JP2017066280A - 熱硬化性樹脂組成物とその製造方法、並びに前記熱硬化性樹脂組成物を有するプリプレグ、金属張積層板、及び多層プリント配線板 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物とその製造方法、並びに前記熱硬化性樹脂組成物を有するプリプレグ、金属張積層板、及び多層プリント配線板 Download PDF

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富男 福田
隆雄 谷川
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隆雄 谷川
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Yuki Nagai
裕希 永井
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曜 村井
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Yasuyuki Mizuno
康之 水野
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Abstract

【課題】相容性が特に良好で、かつ高周波特性、導体との高接着性、優れた耐熱性、低熱膨張特性、高難燃性及び高ガラス転移温度を有する熱硬化性樹脂組成物とその製造方法、並びに前記熱硬化性樹脂組成物を有するプリプレグ、金属張積層板、及び多層プリント配線板を提供する。【解決手段】分子中に下記一般式(I)で表されるポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体と、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類の熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物、それを有するプリプレグ、金属張積層板、及び多層プリント配線板である。(式中、R1、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、mは1以上の整数を示す繰り返し単位数であり、x及びyは1〜4の整数である。)【選択図】なし

Description

本発明は、分子中にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体を含む熱硬化性樹脂組成物とその製造方法、並びに前記熱硬化性樹脂組成物を有するプリプレグ、金属張積層板、及び多層プリント配線板に関し、詳しくは、相容性が良好で、特に高周波特性(低誘電率、低誘電正接)、導体との高接着性、優れた耐熱性、低熱膨張特性、高難燃性及び高ガラス転移温度を有する更に熱硬化性樹脂組成物とその製造方法、並びにプリプレグ、金属張積層板、及び多層印刷配線板に関する。
携帯電話に代表される移動体通信機器や、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、あるいは大型コンピュータなどでは使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする高周波数帯での誘電特性(低誘電率及び低誘電正接;以下、高周波特性と称することがある。)に優れる基板材料が求められている。近年、このような高周波信号を扱うアプリケーションとして、上述した電子機器のほかに、ITS(Intelligent Transport Systems)分野(自動車、交通システム関連)及び室内の近距離通信分野でも高周波無線信号を扱う新規システムの実用化及び実用計画が進んでおり、今後、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても、低伝送損失の基板材料が更に要求されると予想される。
また、近年の環境問題から、鉛フリーはんだによる電子部品の実装及びハロゲンフリーによる難燃化が要求されるようになってきたため、プリント配線板用材料にはこれまでよりも高い耐熱性及び難燃性が必要とされている。
従来、低伝送損失が要求されるプリント配線板には、高周波特性に優れる耐熱性熱可塑性ポリマーとしてポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂が使用されてきた。例えば、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂とを併用する方法も提案されている。具体的には、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、ポリフェニレンエーテルと、熱硬化性樹脂の中でも誘電率が低いシアネート樹脂とを含有する樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の樹脂組成物は、GHz領域での高周波特性、導体との接着性、低熱膨張係数、難燃性が総合的に不十分であったり、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂との相容性が低いことにより耐熱性が低下することがあった。
一方、本発明者らも、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリブタジエン樹脂をベースとして、有機溶媒を含有する樹脂組成物の製造段階(Aステージ段階)でセミIPN(semi-interpenetrating network)化することで、相容性、耐熱性、低熱膨張係数、導体との接着性等を向上できる樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)を提案した。しかしながら、近年のプリント配線板用基板材料には高周波化対応に加えて、高密度化、高信頼性、環境配慮への適合性への要求から、導体との高接着性、低熱膨張係数、高ガラス転移温度、高難燃性等の更なる向上が要求されている。
例えば、導体との接着性としては、樹脂との接着面側の表面粗さが非常に小さいロープロファイル銅箔(Rz:1〜2μm)使用時の銅箔引き剥がし強さで0.6kN/m以上が望まれている。
また、サーバー、ルーター等のネットワーク関連機器用途で使用されるプリント配線板用基板材料には、高密度化に伴い高多層化することも必要であり、高いリフロー耐熱性及びスルーホール信頼性が要求されており、それらの指針となるガラス転移温度は200℃以上であること、また、熱膨張係数(Z方向、Tg以下)は45ppm/℃以下であることが望まれている。ここで、低熱膨張性の発現には樹脂組成物中に無機充填剤を配合することが有効であるが、高多層プリント配線板では回路充填性のための樹脂フロー性を確保するため無機充填剤の配合量が制限される。したがって、無機充填剤の配合量が比較的少ない場合であっても上記要求値を確保することが望ましい。
もちろん高周波特性としては、より高い周波数帯での優れた誘電特性が要求されており、一般的なEガラス基材を用いた場合の基板材料の誘電率は3.7以下であることが望まれており、誘電正接は0.007以下、更には0.006以下であることが望まれている。しかも、一般的に基板材料は周波数が高くなるほど誘電正接が高くなる傾向を示すが、従来の1〜5GHzでの誘電特性値ではなく、10GHz帯以上で上記要求値を満たす必要性が高まってきている。
特開昭58−069046号公報 特公昭61−018937号公報 特開2008−95061号公報
本発明は、このような現状に鑑み、特に相容性が良好で、かつ高周波特性(低誘電率、低誘電正接)、導体との高接着性、優れた耐熱性、低熱膨張特性、高難燃性及び高ガラス転移温度を有する熱硬化性樹脂組成物とその製造方法、並びに前記熱硬化性樹脂組成物を有するプリプレグ、金属張積層板及び多層プリント配線板を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、分子中に特定の構造を有する芳香族ジアミン誘導体と特定の熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物及び前記熱硬化性樹脂組成物を有するプリプレグ及び積層板が優れた高周波特性や高耐熱性、導体との高接着性、低熱膨張特性、高難燃性等を発現し、上記の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に記すポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体と特定の熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物とその製造方法、並びに前記熱硬化性樹脂組成物を有するプリプレグ、金属張積層板、及び多層プリント配線板に関するものである。
示すものと同様である。)
1.分子中に下記一般式(I)で表されるポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)と、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2017066280
(式中、R1は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、mは1以上の整数を示す繰り返し単位数であり、x及びyは1〜4の整数である。)
2.前記(B)成分のマレイミド化合物が、分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するビスマレイミド化合物(a)又は下記一般式(II)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物(b)である前記1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2017066280
(式中、Aは下記の一般式(III)、(IV)、(V)、又は(VI)で表される残基であり、Aは下記の一般式(VII)で表される残基である。)
Figure 2017066280
(式中、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示す。)
Figure 2017066280
(式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、単結合、又は下記の一般式(IV−1)である。)
Figure 2017066280
(式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、又は単結合である。)
Figure 2017066280
(式中、iは1〜10の整数である。)
Figure 2017066280
(式中、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1〜8の整数である。)
Figure 2017066280
(式中、R10及びR11は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、水酸基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、フルオレン基、単結合、下記一般式(VII−1)、又は下記一般式(VII−2)である。)
Figure 2017066280
(式中、R12及びR13は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m−又はp−フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、フルオレン基、又は単結合である。)
Figure 2017066280
(式中、R14は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、A及びAは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、又は単結合である。)
3.前記(A)成分と(B)成分の含有割合が、(A):(B)=5〜80質量%:95〜20質量%の範囲である前記1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
4.更に、無機充填剤(C)を含有する前記1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
5.更に、難燃剤(D)を含有する前記1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
6.前記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、下記一般式(VIII)で表される分子中に少なくとも1つの一級アミノ基を有するフェノール化合物(c)と、下記一般式(IX)で表される構造を有するポリフェニレンエーテル(d)とを、有機溶媒中で反応させることにより主鎖にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)を得る工程を有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
Figure 2017066280
(式中、R15は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜4の整数である。)
Figure 2017066280
(式中、R16は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、yは1〜4の整数であり、kは1以上の整数である。)
7.前記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを有するプリプレグ。
8.前記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する金属張積層板。
9.前記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と3層以上の回路層とを有する多層プリント配線板。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に高周波特性(低誘電率、低誘電正接)、導体との高接着性、優れた耐熱性、低熱膨張特性、高難燃性及び高ガラス転移温度を有する。したがって、該樹脂組成物を用いて得られるプリプレグや積層板は、多層印刷配線板等の電子部品用途に好適に使用することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、分子中に前記一般式(I)で表されるポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)と、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類の熱硬化性樹脂(B)とを含有するものである。
なお、本明細書において、分子中に前記一般式(I)で表されるポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)を単に「芳香族ジアミン誘導体(A)」又は「(A)成分」ということがある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
まず、本発明の熱硬化性樹脂組成物における(A)成分である芳香族ジアミン誘導体(A)は、分子中に下記一般式(I)で表される構造を有する化合物である。ここで、前記芳香族ジアミン誘導体(A)は、下記一般式(I)が分子の末端構造に限定されるものでなく、例えば側鎖等を含めて分子の一部分を構成する構造単位として表される化合物も含まれる。
Figure 2017066280
(式中、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、mは1以上の整数を示す繰り返し単位数であり、x及びyは1〜4の整数である。)
上記式(I)中のmは、1以上の整数を示す繰り返し単位数であり、特に制限されるものではないが、1〜50であることが好ましい。本発明の分子内にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)の数平均分子量としては、例えば、5000〜12000であることが好ましく、7000〜10000であることがより好ましい。数平均分子量が5000以上の場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物、それを用いたプリプレグ及び積層板において、より良好なガラス転移温度が得られる。また、数平均分子量が、12000以下の場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物を積層板に用いた際に、より良好な成形性が得られる。
本発明の分子内にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)は、例えば、以下に例示する製造方法によって得ることができる。まず、下記一般式(VIII)で表される一級アミノ基含有フェノール化合物(c)と、下記一般式(IX)で表される構造を有する数平均分子量15000〜25000のポリフェニレンエーテル(d)とを有機溶媒中で、例えば公知の再分配反応をさせることにより、ポリフェニレンエーテルの低分子量化を伴いながら分子中にポリフェニレンエーテル構造を有する本発明の芳香族ジアミン誘導体(A)を製造することができる。
Figure 2017066280
(式中、R15は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜4の整数である。)
Figure 2017066280
(式中、R16及びyは、前記一般式(I)に示すR及びyに相当し、kは1以上の整数を示す繰り返し単位数である。)
前記一般式(VIII)で表される一級アミノ基含有フェノール化合物(c)としては、例えば、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール等が挙げられる。これらの中では、芳香族ジアミン誘導体(A)を製造する際の反応収率や樹脂組成物、プリプレグ及び積層板とした際の耐熱性の観点から、m−アミノフェノール、p−アミノフェノールが好ましい。
芳香族ジアミン誘導体(A)の分子量は、前記一般式(VIII)で表される一級アミノ基含有フェノール化合物(c)の配合量等によって制御できる場合があり、一級アミノ基含有フェノール化合物(c)の配合量が多いほど芳香族ジアミン誘導体(A)は低分子量化される。つまり、最終的に製造される本発明の芳香族ジアミン誘導体(A)の分子量が好適な数平均分子量となるように、一級アミノ基含有フェノール化合物(c)の配合量を適宜調整することができる。前記一般式(VIII)で表される一級アミノ基含有フェノール化合物(c)の配合量としては特に制限されるものではないが、例えば、前記一般式(IX)で表される構造を有する数平均分子量15000〜25000のポリフェニレンエーテル(d)の100質量部に対して0.5〜6質量部の範囲で使用することにより、上述した好適な数平均分子量の分子内にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)が得られる。
芳香族ジアミン誘導体(A)の製造工程で使用される有機溶媒は特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン、メシチレンが溶解性の観点から好ましい。
また、前記芳香族ジアミン誘導体(A)の製造工程では必要に応じて反応触媒を使用することができる。この反応触媒としては公知の再分配反応時における反応触媒を適用できる。例えば、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート等の有機過酸化物とナフテン酸マンガン等のカルボン酸金属塩とを併用して用いることが、より再現性良く安定した数平均分子量の芳香族ジアミン誘導体(A)を得られる点で好ましい。また、反応触媒の使用量は特に制限はない。例えば、前記一般式(IX)で表される構造を有する数平均分子量15000〜25000のポリフェニレンエーテル(d)の100質量部に対して、有機過酸化物を0.5〜5質量部、カルボン酸金属塩を0.05〜0.5質量部とすることが、芳香族ジアミン誘導体(A)を製造する際の反応速度やゲル化抑制等の観点から好ましい。
上述した合成原料、有機溶媒及び必要により反応触媒等を合成釜に所定量仕込み、反応させることにより芳香族ジアミン誘導体(A)が得られる。この工程では加熱、保温、攪拌しながら行うことが好ましく、また、反応温度、反応時間等の反応条件は、公知の再分配反応時における反応条件を適用できる。例えば、反応温度は70〜110℃、反応時間は1〜8時間の範囲で行うことが反応速度等の作業性やゲル化抑制等の観点から好ましい。
また、前記芳香族ジアミン誘導体(A)の製造工程における反応濃度(固形分濃度)は、特に制限はないが、例えば、10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。反応濃度が10質量%以上の場合、反応速度が遅くなりすぎず、製造コストの面で有利である。また、反応濃度が60質量%以下の場合、より良好な溶解性が得られ、攪拌効率が良く、またゲル化することも少なくなる。なお、本発明の芳香族ジアミン誘導体(A)を製造後は、合成釜から取り出す際の作業性や、芳香族ジアミン誘導体(A)に種々の熱硬化性樹脂を加えて樹脂組成物とする際の使用状況(例えば、プリプレグの製造に適した溶液粘度や溶液濃度)に合わせて、適宜、溶液中の有機溶媒の一部又は全部を除去して濃縮してもよく、有機溶媒を追加して希釈してもよい。追加する際の有機溶媒は特に制限はなく、上述した1種類以上の有機溶媒がそのまま適用できる。
前記の製造工程によって得られる本発明の一般式(I)で表される芳香族ジアミン誘導体(A)の生成は、その工程終了後に少量の試料を取り出し、GPC測定とIR測定により確認できる。GPC測定から数平均分子量15000〜25000のポリフェニレンエーテル(d)よりも分子量が低下し、かつ原材料の一般式(VIII)で表される一級アミノ基含有フェノール化合物のピークが消失していることを確認でき、また、IR測定から3300〜3500cm-1の一級アミノ基の出現により所望の芳香族ジアミン誘導体(A)が製造されていることを確認できる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記により製造された一般式(I)で表される芳香族ジアミン誘導体(A)と、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類の熱硬化性樹脂(B)(以下、(B)成分と呼ぶことがある)とを含有するものである。これによって一般式(IX)で表される構造を有し、一般式(I)で表される構造を有しないポリフェニレンエーテルと、上記(B)成分とを含有させた樹脂組成物、又は一般式(VIII)以外のフェノール化合物と一般式(IX)からなるポリフェニレンエーテル誘導体と、上記(B)成分とを含有する樹脂組成物よりも、導体との高接着性、耐熱性、低熱膨張特性、難燃性、加工性(ドリル加工、切削)等を更に向上させることができる。
(B)成分としてエポキシ樹脂を含有させる場合、特に制限されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂やナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、高周波特性、耐熱性、熱膨張特性、難燃性、及びガラス移転温度等を考慮すると、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
また、(B)成分としてエポキシ樹脂を用いる場合、必要に応じ、エポキシ樹脂の硬化剤や硬化助剤を併用することができる。これらは特に制限されるものではないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジシアンジアミド等のポリアミン化合物;ビスフェノールA、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等のポリフェノール化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物;各種カルボン酸化合物;各種活性エステル化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの使用量も特に制限されるものではなく、目的に応じて、適宜調整することができる。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張特性、保存安定性、及び絶縁信頼性の観点から、各種ポリフェノール系化合物、各種活性エステル系化合物を用いることが好ましい。
(B)成分としてシアネートエステル樹脂を含有させる場合、特に限定されるものではないが、例えば、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらは1種類を用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、安価である点や高周波特性、及びその他特性の総合バランスを考慮すると、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンを用いることが好ましい。
また、(B)成分としてシアネートエステル樹脂を用いる場合、必要に応じ、シアネートエステル樹脂の硬化剤を併用することができる。これらは特に限定されるものではないが、例えば、各種モノフェノール化合物、各種ポリフェノール化合物、各種アミン化合物、各種アルコール化合物、各種酸無水物、各種カルボン酸化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの使用量も特に制限されるものではなく、目的に応じて、適宜調整することができる。これらの中でも、高周波特性、耐熱性、耐吸湿性、及び保存安定性の観点から、各種モノフェノール化合物を用いることが好ましい。
シアネートエステル樹脂にモノフェノール化合物を併用する場合、溶媒への溶解性の観点から、シアネートエステル樹脂とモノフェノール化合物とがゲル化しない程度に予備反応させてフェノール変性シアネートプレポリマーとして用いることが好ましい。併用するモノフェノール化合物はプレポリマー化時に規定量全てを配合してもよく、プレポリマー化前後で規定量を分けて配合してもよいが、分けて配合する方がワニスの保存安定性の観点から好ましい。
(B)成分としてマレイミド化合物を用いる場合、特に限定されるものではないが、例えば、分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するビスマレイミド化合物(a)(以下、(a)成分と呼ぶことがある)、又は下記一般式(II)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物(b)(以下、(b)成分と呼ぶことがある)を含むことが好ましい。また有機溶媒への溶解性、高周波特性、導体との高接着性及びプリプレグの成形性の点からポリアミノビスマレイミド化合物(b)を用いることがより好ましい。ポリアミノビスマレイミド化合物(b)は、例えば、(a)成分と分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物(e)(以下、(e)成分と呼ぶことがある)とを有機溶媒中でマイケル付加反応させることにより得られる。
Figure 2017066280
(式中、Aは下記の一般式(III)、(IV)、(V)、又は(VI)で表される残基であり、Aは下記の一般式(VII)で表される残基である。)
Figure 2017066280
(式中、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示す。)
Figure 2017066280
(式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、単結合、又は下記の一般式(IV−1)である。)
Figure 2017066280
(式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、又は単結合である。)
Figure 2017066280
(式中、iは1〜10の整数である。)
Figure 2017066280
(式中、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1〜8の整数である。)
Figure 2017066280
(式中、R10及びR11は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、水酸基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、フルオレン基、単結合、下記一般式(VII−1)、又は下記一般式(VII−2)である。)
Figure 2017066280
(式中、R12及びR13は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m−又はp−フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、フルオレン基、又は単結合である。)
Figure 2017066280
(式中、R14は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、A及びAは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、又は単結合である。)
前記(a)成分の分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するビスマレイミド化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、下記一般式(X)で表されるビスマレイミド化合物が適用できる。例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、安価である点からビス(4−マレイミドフェニル)メタンが好ましく、誘電特性に優れ、低吸水性である点から3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミドが好ましく、導体との高接着性、伸びや破断強度等の機械特性に優れる点から2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましい。これらは目的、用途等に合わせて1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
Figure 2017066280
(B)成分として前記一般式(II)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物(b)を含有させる場合、この(b)成分は、前記(a)成分と分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物(e)とを有機溶媒中でマイケル付加反応させることにより得ることができる。
前記分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物(e)は、特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(1−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
また、これらの中でも、有機溶媒への溶解性が高く、合成時の反応率が高く、かつ耐熱性を高くできる点で、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましい。上記の溶解性、反応率、耐熱性に優れるのに加えて、安価であるという点からは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタンがより好ましい。また、上記の溶解性、反応率、耐熱性に優れるのに加えて、導体との高接着性を発現できる点からは、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンがより好ましい。上記の溶解性、反応率、耐熱性、導体との高接着性に優れるのに加えて、優れた高周波特性と低吸湿性を発現できる点からは、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンを用いることが更に好ましい。これらは目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
前記ポリアミノビスマレイミド化合物(b)を製造する際に使用される有機溶媒は特に制限はないが、例えば、上記の芳香族ジアミン誘導体(A)の製造工程で例示した有機溶媒が適用できる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。またこれらの中でも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが溶解性の観点から好ましい。
前記(b)成分を製造する際の(e)成分と(a)成分の使用量は、(e)成分の−NH2基当量(Ta2)と、(a)成分のマレイミド基当量(Tb2)との当量比(Tb2/Ta2)を1.0〜10.0の範囲とすることが好ましく、2.0〜10.0の範囲で配合することがより好ましい。上記範囲内で(e)成分と(a)成分を使用することにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、及び積層板において、良好な高周波特性、導体との接着性、耐熱性、難燃性、及びガラス転移温度が得られる。
前記ポリアミノビスマレイミド化合物(b)を製造する際のマイケル付加反応には必要に応じて反応触媒を使用してもよい。反応触媒としては、特に制限されるものではないが、上記の本発明の芳香族ジアミン誘導体(A)製造時のマイケル付加反応に使用できる反応触媒を適用することができる。反応触媒の配合量も上記のように、特に限定されるものではない。
また、(B)成分としてビスマレイミド化合物(a)、ポリアミノビスマレイミド化合物(b)等のマレイミド化合物を用いる場合、マレイミド化合物の硬化剤、架橋剤を併用することができる。これらは、特に制限されるものではないが、例えば、スチレンモノマー、ジビニルベンゼン及びジビニルビフェニル等の各種ビニル化合物;各種(メタ)アクリレート化合物、トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレート等の各種アリル化合物;ジアミノジフェニルメタン等の各種ポリアミン化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの使用量も特に制限されるものではなく、目的に応じて、適宜調整することができる。これらの中でも、高周波特性及び耐熱性の観点から、各種ビニル化合物や各種ポリアミン化合物を用いることが好ましい。
上記(a)成分、(e)成分、有機溶媒及び必要により反応触媒等を合成釜に所定量仕込み、マイケル付加反応させることによりポリアミノビスマレイミド化合物(b)が得られる。この工程は加熱、保温、攪拌しながら行うことが好ましく、また、反応温度、反応時間等の反応条件は、例えば、上記の本発明の芳香族ジアミン誘導体(A)製造時のマイケル付加反応時における反応条件を適用できる。反応濃度(固形分濃度)は、特に制限はないが、例えば、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。反応濃度が10質量%以上の場合、反応速度が遅くなりすぎず、製造コストの面で有利である。また、反応濃度が90質量%以下の場合、良好な溶解性が得られ、攪拌効率が良く、またゲル化することも少ない。なお、ポリアミノビスマレイミド化合物(b)の製造後は、芳香族ジアミン誘導体(A)の製造時と同様に目的に合わせて有機溶媒の一部又は全部を除去して濃縮してもよく、有機溶媒を追加して希釈することができる。
上記(A)成分と(B)成分の各々の使用量は、特に制限はないが、(A)成分と(B)成分の配合比率(固形分換算)が、(A):(B)=5〜80質量%:95〜20質量%の範囲となるように用いられることが好ましく、(A):(B)=5〜75質量%:95〜25質量%の範囲であることがより好ましく、(A):(B)=5〜70質量%:95〜30質量%の範囲であることが特に好ましい。樹脂組成物中の(A)成分の割合が5質量%以上であれば、より良好な高周波特性及び耐吸湿性が得られる。また、80質量%以下であれば、より良好な耐熱性、成形性及び加工性が得られる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填剤(C)(以下、(C)成分と呼ぶことがある)、難燃剤(D)(以下、(D)成分と呼ぶことがある)、硬化促進剤(E)(以下、(E)成分と呼ぶことがある)等を用いてもよい。これらを含有させることにより積層板とした際の諸特性を更に向上させることができる。例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物に任意に適切な無機充填剤を含有させることで、低熱膨張特性、高弾性率性、耐熱性、難燃性等を向上させることができる。また、適切な難燃剤を含有させることで、良好な難燃性を付与することができる。また、適切な硬化促進剤を含有させることで、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させ、高周波特性、耐熱性、導体との接着性、高弾性率性、ガラス転移温度等を向上させることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用する(C)成分としては、特に制限されるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。また、無機充填剤の形状及び粒径についても特に制限はないが、例えば、粒径0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μmのものが好適に用いられる。ここで、粒径とは、平均粒子径を指し、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことである。レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
(C)成分を用いる場合、その使用量は特に制限されるものではないが、例えば、(C)成分を含む熱硬化性樹脂組成物中の(C)成分の含有比率が3〜65体積%であることが好ましく、5〜60体積%であることがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物中の(C)成分の含有比率が上記の範囲である場合、良好な硬化性、成形性、及び耐薬品性が得られる。また、(C)成分を用いる場合、(C)成分の分散性や(C)成分と樹脂組成物中の有機成分との密着性を向上させる目的で、必要に応じ、カップリング剤を併用することが好ましい。カップリング剤としては特に限定されるものではなく、例えば、各種のシランカップリング剤やチタネートカップリング剤を用いることができる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。また、その使用量も特に限定されるものではなく、例えば、使用する(C)成分100質量部に対して0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.5〜3質量部とすることがより好ましい。この範囲であれば、諸特性の低下が少なく、上記の(C)成分の使用による特長を効果的に発揮できる。カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物中に(C)成分を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式ではなく、予め無機充填剤にカップリング剤を乾式又は湿式で表面処理した無機充填剤を使用する方式が好ましい。この方法を用いることで、より効果的に上記(C)成分の特長を発現できる。
本発明において(C)成分を用いる場合、(C)成分の熱硬化性樹脂組成物への分散性を向上させる目的で、必要に応じ、(C)成分を予め有機溶媒中に分散させたスラリーとして用いることが好ましい。(C)成分をスラリー化する際に使用される有機溶媒は特に制限はないが、例えば、上述した芳香族ジアミン誘導体(A)の製造工程で例示した有機溶媒が適用できる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。またこれらの中では、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが分散性の観点から好ましい。また、スラリーの不揮発分濃度は特に制限はないが、例えば、無機充填剤の沈降性や分散性の観点から、50〜80質量%が好ましく、60〜80質量%の範囲とすることがより好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用する(D)成分としては、特に制限されるものではないが、例えば、塩素系、臭素系、リン系、及び金属水和物等の難燃剤が挙げられる。環境配慮への適合性からは、リン系及び金属水和物系の難燃剤がより好適である。
リン系難燃剤を用いる場合、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル化合物;フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル等のホスフィン酸エステル;ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドやその誘導体である10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等;リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物、ホスフィン酸化合物の金属塩及び赤リン等のリン系難燃剤などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、芳香族リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸エステル、ホスフィン酸化合物の金属塩、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド及びその誘導体を用いると、高周波特性等の諸特性と難燃性を両立できるため好ましい。
難燃剤がリン系難燃剤である場合、その使用量は特に制限されるものではないが、例えば、固形分換算の熱硬化性樹脂組成物((C)成分を除くその他成分の総和)中のリン原子の含有量が0.2〜5.0質量%であることが好ましく、0.3〜3.0質量%であることがより好ましい。リン原子の含有量が0.2質量%以上の場合、より良好な難燃性が得られる。また、リン原子の含有量が5.0質量%以下である場合、より良好な成形性、耐熱性、ガラス転移温度、及び導体との接着性が得られる。
金属水和物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。その使用量は限定されず、例えば、熱硬化性樹脂組成物全体に対して3〜65体積%であることが好ましく、5〜60体積%であることがより好ましい。
(D)成分として臭素系難燃剤を用いる場合は、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂;ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤;トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート及び臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。また、これらの中でも、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンを用いると、高周波特性、耐熱性、導体との接着性、ガラス転移温度等の諸特性と難燃性を両立できるため好ましい。
難燃剤(D)が臭素系難燃剤である場合、その使用量は、特に制限されるものではないが、例えば、固形分換算の熱硬化性樹脂組成物((C)成分を除く他成分の総和)中の臭素原子の含有量が3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。臭素原子の含有量が3質量%以上の場合、より良好な難燃性が得られる。また、臭素原子の含有量が30質量%以下の場合、より良好な成形性、耐熱性、ガラス転移温度、及び導体との接着性が得られる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機系難燃助剤も含有することができる。無機系難燃助剤を使用する場合の使用量は、特に制限されるものではないが、例えば、固形分換算の熱硬化性樹脂組成物((A)成分と(B)成分の総和)100質量部に対して、0.1〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。このような範囲で無機系難燃助剤を用いると、より良好な耐薬品性が得られる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に(E)成分を含有させる場合、使用する(B)成分の種類に合わせて好適な(E)成分を用いることができる。(B)成分としてエポキシ樹脂を用いる場合の(E)成分としては、例えば、各種イミダゾール化合物及びその誘導体、各種第3級アミン化合物、各種第4級アンモニウム化合物、各種リン系化合物(トリフェニルホスフィン等)等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、各種イミダゾール化合物又はその誘導体若しくは各種リン系化合物を用いることが、耐熱性、ガラス転移温度、及び保存安定性の観点から好ましい。
(B)成分としてシアネートエステル樹脂を用いる場合の(E)成分としては、例えば、各種イミダゾール化合物及びその誘導体、マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩やこれら遷移金属のアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、有機金属化合物を用いることが、耐熱性、ガラス転移温度、保存安定性等の観点から好ましい。
(B)成分としてマレイミド化合物を用いる場合の(E)成分としては、例えば、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン化合物;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物;第3級アミン化合物、第4級アンモニウム化合物及びトリフェニルホスフィン等のリン系化合物;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、イミダゾール化合物、有機過酸化物を用いることが、耐熱性、ガラス転移温度、保存安定性等の観点から好ましく、イミダゾール化合物と有機過酸化物を併用することが、耐熱性、ガラス転移温度、高弾性率性、及び低熱膨張特性をより高めることができるため特に好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に(E)成分を含有させる場合、その使用量は、特に制限されるものではないが、例えば、本発明の(A)成分及び(B)成分の総和(固形分換算)100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.01〜5質量部とすることがより好ましい。このような範囲で(E)成分を用いると、良好な耐熱性及び保存安定性が得られる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー等の樹脂材料、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等の各種添加剤を含有させることができる。これらの使用量は特に限定されるものではない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物、及び樹脂ワニスは、(A)成分、(B)成分、必要に応じて併用される(C)〜(E)成分、及び各種添加剤等、並びに上記各成分に有機溶媒が含有されていない場合は、必要に応じ、有機溶媒を公知の方法で混合し、攪拌しながら溶解又は分散させることにより得ることができる。この際、混合順序、混合及び攪拌時の温度及び時間等の条件は、特に限定されず任意に設定することができる。
本発明の樹脂ワニスは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解又は分散させて得られるものである。また、樹脂ワニスとする場合、プリプレグを製造する際の適した塗工作業性(ワニス粘度、ワニス濃度)に合わせて、必要に応じて有機溶媒を除去又は追加することができる。樹脂ワニスを製造する際又は追加する際に必要に応じて使用される有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、上記の芳香族ジアミン誘導体(A)の製造時に例示された有機溶媒が適用できる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
なお、本明細書において「樹脂ワニス」は「樹脂組成物」に包含され、組成的には「有機溶媒を含有する樹脂組成物」と同義である。
また、樹脂ワニスを調製する際のワニス中の固形分(不揮発分)濃度は、上述したように塗工作業性に合わせて設定できるが、例えば、30〜80質量%の範囲となるように有機溶媒の使用量を調節することが好ましい。この範囲の樹脂ワニスを用いることで、基材への含浸性や製造されるプリプレグの外観がより良好で、かつ所望の厚み(後述するプリプレグ中の樹脂含有率)となるようなプリプレグの製造が容易となる。
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物(樹脂ワニス)とシート状繊維補強基材とを有する。本発明のプリプレグは、例えば、シート状繊維補強基材に塗工し、乾燥させて得られるものである。乾燥条件としては、例えば、乾燥炉中で通常、80〜200℃の温度で、1〜30分間の条件を選択できる。この際、該基材に対する本発明の熱硬化性樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグ中の樹脂含有率として30〜90質量%となるように塗工することが好ましい。樹脂含有率を上記の範囲とすることで積層板とした際、より良好な成形性が得られる。
プリプレグのシート状繊維補強基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている公知のものが用いられる。その材質としては、例えば、Eガラス、NEガラス、Sガラス及びQガラス等の無機繊維;ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維などが挙げられ、織布、不織布、チョップドストランドマット等の形状を有するものが使用できる。また、シート状繊維補強基材の厚みは特に制限されず、例えば、約0.02〜0.5mmのものを用いることができる。また、カップリング剤等で表面処理したものや、機械的に開繊処理を施したものが、樹脂ワニスの含浸性、積層板とした際の耐熱性、耐吸湿性、及び加工性の観点から好適に使用できる。
本発明の金属張積層板は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する。本発明の金属張積層板は、例えば、本発明のプリプレグを1枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱加圧成形して得られるものである。金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。加熱加圧成形の条件は特に制限されるものではなくが、例えば、温度が100℃〜300℃、圧力が0.2〜10.0MPa、時間が0.1〜5時間の範囲で実施することができる。また加熱加圧成形は真空プレス等を用いて真空状態を0.5〜5時間保持することが好ましい。
また、本発明の多層プリント配線板は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と3層以上の回路層とを有する。本発明の多層プリント配線板は、例えば、本発明のプリプレグ及び金属張積層板の少なくともいずれかを用いて形成されるものである。本発明の多層プリント配線板は、本発明のプリプレグ及び金属張積層板の少なくともいずれかを用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等による回路形成加工及び多層化接着加工を行うことによって製造することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、金属張積層板及び多層プリ
ント配線板は、1GHz以上の高周波信号を扱う電子機器の製造に好適に用いることができ、特に10GHz以上の高周波信号を扱う電子機器の製造に好適に用いることができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であ
り、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[芳香族ジアミン誘導体(A)の製造]
下記手順、表1の配合量に従って、分子中にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)を製造した。
(製造例A−1:芳香族ジアミン誘導体(A−1)の製造)
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積2リットルのガラス製フラスコ容器に、トルエン、数平均分子量が約16000のポリフェニレンエーテル、p−アミノフェノールを投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定、保温して撹拌しながら溶解した。溶解を確認後、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネートとナフテン酸マンガンとを添加し、溶液温度90℃で4時間反応させた後、70℃に冷却して主鎖にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)を得た。この反応溶液を少量取り出し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、測定を行ったところ、p−アミノフェノールに由来するピークが消失し、かつ芳香族ジアミン誘導体(A)の数平均分子量は約9200であった。また少量取り出した反応溶液をメタノール/ベンゼン混合溶媒(混合質量比:1:1)に滴下、再沈殿させて精製した固形分(反応生成物)のFT−IR測定を行ったところ、3400cm-1付近の一級アミノ基由来ピークの出現が確認された。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40)[東ソー株式会社製、商品名])を用いて3次式で近似した。GPCの条件は、以下に示す。
装置:(ポンプ:L−6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(検出器:L−3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(カラムオーブン:L−655A−52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])
カラム:ガードカラム;TSKgel Guardcolumn HHR−L
+カラム;TSKgel−G4000HHR
+TSKgel−G2000HHR(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
(製造例A−2:芳香族ジアミン誘導体(A−2)の製造)
製造例A−1において、p−アミノフェノールの代わりに、m−アミノフェノールを用いたこと以外は、製造例A−1と同様にして製造例A−2の芳香族ジアミン誘導体(A−2)を製造した。芳香族ジアミン誘導体(A−2)の数平均分子量は約9400であった。
[低分子量ポリフェニレンエーテルの製造]
前記特許文献7及び8の実施例を参考にして、下記手順に従い、下記表1の配合量に基づいて、比較材料である低分子量ポリフェニレンエーテル(R−1〜R−2)を製造した。
(比較製造例R−1:低分子量ポリフェニレンエーテル(R−1)の製造)
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積2リットルのガラス製フラスコ容器に、トルエン、数平均分子量が約16000のポリフェニレンエーテル、ビスフェノールAを投入した。液温を80℃に保温して撹拌、溶解した。溶解確認後、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、及びナフテン酸コバルトを配合し、1時間反応させることによって低分子量ポリフェニレンエーテル(R−1)を得た。この低分子量ポリフェニレンエーテル(R−1)のGPC(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を測定したところ約8000であった。
(比較製造例R−2:低分子量ポリフェニレンエーテル(R−2)の製造)
前記製造例R−1において、ビスフェノールAを下記表1(R−2’)に示す配合量で用いたこと以外は比較製造例R−1と同様にして低分子量ポリフェニレンエーテル溶液を得た。この溶液に多量のメタノールを加えて低分子量ポリフェニレンエーテルを再沈殿させた後、減圧下80℃/3時間で乾燥して有機溶媒を除去して固形の低分子量ポリフェニレンエーテル(R−2’)を得た。次いで、この得られた低分子量ポリフェニレンエーテル(R−2’)、クロロメチルスチレン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トルエンを温度計、還流冷却管、撹拌装置及び滴下ロートを備えた加熱及び冷却可能な容積2リットルのガラス製フラスコ容器に投入した。液温を75℃に保温して撹拌、溶解した後、この溶液に水酸化ナトリウム水溶液を20分間で滴下し、75℃で更に4時間撹拌し、反応させた。次に、10%塩酸水溶液でフラスコ内容物を中和した後、多量のメタノールを追加して再沈殿させた後、ろ過した。ろ過物をメタノール:水=80:20の比率の混合液300mlで3回洗浄した後、減圧下80℃/3時間乾燥して、末端をエテニルベンジル化した低分子量ポリフェニレンエーテル(R−2)を得た。この低分子量ポリフェニレンエーテル(R−2)のGPC(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を測定したところ約3000であった。
なお、表1において有機溶媒A及び有機溶媒Bの項は比較製造例R−2における投入タイミングにより便宜的に区別したものであり、用いたトルエンは同一のものである。
[ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造]
下記手順に従い、下記表1の配合量に基づいて、比較材料であるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー(R−3)を製造した。
(比較製造例R−3:ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー(R−3)の製造)
温度計、還流冷却管、減圧濃縮装置、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積2リットルのガラス製フラスコ容器に、トルエン、数平均分子量が約16000のポリフェニレンエーテルを投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。次いで、ポリブタジエン樹脂、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンを入れ、撹拌、溶解させた。液温を110℃にした後、反応開始剤として、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを配合し、撹拌しながら1時間反応させて、ポリフェニレンエーテルの存在下でブタジエン樹脂とビスマレイミドを予備反応させた。更に液温を80℃に設定後、撹拌しながら溶液の固形分濃度が45質量%となるように減圧濃縮後、冷却して比較製造例R−3のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液を得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー(R−3)溶液中のビス(4−マレイミドフェニル)メタンの転化率(100からビス(4−マレイミドフェニル)メタンの未転化分(測定値)を引いた値)は、GPC(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)により測定したところ30%であった。
[ポリアミノビスマレイミド化合物(B−1〜4)及びフェノール変性シアネートプレポリマー(B−5)の製造]
下記手順に従い、下記表2の配合量に基づいて、ポリアミノビスマレイミド化合物(B−1〜4)及びフェノール変性シアネートプレポリマー(B−5)を製造した。
(製造例B−1:ポリアミノビスマレイミド化合物(B−1)の製造)
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積1リットルのガラス製フラスコ容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを投入し、液温を120℃に保ったまま、撹拌しながら3時間反応させた後、冷却及び200メッシュ濾過して製造例B−1のポリアミノビスマレイミド化合物(B−1)を製造した。
(製造例B−2:ポリアミノビスマレイミド化合物(B−2)の製造)
製造例B−1において、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンと4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタンの代わりに、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンと2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを下記表2に示す配合量で用いたこと以外は、製造例B−1と同様にして製造例B−2のポリアミノビスマレイミド化合物(B−2)を製造した。
(製造例B−3:ポリアミノビスマレイミド化合物(B−3)の製造)
製造例B−1において、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンと4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタンの代わりに、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンと4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンを下記表2に示す配合量で用いたこと以外は、製造例B−1と同様にして製造例B−3のポリアミノビスマレイミド化合物(B−3)を製造した。
(製造例B−4:ポリアミノビスマレイミド化合物(B−4)の製造)
製造例B−1において、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンと4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタンの代わりに、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド及び4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンを下記表2に示す配合量で用いたこと以外は、製造例B−1と同様にして製造例B−4のポリアミノビスマレイミド化合物(B−4)を製造した。
(製造例B−5:フェノール変性シアネートプレポリマー(B−5)の製造)
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積1リットルのガラス製フラスコ容器に、トルエン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、p−(α−クミル)フェノールを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保ったまま、攪拌しながら反応触媒としてナフテン酸亜鉛を投入して3時間反応させた後、冷却及び200メッシュ濾過して、製造例B−5のフェノール変性シアネートプレポリマー溶液(B−5)を製造した。
なお、各製造例において「溶解」は目視で確認した。
[調製例1〜11、比較調製例1〜7の熱硬化性樹脂組成物(樹脂ワニス)の調製]
上記で得られた製造例A−1〜A−2の芳香族ジアミン誘導体、製造例B−1〜B−4のポリアミノビスマレイミド化合物、製造例B−5のフェノール変性シアネートプレポリマー、比較製造例R−1〜R−2の低分子量ポリフェニレンエーテル及び比較製造例R−3のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー、並びに前記数平均分子量が約16000の一般的なポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド化合物及びトリアリルイソシアヌレートの各種熱硬化性樹脂、無機充填剤、難燃剤、硬化促進剤、有機溶媒等を用いて、これらの材料を下記の表3及び表4の配合量に従って60℃で加熱しながら攪拌、混合して、固形分(不揮発分)濃度約40〜60質量%の熱硬化性樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製した。
ここで、無機充填剤の配合量としては、通常、樹脂組成物(無機充填材を除く)の密度が1.20〜1.25g/cm3であり、用いた無機充填剤の密度が2.2〜3.01g/cm3であることから、無機充填剤を樹脂組成物100質量部に対して80質量部配合した場合、30〜34体積%程度となる。
なお、下記の表1〜4における各材料の略号等は、以下の通りである。
(1)ポリフェニレンエーテル
・PPO640(数平均分子量:約16000、SABICイノベーティブプラスチックス社製)
(2)フェノール化合物
・p−アミノフェノール:イハラケミカル工業株式会社製
・m−アミノフェノール:イハラケミカル工業株式会社製
・ビスフェノールA:2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、三菱化学株式会社製
・p−(α−クミル)フェノール:三井化学ファイン株式会社製
(3)ビスマレイミド化合物
・BMI−1000:ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(大和化成工業株式会社製)
・BMI−5100:3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社製)
・BMI−4000:2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(大和化成工業株式会社製)
(4)ポリブタジエン樹脂
・B−3000:ブタジエンホモポリマー(数平均分子量:約3000、日本曹達株式会社製)
(5)反応触媒及び硬化促進剤
・パーブチル(登録商標)−I:t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(日油株式会社製)
・パーヘキサTMH:1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日油株式会社製)
・ナフテン酸マンガン:和光純薬工業株式会社製
・ナフテン酸コバルト:和光純薬工業株式会社製
・ナフテン酸亜鉛:和光純薬工業株式会社製
・パーブチル(登録商標)P:α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、商品名(日油株式会社製)
・G−8009L:イソシアネートマスクイミダゾール(ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2−エチル−4−メチルイミダゾールの付加反応物)、商品名(第一工業製薬株式会社製)
(6)有機溶媒
・トルエン:関東化学株式会社製
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:関東化学株式会社製
・メチルエチルケトン:三協化学株式会社製
・シクロヘキサノン:三協化学株式会社製
(7)ビニルベンジル化合物
・CMS:クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン/m−クロロメチルスチレン比=50/50(東京化成工業株式会社製)
(8)相間移動触媒
・テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド:東京化成工業株式会社製
(9)金属水酸化物
・50%NaOH水溶液:和光純薬工業株式会社製
(10)ジアミン化合物
・KAYAHARD−AA:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタン(日本化薬株式会社製)
・BAPP:2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(和歌山精化工業株式会社製)
・ビスアニリン−P:4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン(三井化学株式会社製)
・ビスアニリン−M:4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン(三井化学株式会社製)
(11)シアネートエステル樹脂
・BADCy:Primaset(登録商標)BADCy、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、商品名(ロンザ社製)
(12)熱硬化性樹脂
・BMI−4000:上記と同様
・NC−3000H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製)
・NC−7000L:ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製)
・BA−230S:2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンのプレポリマー、商品名(固形分濃度75質量%、ロンザ社製)
・TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製)
(13)無機充填剤
・SC−2050KNG:球状溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm、表面処理:ビニルシランカップリング剤(1質量%/固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、固形分濃度70質量%、密度2.2g/cm3、株式会社アドマテックス製)
・AlOOH:ベーマイト型水酸化アルミニウム、密度3.0g/cm3(河合石灰工業株式会社製)
(14)難燃剤(D)
・OP−935:ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩(リン含有量:23.5質量%、クラリアント社製)
・HCA−HQ:10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、環状有機リン化合物、リン含有量9.6質量%、商品名(三光株式会社製)
・PX−200:1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(芳香族縮合型リン酸エステル、リン含有量:9質量%、大八化学工業株式会社製)
(15)相溶化剤
・タフプレンA:スチレン−ブタジエンブロック共重合体、商品名(旭化成ケミカルズ株式会社製)
Figure 2017066280
Figure 2017066280
Figure 2017066280
Figure 2017066280
[熱硬化性樹脂組成物及び樹脂ワニスの相容性評価]
上記で得られた樹脂ワニス及びこれを160℃で10分間乾燥して有機溶媒を揮発させた後の外観を目視で観察して、それぞれの相容性(巨視的(マクロ)な相分離やムラの有無)を以下の基準に従い評価した。その評価結果を下記のプリプレグ及び銅張積層板の特性評価結果と共に下記の表5〜表7に示す。
○:巨視的(マクロ)な相分離又は不均一なムラがない。
×:巨視的(マクロ)な相分離又は不均一なムラがある。
[プリプレグ及び銅張積層板の作製]
前記樹脂ワニスを、厚さ0.1mmのガラス布(Eガラス、日東紡績株式会社製)に塗工した後、160℃で7分間加熱乾燥して、樹脂含有量(樹脂分)約54質量%のプリプレグを作製した。これらのプリプレグ6枚を重ね、その上下に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(FV−WS、M面Rz:1.5μm、古河電気工業株式会社製)をM面が接するように配置し、温度230℃(ただし、比較例調製例5〜6は200℃)、圧力3.9MPa、時間180分間の条件で加熱加圧成形して、両面銅張積層板(厚さ:0.8mm)を作製した。なお、調製例1〜11の樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグ及び銅張積層板が実施例1〜11に、比較調製例1〜7の樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグ及び銅張積層板が比較例1〜7にそれぞれ相当する。
[プリプレグの外観評価]
上記で得られたプリプレグの外観を観察した。外観は目視により評価し、プリプレグ表面に多少なりともムラ、スジ、発泡、相分離等があり、不均一又は表面平滑性に欠けるものを×とし、前記のような外観上の異常がないものを○とした。その評価結果を下記の表5及び表6に示す。
[銅張積層板の特性評価]
上記で得られた銅張積層板について、成形性、誘電特性、銅箔引きはがし強さ、ガラス転移温度、熱膨張係数、はんだ耐熱性及び難燃性を評価した。その評価結果を下記の表5及び表6に示す。銅張積層板の特性評価方法は、以下の通りである。
(1)成形性
両面の銅箔をエッチングした積層板の外観を観察して成形性を評価した。成形性は目視により評価し、多少なりともムラ、スジ、カスレ、ボイド等があり、均一性又は表面平滑性に欠けるものを×、前記のような外観上の異常がないものを○とした。
(2)誘電特性
誘電特性(比誘電率、誘電正接)は、JPCA−TM001(トリプレート共振器法)に準拠して、3GHz帯及び10GHz帯で測定した。
(3)銅箔引きはがし強さ
銅箔引きはがし強さは、JIS−C−6481に準拠して測定した。
(4)はんだ耐熱性
はんだ耐熱性は、両面の銅箔をエッチングした50mm角の試験片を用いて、常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(1、3及び5時間)処理した後のものを、288℃の溶融はんだ中に20秒間浸漬した後の試験片の外観を目視観察した。なお、表中の数字は、はんだ浸漬後の試験片3枚のうち、積層板内に膨れやミーズリングの発生等の異常が認められなかったものの枚数を意味する。
(5)ガラス転移温度(Tg)及び熱膨張係数
Tgと熱膨張係数(板厚方向、温度範囲:30〜150℃)は、両面の銅箔をエッチングした5mm角の試験片を用いて、TMA(TAインスツルメント社製、Q400)により、IPC法に準拠して測定した。
(6)難燃性
難燃性は、UL−94垂直試験法に準拠して測定した。
Figure 2017066280
Figure 2017066280
表5に示した結果から明らかなように、本発明の実施例においては、樹脂ワニスと樹脂組成物の相容性及びプリプレグの外観(均一性)に優れる。また、これらを用いて作製した銅張積層板は、成形性、高周波特性(誘電特性)、導体との接着性、はんだ耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張特性及び難燃性の全てにおいてバランスよく良好である。
一方、表6が示すように、比較例においては、樹脂ワニス及び樹脂組成物の相容性やプリプレグの外観(均一性)が劣るものがある(比較例1〜4)。また各比較例の銅張積層板は、成形性、誘電特性、導体との接着性、はんだ耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張特性及び難燃性の全てにおいて所望の特性を満足するものはなく、いずれかの特性に劣っている。
本発明の特定構造を有する芳香族ジアミン誘導体及び特定の熱硬化性樹脂を用いることにより、相容性が良好で、特に高周波特性(低誘電率、低誘電正接)、導体との高接着性、優れた耐熱性、低熱膨張特性、V−1以上の高難燃性及び高ガラス転移温度を有する熱硬化性樹脂組成物が得られる。また、前記熱硬化性樹脂組成物は、原材料コストや基板材料の製造コストを低く抑えられ、更に作業環境性にも優れるため、この熱硬化性樹脂組成物を用いて提供される樹脂ワニス、プリプレグ、及び積層板は多層印刷配線板等の電子部品用途に好適に使用することができる。

Claims (9)

  1. 分子中に下記一般式(I)で表されるポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)と、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2017066280
    (式中、R1は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、mは1以上の整数を示す繰り返し単位数であり、x及びyは1〜4の整数である。)
  2. 前記(B)成分のマレイミド化合物が、分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するビスマレイミド化合物(a)又は下記一般式(II)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物(b)である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2017066280
    (式中、A1は下記の一般式(III)、(IV)、(V)、又は(VI)で表される残基であり、Aは下記の一般式(VII)で表される残基である。)
    Figure 2017066280
    (式中、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示す。)
    Figure 2017066280
    (式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、単結合、又は下記の一般式(IV−1)である。)
    Figure 2017066280
    (式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、又は単結合である。)
    Figure 2017066280
    (式中、iは1〜10の整数である。)
    Figure 2017066280
    (式中、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1〜8の整数である。)
    Figure 2017066280
    (式中、R10及びR11は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、水酸基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、フルオレン基、単結合、下記一般式(VII−1)、又は下記一般式(VII−2)である。)
    Figure 2017066280
    (式中、R12及びR13は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m−又はp−フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、フルオレン基、又は単結合である。)
    Figure 2017066280
    (式中、R14は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、A及びAは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボキシ基、ケトン基、又は単結合である。)
  3. 前記(A)成分と(B)成分の含有割合が、(A):(B)=5〜80質量%:95〜20質量%の範囲である請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 更に、無機充填剤(C)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 更に、難燃剤(D)を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、下記一般式(VIII)で表される分子中に少なくとも1つの一級アミノ基を有するフェノール化合物(c)と、下記一般式(IX)で表される構造を有するポリフェニレンエーテル(d)とを、有機溶媒中で反応させることにより主鎖にポリフェニレンエーテル構造を有する芳香族ジアミン誘導体(A)を得る工程を有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。

    Figure 2017066280
    (式中、R15は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜4の整数である。)
    Figure 2017066280
    (式中、R16は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、yは1〜4の整数であり、kは1以上の整数である。)
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを有するプリプレグ。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する金属張積層板。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と3層以上の回路層とを有する多層プリント配線板。
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