JP2014198773A - Ppe粒子分散液 - Google Patents

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Hisafumi Otani
尚史 大谷
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Abstract

【課題】取扱い時の樹脂粉落ちや樹脂剥がれが抑制されたPPE組成物シート、及びその製造方法の提供。【解決手段】ポリフェニレンエーテル(PPE)を含むPPE粒子と架橋型硬化性化合物とを含むPPE分散液であって、該PPEの数平均分子量は8000以上であり、かつ、該PPE粒子100個数%の内、0.5個数%以上が100μm以上800μm未満の長径を有し、0.3個数%以下が800μm以上の長径を有することを特徴とする前記PPE分散液。【選択図】なし

Description

本発明は、PPE粒子を含むPPE分散液に関する。
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩、情報ネットワークを活用したサービスの拡大により、電子機器には情報量の大容量化、処理速度の高速化が求められている。デジタル信号を大容量かつ高速に伝達するためには信号の波長を短くするのが有効であり、信号の高周波化が進んでいる。ところが、高周波領域の電気信号は配線回路で減衰されやすいため、伝送特性の良いプリント配線板が必要とされる。
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、誘電率、誘電正接が低く、高周波特性、すなわち、誘電特性に優れるため、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板用の材料として好適である。
以下の特許文献1には、PPEの優れた電気特性を保持し、かつ、PPEの耐熱性、耐薬品性、寸法安定性などの課題を改善する手法として、PPEに硬化性のモノマーやポリマーを配合して硬化性樹脂組成物とする技術が記載されている。
また、以下の特許文献2には、溶剤製膜性の向上と、硬化後の耐薬品性の更なる改善を目的として、PPEに化学的改質を施し、該PPEを硬化性モノマーと合わせて硬化性樹脂組成物とする方法が記載されている。
特開昭61−287739号公報 特開平4−239017公報
しかしながら、PPEは基材との接着性に優れない特性を有しており、PPEを用いて、樹脂フィルム、基材との含侵複合体(プリプレグ)、樹脂付金属箔といった、電子回路基板材料として使用されるPPE組成物シートを製造する際に、樹脂剥がれや樹脂粉落ちが発生するという問題を有していた。特許文献1,2に記載された技術においても、このような観点からなお改善の余地を有していた。
かかる状況下、本発明が解決しようとする課題は、取扱い性が良好な(即ち、取扱い時の樹脂粉落ちや樹脂剥がれが抑制され、しかも粘着性が抑制された)PPE組成物シートを与え得る、PPE粒子を含むPPE分散液を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、PPEの数平均分子量、及び分散液中に存在するPPE粒子の長径を特定範囲に制御することで、上記課題を解決したPPE組成物シートを与える、PPE粒子分散液を実現し得ることを見出し、かかる知見に基づき、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ポリフェニレンエーテル(PPE)を含むPPE粒子と架橋型硬化性化合物とを含むPPE分散液であって、該PPEの数平均分子量は8000以上であり、かつ、該PPE粒子100個数%の内、0.5個数%以上が100μm以上800μm未満の長径を有し、0.3個数%以下が800μm以上の長径を有することを特徴とする前記PPE分散液。
[2]前記PPE粒子は、前記PPEを60質量%以上含む、[1]に記載のPPE分散液。
[3]前記架橋型硬化性化合物は、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーである、[1]又は[2]に記載のPPE分散液。
[4]前記分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーは、トリアリルイソシアネート(TAIC)である、[3]に記載のPPE分散液。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のPPE分散液を構成成分として含む樹脂ワニス。
[6]前記[5]記載の樹脂ワニスを用いて形成されるPPE組成物シート。
本発明によれば、取扱い性が良好な(即ち、取扱い時の樹脂粉落ちや樹脂剥がれが抑制され、しかも粘着性が抑制された)PPE組成物シートを与え得る、PPE粒子を含むPPE分散液が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態のPPE分散液は、ポリフェニレンエーテル(PPE)を含むPPE粒子と架橋型硬化性化合物とを含むPPE分散液であって、該PPEの数平均分子量は8000以上であり、かつ、該PPE粒子100個数%の内、0.5個数%以上が100μm以上800μm未満の長径を有し、0.3個数%以下が800μm以上の長径を有する。
PPEは、好ましくは、下記一般式(1):
Figure 2014198773
{式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアミノ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表す。}で表される繰返し構造単位を含む。
PPEの具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等、更に、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール、2−メチル−6−ブチルフェノール等)との共重合体、及び、2,6−ジメチルフェノールとビフェノール類又はビスフェノール類とをカップリングさせて得られるポリフェニレンエーテル共重合体、等が挙げられ、好ましい例は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
尚、本願明細書中、PPEは、置換又は非置換のフェニレンエーテル単位構造から構成されるポリマーを意味するが、更に他の共重合成分を含んでもよい。
PPE粒子は、PPE粒子100個数%の内、0.5個数%以上、好ましくは1.0個数%以上、更に好ましくは1.5個数%以上が長径100μm以上800μm未満の長径を有する。当該割合を0.5個数%以上とすることは、塗工後に得られるPPE組成物シートが樹脂粉落ちや樹脂剥がれが抑制される傾向となり好ましい。この理由は定かではないが、塗工に用いる分散液の中に、前述の大きさ以上の粒子を、前述の量以上存在させることで、得られるシート上の樹脂粒子同士の接着力が増大し、適度な成膜性が得られるためと推定される。一次粒子、又は長径が小さい二次粒子が複数に分かれて存在する場合よりも、前述の大きさまで凝集して二次粒子として存在する方が、粒子の最小構成単位の間隔が狭まり、より密となると考えらえる。その結果、樹脂粒子同士の接着力が増大することから、樹脂剥がれや、樹脂粉落ちやが抑制されると考えられる。なお、当該割合の上限としては多い方が好ましく、100個数%が最も好ましい。
なお、長径が800μm未満であることは、粒子由来の凹凸がない、良好な平滑性を有するPPE組成物シートを得る観点から好ましい。一方、長径が100μm以上であることは、上述のようにPPE粒子同士の接着性を高め、樹脂粉落ちや樹脂剥がれが抑制されたPPE組成物シートを得る観点から好ましい。上記個数割合を有する長径の範囲は、好ましくは100μm以上500μm未満、より好ましくは、100μm以上300μm未満、更に好ましくは、100μm以上200μm未満である。
一方、長径800μm以上のPPE粒子は、0.3個数%以下、より好ましくは0.2個数%以下、更に好ましくは0.1個数%以下であり、0個数%が最も好ましい。0.3個数%以下とすることは、得られる成型基板の局所的な差異が少なく、均一で良好な電気特性を有する傾向となり好ましい。また、平滑性の優れるPPE組成物シートが得られる傾向となり、好ましい。
上述した長径を有するPPE分散液を得る方法としては、特に限定はされないが、例えば、市販のPPE樹脂粒子を溶媒中でホモジナイザーを用いて粉砕する方法や、市販のPPE樹脂粒子を公知の方法で粉砕や分級をしてから溶媒に混合する方法等が挙げられる。
PPE粒子中に含まれるPPEの割合は、60〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%が更に好ましい。PPE粒子に含まれるPPE含有量が上述の範囲であれば、得られる基板の電気特性が良好となるため好ましい。
PPEの数平均分子量は、8000以上であり、好ましくは8500以上、より好ましくは9000以上である。上限としては、好ましくは40000以下、より好ましくは30000以下である。
PPEの数平均分子量が8000以上であれば、PPEが溶媒に完全に溶解せず、常温で分散状態を保つことができ、該分散液を基材に塗工して得られるPPE組成物シートにPPE粒子を存在させることができるため、好ましい。また、数平均分子量が8000以上であれば、得られるPPE組成物シートの粘着性が抑えられるため、好ましい。また、積層板の銅箔剥離強度が良傾向となるため、好ましい。他方、PPEの数平均分子量が40000以下ならば、基板成型時の溶融粘度が小さく、良好な成型性を得られる点で望ましい。
前記架橋型硬化性化合物としては、プレス成型後に得られる基板の耐熱性、吸水性の観点から、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーであることが好ましい、このようなモノマーとしては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、トリアリルアミン、トリアリルメセート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等が挙げられるが、その中でもPPEとの相溶性が良好なTAICが好ましい。
架橋型硬化性化合物の配合量としては、PPE成分と架橋型硬化性化合物の総量中に占める割合として、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは20〜70質量%である。含有量を5質量%以上とすることは、良好な成形性を得る観点で好ましく、95質量%以下とすることは、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を形成できる観点で好ましい。
分散液に用いる分散媒としては、PPEを適度に膨潤、溶解できる観点から、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤を用いるのが好ましい。分散液の粘度を調整するために、PPEの貧溶媒を混合してもよい。貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。芳香族有機溶媒と前記貧溶媒を混合する場合、用いる溶媒種の数は特に限定されないが、芳香族有機溶剤が全溶媒中、60〜100質量%であることが、PPEを適度に膨潤、溶解できる観点から好ましい。
PPE分散液には、架橋型硬化性化合物の架橋を促進するための開始剤を更に含むことができる。
開始剤としては、例えば、ビニルモノマーの重合反応を促進する能力を有する任意の開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤として使用できる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与えることができる観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
開始剤の配合量としては、PPE成分と架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して、反応率を高くできる観点から好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えることができる観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
好ましい態様においては、PPE成分と架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して、架橋型硬化性樹脂の含有量が10質量%以上70質量%以下であり、開始剤の含有量が1質量部以上10質量部以下である。
上述したPPE分散液には更に、他の樹脂(例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等)を含有させることもできる。熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、四フッ化エチレン等のビニル化合物の単独重合体及び2種以上のビニル化合物の共重合体、並びに、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例として挙げることができる。これらの中でもスチレンの単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体が、溶剤への溶解性及び成形性の観点から好ましく用いることができる。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル類を例として挙げることができる。なお、このような熱可塑性樹脂や硬化性樹脂は、酸無水物、エポキシ化合物、アミン等の官能化化合物で変性されたものでもよい。
また、このような他の樹脂の使用量としては、PPE成分と架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜70質量部である。
上述したPPE分散液には、適当な添加剤を更に含有させることができる。添加剤としては、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤等が挙げられる。
例えば、難燃剤としては、燃焼のメカニズムを阻害する機能を有するものであれば特に制限されず、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛等の無機難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジェフェニルエタン、4,4−ジフブロモフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物、等が挙げられる。中でも、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えられる観点からデカブロモジェフェニルエタン等が好ましい。
添加剤の使用量は、PPEと架橋型硬化性化合物との合計100質量部に対して好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を小さく維持できる観点から、添加剤の使用量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
本実施形態の樹脂ワニスは、上述のPPE分散液を構成成分とする。該分散液単独でもよく、更に他の成分(例えば上述の硬化性架橋樹脂、開始剤、その他の樹脂や添加剤など)を組み合わせてもよい。
本実施形態のPPE組成物シートは、例えば、
(1)上記樹脂分散液から分散媒を実質的に除去して得られる乾燥成型物、
(2)塗工により、PPE分散液を多孔性基材に含浸し、分散媒を実質的に除去して得られるプリプレグ、
(3)前記プリプレグを更に加熱し、PPE粒子の少なくとも一部を溶融して得られる硬化物、
が挙げられる。硬化物には、金属層(例えば銅層)が積層された形態(いわゆる積層板)も含まれる。
塗工は、支持フィルムを支持体として実施することができる。
支持フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、銅箔、アルミ箔などの金属箔,離形紙などを挙げることができる。なお、支持フィルムはマッド処理、コロナ処理、離形処理などの化学的、物理的処理を施してあってもよい。
塗工が、樹脂分散液を多孔性基材に含浸する工程であり、プリプレグを形成する場合、当該多孔性基材としては、例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラスクロス、アスベスト布、金属繊維布、及びその他合成もしくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙―ガラス混繊紙から得られる布等の天然セルロース系基材、ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、プリプレグに占める樹脂組成物の割合は、プリプレグ全量100質量部に対して、30〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量部である。樹脂組成物の割合が30質量部以上である場合、プリプレグを、例えば、電子回路基板成型用の絶縁材料として使用した際、優れた絶縁信頼性と電気特性とが得られるため好ましい。また、樹脂組成物の割合が80質量部以下である場合、例えば、得られる電子回路基板が、曲げ弾性等の機械特性に優れるため好ましい。
積層板は、1枚又は複数枚のPPE組成物シートを銅箔等の基板と重ねた後、プレス成型により樹脂成分を硬化させて絶縁層を形成することにより製造することができる。銅箔の代わりに樹脂付金属箔を用いることも可能である。
本実施形態において得られる積層板は、好ましくは、樹脂ワニスの固形分の硬化物と金属箔とが重なって密着しており、優れた絶縁信頼性及び機械特性を有するため、電子回路基板の材料として好適に用いることができる。
本実施形態のPPE組成物シートは、PPEと基材との間の接着性が良好であるために、製造時又は、取扱い時の樹脂粉落ちや樹脂剥がれが少なく、かつ、硬化後にPPE由来の優れた誘電特性を有する電子回路基板となる。よって、本実施の形態のPPE組成物シートは、多層プリント配線板等の積層体の層間絶縁シートや接着フィルムとしても好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
<PPE粒子の抽出>
分散液中に含まれる粒子からのPPE粒子の抽出は、遠心分離を利用して行う。詳細は以下の通りである。
まず、粒子分散液20gを遠心分離機にかけて、分散液中の粒子を沈降分として得る。沈降分の一部を取り出して、クロロホルムに展開し、濾過して、クロロホルム不溶物(不溶物Aとする)とクロロホルム溶解物(溶解物Aとする)に分ける。なおクロロホルム不溶物Aを分散液と同じ溶媒に展開して、光学顕微鏡により、形状及びコントラストを記録する。分散液中の溶媒については、ガスクロマトグラフィーの方法により分析できる。
次に、溶解物AがPPE粒子であることを確認するため、溶解物Aについてカーボン核磁気共鳴分光法により分析を行う。化学シフトの基準としてテトラメチルシランを使用し、そのピークを0ppmとする。PPEのピークとして、16.8、114.4、 132.5、145.4、154.7ppm近傍のピークの強度を合計し、テトラメチルシランのピーク強度との比をXとする。標準物質についてのこの値をX1、及び上記溶解物Aについての値をX2とすると、X2/X1の値を算出することにより溶解物A中におけるPPE含有量を測定することが出来る。定量には、数平均分子量15,000〜25,000のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(旭化成ケミカルズ(株)製S202Aグレード)を標準物質として用いた。
溶解物A中のPPE含有量が60質量%以上であれば、PPE粒子と判断した。
(1)PPE粒子の長径(μm)
元の分散液を適量採取し、スライドガラスに載せて、溶媒が乾燥する前に光学顕微鏡を用いて評価を行った。観察される粒子の内、上述のように形状及びコントラストを記録したクロロホルム不溶物Aを除いた粒子を、PPE粒子とした。PPE粒子は単体で存在する粒子(以下「一次粒子」という)と、一次粒子が複数凝集して形成する粒子(以下、「二次粒子」という)が存在する。いずれも1個数の粒子として扱った。
また、各々の粒子について、その内部を通るように直線を引き、直線が一番長くなる時の長さをその粒子の長径とした。
(2)PPE粒子に含まれるPPEの数平均分子量(Mn)
PPE粒子と判断された粒子をクロロホルムに溶解させて分析に用いた。カラムにShodex LF−804×2(昭和電工株式会社製)、溶離液に50℃のクロロホルム、検出器にRI(屈折率計)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い、同条件で測定した標準ポリスチレン試料の分子量と溶出時間との関係式から、標準ポリスチレン換算で測定される値をPPEの数平均分子量とした。
(3)PPE粒子中のPPEの含有量(質量%)
上述のようにカーボン核磁気共鳴分光法によって求めた。
(4)プリプレグ特性(取扱い性)
(i)180°
まず、PPE分散液を塗工用ワニスとして、厚さ約0.1mmのEガラス製ガラスクロス(2116スタイル、旭シュエーベル製)に含侵させて、スリットで余分なワニスを掻き落とした後、溶媒を乾燥除去してプリプレグを得た。
プリプレグを300×500mmの長方形の大きさにカッター刃を用いて切り出した。次いで、長辺側2辺が重なるようにプリプレグを180度に折り曲げた後、元に戻した。次いで短辺側2辺が重なるようにプリプレグを180度に折り曲げた後、元に戻した。上述の一連のプリプレグの取扱いにおいて、次の評価を行った。
○:得られたプリプレグは、樹脂粉落ち、樹脂剥がれ、過度な粘着性がなかった。
×:何らかの不具合が生じた。理由と共に記載した。
(ii)90°
プリプレグを90度に折り曲げる以外は、(i)と同様の手順を実施して評価した。評価方法も同様である。
(5)プリプレグ特性(平滑性)
目視にて、プリプレグの平滑性を確認し、次の評価を行った。
○:粒状の凹凸が無く、平滑であった。
×:粒状の凹凸が観察された。
(6)積層板特性(電気特性)
上記プリプレグを10枚重ねて、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力10kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃に達したら、昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cmで真空プレスを行い、200℃に達したら、温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって、積層板を作製した。
該積層板を100mm角に切り出し、誘電率及び誘電正接をインピーダンスアナライザ―(4291B op.002 with 16453A, 16454A、AgilentTechnologies製)を用いて、電圧:100mV、周波数:1mmHz〜1.8GHzの条件で測定して、掃引回数100回の平均値として求めた。上記測定を基板上の任意の5か所で行い、最も高い測定結果を誘電率及び誘電正接の値とした。
(7)積層板特性(銅箔剥離強度 kN/m)
プリプレグを2枚重ねて、更にその上下に、35μm銅箔(GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)をプロファイル面がプリプレグ側となるようにの重ね、前述と同じ条件で真空プレス成型を行った。得られた銅張積層板を、幅15mm×長さ150mmのサイズに切り出し、オートグラフ(AG−5000D、株式会社島津製作所製)を用い、銅箔を除去面に対し90℃の角度で50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重の平均値を測定し、5回の測定の平均値を求めた。
[実施例1〜3、比較例1〜4]
表1に示す配合にて溶媒をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながらPPE原料、ゴム成分、TAICを投入し、均一になるように撹拌した。
得られた混合液をホモミキサーに投入し、表1に示す条件にてPPE粒子を解砕した。更に、フィラー、難燃剤、過酸化物を表1に示す配合にて投入し、均一になるように撹拌して樹脂分散液を得た。
[実施例4、5]
実施例1と同じPPE原料を公知の方法で解砕及び分級した。
表1に示す配合にて溶媒をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら、上記篩分級後のPPE原料、ゴム成分、TAIC、フィラー、難燃剤、過酸化物を表1に示す配合にて投入し、均一になるように撹拌して樹脂分散液を得た。
[比較例5]
表1に示す配合にて溶媒をステンレスビーカーに入れ、80℃に加熱した。次いで撹拌しながら、PPE原料、ゴム成分、TAICを表1に示す配合にて投入して溶解させた。更に。フィラー、難燃剤、過酸化物を表1に示す配合にて投入し、均一になるように撹拌して樹脂分散液を得た。
なお、プリプレグ作製に際しては、樹脂分散液を60℃まで温度降下させた後、60℃に維持した条件で行う以外は上述の方法でプリプレグを作製した。
Figure 2014198773
表1の実施例1〜5が示すように、実施例のPPE分散液は、樹脂剥がれや樹脂粉落ちが無く取扱い性に優れたプリプレグを実現することができた。更に成型後の基板の電気特性も優れていた。
比較例1,2のPPE分散液は、100〜800μmの分布が全粒子中0.5%未満であったり、800μm以上の分布が全粒子中0.3%を超えていたりすることで、樹脂の粉落ちが確認され、所望のプリプレグを得ることができないことが分かった。比較例2ではプリプレグに凹凸がみられ、また、基板特性に局所的な差が確認され、電気特性、銅箔剥離強度が悪化していた。
比較例3、4では、PPEの数平均分子量が8000未満であり、溶媒にポリフェニレンエーテルが完全に溶解した。得られたプリプレグは粘着性が確認され、取扱い性が不十分であった。
また、比較例5では、溶媒を加熱してPPEを完全に溶解したため、プリプレグの被膜性が高くなりすぎたと推定され、フィルム上の樹脂剥がれが観察された。
本実施の形態のPPE分散液は、PPEの数平均分子量、及び分散液中に存在するPPE粒子の長径を特定範囲に制御することにより、該分散液を用いて得られるPPE組成物シートの取扱い時の樹脂粉落ちや樹脂剥がれ、粘着性が抑制することができた。多層プリント配線板等の積層体の層間絶縁シートや接着フィルムとしても好適に使用できる。

Claims (6)

  1. ポリフェニレンエーテル(PPE)を含むPPE粒子と架橋型硬化性化合物とを含むPPE分散液であって、該PPEの数平均分子量は8000以上であり、かつ、該PPE粒子100個数%の内、0.5個数%以上が100μm以上800μm未満の長径を有し、0.3個数%以下が800μm以上の長径を有することを特徴とする前記PPE分散液。
  2. 前記PPE粒子は、前記PPEを60質量%以上含む、請求項1に記載のPPE分散液。
  3. 前記架橋型硬化性化合物は、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーである、請求項1又は2に記載のPPE分散液。
  4. 前記分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーは、トリアリルイソシアネート(TAIC)である、請求項3に記載のPPE分散液。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のPPE分散液を構成成分として含む樹脂ワニス。
  6. 請求項5に記載の樹脂ワニスを用いて形成されるPPE組成物シート。
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