JP2013197414A - 焼結体とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】保磁力性能に優れた希土類磁石の前駆体である焼結体とその製造方法を提供する。
【解決手段】非晶質の急冷リボンBを粉砕して希土類磁石用の磁性粉末を製造し、該磁性粉末を加圧しながら熱処理することにより、Nd-Fe-B系の主相である結晶粒MPと、該主相MPの周りにある粒界相BPからなる焼結体Sであって、粒界相BPのうちNd-Fe合金相の割合が50体積%以下である組織を有する希土類磁石の前駆体である焼結体Sを製造する焼結体の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類磁石の前駆体である焼結体とその製造方法に関するものである。
ランタノイド等の希土類元素を用いた希土類磁石は永久磁石とも称され、その用途は、ハードディスクやMRIを構成するモータのほか、ハイブリッド車や電気自動車等の駆動用モータなどに用いられている。
この希土類磁石の磁石性能の指標として残留磁化(残留磁束密度)と保磁力を挙げることができるが、モータの小型化や高電流密度化による発熱量の増大に対し、使用される希土類磁石にも耐熱性に対する要求は一層高まっており、高温使用下で磁石の保磁力を如何に保持できるかが当該技術分野での重要な研究課題の一つとなっている。車両駆動用モータに多用される希土類磁石の一つであるNd-Fe-B系磁石を取り挙げると、結晶粒の微細化を図ることやNd量の多い組成合金を用いること、保磁力性能の高いDy、Tbといった重希土類元素を添加することなどによってその保磁力を増大させる試みがおこなわれている。
希土類磁石としては、組織を構成する結晶粒(主相)のスケールが3〜5μm程度の一般的な焼結磁石のほか、結晶粒を50nm〜300nm程度のナノスケールに微細化したナノ結晶磁石があるが、中でも、上記する結晶粒の微細化を図りながら高価な重希土類元素の添加量を低減すること(フリー化)のできる、もしくは重希土類元素の使用を無くすこと(レス化)のできるナノ結晶磁石が現在注目されている。
重希土類元素の中でもその使用量の多いDyを取り上げると、Dyの埋蔵地域は中国に偏在していることに加えて、中国によるDyをはじめとするレアメタルの生産量や輸出量が規制されていることから、Dyの資源価格は上昇している。そのため、Dy量を減らしながら保磁力性能を保証するDyレス磁石や、Dyを一切使用せずに保磁力性能を保証するDyフリー磁石の開発が我が国において国家を挙げた重要な開発課題の一つとなっており、このことがナノ結晶磁石の注目度を高くしている大きな要因の一つである。
ナノ結晶磁石の製造方法を概説すると、たとえばNd-Fe-B系の金属溶湯を冷却ロール上に吐出してこれを急冷凝固する。この急冷凝固では、急冷速度によって非晶質の急冷リボンや結晶質の急冷リボンが得られることから、たとえば弱磁石等を用いて結晶質のものと非晶質のものに分別する。具体的には、分別された結晶質の急冷リボンを粉砕して磁性粉末を製造し、この磁性粉末を加圧成形しながら焼結して焼結体を製造する。この焼結体に対し、たとえば磁気的異方性を付与するために、熱間塑性加工(熱間塑性加工による加工度(圧縮率)が大きい場合、たとえば圧縮率が10%程度以上の場合を、熱間強加工もしくは単に強加工と称することができ、焼結体を強加工前駆体と称することもできる)を施して配向磁石である希土類磁石を製造する。
なお、熱間塑性加工で得られた配向磁石に対して、保磁力性能の高い重希土類元素やその合金等を種々の方法で付与することでさらに希土類磁石の保磁力を高めることもできる。
ここで、特許文献1には、主として結晶質の急冷リボンを使用して希土類磁石を製造する方法が開示されている。そして、そこでは、粒界相の体積分率範囲によって粒界相におけるNdFe4B4相の相比率を変化させるようにして実施例にかかる希土類磁石を製造する内容が記載されている。
この点に関して本発明者等は、非晶質の急冷リボンと結晶質の急冷リボンの双方で磁性粉末を製造し、それぞれの磁性粉末で製作された焼結体の保磁力を比較するというこれまでにない新たな試みをおこなうことで、希土類磁石として好ましい出発原料を特定し、この出発原料を使用して希土類磁石前駆体である焼結体を製造する方法とこの方法で製造される焼結体の発案に至っている。
特開2011−159733号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、保磁力性能に優れた希土類磁石の前駆体である焼結体とその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による焼結体の製造方法は、非晶質の急冷リボンを粉砕して希土類磁石用の磁性粉末を製造し、該磁性粉末を加圧しながら熱処理することにより、Nd-Fe-B系の主相である結晶粒と、該主相の周りにある粒界相からなる焼結体であって、前記粒界相のうちNd-Fe合金相の割合が50体積%以下である組織を有する希土類磁石の前駆体である焼結体を製造するものである。
ここで、Nd-Fe合金相としては、NdFe4B4相やNd2Fe17相を挙げることができる。
また、上記焼結体に関し、粒界相におけるNd-Fe4-B4相やNd2-Fe17相の体積分率を50体積%以下の範囲に調整するべく、これを主相の割合から見た場合には、主相と粒界相の全体に対する主相の割合を80体積%〜97.5体積%の範囲に調整するのがよいことも特定されている。
また、本発明は焼結体にも及ぶものであり、この焼結体は、Nd-Fe-B系の主相である結晶粒と、該主相の周りにある粒界相からなる希土類磁石の前駆体である焼結体であって、前記粒界相のうち、Nd-Fe合金相の割合が50体積%以下であり、希土類磁石の残留磁束密度Brの2%減磁界Hkと保磁力Hcjの比(Hk/Hcj)が0.16≦Hk/Hcj≦1の範囲にあるものである。
また、望ましい焼結体の実施の形態は、上記数値限定範囲の中で、0.16≦Hk/Hcj≦0.23の範囲にあるものである。
さらに、主相と粒界相の全体に対する主相の割合が80体積%〜97.5体積%の範囲にある場合に、結晶質の急冷リボンを原料とした焼結体よりも非晶質の急冷リボンを原料とした焼結体の保磁力が高くなることも特定されている。
以上の説明から理解できるように、本発明の希土類磁石の前駆体である焼結体とその製造方法によれば、非晶質の急冷リボンを使用するとともに、粒界相におけるNd-Fe合金相の割合が50体積%以下となるようにして焼結体を製造することにより、高保磁力の焼結体を製造することができる。
(a)は急冷リボンの製造方法を説明した図であり、(b)は焼結体の製造方法を説明した図である。 製造された焼結体のミクロ構造を説明した図である。 Nd-Fe-B系三元系相図である。 急冷リボンの磁気特性を説明した図である。 急冷リボンのXRDパターンを説明した図である。 実験で使用した各焼結体の磁化曲線を示した図である。 加圧焼結条件と保磁力の関係を示した図である。 粒界相中のNdFe4B4相率と保磁力の関係を示した図である。 粒界相中のNd2Fe17相率と保磁力の関係を示した図である。 (a)はNdFe4B4相率と2%減磁界Hkの関係を示した図であり、(b)はNd-Fe4-B4相率と、2%減磁界Hkと保磁力Hcjの比(角形比)の関係を示した図である。 (a)はNd2Fe17相率と2%減磁界Hkの関係を示した図であり、(b)はNd2-Fe17相率と、2%減磁界Hkと保磁力Hcjの比(角形比)の関係を示した図である。 主相率と保磁力の関係を示した図である。 焼結保持時間と保磁力の関係を示した図である。
以下、図面を参照して本発明の希土類磁石前駆体の焼結体と、この焼結体の製造方法の実施の形態を説明する。なお、図示する配向磁石はナノ結晶磁石(粒径が200nm程度かそれ以下)からなる場合を説明したものであるが、本発明の製造方法が対象とする配向磁石はナノ結晶磁石に限定されるものではなく、粒径が300μm以上のものや、1μm以上の焼結磁石、さらには樹脂バインダーで結晶粒がバインドされたボンド磁石などを包含するものである。
(希土類磁石前駆体の焼結体とその製造方法の実施の形態)
急冷リボンの製造に当たり、非晶質の急冷リボンと結晶質の急冷リボンの双方が製造されるのが一般的であるが、本発明の製造方法では、非晶質(アモルファス)の急冷リボンを選択してこれを粉砕して磁性粉末として使用することをその特徴の一つとするものである。具体的には、弱磁石などを使用し、非晶質の急冷リボンのみが弱磁石で磁化されて落下しないことを利用して非晶質の急冷リボンのみを選別することができる。そして、磁性粉末を加圧しながら熱処理することにより(加圧焼結処理)、Nd-Fe-B系の主相である結晶粒と該主相の周りにある粒界相からなる組織の希土類磁石前駆体である焼結体が製造される。ここで、粒界相においては、Nd-Fe合金相の割合が50体積%以下となるように調整されていることもまた本発明の製造方法の特徴の一つである。
図1aは急冷リボンの製造方法を説明した図であり、図1bは焼結体の製造方法を説明した図である。図1aで示すように、たとえば50kPa以下に減圧したArガス雰囲気の不図示の炉中で、単ロールによるメルトスピニング法により、合金インゴットを高周波溶解し、希土類磁石を与える組成の溶湯を銅製の冷却ロールRに噴射して急冷リボンB(急冷薄帯)を製作する。
ここで、製作される急冷リボンBは非晶質(アモルファス)の急冷リボンと結晶質の急冷リボンの双方が混在している。本製造方法ではこのうちの非晶質の急冷リボンのみを使用して焼結体を製造することから、弱磁石を使用して、非晶質の急冷リボンのみが弱磁石で磁化され、落下しない急冷リボンを集めて非晶質の急冷リボンの選別をおこなう。
合金溶湯の組成(Nd-Fe-B系磁石組成)は(Rl)x(Rh)yTzBsMtの組成式で表すことができ、RlはYを含む1種類以上の軽希土類元素、RhはDy、Tbよりなる1種類以上の重希土類元素、TはFe、Ni、Coを少なくとも1種類以上を含む遷移金属、MはGa、Zn、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Cu、Cr、Hf、Mo、P、C、Mg、Hg、Ag、Auよりなる1種類以上の金属、11.7≦x≦20、0≦y≦4、z=100-a-b-d-e-f、4≦s≦20、0≦t≦3であり、主相(RlRh)2T14B)と粒界相(RlRh)T4B4相、RlRh相の組織構成、もしくは、主相(RlRh)2T14B)と粒界相(RlRh)2T17相、RlRh相の組織構成のものを適用できる。
たとえば、粒界相としては、図3で示すNd-Fe-B系三元系相図を使用して、Nd2Fe14B、Nd、NdFe4B4相が析出してなる組成領域からなる場合(図3の領域A)や、Nd2Fe14B、Nd、Nd2Fe17相が析出してなる組成領域からなる場合(図3の領域B)が挙げられる。
粉砕された非晶質の急冷薄帯Bを図1bで示すように超硬ダイスDとこの中空内を摺動する超硬パンチPで画成されたキャビティ内に充填し、超硬パンチPで加圧しながら(X方向)加圧方向に電流を流して通電加熱することにより(加圧焼結)、ナノ結晶組織のNd-Fe-B系の主相(20nm〜200nm程度の結晶粒径)と、主相の周りにあるNd-X合金(X:金属元素)の粒界相からなる焼結体Sが製造される。
この加圧焼結においては、図3の領域Aにおいて主相成分であるNd2Fe14B以外のNd、NdFe4B4相が析出して形成された粒界相の場合には粒界相中のNdFe4B4相の体積比率が50体積%以下となるように、また、主相成分であるNd2Fe14B以外のNd、Nd2Fe17相が析出して形成された粒界相の場合には粒界相中のNd2Fe17相の体積比率が50体積%以下となるように加圧条件や焼結の際の温度条件を調整する。たとえばNdFe4B4相やNd2Fe17相の体積比率が50体積%以下となるような加圧焼結条件として、熱処理温度が550℃以上、保持時間が5分以上、加圧条件が50〜300MPaという加圧焼結条件や、熱処理温度が525〜550℃、保持時間が1時間以上、加圧条件が50〜300MPaという加圧焼結条件を一例として挙げることができる。
図2で示すように、希土類磁石前駆体である焼結体Sはナノ結晶粒MP(主相)間を粒界相BPが充満する等方性の結晶組織を呈している。
この焼結体Sを不図示の上下のパンチとダイスからなるキャビティ内に収容し、高温雰囲気とした状態で上下のパンチを相互に近接するようにして1秒以下程度の短時間で摺動させることにより(熱間塑性加工)、磁気的異方性を有して配向度の高い配向磁石(希土類磁石)が製造される。なお、熱間塑性加工による加工度(圧縮率)が大きい場合、たとえば圧縮率が10%程度以上の場合の熱間塑性加工を強加工と称することができる。
この配向磁石に対し、さらにその保磁力を高めるべく、重希土類元素を含んでいない改質合金を粒界相に粒界拡散してもよい。たとえば、Dy、Tbといった重希土類元素を含んでいない改質合金:RE-Y合金として、Nd-Cu合金やNd-Al合金を挙げることができる。
改質合金がNd-Cu合金の場合にはその融点が600℃程度であり、改質合金がNd-Al合金の場合にはその融点が640〜650℃であることから、Dy、Tbやその合金を使用する場合の融点1000℃付近に対して改質合金の融点が格段に低くなる。そのため、製造対象の希土類磁石が結晶粒の粒径が200nm程度かそれ以下のナノ結晶磁石の場合には特に、結晶粒の粗大化を効果的に抑制することができる。
図示する焼結体Sは、その出発原料として非晶質急冷リボンを使用し、粒界相のうち、NdFe4B4相もしくはNd2Fe17相の割合が50体積%以下であることにより、希土類磁石の残留磁束密度Brの2%減磁界Hkと保磁力Hcjの比である角形比(Hk/Hcj)が0.16≦Hk/Hcjの範囲となっている。
さらに、主相MPと粒界相BPの全体に対する主相MPの割合が80体積%〜97.5体積%の範囲となっている。
図示する製造方法によって製造された希土類磁石前駆体である焼結体Sは、その出発原料として非晶質急冷リボンを使用し、粒界相におけるNdFe4B4相もしくはNd2Fe17相の割合が50体積%以下となるように加圧焼結することにより、出発原料として結晶質急冷リボンを使用する従来の製造方法による焼結体に比して高保磁力の焼結体、ひいては高保磁力の希土類磁石を製造することができる。これは、Nd-Fe-B系のアモルファス合金を高圧条件下で熱処理することによってBやFeなどの比較的原子番号の小さい元素の拡散を抑制することができ、その結果、結晶粒成長速度が低下して結晶粒の粗大化を抑制することが可能となることによるものである。具体的には、単磁区粒径(200〜300nm)以下の微細結晶組織を得ることができ、液体急冷時に結晶化した原料使用に比べて均質な組織を得ることができ、さらには、粒界相のNd-Fe合金割合を減らすことで主相間の磁気的な結合を弱めることができ、これらのことが保磁力の向上に寄与するものである。
[粒界相におけるNd-Fe合金相の割合を規定するための実験とその結果]
本発明者等は、仮定として、主相率:95.4体積%(vol%)で、試料作製時の酸素分率が600ppmとした際に、試料中の全ての酸素がNd2O3の生成に使われたとし、この場合に、Nd2O3は0.44vol%生成されることになり、粒界相にはいつもこの分率のNd2O3相が存在すると考えた。すなわち、主相率:95.4vol%、Nd2O3相率:0.44vol%として、粒界相中に析出する残りの組成を制御することとした。
ここで、図3で示す領域A,領域Bの2種類の組成領域の組成相が粒界相に析出する場合について検証した。
以下、表1にNd、NdFe4B4相が析出して形成された粒界相の場合(図3の領域A)における実施例1〜3、比較例1の設定体積分率を示しており、表1に基づいて各元素の原子分率を表2に示している。
[表1]
Figure 2013197414
表1中の体積分率を原子分率に変換し、その原子分率をNd2Fe14B、Nd23、Nd、NdFe4B4に分配すると必要なNd、Fe、Bの各分率が一意的に求められる。また、0.5at%のGa、0.3at%のAlをFeと置換しており、0.1at%のCuを添加している。その結果、各元素の原子分率は以下の表2のようになる。
[表2]
Figure 2013197414
次に、以下、表3にNd、Nd2Fe17相が析出して形成された粒界相の場合(図3の領域B)における実施例4〜6、比較例2の設定体積分率を示しており、表3に基づいて各元素の原子分率を表4に示している。
[表3]
Figure 2013197414
表3中の体積分率を原子分率に変換し、その原子分率をNd2Fe14B、Nd23、Nd、NdFe4B4に分配すると必要なNd、Fe、Bの各分率が一意的に求められる。また、0.5at%のGa、0.3at%のAlをFeと置換しており、0.1at%のCuを添加している。その結果、各元素の原子分率は以下の表2のようになる。
[表4]
Figure 2013197414
本実験の方法を概説すると、組成が表2,4となるようにNd、Fe、FeBと添加元素(Al、Cu、Ga)を所定量秤量した(なお、試薬はすべて高純度科学製である)。アーク溶解にて合金インゴットを作製し、単ロール炉にて合金インゴットを高周波で溶解し、回転銅ロールに噴射して急冷リボンを作製した。ここで、単ロール炉の使用条件を以下の表5に示す。
[表5]
Figure 2013197414
作製した急冷リボンの一部を採取し、予め11Tで着磁した後にVSMにより最大磁場27kOeでM-Hループを測定した。その結果、保磁力を殆ど有しないために、Nd2Fe14B相が結晶化に至っていないアモルファス組織であることを確認した。また、比較用に同一組成でナノ結晶組織を有する急冷リボンを作製し、同様に磁気特性を評価した。これは保磁力を有している(図4参照)。
また、X線回折では図5で示すように、アモルファス急冷リボンの場合にはNd2Fe14Bの結晶化ピークが現れない。
以上の条件で作製したアモルファス急冷リボンを数百μm程度に粗粉砕した後、以下の表6の焼結条件でSPS(Spark Plasma Sintering 放電プラズマ焼結)をおこなって結晶化熱処理を実施し、φ10mm×t2mmの試料を得た(なお、ダイスの材質は超硬(WC)あるいはグラファイトである)。
[表6]
Figure 2013197414
作製した焼結体を2mm角に切断し、予め11Tで着時した後、VSMにより最大磁場27kOeでM-Hループを測定した。
その結果、図6、7で示すように、焼結温度550℃以上で加圧焼結することで、ナノ結晶リボンから作製した焼結体を上回る高保磁力の等方性焼結体を得ることができた。また、525℃であっても熱処理時間を60分程度保持することで、高保磁力が得られることが分かった。さらに、温度575℃で時間が短い(5分)場合、低面圧(50〜100MPa)に比べて高面圧の300MPaの方が約0.5〜1.5kOe程度保磁力が高いことから、高保磁力を得るためには高面圧の方がより好ましいことが分かった。なお、1kOeをSI単位であるkA/m単位に換算する際には79.6を乗じればよい。
以上は予備検討の内容である。この予備検討に基づき、以下では粒界相中のNdFe4B4相率と保磁力の関係、および、粒界相中のNd2Fe17相率と保磁力の関係を特定する。
まず、表1で示す実施例1〜3、および比較例1にかかる焼結体の製作に当たり、SPS焼結条件を以下の表7に示す。
[表7]
Figure 2013197414
表1で決定した粒界相割合の原料(主としてNdFe4B4相)を表7で示す条件で作製した場合の保磁力の測定結果を図8に示す。なお、比較例1’は比較例1と同じ組成で作製した、結晶質急冷リボンを加圧焼結して作製した焼結体であり、比較例1’の保磁力を図中の点線で示している。
図8より、粒界相中のNdFe4B4相の割合が50体積%でグラフの変曲点を迎え、50体積%以下の範囲では比較例より高い保磁力が得られることが確認できる。これは、粒界相中の強磁性であるNdFe4B4相の割合が低くなることによって主相間の磁気的な結合が弱くなり、ひとつの主相の磁化反転が他の結晶粒に伝播するのが抑制され、保磁力が高くなるものと考えられる。
次に、表3の条件で決定した粒界相割合の原料(主としてNd2Fe17相)を表7で示す条件で作製した場合の保磁力の測定結果を図9に示す。なお、比較例2’は比較例2と同じ組成で作製した、結晶質急冷リボンを加圧焼結して作製した焼結体であり、比較例2’の保磁力を図中の点線で示している。
図9より、粒界相中のNd2Fe17相の割合がやはり50体積%でグラフの変曲点を迎え、50体積%以下の範囲では比較例より高い保磁力が得られることが確認できる。この理由も、粒界相中の強磁性であるNd2Fe17相の割合が低くなることによって主相間の磁気的な結合が弱くなり、ひとつの主相の磁化反転が他の結晶粒に伝播するのが抑制され、保磁力が高くなるものと考えられる。
[焼結体の角形比の最適範囲を規定するための実験とその結果]
本発明者等は、焼結体の有する保磁力性能を示す指標となる角形比を用いて、アモルファス急冷リボンを出発原料として、粒界相におけるNd-Fe合金相の割合が50体積%以下となる焼結体の角形比の最適範囲を規定するための実験をおこなった。
ここで、B-HカーブにおいてH>0の領域でMrを切片とする近似直線からのずれが2%となる第二象限のHを2%減磁界(Hk)とし、直線からの逸脱は磁化反転を表し、Hkは磁化反転が始まる磁場を示す指標である。一般にHkが大きい方が磁化反転しにくく、高保磁力であることが分かっている。また、磁石はさまざまな保磁力(粒径)を有する結晶粒で構成されているが、結晶粒径にばらつきがあると磁場ごとに反転する結晶粒が存在することとなり、角形比率(Hk/Hcj)の値は小さくなる。
図10aはNdFe4B4相率と2%減磁界Hkの関係を示した図であり、図10bはNdFe4B4相率と、2%減磁界Hkと保磁力Hcjの比(角形比)の関係を示した図である。また、図11aはNd2Fe17相率と2%減磁界Hkの関係を示した図であり、図11bはNd2Fe17相率と、2%減磁界Hkと保磁力Hcjの比(角形比)の関係を示した図である。
図10b、図11bより、NdFe4B4相率、Nd2Fe17相率がいずれも50体積%以下の範囲では結晶質原料の焼結体に対してアモルファス原料の焼結体の角形比が高くなっている。これは、この範囲でアモルファスを原料にした焼結体の方が、結晶質を原料にした焼結体に比べて結晶粒径のばらつきが少ないためである。そして、図10b、図11bともに、アモルファス原料の焼結体の角形比(Hk/Hcj)は0.16≦Hk/Hcj≦0.23の範囲となっており、この角形比の最適範囲と規定することができる。
[主相率の最適範囲を規定するための実験とその結果]
本発明者等はさらに、主相率を80vol%〜99.6vol%の範囲で変化させ、粒界相にNd2O3とNdのみが析出する組成にてアモルファスを作製し、表7の条件で加圧焼結をおこなった。その結果を図12に示している。
同図より、主相率が97.5%以下の領域で結晶質を原料とした焼結体よりもアモルファスを原料として結晶化した焼結体の方が高い保磁力を有することが確認できる。この結果より、主相率の範囲の最適範囲として80%≦主相率≦97.5%を規定することができる。
[焼結保持時間と焼結温度に関する一考察]
本発明者等はまた、焼結保持時間と焼結温度の関連性を検証する実験をおこなった。具体的には、実施例3の組成にてアモルファス急冷リボンを作製し、以下の表8の条件にてSPS加圧焼結をおこなった。その結果を図13に示している。
[表8]
Figure 2013197414
図13より、アモルファス原料を用いて575℃で焼結をおこなった場合、保持時間が長くなるにつれて保磁力が増加することから保持時間は長い方が望ましい。一方、600℃で60分保持の場合の保磁力は575℃、240分保持の場合の保磁力と同等の保磁力となることが確認できる。このことから、575℃より高温にすると保持時間を短縮できることが推察できる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
R…冷却ロール、B…急冷リボン(急冷薄帯)、D…超硬ダイス、P…超硬パンチ、S…焼結体、MP…主相(ナノ結晶粒、結晶粒)、BP…粒界相

Claims (7)

  1. 非晶質の急冷リボンを粉砕して希土類磁石用の磁性粉末を製造し、該磁性粉末を加圧しながら熱処理することにより、Nd-Fe-B系の主相である結晶粒と、該主相の周りにある粒界相からなる焼結体であって、前記粒界相のうちNd-Fe合金相の割合が50体積%以下である組織を有する希土類磁石の前駆体である焼結体を製造する焼結体の製造方法。
  2. Nd-Fe合金相が、Nd-Fe4-B4相、もしくはNd2-Fe17相のいずれかである請求項1に記載の焼結体の製造方法。
  3. 主相と粒界相の全体に対する主相の割合が80体積%〜97.5体積%の範囲にある請求項1または2に記載の焼結体の製造方法。
  4. Nd-Fe-B系の主相である結晶粒と、該主相の周りにある粒界相からなる希土類磁石の前駆体である焼結体であって、
    前記粒界相のうち、Nd-Fe合金相の割合が50体積%以下であり、
    希土類磁石の残留磁束密度Brの2%減磁界Hkと保磁力Hcjの比である角形比(Hk/Hcj)が0.16≦Hk/Hcj≦1の範囲にある焼結体。
  5. 前記角形比(Hk/Hcj)が0.16≦Hk/Hcj≦0.23の範囲にある請求項4に記載の焼結体。
  6. Nd-Fe合金相が、Nd-Fe4-B4相、もしくはNd2-Fe17相のいずれかである請求項4または5に記載の焼結体。
  7. 主相と粒界相の全体に対する主相の割合が80体積%〜97.5体積%の範囲にある請求項4〜6のいずれかに記載の焼結体。
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