッチ素子SS3NによりVCMに設定される。またDAC2Pのスイッチ素子SC1P〜SC4P及びDAC2Nのスイッチ素子SC1N〜SC4Nの一端はVCMに接続される。
一方、逐次比較期間では、DAC2Pのスイッチ素子SC1P〜SC4Pの一端は、コードデータの対応するビットが「1」である場合にはVREFに接続され、「0」である場合にはGNDに接続される。これに対して、DAC2Nのスイッチ素子SC1N〜SC4Nの一端は、コードデータの対応するビットが「1」である場合にはGNDに接続され、「0」である場合にはVREFに接続される。
図17の構成によっても、コードシフト手法により、A/D変換回路のDNLやINLを改善し、ミッシングコード等の発生を防止できる。また全差動型でA/D変換回路を構成することで、振幅を大きく取ることができ、S/N比を向上できると共に、コモンモードノイズの影響を低減できる。
9.電子機器
図18に本実施形態のA/D変換回路(D/A変換回路)を含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、センサー510、検出回路520、A/D変換回路530(D/A変換回路)、処理部540を含む。なおこれらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば検出回路520、A/D変換回路530、処理部540は集積回路装置により実現できる。
図18の電子機器としては、例えば生体計測機器(脈拍計、歩数計等)、携帯型情報端末、映像機器(デジタルカメラ、ビデオカメラ)、時計などの種々の機器を想定できる。
センサー510は、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等であって、電子機器の用途に応じた様々なセンサーが用いられる。検出回路520はセンサー510から出力されるセンサー信号を増幅して、所望信号を抽出する。またA/D変換回路530は検出回路520からの検出信号(所望信号)をデジタルデータに変換して、処理部540へ出力する。
処理部540は、A/D変換回路530からのデジタルデータに対して必要なデジタル信号処理を実行する。また処理部540は、検出回路520のゲイン制御等を行ってもよい。ここで処理部540で行われるデジタル信号処理としては、センサー信号から適正な所望信号を抽出するための高速フーリエ変換等の種々の処理を想定できる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。またD/A変換回路、A/D変換回路、電子機器の構成・動作や、D/A変換手法、A/D変換手法、DEM手法、コードシフト手法等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。