JP2013209243A - 高純度シリカの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(B)液分中のSi濃度が6.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合して固液分離を行い、SiO2を含む固形分を得るシリカ回収工程と、(C)前工程で得られたSiO2を含む固形分と酸溶液を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製して、固液分離を行い、SiO2を含む固形分を得る第一の酸洗浄工程と、(D)前工程で得られたSiO2を含む固形分と水を混合して、スラリーを得る水洗浄工程と、(E)前工程で得られたスラリーと鉱酸を混合して、pHが3.0以下の酸性スラリーを調製して、固液分離を行い、SiO2を含む固形分を得る第二の酸洗浄工程と、を含む高純度シリカの製造方法。
【選択図】図1
Description
高純度シリコンの製造方法として、例えば、金属シリコンから製造された高純度のシリコン塩化物(トリクロロシラン)を原料として用いる方法が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の方法によると、非常に高純度のシリコンを得ることができる。しかし、この方法は、工程が煩雑でかつ高コストであるという問題がある。このような事情下において、高純度のシリコンを、低コストかつ大量に製造することのできる技術が望まれている。
これを解決すべく、二酸化ケイ素を含有しかつ多孔質で微細構造を有する原料を精製して高純度シリカを製造し、次いで、この高純度シリカを原料としてシリコンを生成し、得られたシリコンにレーザを照射することなどによって、高純度シリコンを製造する方法が提案されている(特許文献2)。
また、液分中のSi濃度が6.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る、シリカ回収工程を含む高純度シリカの製造方法が提案されている(特許文献3)。
そこで、本発明は、高純度シリカを、低コストでかつ簡易に、しかも、従来よりも純度を高めて製造することのできる方法を提供することを目的とする。
[1] (B)液分中のSi濃度が6.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る、シリカ回収工程と、(C)工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と酸溶液を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、該酸性スラリーを固液分離して、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る、第一の酸洗浄工程と、(D)工程(C)で得られたSiO2を含む固形分と水を混合して、上記固形分中に残存する不純物を溶解させたスラリーを得る、水洗浄工程と、(E)工程(D)で得られたスラリーと鉱酸を混合して、pHが3.0以下の酸性スラリーを調製し、工程(D)で得られたスラリーに含まれる固形分中に残存する不純物を溶解させた後、該酸性スラリーを固液分離して、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る、第二の酸洗浄工程と、を含むことを特徴とする高純度シリカの製造方法。
[2] 工程(C)において、酸溶液として硫酸を用いて、かつ、工程(E)において、鉱酸として塩酸を用いる、前記[1]に記載の高純度シリカの製造方法。
[3] 工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を、pH1.0以下に保ちながら混合する、前記[1]または[2]に記載の高純度シリカの製造方法。
[4] 工程(B)の前に、(A)シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が6.0質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、Siを含むケイ酸アルカリ水溶液と固形分を得る、アルカリ溶解工程、を含み、工程(B)における鉱酸の濃度が20体積%以上である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
[5] 工程(A)と工程(B)の間に、(B1)工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満に調整し、液分中の不純物を析出させた後、固液分離を行い、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る不純物回収工程、を含む、前記[4]に記載の高純度シリカの製造方法。
[6] 工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液がSi濃度10.0質量%以上である水ガラスであり、鉱酸の濃度が10体積%以上である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
[7] 工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合が、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加することによって行われる、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の高純度シリカの製造方法。
さらに、本発明の高純度シリカの製造方法によると、操作が簡易であり、処理効率が高いことなどに起因して、従来技術に比して低い製造コストで高純度シリカを得ることができる。
なお、以下の工程(A1)〜工程(E)中、工程(B)〜工程(E)は、本発明において必須の工程であるが、工程(A)は、シリカ含有鉱物を原料としてケイ酸アルカリ水溶液を調製する場合に追加される工程であり、工程(A1)、(A2)、及び(B1)は、本発明において必須ではなく、任意で追加可能な工程である。
[工程(A1);原料水洗工程]
工程(A1)は、シリカ含有鉱物(岩石状又は粉末状)を水洗して、粘土分及び有機物を除去する工程である。水洗後のシリカ含有鉱物は、通常、フィルタープレス等を用いて、さらに脱水させる。
シリカ含有鉱物としては、珪藻土、珪質頁岩等が挙げられる。シリカ含有鉱物は、アルカリに対する溶解性が高いことが望ましい。
ここで、珪藻土とは、珪藻が海底や湖底に沈積し、長い年月の間に体内の原形質その他の有機物が分解し、非晶質シリカを主体とした珪藻殻が集積して堆積したものである。
珪質頁岩とは、珪質の生物遺骸等に由来する頁岩である。すなわち、海域には、珪質の殻を有する珪藻などのプランクトンが生息するが、このプランクトンの死骸が海底中に堆積すると、死骸中の有機物の部分は徐々に分解され、珪質(SiO2;シリカ)の殻のみが残る。この珪質の殻(珪質堆積物)が、時間の経過や温度・圧力の変化などに伴い、続成作用により変質して、硬岩化することにより珪質頁岩となる。なお、珪質堆積物中のシリカは、続成作用によって、非晶質シリカから、結晶化してクリストバライト、トリデイマイトへ、さらに石英へと変化する。
さらに、Cu−Kα線による粉末X線回折において、石英の2θ=26.6degのピーク頂部の回折強度に対するオパールCTの2θ=21.5〜21.9degの回折強度は、石英を1とした場合の比率で0.2〜2.0の範囲が好ましく、0.4〜1.8の範囲がより好ましく、0.5〜1.5の範囲が更に好ましい。該値が0.2に満たない場合には、反応性に富むオパールCTの量が少ないため、シリカの収量が低下する。一方、該値が2.0を超える場合には、オパールCTの量が石英よりはるかに多くなり、このような珪質頁岩は資源的に少なく、経済性に劣る。
なお、石英に対するオパールCTの回折強度の比率は、以下の式で求める。
石英に対するオパールCTの回折強度の比率=(21.5〜21.9degのピーク頂部の回折強度)/(26.6degのピーク頂部の回折強度)
また、珪質頁岩のCu−Kα線による粉末X線回折において、オパールCTの2θ=21.5〜21.9degの間に存在するピークの半値幅は0.5°以上が好ましく、0.75°以上がより好ましく、1.0°以上がさらに好ましい。該値が0.5°未満では、オパールCTの結晶の結合力が増大し、アルカリとの反応性が低下して、シリカの収量が減少する。ここで、半値幅とは、ピーク頂部の回折強度の1/2に位置する回折線の幅をいう。
本発明で用いる珪質頁岩は、シリカ含有率が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。このような珪質頁岩を用いることにより、より高純度のシリカを低コストで製造することができる。
シリカ含有鉱物は、例えば、珪質頁岩等のシリカ含有鉱物を粉砕装置(例えば、ジョークラッシャー、トップグラインダーミル、クロスビーターミル、ボールミル等)で粉砕することによって得ることができる。
[工程(A2);原料焼成工程]
工程(A2)は、シリカ含有鉱物を300〜1000℃で0.5〜2時間焼成し、有機物を除去する工程である。
なお、工程(A1)と工程(A2)の双方を実施する場合、その順序は特に限定されないが、有機物の除去効率の観点から工程(A1)を先に行うことが好ましい。
工程(A)は、シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が6.0質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、Siを含むケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得るアルカリ溶解工程である。
ここで、ケイ酸アルカリ水溶液とは、化学式中にケイ酸(SiO2)を含む物質を含有するアルカリ性の水溶液をいう。
シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合してなるアルカリ性スラリーのpHは、11.5以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上となるように調整される。該pHが11.5未満であると、シリカを十分に溶解させることができず、シリカが固形分中に残存してしまうため、得られるシリカの収量が減少する。
pHを上記数値範囲内に調整するためのアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が用いられる。
スラリーの固液比(アルカリ水溶液1リットルに対するシリカ含有鉱物の質量)は、好ましくは100〜500g/リットル、より好ましくは200〜400g/リットルである。該固液比が100g/リットル未満では、スラリーの固液分離に要する時間が増大するなど、処理効率が低下する。該固液比が400g/リットルを超えると、シリカ等を十分に溶出させることができないことがある。
スラリーは、通常、所定時間(例えば、30〜90分間)攪拌される。
攪拌後のスラリーは、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離される。液分は、Si及び他の成分(アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、Na等の不純物)を含むケイ酸アルカリ水溶液であり、次の工程(B1)または工程(B)で処理される。液分中に含まれるSiの濃度は、6.0質量%以上、好ましくは8.0質量%以上、特に好ましくは10.0質量%以上である。Si濃度が6.0質量%未満であると、後述する工程(B)においてシリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。
なお、本工程においてアルカリ性スラリーを得る際の液温は、エネルギーコストの観点から、20〜100℃に保持されることが好ましく、20〜80℃に保持されることが、より好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
本工程は、工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満に調整し、液分中のSi以外の不純物(例えば、Al及びFe)を析出させた後、固液分離を行い、Siを含むケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る工程である。
なお、本工程で回収されずに液分中に残存する不純物は、工程(B)以降の工程で回収される。
本工程において、酸との混合後の液分のpHは、10.3を超え、11.5未満、好ましくは10.4以上、11.0以下、特に好ましくは10.5以上、10.8以下である。該pHが10.3以下であると、不純物(例えば、Al及びFe)と共にSiも析出してしまう。一方、該pHが11.5以上では、十分に析出せずに液分中に残存する不純物(例えば、Al及びFe)の量が多くなる。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
このうち、固形分(ケーキ)は、不純物(例えば、Al及びFe)を含むものである。
液分は、Siを含むものであり、次の工程(B)で処理される。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、エネルギーコストの観点から、20〜100℃に保持されることが好ましく、20〜80℃に保持されることがより好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
本工程は、液分中のSi濃度が6.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分を得る工程である。
なお、沈降性シリカは、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との混合と同時に生成する。
本工程において用いられるケイ酸アルカリ水溶液は、特に限定されないが、具体的には前工程(工程(A)または工程(B1))で得られたケイ酸アルカリ水溶液、及び水ガラス等が挙げられる。
本発明で用いられる水ガラスは、市販のものを使用することができ、JIS規格により規定される1号、2号、3号の他に各水ガラスメーカーで製造販売されているJIS規格外の製品も使用することができる。
ケイ酸アルカリ水溶液中に含まれるSiの濃度は、6.0質量%以上、好ましくは8.0質量%以上、特に好ましくは10.0質量%以上である。Si濃度が6.0質量%未満であると、シリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。
ケイ酸アルカリ水溶液として水ガラスを用いる場合、Si濃度は好ましくは10.0質量%以上、より好ましくは12.5質量%以上、特に好ましくは15.0質量%以上である。
本工程において用いられる鉱酸は、例えば硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、硫酸を用いることが薬剤コスト低減の理由で好ましい。
鉱酸の濃度は、ケイ酸アルカリ水溶液と混合する際に、非ゲル状の沈降性シリカが析出すればよい。具体的には、上記工程(A)または工程(B1)で得られたケイ酸アルカリ水溶液を用いる場合、鉱酸の濃度は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上である。鉱酸の濃度が、上記範囲に満たない場合には、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成するおそれがある。このゲル状シリカが生成すると、最終シリカ生成物中の不純物濃度が高くなる。
水ガラスをケイ酸アルカリ水溶液として用いる場合、鉱酸の濃度は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、特に好ましくは20体積%以上である。鉱酸の濃度が、上記範囲に満たない場合には、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成するおそれがある。
ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合方法は、特に限定されるものではないが、沈降性シリカのみを生成させる観点から、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加する方法が好ましい。具体的には、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に滴下する方法や、ケイ酸アルカリ水溶液を、1.0mmφ以上、好ましくは4.0mmφ以上のチューブ等から、鉱酸中に直接押し出す方法等が挙げられる。
また、混合する際のpHは好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下に保つことが望ましい。pHが1.0を超えるとシリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカの量が低下する。
また、ケイ酸アルカリ水溶液の鉱酸液中への流出速度は限定されないが、混合する際にpHが1.0を超え、かつ流出速度が大きい場合には、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成するおそれがある。
さらに、本工程において、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合する際の沈降性シリカの析出温度は、得られるシリカの収量を増加させる観点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは40〜70℃、特に好ましくは50〜60℃である。析出温度が80℃を超えると、エネルギーコストが上昇するとともに、設備の腐食が生じ易くなる。
上記ケイ酸アルカリ水溶液中のSiを沈降性シリカとして析出させた後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分に分離する。得られた沈降性シリカはゲル状ではなく、粒子状であるため固液分離に要する時間を短くすることができる。
工程(B)で得られたSiO2を含む固形分は、Al、Fe、ホウ素(B)、リン(P)、硫黄(S)等の不純物が低減された高純度シリカである。
工程(C)は、工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と酸溶液を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物(例えば、Al、Fe、Na、Mg、Ca、Fe、Ti、S等)を溶解させた後、該酸性スラリーを固液分離して、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分を得る工程である。
本工程における酸性スラリーのpHは、3.0未満、好ましくは2.0以下である。酸性スラリーのpHを上記範囲内に調整して酸洗浄を行うことにより、工程(B)で得られた固形分にわずかに残存するAl、Fe、Na等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、高純度のシリカを得ることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。中でも、薬剤コストの低減等の観点から硫酸が好ましい。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、エネルギーコストの観点から、好ましくは20〜100℃、より好ましくは20〜80℃に保持される。また、液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
また、第一の酸洗浄工程後の液分を回収し、工程(B)および工程(C)に用いられる酸溶液として再利用してもよい。
本工程は、工程(C)で得られたSiO2を含む固形分と水を混合することで、固形分中に残存する不純物(例えば、Al、Fe、Na、Mg、Ca、Fe、Ti、S等)を溶解させたスラリーを得る工程である。水洗浄を行うことにより、前工程で得られた固形分にわずかに残存するAl、Fe、Na等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、高純度のシリカを得ることができる。
水洗浄の方法は、SiO2を含む固形分と水を混合した後に一定時間(例えば、5〜90分間)静置して行ってもよく、攪拌しながら行ってもよい。
本工程における、SiO2を含む固形分と水を混合することで得られるスラリーのpHは、好ましくは4〜7、より好ましくは5〜7、特に好ましくは6〜7である。
本工程は、工程(D)で得られたスラリーと鉱酸を混合して、pHが3.0以下の酸性スラリーを調製し、工程(D)で得られたスラリーに含まれる固形分中に残存する不純物(例えば、Al、Fe、Na、Mg、Ca、Fe、Ti等)を溶解させた後、該酸性スラリーを固液分離して、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る工程である。
工程(D)で得られたスラリーを固液分離することなく、鉱酸と混合することで、処理の効率を高めることができる。
本工程における酸性スラリーのpHは、3.0以下、好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.0以下である。酸性スラリーのpHを上記範囲内に調整して酸洗浄を行うことにより、工程(D)で得られたスラリーに含まれる固形分中にわずかに残存するAl、Fe、Na等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、高純度のシリカを得ることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、高純度化等の観点から塩酸を用いることが好ましい。
また、工程(C)(第一の酸洗浄工程)において、酸溶液として硫酸を用いて、かつ、工程(E)(第二の酸洗浄工程)において、鉱酸として塩酸を用いることが好ましい。第一、及び第二の酸洗浄工程において、これらの酸を用いることで、より高純度のシリカを低コストで得ることができる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、エネルギーコストの観点から、好ましくは20〜100℃、より好ましくは20〜80℃に保持される。また、液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
また、第二の酸洗浄工程後の液分を回収し、工程(B)、工程(C)、及び工程(E)に用いられる酸溶液として再利用してもよい。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理で回収される不純物は、ホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、及び有機物(C)からなる群より選ばれる一種以上である。
イオン交換処理は、キレート樹脂、イオン交換樹脂等のイオン交換媒体を用いて行なうことができる。
イオン交換媒体の種類は、除去対象元素に対する選択性を考慮して、適宜定めればよい。例えば、ホウ素を除去する場合、グルカミン基を有するキレート樹脂や、N−メチルグルカミン基を有するイオン交換樹脂等を用いることができる。
イオン交換媒体の形態は、特に限定されるものではなく、ビーズ状、繊維状、クロス状等が挙げられる。イオン交換媒体への液分の通液方法もなんら限定されるものではなく、例えばカラムにキレート樹脂またはイオン交換樹脂を充填して連続的に通液する方法などを用いることができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行う際の液温は、各処理に用いる材料の耐用温度以下であれば、特に限定されない。
また、最終的に得られたシリカを含む固形分をアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)に溶解させ、工程(B)のケイ酸アルカリ水溶液として用い、工程(B)から工程(E)を複数回繰り返すことによって、より高純度のシリカを得ることができる。
本発明の高純度シリカ中のSiO2の含有率は、好ましくは99.0質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上である。
本発明の高純度シリカ中のNaの含有率は、好ましくは1.5ppm以下、より好ましくは1.4ppm以下、特に好ましくは1.3ppm以下である。また、本発明の高純度シリカ中のMg、Ca、Fe、Tiの含有率は、各々、好ましくは1.0ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下である。
[実施例1]
珪質頁岩(成分組成;SiO2:80質量%、Al2O3:10質量%、Fe2O3:5質量%、B:150ppm、P:330ppm)を、ボールミルを用いて粉砕し、珪質頁岩粉末(最大粒径:0.5mm)を得た。
原料として使用した珪質頁岩について、Cu−Kα線による粉末X線の回折強度、オパールCTの半値幅を、粉末X線回折装置(株式会社リガク製、RINT2000)を用いて測定した。回折強度を図2に、半値幅を図3にそれぞれ示す。使用した珪質頁岩は、石英の2θ=26.6degのピーク頂部の回折強度に対するオパールCTの2θ=21.5〜21.9degのピーク頂部の回折強度の比率が、0.68であった。また、オパールCTの半値幅は、1.4°であった。
次いで、得られた珪質頁岩粉末250gと、2.5N水酸化ナトリウム水溶液1000gを混合して、70℃に加温した後に、60分間混合撹拌し、pHが13.5であるスラリーを得た。
このスラリーを減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Siの濃度が10質量%の液分700gを得た。
次いで、得られた液分を再び70℃に加温し、液分に対して98%硫酸を添加して、pHを10.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Fe、Al等を含む含水固形分10gと、Siを含む液分700gを得た。
得られたSiO2を含む固形分に対して、硫酸濃度25体積%の硫酸を520g添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に得られた固形分を、蒸留水を用いて攪拌しつつ水洗した。
水洗後に、塩酸濃度35体積%の塩酸を10g添加してpHが3.0以下のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、105℃で1日乾燥させ、精製シリカ50gを得た。
得られた精製シリカ中のナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、硫黄(S)の濃度を測定した。
得られた精製シリカは、乾燥後に、SiO2:99.9質量%、Na:1.3ppm、Mg:0.5ppm未満、Ca:0.5ppm未満、Fe:0.5ppm未満、Ti:0.5ppm未満、S:3.3ppm未満の成分組成を有していた。また、Siの回収率は99%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様にして得られた珪質頁岩粉末250gと、2.5N水酸化ナトリウム水溶液1000gを混合して、70℃に加温した後に、60分間混合撹拌し、pHが13.5であるスラリーを得た。
このスラリーを減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Siの濃度が10質量%の液分700gを得た。
次いで、得られた液分を再び70℃に加温し、液分に対して98%硫酸を添加して、pHを10.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Fe、Al等を含む含水固形分10gと、Siを含む液分700gを得た。
得られたSiO2を含む固形分に対して、硫酸濃度25体積%の硫酸を520g添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に得られた固形分を、蒸留水を用いて攪拌しつつ水洗した。
水洗後に、硫酸濃度35体積%の硫酸を10g添加してpHが3.0以下のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、105℃で1日乾燥させ、精製シリカ50gを得た。
得られた精製シリカ中のナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、硫黄(S)の濃度を測定した。
得られた精製シリカは、乾燥後に、SiO2:99.9質量%、Na:1.4ppm、Mg:0.5ppm未満、Ca:0.5ppm未満、Fe:0.5ppm未満、Ti:0.5ppm未満、S:169ppmの成分組成を有していた。また、Siの回収率は99%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様にして得られた珪質頁岩粉末250gと、2.5N水酸化ナトリウム水溶液1000gを混合して、70℃に加温した後に、60分間混合撹拌し、pHが13.5であるスラリーを得た。
このスラリーを減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Siの濃度が10質量%の液分700gを得た。
次いで、得られた液分を再び70℃に加温し、液分に対して98%硫酸を添加して、pHを10.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Fe、Al等を含む含水固形分10gと、Siを含む液分700gを得た。
得られたSiO2を含む固形分に対して、塩酸濃度25体積%の塩酸を520g添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に得られた固形分を、蒸留水を用いて攪拌しつつ水洗した。
水洗後に、硫酸濃度35体積%の硫酸を10g添加してpHが3.0以下のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、105℃で1日乾燥させ、精製シリカ50gを得た。
得られた精製シリカ中のナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、硫黄(S)の濃度を測定した。
得られた精製シリカは、乾燥後に、SiO2:99.9質量%、Na:1.2ppm、Mg:0.5ppm未満、Ca:0.5ppm未満、Fe:0.5ppm未満、Ti:0.5ppm未満、S:182ppmの成分組成を有していた。また、Siの回収率は99%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様にして得られた珪質頁岩粉末250gと、2.5N水酸化ナトリウム水溶液1000gを混合して、70℃に加温した後に、60分間混合撹拌し、pHが13.5であるスラリーを得た。
このスラリーを減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Siの濃度が10質量%の液分700gを得た。
次いで、得られた液分を再び70℃に加温し、液分に対して98%硫酸を添加して、pHを10.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Fe、Al等を含む含水固形分10gと、Siを含む液分700gを得た。
得られたSiO2を含む固形分に対して、塩酸濃度25体積%の塩酸を520g添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に得られた固形分を、蒸留水を用いて攪拌しつつ水洗した。
水洗後に、塩酸濃度35体積%の塩酸を10g添加してpHが3.0以下のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、105℃で1日乾燥させ、精製シリカ50gを得た。
得られた精製シリカ中のナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、硫黄(S)の濃度を測定した。
得られた精製シリカは、乾燥後に、SiO2:99.9質量%、Na:1.2ppm、Mg:0.5ppm未満、Ca:0.5ppm未満、Fe:0.5ppm未満、Ti:0.5ppm未満、S:3.3ppm未満の成分組成を有していた。また、Siの回収率は99%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様にして得られた珪質頁岩粉末250gと、2.5N水酸化ナトリウム水溶液1000gを混合して、70℃に加温した後に、60分間混合撹拌し、pHが13.5であるスラリーを得た。
このスラリーを減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Siの濃度が10質量%の液分700gを得た。
次いで、得られた液分を再び70℃に加温し、液分に対して98%硫酸を添加して、pHを10.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、Fe、Al等を含む含水固形分10gと、Siを含む液分700gを得た。
得られたSiO2を含む固形分に対して、硫酸濃度30体積%の硫酸を520g添加してpHが3.0以下のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、得られた固形分を、蒸留水を用いて水洗した。その後、105℃で1日乾燥させ、精製シリカ50gを得た。
得られた精製シリカ中のナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、硫黄(S)の濃度を測定した。
得られた精製シリカは、乾燥後に、SiO2:99.9質量%、Na:9.9ppm、Mg:0.9ppm、Ca:1.2ppm、Fe:0.8ppm、Ti:0.6ppm、S:3.3ppm未満の成分組成を有していた。また、Siの回収率は99%であった。その結果を表1に示す。
Claims (7)
- (B)液分中のSi濃度が6.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る、シリカ回収工程と、
(C)工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と酸溶液を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、該酸性スラリーを固液分離して、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る、第一の酸洗浄工程と、
(D)工程(C)で得られたSiO2を含む固形分と水を混合して、上記固形分中に残存する不純物を溶解させたスラリーを得る、水洗浄工程と、
(E)工程(D)で得られたスラリーと鉱酸を混合して、pHが3.0以下の酸性スラリーを調製し、工程(D)で得られたスラリーに含まれる固形分中に残存する不純物を溶解させた後、該酸性スラリーを固液分離して、SiO2を含む固形分と不純物を含む液分を得る、第二の酸洗浄工程と、
を含むことを特徴とする高純度シリカの製造方法。 - 工程(C)において、酸溶液として硫酸を用いて、かつ、工程(E)において、鉱酸として塩酸を用いる、請求項1に記載の高純度シリカの製造方法。
- 工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を、pH1.0以下に保ちながら混合する、請求項1または2に記載の高純度シリカの製造方法。
- 工程(B)の前に、(A)シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が6.0質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、Siを含むケイ酸アルカリ水溶液と固形分を得る、アルカリ溶解工程、
を含み、工程(B)における鉱酸の濃度が20体積%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。 - 工程(A)と工程(B)の間に、(B1)工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満に調整し、液分中の不純物を析出させた後、固液分離を行い、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る不純物回収工程、を含む、請求項4に記載の高純度シリカの製造方法。
- 工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液がSi濃度10.0質量%以上である水ガラスであり、鉱酸の濃度が10体積%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。
- 工程(B)において、前記ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合が、ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加することによって行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高純度シリカの製造方法。
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