JP2013194138A - ポリフェニレンエーテル粒子を含む分散液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】PPE粒子を含む樹脂組成物と溶剤とを含む分散液であって、(1)該PPE粒子の全粒子数の60%以上は、長径0.3μm以上8μm以下の大きさであり、(2)該PPE粒子は、PPEを80質量%以上含有し、そして(3)該PPE粒子に含有されるPPEの数平均分子量は、8,000〜40,000である、を特徴とする前記分散液。
【選択図】なし
Description
PPEは、誘電率、誘電正接が低く、高周波特性、すなわち、誘電特性に優れるため、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板用の材料として好適である。
一方、PPEは、有機溶剤への溶解性に欠けるため、プリント配線板製造に必要なプリプレグを製造する際、クロロホルムのようなハロゲン系溶剤に溶解させてワニスを製造する、或いは、50℃以上に加熱したトルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤に溶解させてワニスを製造する必要があった。
また、特許文献3、4には、PPEとスチレンブタジエンコポリマーなどの架橋性樹脂とトリアシルイソシアヌレートなどの架橋助剤を含む樹脂組成物を含むトルエン樹脂液を、一旦35℃に加熱した後冷却し、PPEと架橋性樹脂と架橋助剤を含む樹脂組成物の粒子が分散している不透明な分散液とする方法が記載されている。
さらに、特許文献5には、平均粒径10〜50μmのPPE樹脂粉末をメチルエチルケトン等の溶剤に分散させる方法が、そして特許文献6には、106μm以下のPPE粒子を水系に分散させる方法が記載されている。
また、特許文献2に記載の低分子量・反応性官能化PPEを用い溶剤への溶解性を高める方法は、低分子量化に伴う耐熱性低下の問題は改善されるものの、末端の水酸基を封止していることに起因すると推測される問題を有していた。すなわち、このようなPPEは、ガラスクロス等の基材又は銅箔等との接着性が十分でなく、積層板の場合の層間の剥離強度、又は該PPEと銅箔等との剥離強度が低い、或いは耐吸水性及びはんだ耐熱性が十分でないという問題があった。
以上のように、PPEが本来有する低い誘電率及び誘電正接を有し、かつ、耐熱性、及び接着性に優れる、常温塗工可能な樹脂分散液は従来技術においては見出されていないのが現状である。従って、PPEを構成成分としつつ上記のような特性を有する常温塗工可能な樹脂分散液が強く望まれていた。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
(1)該PPE粒子の全粒子数の60%以上は、長径0.3μm以上8μm以下の大きさであり、
(2)該PPE粒子は、PPEを80質量%以上含有し、そして
(3)該PPE粒子に含有されるPPEの数平均分子量は、8,000〜40,000である、
を特徴とする前記分散液。
本発明の一態様は、PPE粒子を含む樹脂組成物と溶剤とを含む分散液である。
本態様の樹脂組成物が含むPPEは、好ましくは、下記一般式(1):
尚、本願明細書中、PPEとは、置換又は非置換のフェニレンエーテル単位構造から構成されるポリマーを意味するが、本発明の作用効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含んでもよい。
長径0.3μm以上8μm以下の粒子の割合は高い方が好ましく、全ての粒子が前記粒径範囲に入るのがさらに好ましい。
分散液から溶剤含有量が1質量%以下となるように、該溶剤の沸点以下の温度で溶剤を乾燥除去する。次いで、溶剤が乾燥除去された分散液1.5gに23℃±3℃の質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤を20g加える。23℃±2℃の恒温室で、5分毎に激しく振とうしながら、1時間経過させる。次いで、同恒温室内で24時間静置させる。次いで、上澄み液を取り除き、質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤を5g加え、激しく振とうした後、同恒温室内で24時間静置させる。次いで上澄み液を取り除き、質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤を5g加える(上述のPPE粒子(A)の最大長径を求めた際と同一の手順)。次いで、溶剤を乾燥して除去した後に、クロロホルム中に展開し、不溶分をろ別して除去し、抽出物を得る(以下、この抽出物を「抽出物(A)」ともいう。)。抽出物(A)中のPPE量をカーボン核磁気共鳴分光法にて定量を行い、PPE粒子(A)中のPPE含有割合とする。
実施例1の方法で得られた抽出物(A)のカーボン核磁気共鳴分光法スペクトル、及び標準物質のカーボン磁気共鳴分光法スペクトルを参考に図1に示す。まず、標準物質のNMRスペクトルから、PPEに由来する16.8、114.4、 132.5、145.4、154.7ppmの各信号強度のテトラメチルシランの信号強度との比の和を、標準物質の信号強度値(1)とする。次いで、実施例1のNMRスペクトルにおいて、標準物資と同じ信号位置の16.8、114.4、 132.5、145.4、154.7ppmの各信号強度のテトラメチルシランの信号強度との比の和を、実施例1の信号強度値(X2)とする。X1とX2の値を用い以下の式:
PPE粒子中のPPE含有割合=(X2/X1)×100=83%
によりPPE粒子(A)中のPPE含有割合を求めた。
PPE粒子(A)中のPPE含有割合は高い方が好ましく、全てPPE成分で構成されるのがより好ましい。
ここで、PPE粒子(A)中のPPEの数平均分子量は、以下の測定によって求めた値とする。上述のPPE粒子(A)中のPPE含有割合を測定した時の抽出物(A)を測定試料とし、カラムにShodex LF−804×2(昭和電工株式会社製)、溶離液に50℃のクロロホルム、検出器にRI(屈折率計)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い、同条件で測定した標準ポリスチレン試料の分子量と溶出時間との関係式から、標準ポリスチレン換算で測定される値をPPE粒子(A)の数平均分子量とする。
PPE粒子(A)の数平均分子量が8,000以上で、プリント配線板等において所望される、硬化物の耐吸水性、はんだ耐熱性、及び接着性(例えば、多層板における層間の剥離強度、又は硬化性樹脂組成物の硬化物と銅箔等との剥離強度)を良好に与える点で好ましい。また、PPE粒子(A)の数平均分子量が40,000以下で、成形時の硬化性樹脂組成物の溶融粘度が小さく、良好な成形性が得られる点で好ましい。
ここで、PPE粒子(A)の最大長径は、以下の測定によって求められる値とする。先ず、全粒子数に対する長径0.3μm以上8μm以下のPPE粒子(A)の数の割合と同様の方法で、SEM−EDX画像にて400個以上の一次粒子の長径を無作為に測定し、その最大値を最大長径とする。
ここで、PPEの溶剤保持量は、以下の方法で求めた値である。
PPE、W0(g)(5±0.1g)に23℃±2℃の溶剤約80gを加え、23℃±2℃の恒温室内で、マグネチックスターラーで2時間以上撹拌し、分散液とする。得られた分散液を、100cm3の沈降管に移し、溶剤を追加して全量を100cm3とし、分散液を軽く均一に撹拌した後、23℃±2℃の恒温室に24時間静置する。
次いで、上下2層に分かれた上澄み液を取り除き、下層(PPEとPPEとが保持する溶剤量)の質量Wを測定する。
得られたPPEの質量W0とPPEとPPEとが保持する溶剤を合わせた質量Wとから、下式:
溶剤保持量(%)=100×(W−W0)/W0
により溶剤保持量を求める。
また、24時間静置した後に、上下2層に分かれず、均一な溶液または分散液であった場合は、溶剤保持量1900%以上とする。
ここで、PPEの溶剤保持量が1500%以上となる溶剤は、特に限定はないが、芳香族有機溶剤などがPPEの種類や分子量によらず溶剤保持量1500%以上となりやすいため、好ましく用いられる。好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを単独で用いることもでき、2種類以上を混合して用いることもできる。また、PPE溶剤保持量が300%以下となる溶剤は、特に限定はしないが、アルコール類、ケトン類などの極性溶剤がPPEの種類や分子量によらず溶剤保持量300%以下となりやすいため好ましく用いられる。好ましい例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなどを単独で用いることもでき、2種類以上を混合して用いることもできる。
ここで、(A)と(B)の質量比は以下の測定によって求められる値とする。
まず、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれるPPE粒子(A)の質量を以下のように求めた値とする。上述のPPE粒子(A)のPPE含有量を求めた際と同一の手順で抽出物Aを取得し、抽出に用いた溶剤を乾燥除去し、得られた抽出物Aの質量を溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれるPPE粒子(A)の質量とする。
次に、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれるPPE(B)の質量を以下のように求めた値とする。上述の手順に従ってPPE粒子(A)中のPPE含有割合を測定した際の上澄み液を全て回収する。上澄み液有の溶剤を乾燥除去し、前記溶剤に可溶な硬化性樹脂組成物の質量を測定する。
次いで、前記溶剤に可溶な硬化性樹脂組成物中のPPE含有割合を、PPE粒子(A)中のPPE含有割合の測定と同様に核磁気共鳴分光法にて定量して求める。上述の方法で得られた、前記溶剤に可溶な硬化性樹脂組成物の質量と、前記可溶な固化性樹脂組成物中のPPEの含有割合から、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれるPPE成分(B)の質量を求める。
上述の方法で得られた、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれる、質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶なPPE粒子(A)の質量と、前記溶剤に可溶なPPE(B)の質量とから、(A)と(B)の質量比を求める。
また、前記PPE(B)の数平均分子量は、5,000〜40,000であることが好ましい。PPE(B)の数平均分子量の好ましいより好ましい範囲は5,500以上30,000以下であり、更に好ましい範囲は6,000以上25,000以下である。
ここで、PPE(B)の数平均分子量は、以下の測定によって求めた値とする。上述の手順に従ってPPE粒子(A)中のPPE含有割合を測定した際の上澄み液を全て回収する。該上澄み液を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで可溶成分を分離し、PPEの分離液を得る。次いで、PPE分離液に含まれるPPE(B)の分子量を、PPE粒子(A)中のPPEの数平均分子量の測定と同じ方法でGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算で測定される値をPPE(B)の数平均分子量とする。
PPE(B)の数平均分子量が5,000以上であると、該分散液を用いて製造されるプリント配線板の電気特性が良好となるため好ましい。PPE(B)の数平均分子量が40,000以下で、PPE粒子分散液を含むワニスを基材に含浸させて得られるプリプレグの、成形時の硬化性樹脂組成物の溶融粘度が小さく、良好な成形性が得られる点で好ましい。
ここで、分散液中に含まれるPPE成分の硬化性樹脂成分に占める割合は以下の方法で求めた値とする。
まず、分散液中の硬化性樹脂組成物の量を以下の方法で求める。
分散液から溶剤含有量が1質量%以下となるように、該溶剤の沸点以下の温度で溶剤を乾燥除去する。次いで、溶剤が乾燥除去された分散液1.5gに23℃±2℃のクロロホルム50gを加える。23℃±2℃の恒温室内で、5分間毎に激しく振とうさせながら、1時間経過させた後、ろ過によりクロロホルムに溶解した硬化性樹脂組成物を回収する。続いて、抽出残さに23℃±2℃のクロロホルム50gを加え、同様に23℃±2℃の恒温室内で、1時間、5分間毎に激しく振とうさせた後、ろ過によりクロロホルムに溶解した硬化性樹脂成物を回収する。回収した2回分のクロロホルム溶液を合わせ、溶剤を除去して硬化性樹脂組成物を得、その重量を測定し、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれる硬化性樹脂成物の質量とする。
また、分散液中に含まれるPPE成分の量は、上述の方法で求めた、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれるPPE粒子(A)の質量と、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれるPPE(B)の質量の和として求める。
上述の方法で得られた、溶剤が乾燥除去された分散液1.5g中に含まれる硬化性樹脂組成物の質量とPPE成分の質量とから、PPE成分の硬化性樹脂組成物に対する質量比を求める。
本態様の硬化性樹脂組成物に含まれるPPE1分子当たりの平均フェノール性水酸基数は、0.3個以上であることができる。PPE1分子当たりの平均フェノール性水酸基数は、好ましくは0.7個以上であり、より好ましくは0.9個以上であり、更に好ましくは1.05個以上である。1分子当たりの平均フェノール性水酸基数が0.3個以上のPPEを硬化性樹脂組成物において用いると、該樹脂組成物の硬化物と基材(例えば、ガラスクロス等)との接着性、又は該樹脂組成物の硬化物と銅箔等の金属箔との接着性が良好となり、プリント配線板の耐吸水性、はんだ耐熱性、及び接着性(例えば、多層板における層間の剥離強度、又は硬化物と銅箔等との剥離強度)に優れるため好ましい。該平均フェノール性水酸基数は、硬化性樹脂組成物の硬化物と基材とを含む複合体(例えば積層板)の吸水性が高くなるのを抑制できる観点、また、該複合体の誘電率と誘電正接が高くなるのを抑制できる観点から、好ましくは2.0個以下、より好ましくは1.85個以下、更に好ましくは1.6個以下である。
1分子当たりの平均フェノール性水酸基数=水酸基の数/数平均分子数
に従って、PPE1分子当たりの平均水酸基数を算出する。
PPEの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定される値である。典型的には、カラムにShodex LF−804×2(昭和電工株式会社製)、溶離液に50℃のクロロホルム検出器にRI(屈折率計)を用いてGPC測定を行い、同条件で測定した標準ポリスチレン試料の分子量と溶出時間との関係式から、数平均分子量を算出する。
また、(A−1)低分子量・末端官能化PPEの1分子当たりの平均フェノール性水酸基数は好ましくは0.5個未満であるが、より好ましくは0.2個以下であり、更に好ましくは0.1個以下である。該平均フェノール性水酸基数が0.5個未満であれば、低分子量・末端官能化PPEを含有する硬化性樹脂組成物が低い誘電率及び誘電正接の硬化物を形成できることに加えて良好な硬化反応性を有するため、機械特性及び耐熱性に優れた硬化物が得られる点で好ましい。平均フェノール性水酸基数は少ないほど好ましく、0個であってもよいが、フェノール性水酸基を他の官能基で変性させる効率の観点から、好ましくは0.001個以上、より好ましくは0.01個以上であることができる。
(A−1)1分子当たりの平均フェノール性水酸基数が0.5個未満であり、かつ数平均分子量が1,000以上8,000以下であるPPE成分、及び
(A−2)1分子当たりの平均フェノール性水酸基数が0.5個以上であり、かつ数平均分子量が8,000を超えるPPE成分
を含み、(A−1)と(A−2)との合計質量100質量%を基準として、(A−1)の含有量が1質量%以上40質量%未満であり、かつ(A−2)の含有量が60質量%超99質量%以下である。
本態様においては、PPEは、好ましくは、(A−1)及び(A−2)から実質的になり、より好ましくは(A−1)及び(A−2)からなる。
(A−2)成分の使用により、分子量の大きいPPEに由来する高いガラス転移温度が得られる。また、好ましい態様における(A−2)成分の使用により、さらに末端水酸基に由来する良好な接着性とが得られ、優れた耐熱性、機械特性、及び接着性という利点が得られる。
(A−2)成分の1分子当たりの平均フェノール性水酸基数は、良好な接着性を実現する観点から0.5個以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.8個以上、より好ましくは1.6個以上である。該平均フェノール性水酸基数は多い方が上記の効果を得る点で好ましいが、硬化性樹脂組成物の硬化物と基材とを含む硬化物複合体の吸水性が高くなるのを防ぐ、或いは、誘電率と誘電正接が高くなるのを防ぐ観点から、好ましくは2個以下、より好ましくは1.85個以下、更に好ましくは1.6個以下であることができる。
(A−1)と(A−2)との合計100質量%基準での(A−2)の含有量は、高いガラス転移温度及び良好な接着性を実現する観点から好ましくは60質量%以上、より好ましくは60質量%超、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、成形時の硬化性樹脂組成物の溶融粘度を小さくし、良好な成形性を得るという観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.8質量%以下、更に好ましくは98.5質量%以下である。
不飽和カルボン酸又は酸無水物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。反応はPPEと不飽和カルボン酸また酸無水物を100℃〜390℃の温度範囲で加熱することによって行われる。この際ラジカル開始剤を共存させてもよい。溶液法と溶融混合法の両方が使用できるが、押出し機等を用いる溶融混合法の方が簡便に行うことができ、本発明の目的に適している。不飽和カルボン酸又は酸無水物の割合は、PPE100重量部に対し、0.01重量部以上5.0重量部以下、好ましくは0.1重量部以上3.0重量部以下である。
本発明の別の態様は、上述したPPE粒子(A)を含む硬化性樹脂組成分に更に架橋型硬化性樹脂、例えば、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマー(C)を含有するプリプレグを提供する。前記硬化性樹脂組成物は、プリプレグ中のPPE成分(A+B)と架橋型硬化性樹脂(C)との合計100質量部に対して、架橋型硬化性樹脂(C)を好ましくは5〜95質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは20〜70質量部含有する。該モノマー(C)の量が5質量部以上である場合、成形性が良好である点で好ましく、95質量部以下である場合、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を形成できる点で好ましい。
本態様に含まれる硬化性樹脂組成物は、好ましくは、架橋型硬化性樹脂(C)と(反応)開始剤(D)をさらに含む。
開始剤(D)としては、ビニルモノマーの重合反応を促進する能力を有する任意の開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤として使用できる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与えることができるの観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
好ましい態様においては、プリプレグ中のPPE成分(A+B)とモノマー(C)との合計100質量部に対して、架橋型硬化性樹脂(C)の含有量が10質量部以上70質量部以下、及び開始剤(D)の含有量が1質量部以上10質量部以下である。
特に、本発明の硬化性樹脂組成物が更に難燃剤を含む場合、本発明の有する良好な成形性、耐吸水性、はんだ耐熱性、及び接着性(例えば、多層板における層間の剥離強度、又は硬化物と銅箔等との剥離強度)に優れるプリント配線板等が得られる利点に加え、難燃性を付与できる点で好適である。
難燃剤としては、燃焼のメカニズムを阻害する機能を有するものであれば特に制限されず、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛等の無機難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジェフェニルエタン、4,4−ジフブロモフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物、等が挙げられる。中でも、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えられる観点からデカブロモジェフェニルエタン等が好ましい。
難燃剤の使用量は、使用する難燃剤によって異なり、特に限定するものでないが、UL規格94V−0レベルの難燃性を維持する観点から、PPE(A)とモノマー(C)との合計100質量部に対して好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を小さく維持できる観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
[PPE粒子(A)を含む樹脂組成物と溶剤とを含む分散液の製法]
本発明のPPE粒子(A)を含む樹脂組成物と溶剤から構成される分散液は、分散液中に含まれるPPE粒子(A)が本発明の要件を満たせば特に限定されるものではないが、例えば、PPE粒子を有機溶剤中に分散し、又はPPEを有機溶剤中で粉砕し、所定の粒度のPPE粒子が分散した状態とする方法(以下、「破砕分散法」ともいう。)を挙げることができる。
本発明のPPE粒子を含む樹脂組成物と溶剤から構成される分散液中に存在するPPE粒子(A)の粒径、PPE含有割合、PPE分子量、は、例えば、後述の「破砕分散法」において、有機溶剤に加えるPPEを予め調整しておくことも可能であるし、有機溶剤中での破砕強度や用いる溶剤を変えることによって調整することもできる。
ポリフェニレンエーテルの粒子を有機溶剤中に分散し、又はPPEを有機溶剤中で粉砕し、所定の粒度のPPE粒子が分散した状態とする方法としては、以下の2つを挙げることができる。
(1)粒度を調整したPPE粒子を溶剤中に分散させる方法
粒度の調整方法としては湿式又は乾式での粉砕や篩い分けが挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。
□使用する溶剤としては特に限定はないが、PPEの溶剤保持量が1500%以上となる溶剤(a)とPPEの溶剤保持量が300%以下となる溶剤(b)を、その質量比(a):(b)が90:10〜99.9:0.1となる混合比で用いると、PPE粒子の流動性と分散安定性を確保しながら、且つ、基材への塗工性に優れ、基材とPPE粒子を含む樹脂組成物の接着性に優れるプリプレグが得られるため好ましい。PPEの溶剤保持量が1500%以上となる溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、PPEの溶剤保持量が300%以下の溶剤は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これら溶剤を、使用するPPEにより、適時選択して用いることができる。
□かかる有機溶剤への分散は、塗工温度との差が10℃以下の温度で行うことが好ましい。これにより、塗工までの保管期間又は塗工中にPPEの析出量が増えて、粘度の増加やバラツキが生じることによる均一性の低下を避けることができる。
□使用する溶剤としては特に限定はないが、PPEの溶剤保持量が1500%以上となる溶剤(a)とPPEの溶剤保持量が300%以下となる溶剤(b)を、その質量比(a):(b)が90:10〜99.9:0.1となる混合比で用いると、PPE粒子の流動性と分散安定性を確保しながら、且つ、基材への塗工性に優れ、基材とPPE粒子を含む樹脂組成物の接着性に優れるプリプレグが得られるため好ましい。PPEの溶剤保持量が1500%以上となる溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、PPEの溶剤保持量が300%以下の溶剤は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これら溶剤を、使用するPPEにより、適時選択して用いることができる。
PPEの溶剤保持量が1500以上の溶剤が一定以上であれば、PPE粒子が溶剤を粒子内に取り込み膨潤し、粘度が増加し、分散安定性が増加し、基材への塗工量(樹脂含量)も増える。また、溶剤に溶けている樹脂成分と、膨潤したPPE粒子中の樹脂成分が同等となり、基材への浸漬性が安定して、均一な塗工ができる。膨潤性が足りないと、ワニス含浸部でPPE粒子が基材/ガラスクロス/織物構造に濾されて、含浸ロールに堆積してしまうという問題もある。他方で、PPEの溶剤保持量が1500%以上の溶剤が一定以下であれば、ポリフェニレン粒子の膨潤によるゲル化・固化を抑制し、塗工が可能となり、経時的な膨潤・ゲル化も抑制でき、保存安定性に優れるものとなる。
□PPE粒子の有機溶剤への分散又はPPEの有機溶剤中での破砕は、PPE粒子が析出を開始するよりも低い温度で行うことで、PPEの溶解又は粒子の過剰な微細化による増粘を防ぐことができる。また、PPEの有機溶剤への分散又はPPEの有機溶剤中での破砕を、塗工温度との差が10℃以下の条件で行うことにより、保管中又は塗工中に、PPE粒子の析出量が変化して、均一な塗工ができなくなるのを防ぐことができる。
PPE粒子(A)が分散した状態のワニスを得る方法として、得られるプリプレグ中に含まれるPPE粒子(A)が本発明の要件を満たせば特に限定されるものではないが、PPE粒子(A)の分散液を得た後に、他の成分を添加してワニスを得る方法が挙げられる。
また、本願発明のPPE粒子(A)を含む樹脂組成物と溶剤とで構成される分散液は、PPE粒子(A)の分散液を得た後に、他の成分を添加してワニスを得る方法が挙げられる。
本発発明の別の態様は、PPE粒子(A)を含む樹脂組成物と基材とで構成されるプリプレグを提供する。例えば上述のPPE粒子(A)を含む分散液を含むワニスを、ガラスクロス等である基材に含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより、プリプレグを製造できる。
基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラス布;アスベスト布、金属繊維布、及びその他合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム;等を単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
上記プリプレグに占める硬化性樹脂組成物の割合は、プリプレグ全量100質量部に対して、30〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量部である。上記割合が30質量部以上である場合、プリプレグを、例えば、電子基板形成用として使用した際に優れた絶縁信頼性が得られ、80質量部以下である場合、例えば、得られる電子基板が曲げ弾性率等の機械特性に優れる。
本発明の別の態様は、上述した本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物と、基材とを含むプリント配線板を提供する。本発明のプリント配線板は、典型的には、上述した本発明のプリプレグを用いて、加圧加熱成型する方法で形成できる。基材としてはプリプレグに関して前述したのと同様のものが挙げられる。本発明のプリント配線板は、上述したような硬化性樹脂組成物を用いて形成されていることにより、優れた絶縁信頼性及び機械特性を有することができる。
以下の実施例、比較例及び試験例中の各物性は、以下の方法によって測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析(GPC)を用い、分子量既知の標準ポリスチレンの溶出時間との比較で数平均分子量を求めた。
測定装置にはHLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラム:Shodex LF−804×2(昭和電工株式会社製)、溶離液:50℃のクロロホルム、検出器:RI、の条件で測定を行った。
吸光度から求めたPPEに含まれるフェノール性水酸基数と、平均分子量から求めたPPEの分子数とを用い、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数を求めた。
先ず、高分子論文集,vol.51,No.7(1994),第480頁記載の方法に準拠し、PPEの塩化メチレン溶液にテトラメチルアンモニウムハイドロオキシド溶液を加えて得た試料の波長318nmにおける吸光度変化を紫外可視吸光光度計で測定した値から水酸基の数を求めた。
別途、PPEの数平均分子量を、上記(1)に従いゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求め、この値を用いて、PPEの分子数を求めた。これらの値から、下記式:
1分子当たりの平均フェノール性水酸基数=水酸基の数/数平均分子数
に従って、PPE1分子当たりの平均水酸基数を算出した。
積層板の1GHzにおける誘電率及び誘電正接を、インピーダンスアナライザーを用いて測定した。
測定装置としてインピーダンスアナライザー(4291B op.002 with 16453A,16454A、AgilentTechnologies社製)を用い、試験片厚さ:約2mm、電圧:100mV、周波数:1mmHz〜1.8GHzの条件で測定し、掃引回数100回の平均値として求めた。
積層板を吸水加速試験に供し、増加した質量から吸水率を求めた。
積層板を50mm角に切り出し試験片を作製した。該試験片を130℃で30分乾燥した後、質量を測定し、加速試験前の質量(g)とした。次いで、温度:121℃、圧力:2atm、時間:4時間、の条件で加速試験を行った後の質量を測定し、加速試験後の質量(g)とした。
加速試験前の質量(g)と加速試験後の質量(g)とを用い、下記式:
吸水率(質量%)=(加速試験前の質量―加速試験後質量)/加速試験前の質量×100
により吸水率を算出し、試験片4枚の測定値の平均値を求めた。
上記(4)に記載の吸水率の測定後の積層板を用い、288℃及び260℃でのはんだ耐熱試験を行った。吸水加速試験後の積層板を、288℃又は260℃のはんだ浴に20秒間浸漬し、目視による観察を行った。288℃のはんだ浴へ浸漬しても、膨れ、剥離及び白化の何れも確認されなかった積層板については「はんだ耐熱288℃」と評価した。また、288℃のはんだ浴への浸漬により、膨れ、剥離及び白化の何れか1つ以上が発生したが、260℃のはんだ浴へ浸漬しても、膨れ、剥離及び白化の何れも確認されなかった積層板については「はんだ耐熱260℃」と評価した。また、260℃のはんだ浴への浸漬により、膨れ、剥離及び白化の何れか1つ以上が発生した積層板は「不合格」と評価した。
銅張積層板の銅箔を一定速度で引き剥がす際の応力を測定した。後述の方法で作製した、35μm銅箔(GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)を用いた銅張積層板を、幅15mm×長さ150mmのサイズに切り出し、オートグラフ(AG−5000D、株式会社島津製作所製)を用い、銅箔を除去面に対し90℃の角度で50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重の平均値を測定し、5回の測定の平均値を求めた。
プリプレグを180°に折り曲げた際に、樹脂粉落ち、あるいは樹脂剥離が生じるかを調べ、評価した。まず、プリプレグを200mm×300mmの大きさにカッター刃を用いて切り出した。次いで、長方形の長辺側2辺が重なるようにプリプレグを180°に折り曲げた後、元に戻した。次いで、長方形の短辺側2辺が重なるようにプリプレグを180°に折り曲げた後、元に戻した。上述の一連のプリプレグの取り扱いにおいて、樹脂粉落ち、又は樹脂層の剥がれなどの問題がなかったものは「合格」と評価した。一方、樹脂粉落ちが激しかったものは「不合格/樹脂粉落ち」、また、樹脂層の剥がれが著しかったものは「不合格/樹脂剥がれ」と評した。
前記したように、PPE粒子(A)の最大長径を求めた。
前記したように、上記割合を求めた。
前記したように、上記割合を求めた。
前記したように、上記分子量を求めた。
前記したように、上記質量比を求めた。
前記したように、上記分子量を求めた。
B型粘度計、ローターNo.3を用い、25℃、30rpm、30秒の条件で粘度を測定した。
ガラス製の50mlサンプル管に分散液35gを入れ、23℃の恒温室に3日間静置した。PPE粒子の沈降などによる分離がなく、また、流動性を保持したものを「合格」とした。また、PE粒子の沈降などによる分離が生じたものを「分離」、流動性がないものを「ゲル化」と評した。
90℃に加温されたオイルバスに10Lのフラスコを設置し、フラスコ内部に毎分30mlで窒素ガスを導入した。以降、操作は常に窒素ガス気流下で行った。ここに、PPE1000g、及びトルエン3000gを入れ、攪拌溶解させた。更に80gのビスフェノールAをメタノール350gに溶かした溶液を上記フラスコに攪拌しながら加えた。5分間攪拌を続けた後、6質量%ナフテン酸コバルトミネラルスピリット溶液3mlを注射器で加え、5分間攪拌を続けた。次いで、ベンゾイルパーオキサイド溶液375gにトルエン1125gを加えて、ベンゾイルパーオキサイド濃度が10質量%になるように希釈した溶液を滴下ロートに入れ、上記フラスコに2時間かけて滴下していった。滴下終了後、更に2時間加熱及び攪拌を続け、低分子量化PPEを含む反応液を得た。得られた低分子量化PPEの数平均分子量は2,800であり、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数は1.96個であった。
PPE(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.84個)100重量部と無水マレイン酸1.5重量部、および2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、日本油脂製)1.0重量部を室温でドライブレンドした後、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数230rpmの条件で2軸押出し機により押出し、PPEと無水マレイン酸との反応生成物を得た。得られたPPEと無水マレイン酸との反応生成物の数平均分子量は17,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数は0.95個であった。
トルエンとメタノールの混合溶剤(質量比95:5)147重量部をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら、PPE(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.84個)32.3部、スチレン系エラストマー(SOE L606、旭化成ケミカルズ製)3.6重量部を加え、2時間撹拌した。次いで、ホモミキサー(HM−300型版 アズワン社製)を用いて、25℃、8,000回転、30分の条件で、ポリフェニレンエーテルを解砕し、PPE粒子の分散液Aを得た。PPE分散液Aは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は1050mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Aには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大粒径は5μm、長径0.3μm〜3μmの割合は86%、PPE含有割合は95質量%であった。
得られたPPE分散液Aに、トリアリルイソシアヌレート(日本化成製)21.3重量部、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、日油製)2.3重量部を加え、均一に撹拌した後、デカブロモジフェニルエタン(SAYTEX8010、アルベマールジャパン製)15.9部、シリカフィラー(球状シリカ、龍森製)24.6重量部を加え均一に撹拌し、塗工用ワニスを得た。
次いで、得られたワニスを、厚さ約0.1mmのEガラス製ガラスクロス(2116スタイル、旭シェーベル製)に含浸させ、スリットで余分なワニスを掻き落とした後、溶媒を乾燥除去し、樹脂含有量60質量%のプリプレグAを得た。該プリプレグAは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
トルエンとメタノールの混合溶剤(質量比95:5)210重量部をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら、PPPE(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.84個)53.3部、ポリスチレン(型番、PSジャパン製)1.5重量部を加え、2時間撹拌した。次いで、ホモミキサー(HM−300型版 アズワン社製)を用いて、25℃、8,000回転、30分の条件で、ポリフェニレンエーテルを解砕し、PPE粒子の分散液Bを得た。PPE分散液Bは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は770mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Bには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は6μm、長径0.3μm〜3μmの割合は88%、PPE含有割合は93質量%であった。
得られたPPE分散液Bに、トリアリルイソシアヌレート(日本化成製)22.8重量部、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、日油製)1.5重量部を加え、均一に撹拌した後、デカブロモジフェニルエタン(SAYTEX8010、アルベマールジャパン製)19.8部を加え均一に撹拌し、塗工用ワニスを得た。
次いで、得られたワニスを、厚さ約0.1mmのEガラス製ガラスクロス(2116スタイル、旭シェーベル製)に含浸させ、スリットで余分なワニスを掻き落とした後、溶媒を乾燥除去し、樹脂含有量60質量%のプリプレグBを得た。該プリプレグBは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
トルエンとメタノールの混合溶剤の量を158重量部とする以外は実施例2と同様の方法で、PPE粒子の分散液Cを得た。PPE分散液Cは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は1410mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Cには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は7μm、長径0.3μm〜3μmの割合は66%、PPE含量は92質量%であった。
次いで、得られたPPE粒子分散液Cを用いる以外は実施例2と同様の方法で、樹脂含有量60質量%のプリプレグCを得た。該プリプレグCは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
実施例2で用いたPPEに代えて、PPE(S201A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量25,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.88個)を用いた以外は実施例2と同様の方法で、PPE粒子の分散液Dを得た。PPE分散液Dは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は1880mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Dには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は6μm、長径0.3μm〜3μmの割合は90%、PPE含量は96質量%であった。該プリプレグDは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
実施例2で用いたPPEに代えて、PPE(S203A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量10,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.80個)を用いた以外は実施例2と同様の方法で、PPE粒子の分散液Eを得た。PPE分散液Eは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は1180mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Eには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は5μm、長径0.3μm〜3μmの割合は89%、PPE含量89質量%であった。該プリプレグEは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
実施例2で用いたPPEに代えて、PPEと無水マレイン酸との反応物(製造例3参照)を用いる以外は実施例2と同様の方法を用い、PPE粒子の分散液Fを得た。PPE分散液Fは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は1820mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Fには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は7μm、長径0.3μm〜3μmの割合は70%、PPE含量は92質量%であった。該プリプレグFは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
実施例2で用いたPPE53.3部に代えて、該PPE42.6重量部と低分子量・ベンジル化PPE(製造例1参照)10.7重量部とを用いる以外は実施例2と同様の方法で、PPE粒子の分散液Gを得た。PPE分散液Gは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は810mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Gには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は5μm、長径0.3μm〜8μmの割合は90%、PPE含量は90質量%であった。該プリプレグGは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
トルエン210重量部をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら、PPPE(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.84個)53.3部、ポリスチレン(型番、PSジャパン製)1.5重量部を加え、2時間撹拌した。次いで、ホモミキサー(HM−300型版 アズワン社製)を用いて、25℃、8,000回転、30分の条件でPPEの解砕を試みた。ところが、開始15分後には完全にゲル化してしまい、分散液の対流が止まってしまい、破砕が進まなかった。また、分散液はグリース状になり、続く塗工を行うことが出来なかった。
トルエンとメタノールの混合溶剤(質量比85:15)210重量部をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら、PPPE(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.84個)53.3部、ポリスチレン(型番、PSジャパン製)1.5重量部を加え、2時間撹拌した。次いで、ホモミキサー(HM−300型版 アズワン社製)を用いて、25℃、8,000回転、30分の条件で、PPEを解砕し、PPE粒子の分散液Hを得た。PPE分散液Hは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は330mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Hには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は8μm、長径0.3μm〜3μmの割合は55%、PPE含有割合は97質量%であった。
得られたPPE分散液Hに、トリアリルイソシアヌレート(日本化成製)22.8重量部、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、日油製)1.5重量部を加え、均一に撹拌した後、デカブロモジフェニルエタン(SAYTEX8010、アルベマールジャパン製)19.8部を加え均一に撹拌し、塗工用ワニスを得た。
次いで、得られたワニスを、厚さ約0.1mmのEガラス製ガラスクロス(2116スタイル、旭シェーベル製)に含浸させ、スリットで余分なワニスを掻き落とした後、溶媒を乾燥除去し、樹脂含有量60質量%のプリプレグHを作成した。この時、ワニス含浸部位に浸漬させているロールに、ワニス成分が固着してしまい、10m以上の連続塗工ができなかったが、得られたプリプレグを続く評価に供した。
該プリプレグHは、樹脂の粉落ちしやすく、取り扱い性に欠けるものであった。
トルエンとメタノールの混合溶剤(質量比75:25)210重量部をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら、PPPE(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数1.84個)53.3部、ポリスチレン(型番、PSジャパン製)1.5重量部を加え、2時間撹拌した。次いで、ホモミキサー(HM−300型版 アズワン社製)を用いて、25℃、8,000回転、30分の条件で、ポリフェニレンエーテルを解砕し、PPE粒子の分散液Iを得た。PPE分散液Hは、分散安定性に欠け、約5分静置しただけでも分離が生じ、続くプリプレグの塗工を行うことができなかった。
実施例2で用いたPPEに代えて、低分子量・アリル化ポリフェニレンエーテル(製造例2参照)を用いる以外は実施例2と同様の方法を用い、PPE粒子の分散液Iを得た。PPE分散液Iは、適度な流動性と分散安定性を有しており、粘度は450mPa・sであった。また、PPE粒子分散液Iには、溶剤を乾燥除去後に質量比95:5のトルエンとメタノールの混合溶剤に不溶分として抽出されるPPEが存在し、以下の表1に示す通り、その最大長径は4μm、長径0.3μm〜3μmの割合は71%、PPE含量は88質量%であった。該プリプレグIは、樹脂の粉落ちや剥がれが無く、取り扱い性に優れるものであった。
実施例1〜7、比較例2と4で得られたプリプレグA〜Iを用いて基板試料を作製し、電気特性(誘電率、誘電正接)、吸水率、吸水後のはんだ耐熱、銅箔剥離強度を比較評価した。
吸水率、及び吸水試験後のはんだ耐熱性を評価するための試料は次の方法で作製した。実施例又は比較例で得たプリプレグを2枚重ね、その上下に厚み12μmの銅箔(GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)を重ね合わせたものを、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって両面銅張積層板を得た。次いで、前記銅張積層板を100mm角に切り出し、銅箔をエッチングにて除去し、吸水率、及び吸水試験後のはんだ耐熱性を評価するための試料を得た。
上記のように、プリプレグ、両面銅張積層板(銅箔:12μm及び35μmの2種)、又は積層板を用い、銅箔剥離強度、誘電率、誘電正接、吸水率、及び吸水後のはんだ耐熱性を測定した。結果を以下の表1に示す。
一方、PPE粒子(A)の長径0.3μm〜3μmの割合が55%である比較例2では、得られたプリプレグは、樹脂の粉落ちしやすく、はんだ耐熱性が不合格であり、また、低分子量PPEとアリルグリシジルエーテルとの反応物を用いた比較例4では、分子量の大きいPPEを用いた実施例1〜7に比較して、吸水率と銅箔剥離強度はやや劣る程度であったが、誘電正接が大きく劣っていた。
Claims (13)
- ポリフェニレンエーテル(PPE)粒子を含む樹脂組成物と溶剤とを含む分散液であって、
(1)該PPE粒子の全粒子数の60%以上は、長径0.3μm以上8μm以下の大きさであり、
(2)該PPE粒子は、PPEを80質量%以上含有し、そして
(3)該PPE粒子に含有されるPPEの数平均分子量は、8,000〜40,000である、
を特徴とする前記分散液。 - 前記PPE粒子の最大長径は8μmである、請求項1に記載の分散液。
- 前記溶剤は、PPEの溶剤保持量が1500%以上となる溶剤(a)とPPEの溶剤保持量が300%以下となる溶剤(b)の混合物であり、その質量比(a):(b)=90:10〜99.9:0.1である、請求項1又は2に記載の分散液。
- 前記溶剤(a)が芳香族有機溶剤であり、且つ、前記溶剤(b)が極性溶剤である、請求項3に記載の分散液。
- 前記分散液がPPE粒子(A)以外に、溶剤に溶存しているPPE(B)を含み、前記PPE粒子(A)と溶存PPE(B)との質量比(A):(B)は、95:5〜30:70である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散液。
- 前記溶存PPE(B)の数平均分子量は、5,000〜40,000である、請求項5に記載の分散液。
- 前記樹脂組成物に含まれるPPE成分は、該樹脂組成物を基準として10質量%以上70質量%以下の量である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散液。
- 架橋型硬化性樹脂(C)及び開始剤(D)をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散液。
- 前記架橋型硬化性樹脂(C)が、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーである、請求項8に記載の分散液。
- 前記架橋型硬化性樹脂(C)が、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)である、請求項8に記載の分散液。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分散液を含む樹脂ワニス。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分散液を含むワニスを基材に塗布し、次いで該分散液が塗布された基材から溶剤を除去して得られるプリプレグ。
- 請求項12で得られたプリプレグを構成成分として作製されたプリント配線板。
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