JP6219112B2 - Ppe含有樹脂組成物 - Google Patents
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また、特許文献6〜9に記載されたホスファフェナントレン誘導体を含むPPE含有樹脂組成物は、ホスファフェナントレン誘導体が可塑剤として作用するため、PPEが本来有している誘電特性に優れる特性、耐熱性に優れる特性が損なわれてしまう。
特許文献6に記載されたアリル変性PPE系樹脂とTAICとホスファフェナントレン誘導体とを含む樹脂組成物は、PPEとTAICとホスファフェナントレン誘導体を主な構成成分とする点で本願発明と同じであるが、上述の3成分の配合割合が本願発明と異なる。特許文献6の樹脂組成物は、誘電正接が1GHzで0.0030〜0.0035であることが該特許文献6の実施例1〜8に記載されているが、かかる値は、近年の高周波基板に要求される誘電特性としては劣るものである。
[1]PPE(A)と、架橋型硬化性化合物(B)と、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体(ホスファフェナントレン誘導体)(C)とを含むPPE含有樹脂組成物であって、以下の:
(1)該PPE(A)の数平均分子量が6,000以上40,000以下であり、
(2)該PPE(A)の含有量が、該PPE(A)と該架橋型硬化性化合物(B)の合計質量を100質量%基準としたとき、55質量%以上80質量%以下であり、
(3)該ホスファフェナントレン誘導体(C)の含有量が、該PPE(A)と該ホスファフェナントレン誘導体(C)の合計質量を100質量%基準としたとき、0.5質量%以上15質量%以下であり、
(4)該架橋型硬化性化合物(B)と該ホスファフェナントレン誘導体(C)の合計の含有量が、該PPE(A)と該架橋型硬化性化合物(B)とホスファフェナントレン誘導体(C)の合計質量を100質量%基準としたとき、30質量%以上45質量%以下であり、及び
(5)該ホスファフェナントレン誘導体(C)が、以下の式(1):
<PPE含有樹脂組成物>
本発明の第一の実施形態(以下、単に「第一の実施形態」という。)は、PPE(A)と、架橋型硬化性化合物(B)と、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体(ホスファフェナントレン誘導体)(C)とを含むPPE含有樹脂組成物であって、以下の:
(1)該PPE(A)の数平均分子量が6,000以上40,000以下であり、
(2)該PPE(A)の含有量が、該PPE(A)と該架橋型硬化性化合物(B)の合計質量を100質量%基準としたとき、55質量%以上80質量%以下であり、
(3)該ホスファフェナントレン誘導体(C)の含有量が、該PPE(A)と該ホスファフェナントレン誘導体(C)の合計質量を100質量%基準としたとき、0.5質量%以上15質量%以下であり、
(4)該架橋型硬化性化合物(B)と該ホスファフェナントレン誘導体(C)の合計の含有量が、該PPE(A)と該架橋型硬化性化合物(B)とホスファフェナントレン誘導体(C)の合計質量を100質量%基準としたとき、30質量%以上45質量%以下であり、及び
(5)該ホスファフェナントレン誘導体(C)が、以下の式(1):
ことを特徴とするPPE含有樹脂組成物である。
(i)プレス成型過程では、架橋型硬化性化合物とホスファフェナントレン誘導体の両成分が可塑剤として作用するため、高分子量PPEに十分な流動性を付与する。
(ii)架橋型硬化性化合物の架橋反応が進行すると、架橋型硬化性化合物が可塑剤とし作用できなくなり、PPEの流動性は徐々に失われていく。
(iii)上述の(i)の段階から(ii)の段階へ推移する過程で、分子鎖が比較的長いPPEを用いているため、分子鎖の絡み合いが効率的に発生し連続した構造体を形成する。また、プレス成型後(硬化後)は、前述の分子鎖絡み合い構造が強固に保持されるため、PPEが本来有する高い耐熱性と、誘電特性に優れる特性が現れる。
(iv)ホスファフェナントレン誘導体は硬化物に残存するが、ホスファフェナントレン誘導体はPPEとの相溶し難い特性を有するため、PPEの特性に大きな影響を及ぼさない。
(v)分子鎖が比較的長いPPEを用いているため、PPEはプレス成型過程で圧縮面に平行な面に配向すると類推される。そのため、1分子鎖当たりの金属箔との接着点が多くなり、金属箔との接着性が強くなる。
第一の実施形態のPPE含有樹脂組成物の構成成分であるPPE(A)は、置換又は非置換のフェニレンエーテル単位構造から構成されるポリマーを意味する。PPE(A)は、本発明の作用効果を損なわない範囲でフェニレンエーテル単位構造以外の共重合成分単位を含んでもよい。PPE(A)は、好ましくは、下記式(2):
なお、本開示を通じ、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定される値である。典型的には、カラムにShodex LF−804×2(昭和電工株式会社製)、溶離液に50℃のクロロホルム、検出器にRI(屈折率計)を用いてGPC測定を行い、同条件で測定した標準ポリスチレン試料の分子量と溶出時間との関係式から、数平均分子量を算出する。
PPE(A)の数平均分子量が6,000以上で、絡み合い点間分子量の約2倍以上となるため、電子回路基板等において所望されるガラス転移温度、はんだ耐熱性を良好に与える点で好ましい。PPE(A)の数平均分子量が40,000以下である場合、硬化物を得るための加熱加圧成形時等の溶融粘度が小さく、良好な成形性が得られる点で好ましい。
第一の実施形態における架橋型硬化性成分(B)は、特に限定はされないが、PPE(A)と架橋型硬化性成分(B)を含む樹脂組成物の硬化反応過程で、PPE(A)と相溶することができる化合物が好ましい。PPE(A)と架橋型硬化性成分(B)とが相溶することにより、PPE(A)の溶融粘度を低く抑えやすいためである。
(B)成分と(C)成分の合計の含有量が30質量%以上で、プレス成型過程でのPPE含有樹脂組成物の溶融粘度を低くできる。(B)成分と(C)成分の合計の含有量が45質量%以下で、プレス成型過程でPPE含有樹脂組成物の溶融粘度が低くなりすぎることなくプレス面に対して均一に成型される。
第一実施形態におけるホスファフェナントレン誘導体(C)は、以下の式(1):
第一の実施形態は、PPE(A)と架橋型硬化性化合物(B)とホスファフェナントレン誘導体(C)の他に、架橋型硬化性化合物(B)の架橋反応の開始剤として機能する化合物(をさらに含むことが好ましい。開始剤としては、例えば、ビニルモノマー等の架橋型硬化性化合物の重合反応を促進する能力を有する任意の開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤として使用できる。中でも、耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与えることができるという観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、四フッ化エチレン等のビニル化合物の単独重合体及び2種以上のビニル化合物の共重合体、並びに、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例として挙げることができる。これらの中でもスチレンの単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体が、樹脂組成物の溶剤への溶解性及び成形性の観点から好ましく用いることができる。
硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル類を例として挙げることができる。上記熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂は、酸無水物、エポキシ化合物、アミン等の官能化化合物で変成されたものでもよい。
質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、PPEの優れた誘電特性及び耐熱性を発現させる点から、好ましくは90質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
ここで、他の樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合は、PPEの優れた誘電特性を硬化性樹脂組成物に反映させるため、硬化性樹脂組成物に占めるエポキシ樹脂の範囲を0%以上10%以下とするのが好ましく、中でも接着性を向上させる観点から0.1%以上10%以下とするのがより好ましい。
難燃剤としては、燃焼のメカニズムを阻害する機能を有するものであれば特に制限されず、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛等の無機難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4−ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。中でも、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えられる観点からデカブロモジフェニルエタン等が好ましい。
本発明における第二の実施形態は、第一の実施形態であるPPE含有組成物を含む樹脂ワニスである。該PPE含有樹脂ワニスは、第一の実施形態であるPPE含有組成物と有機溶剤(溶媒)との混合物であってもよく、さらに他の成分(上述の硬化性架橋樹脂、開始剤、他の樹脂、他の添加剤など)を組み合わせもよい。
本発明における第三の実施形態は、第二の実施形態である樹脂ワニスを用いて形成される電子回路基板材料である。具体的には、樹脂フィルム、基材との含浸複合体(以下、「プリプレグ」ともいう。)、樹脂付金属箔、及びこれらを任意に積層成型して得られる積層体である。
第三の実施形態の1つである樹脂フィルムは、第二の実施形態である樹脂ワニスを単独で、又は支持フィルムを支持体として塗布し、次いで、樹脂ワニス中の有機溶剤を乾燥除去して得ることができる。
支持フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、銅箔、アルミ箔などの金属箔、離形紙などを挙げることができる。なお、支持フィルムはマッド処理、コロナ処理、離形処理などの化学的、物理的処理を施してあってもよい。
本実施形態の樹脂フィルムは、多層プリント配線板等の積層体の層間絶縁シート、接着フィルムとして好適に用いることができる。
第三の実施形態の1つであるプリプレグは、第二の実施形態である樹脂ワニスを基材に含浸させた後、熱風乾燥機等で樹脂ワニス中の有機溶剤を乾燥除去して得ることができる。
本実施形態のプリプレグは、樹脂ワニスに含まれていた固形分が基材中に含浸された構造をとるのが特徴である。但し、該固形分がプリプレグ表面に層を形成した構造をとっても、該プリプレグの硬化物を得るためのプレス成型によって基材中に固形分の硬化物が含浸された構造となれば、何ら問題はない。
第三の実施形態の1つである樹脂付金属箔は、第二の実施形態である樹脂ワニスを金属箔に塗布した後、熱風乾燥機等で樹脂ワニス中の有機溶剤を乾燥除去して得ることができる。
本実施形態に用いる金属箔は特に限定はないが、例えば、アルミ箔、銅箔などを用いることができ、中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。
本実施形態に係る積層板は、典型的には、1枚又は複数枚の上記の樹脂フィルム及びプリプレグを銅箔等の基板と重ねた後、プレス成型により硬化性樹脂組成物を硬化させて絶縁層を形成することにより製造することができる。銅箔の代わりに樹脂付金属箔を用いることも可能である。
金属箔としては、例えば、アルミ箔、銅箔などを用いることができ、中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。金属箔と組合せる樹脂フィルム及びプリプレグは1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。
積層板は、好ましくは、樹脂ワニスの固形分の硬化物と金属箔とが重なって密着しており、優れた絶縁信頼性及び機械特性を有するため、電子回路基板の材料として好適に用いることができる。
なお、上述した各種パラメーターの測定値については、特に断りのない限り、下記実施例における測定方法に準じて測定される。
以下の実施例、比較例及び試験例中の各物性は、以下の方法によって測定した。
(1)溶融粘度
レオメータを用い、昇温速度5℃/min、周波数10rad/秒の条件で測定した。
<試験試料の調製>
被試験試料を直径25mm、厚さ約1mmの形状に成型した。被試験試料がシート状の場合、直径25mmの円状に切り出し、必用枚数を重ね、ハンドプレスを用いて100kg/cm2の圧力をかけ、厚さ約1mmに圧縮成型した。被試験試料が粉末状の場合、必要量の粉を用い、ハンドプレスを用いて100kg/cm2の圧力をかけ、直径25mm、厚さ約1mmの形状に圧縮成型した。
<測定>
直径25mmのパラレルプレートを用い、30℃から250℃の温度範囲において、プレートギャップ約1mm、測定周波数10rad/sec、初期加重100g/cm2、昇温速度5℃/分の条件下で粘度変化を測定した。
測定装置にはARES(TAインスツルメンツ社製)を用い、せん断モードによる測定を行った。
プリプレグを加熱加圧成形して積層板を作製する際に、流れ出した樹脂の質量の、元の質量(加熱加圧成形に供したプリプレグ)に対する割合を求め、評価した。
<加熱加圧成形>
プリプレグを2枚重ね、その上下両面に銅箔(厚み12μm、GTS−MP箔、古河電気工業製)を重ね合せたものを、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、60分間の条件で進行プレスを行うことによって銅張積層板を得た。次いで、銅箔をエッチングにて除去し積層体前駆体を得、さらに積層体前駆体(150mm角部)から流れ出した樹脂分を取り除いて積層板を得た。
<成型性評価>
積層板前駆体の質量(g)、及び積層板の質量(g)を測定し、下記式により、樹脂組成物の樹脂フロー量(%)を求めた。
樹脂フロー量(質量%)=(積層板前駆体の質量(g)−積層板の質量(g))/積層板前駆体の質量(g)×100
樹脂フロー量が2質量%以上5質量%未満であるとき「○」、樹脂フロー量が5質量%以上10質量%以下であるとき「◎」、2質量%未満又は10%以上であるとき「×」として評価した。
プリプレグを加熱加圧成形して得た積層板の、中心部と端部の厚さの差を求め、評価した。(2)で得られた積層板の、中心部と端部の厚さをマイクロメーターを用いて測定し、厚さの差を次式を用いて求めた。
厚さの差(%)=中心部と端部の厚さの差(μm)/中心部の厚さ×100
中心部と端部の厚さの差が1%以下であるとき「〇」、中心部と端部の厚さの差が1%を超えるとき「×」として評価した。
硬化物試験片の10GHzでの誘電率及び誘電正接を、空洞共振法にて測定した。
測定装置としてネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator Sシリーズ)を用いた。
硬化物試験片を、幅約20mm、長さ50mmの大きさに切り出し、常態の誘電特性として、105℃±2℃のオーブンに入れ2時間乾燥させた後、23℃、相対湿度65±5%の環境下に96±5時間置いた後、23℃、相対湿度65±5%の環境下で測定を行った。また、吸水時の誘電特性として、105℃±2℃のオーブンに入れ2時間乾燥させた後、23℃の純水に24時間浸漬させた後、水分を拭き取り、23℃、相対湿度65±5%の環境下で測定を行った。
なお、硬化物試験片は以下に示す方法により調製した。
プリプレグを8枚重ね、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって積層板を作製し、硬化物試験片とした。
硬化物試験片の動的粘弾性を測定し、tanδが最大となる温度をガラス転移温度として求めた。
測定装置に動的粘弾性装置(RHEOVIBRON モデルDDV−01FP、ORIENTEC社製)を用い、試験片:長さ約35mm、幅約12.5mmm及び厚さ約0.3mm、ひっぱりモード、周波数:10rad/sの条件で測定を行った。
なお、硬化物試験片は、以下の方法で作製した。
プリプレグを2枚重ね、その上下に銅箔(厚み12μm、GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)を重ね合わせたものを、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって両面銅張積層板を得た。次いで、銅箔をエッチングにて除去し、硬化物試験片を得た。
銅張積層板の銅箔を一定速度で引き剥がす際の応力を測定した。
後述の方法で作製した硬化物試験片を、幅15mm×長さ150mmのサイズに切り出し、オートグラフ(AG−5000D、株式会社島津製作所製)を用い、銅箔を除去面に対し90℃の角度で50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重の平均値を測定し、5回の測定の平均値を求めた。
なお、硬化物試験片は以下の方法で作製した。
プリプレグを2枚重ね、その上下に銅箔(厚み35μm、GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)を重ね合わせたものを、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって両面銅張積層板を作製し、硬化部試験片とした。
実施例、比較例において使用した原材料を以下に示す。
(PPE(A))
通常分子量PPE:S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000
低分子量PPE: 以下の製造例1にて作製したもの
低分子量・末端ベンジル化PE: 以下の製造例2にて作製したもの
トリアリルイソシアヌレート:TAIC、日本化成製
トリメタリルイソシアヌレート:TMAIC、日本化成製
エポキシジュシA: 液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、AER250(旭化成エポキシ製)
エポキシ樹脂B:JER604(三菱化学製)
エポキシ樹脂C:オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、N−680−75M(Dic製)
BCA:10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光製)
HCA:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光製)
HCA−HQ:9,10−ジヒドロ−10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光製)
パーブチルP:α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日油製)
エポキシジュシ硬化剤:ジシアンジアミド、エピキュアーDICY−15(ジャパンエポキシレジン)
エポキシ樹脂の硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール、2E4MZ(四国 化成)
相溶化剤:SEBS、タフテックH1041(旭化成ケミカルズ製)
無機フィラー:球状シリカ、平均粒径3.8μm(龍森製)
難燃剤:デカブロモジフェニルエタン、SAYTEX8010(アルベマールジャパン製)
90℃に加温されたオイルバスに10Lのフラスコを設置し、フラスコ内部に毎分30mlで窒素ガスを導入した。以降、操作は常に窒素ガス気流下で行った。ここにポリフェニレンエーテル1kg、及びトルエン3kgを入れ、攪拌溶解させた。更に80gのビスフェノールAをメタノール350gに溶かした溶液を上記フラスコに攪拌しながら加えた。5分間攪拌を続けた後、6質量%ナフテン酸コバルトミネラルスピリット溶液3mlを注射器で加え、5分間攪拌を続けた。続いてベンゾイルパーオキサイド溶液375gにトルエン1125gを加えて、ベンゾイルパーオキサイド濃度が10質量%になるように希釈した溶液を滴下ロートに入れ、上記フラスコに2時間かけて滴下していった。滴下終了後、更に2時間加熱及び攪拌を続け、低分子量化ポリフェニレンエーテルを得た。得られた低分子量化ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は2,800であった。
製造例1と同様の方法で、メタノールを添加してポリフェニレンエーテルを沈殿させる前の工程まで行い、低分子量・ポリフェニレンエーテルを含む反応液を得た。該反応液の温度を50℃に下げ、水酸化ナトリウム340gをイオン交換水3050gに溶解させた水溶液とテトラブチルアンモニウムヨード31gとを加えて、5分間撹拌した。続いて、塩化ベンジル1070gを加えてから温度50℃で4時間撹拌を続け、低分子量・ベンジル化ポリフェニレンエーテルを含む反応液を得た。これに多量のメタノールを加え、低分子量・ベンジル化ポリフェニレネーテルを沈殿させ、ろ別後、乾燥させて低分子量・ベンジル化ポリフェニレンエーテルを得た。得られた低分子量・ベンジル化ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は3,000であった。
表1に示す樹脂組成のワニスをトルエンを用いて混合し、ワニスを調製した。上記ワニスをガラスクロス(旭シュエーベル株式会社製、商品名「2116」)に含浸させ、乾燥することにより樹脂組成物固形分含有量54質量%のプリプレグを得た。
実施例1〜13、及び比較例1〜6で得られたプリプレグを用い、前述の方法にて、プリプレグの溶融粘度、成型性、誘電率、誘電正接、ガラス転移温度、銅箔剥離強度測定し、測定結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜13においては、いずれも成型性、誘電率、誘電正接、ガラス転移温度、銅箔剥離強度が優れていた。
実施例1〜13の中で比較すると、ホスファフェナントレン誘導体(C)にHCAを用いた実施例9は、BCA、HCA−HQを用いた実施例3、10(他の組成は実施例9と同じ)に比べ、Tgがやや低いものではあった。
また、架橋型硬化性化合物(B)にエポキシ樹脂を用いた実施例12、13は、架橋型硬化性化合物(B)にTAIC、TMAICを用いた実施例3、11(他の組成は実施例12、13と同じ)に比べると、吸水状態での誘電特性が大きいものであった。
一方、比較例1〜6は、成型性、誘電率、誘電正接、ガラス転移温度、銅箔剥離強度の少なくとも何れかが劣るものであった。
また、比較例3は、BCAとTAIC(架橋性硬化型化合物(B))の合計量が本発明範囲より多い。BCAとTAICの合計量が本発明範囲内である実施例1〜6、及び比較例1と比べて、成型過程での溶融粘度が低くなりすぎたためか、成型性[厚さバラツキ]に劣るものであった。
比較例4、5は誘電正接に劣るものであった。TAICのPPEとTAICの合計量に対する配合割合が本願発明範囲である実施例1〜6、比較例1〜3に比べ誘電正接が大きく劣るものであった。
また、比較例4、5は、BCA(C)とTAIC(B)の合計量のPPE(A)とBCA(C)とTAIC(B)の合計量に対する配合割合が、本願発明範囲より多い。BCA(C)とTAIC(B)の合計量のPPE(A)とBCA(C)とTAIC(B)の合計量に対する配合割合が本願発明範囲である実施例1〜6、及び比較例1、2に比べ、成型過程での溶融粘度が低くなりすぎたためか、成型性[厚さバラツキ]も劣るものであった。
Claims (5)
- PPE(A)と、架橋型硬化性化合物(B)と、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体(ホスファフェナントレン誘導体)(C)とを含むPPE含有樹脂組成物であって、以下の:
(1)該PPE(A)の数平均分子量が6,000以上40,000以下であり、
(2)該PPE(A)の含有量が、該PPE(A)と該架橋型硬化性化合物(B)の合計質量を100質量%基準としたとき、55質量%以上80質量%以下であり、
(3)該ホスファフェナントレン誘導体(C)の含有量が、該PPE(A)と該ホスファフェナントレン誘導体(C)の合計質量を100質量%基準としたとき、0.5質量%以上15質量%以下であり、
(4)該架橋型硬化性化合物(B)と該ホスファフェナントレン誘導体(C)の合計の含有量が、該PPE(A)と該架橋型硬化性化合物(B)とホスファフェナントレン誘導体(C)の合計質量を100質量%基準としたとき、30質量%以上45質量%以下であり、及び
(5)該ホスファフェナントレン誘導体(C)が、以下の式(1):
- 130℃以上180℃以下の温度範囲における最小溶融粘度が2,000poise以上20,000poise以下である、請求項1又は2に記載のPPE含有樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のPPE含有樹脂組成物と有機溶剤とを含む、PPE含有樹脂ワニス。
- 請求項4に記載のPPE含有樹脂ワニスを用いて形成された、樹脂フィルム、基材と樹脂との含浸複合体であるプリプレグ、若しくは樹脂付金属箔、又はこれらの少なくとも1種を含む積層体の形態にある電子回路基板材料。
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