第1実施形態
図1は、第1実施形態にかかる印刷システムの一例を示す模式図である。なお、図1や以下の図面では必要に応じて、装置各部の配置関係を明確にするために、Z軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向とし、その反対方向を負方向とし、Z軸の正側を上側とし、Z軸の負側を下側として適宜取り扱う。
印刷システム100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データに基づいて印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター300とを備える。このプリンター300は、その両端がロール状に巻かれた長尺な1枚のシートS(ウェブ)をロール・トゥ・ロール方式で搬送しつつ、シートSに対してインクジェット方式を用いて画像を印刷(画像を形成)するものである。
図1に示すように、プリンター300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSにインクを噴射して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、記録ユニット31が、プラテン30上に支持されたシートSに対して印刷を行う。
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転自在な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSがロール状に巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転自在な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSがロール状に巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。なお、乾燥部4は、繰出部2および巻取部5に対してはやや上側にある。
そして、シートSは、繰出部2から巻取部5へ向かう搬送経路Pcに沿って搬送されて、印刷室3と乾燥部4とを順番に通過する。具体的には、繰出部2が備える繰出軸21から繰り出されたシートSは、後述するコロナ処理機81、82およびローラー71を経由して、印刷室3へと案内される。この印刷室3の内部には、2本のローラー72、73がシートSのX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、印刷室3内に案内されたシートSは、これら2本のローラー72、73へ巻き掛けられる。ローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。そして、ローラー73に巻き掛けられたシートSは、下へと案内される。
ローラー73の下側(基台6より下側)には、2本のローラー74、75がX軸負方向にこの順に並んでいる。ローラー74とローラー75とに巻き掛けられたシートSは、両ローラー74、75の間においてX軸方向に平行に(すなわち水平に)案内される。また、ローラー74、75の間には乾燥部4が配置されている。したがって、ローラー74に巻き掛けられたシートSは、X軸負方向に向きを変えるとともに、ローラー75に到るまでの間に乾燥部4の内部を通過する。ローラー75の下側では、2本のローラー76、77がX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、ローラー76に巻き掛けられたシートSは、X軸正方向に向きを変えてローラー77に到る。また、ローラー77に巻き掛けられたシートSは、ローラー77のX軸正方向に配置された巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。
このように、繰出部2から繰り出されたシートSは、印刷室3や乾燥部4を通過して巻取部5に巻き取られる。そして、このシートSに対して、印刷室3での印刷処理や乾燥部4の乾燥処理等の各種処理が施される。
印刷室3での印刷処理は、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31により実行される。この記録ユニット31は、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)に配置されたインクカートリッジCRから図示しないインク供給機構によって供給されたインクを、インクジェット方式によりシートSに噴射して印刷を行う。具体的には、この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられた複数の記録ヘッド34とを備える。
図2は、記録ユニットの構成を部分的に示す平面図である。図2に示すように、支持板33の下面では、15個の記録ヘッド34がY軸方向に等ピッチで2行千鳥で並んでいる。これらの記録ヘッド34は、ノズル35からインクを噴射するものであり、互いに同一の構成を備えている。そこで以下では、1つの記録ヘッド34で代表して、その構成の詳細について説明する。
記録ヘッド34の下面では、複数(例えば180個)のノズル35がY軸方向に等ピッチで直線状に並んで1つのノズル列35Lが構成されるとともに、複数のノズル列35LがX軸方向に等ピッチで並んでいる。記録ヘッド34の下面で並ぶ複数のノズル列35Lは、互いに異なるインク色に対応しており、例えば8色のインクを用いた場合は、8列のノズル列35Lが記録ヘッド34の下面に並ぶ。そして、同じノズル列35Lに属するノズル35は互いに同じ色のインクを噴射する一方、異なるノズル列35Lに属するノズル35は互いに異なる色のインクを噴射する。なお、ノズル35は、インクの詰まった微細管に取り付けられたピエゾ素子に電圧を印加して変形させることで、インクを管外に噴射するピエゾ方式によるものである。
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33および記録ヘッド34と一体的に移動自在となっている。具体的には、印刷室3内には、X軸方向に延びる第1ガイドレール36が設けられており、キャリッジ32は、第1CRモーターMx(図4)の駆動力を受けると、第1ガイドレール36に沿ってX軸方向に移動する。さらに、印刷室3内には、Y軸方向に延びる第2ガイドレール(図示省略)が設けられており、キャリッジ32は、第2CRモーターMy(図4)の駆動力を受けると、第2ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。
そして、プラテン30の上面で停止するシートSに対して、記録ユニット31のキャリッジ32をXY面内で二次元的に移動させて、印刷が実行される。具体的には、記録ユニット31は、キャリッジ32をX軸方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッド34の各ノズル35からシートSにインクを噴射する動作(主走査)を実行する。この主走査では、1つのノズルが噴射するインクにより形成されたX軸方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が、Y軸方向に間隔を空けつつ複数並んで、二次元の画像が印刷される。そして、この主走査と、キャリッジ32をY軸方向(副走査方向)に移動させる副走査とが交互に実行されて、複数回の主走査が実行される(ラテラルスキャン方式)。
つまり、記録ユニット31は1回の主走査を完了すると、副走査を行なってキャリッジ32をY軸方向に移動させる。続いて、記録ユニット31は、この副走査によって移動した位置から、キャリッジ32をX軸方向(の先程の主走査とは反対向き)に移動させる。これによって、先程の主走査により既に形成された複数のライン画像それぞれの間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。そして、これら主走査と副走査とが交互に実行される。つまり、このプリンター300では、キャリッジ32をX軸方向に移動させつつノズル35からインクを噴射して、複数のライン画像から成る中間生成画像を形成する動作(主走査)を、Y軸方向への位置を変えながら(副走査)、複数回数実行することで、中間生成画像を重ね合わせた画像が形成される。
このように、複数回の主走査を実行することで、1回の印刷が実行される。ここで、1回の主走査を「パス」と称することとし、複数回のパスにより実行される1回の印刷を「フレーム」と称することとする。また、1回のパスでシートSに形成される中間生成画像を「1パス画像」と称することとする。
このような主走査と副走査を交互に繰り返して行う理由は、解像度を向上させるためである。つまり、M回のパスを実行して、M個の1パス画像を重ね合わせることで、1パス画像のM倍の解像度を有する1フレーム分の画像を得ることが可能となる。そこで、記録ユニット31は、印刷すべき画像の解像度に応じた回数のパスを実行して1フレームの印刷を実行する。ちなみに、キャリッジ32は、X軸方向に往復移動可能である。そこで、記録ユニット31は、キャリッジ32の往路および復路のそれぞれでパスを実行することで、複数のパスを効率的に実行している。
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。具体的に言えば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備える。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口するとともに、プラテン30の下面には、吸引部37が取り付けられている。そして、吸引部37が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、吸引部37は、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、シートSを吸引することで、シートSを平坦に保つ一方、印刷が終了すると、シートSの吸引を止めて、シートSのスムーズな搬送を可能とする。
さらに、プラテン30の下面には、ヒーター38が取り付けられている。このヒーター38は、プラテン30を所定温度(例えば45度)に加熱するものである。これにより、シートSは、記録ヘッド34から印刷処理を受けるのと並行して、プラテン30の熱によって1次乾燥されることとなる。そして、この1次乾燥により、シートSに着弾したインクの乾燥が促進される。
こうして、プラテン30の上面において、1フレームの印刷を受けるとともに1次乾燥されたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って移動して乾燥部4へ到達する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾したインクを完全に乾燥させる乾燥処理を実行する。そして、この乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達して、ロールR2として巻き取られる。
以上のようにして、記録ユニット31および乾燥部4によって、シートSに対して印刷・乾燥処理が施される。また、プリンター300は、上述した記録ユニット31や乾燥部4ほかに、コロナ処理機81、82やメンテナンスユニット9といった機能部を備える。続いて、これらの構成および動作の詳細について説明する。
図3は、第1実施形態にかかるコロナ処理機の構成を模式的に示した図であり、シートSの搬送経路Pcに沿って展開した様子が示されている。なお、同図では、その上流側から下流側へ向かう矢印によりシートSの搬送経路Pcが示されている。この実施形態では、搬送経路Pcにおいて繰出軸21からプラテン30まで到る間に、コロナ処理機81、82がこの順番で並んでいる。これらのうち、搬送経路Pcの上流側のコロナ処理機81は、Y軸方向にシートSの全域を含む処理範囲R81に対してコロナ処理を行う全域用のコロナ処理機である。一方、搬送経路Pcの下流側のコロナ処理機82は、Y軸方向にシートSの中心線Csから外れた処理範囲R82に対してコロナ処理を行う側方用のコロナ処理機である。
全域用のコロナ処理機81は、Y軸方向においてシートSの幅Wsを含みつつ当該幅Wsの両端から突出した処理範囲R81に対向するコロナ放電電極811と、コロナ放電電極811を覆う電極カバー812とを有する。また、コロナ処理機81に対しては、処理範囲R81をY軸方向に含むように配置されたアースローラー813(図1)がシートSを挟んで対向する。そして、コロナ放電電極811が放電バイアス発生部841(図4)に接続される一方、アースローラー813が接地されている。したがって、放電バイアス発生部841からコロナ放電電極811に放電バイアスが印加されると、コロナ放電電極811とアースローラー813との間にコロナ放電が発生する。その結果、処理範囲R81に対して放電エネルギーが照射されて、処理範囲R81内のシートS表面にコロナ処理(表面改質処理)が実行される(表面改質工程)。こうして、処理範囲R81内のシートS表面において、インクに対する濡れ性が向上する。そして、かかるコロナ処理を受けたシートSがプラテン30に供給されて、記録ユニット31による印刷処理を受ける(液体噴射工程)。
側方用のコロナ処理機82は、Y軸方向においてシートSの中央部Amより両外側の側方部Ae、Aeそれぞれに対して1個ずつ設けられており、シートSの中央部Amから外側に寄った位置に配置されて側方部Aeに対向する。なお、シートSの中央部Amは、シートSのY軸方向の中心線Csを含みつつY軸方向に所定幅を有する領域であって、側方用のコロナ処理機82の処理範囲R82に重複しない領域である。一方、側方部Aeは、Y軸方向において中央部Amより外側の領域であって、側方用のコロナ処理機82の処理範囲R82に重複する領域である。また、図3では、Y軸方向の一方側(矢印側)に配置されたコロナ処理機82に対して符号82aが付されるとともに、Y軸方向の他方側(矢印逆側)に配置されたコロナ処理機82に対して符号82bが付される。各コロナ処理機82a、82bは、Y軸方向に側方部Aeを含みつつシートSの端から突出する処理範囲R82に対向するコロナ放電電極821と、コロナ放電電極821を覆う電極カバー822とを有する。また、これらコロナ処理機82a、82bに対しては、それぞれの処理範囲R82の両方をY軸方向に含むように配置された共通のアースローラー823がシートSを挟んで対向する。
そして、各コロナ処理機82a、82bのコロナ放電電極821が放電バイアス発生部842(図4)に接続される一方、アースローラー823が接地されている。したがって、放電バイアス発生部842からコロナ放電電極821に放電バイアスが印加されると、コロナ放電電極821とアースローラー823との間にコロナ放電が発生する。その結果、処理範囲R82に対して放電エネルギーが照射されて、処理範囲R82内のシートS表面にコロナ処理(表面改質処理)が実行される(表面改質工程)。こうして、処理範囲R82内のシートS表面において、インクに対する濡れ性が向上する。そして、かかるコロナ処理を受けたシートSがプラテン30に供給されて、記録ユニット31による印刷処理を受ける(液体噴射工程)。
図1に戻って、コロナ処理機81、82以外の機能部について説明を続ける。メンテナンスユニット9は、プラテン30からX軸負方向に外れた位置に設けられており、非印刷時にホームポジション(メンテナンスユニットの直上位置)に退避する記録ヘッド34に対してメンテナンスを行う。このメンテナンスユニット9は、15個の記録ヘッド34に対して一対一の対応関係で設けられた15個のキャップ91と、キャップ91を昇降する昇降部93とを有する。
このメンテナンスユニット9で実行されるメンテナンスとしては、キャッピング、クリーニングおよびワイピングがある。キャッピングは、昇降部93によりキャップ91を上昇させて、ホームポジションにある記録ヘッド34をキャップ91で覆う処理である。このキャッピングにより、記録ヘッド34が有するノズル35内でインクの粘性が増大するのを抑制することができる。また、クリーニングは、記録ヘッド34をキャッピングした状態で、キャップ91内に負圧を発生させることにより、ノズル35から強制的にインクを排出する処理である。このクリーニングにより、粘性が増大したインクやインク中の気泡等をノズル35から除去することができる。ワイピングは、記録ヘッド34においてノズル35の開口が並ぶ面(ノズル開口形成面)を、図示しないワイパーにより拭く処理である。このワイピングにより、記録ヘッド34のノズル開口形成面からインクを拭き取ることができる。
以上が、印刷システム100が備える装置構成の概要である。続いて、上述した図1に図4を加えて、図1の印刷システムが備える電気的構成について詳述する。ここで、図4は、図1の印刷システムが備える電気的構成を模式的に示すブロック図である。
上述したとおり、印刷システム100は、プリンター300のほか、これを制御するホスト装置200を備える。このホスト装置200は、例えばパーソナルコンピューターにより構成されており、プリンター300の動作を制御するプリンタードライバー210を内蔵するほか、プリンター300との通信機能を司る転送制御部220を備える。なお、プリンタードライバー210は、ホスト装置200の備えるCPU(Central Processing Unit)がプリンタードライバー210用のプログラムを実行することで構築される。
また、ホスト装置200は、プリンタードライバー用のプログラムが記憶されたメディア230にアクセスして、当該プログラムを読み出すメディア駆動部240を備える。このメディア230としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のメディアを用いることができる。
さらに、ホスト装置200は、作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター250と、キーボードやマウス等で構成される操作部260とを備える。なお、タッチパネル式のディスプレイをモニター250として用いて、このモニター250のタッチパネルで操作部260を構成しても良い。モニター250には、印刷対象の画像のほかにメニュー画面が表示されている。したがって、作業者は、モニター250を確認しつつ操作部260を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質、版数等の各種の印刷条件を設定することができる。
印刷媒体(すなわちシートS)の種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。印刷媒体のサイズとしては、シートSの幅(Y軸方向の幅)が設定される。印刷品質は、印刷する解像度に応じて用意された複数の印刷モードから1つの印刷モードを選択することで、設定することができる。例を挙げれば次のとおりである。つまり、上記プリンター300では、1フレームで実行されるパスの数を変えることで解像度を変化できる。そこで、1フレームで実行されるパスの数が異なる複数の印刷モードを用意しておき、印刷する解像度に応じたパス数の印刷モードを選択できるように構成すれば良い。これにより、選択した印刷モードのパス数に応じた解像度で印刷を実行することができる。なお、印刷モードに代えて解像度を直接入力することで、印刷品質を設定するように構成しても良い。版数は、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する際に設定されるものであり、具体的には、重ねて印刷する版の数が設定される。ちなみに、複数の版が設定されている場合は、モニター250に版毎の画像を表示することができる。
そして、プリンタードライバー210は、上述のような、モニター250の表示や、操作部260からの入力の処理を制御するホスト制御部211を備える。つまり、ホスト制御部211は、メニュー画面や印刷設定画面等の各種画面をモニター250表示させるともに、各種画面において操作部260から入力された内容に応じた処理を行う。これにより、ホスト制御部211は、作業者からの入力に応じてプリンター300を制御するために必要な制御信号を生成する。
また、プリンタードライバー210は、外部装置から受信した画像データに対して画像処理を施して、印刷データを生成する画像処理部213を備える。具体的には、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理等といった画像処理が実行される。
そして、ホスト制御部211で生成された制御信号や、画像処理部213で生成された印刷データは転送制御部220を介して、プリンター300の本体ケース1内に設けられたプリンター制御部400に転送される。この転送制御部220は、プリンター制御部400との間で双方向のシリアル通信が可能となっており、プリンター制御部400に制御信号や印刷データを転送するとともに、その応答信号をプリンター制御部400から受信してホスト制御部211に送信する。
プリンター制御部400は、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とを備える。ヘッドコントローラー410は、プリンタードライバー210から送信されてきた印刷データに基づいて、記録ヘッド34を制御する機能を司る。具体的には、ヘッドコントローラー410は、記録ヘッド34のノズル35からのインク噴射を、印刷データに基づいて制御する。この際、ノズル35からインクを噴射するタイミングは、キャリッジ32のX軸方向への移動に基づいて制御される。つまり、印刷室3内には、キャリッジ32のX軸方向の位置を検出するリニアエンコーダーE32が設けられている。そして、ヘッドコントローラー410は、リニアエンコーダーE32の出力を参照することで、キャリッジ32のX軸方向への移動に応じたタイミングで、ノズル35からインクを噴射させる。
一方、メカコントローラー420は、シートSの間欠搬送やキャリッジ32の駆動を制御する機能を主として司る。具体的には、メカコントローラー420は、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系を駆動する搬送モーターMsを、搬送モーターMsの回転を検出するエンコーダーEmcの出力に基づいて制御して、シートSの間欠搬送を実行する。また、メカコントローラー420は、第1CRモーターMxを制御することで、主走査のためのX軸方向への移動をキャリッジ32に実行させるとともに、第2CRモーターMxを制御することで、副走査のためのY軸方向への移動をキャリッジ32に実行させる。
そして、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが同期を取りつつ、これらの制御を適宜実行することで、間欠搬送されるシートSに対して、解像度に応じた回数のパスが実行されて、1フレーム分の印刷が実行される。これにより、所望の解像度を有する1フレーム分の画像がシートSに印刷される。
また、メカコントローラー420は、印刷処理のための上記制御のほかに種々の制御を実行できる。具体的には、メカコントローラー420は、電源スイッチSWのオン/オフを検出して、電源スイッチSWがオンした場合には、プリンター300の各部の起動処理を実行する。また、メカコントローラー420は、プラテン30上面の温度を検出する温度センサーS30の出力に基づいて、ヒーター38をフィードバック制御したり、乾燥部4の内部の温度を検出する温度センサーS4の出力に基づいて、乾燥部4をフィードバック制御したりといった温度制御を実行する。さらに、メカコントローラー420は、吸引部37を制御してプラテン30の吸引孔に発生する負圧を調整したり、メンテナンスユニット9を制御して所定のメンテナンスを実行したりといった各動作を実行可能である。
特に、この実施形態では、全域用のコロナ処理機81および2個の側方用のコロナ処理機82a、82bに対応して、全域用の放電バイアス発生部841および2個の側方用の放電バイアス発生部842a、842bとが設けられていた。なお、図4においては、コロナ処理機82a用の放電バイアス発生部842に対して符号842aが付されるとともに、コロナ処理機82b用の放電バイアス発生部842に対して符号842bが付される。そこで、メカコントローラー420は、各放電バイアス発生部841、842を適宜制御して、コロナ処理機81、82によるコロナ処理を実行する。具体的には、メカコントローラー420は、シートSの種類によって、コロナ処理の実行態様を変えている。
つまり、印刷対象であるシートSがフィルム系である場合には、メカコントローラー420は、全域用の放電バイアス発生部841のみを動作させる一方、側方用の放電バイアス発生部842を停止させる。これによって、全域用のコロナ処理機81のみが、搬送経路Pcに沿って搬送されるシートSに対してコロナ処理を行う。
一方、印刷対象であるシートSが紙系である場合には、メカコントローラー420は、全域用および側方用の放電バイアス発生部841、842の全てを動作させる。これによって、コロナ処理機81、82のそれぞれは、搬送経路Pcに沿って搬送されるシートSに対してコロナ処理を実行する(表面改質工程)。なお、上述したとおり、シートSの中央部Amに対しては、全域用のコロナ処理機81のみが対向する一方、シートSの側方部Aeに対しては、搬送経路Pcに並ぶ全域用のコロナ処理機81と側方用のコロナ処理機82とが対向する。したがって、シートSの中央部Amに対しては、全域用のコロナ処理機81のみがコロナ放電を行う。一方、シートSの各側方部Aeに対しては、全域用のコロナ処理機81がコロナ放電を行った後に側方用のコロナ処理機82がコロナ放電を行うこととなり、換言すれば、これらコロナ処理機81、82が互いに重複してコロナ放電を行う。そのため、シートSの側方部Aeに対する放電量は、シートSの中央部Amに対する放電量よりも大きい。
ここで、放電量は、[W・min/m2]を単位とする単位面積あたりのエネルギー量である。具体例を挙げると、幅0.5[m]のシートSを搬送速度10[m/min]で搬送しつつ出力100[W]の放電電極でコロナ処理を行う場合、放電量は、100[W]/(0.5[m]×10[m/min]=20[W・min/ m2]となる。なお、[W]はワットを表し、[min]は分を表し、[m]はメートルを表す。
以上に説明したように、この実施形態では、シートSの中央部Amに与えられる放電量よりも大きい放電量が、シートSの中央部Aeより外側の側方部Amに与えられる。したがって、シートSの測方部Aeでは、インクに対する濡れ性が向上するため、シートSに着弾したインクが濡れ広がって、比較的大きなドットが形成される。その結果、シートSの中央部Amより外側(測方部Ae)におけるドット間隔の広がりを補償して、シートSの中央部Amより外側での画像濃度の低下を抑えることができ、高品質な画像を記録することが可能となる。
特に、この実施形態では、シートSの中央部Amに対しては、全域用のコロナ処理機81が放電エネルギーを与えるのに対して、シートSの中央部Amより外側の測方部Aeに対しては、全域用のコロナ処理機81および側方用のコロナ処理機82の両方が重複して放電エネルギーを与える。そのため、シートSの中央部Amに与えられる放電量よりも大きい放電量が、シートSの側方部Aeに与えられる。よって、シートSの測方部では、インクに対する濡れ性が向上するため、シートSに着弾したインクが濡れ広がって、比較的大きなドットが形成される。その結果、シートSの中央部Amより外側(測方部Ae)におけるドット間隔の広がりを補償して、シートSの中央部Amより外側での画像濃度の低下を抑えることができ、高品質な画像を記録することが可能となる。
かかる効果について、図5を例示して具体的に説明する。ここで、図5は、シートの側方部および中央部のそれぞれに形成されるドットを模式的に示した図である。同図において、「中央部Am」の欄にはシートSの中央部Amに形成されるドットdtが示されており、「側方部Ae」の欄にはシートSの側方部Aeに形成されるドットdtが示されている。上述したとおり、この実施形態では、複数のパスが実行されて、各パスで形成されるライン画像LがY軸方向に並ぶ。具体的には、各パスにおいては、複数のドットdtが搬送経路Pc(X軸方向)に沿って並んで形成されて、ライン画像Lが形成される。そして、このようなパスが繰り返し実行されることで、異なるパスで形成されたライン画像LがY軸方向に隣接して並ぶこととなる。
ところで、インクのような液体を紙系のシートSに噴射した場合、シートSがインクを吸収して膨張する。そして、このような膨張に伴って、シートSは伸びることとなる。この際、シートSの幅方向(すなわちY軸方向)において、シートSの伸び量が一様とならずに、位置によって異なることがある。具体的には、Y軸方向において、シートSは中心部分から端に向かって伸びるため、シートSの伸び量は中央部Amで小さくなる一方、中央部Amの外側(の側方部Ae)で大きくなる傾向にある。その結果、図5に示すように、シートSの中央部AmにおけるY軸方向へのドット間隔Idtよりも、シートSの側方部AeにおけるY軸方向へのドット間隔Idtが広くなっている。
ただし、この実施形態では、シートSの中央部Amに与えられる放電量よりも大きい放電量が、シートSの中央部Aeより外側の側方部Amに与えられる。したがって、中央部Amと比較して測方部Aeでは、インクに対する濡れ性が向上しているため、シートSに着弾したインクが濡れ広がって径の大きなドットdtを形成する。具体的には、図5に示す例では、シートSの中央部Amにおけるドットdtの径Ddtよりも、シートSの側方部Aeにおけるドットdtの径Ddtが大きくなっている。その結果、シートSの中央部Amより外側(測方部Ae)におけるドット間隔Idtの広がりを補償して、シートSの中央部Amより外側での画像濃度の低下を抑えることができ、高品質な画像を記録することが可能となっている。
ちなみに、シートSの膨張に伴うドット間隔Idtの広がりは、シートSの中央部Amの両外側で発生し得る。これに対して、この実施形態では、中央部AmよりY軸方向の両外側それぞれの側方部Amに対して、中央部Amよりも大きい放電量が与えられている。このような構成では、中央部Amの両側側それぞれの測方部Aeにおいて、中央部Amより大きい放電量が与えられて、比較的大きなドットdtが形成され、その結果、画像濃度の低下が抑えられる。したがって、シートSの膨張に伴うドット間隔Idtの広がりが、シートSの中央部Amの両外側それぞれで発生したとしても、高品質な画像を記録することができる。
この際、シートSの膨張に伴うドット間隔Idtの広がりの程度が、シートSの中央部Amの両外側で異なることがある。これに対して、この実施形態では、2個の側方用のコロナ処理機82a、82bのそれぞれについて放電バイアス発生部842a、842bが設けられている。そして、メカコントローラー420は、放電バイアス発生部842aを個別に制御することで、放電量の大きさをコロナ処理機82a、82b毎に個別に制御できる。したがって、シートSの中央部Amの両外側でドットdtの大きさを個別に調整することができ、ドット間隔Idtの広がりの程度がシートSの中央部の両外側で異なる場合でも、ドット間隔Idtの広がりを適切に補償して、高品質な画像記録を実現することができる。
なお、コロナ処理機82a、82bの放電量を個別に制御する際に、放電バイアス発生部842a、842bに発生させるバイアス電圧値については適宜設定可能である。具体的例を挙げると、シートSの中央部Amの両外側(つまり側方部Ae、Ae)の間で、単位面積あたりのインク量に差異があると、印刷データ等から判断できる場合がある。このような場合には、インク量の多い側方部AeではシートSがより伸びて、ドット間隔Idtがより広がる傾向にある。そこで、インク量の多い側方部Aeへの放電量がインク量の少ない側方部への放電量より大きくなるように、バイアス電圧値を個別設定しても良い。
ちなみに、複数のラベル画像を印刷するような場合には、シートSの中央部Amの両外側(つまり側方部Ae、Ae)の間で上述のようなインク量の差が生じることは殆んどない。しかしながら、このようなラベル画像の印刷を行う場合にあっても、コロナ処理機82a、82bの放電量を個別に制御可能に構成することは好適である。つまり、インク量の差が殆んどない場合であっても、プリンター300内に発生する気流や温度分布等によって、シートSの中央部Amの両外側でインクの蒸発量が異なる場合があり、その結果、インクの蒸発量の少ない側方部AeではシートSがより伸びて、ドット間隔Idtがより広がる傾向にある。
そこで、プリンター300の工場出荷時等に当該傾向を測定して、インク蒸発量の少ない側方部Aeへの放電量がインク蒸発量の多い側方部への放電量より大きくなるように、バイアス電圧値を個別設定してメカコントローラー420のメモリーに記憶しても良い。これによって、コロナ処理を実行するにあたっては、メカコントローラー420は、放電バイアス発生部842a、842b毎にメモリーに記憶された放電バイアス値に基づいて、コロナ処理機82a、82bの放電量を個別制御することができる。その結果、シートSの中央部の両外側それぞれでドット間隔Idtの広がりを適切に補償して、高品質な画像記録を実現することができる。
また、この実施形態では、コロナ処理機82が中央部Amよりも大きい放電量を与える範囲R82は、シートSの端を跨ぐように構成されている。このような構成は、中央部Amより大きい放電量を、シートSの端にまで確実に与えることができ、高品質な画像記録を実現するにあたって有利となる。
第2実施形態
図6は、第2実施形態にかかる印刷システムの一例を示す模式図である。なお、第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、主として側方用のコロナ処理機82の構成と動作である。そこで、以下では、この差異部分を中心に説明することとして、共通部分については相等符号を付して説明を省略する。なお、第2実施形態においても、第1実施形態と共通する構成を備えることで、第1実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
図6に示すように、第2実施形態では、側方用のコロナ処理機82は、X軸負方向側から(搬送経路Pcの下流側から)キャリッジ32に取り付けられており、キャリッジ32と一体的に移動する。そして、全域用のコロナ処理機81によりコロナ処理を受けたシートSがプラテン30に供給されると、側方用のコロナ処理機82がキャリッジ32と一緒に移動しつつ、シートSにコロナ処理を適宜実行するように構成されている。さらに、プラテン30の上面に対向しては、光学センサーSoが配置されている。そして、この実施形態では、シートSに形成されたマークMa、Mbの変位を光学センサーSoが検出した結果に基づいて、側方用のコロナ処理機82毎に放電量が個別に制御される。これについて、図7を用いて詳述する。
図7は、第2実施形態における印刷動作を模式的に示す図である。同図の例では、X軸方向に所定幅を有する有効印刷領域IRに、1フレーム分の画像を4パスで印刷する動作が示されている。なお、「1パス目」〜「4パス目」の各欄にて、破線で示したキャリッジ32はパスの開始地点にあるキャリッジ32を表しており、実線で示したキャリッジ32はパスの終了地点にあるキャリッジ32を表している。同図に示すように、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側とX軸正方向外側の間で、キャリッジ32を(記録ヘッド34と一体的に)2往復させることで、4パスが実行されて、1フレーム分の画像が印刷される。
同図の「1パス目」の欄に示すように、1パス目では、キャリッジ32がシートSの有効印刷領域IRの上側をX軸正方向へ通過するとともに、記録ヘッド34の各ノズル35からインクが噴射される。これによって、シートSでは、複数のライン画像L1がY軸方向に間隔を空けて並ぶ。こうして1パス目の主走査が完了すると、副走査が実行されて、キャリッジ32がY軸正方向へ移動距離Y32だけ移動する。
この副走査が完了すると、同図の「2パス目」の欄に示すように、キャリッジ32がシートSの有効印刷領域IRの上側をX軸負方向へ通過するとともに、記録ヘッド34の各ノズル35からインクが噴射される。これによって、シートSでは、1パス目に形成された複数のライン画像L1それぞれの間に新たなライン画像L2が1本ずつ形成される。こうして2パス目の主走査が完了すると、副走査が実行されて、キャリッジ32がY軸正方向へ移動距離Y32だけ移動する。続いて、「1パス目」「2パス目」と同じ要領で「3パス目」「4パス目」が実行されて、有効印刷領域IRに1フレーム分の画像が印刷される。
このように4パスを実行することで、1本のノズル35が4本のライン画像L1〜L4をY軸方向に隣接して形成する。そして、この動作を複数のノズル35のそれぞれが実行することで、ライン画像L1〜L4がY軸方向に繰り返し並んで形成される。こうして、1パス画像の4倍の解像度を有する1フレーム分の画像が印刷される。
ところで、この実施形態では、主走査と副走査とを記録ヘッド34に交互に実行させることで複数の主走査を実行して1フレーム分の画像を印刷する1フレーム印刷処理(画像記録処置)と並行して、側方用のコロナ処理機82a、82bによるコロナ処理がシートSに対して施される。以下では、このコロナ処理について詳述する。
1フレームを構成する4パスのうち最初のパス(すなわち、1パス目)では、ライン画像L1の形成に先立って、マークMa、MbがシートSに形成される。つまり、1パス目の実行のためにキャリッジ32がX軸正方向への移動を開始すると、記録ヘッド34のノズル35からインクが噴射されて、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側にマークMa、Mbが形成される。そして、このマークMa、Mbの形成後に、有効印刷領域IRにライン画像L1が形成される。なお、マークMaは、側方用のコロナ処理機82aがコロナ処理を行う側方部Aeに形成され、マークMbは、側方用のコロナ処理機82bがコロナ処理を行う側方部Aeに形成される。
こうして形成されたマークMa、Mbは光学センサーSoにより検出される。つまり、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側は、プラテン30の上面に対向して光学センサーSoが配置されている。この光学センサーSoは、プラテン30に対する位置が固定された状態で本体ケース1により支持されたラインセンサーである。具体的には、光学センサーSoは、その検出領域Rsの長手方向がY軸方向と平行となるように位置決めされており、検出領域Rsにある検出対象物(ここでは、マークMa、Mb)を検出する。そして、光学センサーSoは、検出対象物のY軸方向への位置に関する情報を、メカコントローラー420に送信する。これにより、メカコントローラー420は、シートS上に形成されたマークMa、MbのY軸方向への変位をモニターすることができる。
そして、メカコントローラー420は、こうして検出したマークMa、MbのY軸方向への変位に基づいて、コロナ処理機82a、82bによるコロナ処理を制御する。つまり、マークMa、MbのY軸方向への変位は、シートSの中央部Amより両外側におけるY軸方向への伸びを反映している。そこで、メカコントローラー420は、マークMa、MbのY軸方向への変位を参照することで、シートSの中央部Amより両外側におけるY軸方向への伸びに応じて、側方用のコロナ処理機82a、82bの放電量を個別に制御する。つまり、マークMaの変位が大きい場合には、放電バイアス発生部842aのバイアス値を上げて、コロナ処理機82aの放電量を増加させる。また、マークMbの変位が大きい場合には、放電バイアス発生部842bのバイアス値を上げて、コロナ処理機82bの放電量を増加させる。
具体的には、1パス目でマークMa、Mbが形成されると、メカコントローラー420は、マークMa、Mbの初期位置(形成時点でのマークMa、Mbの位置)を記憶する。続いて、1パス目におけるライン画像L1の形成が完了すると、メカコントローラー420は、マークMa、Mbのこの時点での位置と初期位置とを比較して、ライン画像L1の形成によって生じたマークMa、Mbの変位量を求める。そして、メカコントローラー420は、以後に形成予定のライン画像L2〜L4(後続ライン画像)の形成に先立って実行するコロナ処理で、放電バイアス発生部842a、842bが印加するバイアス値を、この変位量に応じて設定する。
そして、バイアス値の設定が完了すると、ライン画像L2の形成に先立って、シートSの有効印刷領域IRの全域に渡って、側方用のコロナ処理機82a、82bによるコロナ処理が実行される。具体的には、このコロナ処理は、先程の1パス目に続く2パス目の主走査と並行して実行される。つまり、2パス目の実行のためにキャリッジ32がX軸負方向への移動を開始して、コロナ処理機82a、82bのコロナ放電電極821が有効印刷領域IRに対向する位置に到達すると、放電バイアス発生部842a、842bそれぞれが設定された放電バイアスをコロナ放電電極821に印加して、コロナ処理機82a、82bによるコロナ処理が開始される。続いて、これより少し遅れて、記録ヘッド34が有効印刷領域IRに到達したタイミングから2パス目のライン画像L2の形成が開始される。これにより、ライン画像L2は、コロナ処理機82a、82bによるコロナ処理の施された有効印刷領域IRに対して形成される。こうして、キャリッジ32をX軸負方向へ移動させつつ、コロナ処理とライン画像L2の形成とを実行することで、コロナ処理の直後にライン画像L2を形成するといった動作が有効印刷領域IRの全域に渡って実行される。
こうして2パス目が完了すると、続いて3パス目が実行される。そして、3パス目においてライン画像L3の形成が完了すると、メカコントローラー420はこの時点におけるマークMa、Mbの初期位置からの変位量を求める。続いて、上述と同様にして、メカコントローラー420は、以後に形成予定のライン画像L4(後続ライン画像)の形成に先立って実行するコロナ処理で、放電バイアス発生部842a、842bが印加するバイアス値を、この変位量に応じて設定する。そして、上述の2パス目と同じ要領で4パス目が実行されて、ライン画像L4は、コロナ処理機82a、82bによるコロナ処理の施された有効印刷領域IRに対して形成されることとなる。こうして4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷が完了する。
以上に説明したように、この実施形態においても、シートSの中央部Amに対しては、全域用のコロナ処理機81が放電エネルギーを与えるのに対して、シートSの中央部Amより外側の測方部Aeに対しては、全域用のコロナ処理機81および側方用のコロナ処理機82の両方が重複して放電エネルギーを与える。そのため、シートSの中央部Amに与えられる放電量よりも大きい放電量が、シートSの側方部Aeに与えられる。よって、シートSの測方部では、インクに対する濡れ性が向上するため、シートSに着弾したインクが濡れ広がって、比較的大きなドットが形成される。その結果、シートSの中央部Amより外側(測方部Ae)におけるドット間隔の広がりを補償して、シートSの中央部Amより外側での画像濃度の低下を抑えることができ、高品質な画像を記録することが可能となる。
また、この実施形態では、中央部Amの両外側の側方部Ae、Aeそれぞれに形成されたマークMa、Mbの変位に基づいて各測方部Ae、Aeに与える放電量の大きさが制御されている。これによって、シートSの膨張に伴うドット間隔Idtの広がりの程度に応じた適切な大きさの放電量を各測方部Ae、Aeに与えることができる。したがって、シートSの中央部Aeの両外側それぞれで、ドットdtの大きさを適切に調整して、ドット間隔Idtの広がりをより適切に補償することができ、高品質な画像記録にとって極めて有利となる。
特に、この実施形態では、X軸方向(搬送経路Pc)に記録ヘッド34を移動させつつ複数のドットdtを形成して、X軸方向に延びる1ライン分のライン画像L1〜L4を形成する主走査と、Y軸方向に記録ヘッド34を移動させる副走査が交互に実行される。このようにして複数の主走査が実行されて、幅方向に隣接するライン画像L1〜L4が互いに異なる主走査により形成される(画像記録処理)。そして、この画像記録処理の途中において、マークMa、Mbの変位を検出する検出動作と、検出動作の結果に基づいて制御された大きさの放電量を各側方部Ae、Aeに与えてコロナ処理を行う改質動作とが実行される。これによって、シートSの膨張に伴うドット間隔Idtの広がりの程度に応じた適切な大きさの放電量を、各測方部Ae、Aeに与えることができる。したがって、ドット間隔Idtの広がりの程度に応じて大きさが調整されたドットdtによって、その後のライン画像(後続ライン画像)を形成することができ、その結果、各測方部Ae、Aeにおいてドット間隔Idtの広がりを適切に補償して、高品質な画像記録を実行することができる。
その他
以上のように、プリンター300が本発明の「画像記録装置」に相当し、シートSが本発明の「記録媒体」に相当し、中央部Amが本発明の「中央部」に相当し、側方部Aeが本発明の「側方部」に相当し、コロナ処理機81、82が協働して本発明の「改質処理ユニット」に相当し、全域用のコロナ処理機81が本発明の「第1表面改質機」に相当し、側方用のコロナ処理機82が本発明の「第2表面改質機」に相当し、コロナ処理が本発明の「表面改質処理」に相当し、記録ヘッド34が本発明の「記録ヘッド」に相当する。また、搬送経路Pcの矢印方向が本発明の「搬送方向」に相当し、Y軸方向が本発明の「幅方向」に相当する。また、メカコントローラー420が本発明の「表面改質制御部」「画像記録制御部」として機能し、マークMa、Mbが本発明の「一方側マーク」「他方側マーク」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、シートSの側方部Aeそれぞれに対して、1個の側方用のコロナ処理機82が設けられていた。しかしながら、例えば、シートSの側方部Aeそれぞれに対して、複数の側方用のコロナ処理機82をY軸方向に並べて配置しても良い。
また、上記実施形態では、側方用のコロナ処理機82の処理範囲R82はシートSの端を跨いでいた。しかしながら、例えばシートSの端に対して余白を設けて画像が形成されるような場合には、側方用のコロナ処理機82の処理範囲R82を、シートSの端より内側に収めるように構成しても良い。
また、側方用のコロナ処理機82の放電量を、シートSの紙種に応じて調整するように構成しても良い。具体的には、コート紙に比較して上質紙では、インクの吸収に伴う伸びが大きい傾向にある。そこで、シートSがコート紙の場合におけるコロナ処理機82の放電量よりも、シートSが上質紙の場合におけるコロナ処理機82の放電量を大きく設定しても良い。
また、シートSの幅Wが狭い場合には、シートSの伸びがシートSの側方部Aeでのドット間隔Idtの広がりに与える影響は少ないと考えられる。そこで、シートSの幅Wが所定の閾値未満であるような場合には、側方用のコロナ処理機82を停止して、全域用のコロナ処理機81のみを用いてシートSへのコロナ処理を実行するように構成しても良い。
また、コロナ処理機82の処理範囲R82がY軸方向において可変であるように構成しても良い。このような構成は、シートSの幅Wsの変更等に対応して、コロナ処理機82の処理範囲R82を適切化することができ、高品質な画像記録を実現するにあたって有利となる。
なお、処理範囲R82をY軸方向に可変にする具体的構成としては、種々のものを採用できる。例えば、コロナ処理機82において、コロナ放電電極821をY軸方向に複数並べておき、コロナ放電に供するコロナ放電電極821を複数のコロナ放電電極821から選択することで、処理範囲R82をY軸方向に変化させても良い。
あるいは、コロナ処理機82をシートSに対してY軸方向へ移動自在に構成しても良い。この際、コロナ処理機82を移動させるにあたっては、2個のコロナ処理機82の一方のみを移動自在にしても良く、2個のコロナ処理機82の両方を移動自在に構成しても良い。また、2個のコロナ処理機82の両方を移動自在に構成するにあたっては、これらのコロナ処理機82が互いに独立に移動するように構成しても良いし、これらのコロナ処理機82が例えばシートSの中心線Csに対して対称な位置関係を保ちながら移動するように構成しても良い。
また、上記実施形態では、Y軸方向における中央部Aeの両外側それぞれに対して、側方用のコロナ処理機82が設けられていた。しかしながら、Y軸方向における中央部Aeの片側に対してのみ、側方用のコロナ処理機82を設けるように構成しても良い。具体的には、例えば、Y軸方向においてシートSの一方の端が位置決めされている場合には、シートSの膨張に伴うドット間隔Idtの広がりは、シートSの中央部AeよりY軸方向の他方(一方の逆)で顕著になる傾向にある。そこで、シートSの中央部AeよりY軸方向の他方にのみ側方用のコロナ処理機82を設け、当該他方の測方部Aeに中央部Amよりも大きい放電量を与えることで、このようなドットdtの広がりを適切に補償して、高品質な画像記録の実現を図っても良い。
また、上記実施形態では、シートSの搬送経路Pcの上流側から下流側へ向けて、全域用のコロナ処理機81と側方用のコロナ処理機82がこの順番で並んでおり、シートSに対しては、全域用のコロナ処理機81によるコロナ処理を行ってから、側方用のコロナ処理機82によるコロナ処理を行っていた。しかしながら、コロナ処理機81と側方用のコロナ処理機82の配置を入れ換えて、シートSに対して、側方用のコロナ処理機82によるコロナ処理を行ってから、全域用のコロナ処理機81によるコロナ処理を行うように構成しても良い。
また、上記実施形態では、全域用のコロナ処理機81と側方用のコロナ処理機82とを設けておき、これらコロナ処理機81、82が側方部Aeに対して重複して放電エネルギーを与えることで、側方部Aeの放電量を中央部Amの放電量より大きくしていた。しかしながら、中央部Amと側方部Aeのそれぞれに対して別個にコロナ処理機を設け、中央部Am用のコロナ処理機の放電量よりも、側方部Ae用のコロナ処理機の放電量を大きくすることで、側方部Aeの放電量を中央部Amの放電量より大きくしても良い。
また、上記実施形態では、コロナ処理により表面改質処理を実行していた。しかしながら、コロナ処理以外の手法、例えばプラズマ処理によって表面改質処理を実行するように構成しても良い。
また、上記実施形態では、ピエゾ方式を用いたインクジェットプリンターに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、サーマル方式を用いたインクジェットプリンターに対しても本発明を適用可能であることは言うまでもない。