図1は本発明を適用した印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。なお、図1や以下の図面では必要に応じて、装置各部の配置関係を明確にするためにZ軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向と、その反対方向を負方向と適宜取り扱う。
印刷システム100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データ(ビットマップデータ)から印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター300とを備える。このプリンター300は、長尺なシートSをロール・トゥ・ロールで搬送しつつ、インクジェット方式を用いてシートSの表面に画像を印刷するものである。
図1に示すように、プリンター300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSの表面にインクを吐出して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、プラテン30上に支持されたシートSに対して記録ユニット31が印刷を行う。
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転可能な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSが巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転可能な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSが巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。
そして、繰出部2の繰出軸21から繰り出されたシートSが、ローラー71〜77により案内されながら印刷室3と乾燥部4とを順番に通過した後に、巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。ちなみに、ローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。
印刷室3では、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31によりシートSへの印刷処理が実行される。この記録ユニット31は、シートSに反応液を吐出してからシートSにインクを吐出する印刷処理を実行することで、シートSに画像を印刷する。つまり、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)にはカートリッジ装着部8が設けられており、カートリッジ装着部8には、反応液を貯留する反応液カートリッジ81と、互いに異なる色のインクを貯留する複数のインクカートリッジ82とが着脱可能に装着されている。そして、記録ユニット31は、反応液カートリッジ81から供給された反応液と、インクカートリッジ82から供給されたインクとをそれぞれインクジェット方式によりシートSに吐出可能である。
ちなみに、反応液は、インクに含まれる色材を凝集させる凝集剤を溶媒に溶解させたものである。凝集剤としては、多価金属塩を好適に用いることができる。多価金属塩としては、例えば硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムおよびギ酸カルシウムのうちの1または複数を好適に用いることができる。また、反応液の溶媒としては水が好ましく、水に加えて多価アルコール類、多価アルコール誘導体等の水溶性有機溶媒を添加してもよい。
図2は記録ユニットの構成を部分的に示す底面図である。ここでは、図1および図2を用いつつ、記録ユニット31の詳細を説明する。この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられた記録ヘッド34、35とを有する。支持板33の下面では、1個の記録ヘッド34、4個の記録ヘッド35および1個の記録ヘッド34がX軸方向に等ピッチで並び、各記録ヘッド34、35では複数のノズルNがY軸方向に平行に並ぶ。そして、両端の記録ヘッド34のそれぞれは反応液をノズルNから吐出し、これら記録ヘッド34の間に配置された4個の記録ヘッド35のそれぞれは互いに異なる色のインクをノズルNから吐出する。さらに、記録ヘッド34からシートSに吐出された反応液の状態を検出する反応液検出器9がキャリッジ32に搭載されている。具体的には、図2の左端の記録ヘッド34の左隣で、反応液検出器9が支持板33に取り付けられている。
図3は反応液検出器の構成の一例を模式的に示す図である。反応液検出器9は、Y軸方向に平行に配置されたライン光源91と、Y軸方向に平行に配置されたラインセンサー92、93とを有し、ライン光源91から射出されてシートSの表面で反射された光をラインセンサー92、93により検出する。また、反応液検出器9は、ライン光源91からシートSまでの光路の途中に配置された偏光ビームスプリッター94を有する。この偏光ビームスプリッター94は、ライン光源91から射出された光のうち、p波成分の光の透過を許容する一方、s波成分の光を遮断する。こうして、シートSの表面にはp偏光の光が照射される。さらに、反応液検出器9は、シートSの表面からラインセンサー92、93までの光路の途中に配置された偏光ビームスプリッター95を有する。この偏光ビームスプリッター95は、シートSの表面で反射された光をp波成分とs波成分とに分離し、p波成分の光をラインセンサー92に向けて射出するとともに、s波成分の光をラインセンサー93に向けて射出する。これによって、シートSの表面での反射光のうち、p偏光の光がラインセンサー92に入射し、s偏光の光がラインセンサー93に入射する。
このような反応液検出器9を用いることで、シートSの表面における反応液の状態、換言すればシートSの表面のうち反応液で被覆された部分の割合(被覆率)を検出することができる。つまり、シートSの表面のうち、反応液が付着しない露出部分に入射したp偏光の光は正反射されるため、p偏光を維持したまま偏光ビームスプリッター95を透過して、ラインセンサー92に入射する。一方、シートSの表面のうち、反応液により被覆された被覆部分に入射したp偏光の光は拡散反射される。そのため、被覆部分からの反射光はp波成分およびs波成分を含み、偏光ビームスプリッター95により各成分に分離されてからラインセンサー92、93に入射する。このような反応液検出器9によれば、反応液によるシートSの被覆率が大きいほど、ラインセンサー92が検出するp波成分の光量が減少するとともにラインセンサー93が検出するs波成分の光量が増大する。したがって、この傾向を利用することで、p波成分の検出光量の値、あるいはp波成分の検出光量とs波成分の検出光量との比に基づき、反応液によるシートSの被覆率を検出できる。
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33、記録ヘッド34、35および反応液検出器9と一体的に移動可能となっている。つまり、印刷室3内には、X軸方向に平行に延びるX軸ガイドレール37が設けられており、キャリッジ32はX軸モーターMx(図3)の駆動力を受けると、X軸ガイドレール37に沿ってX軸方向に移動する。さらに、印刷室3内には、Y軸方向に延びるY軸ガイドレール(図示省略)が設けられており、キャリッジ32はY軸モーターMy(図3)の駆動力を受けると、Y軸ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。
そして、例えば特開2013−000997号公報等に記載のラテラルスキャン方式により印刷が実行される。この方式によれば、プラテン30の上面で停止するシートSに対して、記録ユニット31のキャリッジ32をXY面内で二次元的に移動させて、印刷が実行される。具体的には、記録ユニット31は、キャリッジ32をX軸方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッド35の各ノズルNからシートSにインクを吐出する動作(主走査)を実行する。この主走査では、1つのノズルNが吐出するインクにより形成されたX軸方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が、Y軸方向に間隔を空けつつ複数並んで、二次元の画像が印刷される。そして、この主走査と、キャリッジ32をY軸方向(副走査方向)に移動させる副走査とが交互に実行されて、複数回の主走査が実行される。
つまり、記録ユニット31は1回の主走査を完了すると、副走査を行なってキャリッジ32をY軸方向に移動させる。続いて、記録ユニット31は、この副走査によって移動した位置から、キャリッジ32をX軸方向(の先の主走査とは反対向き)に移動させる。これによって、先の主走査により既に形成された複数のライン画像それぞれの間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。そして、プリンター300は、これら主走査と副走査とを交互に実行することで、キャリッジ32を往復移動させつつ複数回の主走査を実行し、1フレーム分の画像を印刷する。
特に、本実施形態の各主走査では、キャリッジ32の移動方向の先頭に位置する記録ヘッド34から反応液が吐出される。つまり、この記録ヘッド34は、実行中の主走査において移動方向の上流側の各記録ヘッド35がインクを吐出予定の範囲に対して、反応液を吐出する。したがって、主走査で印刷された各ライン画像のインクの色材は、シートSに予め吐出された反応液の作用によって凝集してシートSに定着する。
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。換言すれば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備える。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口しており、プラテン30の下面には吸引部38が取り付けられている。そして、吸引部38が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、吸引部38がシートSを吸引することでシートSを平坦に保つ。一方、印刷が終了すると、吸引部38がシートSの吸引を停止することでシートSのスムーズな搬送を可能とする。
さらに、プラテン30の下面には、ヒーター39が取り付けられている。このヒーター39は、プラテン30を所定温度(例えば45度)に加熱するものである。これにより、シートSは記録ヘッド34、35による印刷処理を受けつつ、プラテン30の熱によって1次乾燥されることとなる。そして、この1次乾燥により、シートSに着弾した反応液やインクの乾燥が促進される。
こうして、1フレームの印刷を受けつつ1次乾燥されたシートSは、シートSの間欠搬送に伴ってプラテン30から乾燥部4へ移動する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾した反応液やインクを完全に乾燥させる乾燥処理を実行する。そして、乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達し、ロールR2として巻き取られる。
以上が、印刷システム100が備える機械的構成の概要である。続いて、上述した図1に図4を加えて、図1の印刷システム100が備える電気的構成について詳述する。ここで、図4は図1の印刷装置が備える電気的構成を模式的に示すブロック図である。
上述したとおり、印刷システム100は、プリンター300を制御するホスト装置200を備える。このホスト装置200は、例えばパーソナルコンピューターにより構成されており、プリンター300の動作を制御するプリンタードライバー210を備える。ちなみに、プリンタードライバー210は、ホスト装置200が備えるCPU(Central Processing Unit)がプリンタードライバー210用のプログラムを実行することで構築される。さらに、ホスト装置200は、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard disk Drive)等で構成された記憶部220と、プリンター300との通信機能を司る通信制御部230とを備える。
また、ホスト装置200は、作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター240と、キーボードやマウス等で構成される入力機器250とを備える。ちなみに、モニター240および入力機器250は、タッチパネル式のディスプレイにより一体的に構成されても良い。モニター240には、印刷対象の画像の他にメニュー画面が表示されている。したがって、作業者は、モニター240を確認しつつ入力機器250を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、シートSの種類、シートSのサイズ、印刷品質、版数等の各種の印刷条件を設定することができる。
プリンタードライバー210は主制御部211を有し、主制御部211がモニター240の表示や、入力機器250からの入力の処理を制御する。具体的には、主制御部211は、メニュー画面や印刷設定画面等の各種画面をモニター240に表示させるともに、各種画面において入力機器250から入力された内容に応じた処理を行う。これにより、主制御部211は、作業者からの入力に応じてプリンター300を制御するために必要な制御信号を生成する。
さらに、プリンタードライバー210は、外部装置から受信した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部213を有する。画像処理部213は、インク用の記録ヘッド35を画像データに応じて駆動するために必要となる印刷データを生成する。具体的には、画像データに対して色変換処理およびハーフトーン処理を行うことで、印刷データが生成される。
そして、主制御部211で生成された制御信号や、画像処理部213で生成された印刷データは通信制御部230を介して、プリンター300の本体ケース1内に設けられたプリンター制御部400に転送される。この通信制御部230は、プリンター制御部400との間で双方向のシリアル通信が可能となっており、プリンター制御部400に制御信号や印刷データを転送するとともに、その応答信号をプリンター制御部400から受信して主制御部211に送信する。
プリンター制御部400は、HDDで構成された記憶部410、ヘッドコントローラー420およびメカコントローラー430を備える。記憶部410は、仮想的にシートSの表面に対してマトリックス状に配列された複数の画素のうち反応液を吐出する画素を示した反応液データDlを記憶する。ヘッドコントローラー420は、記憶部410に記憶される反応液データDlと、プリンタードライバー210から送信されてきた印刷データとに基づいて、記録ヘッド34、35を制御する機能を司る。つまり、ヘッドコントローラー410は、反応液データDlに基づき記録ヘッド34からの反応液の吐出を制御することで反応液データDlが示す画素に反応液を吐出する。さらに、ヘッドコントローラー420は、記録ヘッド35からのインクの吐出を印刷データに基づき制御することで印刷データが示す画素にインクを吐出する。この際、記録ヘッド34、35からの反応液やインクを吐出するタイミングは、キャリッジ32のX軸方向への移動に基づいて制御される。つまり、印刷室3内には、キャリッジ32のX軸方向の位置を検出するリニアエンコーダーE32が設けられている。そして、ヘッドコントローラー410は、リニアエンコーダーE32の出力を参照することで、キャリッジ32のX軸方向への移動に応じたタイミングで、記録ヘッド34、35から反応液やインクを吐出させる。
一方、メカコントローラー420は、シートSの間欠搬送やキャリッジ32の駆動を制御する機能を主として司る。具体的には、メカコントローラー420は、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系を駆動する搬送モーターMsを制御して、シートSの間欠搬送を実行する。また、メカコントローラー420は、X軸モーターMxを制御することで、主走査のためのX軸方向への移動をキャリッジ32に実行させるとともに、Y軸モーターMyを制御することで、副走査のためのY軸方向への移動をキャリッジ32に実行させる。
さらに、メカコントローラー420は、印刷処理のための上記制御のほかに種々の制御を実行できる。例えばメカコントローラー420は、プラテン30上面の温度を検出する温度センサーS30の出力に基づいてヒーター39をフィードバック制御したり、乾燥部4の内部の温度を検出する温度センサーS4の出力に基づいて乾燥部4をフィードバック制御したりといった温度制御を実行する。
また、プリンター制御部400では、記録ヘッド34からシートSに吐出され反応液の状態を反応液検出器9で検出した結果に基づき反応液データDlを最適化する最適化処理を、ヘッドコントローラー420とメカコントローラー430とが協働して実行する。続いては、この最適化処理の実行理由および具体的内容について詳述する。
上述のとおり、プリンター300では、反応液データDlが示す各画素に反応液のドットを着弾させる。一方、プリンター300で使用可能なシートSとしては、上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等の紙系のシートSや、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等のフィルム系のシートSが在り、シートSの種類によって反応液に対する濡れ性が異なる。そのため、シートSの反応液に対する濡れ性の違いによって、反応液データDlが示す被覆率と、シートSに着弾した反応液がシートSを被覆する実際の被覆率とが異なる場合があった。ここで、反応液データDlが示す被覆率を「デューティ」と、シートSに着弾した反応液がシートSを実際に被覆する被覆率を「実被覆率」と適宜称することとする。
図5は反応液に対するシートの濡れ性と反応液による実被覆率との関係を模式的に示す図である。図5の「反応液データDl」の欄に例示する反応液データDlは、ハッチングが施された画素Pxに対する反応液の吐出を示し、50%のデューティを示す。一方、図5の「シートSa」および「シートSb」の欄では、反応液に対する濡れ性が異なる疎水性(フィルム系)のシートSa、Sbに対して、当該反応液データDlに従って反応液を吐出した結果が模式的に示されている。なお、シートSaよりもシートSbの方が反応液に対する濡れ性が低い。シートSaの画素Pxに着弾したドットdtは、シートSの表面で十分に濡れ広がらず、その結果、シートSaでの反応液の実被覆率は、反応液データDlが示すデューティ(50%)よりも低くなる。また、シートSbでは、異なる画素Pxに着弾した複数のドットが合一して大きなドットdtを形成している。その結果、シートSbでの反応液の実被覆率は、反応液データDlが示すデューティ(50%)よりも低く、さらにシートSaでの反応液の実被覆率よりも低い。
このような事情から、例えば目標の被覆率を狙って当該目標被覆率に相当するデューティの反応液データDlで記録ヘッド34を駆動したとしても、シートSに着弾した反応液の実被覆率はこの目標被覆率と異なる場合がある。そこで、本実施形態では、シートSに反応液を吐出した際の実被覆率を反応液検出器9により検出し、その検出結果を用いて反応液データDlを最適化する。
図6は反応液検出器の検出結果とデューティとの関係を模式的に示す図である。同図において一点鎖線で示す理想直線Iは、反応液データDlが示すデューティでシートSが反応液により被覆されたとする理想状態におけるデューティと正反射光量(すなわち、ラインセンサー92の検出光量)との関係を示す。この理想直線Iは、例えばシミュレーションにより求めれば良い。理想直線Iが示すように、理想状態ではデューティの増大に伴って正反射光量は直線的に減少する。
一方、符号Sa、Sbが付された曲線は、横軸のデューティを示す反応液データDlに従って記録ヘッド34が吐出した反応液のドットがシートSa、Sbに着弾した場合におけるデューティと正反射光量との関係を示す。これらの曲線に示されるように、反応液データDlのデューティが低い範囲では、反応液が濡れ広がらないためにシートSa、Sbの表面が多く露出する。その結果、シートSa、Sbからの正反射光量は、理想直線Iが示す正反射光量よりも多くなる。一方、反応液データDlのデューティがある程度以上となると、シートSa、Sbにおいて反応液の各ドットが凝集して膜状に連なり、シートSaの表面を被覆する。その結果、シートSa、Sbからの正反射光量は、理想直線Iが示す正反射光量よりも少なくなる。さらに、反応液データDlのデューティが臨界率Rcを越えて増大すると、反応液膜の表面が平坦化するため、この反応液膜の表面での正反射光が増大する。その結果、正反射光量が減少傾向から転じて増大する。
そこで、本実施形態では、目標被覆率で反応液によりシートSを覆うことを可能とする反応液データDlが求められる。つまり、シートSa、Sbが目標被覆率Rtで被覆された場合の正反射光量は、理想直線Iが目標被覆率Rtに対して示す正反射光量、すなわち目標正反射光量Qtに相当すると考えられる。したがって、反応液データDlのデューティに対する正反射光量の変化特性(すなわち、図6に示す曲線)がシートSa、Sbについて既知であれば、目標正反射光量Qtを実現するデューティRa、Rbをこの変化特性から求めることができる。そして、デューティRa、Rbを示す反応液データDlで記録ヘッド34を駆動することでシートSa、Sbを反応液により目標被覆率Rtで被覆できる。
具体的には、プリンター制御部400が図7のフローチャートに示す反応液データDlの最適化処理を実行することで、目標正反射光量Qtを実現するデューティを示す反応液データDlを求める。ここで、図7は反応液データの最適化処理の一例を示すフローチャートであり、図8は図7のフローチャートで用いられる反応液データを模式的に示す図である。ステップS101では、デューティが互いに異なる図8の各反応液データDlに従って記録ヘッド34から反応液を吐出させて、複数の反応液パッチをシートSの表面に形成する。図8に示すように、ここの例では、5%から100%の間でデューティが互いに異なる10通りの反応液データDlが用意されている。その結果、互いに実被覆率が異なる10通りの反応液パッチがX軸方向に並んでシートSに形成される。
ステップS102では、これら反応液パッチを反応液検出器9によりX軸方向へ走査することで、各反応液パッチからの正反射光量を測定する。これによって、反応液データDlのデューティに対する正反射光量の変化特性をシートSについて取得することができる。そして、ステップS103では、目標正反射光量Qtを実現する反応液データDlのデューティ、すなわち最適デューティを当該変化特性に基づき求める。具体的には、反応液パッチを形成した各反応液データDlのうち、目標正反射光量Qtに最も近い正反射光量を実現する反応液データDlのデューティを最適デューティとして求めると良い。そして、ステップS104では、ステップS103で求めた最適デューティを有する反応液データDlが記憶部410に記憶される。
以上に説明したように本実施形態では、互いに異なるデューティの複数の反応液データDlで記録ヘッド34から反応液を吐出することで、互いに異なる実被覆率(付与態様)を有する複数の反応液パッチがシートSに形成される。そして、各反応液パッチの実被覆率が検出され、印刷処理において反応液を吐出する際の反応液データDlのデューティがこの検出結果に基づき最適化される(反応液データDlの最適化処理)。したがって、適切な実被覆率で反応液をシートSに付与することが可能となっている。
また、反応液検出器9は、反応液パッチが形成されたシートSに光を照射した際の反射光量に基づき、各反応液パッチの実被覆率を検出する。これによって、シートSでの各反応液パッチの実被覆率を的確に検出することが可能となっている。
また、プリンター制御部400により決定された反応液データDlは記憶部410に記憶される。そして、記録ヘッド34は、印刷処理において、記憶部410に記憶された反応液データDlに従って反応液をシートSに吐出する。これによって、印刷処理において、シートSを適切な実被覆率で反応液により覆うことが可能となっている。
また、プリンター制御部400は、印刷処理で反応液を付与する際のデューティを複数のデューティ(図8)のうちから選択することで決定していた。これによって、印刷処理で反応液を付与するデューティを簡便に決定することが可能となっている。
このように、本実施形態では、プリンター300が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、記録ヘッド34が本発明の「反応液付与部」の一例に相当し、記録ヘッド35が本発明に「インク付与部」の一例に相当し、反応液検出器9が本発明の「検出部」の一例に相当し、プリンター制御部400が本発明の「制御部」の一例に相当し、シートSが本発明の「記録媒体」の一例に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では、反応液データDlの最適化処理において、デューティが互いに異なる複数の反応液データDlで記録ヘッド34を駆動することで、複数の反応液パッチをシートSに形成していた。しかしながら、複数の反応液パッチの形成方法はこれに限られない。したがって、例えば、デューティは同じでありながら、反応液が吐出される画素Pxの位置のパターンが異なる複数の反応液データDlで記録ヘッド34を駆動することで、複数の反応液パッチをシートSに形成しても良い。
図9は反応液パッチの形成に用いる反応液データの変形例を模式的に示す図である。同図に従うと、例えばデューティを5%、10%、12.5%あるいは25%で同一でありながら、反応液が吐出される画素Pxの位置のパターンA1〜A9(付与態様)が異なる複数の反応液データDlで反応液パッチが形成される。特にパターンA2〜A4は、パターンA1において偶数列を奇数列に対してX軸方向へシフトさせたものに相当する。また、パターンA5、A6は、斜めに隣接する2個のドットを1単位として、パターンA1においてX軸方向に隣り合う単位をY軸方向にシフトさせたものに相当する。また、パターンA7は、各ドットを、X軸方向およびY軸方向へ1画素以上離して孤立させたものに相当する。このように、反応液が吐出される画素Pxの位置のパターンが互いに異なる複数の反応液パッチに基づき反応液データDlを最適化することで、印刷処理において適切なパターンで反応液を付与することが可能となる。
また、上記実施形態では目標正反射光量Qtの設定方法については特に詳述しなかった。しかしながら、目標正反射光量Qtは適宜の態様で設定することができ、例えば複数の目標正反射光量Qtそれぞれに対して最適な反応液データDlを求めて記憶部410に記憶しておいても良い。具体的には、0%〜100%の間で5%ずつ異なるデューティに対応する複数の目標正反射光量Qtを理想直線Iから求め、各目標正反射光量Qtについて反応液データDlの最適化処理を実行し、最適な反応液データDlを記憶部410に記憶しておけば良い。この際、印刷処理においては、記録ヘッド35により印刷する画像にとって最適な反応液データDl、例えば印刷画像のデューティに近い実被覆率を実現する反応液データDlを、記憶部410に記憶された複数の反応液データDlのうちから選択して、用いれば良い。
ちなみに、目標正反射光量Qtが低い領域では、図10に示すように、目標正反射光量Qtを実現する反応液データDlのデューティが2通り求まる場合がある。図10は反応液検出器の検出結果とデューティとの関係を模式的に示す図である。この場合には、これら2通りのデューティRl、Rhのうち、小さいほうのデューティRlの反応液データDlを最適な反応液データDlとして求めて、記憶部410に記憶しておくと良い。
また、図3に示すように、反応液検出器9は正反射光および拡散反射光の両方を検出できる。この際、ラインセンサー92が検出する正反射光の光量と、ラインセンサー93が検出する拡散反射光の光量とは、反応液データDlのデューティの変化に対して反転対称の特性となる。そこで、反応液データDlの最適化処理においては、ラインセンサー92とラインセンサー93の両方の出力を監視し、これらが反転対称の特性を有するか否かに基づきラインセンサー92の故障等を検出することもできる。
あるいは、図6および図10では、シートSでの正反射光量に基づき反応液パッチの状態を検出して、反応液データDlを最適化する例が示されていた。しかしながら、反応液パッチに光を照射した際の正反射光と拡散反射光との比に基づき反応液パッチの状態を検出して、反応液データDlを最適化しても良い。このように正反射光と拡散反射光との比に基づく例によっても、シートSに形成された反応液パッチの状態を的確に検出することができる。
また、ステップS103において、目標正反射光量Qtを実現する反応液データDlのデューティ、すなわち最適デューティを求める具体的方法も上述の例に限られない。そこで、ステップS102での測定結果から得られる変化特性に対して線形補間を行って、目標正反射光量Qtを実現すると算出されるデューティを最適デューティとして求めても良い。
また、上述の反応液データの最適化処理では、複数の反応液パッチを一回的に作成してから、各反応液パッチの状態を検出していた。しかしながら、1個の反応液パッチを作成する度に、この反応液パッチの状態を検出するように構成しても良い。
また、上記のプリンター300は、平板形状のプラテン30上で間欠停止するシートSに対してX軸方向に移動する記録ヘッド34、35から反応液やインクを吐出していた。しかしながら、特開2015−134460号公報に記載のように、プリンター300は、回転ドラム30に支持されるシートSを所定の搬送方向へ搬送しつつ、回転ドラム30の周面に沿って並ぶ複数のヘッドから反応液やインクを吐出するものでも構わない。