JP2013204350A - 立坑の腐食診断システム及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】客観的かつ定量的な腐食度合の判定を自動的に行うことができ、しかもシステム構成そのものを簡略化させる。
【解決手段】波形形状のライナープレート4を周方向及び上下方向に連結して内壁を構築した立坑の腐食診断方法であって、撮像装置12を設置した平板状の撮像台11を立坑3内で昇降させつつ、その撮像装置12により立坑3の内壁を順次撮像し、撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ライナープレートを連結して内壁を構築することで集水井に利用される立坑の腐食診断システム及び方法に関し、特に立坑内部に作業員が入ることなく腐食度合を判定する上で好適な腐食診断システム及び方法に関するものである。
従来より、地すべりが起こりやすい場所で地下水を集めて川等に流すために設ける集水井として、土中に立坑を構築することが行われている。この立坑は、例えば図13に示すように、円弧状に湾曲した複数のライナープレート80をリング状に連結し、これを上下方向に連続的に筒状に連結して構成している。この立坑8に対しては、集水のために複数本の集水管83が接続され、また立坑8内に集めた水を川等に流すための排水管81が接続される。
ライナープレート80は、図14に示すように円弧状に湾曲した波形鋼板の四辺に軸方向フランジ91及び周方向フランジ92を設けたものである。この軸方向フランジ91にはボルト孔94が、また周方向フランジ92にはボルト95が、それぞれ所定間隔をおいて複数個に亘り設けられている。互いに周方向に隣接する他のライナープレート80との間では、ボルト孔94を介してボルト接合可能とされ、互いに上下方向に隣接する他のライナープレート80との間ではボルト孔95を介してボルト接合可能とされている。このようにして、ライナープレート80は周方向及び上下方向に連結することができ、これを円筒状に組み立てることができる。
ところで、このライナープレートは、上述したように鋼製であることから、長期間使用し続けた場合には、腐食が発生してしまう場合がある。特にこのライナープレートの腐食が進んで劣化してしまった場合には、当該ライナープレート自体が壁面から崩落してしまう危険性もあり、集水井としての機能を果たせなくなる虞もある。このため、腐食が進んだライナープレートを早期に発見してこれを取り替える必要が出てくる。従来、このようなライナープレートの腐食状態を確認する際には、実際に作業員が立坑内に立ち入り、種々の調査を行っていた。
しかしながら、作業員が深い立坑内に入って作業を行うためには、立坑内に換気設備を設ける必要があることからコストが増加してしまい、また安全性の観点からも好ましいものとはいえなかった。
このため、作業員が実際に立坑内に入ることなくライナープレートの腐食状態を調査することができる方法が切望されていた。従来においては、例えば立坑の内壁の状態について、非接触式の計測器を水平面内で360°回転させて調査する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
特開2010−281145号公報
しかしながら、上述した特許文献1の開示技術では、計測器を任意の高さ位置に固定し、かつ計測器を水平面内で旋回させる必要があることから、複雑な機構設計が要求されることとなる。このため、調査装置全体が大型化してしまい、計測器を立坑内に吊り降ろすことは容易ではなかった。また、装置の大型化に伴って重量も増加してしまうことから、調査対象の立坑が山間部にある場合には、その搬送労力の負担が増大するという問題点もあった。
更には、このような特許文献1の開示技術では、撮像した画像を確認者が視認することにより、確かに立坑内壁のライナープレートの状態を把握することができる。しかしながら、かかる画像を介して腐食の有無を確認するのはあくまで人間が行うものとなっている。このため、確認者の経験等による個人差や、それぞれが持つ主観も現れてしまうことから、腐食度合の判定結果が確認者により大きく揺らぐ場合もあった。このため、確認者間の個人差を排した、いわば客観的かつ定量的な腐食度合の判定を自動的に行う必要もあった。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、ライナープレートを連結して内壁を構築することで集水井に利用される立坑の腐食診断システム及び方法において、客観的かつ定量的な腐食度合の判定を自動的に行うことができ、しかもシステム構成そのものを簡略化させることが可能な立坑の腐食診断システム及び方法を提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために、撮像装置を設置した撮像台を上記立坑内で昇降させつつ、その撮像装置により上記立坑の内壁を順次撮像し、その撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより上記単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出する立坑の腐食診断システム及び方法、またこれを利用した立坑の補修方法を発明した。
本発明に係る立坑の腐食診断システムは、波形形状のライナープレートを周方向及び上下方向に連結して内壁を構築した立坑の腐食診断システムにおいて、上記立坑内で昇降される撮像台と、上記撮像台上に設置された撮像装置と、上記撮像装置により撮像された画像に基づいて上記ライナープレートの腐食判定を行う判定装置とを備え、上記撮像装置は、上記撮像台が上記立坑内を昇降中に上記立坑の内壁を順次撮像し、上記判定装置は、上記撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより上記単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出することを特徴とする。
本発明に係る立坑の腐食診断方法は、波形形状のライナープレートを周方向及び上下方向に連結して内壁を構築した立坑の腐食診断方法において、撮像装置を設置した撮像台を上記立坑内で昇降させつつ、その撮像装置により上記立坑の内壁を順次撮像し、上記撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより上記単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出することを特徴とする。
本発明に係る立坑の補修方法は、波形形状のライナープレートを周方向及び上下方向に連結して内壁を構築した立坑の補修方法において、撮像装置を設置した撮像台を上記立坑内で昇降させつつ、その撮像装置により上記立坑の内壁を順次撮像し、上記撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより上記単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出し、算出した腐食領域の面積率に基づいて補修すべきライナープレートを特定してこれを補修することを特徴とする。
上述した構成からなる本発明によれば、単位画像毎に腐食領域の面積率、或いは取替えの必要性の有無を自動的に判別して表示することが可能となる。また本発明によれば、撮像した画像を確認者が視認し、かかる画像を介して腐食の有無を確認する必要がなくなる。これにより、確認者の経験等による個人差や、それぞれが持つ判定に関する主観を排除できることから、確認者によって判定結果が大きく揺らぐのを防止することができる。また、客観的且つ定量的な腐食度合の判定を自動的に行うことが可能となる。特に単位画像をライナープレートに応じたサイズで区切り、腐食領域の面積率をライナープレート単位で算出することにより、単位画像毎に腐食判定を行えば、それはライナープレート単位で腐食判定を行えたこととなる。これにより、交換の必要なライナープレートをプレート単位で抽出することが可能となる。
本発明を適用した腐食診断システムの構成例を示す図である。 (a)は、互いに軸方向に隣接する2枚のライナープレートを接合する形態を示す図であり、(b)は、互いに周方向に隣接する2枚のライナープレートを接合する形態を示す図である。 本発明を適用した腐食診断システム内の撮像台の拡大斜視図である。 本発明を適用した腐食診断システム内の撮像台の側面図である。 本発明を適用した腐食診断システム内の撮像台の平面図である。 本発明を適用した腐食診断システムのフローチャートである。 立坑の内壁の展開写真を構成した例を示す図である。 ライナープレートの1個分を単位画像として捉えてこれを切り出す例を示す図である。 ライナープレートに取り付けるボルトが境界となるようにして単位画像を区切る例を示す図である。 単位画像としてのライナープレートにおいて腐食が進展している状態の例を示す図である。 図10中の線X上の輝度分布を示す図である。 撮像装置の上方及び下方の少なくとも一方から立坑の内壁を照光する照明灯を設ける例を示す図である。 集水井として土中に立坑を構築する例を示す図である。 ライナープレートの構成について説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態としてライナープレートにより内壁を構成した立坑の腐食状態を診断するための腐食診断システムについて詳細に説明する。
本発明を適用した腐食診断システム1は、例えば図1に示すような立坑3の腐食診断に適用される。
立坑3は、地すべりが起こりやすい場所で地下水を集めて川等に流すために設けられた集水井等である。この立坑3に対しては、集水のために複数本の集水管31が接続され、また立坑3内に集めた水を川等に流すための排水管32が接続される。この立坑3は、図2に示すような円弧状に湾曲した複数のライナープレート4を連結することにより構成される。ライナープレート4は、波形鋼板の周方向端部に軸方向フランジ41が設けられ、また軸方向端部には、周方向フランジ42を設けたものである。この軸方向フランジ41にはボルト孔44が、また周方向フランジ42にはボルト孔45が、それぞれ所定間隔をおいて複数個に亘り設けられている。
図2(a)は、互いに軸(上下)方向に隣接する2枚のライナープレート4を接合する形態を示している。一のライナープレート4における周方向フランジ42と他のライナープレート4における周方向フランジ42とを互いに当接させた状態でボルト孔45を付き合わせ、ボルト接合する。これにより、ライナープレート4を軸(上下)方向へ接合することが可能となる。また図2(b)は、互いに周方向に隣接する2枚のライナープレート4を接合する形態を示している。一のライナープレート4における軸方向フランジ41と他のライナープレート4における軸方向フランジ41とを互いに当接させた状態でボルト孔44を付き合わせ、ボルト接合する。これにより、ライナープレート4を周方向へ接合することが可能となる。このようにして、ライナープレート80は周方向及び上下方向に連結することができ、これを円筒状に組み立てた立坑3を構築することができる。
本発明を適用した腐食診断システム1は、このような立坑3における周壁を構成するライナープレート4の腐食状態を診断するものである。そして、このライナープレート4の腐食状態を診断するために、腐食診断システム1は、この立坑3内に吊下げる撮像台11と、撮像台11上に設置された撮像装置12と、撮像装置12に接続された判定装置13と、撮像台11の昇降制御を行うための昇降制御部14を備えている。
昇降制御部14は、電動ウィンチ16と、電動ウィンチ16から吊下げられたワイヤーロープ17と、ワイヤーロープ17の下端に取り付けられた上部リング18と、上部リング18に引っ掛けられ、撮像台を吊下げ支持するためのワイヤー19とを備えている。電動ウィンチ16は、現場で組み立てられた門形の支持架20に取り付けられている。この電動ウィンチ16を動作させることにより、撮像台11を立坑3内における所望の深さ位置まで下降させ、或いは上昇させることが可能となる。なお、この撮像台11の昇降手段としては、かかる昇降制御部14の電動ウィンチ16を介して行われる場合に限定されるものではなく、他の方法により昇降させてもよいことは勿論である。ちなみに判定装置13は、撮像台11の立坑3内における高さの情報を、撮像台11の降下開始からの時間を介して取得することも可能となる。但し、撮像台11の降下速度が一定であることを前提としている。
撮像台11は、図3の拡大斜視図、図4の側面図、図5の平面図に示すように、円形の平板状で構成されている。この撮像台11上には、複数の撮像装置12が互いに間隔を空けて設置されている。このとき、撮像台11上には、内壁の全周を全て撮影範囲に捉えることができるように、複数の撮像装置12について互いの撮影方向を周方向にシフトさせて設置されていてもよい。かかる場合には、図5に示すように、撮像装置12の撮影方向を撮像台11の中心から外側に向け、しかも撮像装置12を円周方向に等間隔で配置する。なお、撮像台11における撮像装置12の設置箇所には、固定部品22が設けられており、これに撮像装置12を取り付けることにより、これを安定して固定することが可能となる。またそのような固定部品22を用いることなく撮像台11上に撮像装置12を載置してこれを接着剤により接着固定するようにしてもよい。
撮像台11には、複数のアイボルト21が設けられている。このアイボルト21に上述のワイヤー19の下端が取り付けられることとなる。
撮像装置12は、被写体からの像光を結像させるためのレンズと、レンズを介して入射される像光を遮光するシャッタ羽根等により絞り量を調整する絞り駆動部と、入力される被写体像に基づき電気的な撮像信号を生成するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサとを有している。
この撮像装置12は、動画像又は静止画像を撮像可能な、いわゆるビデオカメラであって、CCDイメージセンサにより生成された撮像信号のばらつきを補償するためのCDS(Correlated Double Sampling)回路や、CDS回路から供給される撮像信号をアナログ/デジタル変換処理するA/D変換部、A/D変換部から供給されるデジタル化された撮像信号としての画像データに所定の処理を施すディジタルシグナルプロセッサ(DSP)と、接続されたDSPからの画像データを一時的に記憶する画像用RAM等を備えていてもよい。更に、この撮像装置12には、撮影した画像を着脱自在なメモリや記録媒体に記録可能とされていてもよい。
ちなみに、この撮像装置12は、より広い撮影画角を持って撮像を行うことができるようにするため、広角レンズが実装されているものであってもよい。
この撮像装置12は、例えば判定装置13からその撮像条件等について制御されるものであってもよい。また、撮像装置12は、撮像した画像を有線通信又は無線通信により、判定装置13に送信することも可能である。撮像装置12内には、その画像を送信するための通信インターフェースが実装されていてもよいことは勿論である。
判定装置13は、いわゆるパーソナルコンピュータ(PC)、又は携帯端末等である。以下では、この判定装置13としてPCを適用する場合を例にとり説明をする。
判定装置13は、操作ボタンやキーボード等を介して各種制御用の指令を入力するためのユーザーインターフェースと、各種情報の表示を制御するためのディスプレイと、ハードディスク等に代表され、実行すべき検索を行うためのプログラムを格納するための記憶部とを備え、更には撮像装置12との間で通信を行うための通信インターフェースが接続されている。
判定装置13には、この撮像装置12からの画像を通信インターフェースを介して受信するようにしてもよいし、また撮像装置12側において画像が記録されたメモリや記録媒体から読み出しを行ってもよい。これにより判定装置13は、撮像装置12により撮像された画像に基づいて後述する腐食診断を行うことが可能となる。
判定装置13は、立坑3付近に設置されることにより、リアルタイムな解析を行うようにしてもよいが、立坑3から離れた場所で事後的に解析を行うようにしてもよい。
次に上述の如き構成からなる腐食診断システム1により、実際に腐食診断を行う方法について説明をする。
図6は、本発明を適用した腐食診断システム1のフローチャートである。先ずステップS11において撮像台11の昇降動作を開始する。この撮像台11の昇降動作は、例えば電動ウィンチ16を動作させることにより、撮像台11を立坑3内における所望の深さ位置まで順次下降させ、或いは順次上昇させることにより実行する。この電動ウィンチ16による上昇速度又は下降速度は、撮像装置12による静止画像の撮影間隔や撮像装置12による動画像の撮影タイミングに基づいて調整されている。このとき撮像台11は、連続的に上昇又は下降させるように設定されていてもよいし、撮像装置12による撮影時に一時的に上昇又は下降を停止させるようにしてもよい。
撮像台11の昇降動作の開始後、ステップS12における撮像装置12による撮影が開始される。それぞれの撮像装置12は、撮影画角、焦点位置、撮影方向、撮影範囲は予め設定されており、実際にこのステップS12に移行した段階で即座に撮影動作が開始可能とされている。ステップS12では、上述した電動ウィンチ16を上昇又は下降させながら、撮像装置12による内壁の撮影を実行する。仮に電動ウィンチ16を下降させながら撮影を行う場合には、その撮像装置12の撮影開始点である最上段のライナープレート4から最下段のライナープレートに至るまで全ての段について漏れなく撮影を行うこととなるが、必要に応じてその一部の段のみを診断対象として撮影するようにしてもよい。
なお、図5に示すように、内壁の全周を全て撮影範囲に捉えることができるように、互いの撮像装置12の撮影方向を周方向にシフトさせて設置している場合には、撮像台11を特に周方向に向けて回転させる動作、或いは撮像装置12を周方向に旋回させて撮影方向をシフトさせる動作が不要となり、そのまま昇降させることで立坑3の内壁の全内周を漏れなく撮像することが可能となる。
撮像装置12による撮像を終了させた後、ステップS13に移行し、判定装置13による画像データの取り込みを行う。かかる場合には、撮像装置12から有線通信又は無線通信により判定装置13へ画像データを送信するようにしてもよいし、また撮像装置12側で画像データを着脱自在なメモリや記録媒体に記録し、これを判定装置13側で取り込むようにしてもよい。ちなみにステップS14以降の動作は何れも判定装置13内における処理となる。
図7は、このようにして撮像装置12により撮像された画像を互いに貼り合わせることにより、立坑3の内壁の展開写真を構成した例である。これにより立坑3内の腐食状態を一目で確認することが可能となる。図5に示すような複数の撮像装置12により互いの撮像装置12の撮影方向を周方向にシフトさせて設置して撮影を行った場合、図7中A〜Eゾーンが互いに異なる個々の撮像装置12により撮像されることとなる。撮像台11を昇降させることにより、図中昇降方向に向けて撮像が行われ、個々の撮像装置12により撮像される画像は、A〜Eゾーン毎の画像データとなっており、これを貼り合わせて一枚の全体画像を構成することができる。
ステップS14では、このようにして得られた画像データを単位画像に分割する。この分割する単位画像における縦方向の画素数及び横方向の画素数はいかなるものであってもよい。図7の単位画像の分割例では、昇降方向に関してはライナープレート4を3段分、周方向についてはライナープレート4を1.5個分を単位画像として捉えて切り出すものである。
またそれ以外には例えば図8に示すように、ライナープレート4の1個分を単位画像として捉えてこれを切り出すようにしてもよい。即ち、ライナープレート4を単位画像に対応させたものである。
また単位画像の分割は更に細分化されていてもよく、例えば図9に示すようにライナープレート4を連結するボルトが境界となるようにして単位画像を区切るようにしてもよい。
次にステップS15に移行し、単位画像を構成する各画素を所定の閾値と比較する。図10は、単位画像としてライナープレート4を1個分を捉えた例であるが、腐食が進展している状態が示されている。このような腐食領域は、腐食されていない領域(非腐食領域という。)よりも赤黒くなる。このため、腐食領域における白黒又はRGBの輝度は、非腐食領域の輝度よりも異なるものとなる。
図11は、図10中の線X上の輝度分布を示している。図11中で色濃く表示されている、腐食が極度に進展した領域については輝度が著しく小さくなり、また腐食が僅かに進展した領域についても輝度がその分小さくなっていることが示されている。
ここで輝度の閾値を仮にqと設定すれば、単位画像の個々の画素の輝度を閾値と比較してそれがq以下であれば、当該画素で示されるライナープレート4上の位置は、腐食が進展したものと判断することができる。これに対して、画素の輝度を閾値と比較してそれがqよりも大きければ、当該画素で示されるライナープレート4上の位置は、腐食が進展していないものと判断することができる。
また実際に検出したい腐食の程度に応じて閾値を自在に変化させることも可能であり、例えば腐食が極度に進んだ場合のみを検出したい場合には、閾値をqよりも小さいpに設定することで実現することができる。
このようにして、単位画像を構成する全画素についてこの閾値との比較を行うことにより、閾値以下の画素からなる腐食領域と、閾値超の画素からなる非腐食領域とを2値化することができる。
次にステップS16へ移行し、判定装置13は、この2値化した腐食領域と非腐食領域の中から腐食領域のみを特定する。実際には、閾値以下からなる腐食領域の画素座標を特定し、その画素座標を腐食領域として特定し、記憶するとともに、その特定した腐食領域をディスプレイを介して表示するようにしてもよい。
なお、得られる画像は、R(赤)、G(緑)、B(青)の三原色を組み合わせて色彩を現す場合が多い。特に腐食が進行していない箇所は、ライナープレート4の色としての白色や灰色等を呈している場合が多く、RGBの輝度はそれぞれ高い数値である場合が多い。これに対して、腐食が進行した場合には、鉄が錆びた赤茶色や赤黒色になる場合が多く、かかる場合には、Rの輝度に関わらず、G及びBの輝度が小さくなってしまう場合が多い。このため、上述した図11においては、輝度が小さくなるほど腐食が進行するモデルに基づいて説明を行った。但し、これらRGBの組み合わせや、検出すべき腐食の種別によっては、このRGBのうち何れか1以上について、輝度が大きくなるほど腐食が進行するモデルも十分に考えられる。かかる場合には、閾値以上の画素からなる腐食領域と、閾値未満の画素からなる非腐食領域とにより2値化していくこととなる。
次に、ステップS17へ移行し、判定装置13は、ステップS16において特定した腐食領域の面積率を単位画像毎に算出する。この腐食領域の面積率の算出は、従来の画像処理技術において提案されているいかなる方法を用いるようにしてもよい。本発明は、このステップS17において面積率を表示するのみで処理フローを終了するようにしてもよい。腐食領域の面積率さえ確認者に知らせれば、確認者の今までの経験により、腐食の進展度合に応じたライナープレート4の取替えの必要性を判断できる場合もあるためである。
しかしながら、腐食領域の面積率のみでは、その取替えの必要性を判断できない場合もあることから、更にステップS18の判断を行うようにしてもよい。このステップS18では、この面積率と、閾値とを比較し、面積率が閾値以上の場合には、取替えの必要性がある旨を表示する。これに対して、面積率が閾値未満の場合には、取替えの必要性が無い旨を表示する。この比較する閾値については、従前のライナープレート4の取替え必要性の基準に基づいて最適化されたものとなっている。
このようにして、本発明を適用した腐食診断システム1は、単位画像毎に腐食領域の面積率、或いは取替えの必要性の有無を自動的に判別して表示することが可能となる。実際にこの判別結果を表示する際には、例えば図8に示すように分割された単位画像について、それぞれ取り替えの必要性が“有”の表示と、“無”等をするようにしてもよい。
また本発明を適用した腐食診断システム1によれば、撮像した画像を確認者が視認し、かかる画像を介して腐食の有無を確認する必要がなくなる。これにより、確認者の経験等による個人差や、それぞれが持つ判定に関する主観を排除できることから、確認者によって判定結果が大きく揺らぐのを防止することができる。また、客観的且つ定量的な腐食度合の判定を自動的に行うことが可能となる。
特に単位画像をライナープレート4に応じたサイズで区切り、腐食領域の面積率をライナープレート4単位で算出することにより、単位画像毎に腐食判定を行えば、それはライナープレート4単位で腐食判定を行えたこととなる。これにより、交換の必要なライナープレート4をプレート単位で抽出することが可能となる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、撮像台11は、撮像装置12の上方及び下方の少なくとも一方から立坑の内壁を照光する照明灯51が設けられていてもよい。
この照明灯51は、例えば、電球や電灯等を始めとした照明手段で構成されるものであり、例えば可視光を発光するLED照明灯等を用いるようにしてもよい。この照明灯51は、撮像装置12よりも上方に取り付けられる照明灯51aと、撮像装置12よりも下方に取り付けられる照明灯51bとに分類することができる。照明灯51aは、撮像台11から吊り下げられた下部リング54から吊下げられる。ちなみに、おの下部リング54は、撮像台11の底面に取り付けられた複数のアイボルト52からワイヤー53を介して吊下げ支持されている。なお、照明灯51aと、照明灯51bの何れか一方を省略するようにしてもよい。
このような照明灯51aにより撮像台11の上方から立坑3の内壁を照明し、また照明灯51bにより撮像台11の下方から立坑3の内壁を照明する。特にライナープレート4は波形鋼板を用いていることから、これを撮像した場合に、その波形形状による陰影が画像上に現れることとなり、実際に腐食領域か否かを判定する上でかかる陰影が誤差となって現れてしまう場合がある。このため、撮像装置12の上方及び下方の両側から照明灯51により照明することにより、得られる画像上にかかるライナープレート4は波形形状に基づく陰影が現れてしまうのを防止することが可能となる。
なお、このようなライナープレート4の波形形状により画像上に現れる陰影を除去したい場合には、照明灯51を用いる代わりに、予めその波形形状に応じた補正値を判定装置13側において入力しておき、得られる画像上でその補正値に基づいて輝度補正するようにしてもよいことは勿論である。
また、図5に示すように、撮像装置12の撮影方向を撮像台11の中心から外側に向け、しかも撮像装置12を円周方向に等間隔で複数配置する場合に限定されるものでない。例えば一又は複数の撮像装置12の撮影方向を周方向に向けて旋回させるようにしてもよい。これにより、この撮像台11上に、内壁の全周を全て撮影範囲に捉えることができるように、複数の撮像装置12を互いの撮影方向を周方向にシフトさせた設置する必要が無くなり、一の撮像装置12のみ構成すれば足りることとなり、コスト面においても有利となる。
また本発明では、判定装置13側において、図7、8に示すような単位画像を互いに貼り合わせた全体画像を作画した上でこれを表示するようにしてもよい。この全体画像を作画して表示することにより、確認者は立坑3の内壁の全てを一目で鳥瞰することが可能となる。なお、この単位画像を互いに貼り合わせた全体画像を表示するステップは省略するようにしてもよい。
また、本発明では、撮像台11の回転及び傾きの少なくとも1つをセンサー等を介して検出するようにしてもよい。そして検出したデータを判定装置13へ送信するようにしてもよい。これにより、判定装置13は、撮像台11の回転又は傾きのデータを取得することができ、これに基づいて単位画像の輝度を調整することが可能となる。特に撮像台11が回転してしまったり、或いは傾いてしまった場合には、それに基づいて単位画像の輝度に誤差が生じる場合がある。しかし、判定装置13側で回転又は傾きのデータを取得することができれば、それに基づいて輝度を補正することができ、かかる誤差を解消することが可能となる。
さらに本発明は、立坑の補修方法として適用されるものであってもよい。かかる場合には先ず上述の方法に基づいて特定した腐食領域の面積率を単位画像毎に算出する点は同様である。次に、算出した腐食領域の面積率に基づいて補修すべきライナープレート4を特定する。更にその特定した補修すべきライナープレート4を補修する。補修の代表的なものは、ライナープレート4を取り替えることであるが、これに限定されるものではなく、既存のライナープレート4の腐食を改善するために施されるあらゆる処理を含むものである。
1 腐食診断システム
3 立坑
4 ライナープレート
8 立坑
11 撮像台
12 撮像装置
20 支持架
13 判定装置
14 昇降制御部
16 電動ウィンチ
17 ワイヤーロープ
18 上部リング
19 ワイヤー
21 アイボルト
22 固定部品
31 集水管
32 排水管
41 軸方向フランジ
42 周方向フランジ
44 ボルト孔
45 ボルト孔
47 孔
51 照明灯
52 アイボルト
53 ワイヤー
54 下部リング

Claims (10)

  1. 波形形状のライナープレートを周方向及び上下方向に連結して内壁を構築した立坑の腐食診断システムにおいて、
    上記立坑内で昇降される撮像台と、
    上記撮像台上に設置された撮像装置と、
    上記撮像装置により撮像された画像に基づいて上記ライナープレートの腐食判定を行う判定装置とを備え、
    上記撮像装置は、上記撮像台が上記立坑内を昇降中に上記立坑の内壁を順次撮像し、
    上記判定装置は、上記撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより上記単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出すること
    を特徴とする立坑の腐食診断システム。
  2. 上記判定装置は、算出した上記面積率に基づいて上記単位画像毎に腐食の有無を判定すること
    を特徴とする請求項1記載の腐食診断システム。
  3. 上記撮像台は、上記撮像装置の上方及び下方の少なくとも一方から上記立坑の内壁を照光する照明手段を有すること
    を特徴とする請求項1又は2記載の立坑の腐食診断システム。
  4. 上記撮像装置は、上記内壁の全周を撮像可能なように複数に亘り互いに撮影方向を上記周方向にシフトさせて上記撮像台上に設置され、
    上記撮像台は、上記周方向に回転させること無くそのまま昇降されること
    を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の立坑の腐食診断システム。
  5. 上記撮像台は、上記撮像装置の撮影方向を上記周方向に向けて旋回させながら昇降されること
    を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の立坑の腐食診断システム。
  6. 上記判定装置は、上記単位画像を上記ライナープレートに応じたサイズで区切り、上記腐食領域の面積率をライナープレート単位で算出すること
    を特徴とする請求項1〜5のうち何れか1項記載の立坑の腐食診断システム。
  7. 上記判定装置は、上記単位画像を互いに貼り合わせた全体画像を作画した上でこれを表示可能とされていること
    を特徴とする請求項1〜6のうち何れか1項記載の立坑の腐食診断システム。
  8. 上記撮像台の回転及び傾きの少なくとも1つを検出する検出手段を更に備え、
    上記判定装置は、上記検出手段により検出された検出結果に基づいて上記単位画像の輝度を調整すること
    を特徴とする請求項1〜7のうち何れか1項記載の立坑の腐食診断システム。
  9. 波形形状のライナープレートを周方向及び上下方向に連結して内壁を構築した立坑の腐食診断方法において、
    撮像装置を設置した撮像台を上記立坑内で昇降させつつ、その撮像装置により上記立坑の内壁を順次撮像し、
    上記撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより上記単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出すること
    を特徴とする立坑の腐食診断方法。
  10. 波形形状のライナープレートを周方向及び上下方向に連結して内壁を構築した立坑の補修方法において、
    撮像装置を設置した撮像台を上記立坑内で昇降させつつ、その撮像装置により上記立坑の内壁を順次撮像し、
    上記撮像された画像を所定サイズからなる単位画像に区切った上で、その輝度を所定の閾値と順次比較することにより上記単位画像毎に腐食領域を特定し、特定した腐食領域の面積率を上記単位画像毎に算出し、
    算出した腐食領域の面積率に基づいて補修すべきライナープレートを特定してこれを補修すること
    を特徴とする立坑の補修方法。
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