JP2013197289A - マルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法 - Google Patents

マルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法 Download PDF

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Abstract

【目的】ダイナミックフォーカスに依存する像の回転と倍率変動の少なくとも1つを抑制することが可能な描画装置を提供する。
【構成】マルチ荷電粒子ビーム描画装置は、マルチビームを形成するアパーチャ部材と、アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う複数のブランカーと、複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽するブランキングアパーチャ部材と、ブランキングアパーチャ部材を通過したマルチビームの焦点を試料上へと合わせる複数段の対物レンズと、複数段の対物レンズの各段に少なくとも1つ配置された、描画中にダイナミックにマルチビームの焦点のずれを補正する複数の静電レンズと、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法に係り、例えば、マルチビームによる描画を高精度化する手法に関する。
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、ウェハ等へ電子線を使って描画することが行われている。
例えば、マルチビームを使った描画装置がある。1本の電子ビームで描画する場合に比べて、マルチビームを用いることで一度に多くのビームを照射できるのでスループットを大幅に向上させることができる。かかるマルチビーム方式の描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームを複数の穴を持ったマスクに通してマルチビームを形成し、各々、ブランキング制御され、遮蔽されなかった各ビームが光学系で縮小され、偏向器で偏向され試料上の所望の位置へと照射される(例えば、特許文献1参照)。
電子ビーム描画装置では、各ショットのビームを対物レンズで試料面上に焦点を合わせると共に、例えば静電レンズを使って、試料面の凹凸に対応するように描画中にダイナミックに焦点補正(ダイナミックフォーカス)を行っている。しかしながら、ダイナミックフォーカスを行うと、試料面上においてビーム像に回転変動を生じてしまう。また、倍率変動を生じてしまう。かかる問題によって、描画位置精度が劣化してしまう。シングルビーム方式では、ビーム本数が1本なので、1つのショットに対して回転と倍率変動が生じるため、位置誤差としては、それほど大きな誤差にはならない場合が多い。しかしながら、シングルビーム方式とは異なり、マルチビーム方式では、1回のショットで同時に照射されるビーム本数が多いため、マルチビーム全体に回転と倍率変動が生じると、描画位置誤差としては許容できないものとなり得る。そのため、かかるダイナミックフォーカスに依存する像の回転と倍率変動を極力低減することが求められる。もちろん、シングルビーム方式においても、今後、さらなる描画精度が追求される中でかかる問題は大きなものとなっていくことが予想される。
特開2006−261342号公報
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転と倍率変動の少なくとも1つを抑制することが可能な描画装置および方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
試料を載置する、連続移動可能なステージと、
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
複数の開口部を有し、複数の開口部全体が含まれる領域に荷電粒子ビームの照射を受け、複数の開口部を荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより、マルチビームを形成するアパーチャ部材と、
アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う複数のブランカーと、
複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽するブランキングアパーチャ部材と、
ブランキングアパーチャ部材を通過したマルチビームの焦点を試料上へと合わせる複数段の対物レンズと、
複数段の対物レンズの各段に少なくとも1つ配置された、描画中にダイナミックにマルチビームの焦点のずれを補正する複数の静電レンズと、
を備えたことを特徴とする。
複数段の対物レンズによって、ビームの焦点合わせを行い、複数段の対物レンズの各段に少なくとも1つ静電レンズを備えることで、ダイナミックフォーカス時に、いずれかの静電レンズによって生じる像の回転或いは倍率変動を他の静電レンズで打ち消すことができる。
また、複数段の対物レンズは2段で構成され、
複数の静電レンズは、2つの静電レンズであり、2段の対物レンズの各段に1つずつ配置され、
2つの静電レンズに印加されるそれぞれの電圧の電圧比が、試料面上でマルチビーム像が無回転になる電圧比となるように、2つの静電レンズにそれぞれ電圧が印加されると好適である。
また、複数段の対物レンズは2段で構成され、
複数の静電レンズは、2つの静電レンズであり、2段の対物レンズの各段に1つずつ配置され、
2つの静電レンズに印加されるそれぞれの電圧の電圧比が、試料面上でマルチビーム像の倍率が不変動になる電圧比となるように、2つの静電レンズにそれぞれ電圧が印加されると好適である。
また、複数段の対物レンズは2段で構成され、
複数の静電レンズは、3つの静電レンズであり、2段の対物レンズの一方に2段の静電レンズが配置され、2段の対物レンズの他方に1段の静電レンズが配置され、
3つの静電レンズに印加されるそれぞれの電圧の電圧比が、試料面上でマルチビーム像が無回転になると共に、試料面上でマルチビーム像の倍率が不変動になる電圧比となるように、3つの静電レンズにそれぞれ電圧が印加されると好適である。
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、
アパーチャ部材が有する複数の開口部全体が含まれる領域に荷電粒子ビームの照射を受け、複数の開口部を荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより形成されたマルチビームの焦点を、複数段の対物レンズを用いて試料上へと合わせる工程と、
複数段の対物レンズの各段に少なくとも1つ配置された複数の静電レンズによって、描画中にダイナミックにマルチビームの焦点のずれを補正する工程と、
を備えたことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転と倍率変動の少なくとも1つを抑制できる。
実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。 実施の形態1におけるアパーチャ部材の構成を示す概念図である。 実施の形態1におけるブランキングプレートの構成を示す概念図である。 実施の形態1における描画動作を説明するための概念図である。 実施の形態1の比較例となるダイナミックフォーカスに依存する像の回転量の一例を示す図である。 実施の形態1におけるダイナミックフォーカスに用いる静電レンズの一例を示す構成図である。 実施の形態1における2段の静電レンズで生じる回転量の一例を示す図である。 実施の形態1における2段の対物レンズと2段の静電レンズの構成と、回転量の一例を示す図である。 実施の形態1における2段の静電レンズで電圧を可変にした際の像の回転量の一例を示す図である。 実施の形態1における2段の静電レンズの効果の一例を説明するための概念図である。 実施の形態1の比較例となるダイナミックフォーカスに依存する像の倍率変動の一例を示す図である。 実施の形態1における2段の静電レンズで電圧を可変にした際の像の倍率変動の一例を示す図である。 実施の形態1における2段の静電レンズの効果の他の一例を説明するための概念図である。 実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。 実施の形態2における3段の静電レンズで電圧を可変にした際の像の回転と倍率変動の一例を示す図である。
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、アパーチャ部材203、ブランキングプレート204、縮小レンズ205、偏向器212、制限アパーチャ部材206、2段の対物レンズ207,208、及び、2段の静電レンズ212,214が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
制御部160は、制御回路110、アンプ120,122を有している。制御回路110、アンプ120,122は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
図2は、実施の形態1におけるアパーチャ部材の構成を示す概念図である。図2(a)において、アパーチャ部材203には、縦(y方向)m列×横(x方向)n列(m,n≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。図2(a)では、例えば、512×8列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。ここでは、y方向の各列について、x方向にAからHまでの8つの穴22がそれぞれ形成される例が示されている。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。ここでは、縦横(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、縦横(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、図2(a)にように、縦横が格子状に配置される場合に限るものではない。図2(b)に示すように、例えば、縦方向(y方向)1段目の列と、2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)2段目の列と、3段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
図3は、実施の形態1におけるブランキングプレートの構成を示す概念図である。ブランキングプレート204には、アパーチャ部材203の各穴22の配置位置に合わせて通過孔が形成され、各通過孔には、対となる2つの電極24,26の組(ブランカー:第1の偏向器)が、それぞれ配置される。各通過孔を通過する電子ビーム20は、それぞれ独立にかかる対となる2つの電極24,26に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。このように、複数のブランカーが、アパーチャ部材203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直にアパーチャ部材203全体を照明する。アパーチャ部材203には、矩形の複数の穴(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴が含まれる領域を照明する。複数の穴の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかるアパーチャ部材203の複数の穴をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム)20a〜eが形成される。かかるマルチビーム20a〜eは、ブランキングプレート204のそれぞれ対応するブランカー(第1の偏向器)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、個別に通過する電子ビーム20を偏向する(ブランキング偏向を行う)。そして、ブランキングプレート204を通過したマルチビーム20a〜eは、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ部材206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングプレート204のブランカーによって偏向された電子ビーム20は、制限アパーチャ部材206(ブランキングアパーチャ部材)の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ部材206によって遮蔽される。一方、ブランキングプレート204のブランカーによって偏向されなかった電子ビーム20は、制限アパーチャ部材206の中心の穴を通過する。かかるブランカーのON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャ部材206は、複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ部材206を通過したビームにより1回分のショットのビームが形成される。制限アパーチャ部材206を通過したマルチビーム20は、2段の対物レンズ207,208により焦点が合わされ、所望の縮小率(倍率)のパターン像となり、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ105が移動しながら描画位置が都度変化していくため、マルチビーム20が照射される試料面上の高さが変化する。そのため、静電レンズ212,214によって、描画中に、ダイナミックにマルチビーム20の焦点ずれが補正(ダイナミックフォーカス)される。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的にはアパーチャ部材203の複数の穴の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。描画装置100は、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画動作を行い、所望のパターンを描画する際、パターンに応じて必要なビームがブランキング制御によりビームONに制御される。
図4は、実施の形態1における描画動作を説明するための概念図である。図4(a)に示すように、試料101の描画領域30は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。かかる各ストライプ領域32は、描画単位領域となる。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置に一回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば−x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は所定の速度で例えば連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を−y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、図4(b)に示すように、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、−x方向にむかって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域32では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域32では、−x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、図4(c)に示すように、アパーチャ部材203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、各穴22と同数の複数のショットパターン36が一度に形成される。例えば、アパーチャ部材203の1つの穴Aを通過したビームは、図4(c)で示す「A」の位置に照射され、その位置にショットパターン36を形成する。同様に、例えば、アパーチャ部材203の1つの穴Bを通過したビームは、図4(c)で示す「B」の位置に照射され、その位置にショットパターン36を形成する。以下、C〜Hについても同様である。そして、各ストライプ32を描画する際、x方向に向かってXYステージ105が移動する中、偏向器208によってy方向或いはx,y方向に各ショットが順に移動する(スキャンする)ように偏向し、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画する。
図5は、実施の形態1の比較例となるダイナミックフォーカスに依存する像の回転量の一例を示す図である。例えば、1段の静電レンズのみでダイナミックフォーカスを行った場合、図5に示すように、静電レンズへ印加する電圧を変化させていくと、それに伴って、回転量も大きくなる。図5の例では、80μm角の照射エリアのコーナーでの回転量の一例を示している。例えば、静電レンズへ印加する電圧が40Vの場合に、像の回転量は3×10−9mとなり、100Vの場合に、像の回転量は8×10−9mとなってしまう。特に、マルチビーム方式では、1回のショットで同時に照射されるビーム本数が多いため、マルチビームの照射エリアは、シングルビーム方式のショットエリアに比べて大きい。そのため、マルチビームの照射エリアに回転ずれが生じると、各ビームの照射位置のずれが大きくなってしまう。もちろん、シングルビーム方式においても、今後、さらなる描画精度が追求される中でかかる問題は大きなものとなっていくことが予想される。
図6は、実施の形態1におけるダイナミックフォーカスに用いる静電レンズの一例を示す構成図である。静電レンズ212,214は、例えば、リング状の3段の電極50,52,54から構成され、上下の電極50,54は0Vの電圧が、中段の電極52に正の電圧が印加されることでダイナミックフォーカスを行う。そのため、かかる静電レンズ212,214を通過する電子は、電圧変動に伴い速度vが変化することになる。ここで、るダイナミックフォーカスに依存する像の回転量θは、以下の式(1)のように定義できる。
Figure 2013197289
このように、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転量θは、磁場Bを電子の移動速度vで割った値を光軸に沿った距離zで積分した値に比例する。そこで、実施の形態1では、ダイナミックフォーカス用の静電レンズを2段で構成し、一方の静電レンズ(例えば、静電レンズ212)で発生する回転量θを他方の静電レンズ(例えば、静電レンズ214)で発生する回転量θで打ち消すように構成する。
図7は、実施の形態1における2段の静電レンズで生じる回転量の一例を示す図である。図7において、正(+)側の斜線で示された領域Aの面積が、例えば、静電レンズ212により生じる磁場Bを電子の移動速度vで割った値を光軸に沿った距離zで積分した値(回転量)を示す。一方、負(−)側の斜線で示された領域Bの面積が、例えば、静電レンズ214により生じる磁場Bを電子の移動速度vで割った値を光軸にそった距離zで積分した値(回転量)を示す。
図8は、実施の形態1における2段の対物レンズと2段の静電レンズの構成と、回転量の一例を示す図である。図8(a)に示すように、電磁レンズで構成される対物レンズ207の磁場中心に静電レンズ212を配置する。また、電磁レンズで構成される対物レンズ208の磁場中心に静電レンズ214を配置する。ここでは、磁場中心にそれぞれ静電レンズ212,214が配置されているが、これに限るものではなく、上下方向のいずれかに適宜ずれて配置されても構わない。そして、図8(b)において、正(+)側の斜線で示された領域Aの面積が、静電レンズ212により生じる磁場Bを電子の移動速度vで割った値を光軸に沿った距離zで積分した値(回転量)を示す。一方、負(−)側の斜線で示された領域Bの面積が、例えば、静電レンズ214により生じる磁場Bを電子の移動速度vで割った値を光軸に沿った距離zで積分した値(回転量)を示す。かかる領域Aと領域Bの面積が符号を反転させた同じ値にできれば、像の回転を相殺(打ち消すことが)できる。実施の形態1では、かかる領域Aと領域Bの面積が符号を反転させた同じ値になるように印加する電圧同士を調整する。これにより、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転を無回転にできる。
図9は、実施の形態1における2段の静電レンズで電圧を可変にした際の像の回転量の一例を示す図である。ここでは、例えば、1段目の静電レンズ212に100Vの電圧を印加した際に、2段目の静電レンズ214に印加する電圧を可変に振った場合の一例を示している。図9では、例えば、2段目の静電レンズ214に83Vの電圧を印加した場合に、回転量が0(回転変動角が0°)となった。よって、かかる1段目の静電レンズ212に印加する電圧V1と2段目の静電レンズ214に印加する電圧V2との電圧比V1/V2を常に維持するように連動させて電圧調整を行うことで、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転を無回転にできる。
そこで、かかるダイナミックフォーカスに依存する像の回転を無回転にできる電圧比を予め、シミュレーション或いは実験等により求め、制御回路110に設定する。描画時には、かかる電圧比を維持するように1段目の静電レンズ212に印加する電圧V1と2段目の静電レンズ214に印加する電圧V2を制御すればよい。かかる構成により、試料面上でマルチビーム像を無回転にできる。1段目の静電レンズ212には、制御回路110から出力されたデジタル信号をアンプ120でアナログ信号(電圧)に変換し、制御電圧V1を印加する。2段目の静電レンズ214には、制御回路110から出力されたデジタル信号をアンプ122でアナログ信号(電圧)に変換し、制御電圧V2を印加する。
図10は、実施の形態1における2段の静電レンズの効果の一例を説明するための概念図である。シングルビーム方式では、図10(a)に示すように、照射エリアが1本のビームのショット図形11となるので、回転半径r0が小さい。よって、ダイナミックフォーカスに依存する回転が生じてもその位置誤差は小さくて済む。これに対して、マルチビーム方式では、図10(b)に示すように、多数のビーム本数による多数のショット図形36が1回のショットで照射されるため、照射エリア10が大きい。よって、それに伴って回転半径r1も大きくなる。よって、ダイナミックフォーカスに依存する回転が生じると照射エリア10全体が回転してしまうので各ショット図形36の位置ずれ量も大きくなってしまう。よって、実施の形態1のように、2段の静電レンズを配置して、像の回転を打ち消すことで、かかる位置ずれを抑制できる。特に、マルチビーム方式においてその効果が大きいものとなる。
上述した例では、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転を補正する例を示したが、これに代わり、ダイナミックフォーカスに依存する像の倍率変動を補正してもよい。
図11は、実施の形態1の比較例となるダイナミックフォーカスに依存する像の倍率変動の一例を示す図である。例えば、1段の静電レンズのみでダイナミックフォーカスを行った場合、図11に示すように、静電レンズへ印加する電圧を変化させていくと、それに伴って、倍率変動に伴う位置ずれ量も大きくなる。図11の例では、80μm角の照射エリアのコーナーでの倍率変動に伴う位置ずれ量の一例を示している。例えば、静電レンズへ印加する電圧が60Vの場合に、像の位置ずれ量は1×10−9mとなり、100Vの場合に、像の位置ずれ量は1.65×10−9mとなってしまう。特に、マルチビーム方式では、1回のショットで同時に照射されるビーム本数が多いため、マルチビームの照射エリアは、シングルビーム方式のショットエリアに比べて大きい。そのため、マルチビームの照射エリアに倍率変動が生じると、各ビームの照射位置のずれが大きくなってしまう。もちろん、シングルビーム方式においても、今後、さらなる描画精度が追求される中でかかる問題は大きなものとなっていくことが予想される。
図12は、実施の形態1における2段の静電レンズで電圧を可変にした際の像の倍率変動の一例を示す図である。ここでは、例えば、1段目の静電レンズ212に100Vの電圧を印加した際に、2段目の静電レンズ214に印加する電圧を可変に振った場合の一例を示している。図12では、例えば、2段目の静電レンズ214に27Vの電圧を印加した場合に、倍率変動が0(倍率変動率が1)となった。よって、かかる1段目の静電レンズ212に印加する電圧V1と2段目の静電レンズ214に印加する電圧V2との電圧比V1/V2を常に維持するように連動させて電圧調整を行うことで、ダイナミックフォーカスに依存する像の倍率変動が生じないようにできる。
そこで、かかるダイナミックフォーカスに依存する像の倍率変動が生じないようにできる電圧比を予め、シミュレーション或いは実験等により求め、制御回路110に設定する。描画時には、かかる電圧比を維持するように1段目の静電レンズ212に印加する電圧V1と2段目の静電レンズ214に印加する電圧V2を制御すればよい。かかる構成により、試料面上でマルチビーム像の倍率変動を不変動にできる。
図13は、実施の形態1における2段の静電レンズの効果の他の一例を説明するための概念図である。シングルビーム方式では、図13(a)に示すように、照射エリアが1本のビームのショット図形11となるので、ダイナミックフォーカスに依存する倍率変動が生じてもその位置誤差は小さくて済む。これに対して、マルチビーム方式では、図13(b)に示すように、多数のビーム本数による多数のショット図形36が1回のショットで照射されるため、照射エリア10が大きい。よって、ダイナミックフォーカスに依存する倍率変動が生じると照射エリア10全体の倍率が変動してしまうので、シングルビーム方式と同じ倍率変動が生じた場合に各ショット図形36の位置ずれ量も大きくなってしまう。よって、実施の形態1のように、2段の静電レンズを配置して、像の倍率変動を打ち消すことで、かかる位置ずれを抑制できる。特に、マルチビーム方式においてその効果が大きいものとなる。
実施の形態2.
実施の形態1では、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転あるいは倍率変動の一方のみを補正する構成について説明したが、実施の形態2では両方を補正する構成について説明する。
図14は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。図14において、2段の静電レンズ212,214の代わりに、3段の静電レンズ212,214,216が配置された点、及び3段目の静電レンズ216用のアンプ124を追加した点以外は、図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。図14では、対物レンズ207の磁場中心付近に静電レンズ212が配置され、対物レンズ208の磁場中心付近に2段の静電レンズ214,216が配置される。
図15は、実施の形態2における3段の静電レンズで電圧を可変にした際の像の回転と倍率変動の一例を示す図である。ここでは、例えば、1段目の静電レンズ212に100Vの電圧を印加した際に、2段目の静電レンズ214に印加する電圧V2と3段目の静電レンズ216に印加する電圧V3とを可変に振った場合の一例を示している。
そこで、図15では、図示していないが、かかるダイナミックフォーカスに依存する像の回転を無回転にでき、かつ倍率変動を生じさせない3つの電圧V1,V2,V3の組み合わせをシミュレーション或いは実験等により求め、かかる3つの電圧V1,V2,V3の電圧比を求め、制御回路110に設定する。そして、かかる1段目の静電レンズ212に印加する電圧V1と2段目の静電レンズ214に印加する電圧V2と3段目の静電レンズ216に印加する電圧V3との電圧比V1:V2:V3を常に維持するように連動させて電圧調整を行う。1段目の静電レンズ212には、制御回路110から出力されたデジタル信号をアンプ120でアナログ信号(電圧)に変換し、制御電圧V1を印加する。2段目の静電レンズ214には、制御回路110から出力されたデジタル信号をアンプ122でアナログ信号(電圧)に変換し、制御電圧V2を印加する。3段目の静電レンズ216には、制御回路110から出力されたデジタル信号をアンプ124でアナログ信号(電圧)に変換し、制御電圧V3を印加すればよい。
以上のように、実施の形態2によれば、ダイナミックフォーカスに依存する像の回転と倍率変動の両方が生じないようにできる。
なお、実施の形態2では、3段の静電レンズを用いたが、これに限るものではなく、3段以上であればよい。また、図14の例では、対物レンズ207の磁場中心付近に静電レンズ212が配置され、対物レンズ208の磁場中心付近に2段の静電レンズ214,216が配置される構成を示した。しかしながら、どちらの対物レンズ側を複数段にしてもよい。或いは、両方の対物レンズに複数段の静電レンズを配置してもよい。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述したラスタースキャン動作は一例であって、マルチビームを用いたラスタースキャン動作その他の動作方法であってもよい。
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。
20 マルチビーム
22 穴
24,26 電極
30 描画領域
32 ストライプ領域
34 照射領域
36 ショットパターン
100 描画装置
101,340 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御回路
120,122,124 アンプ
150 描画部
160 制御部
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 アパーチャ部材
204 ブランキングプレート
205 縮小レンズ
206 制限アパーチャ部材
207,208 対物レンズ
212,214,216 静電レンズ
214 電流検出器

Claims (5)

  1. 試料を載置する、連続移動可能なステージと、
    荷電粒子ビームを放出する放出部と、
    複数の開口部を有し、前記複数の開口部全体が含まれる領域に前記荷電粒子ビームの照射を受け、前記複数の開口部を前記荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより、マルチビームを形成するアパーチャ部材と、
    前記アパーチャ部材の複数の開口部を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う複数のブランカーと、
    前記複数のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽するブランキングアパーチャ部材と、
    前記ブランキングアパーチャ部材を通過したマルチビームの焦点を前記試料上へと合わせる複数段の対物レンズと、
    前記複数段の対物レンズの各段に少なくとも1つ配置された、描画中にダイナミックに前記マルチビームの焦点のずれを補正する複数の静電レンズと、
    を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
  2. 前記複数段の対物レンズは2段で構成され、
    前記複数の静電レンズは、2つの静電レンズであり、前記2段の対物レンズの各段に1つずつ配置され、
    前記2つの静電レンズに印加されるそれぞれの電圧の電圧比が、試料面上でマルチビーム像が無回転になる電圧比となるように、前記2つの静電レンズにそれぞれ電圧が印加されることを特徴とする請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
  3. 前記複数段の対物レンズは2段で構成され、
    前記複数の静電レンズは、2つの静電レンズであり、前記2段の対物レンズの各段に1つずつ配置され、
    前記2つの静電レンズに印加されるそれぞれの電圧の電圧比が、試料面上でマルチビーム像の倍率が不変動になる電圧比となるように、前記2つの静電レンズにそれぞれ電圧が印加されることを特徴とする請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
  4. 前記複数段の対物レンズは2段で構成され、
    前記複数の静電レンズは、3つの静電レンズであり、前記2段の対物レンズの一方に2段の静電レンズが配置され、前記2段の対物レンズの他方に1段の静電レンズが配置され、
    前記3つの静電レンズに印加されるそれぞれの電圧の電圧比が、試料面上でマルチビーム像が無回転になると共に、試料面上でマルチビーム像の倍率が不変動になる電圧比となるように、前記3つの静電レンズにそれぞれ電圧が印加されることを特徴とする請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
  5. アパーチャ部材が有する複数の開口部全体が含まれる領域に荷電粒子ビームの照射を受け、前記複数の開口部を前記荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより形成されたマルチビームの焦点を、複数段の対物レンズを用いて試料上へと合わせる工程と、
    前記複数段の対物レンズの各段に少なくとも1つ配置された複数の静電レンズによって、描画中にダイナミックに前記マルチビームの焦点のずれを補正する工程と、
    を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
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