JP2015067675A - Ppeを含む分散液の製造方法 - Google Patents

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尚史 大谷
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Abstract

【課題】塗工性が良好な粘度を有するPPE分散液の製造方法の提供。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル(PPE)を含む樹脂組成物の分散液の製造方法であって、以下の工程:数平均分子量が8000以上であるPPEの粒子であって、該PPE粒子100質量部の内10質量部以上が、目開き106μmの篩を通過しない粒子径を有するPPE粒子を用意する工程、及び前記PPE粒子を、該PPE粒子の溶剤保持量が150%以上となる溶剤と、混合して、該PPE粒子を該溶剤で膨潤させる工程、を含む、前記方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、PPEを含む分散液の製造方法に関する。
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩、情報ネットワークを活用したサービスの拡大により、電子機器には情報量の大容量化、処理速度の高速化が求められている。デジタル信号を大容量かつ高速に伝達するためには信号の波長を短くするのが有効であり、信号の高周波化が進んでいる。ところが、高周波領域の電気信号は配線回路で減衰されやすいため、伝送特性の良いプリント配線板が必要とされる。
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、誘電率、誘電正接が低く、高周波特性、すなわち、誘電特性に優れるため、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板用の材料として好適である。
一方、PPEは、有機溶剤への溶解性に欠けるため、プリント配線板製造に必要なプリプレグやフィルム、樹脂付銅箔などのPPE組成物シートを製造する際、クロロホルムのようなハロゲン系溶剤に溶解させてワニスを製造する、或いは、50℃以上に加熱したトルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤に溶解させてワニスを製造する方法が採られており、取扱い性の観点からなお改良の余地があった。
かかる問題を解決すべく、以下の特許文献1、2には、PPE、架橋性樹脂、架橋助剤を主成分とした樹脂組成物を含むトルエン液を、一旦35℃以上に加熱した後冷却し、樹脂組成物の粒子が分散している不透明な分散液とする方法が提案されている。また、以下の特許文献3には、平均粒子径10〜50μm、数平均分子量1000〜3000のPPE粒子をメチルエチルケトン等の非ハロゲン系溶剤に分散させる方法が記載されている。さらに、以下の特許文献4には、106μm以下のPPE粒子を水系に分散させる方法が記載されている。
特開平7−292126号公報 特開平9−290481号公報 特開2008−50526号公報 特開2003−34731号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、PPEと架橋性樹脂と架橋助剤を含む樹脂組成物の粒子の分散液が非常に高粘度になるため、基材への塗工に必要な流動性が得られ難い点で、なお改善の余地があった。
分散液の流動性を向上させる方法としては、溶媒量の比率を高めて固形分率を下げる方法や、樹脂組成物の粒子径を大きくする方法等がある。しかしながら、固形分率を下げる方法は、乾燥工程で除去する溶剤の量が多くなり、得られるPPE組成物シートの樹脂表面がひび割れしてしまい、平滑性が損なわれる。特に、優れた誘電特性を得るために、樹脂組成物中のPPEの比率を高くした場合に、この問題が顕著に表れる。また、樹脂組成物の粒子径を大きくする方法については、該特許文献1、2には、冷却して結晶化させるPPEの平均粒子径が100μmを超えると、プリプレグの平滑性が悪化してしまうと記載されている。
また、特許文献3に記載の方法は、PPEを低分子量化して溶媒への溶解性を増しているが、PPEを溶解させるとワニスの粘度が上がりにくく、やはり塗工に適した粘度が得られ難いという点で、なお改善の余地があった。
更に、特許文献4に記載の方法は、界面活性剤を利用してPPE粒子を水系溶媒に分散させている。しかしながら、貧溶媒である水を溶媒とした場合、PPE粒子が沈降しやすくなり、安定的に塗工に適した粘度を得られ難いという点で改善の余地があった。
前記した状況の下、本発明が解決しようとする課題は、塗工性が良好な粘度を有するPPEを含む分散液の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、原料として用いるPPEの数平均分子量、及び粒子径を特定範囲に制御し、更に特定の溶剤を使用することで、ワニスとして用いる際の塗工性が良好なPPEを含む分散液が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ポリフェニレンエーテル(PPE)を含む樹脂組成物の分散液の製造方法であって、以下の工程:
数平均分子量が8000以上であるPPEの粒子であって、該PPE粒子100質量部の内10質量部以上が、目開き106μmの篩を通過しない粒子径を有するPPE粒子を用意する工程、及び
前記PPE粒子を、該PPE粒子の溶剤保持量が150%以上となる溶剤と、混合して、該PPE粒子を該溶剤で膨潤させる工程、
を含む、前記方法。
[2]前記PPE粒子100質量部の内90質量部以上が、目開き425μmの篩を通過する粒子径を有するPPE粒子である、前記[1]に記載の製造方法。
[3]前記溶剤は、前記PPE粒子の溶剤保持量が300%以上となる溶剤である、前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記分散液に含まれる固形分の内、前記PPEが25wt%〜70wt%で含まれることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記PPE粒子と前記溶剤との混合において、該PPE粒子を該溶剤中で静置又は撹拌し、PPEを含む樹脂組成物の膨潤割合が70wt%以上となるまで膨潤させる、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]以下の工程:
(A)基材に、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法によって製造されたPPEを含む樹脂組成物の分散液を塗工する工程、
(B)次いで、これを、乾燥して、該基材に塗工した該分散液に含まれる溶剤を除去する工程、
を含む、PPE組成物シートの製造方法。
本発明によれば、塗工性が良好なPPEを含む分散液を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の1の実施形態は、ポリフェニレンエーテル(PPE)を含む樹脂組成物の分散液の製造方法であって、以下の工程:
数平均分子量が8000以上であるPPEの粒子であって、該PPE粒子100質量部の内10質量部以上が、目開き106μmの篩を通過しない粒子径を有するPPE粒子を用意する工程、及び
前記PPE粒子を、該PPE粒子の溶剤保持量が150%以上となる溶剤と、混合して、該PPE粒子を該溶剤で膨潤させる工程、
を含む、前記方法である。
PPEは、好ましくは、下記一般式(1):
Figure 2015067675
{式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアミノ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表す。}で表される繰返し構造単位を含む。
PPEの具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等、更に、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール、2−メチル−6−ブチルフェノール等)との共重合体、及び、2,6−ジメチルフェノールとビフェノール類又はビスフェノール類とをカップリングさせて得られるポリフェニレンエーテル共重合体、等が挙げられ、好ましい例は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
尚、本願明細書中、PPEは、置換又は非置換のフェニレンエーテル単位構造から構成されるポリマーを意味するが、更に他の共重合成分を含んでもよい。
PPE粒子は100質量部の内、10質量部以上が目開き106μmの篩を通過せず、好ましくは25質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上通過しない。
また、PPE粒子は100質量部の内、40質量部以上が目開き53μmの篩を通過しないことが好ましく、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは80質量部以上である。
上述の粒子径のPPE粒子ならば、分散媒に分散して得られる分散液について、塗工に適当な粘度を得ることができるため好ましい。
PPE粒子100質量部の内90質量部以上、より好ましくは95質量部以上、更に好ましくは98質量部以上が、目開き425μmの篩を通過する粒子径を有するPPE粒子であることが好ましい。
また、PPE粒子は、100質量部の内、80質量部以上、より好ましくは、90質量部以上、更に好ましくは95質量部以上が、目開き300μmの篩を通過する粒子径を有するPPE粒子であるこが好ましい。
上述の粒子径のPPE粒子であれば、溶剤にPPEが膨潤しやすくなり、塗工に適当な粘度を得ることができるため好ましい。
PPEの数平均分子量は、8000以上であり、好ましくは8500以上、より好ましくは9000以上である。上限としては、好ましくは40000以下、より好ましくは30000以下である。
PPEの数平均分子量が8000以上であれば、PPEが溶剤に完全に溶解せず、常温で分散状態を保つことができ、塗工に適当な粘度を得ることができる点、及び積層板の銅箔剥離強度が良傾向となる点で好ましい。他方、PPEの数平均分子量が40000以下であれば、基板成型時の溶融粘度が小さく、良好な成型性を得られる点で好ましい。
前記PPEを含む樹脂組成物の分散液の製造方法においては、前記PPE粒子を、分散媒(溶剤)と混合して、PPE粒子を該溶剤で膨潤させる工程を含む。かかる工程において用いる分散媒(溶剤)は、該PPE粒子の溶剤保持量が150%以上となる溶剤である。ここで、PPE粒子の溶剤保持量とは、以下の方法で求めた値である。
PPE粒子5±0.1g(W0)に、23℃±2℃の溶剤80gを加え、23℃±2℃の恒温室内で、マグネチックスターラーで2時間以上撹拌し、分散液とする。得られた分散液を、100cmの沈降管に移し、溶剤を追加して全量を100cmとし、分散液を軽く均一に撹拌した後、23℃±2℃の恒温室に24時間静置する。
次いで、上下2層に分かれた上澄み液を取り除き、下層(PPEとPPEとが保持する溶剤量)の質量Wを測定する。
得られたPPEの質量W0と、PPEと該PPEが保持する溶剤とを合わせた質量Wとから、下式:
溶剤保持量(%)=100×(W−W0)/W0
により溶剤保持量を求める。
ここで、PPE粒子の溶剤保持量が150%以上となる溶剤は、特に限定はないが、PPEの種類や分子量によらず溶剤保持量150%以上となりやすいため、芳香族有機溶剤などが好ましく用いられる。好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。溶剤の種類は1種類単独でも2種類以上を混合して用いることもできる。
PPE粒子の溶剤保持量が150%以上であれば、PPEを十分膨潤させることができ、塗工に適当な粘度を得ることができる傾向となり好ましい。PPE粒子を、分散媒(溶剤)と混合して、PPE粒子を該溶剤で膨潤させる工程において用いる分散媒(溶剤)は、より好ましくは、PPE粒子の溶剤保持量が300%以上の溶剤、更に好ましくは、PPE粒子の溶剤保持量が500%以上の溶剤である。
以下に述べるように、本実施形態のPPEを含む樹脂組成物の分散液は、必須成分としてPPEと溶剤の他に、目的に応じて種々の成分を含むことができるので、該分散液中に含まれる固形分の内、PPEは25wt%〜70wt%含まれることが好ましい。ここで、固形分とは、該分散液の内、溶剤以外の成分を指す。固形分の内、PPEが25wt%以上であれば、PPEの膨潤により分散液の粘度が塗工に適する粘度まで上げることができるため、好ましく、より好ましくは28wt%以上、更に好ましくは30wt%以上である。固形分の内、PPEが70wt%以下であれば、PPEの膨潤により分散液がゲル化しにくくなるため、好ましく、より好ましくは65wt%以下、更に好ましくは60wt%以下である。
PPE粒子を、溶剤と混合して、PPE粒子を該溶剤で膨潤させる工程においては、PPE粒子を含む樹脂組成物を、溶剤中で静置及び/又は撹拌し、膨潤割合が70wt%以上となるまで膨潤させることが好ましい。
ここで、膨潤割合とは、次のように測定した値である。まず、PPE粒子を限界まで膨潤させ、「膨潤限界値」を測定する。膨潤限界値は、PPEの量と、使用する溶媒種により、決定する値である。PPE粒子を含む樹脂組成物を溶剤中で公知の方法にて一様になるまで24時間以上撹拌した後、23℃±2℃の恒温室にて30分静置して、PPE粒子を十分に膨潤させる。次いで、上澄み液を取り出して、重量を測定する。分散液の全質量をX0、測定した上澄み液の重量をX1としたとき、膨潤限界値Xは、下式:
膨潤限界値X(wt%)=100×(X0−X1)/X0
にて、求められる。
次に、膨潤割合の測定対象である、PPE粒子を含む樹脂組成物の分散液について、その「膨潤値」を測定する。膨潤値は、以下のように測定する。まず、測定対象である分散液の一部を測定試料として取り出し、30分静置させる。次いで、上澄み液を取り出し、重量を測定する。測定試料の質量をY0、測定した溶解成分の重量をY1としたとき、膨潤値Yは、下式:
膨潤値Y(wt%)=100×(Y0−Y1)/Y0
にて、求められる。
膨潤割合は、求めた膨潤限界値Xと、膨潤値Yより、下式:
膨潤割合(%)=100×Y/X
にて、求められる。
膨潤割合が70%以上であれば、PPEが十分に膨潤され、塗工に適当な粘度となるため、好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
本実施形態のPPEを含む樹脂組成物の分散液は、PPEと溶剤の他に、目的に応じて種々の成分を含むことができる。
本実施形態は、架橋型硬化性化合物を含むことができる。架橋型硬化性化合物としては、プレス成型後に得られる基板の耐熱性、吸水性の観点から、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーであることが好ましい、このようなモノマーとしては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルアミン、トリアリルメセート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等が挙げられるが、その中でもPPEとの相溶性が良好なTAICが好ましい。
架橋型硬化性化合物の配合量としては、PPE成分と架橋型硬化性化合物の総量中に占める割合として、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは20〜70質量%である。含有量を5質量%以上とすることは、良好な成形性を得る観点から好ましく、95質量%以下とすることは、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を形成できる観点から好ましい。
PPEを含む樹脂組成物の分散液には、架橋型硬化性化合物の架橋を促進するための開始剤を更に含むことができる。
開始剤としては、例えば、ビニルモノマーの重合反応を促進する能力を有する任意の開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤として使用できる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与えることができる観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
開始剤の配合量は、PPE成分と架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して、反応率を高くできる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えることができる観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
好ましい態様においては、PPE成分と架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して、架橋型硬化性樹脂の含有量が10質量%以上70質量%以下であり、開始剤の含有量が1質量部以上10質量部以下である。
上述したPPEを含む樹脂組成物の分散液には、他の樹脂(例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等)を更に含有させることもできる。熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、四フッ化エチレン等のビニル化合物の単独重合体及び2種以上のビニル化合物の共重合体、並びに、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例として挙げることができる。これらの中でもスチレンの単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体は、溶剤への溶解性及び成形性の観点から、好ましく用いられる。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル類を例として挙げることができる。尚、このような熱可塑性樹脂や硬化性樹脂は、酸無水物、エポキシ化合物、アミン等の官能化化合物で変性されたものであってもよい。
また、このような他の樹脂の使用量としては、PPE成分と架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜70質量部である。
上述したPPEを含む樹脂組成物の分散液には、適当な添加剤を更に含有させることができる。添加剤としては、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤等が挙げられる。
例えば、難燃剤としては、燃焼のメカニズムを阻害する機能を有するものであれば特に制限されず、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛等の無機難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジェフェニルエタン、4,4−ジフブロモフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物、等が挙げられる。中でも、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えられる観点からデカブロモジェフェニルエタン等が好ましい。
添加剤の使用量は、PPEと架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を小さく維持できる観点から、添加剤の使用量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
本発明の他の実施態様は、以下の工程:
(A)基材に、前記製造方法によって製造されたPPEを含む樹脂組成物の分散液を塗工する工程、
(B)次いで、これを、乾燥して、該基材に塗工した該分散液に含まれる溶剤を除去する工程、
を含む、PPE組成物シートの製造方法である。
かかる実施形態におけるPPE組成物シートには、前記PPEを含む樹脂組成物の分散液から前記分散媒を実質的に除去して得られる乾燥成型物、前記分散液を多孔性基材に含浸し、分散媒を実質的に除去して得られるプリプレグ、該乾燥成型物、該プリプレグを更に加熱し、樹脂の少なくとも一部を溶融して得られる硬化物が包含される。かかる硬化物には、金属層(例えば、銅層)が積層された形態(いわゆる、積層板)も包含される。
塗工は、支持フィルムを基材として実施することができる。
支持フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、銅箔、アルミ箔などの金属箔,離形紙などを挙げることができる。尚、支持フィルムは、マッド処理、コロナ処理、離形処理などの化学的及び/又は物理的処理を予め施したものであってもよい。
塗工工程において、分散液を多孔性基材に含浸して、プリプレグを形成する場合、該多孔性基材としては、例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラスクロス、アスベスト布、金属繊維布、及びその他合成もしくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊紙から得られる布等の天然セルロース系基材、ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
尚、プリプレグに占める(分散媒除去後の)樹脂組成物の割合は、プリプレグ全量100質量部に対して、30〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量部である。樹脂組成物の割合が30質量部以上である場合、プリプレグを、例えば、電子回路基板成型用の絶縁材料として使用した際、優れた絶縁信頼性と電気特性とが得られるため好ましい。また、樹脂組成物の割合が80質量部以下である場合、例えば、得られる電子回路基板が、曲げ弾性等の機械特性に優れるため好ましい。
積層板は、1枚又は複数枚のPPE組成物シートを銅箔等の基板と重ねた後、プレス成型により樹脂成分を硬化させて絶縁層を形成することにより製造することができる。銅箔の代わりに樹脂付金属箔を用いることも可能である。
本実施形態において得られる積層板は、好ましくは、樹脂ワニスの固形分の硬化物と金属箔とが重なって密着しており、優れた絶縁信頼性及び機械特性を有するため、電子回路基板の材料として好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明するが、かかる実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
(1)分散液の粘度(mPa・s)
PPE分散液について、ビスメトロン粘度計(VDA、芝浦システム)、ローターNo.3を用い、25℃、30rpm、30秒の条件で粘度の測定を行った。
(2)PPE粒子の溶媒保持量(%)
前述の方法で測定した。
(3)膨潤割合(%)
前述の方法で測定した。
まず、各組成についてワニスを作製し、膨潤限界値を予め測定した。次に、塗工に用いるワニスを改めて作製し、その一部を取り出し、膨潤値を測定し、膨潤割合を計算した。
(4)塗工性
PPE分散液を塗工用ワニスとして、厚さ約0.1mmのEガラス製ガラスクロス(2116スタイル、旭シュエーベル製)に含侵させて、スリットで外観を整えた後、溶媒を乾燥除去してプリプレグを得た。得られたプリプレグについて、5cm角の正方形に切り出した後、重量を測定し、プリプレグ中に含まれる樹脂重量の割合(樹脂含量)を求め、以下の評価基準により、塗工性を評価した:
○ :分散液の粘度が塗工に好適であり、樹脂含量50wt%の外観良好なプリプレグが得られる;
○○ :分散液が粘度が塗工に好適であり、樹脂含量53wt%の外観良好なプリプレグが得られる;
○○○:分散液が粘度が塗工に好適であり、樹脂含量55wt%の外観良好なプリプレグが得られる;
× :分散液の粘度が塗工に不適であり、樹脂含量50wt%未満のプリプレグしか得られないか、又は塗工できない。
(5)積層板特性(電気特性)
上記プリプレグを12枚重ねて、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力10kg/cmの条件で真空プレスを行い、130℃に達したら、昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cmで真空プレスを行い、200℃に達したら、温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって、積層板を作製した。
該積層板を100mm角に切り出し、誘電率及び誘電正接をインピーダンスアナライザ―(4291B op.002 with 16453A, 16454A、AgilentTechnologies製)を用いて、電圧:100mV、周波数:1mmHz〜1.8GHzの条件で測定して、掃引回数100回の平均値として求めた。上記測定を基板上の任意の5か所で行い、最も高い測定結果を誘電率及び誘電正接の値とした。
(6)積層板特性(銅箔剥離強度 kN/m)
プリプレグを2枚重ねて、更にその上下に、35μm銅箔(GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)をプロファイル面がプリプレグ側となるように重ね、前述と同じ条件で真空プレス成型を行った。得られた銅張積層板を、幅15mm×長さ150mmのサイズに切り出し、オートグラフ(AG−5000D、株式会社島津製作所製)を用い、銅箔を除去面に対し90℃の角度で50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重の平均値を測定し、6回の測定のうち最も低い測定結果を銅剥離強度の値とした。
[実施例1〜8、比較例1〜4]
JIS規格準拠の公称目開き53μm、106μm、212μm、300μm、425μmの篩を用いて分級したPPE粒子を原料とした。以下の表1に、使用したPPE粒子の粒子径分布を示す。表1に示す配合にて溶剤をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながらPPE原料、ゴム成分、架橋剤、フィラー、難燃剤、過酸化物を、表1に示す配合にて投入、撹拌してPPE分散液を得た。得られたPPE分散液の膨潤割合、及び、粘度を表1に併記する。
以下の表1に示すように、実施例1〜8のPPE分散液は塗工に適した粘度(550〜2100mPa・s)であった。塗工ワニスとして用いることで、状態の良いプリプレグを実現することができた。
比較例1と2では、目開き106μmの篩を通過しない粒子径を有するPPE粒子が10質量部未満であり、PPE分散液の粘度が高くなり(測定不可)、塗工に必要な流動性を失ってしまったため、プリプレグを得ることができなかった。比較例3では、PPEの溶剤保持量が150%以下の溶媒(メタノール100%)を使用したため、分散液中のPPEが十分に膨潤せず、粘度が低くなりすぎてしまい(100mPa・s)、塗工に適した粘度を得ることができなかった。得られたプリプレグは樹脂含量が不十分であったため、積層板特性が悪化した。
比較例4では、使用したPPE原料の数平均分子量が8000未満であり、PPEが溶媒に完全に溶解した。その結果、粘度が低くなりすぎてしまい(300mPa・s)、プリプレグに十分に樹脂が塗布できなかったため、積層板特性が悪化した。また、得られたプリプレグは過度な粘着性が観察された。
Figure 2015067675
本実施形態のPPEを含む分散液の製造法によれば、原料となるPPEの数平均分子量、及びPPE粒子の粒子径を特定範囲に制御し、また、特定の溶媒を使用することにより、塗工に適当な粘度を有するPPEを含む分散液を得ることができ、状態の良好なプリプレグや、PPE由来の電気特性が優れた積層板を包含するPPE組成物シートを得ることができる。したがって、本発明は、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板用の材料の製造に好適に利用可能である。

Claims (6)

  1. ポリフェニレンエーテル(PPE)を含む樹脂組成物の分散液の製造方法であって、以下の工程:
    数平均分子量が8000以上であるPPEの粒子であって、該PPE粒子100質量部の内10質量部以上が、目開き106μmの篩を通過しない粒子径を有するPPE粒子を用意する工程、及び
    前記PPE粒子を、該PPE粒子の溶剤保持量が150%以上となる溶剤と、混合して、該PPE粒子を該溶剤で膨潤させる工程、
    を含む、前記方法。
  2. 前記PPE粒子100質量部の内90質量部以上が、目開き425μmの篩を通過する粒子径を有するPPE粒子である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記溶剤は、前記分散液製造後に前記PPE粒子の溶剤保持量が300%以上となる溶剤である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記分散液に含まれる固形分の内、前記PPEが25wt%〜70wt%で含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記PPE粒子と前記溶媒との混合において、PPEを含む樹脂組成物の膨潤割合が70wt%以上となるまで膨潤させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 以下の工程:
    (A)基材に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたPPEを含む樹脂組成物の分散液を塗工する工程、
    (B)次いで、これを、乾燥して、該基材に塗工した該分散液に含まれる溶剤を除去する工程、
    を含む、PPE組成物シートの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2019127646A1 (zh) * 2017-12-29 2019-07-04 安丽华 一种合成小分子量聚苯醚的生产设备

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