JP2013209689A - 希土類元素回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】非希土類元素を含む原料からの複数種類の希土類元素の回収をより低コスト且つ簡便に行う。
【解決手段】1以上の種類の希土類元素と、非希土類元素とを含む原料溶液から特定の希土類元素を抽出する希土類元素回収方法であって、原料溶液から溶媒抽出法を用いて1以上の希土類元素を含む第1の溶液を得る第1抽出工程と、第1の溶液から溶媒抽出法を用いて特定の希土類元素を含む第2の溶液を得る第2抽出工程と、を含む。第1抽出工程において溶媒抽出法を用いることで、沈殿分離法を用いる場合と比較して、大量のpH調整用の薬品が不要となり、希土類元素の回収に係るコストを低減させることができる。また、pHの調整/沈殿の回収という作業を複数回繰り返す必要がある沈殿分離法と比較して作業量も大幅に減少し、工程の簡素化も実現される。
【選択図】図1
【解決手段】1以上の種類の希土類元素と、非希土類元素とを含む原料溶液から特定の希土類元素を抽出する希土類元素回収方法であって、原料溶液から溶媒抽出法を用いて1以上の希土類元素を含む第1の溶液を得る第1抽出工程と、第1の溶液から溶媒抽出法を用いて特定の希土類元素を含む第2の溶液を得る第2抽出工程と、を含む。第1抽出工程において溶媒抽出法を用いることで、沈殿分離法を用いる場合と比較して、大量のpH調整用の薬品が不要となり、希土類元素の回収に係るコストを低減させることができる。また、pHの調整/沈殿の回収という作業を複数回繰り返す必要がある沈殿分離法と比較して作業量も大幅に減少し、工程の簡素化も実現される。
【選択図】図1
Description
本発明は、希土類元素を含む原料からの希土類元素回収方法に関する。
物理的に特異な性質を有している希土類元素(レアアース)を他の金属等が含まれる原料から回収する方法としては、原料から不純物となる非希土類元素を除去する不純物除去工程を施し、その後に特定の希土類元素を分離回収する方法が一般的である。不純物除去工程では、pH調整による沈殿分離法を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
近年、希土類元素に対する需要が高まり、より希土類元素の含有率が低い原料から希土類元素を回収する必要が生じている。しかしながら、従来のpH調整による沈殿分離法を用いた不純物除去工程では、pH調整のための酸性物質・アルカリ性物質等のpH調整剤が大量に必要であり、希土類元素の回収に係るコストが増加するという課題がある。また、pH調整を何度か行った後に沈殿物の回収あるいは除去を行う必要があるため、作業が煩雑となりやすい。さらに、コストの増加のみならず、pH調整後の廃液や沈殿残渣等も増加することから、環境への負荷が大きくなる。
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、非希土類元素を含む原料からの複数種類の希土類元素の回収をより低コスト且つ簡便に行うことが可能な希土類元素回収方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る希土類元素回収方法は、1以上の種類の希土類元素と、非希土類元素とを含む原料溶液から特定の希土類元素を抽出する希土類元素回収方法であって、原料溶液から溶媒抽出法を用いて1以上の希土類元素を含む第1の溶液を得る第1抽出工程と、第1の溶液から溶媒抽出法を用いて特定の希土類元素を含む第2の溶液を得る第2抽出工程と、を含むことを特徴とする。
上記の希土類元素回収方法によれば、1以上の希土類元素を含む第1の溶液を得ると共に非希土類元素等の不純物が除去される第1抽出工程いついて溶媒抽出法を用いて行うことで、従来のように沈殿分離法を用いる場合と比較して、大量のpH調整用の酸性物質・アルカリ性物質を使用しなくてよくなるため、希土類元素の回収に係るコストを低減させることができる。また、pHの調整/沈殿の回収という作業を複数回繰り返す必要がある沈殿分離法と比較すると作業量も大幅に減少することから、工程の簡素化も実現される。
ここで、第1抽出工程が向流型多段抽出塔を用いた溶媒抽出法により行われる態様とすることで、他の溶媒抽出法と比較して省スペースで抽出工程を実施すると共に高い分離効果を得ることができる。
さらに、第2抽出工程が向流型多段抽出塔を用いた溶媒抽出法により行われる態様とすることで、他の溶媒抽出法と比較して省スペースで抽出工程を実施することが可能となる。
本発明によれば、非希土類元素を含む原料からの複数種類の希土類元素の回収をより低コスト且つ簡便に行うことが可能な希土類元素回収方法が提供される。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は本実施形態に係る希土類元素の回収方法の流れを示すフローチャートである。図1に示すように、希土類元素の回収方法は、原料溶液調整工程S01、第1抽出工程(希土類元素回収工程)S02、第2抽出工程(特定元素抽出工程)S03、及び精製工程S04の4つの工程を有している。以下、各工程について具体的に説明する。
本実施形態に係る希土類元素の回収方法は、希土類元素を含有する原料物質から特定種類の希土類元素を回収する方法である。なお希土類元素とは、原子番号21のスカンジウム、原子番号39のイットリウム、及び、原子番号57のランタンから原子番号71のルテチウムまでの15元素の計17元素を指す。すなわち、これらの17種類の元素のうちの特定種の元素を回収する方法である。
希土類元素を含有する原料としては、希土類元素と非希土類元素とが混在するものが挙げられ、例えば、鉱石が挙げられる。また、希土類元素を利用して希土類磁石を作る場合の生産時に発生する粉末や不良品等を原料としてもよい。
希土類元素を含む原料は、図1に示すように、原料溶液として調整される(S01)。原料を溶解することで得られる原料溶液には、希土類元素のイオンが含まれる。原料を溶解する際は、必要に応じて原料をばい焼(焙焼)する等の乾式処理を施してもよく、溶解方法・条件等は回収目標となる希土類元素の種類に応じて適宜選択することができる。原料を溶解する際に、不溶性の残渣が残る場合は、ろ過等により除去する。原料溶液には、希土類元素イオンの他、非希土類元素のイオン等が含まれる。希土類元素は互いに異なる元素であっても化学的性質が非常に似ているので、原料に複数種類の希土類元素が含まれている場合には、原料溶液にも複数種類の希土類元素イオンが含まれると考えられる。
次に、原料溶液調整工程(S01)において得られた原料溶液から希土類元素イオンを回収する、すなわち、希土類元素以外の非希土類元素のイオン等の所謂不純物を除去する第1抽出工程が行われる(S02)。第1抽出工程は溶媒抽出法が用いられる。
第1抽出工程で用いられる溶媒抽出法としては、希土類元素の抽出に用いられる公知の方法を用いることができる。公知の方法としては、例えば、原料溶液の液性を酸性としておき、抽出剤を含む抽出溶媒を接触させることにより、希土類元素イオンを水相から有機溶媒(油相)へ移行させる方法が挙げられる。
抽出溶媒に含まれる抽出剤としては、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸、ビス[2−(1,3,3’−トリメチルブチル)5,7,7’−トリメチル−オクチル]リン酸、2−エチルヘキシルリン酸モノ2−エチルヘキシルエステル、ビス(2,4,4’−トリメチルベンチル)リン酸、トリブチルリン酸等のリン酸系の抽出剤が挙げられる。また、抽出剤のみで抽出溶媒を構成してもよいが、有機溶媒により希釈された抽出剤を用いることが好適に用いられる。有機溶媒としては、ケロシン、トルエン、n−デカン等、希土類元素の溶媒抽出法において用いられる公知の有機溶媒を適用することができる。なお、溶媒抽出法に用いられる有機溶媒は、単独で使用するのみに限らず、複数種類の有機溶媒を混合した状態で使用してもよい。
また、抽出操作については、任意の液−液接触装置を用いて行うことができる。抽出操作において使用できる仕様としては、ミキサーセトラー、エマルジョンフロー法、液膜法等が挙げられるが、多段式の液−液接触装置を用いて、原料溶液と抽出溶媒とを向流接触させる構成が好ましく、特に、向流型多段抽出塔を用いることが好ましい。
ここで、図2を用いて向流型多段抽出塔の概略構成について説明する。図2に示す向流型多段抽出塔1は、高さ方向に延びる略円柱状の胴部10と、胴部10の上方に設けられた第1の集液部20と、胴部10の下方に設けられた第2の集液部30と、第1の集液部20の情報においてこれらと連結する駆動部40とを含んで構成される。
胴部10、第1の集液部20、及び、第2の集液部30は、塔壁11に覆われて中空となっている。そして、第1の集液部20には第1の注入部21と第1の排出部22とが設けられると共に、第2の集液部30には2の注入部31と第2の排出部32とが設けられる。
また、胴部10の塔壁11内の中央には、駆動部40と接続されたシャフト12が挿通されていて、胴部10の延在方向に対して垂直な断面を概ね塞ぐように複数の開孔14を有する円盤状のプレート13が所定の間隔でシャフト12に対して複数毎取り付けられている。このプレート13によって、胴部10内の空間は複数の空間に区切られたような状態となる。ただし、開孔14があるために隣接する上下の空間は接続されている。
この向流型多段抽出塔1において、本実施形態に係る第1抽出工程を行う場合、第1の注入口21から原料溶液を注入すると共に第2の注入口31から抽出溶媒を注入する。
本実施形態では、抽出溶媒が連続相であり、原料溶液が分散相となる。また、原料溶液の比重のほうが抽出溶媒の比重よりも大きいため、第1の注入口21から原料溶液を注入すると、原料溶液は胴部10内を上方から下方に移動する。また、第2の注入口31から注入された抽出溶媒は、胴部10内を下方から上方へ移動する。この間に、原料溶液中の希土類元素が抽出溶媒に抽出される。
ここで、駆動部40によって、シャフト12が上下方向(矢印)に振動すると、シャフト12に取り付けられた円盤状のプレート13も上下方向に振動する。これにより、プレート13が胴部10内の空間内の液体を撹拌する撹拌部材として機能する。この結果、胴部10内の原料溶液が液滴状に分散し、抽出溶媒と原料溶液とが接する面積が拡大する。これにより、抽出溶媒への希土類元素の抽出が促進される。
その後、希土類元素が抽出された抽出溶媒(これを第1の溶液とする)は、上部の第1の集液部20に設けられた第1の排出口22から排出されて回収される。また、希土類元素を抽出溶媒に抽出された後の酸性の水溶液は、下部の第2の集液部30に設けられた第2の排出口32から排出されて回収される。第2の排出口32で回収される水溶液には、原料溶液に含まれていた元素のうち抽出溶媒に抽出されなかった元素が残留することとなる。この結果、非希土類元素等の希土類元素とは異なる物質からなる所謂不純物が除去される。
次に、第1の抽出工程(S02)において得られた第1の溶液から、回収目標となる特定の希土類元素イオンを回収する第2抽出工程が行われる(S03)。第2抽出工程についても、溶媒抽出法が用いられる。
第2の抽出工程については、回収目標の希土類元素イオンの特徴に応じた抽出剤を用いて、公知の方法を用いて抽出が行われる。抽出条件等は、回収目標の希土類元素に応じて適宜選択することができる。抽出操作については、第1の抽出工程と同様に任意の液−液接触装置を用いて行うことができるが、多段式の液−液接触装置を用いて、原料溶液と抽出溶媒とを向流接触させる構成が好ましく、特に、向流型多段抽出塔を用いることが好ましい。また、第2の抽出工程においても希土類元素を水相から油相へ溶解させる抽出工程を行う場合には、第2の抽出工程の前に希土類元素イオンが溶解している溶媒を有機溶剤から水系へ変更する必要がある。その場合には、逆抽出等の処理により、希土類元素が溶解している系を変更する処理を行ってもよい。この第2の抽出工程では、1以上の希土類元素が含まれている溶液から特定の希土類元素のみが抽出された第2の溶液が得られる。
最後に、第2の抽出工程により得られた第2の溶液から、目標の希土類元素のみを精製する精製処理が行われる(S04)。この精製方法としては、公知の方法を適宜用いることができ、例えば、希土類元素が含まれる第2の溶液から目標の希土類元素を沈殿分離する方法等、種々の方法を用いることができるが、回収の目標となる希土類元素に応じて選ばれる。
以上の処理を経て目標の希土類元素を回収することが可能となる。
本実施形態に係る希土類元素の回収方法では、従来の希土類元素の回収方法においてpH調整による沈殿分離法を用いて非希土類元素を除去していた工程を溶媒抽出法に変更したことを特徴とする。これにより、従来のpH調整による沈殿分離法によれば、pHを何度も調整をする必要があったために、pHを調整するために原料溶液に添加する酸性物質或いはアルカリ性物質が大量に必要となっていた処理を、1度の抽出操作によって代替することができるため、pH調整用の添加剤が不要となり、コストの削減が達成される。また、pHを調整する処理を行うことにより発生する廃液等も減らすことが可能となるため、廃液の処理工程を減らすことができるほか、環境への負荷も低減することができる。
さらに、本実施形態のように第1の抽出工程において向流型多段抽出塔を用いる場合、他の溶媒抽出法と比較して省スペースで抽出工程を実施すると共に高い分離効果を得ることができる。特に、多段抽出装置であるミキサーセトラーと向流型多段抽出塔とを比較すると、向流型多段抽出塔は、高さ方向に延びる抽出塔からなる装置であるため、ミキサーセトラーと比較して非常に狭い面積において抽出工程を行うことができる。また、向流型多段抽出塔を用いた場合には、非希土類元素と希土類元素との分離をより高い精度で行うことができる。プレートの振動により、分散相である原料溶液の液滴をより小さくすることができるため、抽出塔内での滞留時間が長くなると共に抽出溶媒との接触面積が大きくなり、抽出をより効果的に行うことができている。
また、第2の抽出工程においても向流型多段抽出塔を用いる場合、他の溶媒抽出法と比較して省スペースで抽出工程を実施することが可能となる。
ここで、向流型多段抽出塔を用いた第1の抽出工程を行うことで、希土類元素の分離が可能となることを、実施例を用いて説明する。
前提として、希土類元素及び非希土類元素が複数種類ずつ含まれていて、且つ、希土類元素の含有率が10%未満である原料を準備し、硫酸に溶かすことで原料溶液を作成した。また、有機溶媒としてケロシンを用いて、ケロシン25mLに対して、抽出剤としてDEHPA(ビス(2−エチルヘキシル)リン酸)0.1gを添加し、pHを3.5〜5.0に調整した抽出溶媒を作成し、これらを用いて室温環境下で抽出処理を行った。このとき用いた向流型多段抽出塔は、胴部の内径が2インチ、胴部の高さ(長さ)が1220mmの容積1.5Lのものである。そして、原料溶液を第1の注入口21から注入すると共に抽出溶媒を第2の注入口31から注入しつつ、内部のシャフト11を駆動部40により上下動させることで、プレート13により内部の液体を混合した。第1の排出口22からは、希土類元素が溶解したケロシン(第1の溶液)を60mL/分で排出すると共に、第2の排出口32からは、希土類元素イオンがケロシン側に回収された後の溶液を30mL/分で排出した。
結果の評価は、第1の抽出工程の前における水相(原料溶液)における各元素の量に対する第1の抽出工程の後における水相(希土類元素が除去された原料溶液)における各元素の量の割合、すなわちストリップ比(Strip ratio)を元素毎に求めた。その結果を図3に示す。
図3では、縦軸をストリップ比とし、元素番号の順に元素を示して、元素の種類毎のストリップ比の違いを調べた。その結果、非希土類元素のストリップ比はその大半が1に近いのに対して、希土類元素は大半が0.01前後となっている。すなわち、第1抽出工程を経た水相に残留する希土類元素は、処理前の原料溶液に含まれる希土類元素の1%前後となり、非常に高い回収率であったと共に、分離精度も非常に高いことが確認された。
また、図4には、分液ろうとを用いて第1の抽出工程を行った場合の結果を示す。ここでは、容量が100mlの分液ろうと内に図3の向流型多段抽出塔を用いた試験と同一の原料溶液と抽出溶媒とを入れて、これを30分間振とうした後に、それぞれの相を個別に回収したものである。この結果、図4に示すように、希土類元素の回収率は80%以上である一方、非希土類元素についてもストリップ比が低くなっていて、希土類元素と非希土類元素との分離精度の観点では、向流型多段抽出塔よりも精度が低いことが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず種々の変更を行うことができる。上記実施形態では、原料溶液が水系である場合について説明したが、他の溶媒、例えば有機溶媒等に溶解された原料溶液を用いて第1抽出工程を行う態様としてもよい。また、第1抽出工程における原料溶液と抽出溶媒との間における重液と軽液との関係も変更することができる。また、上記実施形態では、抽出溶媒が連続相であり、原料溶液が分散相である場合について説明したが、これらを逆にしてもよく、抽出溶媒が分散相とし、原料溶液が連続相としてもよい。
1…向流型多段抽出塔、10…胴部、20…第1の集液部、30…第2の集液部。
Claims (3)
- 1以上の種類の希土類元素と、非希土類元素とを含む原料溶液から特定の希土類元素を抽出する希土類元素回収方法であって、
前記原料溶液から溶媒抽出法を用いて前記1以上の希土類元素を含む第1の溶液を得る第1抽出工程と、
前記第1の溶液から溶媒抽出法を用いて特定の希土類元素を含む第2の溶液を得る第2抽出工程と、
を含むことを特徴とする希土類元素回収方法。 - 前記第1抽出工程が向流型多段抽出塔を用いた溶媒抽出法により行われることを特徴とする請求項1記載の希土類元素回収方法。
- 前記第2抽出工程が向流型多段抽出塔を用いた溶媒抽出法により行われることを特徴とする請求項2記載の希土類元素回収方法。
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