JP5469320B2 - ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線板の絶縁材料として好ましく用いられるポリフェニレンエーテル樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板に関する。
近年の情報通信分野で用いられる電子機器においては、信号の大容量化や高速化が進展している。そのために、高周波特性が良く、配線数を増加するための高多層化に対応できるようなプリント配線板が要求されている。
このような電子機器に用いられるプリント配線板においては、MHz帯からGHz帯という高周波領域における信頼性を維持するために、低誘電率(ε)及び低誘電正接(tanδ)が要求される。従来から、このような電気特性を有するプリント配線板として、その絶縁層に、PPE樹脂組成物を用いたものが知られていた。
PPEは優れた誘電特性を示す。しかしながら、PPEは粘度が高く、成形性が悪いという問題があった。このような問題を解決するために、例えば、数平均分子量が10000〜30000のようなPPEを溶媒中でフェノール種とラジカル開始剤との存在下で再分配反応させて、数平均分子量が2000〜8000程度にまで低下させて得られる低分子量のPPEを用いる技術が知られている。しかしながら、PPEを低分子量化させた場合には、耐熱性が低下するという問題があった。
上記のような問題を解決すべく、PPEにエポキシ樹脂やシアネート樹脂を配合したPPE樹脂組成物も知られている(例えば、下記特許文献1参照)。しかしながら、再分配反応により得られたPPEにエポキシ樹脂やシアネート樹脂を配合して得られるPPE樹脂組成物には未反応あるいは殆ど再分配反応されていない高分子量のPPEが少なからず残留し、その高分子量のPPEが時間の経過や温度変化とともに析出するためにワニスのポットライフが悪いという問題があった。
一方、再分配反応を得ることなく重合により直接製造された数平均分子量が1000〜8000程度のPPEも市販されている。このようなPPEは比較的ポットライフの安定性に優れている。しかしながら、重合により低分子量PPEを直接製造するための製造プロセスは煩雑であり、数平均分子量1500以下のように分子量が特に低いPPEは非常に高価である。従って、汎用的な用途にそのような高価なPPEを使用することは困難であった。
特開2005−290124号公報
本発明は、数平均分子量が比較的低いPPEをさらに再分配反応させることにより、数平均分子量1500以下で分子量分布が狭いPPEを低コストで製造し、これによりエポキシ樹脂やシアネート樹脂を配合してもポットライフに優れるポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得ることを目的とする。
本発明者らは、高分子量PPEの再分配反応により得られる、低コストで製造しうる数平均分子量が1500以下のPPEを用いて、ポットライフ性に優れたエポキシ樹脂やシアネート樹脂を配合して得られるPPE樹脂組成物を得る方法を鋭意検討した。その際に、重合によって直接製造される数平均分子量1500以下のPPEは重合反応を充分に制御しうるために、比較的分子量分布の低いシャープなPPEが得られるのに対し、通常の再分配反応により得られる低分子量PPEは分子量のばらつきが大きく、分子量分布が広いことに気付いた。そして、本発明者らは、再分配反応後のPPE生成物中には、高分子量PPEが多く残存し、この高分子量PPEが溶剤溶解性が悪く、また、時間の経過や温度変化とともに析出物を生成したり、ワニスのポットライフを低下させたりする原因になると考え、本発明に相当するに至った。
すなわち、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、数平均分子量が1500以下のポリフェニレンエーテル(A)とエポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物(B)とを配合して得られるポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、前記ポリフェニレンエーテル(A)が、数平均分子量1800〜3000のポリフェニレンエーテルを、フェノール種とラジカル開始剤との存在下で溶媒中で再分配反応させて得られたものであることを特徴とする。本発明によれば、数平均分子量が10000〜30000のようなPPEを再分配反応させて、数平均分子量が1500以下にまで低下させて得られるような低分子量PPEに比べて、高分子量のPPEが残りにくく、そのために、分子量分布が狭くなる。従って、ポットライフに優れたエポキシ樹脂やシアネート樹脂が配合されたポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる。また、重合法により低分子量PPEを直接製造するときのような精密な反応制御が必要ないために、低コストで製造することができる。
前記ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布(M/M)としては2〜4の範囲であることが、ポットライフや溶解性に優れる点から好ましい。
また、前記フェノール種が、1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール系化合物である場合には反応点が2個以上あることにより、再分配反応が効率よく行われる点から好ましい。
また、前記1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール系化合物がビスフェノールAである場合には、両末端に水酸基を有するポリフェニレンエーテルが得られるために、架橋密度が高くなって耐熱性に優れた硬化物が得られる点から好ましい。
また、(B)成分が、前記ポリフェニレンエーテル(A)とエポキシ化合物とを反応させることによりポリフェニレンエーテル−エポキシ化合物予備反応物を形成した後、さらにシアネートエステル化合物を添加するように配合されたものである場合には、よりポットライフ性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる点から好ましい。
また、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、ホスフィン酸塩化合物を5〜30質量%含有する場合には、優れた誘電特性や耐熱性を維持しながら充分な難燃性を維持しうる点から好ましい。
また、本発明のプリプレグは上記いずれかのポリフェニレンエーテル樹脂組成物を繊維質基材に含浸及び乾燥させて得られることを特徴とするものである。
また、本発明の金属張積層板は上記プリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られることを特徴とする。
また、本発明のプリント配線板は、上記金属張積層板の表面の金属箔を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とする。
本発明によれば、耐熱性に優れた硬化物を与える、ワニスのポットライフ性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物が低コストで得られる。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、数平均分子量が1500以下のポリフェニレンエーテル(A)とエポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物(B)とを配合して得られるポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、前記ポリフェニレンエーテル(A)が、数平均分子量1800〜3000のポリフェニレンエーテルを、フェノール種とラジカル開始剤との存在下で溶媒中で再分配反応させて得られたものであることを特徴とする。
本発明における(A)数平均分子量が1500以下のポリフェニレンエーテルは、数平均分子量1800〜3000のポリフェニレンエーテルをトルエン等の溶媒中で、フェノール種とラジカル開始剤の存在下で加熱し再分配反応させて得られたものである。
前記再分配反応に供される数平均分子量1800〜3000のPPEは、数平均分子量が10000〜30000のようなPPEを、溶媒中でフェノール種とラジカル開始剤との存在下で再分配反応させて得られたものや、重合反応により直接得られた市販の数平均分子量が1800〜3000のようなPPEが特に限定なく用いられうる。PPEの具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)またはその誘導体等が挙げられる。
また、前記再分配反応に用いられるフェノール種としては、特に限定されないが、例えばビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のように、フェノール性水酸基を分子内に2個以上有する多官能フェノール系化合物や2,6−キシレノール等の単官能フェノール系化合物が好ましく用いられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ビスフェノールAが、再分配反応が効率よく行われ、後述する両末端に水酸基を有するPPEが得られる点から好ましい。
ポリフェニレンエーテル(A)の数平均分子量は、1500以下であり、好ましくは1200以下、さらに好ましくは1000以下である。前記数平均分子量が1500を超える場合には流動性が悪くなったり、硬化反応に長い時間を要したり、エポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物(B)との相溶性が低下して硬化系に取り込まれず未反応のものが増加してガラス転移温度が低下し、十分な耐熱性の改善が望めなくなる恐れがある。
なお、一般的に、再分配反応により得られるポリフェニレンエーテルの分子量は、再分配反応においては、用いるフェノール種の配合量を調整することによりできる。フェノール種の配合量が多ければ多いほど、その分子量は低くなる。従って、フェノール種の配合量等を調整することにより、数平均分子量が10000〜30000のような高分子量のPPEから、数平均分子量は、1500以下のようなPPEを直接得ることもできる。しかしながら、数平均分子量が10000〜30000のような高分子量のPPEから再分配反応により直接得られた、数平均分子量が1500以下のPPEには、高分子量のPPEが残存しやすく、分子量分布が広いものであった。このような再分配反応により直接得られた数平均分子量が1500以下のPPEは、ワニスのポットライフが低かったり、溶解性が低いといった問題を有する。
ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布(M/M:Mは重量平均分子量、Mは数平均分子量である)としては、2〜4、さらには2〜3の範囲であることが好ましい。ポリフェニレンエーテル(A)がこのように狭い分子量分布を有するものである場合には、ワニスのポットライフにより優れたものになる。
上記再分配反応により得られるPPEとしては、例えば、下記一般式(I)で示されるような分子鎖の両末端に硬化に寄与する水酸基を有するものが、高い耐熱性を維持することができる点から好ましい。
Figure 0005469320
(一般式(I)中、xは2価の有機基であり、Rは何れも同じであっても異なっていても良い、水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、m及びnは整数を示す)
上記Xとしては、炭素数1〜3のアルキレン基、または、下記一般式(II)又は(III)で示されるような基であることが好ましい。
Figure 0005469320
Figure 0005469320
(一般式(II)、(III)中、Rは何れも同じであっても異なっていても良い、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、(B)エポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物が配合される。エポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物(B)は、ポリフェニレンエーテル(A)成分と架橋構造またはIPN(Interpenetrating Polymer Network)構造を形成することにより耐熱性等を付与する成分として機能する。
エポキシ化合物としては、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するようなエポキシ化合物であれば特に限定なく用いられうる。その具体例としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物がポリフェニレンエーテルとの相溶性が良い点から好ましく用いられる。なお、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、ハロゲン化エポキシ化合物を含有しないことが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて配合してもよい。
シアネートエステル化合物としては、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナートフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)エタン等またはこれらの誘導体等の芳香族系シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物(B)はそれぞれ単独でも両者を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物としては、はじめにエポキシ化合物を配合して、前記ポリフェニレンエーテル(A)とエポキシ化合物とを反応させることによりポリフェニレンエーテル−エポキシ化合物予備反応物を形成した後、さらにシアネートエステル化合物を配合して得られる樹脂組成物であることがより好ましい。PPEの分子量が低くなればなるほど、PPE末端の水酸基の数が増える。また、硬化性を高めるために、上述した両末端に水酸基を有するようなPPEを用いた場合、一分子あたりの水酸基の数が多くなる。このように水酸基が多くなった場合には、PPEとシアネート化合物が反応して析出またはゲル化しやすくなる。このような場合において、予め、PPEとエポキシ化合物を反応させて予備反応物を形成しておくことにより、ワニスのポットライフ性をより高めることができる。
エポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物(B)の配合割合としては、ポリフェニレンエーテル(A)との合計量中に、20〜70質量%、さらには30〜60質量%配合することが、充分な耐熱性と優れた誘電特性を維持することができる点から好ましい。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、硬化反応を促進させるための硬化触媒を配合することが好ましい。このような硬化触媒の具体例としては、例えば、オクタン酸,ステアリン酸,アセチルアセトネート,ナフテン酸,サリチル酸等の有機酸のZn,Cu,Fe等の有機金属塩、トリエチルアミン,トリエタノールアミン等の3級アミン、2−エチル−4−イミダゾール,4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、有機金属塩、特にオクタン酸亜鉛が高い耐熱性が得られる点から、特に好ましく用いられる。
硬化触媒の配合割合は特に限定されないが、例えば、有機金属塩を用いる場合には、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して0.005〜5質量%であることが好ましく、イミダゾール類を用いる場合には、(A)成分とエポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物との合計量に対して0.01〜5質量%であることが好ましい。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、さらに難燃剤を配合することが好ましい。難燃剤の具体例としては、例えば、ホスフィン酸塩化合物やホスファゼン化合物等のリン系難燃剤やハロゲン系難燃剤が用いられうる。
リン系難燃剤の具体例としては、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩等のホスフィン酸金属塩のようなホスフィン酸塩化合物、ホスフィン酸アミド、ホスファゼン系化合物、ホスホン酸塩化合物等が挙げられる。
また、ハロゲン系難燃剤の具体例としては、例えば、エチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン等が挙げられる。これらの中では、エチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼンが、融点が300℃以上で耐熱性が高い点から好ましく用いられる。融点が300℃以上のような耐熱性が高いハロゲン系難燃剤を用いた場合には、高温時におけるハロゲンの脱離を抑制することができ、それにより得られる硬化物の分解による耐熱性の低下を抑制することができる。
これらの中では、リン系難燃剤、とくには、ホスフィン酸塩化合物が優れた誘電特性を維持することができる点から好ましい。ホスフィン酸塩化合物の配合割合としては、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜30質量%、さらには10〜25質量%であることが難燃性と耐熱性に優れる点から好ましい。ホスフィン酸塩が少なすぎる場合には、難燃性が不充分になる傾向があり、多すぎる場合には耐熱性やTgが低下する傾向がある。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、加熱時における寸法安定性を高めたり、難燃性を高める等の目的で、必要に応じてさらに無機充填材を配合してもよい。
無機充填材の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
また、無機充填材としては、エポキシシランタイプ、または、アミノシランタイプのシランカップリング剤で表面処理されたものが、特に好ましい。前記のようなシランカップリング剤で表面処理された無機充填材が配合されたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて得られる金属張積層板は、吸湿時における耐熱性が高く、また、層間ピール強度も高くなる傾向がある。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料や顔料、滑剤等の添加剤を配合してもよい。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、通常、ワニス状に調製されたものである。このようなワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
フェノール種とラジカル開始剤との存在下で、数平均分子量1800〜3000のポリフェニレンエーテルを溶媒中で再分配反応させて得られた数平均分子量が1500以下のポリフェニレンエーテル(A)の樹脂溶液に、(B)エポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物等を配合して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。
さらに、必要に応じて用いられる、硬化触媒、難燃剤や無機充填材を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が調製される。
得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いてプリプレグを製造する方法としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を繊維質基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
繊維質基材としては、例えばガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、リンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。偏平加工としては例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮することにより行うことができる。なお、基材の厚みとしては0.04〜0.3mmのものを一般的に使用できる。
含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。またこの際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成及び樹脂量に調整することも可能である。
ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が含浸された基材は、所望の加熱条件、例えば、80〜170℃で1〜10分間加熱されることにより半硬化状態(Bステージ)のプリプレグが得られる。
このようにして得られたプリプレグを用いて金属張積層板を作製する方法としては、前記プリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製することができるものである。加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みやプリプレグの樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を170〜210℃、圧力を3.5〜4.0Pa、時間を60〜150分間とすることができる。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、比較的低分子量のポリフェニレンエーテルを再分解反応することにより低分子量化された数平均分子量1500以下のポリフェニレンエーテル(A)を含有するもので、高分子量PPEの残留が少ないものである。そのために、ポットライフが優れている。
そして、作製された積層体の表面の金属箔をエッチング加工等して回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができるものである。このように得られるプリント配線板は、誘電特性に優れており、また、高い耐熱性及び難燃性を備えたものである。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(製造例1:数平均分子量2000のPPEの再分配反応による、数平均分子量1000のポリフェニレンエーテル(PPE1)の溶液の製造)
トルエン40質量部を攪拌装置及び攪拌羽根を装備したフラスコに入れた。前記フラスコを内温90℃に制御しながら、数平均分子量2000のPPE(SABICジャパン社製の「SA120」)40質量部、ビスフェノールA 2質量部、過酸化ベンゾイル2質量部を入れ、2時間撹拌を続けて反応させることにより、ポリフェニレンエーテル(PPE1)の溶液を調製した。このときPPE1の数平均分子量は1000であり、M/Mは2.8であった。なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
(製造例2:数平均分子量2000のPPEの再分配反応による、数平均分子量1200のポリフェニレンエーテル(PPE2)の溶液の製造)
フェノール種として、ビスフェノールA 2質量部を用いる代わりに2,6−キシレノール 2質量部用いた以外は、製造例1と同様にして反応させることにより、ポリフェニレンエーテル(PPE2)の溶液を調製した。このときPPE2の数平均分子量は1200であり、M/Mは3.3であった。
(製造例3:数平均分子量15000のPPEの再分配反応による、数平均分子量1500のポリフェニレンエーテル(PPE3)の溶液の製造)
トルエン100質量部を攪拌装置及び攪拌羽根を装備したフラスコに入れた。前記フラスコを内温90℃に制御しながら、数平均分子量15000のPPE(SABICジャパン社製の「ノリル640」)40質量部、ビスフェノールA 4質量部、過酸化ベンゾイル4質量部を入れ、2時間撹拌を続けて反応させることにより、ポリフェニレンエーテル(PPE3)の溶液を調製した。このときPPE3の数平均分子量は1500であり、M/Mは4.5であった。
(製造例4:数平均分子量15000のPPEの再分配反応による、数平均分子量1050のポリフェニレンエーテル(PPE4)の溶液の製造)
フェノール種としてビスフェノールA 4質量部を用いた代わりに、ビスフェノールA 10質量部用いた以外は、製造例1と同様にして反応させることにより、ポリフェニレンエーテル(PPE4)の溶液を調製した。このときPPE4の数平均分子量は1050であり、M/Mは4.8であった。
(製造例5:数平均分子量15000のPPEを再分配反応して得られた数平均分子量5000のポリフェニレンエーテルを、更に再分配反応して得た数平均分子量1000ポリフェニレンエーテル(PPE5)の溶液の製造)
トルエン100質量部を攪拌装置及び攪拌羽根を装備したフラスコに入れた。前記フラスコを内温90℃に制御しながら、数平均分子量15000のPPE(SABICジャパン社製の「ノリル640」)40質量部、ビスフェノールA 1質量部、過酸化ベンゾイル4質量部を入れ、2時間撹拌を続けて反応させることにより、ポリフェニレンエーテルの溶液を調製した。このときのPPEの数平均分子量は5000であった。そして、得られたPPE溶液に、さらに、ビスフェノールA8質量部、過酸化ベンゾイル2質量部を入れ、2時間撹拌を続けて反応させることにより、ポリフェニレンエーテル(PPE5)の溶液を調製した。このときPPE5の数平均分子量は1000であり、M/Mは4.2であった。
(実施例1〜6、比較例1〜3)
はじめに、本実施例で用いた原材料をまとめて示す。
〈エポキシ化合物〉
・ビスフェノールF型エポキシ化合物であり、Mn350のエピクロン830S(DIC(株)製)
〈シアネートエステル化合物〉
・2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製のBandCy)
〈硬化触媒〉
・オクタン酸亜鉛(DIC(株)製)
〈難燃剤〉
・ホスフィン酸塩化合物(クラリアントジャパン社製のOP935)
[樹脂ワニスの調製]
PPEのトルエン溶液を90℃にまで加熱し、表1に記載の配合割合になるように、エポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物を添加した後、30分間撹拌して完全に溶解させた。
なお、実施例4においては、はじめにエポキシ化合物を配合して、PPEとエポキシ化合物の合計量100質量部に対して0.1質量部の2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成(株)製)を触媒として配合した。そして、90℃で6時間撹拌する条件でポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物とを反応させることによりポリフェニレンエーテル−エポキシ化合物予備反応物を形成した。そして、さらにシアネートエステル化合物を配合して30分間撹拌して完全に溶解させた。
そして、さらに硬化触媒及び難燃剤を添加して、ボールミルで分散させることによりワニスを得た。
次に得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績(株)製の「WEA116E」)に含浸させた後、150℃で3〜5分間加熱乾燥することによりプリプレグを得た。
次に、得られた各プリプレグを6枚重ねて積層し、さらに、その両外層にそれぞれ銅箔(古河サーキットフォイル社製のF2−WS 18μm)を配し、温度220℃、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、厚み0.75mmの銅張積層板を得た。
得られたプリプレグ及び銅張積層板を用いて、下記評価を行った。
〈ワニス粘度変化〉
ワニス調製した直後、及び調製後1週間経過後のワニス粘度をB型粘度計を用いて30rpmの条件で測定した。そして、ワニス調製直後の粘度に対する、調製後1週間経過後の粘度の比を求めた。なお、調製後1週間経過後において、ワニス粘度が20000cps以上になった場合には測定不可とした。
〈回路充填性〉
穴直径0.3mmの連通穴が2mmピッチ間隔で1000個形成された、縦150mm、横100mm、厚み0.8mmの寸法のコア材を用意した。そして、前記コア材の片面に、得られたプリプレグと銅箔とをその順に積層し、他の片面には銅箔のみを積層した。そして、前記積層体を220℃×2時間、圧力3MPaの条件で加熱プレスにより成形した。そして、1000個の穴のうち完充填された穴の個数を数え、その割合を求めた。
〈ガラス転移温度(Tg)〉
セイコーインスツルメンツ(株)製の粘弾性スペクトロメータ「DMS100」を用いて銅張積層板のガラス転移温度(Tg)を測定した。このとき、曲げモジュールで周波数を10Hzとして測定を行い、昇温速度5℃/minの条件で室温から280℃まで昇温した際にtanδが極大を示す温度をガラス転移温度(Tg)とした。
〈誘電特性〉
JIS C 6481 の規格に準じて、1MHzにおける銅張積層板の誘電率及び誘電正接を求めた。
〈難燃性〉
銅張積層板の表面の銅箔を除去した後、長さ125mm、幅12.5mmのテストピースを切り出した。そしてこのテストピースについてUnderwriters Laboratoriesの”Test for Flammability of Plastic Materials - UL 94”に準じて行い、評価した。
Figure 0005469320
表1から、本発明にかかる実施例1〜6のポリフェニレンエーテル樹脂組成物においては、ワニス調製直後から1週間経過後もワニスに析出物の発生も無く、充分な流動性を維持した状態であった。さらに、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物とを予備反応させた実施例4においては、さらにワニスの粘度変化が抑制でき、誘電特性や耐熱性も優れていた。一方、比較例1〜3においては、1週間経過後のワニスには析出物が発生して固化して流動性を維持しておらず、粘度測定ができなかった。また、回路充填性の評価においても、実施例においてはいずれも100%であったのに対し、比較例では未充填部分が見られた。このように、本発明に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物によれば、優れたポットライフを実現できることが分かる。

Claims (8)

  1. 数平均分子量が1500以下のポリフェニレンエーテル(A)とエポキシ化合物及び/又はシアネートエステル化合物(B)とを配合して得られるポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、
    前記ポリフェニレンエーテル(A)が、数平均分子量1800〜3000のポリフェニレンエーテルを、フェノール種とラジカル開始剤との存在下で溶媒中で再分配反応させて得られたものであり、
    前記ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布(M /M :M は重量平均分子量、M は数平均分子量である)が2〜4の範囲であることを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  2. 前記フェノール種が、1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール系化合物である請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  3. 前記1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール系化合物がビスフェノールAである請求項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  4. (B)成分が、前記ポリフェニレンエーテル(A)とエポキシ化合物とを反応させることによりポリフェニレンエーテル−エポキシ化合物予備反応物を形成した後、さらにシアネートエステル化合物を添加するように配合された請求項1〜の何れか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  5. (A)成分及び(B)成分の合計量に対して、ホスフィン酸塩化合物を5〜30質量%配合する請求項1〜の何れか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を繊維質基材に含浸させて得られることを特徴とするプリプレグ。
  7. 請求項に記載のプリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られることを特徴とする金属張積層板。
  8. 請求項に記載された金属張積層板の表面の金属箔を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とするプリント配線板。
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