以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態に係る圧送式トイレ装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る圧送式トイレ装置CSの外観を示す図である。図2は、圧送式トイレ装置CSの構造を模式的に示す断面図である。
図1に示したように、圧送式トイレ装置CSは、ベッドBdの隣等、使用者の近くに設置することのできる水洗式のトイレ装置である。後に詳しく説明するように、圧送式トイレ装置CSは、使用者から排泄された汚物を受け止めた後、可撓配管254を通じて当該汚物を圧送する。可撓配管254は、圧送式トイレ装置CSが設置された部屋の壁面Wを通じて下水管WPに接続されており、圧送された汚物は下水管WPに排出される。
圧送式トイレ装置CSは、便器本体100と、処理装置200と、洗浄水供給装置300とを備えている。便器本体100は、汚物を一時的に受け止めるボウル部110と、ボウル部110から汚物を排出するための流路である排出流路120とを有している。
ボウル部110の下部には、汚物の出口であるボウル出口部111が開口形成されており、排出流路120の一端がボウル出口部111に接続されている。排出流路120は、ボウル出口部111から下流に向かう方向に沿って上り勾配となるように形成されている上昇流路121と、上昇流路121の上端から下流に向かう方向に沿って下り勾配となるように形成されている下降流路122とを有している。
このような構成により、ボウル部110の下部から上昇流路121の下部に渡る部分には水を貯留することが可能となっており、貯留した水によって封水が形成される。すなわち、ボウル部110の下部と上昇流路121の下部に渡る部分は、封水を形成するためのトラップ部130として機能する。
排出流路120は、下降流路122の下端から水平に延びる水平流路123を更に有している。ボウル部110が受け止めた汚物は、ボウル部110に供給された洗浄水と共にボウル出口部111に流入し、上昇流路121、下降流路122、及び、水平流路123を順に通過して処理装置200の貯留槽210に流入し貯留される。尚、ボウル部110に対する洗浄水の供給については、後に詳しく説明する。
処理装置200は、便器本体100から排出された汚物及び洗浄水(以下、両者をまとめて「汚水」とも称する)を攪拌して流動性を高めた状態で、下水管WPに向けて圧送し排出する装置である。処理装置200は、貯留槽210と、貯留槽210の内部に配置されたパルセータ221と、パルセータ221と一体に形成されたインペラ222と、排気ポンプ560とを有している。尚、本実施形態における処理装置200は、一般的な大便器に対して後付けすることが可能な可搬型の装置として構成されている。しかし、本発明の実施形態としてはこのような態様に限られず、大便器と一体に形成された据え置き型の装置として処理装置200を構成してもよい。
貯留槽210は、汚水を内部に貯留するための略円筒形状に形成された容器であって、その側面に対し排出流路120の水平流路123が接続されている。このため、ボウル部110、排出流路120、貯留槽210は、内部が連通した状態となっている。
貯留槽210の上部には、吸気弁550が配置されている。吸気弁550は、貯留槽210の内部に外気を導入する経路の開閉を行う開閉弁であって、制御装置500(図1、図2おいては図示しない)によってその動作が制御される。圧送式トイレ装置CSの待機時(使用者が排便を行う前の時)においては、吸気弁550は閉状態となっている。後に説明するように、貯留槽210の内部は負圧の状態となる場合があるが、吸気弁550を開状態とすれば貯留槽210の内部に外気が導入され、かかる負圧の状態を解消することが可能となっている。
貯留槽210の下部における側面のうち、水平流路123が接続されている部分の高さよりも低い位置には、汚水を排出するための開口である排出口211が形成されている。また、排出口211には、汚水を下水管WPに向けて排出するための配管の一部をなす固定排水管250が接続されている。
パルセータ221及びインペラ222は一体に形成され、貯留槽210の中心軸に沿って配置された棒状のシャフトSHの下端に対して固定されている。シャフトSHの上端は、貯留槽210の上部に配置された回転モーター530の回転軸に対し固定されている。このため、回転モーター530が動作することによりシャフトSHがその中心軸周りに回転し、パルセータ221、インペラ222が共に回転する。回転モーター530の動作は、制御装置500によって制御される。
パルセータ221は、シャフトSHの周りに放射状に配置された複数の板として形成されており、それぞれの板はシャフトSHの中心軸と平行である。回転モーター530によってパルセータ221が回転すると、貯留槽210に貯留されていた汚水が攪拌され、汚物(排泄物)が粉砕されながら洗浄水と混合されるため、汚水の流動性が高くなる。すなわち、パルセータ221は、本発明における攪拌手段として機能するものである。
インペラ222は、回転することによって汚水に運動量を与えることのできる羽根車であって、パルセータ221の下方においてパルセータ221と一体形成されている。インペラ222は、排出口211と略同一の高さとなる位置に配置されており、インペラ222が回転すると、汚水が排出口211から固定排水管250に向けて圧送され、下水管WPに向けて排出される。すなわち、インペラ222は、本発明における圧送手段として機能するものである。
排出口211に接続された固定排水管250は、排出口211に一端が接続され水平方向に延びる第一管路部251と、第一管路部251の他端から鉛直上方に向けて延びる第二管路部252と、第二管路部252の上端から更に水平方向に延びる第三管路部253とを有している。
第三管路部253の高さは、ボウル部110の溢れ縁112の高さよりも低くなっている。ここで、固定排水管250は、フレキシブルホースのような可撓性のものではなく、全体の形状が固定された樹脂(例えば塩化ビニル)により形成されている。更に、第一管路部251と貯留槽210との接続部分についても、固定排水管250が回転等しないように固定された状態となっている。
その結果、溢れ縁112に対する第三管路部253の高さは常に一定となるように固定されており、変化することがない。換言すれば、圧送式トイレ装置CSの施工時における過誤等があっても、それにより第三管路部253の高さが溢れ縁112の高さよりも高くなってしまうことや、第三管路部253の高さが固定排水管250と貯留槽210の接続部分よりも低くなってしまうことはない。
第三管路部253の下流側端部には、アスピレータ400を介して可撓配管254が接続されている。可撓配管254は可撓性のホースであって、固定排水管250と同様、汚水を下水管WPに向けて排出するための配管の一部をなすものである。可撓配管254は、圧送式トイレ装置CSが設置された部屋の壁面Wを貫通するように配置されており、その下流側端部は下水管WPに接続されている。
上記のように、可撓配管254は可撓性のホースであるため、第三管路部253の下流側端部から垂れ下がった状態となり、圧送式トイレ装置CSが設置された部屋の床面上を這うように配置される。また、壁面Wのうち可撓配管254が貫通する部分の高さは、溢れ縁112の高さよりも低くなっている。その結果、貯留槽210から圧送される汚水を外部(下水管WP)に排出するための排水管を形成する固定排水管250(第一管路部251、第二管路部252、第三管路部253)及び可撓配管254のうち、最も高い部分は第三管路部253となっている。
第三管路部253と可撓配管254の間に配置され両者を接続しているアスピレータ400は、図11に示したように、略T字形状の管である。アスピレータ400は、第三管路部253の端部に対し内側に嵌入される第一円筒部410と、可撓配管254の端部に対し内側に嵌入される第二円筒部420と、第一円筒部410と第二円筒部420との間に形成され、これらに対して垂直な管路をなす第三円筒部430とを有している。アスピレータ400の更に具体的な形状及び機能については、後に説明する。
図2に戻って説明を続ける。貯留槽210の上部には排気ポンプ560が配置されている。排気ポンプ560は、吸気口から吸引した空気を排出口から排出するものであって、その吸気口が貯留槽210の内部と連通した状態で配置されている。また、排気ポンプ560の排出口には排気管260の一端が接続されており、当該排気管260の他端はアスピレータ400の第三円筒部430に接続されている。排気管260は、塩化ビニルにより形成された略L字形状の配管であり、排気管260によって貯留槽210と排水管(固定排水管250、アスピレータ400、及び可撓配管254)とが排気ポンプ560を介して連通している。
排気ポンプ560の動作は、制御装置500によって制御される。制御装置500によって排気ポンプが駆動されると、貯留槽210内の空気は排気ポンプ560によって吸引され、アスピレータ400の第三円筒部430を通じて排水管(固定排水管250、アスピレータ400、及び可撓配管254)に排出される。
洗浄水供給装置300は、ボウル部110に対し洗浄水を供給するための装置であって、洗浄水を貯留する貯水タンク310と、貯水タンク310に上水道から水を供給する配管である給水配管320と、給水配管320に設けられた給水弁520と、貯水タンク310から供給される洗浄水の流路の開閉を行うための開閉機構330と、を有している。
便器本体100には、ボウル部110に洗浄水を供給するための内部流路140が形成されており、内部流路140の下流側端部はボウル部110の内面に開口している(開口部141)。また、内部流路140の上流側端部は、便器本体100のうち貯水タンク310が設置されている部分である設置面において、上方に向けて開口している(開口部142)。
貯水タンク310は略直方体となるように形成されたタンクであって、便器本体100の後部(使用者が背を向ける部分)に設置されている。貯水タンク310の底面には貫通孔311が形成されており、貯水タンク310は、貫通孔311の位置と開口部142の位置とが上面視で一致するように、便器本体100の上部に設置されている。このため、貯水タンク310に貯留された洗浄水は、貫通孔311及び開口部142を通じて内部流路140に流入した後、開口部141からボウル部110に供給されることとなる。
給水配管320は、貯水タンク310に上水道から水を供給するための配管であり、貯水タンク310の側面のうち上部を貫通した状態で配置されている。給水配管320の上流側端部は上水道に接続されており、下流側端部は貯水タンク310の内部において開口している。
給水配管320のうち貯水タンク310の外側にある部分には、給水弁520が配置されている。給水弁520は、給水配管320の開閉を切り換える電磁弁であって、制御装置500によってその開閉動作が制御される。すなわち、制御装置500は、給水弁520の動作を制御することにより、貯水タンク310に対する洗浄水の供給及び停止を制御する。
開閉機構330は、弁体331と、玉鎖332と、弁体駆動部540(図2においては図示しない)と、排水レバー510とを有している。弁体331はゴムにより形成されており、貯水タンク310の底部において貫通孔311を覆うことにより、貯水タンク310内の洗浄水が貫通孔311に流入することを妨げている。
弁体331には玉鎖332の下端が接続されており、玉鎖332の上端は弁体駆動部540に接続されている。弁体駆動部540は、モーターの動作によって玉鎖332を引き上げることが可能となっており、制御装置500からの制御信号を受けて動作するものである。弁体駆動部540によって玉鎖332が引き上げられると、弁体331が貯水タンク310の底部から離れる結果、貯水タンク310内の洗浄水は貫通孔311に流入し、開口部141からボウル部110に供給される。
排水レバー510は、ボウル部110に対する洗浄水の供給を開始するために使用者が操作するものであって、貯水タンク310の側面(外側)に配置されている。排水レバー510が使用者により操作されると、当該操作に対応した操作信号が制御装置500に送信される。制御装置500はかかる操作信号を受け、弁体駆動部540を制御することにより玉鎖332を引き上げて、ボウル部110への洗浄水の供給を開始する。
ボウル部110への洗浄水の供給が完了すると、制御装置500は弁体駆動部540を制御して玉鎖332及び弁体331を引き下げ、弁体331が再び貫通孔311を覆った状態とする。その後、制御装置500は給水弁520を制御し、上水道から所定量の水を貯水タンク310の内部に供給して貯水する。尚、後に説明するように、制御装置500は、排水レバー510が操作された場合以外においても、弁体駆動部540を制御してボウル部110への洗浄水の供給を行うことがある。
続いて、圧送式トイレ装置CSの制御的な構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、圧送式トイレ装置CSの制御的な構成を示すブロック構成図である。これまでに説明したように、圧送式トイレ装置CSは、制御装置500と、排水レバー510と、給水弁520と、回転モーター530と、弁体駆動部540と、吸気弁550と、排気ポンプ560とを備えている。
制御装置500は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インタフェースを備えたコンピュータシステムであり、圧送式トイレ装置CSの各部を制御する。排水レバー510は、使用者が行う排水レバー510の操作に対応した操作信号を制御装置500に出力する。制御装置500は、給水弁520、回転モーター530、弁体駆動部540、吸気弁550、及び排気ポンプ560に所定の制御信号を出力し、これらの動作を制御する。
尚、給水弁520、回転モーター530、弁体駆動部540、吸気弁550、及び排気ポンプ560は、自らの状態を示す状態信号(例えば、回転モーター530の回転速度等)を制御装置500に向けて送信してもよい。その場合、制御装置500は状態信号によって圧送式トイレ装置CSの各部の状態を把握し、それに基づいてより適切且つ確実な制御を行うことができる。
続いて、図2、及び図4乃至図10を参照しながら、圧送式トイレ装置CSが汚物を圧送する際の具体的な動作について説明する。図4乃至図10はいずれも、圧送式トイレ装置CSの動作を説明するための模式的な断面図である。
図2は、待機時における圧送式トイレ装置CSを示している。図2に示したように、待機時においては、貯水タンク310の内部にはボウル部110を洗浄するために必要な量の洗浄水が貯留されている。また、トラップ部130にも水が貯留されており、ボウル部110内の空間と貯留槽210との間を空気が流通できない状態となっている。すなわち、トラップ部130には封水が形成されている。
更に、貯留槽210の内部にも水が貯留されており、その水位は排出口211の上端よりも高く、且つ、水平流路123の上端よりも低くなっている。このため、固定排水管250から貯留槽210内への空気の流通が、貯留槽210内に貯留された水(流通防止水)によって抑制された状態となっている。更に、この貯留槽210内に貯留された水は、後に説明するように、アスピレータ400の内部において負圧発生用の水流(噴射水流)を形成するための水としても使用される。
図2に示した待機時の状態においては、給水弁520は閉止状態となっており、弁体331は貯水タンク310の底部において貫通孔311を覆っている。また、回転モーター530は停止しており、吸気弁550は閉状態となっている。排気ポンプ560も停止しており、貯留槽210の内部における空気圧は大気圧と等しい。
図4は、圧送式トイレ装置CSの使用者が排便を完了し、ボウル部110に対する洗浄水の供給を開始するために排水レバー510を操作した直後における状態を示している。ボウル部110の内部には図示しない汚物(排泄物)が存在しており、汚物がトラップ部130の封水に沈んだ状態となっている。図4に示した時点(排水レバー510が操作された直後)においては、貯水タンク310からボウル部110への洗浄水の供給は未だ行われず、それに先立って排気ポンプ560の駆動及び回転モーター530の駆動が同時に行われる。
排水レバー510が操作されると、制御装置500は排気ポンプ560を駆動し、貯留槽210内の空気をアスピレータ400の第三円筒部430に向けて排出し始める。貯留槽210内には、排出口211の上端よりも高い水位となるように水が貯留されているため、第三円筒部430に向けて排出された空気は固定排水管250を通じて貯留槽210内に戻ることができず、可撓配管254を通じて下水管WPに排出される。
更に、トラップ部130に形成された封水により、ボウル部110内の空間と貯留槽210との間を空気が流通できない状態となっている。この状態で貯留槽210の空気が下水管WPに排出される結果、貯留槽210内の空気圧は次第に減少し、貯留槽210内は負圧になって行く。尚、このときの空気の流れを、図4では矢印AA1で示している。
排気ポンプ560を駆動すると同時に、制御装置500は回転モーター530を駆動し、シャフトSHを介してパルセータ221及びインペラ222を共に回転させる。インペラ222が回転することにより、貯留槽210の内部に貯留されていた水は運動量を与えられて固定排水管250に流入し、可撓配管254を経由して下水管WPに向かって流れる。このため、貯留槽210の内部に貯留されている水の量は、次第に減少していく。尚、このときの水の流れを、図4では矢印AW1で示している。
既に述べたように、トラップ部130に形成された封水により、ボウル部110内の空間と貯留槽210との間を空気が流通できない状態となっている。この状態で貯留槽210の水が下水管WPに排出される結果、貯留槽210内の空気圧は更に低くなって行く。
また、インペラ222の回転によって固定排水管250に流入した水は、第三管路部253からアスピレータ400を通じて可撓配管254に流入する。このため、アスピレータ400においては、第一円筒部410から第二円筒部420に向かって水が流れることとなる。図11を参照しながら説明すると、第一円筒部410と第二円筒部420との間における空間は第三円筒部430の端部となっており、排気管連通部450を形成している。第一円筒部410から第二円筒部420に向かって流れる水は、第一円筒部410から排気管連通部450に噴射されて噴射水流を形成する。この噴射水流は、排気管連通部450を通過して第二円筒部420の内部に到達し、その後、可撓配管254の内部を流れることとなる。
排気管連通部450において上記のように噴射水流が形成されると、第三円筒部430の内部に存在していた空気は第二円筒部420に引き込まれ、可撓配管254を介して下水管WPに排出される。第三円筒部430は排気管260によって貯留槽210と連通しているため、貯留槽210内の空気も排気管260を通じて第二円筒部420に引き込まれ、下水管WPに排出される。その結果、貯留槽210内の空気圧はさらに低くなり、図4においては貯留槽210内に大きな負圧が発生した状態となっている。
このとき、排出流路120の内部も負圧となるため、トラップ部130に形成されていた封水の一部が貯留槽210内に引き込まれる場合もある。しかし、引き込まれる水量は上昇流路121によって抑制されており、大部分の水はトラップ部130に残留する。その結果、ボウル部110内の空間と貯留槽210との間を空気が流通できない状態(排出流路120が遮蔽された状態)は維持される。
続いて、制御装置500は、排気ポンプ560を駆動している状態、及び、パルセータ221及びインペラ222が回転している状態を維持したまま弁体駆動部540を動作させ、玉鎖332及び弁体331を引き上げる(図5)。このため、貯水タンク310に内の洗浄水は貫通孔311に流入し、開口部141からボウル部110に供給される。この水の流れを、図5では矢印AW2で示している。
ボウル部110に洗浄水が供給されると、かかる洗浄水、トラップ部130に形成されていた封水、及びトラップ部130の内部にあった汚物は混合され、汚水となって排出流路120に流入する。
ボウル出口部111から排出流路120に流入した汚水は、貯留槽210に流入する。このとき、貯留槽210は予め負圧(すなわち、ボウル部110の上方における大気圧よりも低い状態)となっているため、汚水はスムーズに貯留槽210内に流入し貯留される。また、汚水が流入することによって貯留槽210内の空気圧は上昇するが、貯留槽210内は予め負圧となっているため、貯留槽210内の空気圧の上昇が抑制される。
貯水タンク310の洗浄水のうち大部分がボウル部110に供給されると、制御装置500は弁体駆動部540を動作さることにより玉鎖332及び弁体331を引き下げ、弁体331が貫通孔311を覆っている状態に戻す(図6)。制御装置500は、排気ポンプ560を駆動している状態、及び、パルセータ221及びインペラ222が回転している状態をこのときも維持している。ボウル部110に対する洗浄水の供給が終了すると同時に、制御装置500は回転モーター530の回転数を上昇させる。
貯留槽210内に貯留された汚水は、パルセータ221の回転によって攪拌される。これにより、汚物(排泄物)が粉砕されながら洗浄水と混合される結果、汚水の流動性は高くなっていく。流動性が高くなった汚水はインペラ222によって圧送され、排出口211から固定排水管250、アスピレータ400、及び可撓配管254の内部をスムーズに流れて、下水管WPに排出される。尚、このときの汚水の流れを、図6ではAW3で示している。
貯留槽210内から下水管WPに向けて汚水が排出されることにより、汚水の量は次第に減少していき、最終的には汚水が貯留槽210内に僅かに残留しただけの状態となる(図7)。矢印AW3で示した汚水の流れ、及び、矢印AA1で示した空気の流れは、いずれも次第にその流量が低下して行く。このとき、トラップ部130に残留した洗浄水(封水)は、ボウル部110内の空間と貯留槽210との間を空気が流通できない状態を維持している。このため、貯留槽210の内部は、図7においても負圧の状態となっている。
貯留槽210内から汚水の大部分が排出されると、制御装置500は排気ポンプ560及び回転モーター530を停止させ、ほぼ同時に吸気弁550を開状態とする(図8)。このため、吸気弁550を通じて外気が貯留槽210内に導入され、貯留槽210、排出流路120、固定排水管250、アスピレータ400、及び可撓配管254の内部は全て大気圧となる。このときの空気の流れを、図8ではAA2で示している。貯留槽210等の内部が大気圧になった後、制御装置500は吸気弁550を閉状態に戻す。
続いて、制御装置500は給水弁520を駆動して開状態とし、給水配管320から貯水タンク310への洗浄水の供給を開始する(図9)。このときの水の流れを、図9ではAW4で示している。制御装置500は、貯水タンク310内の水位が上昇し、図2に示した待機時における水位よりも所定量高くなった後、給水弁520を駆動して閉状態とする。
続いて、制御装置500は、弁体駆動部540を制御することにより玉鎖332を引き上げて、ボウル部110への洗浄水の供給(追加給水)を再び開始する(図10)。このとき供給された洗浄水はトラップ部130に封水として補給される他、一部が上昇流路121の上端から溢れて下降流路122を流れ(矢印AW5)、貯留槽210の内部に貯留される。このとき貯留槽210内に貯留された水は、便器本体100を次回洗浄する際(排水レバー510が次回操作される際)において、排気管連通部450に噴射水流を形成するための水として使用されるものである。
貯留槽210内に貯留された水の水位が図2に示した待機時における水位にまで上昇すると、制御装置500は弁体駆動部540を動作させることにより玉鎖332及び弁体331を引き下げ、ボウル部110への洗浄水の供給を停止する。このときの貯水タンク310内の水位は、図2に示した待機時における貯水タンク310内の水位と同じである。換言すれば、汚物の洗浄を行った後で貯水タンク310内に供給される洗浄水の水量(図9における貯水タンク310内の水量)は、図2に示した待機時における貯水タンク310内の水量に対し、貯留槽210内に貯留するための水量を加えたものと略同一となっている。
ボウル部110への洗浄水の供給が停止されると、圧送式トイレ装置CSは、再び図2に示した待機時の状態となる。尚、ボウル部110への洗浄水の供給が停止した直後の時点においては、トラップ部130に存在する水(封水)には慣性により下流側(貯留槽210側)に向かう力が働いている。
このとき、仮に貯留槽210内が負圧のままであったとすれば、封水には上記の力に加えて負圧による吸引力も同時に働くこととなる。その結果、トラップ部130に封水として貯留されるべき水の多くが、(ボウル部110への洗浄水の供給が停止した後においても)これらの力によって貯留槽210内に流入してしまい、所謂「封水切れ」の状態(ボウル部110の上部空間と下水管WPとが水を介さずに連通した状態)となってしまう可能性がある。
しかし、圧送式トイレ装置CSでは、貯留槽210内から汚水の大部分が排出された後、吸気弁550を開状態とすることにより、貯留槽210等の内部を大気圧に戻している。これにより、慣性による力と負圧による吸引力とが封水に対して同時には働かないため、封水切れの発生が抑制されている。
以上のように、本実施形態に係る圧送式トイレ装置CSでは、ボウル部110に洗浄水を供給するのに先駆けて排気ポンプ560を駆動させ、貯留槽210内の空気を下水管WPに向けて排出する。また、貯留槽210内に貯留された水をインペラ222によって圧送し、アスピレータ400の排気管連通部450に噴射水流を形成する。この噴射水流によって、貯留槽210内の空気をアスピレータ400の内部に引き込み、下水管WPに向けて排出する。
このとき、トラップ部130に形成されていた封水によって、ボウル部110内の空間と貯留槽210との間を空気が流通することが抑制された状態となっている。この状態で貯留槽210内の空気が排出されることにより、貯留槽210内は負圧となる。
その後、ボウル部110に洗浄水が供給され、負圧である貯留槽210内には汚水がスムーズに流入する。このため、貯留槽210内の高い空気圧によって便器本体100からの汚水の円滑な排出が妨げられてしまうことがなく、ボウル部110に汚物の一部が残存してしまうようなことが防止される。更に、圧送式トイレ装置CSには、空気収納部のように容積を変化させるための可動部分が存在しない。このため、可動部分の破損によって貯留槽210内の悪臭が周囲に漏出してしまうこともない。
また、圧送式トイレ装置CSでは、貯留槽210から圧送される汚水を外部(下水管WP)に排出するための排水管を形成する固定排水管250(第一管路部251、第二管路部252、第三管路部253)及び可撓配管254のうち、最も高い部分は第三管路部253となっている。また、その第三管路部253の高さは、排出口211の上端部よりも高くなっている。このため、排出口211の上端部を超える高さまで貯留槽210内の水位を上げることができ、噴射水流を形成するのに十分な量の水を貯留槽210内に貯留することが可能となっている。
また、第三管路部253の高さは、便器本体100の溢れ縁112の高さよりも低くなっている。このため、例えば給水弁520が故障して開状態のままとなり、ボウル部110に洗浄水が供給され続けてしまうような事態が発生したとしても、ボウル部110から水が溢れ出てしまうことがない。すなわち、ボウル部110の水位が溢れ縁112の高さを超えるよりも前の時点で、貯留槽210内の水位が第三管路部253の高さを超えることとなり、貯留槽210内から下水管WPに向けて水が排出される。その結果、ボウル部110から水が溢れ出てしまうことが確実に防止される。
また、溢れ縁112に対する第三管路部253の高さが常に一定で変化しないよう、便器本体100に対する固定排水管250の位置及びその形状が固定されている。このため、圧送式トイレ装置CSの施工時における過誤等により、第三管路部253の高さが溢れ縁112の高さよりも高くなってしまうことや、第三管路部253の高さが固定排水管250と貯留槽210の接続部分よりも低くなってしまうことはない。
次に、図11を参照しながら、アスピレータ400の具体的な構造について説明する。図11は、アスピレータ400の構造を示す断面図である。既に説明したようにアスピレータ400は、固定排水管250の第三管路部253と可撓配管254とを接続するための略T字形状の管であって、第三管路部253の端部に対し内側に嵌入される第一円筒部410と、可撓配管254の端部に対し内側に嵌入される第二円筒部420と、第一円筒部410と第二円筒部420との間に形成され、これらに対して垂直な管路をなす第三円筒部430とを有している。
第一円筒部410と第二円筒部420とは、それぞれの中心軸が水平となるように配置されており、互いの中心軸が略同一の直線上となるように配置されている。また、上流側である第一円筒部410の流路断面積は、下流側である第二円筒部420の流路断面積よりも小さくなっている。
このような構成によって、第一円筒部410から噴射されて噴射水流を形成した水は、第二円筒部420の内部にスムーズに流入する。その結果、排気管連通部450において水(汚水又は洗浄水)の流れが乱れることが抑制され、第三円筒部430及び排気管260の内部に水が侵入してしまう可能性が低減されている。尚、第一円筒部410から噴射される噴射水流とは、図4乃至図7において矢印AW1、AW3で示して説明した水の流れである。
また、第一円筒部410の内部流路は、下流側端部において縮径した絞り部411が形成されており、絞り部411における流路断面積は、第一円筒部410の他の部分における流路断面積よりも小さくなっている。絞り部411によって、第一円筒部410から噴射される水(噴射水流)の流速が大きくななり、排気管260及び貯留槽210内に大きな負圧を発生させることが可能となっている。このときの空気の流れは、図4乃至図7において矢印AA1で示して説明したものである。
尚、本実施形態においては、使用者によって排水レバー510が操作されたことをきっかけとして、制御装置500が排気ポンプ560及び回転モーター530の駆動を開始し、貯留槽210を負圧にしている。しかし、貯留槽210を負圧にするためのタイミングとしてはこのようなものに限られず、ボウル部110に対して洗浄水の供給が開始されるよりも前であればよい。
例えば、使用者が便座に着座したことを着座センサ等によって検知し、これに基づいて制御装置500が排気ポンプ560及び回転モーター530の駆動を開始してもよい。この場合、もし排水レバー510が操作されないまま長い時間が経過したり便蓋115が閉じられたりした場合(着座したが排便は行わなかったような場合)には、制御装置500が排気ポンプ560及び回転モーター530を停止した後、吸気弁550の開閉を行って貯留槽210内を大気圧に戻すことが望ましい。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。