JP6180154B2 - ポリフェニレンエーテル樹脂組成物 - Google Patents
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また、プリント配線板は製品安全面から難燃性が必要であるため、プリント配線板を構成する絶縁樹脂には芳香族臭素化物等の有機ハロゲン化合物を配合し難燃性を付与する方法が一般的に用いられていた。しかしながら、有機ハロゲン化合物は燃焼時に毒性の強いハロゲン化水素やダイオキシン等を発生する可能性があり、ハロゲン原子を含有しないリン化合物等の難燃剤への代替が求められている。
また、以下の特許文献2には、ホスフィン酸アルミニウムとホスファフェナントレン化合物を難燃剤として併用して、エポキシ樹脂組成物としている。
本発明が解決しようとする課題は、ハロゲン系難燃剤を使用せずに良好な難燃性を有し、誘電特性に優れ、しかも流動性に優れるPPE樹脂組成物を提供することである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
本実施の形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、以下の式(1):
また、前記式(3)で表されるリン系難燃剤の、前記熱硬化性樹脂100質量部に対する配合量としては、1質量部以上30質量部以下、好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。このような配合量とすることは、樹脂の流動性を適切な範囲に制御できる観点から好ましい。
また、前記(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分は、硬化物の耐熱性が良好な観点から、(b1)分子内に反応性C−C不飽和結合、及び(b2)トリアジン骨格又はイソシアヌル骨格を有する熱硬化性成分であることが好ましい。中でも、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が良好な観点から、トリアルケニルイソシアヌレートであることが好ましい。
前記樹脂組成物は、上述の各成分に加え、架橋型硬化性成分を含有することが好ましい。
架橋型硬化性成分としては、上述した(a)エポキシ樹脂、又は(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分のほか、フェノール樹脂、シアネートエステル類などの熱硬化性樹脂や、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、ジアリルシアヌレート等、分子内に2個以上の不飽和基をもつモノマー、等が挙げられる。
また、このような架橋型硬化性成分の配合量としては、前記PPE100質量部に対して、好ましくは5〜95質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは10〜70質量部、最も好ましくは20〜70質量部である。架橋型硬化性成分の配合量を5質量部以上とすることは、樹脂組成物の溶融粘度を良好に低減させる観点や、加熱加圧成型などによる成型性が良好となる観点、また、樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から好ましい。一方、架橋型硬化性成分の量を95質量部以下とすることは、PPEの有する優れた誘電率や誘電正接を発現させる観点から好ましい。
開始剤としては、例えば、ビニルモノマーの重合反応を促進する能力を有する任意の開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤として使用できる。中でも、耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与えることができるという観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、四フッ化エチレン等のビニル化合物の単独重合体及び2種以上のビニル化合物の共重合体、並びに、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例として挙げることができる。これらの中でもスチレンの単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体が、樹脂組成物の溶剤への溶解性及び成形性の観点から好ましく用いることができる。
ここで、他の樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合は、PPEの優れた誘電特性を硬化性樹脂組成物に反映させるため、硬化性樹脂組成物に占めるエポキシ樹脂の範囲を0質量%以上10質量%以下とするのが好ましく、中でも接着性を向上させる観点から0.1質量%以上10質量%以下とするのがより好ましい。
無機充填剤としては、無機充填剤として一般的に使用されているものであれば特に制限されるものではなく、例えばタルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を使用することができる。誘電特性を考慮する場合には、シリカを使用することが望ましい。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体の5〜40質量%の割合で配合することが望ましい。
上述したPPE樹脂組成物は、溶媒と配合してワニスとすることができる。また、当該ワニスを基材に塗布し、次いで該ワニスが塗布された基材から溶媒を除去・乾燥して、樹脂組成物複合体(例えば、いわゆるプリプレグ)を得ることができる。更に、当該樹脂組成物複合体を硬化し、硬化体の層を含む積層体を形成することができる。
このような基材としては、例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラス布;アスベスト布、金属繊維布、その他の合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム;等を単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
また、プリプレグは、PPE100質量部に対して、熱硬化成分を、好ましくは5〜95質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは20〜70質量部含有する。熱硬化成分の量が5質量部以上である場合、プリプレグを用いて基板を形成することによって積層板を形成する際、樹脂が基材中に良好に含浸し絶縁信頼性に優れた積層板が得られ、また、95質量部以下である場合、弾性率等の機械特性や誘電特性に優れた積層板が得られる。
尚、本開示で上記した各パラメータは、以下の実施例において説明する方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法によって測定される値である。
硬化性樹脂組成物が樹脂含量60±2%となるように、IPCスタイル2116ガラスクロスに含浸されてなる150mm角のプリプレグを試験片とする。プリプレグを2枚重ねたものの両面に厚さ12μmの銅箔(古河電工製、F2−WS箔)を重ねて、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力10kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力40kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、60分成型する。150mm角部から流れ出した樹脂を取り除いて積層板を得る。この積層板について質量を求め、積層板の質量(g)とする。積層板前駆体の質量(g)と積層板の質量(g)とを用い、下記式により、硬化性樹脂組成物の硬化時樹脂フロー量(%)を求める。
硬化時樹脂フロー量(質量%)=(積層板前駆体の質量(g)−積層板の質量(g))/積層板前駆体の質量(g)×100
以下の表中、この樹脂フロー量が2質量%以上10質量%以下であるとき「○」として、樹脂フロー量が5質量%以上10質量%以下であるとき「◎」として、2質量%未満又は10%以上であるとき「×」として評価した。
プリプレグを2枚重ねたものの両面に厚さ18μmの銅箔(古河電工製、GTS−MP箔)を重ねて、200℃、40kg/cm2の条件で60分間加熱加圧成型し、厚さ0.3mmの銅張積層板を作製した。銅箔をエッチングにより除去し、水洗して風乾した後の基板について、Rheo Vibron(エー・アンド・ディー製)で、昇温速度5℃/min、引っ張り周波数10Hzで粘弾性測定を実施し、tanδのピークの現れる温度をガラス転移温度(Tg)とした。
積層板の1GHzにおける誘電率及び誘電正接を、インピーダンスアナライザーを用いて測定した。測定装置としてインピーダンスアナライザー(4291B op.002 with 16453A,16454A、AgilentTechnologies社製)を用い、試験片厚さ:約2mm、電圧:100mV、周波数:1mmHz〜1.8GHzの条件で測定し、掃引回数100回の平均値として求めた。
プリプレグを8枚重ねたものの両面に厚さ18μmの銅箔(古河電工製、GTS−MP箔)を重ねて、200℃、40kg/cm2の条件で60分間加熱加圧成型し、厚さ1.2mmの銅張積層板を作製した。銅箔をエッチングにより除去して得た積層板より125mm×13mmの評価サンプルを切り出し、UL−94難燃性試験に準じた方法で評価した。
・PPE1(ポリフェニレンエーテル1):S202A(旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18000)
・PPE2(ポリフェニレンエーテル2):R4919(旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18000、マレイン酸変性率0.5質量%)
・PPE3(ポリフェニレンエーテル3):以下の製造例1に記載の方法に従って製造した。
・TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成製)
・パーブチルP(Perbutyl P):α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日油製)
・シリカ:球状シリカ(Silica)(龍森製)
・ジエチルホスフィン酸Al:OP935(クラリアントジャパン製)
・HCA:ホスファフェナントレン。9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド。
・HCA類縁体1:10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド。
・HCA類縁体2:10−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド。
・メラミンシアヌレート:堺化学工業株式会社製、MC2010Nグレード
90℃に加温されたオイルバスに10Lのフラスコを設置し、フラスコ内部に毎分30mlで窒素ガスを導入した。以降、操作は常に窒素ガス気流下で行った。ここに、PPE1000g、及びトルエン3000gを入れ、攪拌溶解させた。更に80gのビスフェノールAをメタノール350gに溶かした溶液を上記フラスコに攪拌しながら加えた。5分間攪拌を続けた後、6質量%ナフテン酸コバルトミネラルスピリット溶液3mlを注射器で加え、5分間攪拌を続けた。次いで、ベンゾイルパーオキサイド溶液375gにトルエン1125gを加えて、ベンゾイルパーオキサイド濃度が10質量%になるように希釈した溶液を滴下ロートに入れ、上記フラスコに2時間かけて滴下していった。滴下終了後、更に2時間加熱及び攪拌を続け、低分子量化PPEを含む反応液を得た。
実施例1〜8、及び比較例1〜6において、以下の表1に示す組成の通りトルエンを用いてワニスを調整し、0.1mm厚みのEガラスクロス(旭シュエーベル製、2116タイプ)に含浸させ、溶媒除去することによって、樹脂含有率61%のプリプレグを得た。前記したように、得られたプリプレグの樹脂流動性を評価し、プレス成型により得た積層板に対してTg、誘電特性、及び難燃性を評価した。結果を以下の表1に示す。
特に、ホスファフェナントレン誘導体としてベンジル化HCA又はメチル化HCAを使用した実施例3と4では、未変性HCAを使用した実施例1、2、7、8に比較して樹脂流動性や誘電特性に優れることがわかる。
これに反し、比較例1では、ジエチルホスフィン酸Alのみを使用した場合、難燃性はV−1に留まり、樹脂流動性も悪かった。また、比較例2に示すようにアルキルホスフィン酸Alが少ない場合や、比較例3に示すように、ホスファフェナントレン誘導体のみを使用した場合では、難燃性がV1に留った。比較例4に示すようにホスファフェナントレンが過剰な場合は樹脂流動性が過度に高く、基板のTgも低下した。比較例5に示すようにアルキルホスフィン酸Alが過剰な場合にも樹脂流動性が悪かった。また、ホスファフェナントレン誘導体に代えて、メラミンシアヌレートを使用した比較例6では、樹脂流動性が悪かった。
以上の結果より、アルキルホスフィン酸アルミニウムとホスファフェナントレン誘導体を特定割合で併用することで、プリント基板としての樹脂流動性を優れたものにすることができるだけでなく、Tg、誘電特性、及び難燃性に優れるPPE基板(例えば、プリント基板)を製造することができることが判明した。
Claims (9)
- 以下の式(1):
- 前記式(1)で表される基本骨格を有する樹脂の、前記熱硬化性樹脂中に占める割合が、50質量%以上100質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- 前記熱硬化性成分が、(a)エポキシ樹脂、又は(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記(b)少なくとも1つのC−N結合を有する成分が、(b1)分子内に反応性C−C不飽和結合、及び(b2)トリアジン骨格又はイソシアヌル骨格を有する熱硬化性成分である、請求項4に記載の樹脂組成物。
- 前記(b1)分子内に反応性C−C不飽和結合、及び(b2)トリアジン骨格又はイソシアヌル骨格を有する熱硬化性成分が、トリアルケニルイソシアヌレートである、請求項5に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物と溶媒を含むワニス。
- 請求項7に記載のワニスと基材を複合し、溶媒を乾燥除去して製造した樹脂複合体。
- 請求項8に記載の樹脂複合体を硬化されてなる硬化体の層を含む積層体。
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