JP2013191587A - 裏面電極、裏面電極の製造方法、及び薄膜太陽電池 - Google Patents

裏面電極、裏面電極の製造方法、及び薄膜太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】光の全反射率及び拡散反射率が高い裏面電極及びその製造方法を提供する。
【解決手段】この裏面電極4は、Agを主成分としNiを添加した合金層2と、該合金層2に積層して形成される透明電極層3とを少なくとも含み、合金層2の表面には、平均的な高さが160〜600nmで、平均的な横幅が500〜1200nmで、平均傾斜角が20〜60°の凹凸形状が形成されている。この裏面電極4は、純Agと純Niの2種類のターゲットを同時に用いるか、あるいは、Ag−Ni合金ターゲットを用いて、スパッタリング法により成膜しての合金層2を形成し、該合金層上に透明電極層3を形成して製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、全反射率及び拡散反射率が高く、光電変換層で吸収されずに裏面電極まで到達した光を乱反射して光電変換層内に効率よく閉じ込めることができるテクスチャが形成された、薄膜太陽電池用の裏面電極、該裏面電極の製造方法及び該裏面電極を備えた薄膜太陽電池に関する。
太陽電池は、電子機器の充電用電源などとして利用されている。電池のように交換が不要であり、環境面に対してもクリーンであり、注目されている。
太陽電池の発電効率の向上のために、光電変換層に入射される光の吸収効率を高める試みがなされている。光の吸収効率を高める手段の一つとして、光反射性の裏面電極の表面に凹凸状のテクスチャを形成する方法がある。裏面電極の表面に凹凸状のテクスチャを形成することにより、光電変換層で吸収されずに裏面電極まで到達した光が、裏面電極と光電変換層との接合界面で乱反射して光電変換層内に閉じ込められ易くなるので、光の吸収効率を高めることができる。
特許文献1には、酸素を構成元素の1つとする1種以上の分子ガスを0.1〜20体積%含む混合ガス雰囲気中で成膜して、Agに易酸化金属元素を0.01〜5.0at%添加した合金層を形成することが開示されている。このようにして形成される合金層は、表面に凹凸形状のテクスチャを有しているとされている。
特許文献1では、易酸化金属元素としては、Al、Zn、Snがより好ましく使用でき、Alが最も好ましく使用できるとされている。また、実施例では、易酸化金属元素としてAlを使用している。
特開2004−335991号公報
太陽電池の発電効率をより向上させるため、裏面電極での光の拡散反射率を更に高めて、光の利用効率を高めることが望まれている。
よって、本発明の目的は、光の全反射率及び拡散反射率が高い裏面電極及びその製造方法、発電効率に優れた薄膜太陽電池を提供することにある。
上記目的を達成するにあたり、本発明の裏面電極は、支持基板上に、裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層してなる薄膜太陽電池の、前記支持基板上に形成される裏面電極であって、前記裏面電極は、Agを主成分としNiを添加した合金層と、該合金層に積層して形成される透明電極層とを少なくとも含み、前記合金層の表面には、平均的な高さが160〜600nmで、平均的な凹凸の横幅が500〜1200nm、平均傾斜角が20〜60°の凹凸形状が形成されていることを特徴とする。
本発明の裏面電極は、波長500〜950nmの光に対する全反射率が80%以上であり、かつ、拡散反射率が40%以上であることが好ましい。
本発明の裏面電極の前記合金層は、Niの含有量が0.15〜0.75at%であることが好ましい。
本発明の裏面電極の前記合金層は、膜厚が200〜300nmであることが好ましい。
本発明の裏面電極の前記合金層は、純Agと純Niの2種類のターゲットを同時に用い、O濃度0.5〜6.0%のArガス雰囲気下でスパッタリング法により成膜して得られたものであるか、あるいは、Ag−Ni合金ターゲットを用いて、O濃度0.5〜3.5%のArガス雰囲気下で、スパッタリング法により成膜して得られたものであることが好ましい。
また、本発明の裏面電極の製造方法の第1は、支持基板上に、裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層してなる薄膜太陽電池の、前記支持基板上に形成される裏面電極の製造方法であって、Agを主成分としNiを添加した合金層の形成工程と、該合金層上に透明電極層を形成する工程とを少なくとも含み、前記合金層の形成工程は、純Agと純Niの2種類のターゲットを同時に用いて、O濃度0.5〜6.0%のArガス雰囲気下で、スパッタリング法により成膜して前記合金層を形成することを特徴とする。
また、本発明の裏面電極の製造方法の第2は、支持基板上に、裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層してなる薄膜太陽電池の、前記支持基板上に形成される裏面電極の製造方法であって、Agを主成分としNiを添加した合金層の形成工程と、該合金層上に透明電極層を形成する工程とを少なくとも含み、前記合金層の形成工程は、Ag−Ni合金ターゲットを用いて、O濃度0.5〜3.5%のArガス雰囲気下で、スパッタリング法により成膜して前記合金層を形成することを特徴とする。
本発明の裏面電極の製造方法は、得られる前記合金層のNiの含有量が0.15〜0.75at%であることが好ましい。
本発明の裏面電極の製造方法は、前記合金層の形成工程において、基板温度を150〜300℃に制御して行うことが好ましい。
また、本発明の薄膜太陽電池は、支持基板上に、上記裏面電極、光電変換層及び表面電極順に積層したことを特徴とする。
本発明の裏面電極は、波長500〜950nmの光に対する全反射率及び拡散反射率が高く、光電変換層で吸収されずに裏面電極まで到達した光を効率よく乱反射できる。このため、支持基板上に、裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層してなる薄膜太陽電池の、支持基板上に形成される裏面電極として、本発明の裏面電極を用いることで、光電変換層で吸収されずに裏面電極まで到達した光を、裏面電極と光電変換層との接合界面で効率よく乱反射して光電変換層内に閉じ込めることができる。その結果、薄膜太陽電池の光電変換層における光の吸収効率が向上し、薄膜太陽電池の発電効率をより向上できる。
本発明の薄膜太陽電池の概略構成図である。 例1−1の合金層のSEM観測結果である。 例1−1〜1−5の裏面電極の全反射率を示す図である。 同裏面電極の拡散反射率を示す図である。 例1−6の裏面電極の全反射率及び拡散反射率を示す図である。
図1には、本発明の裏面電極を備えた薄膜太陽電池が記載されている。図1において、1は基板、2は合金層、3は透明電極層、4は裏面電極、5は光電変換層、6は表面電極である。
基板1は、薄膜太陽電池の各構成層の支持体としての役割を果たすものであり、耐熱性に優れるものが好ましく用いられる。例えば、ガラス基板、表面に絶縁処理を施した金属基板、可撓性フィルム基板等が挙げられる。可撓性フィルム基板を用いることで、フレキシブルな薄膜太陽電池とすることができる。
裏面電極4は、図1に示されるように、合金層2と、透明電極層3とで構成される。
裏面電極4は、波長500〜950nmの光に対する全反射率が80%以上で、拡散反射率が40%以上であることが好ましい。なお、本発明において、全反射率とは、正反射率と拡散反射率との合計である。また、正反射率とは、入射光に対して正反射した光の、入射光に対する割合を百分率換算した値であり、拡散反射率とは、入射光に対して正反射した光以外の反射光の、入射光に対する割合を百分率換算した値である。全反射率及び拡散反射率は、積分球付の分光光度計を用いて測定することができる。
裏面電極4を構成する上記合金層2は、Agを主成分としNiを添加した合金(Ag−Ni合金)で構成される。合金層2は、Niの含有量が0.15〜0.75at%であることが好ましく、0.2〜0.4at%がより好ましく、0.3〜0.4at%が特に好ましい。Niの含有量が0.15at%未満であったり、0.75at%を超えると、波長500〜950nmの光に対する全反射率や拡散反射率が低下する。特に拡散反射率が低下し易い。
合金層2の透明電極層3側の面2aには、平均的な高さが160〜600nmで、平均的な凹凸の横幅が500〜1200nm、平均傾斜角が20〜60°の凹凸形状が形成されている。凹凸形状の平均的な高さは、200〜600nmが好ましい。凹凸形状の平均的な横幅は、600〜1200nmが好ましく、700〜1200nmがより好ましい。凹凸形状の平均傾斜角は、20〜60°が好ましく、30〜60°がより好ましい。凹凸形状の平均的な高さが160nm未満であると拡散反射率が低下する。凹凸形状の平均的な横幅が500nm未満であると全反射率が低下する。更には、凹凸形状の平均傾斜角が60°を超えると合金層2上に成膜する各種薄膜の成膜性が低下し、該薄膜に欠陥が生じ易くなる。凹凸形状の平均傾斜角が20°未満であると拡散反射率が低下する。
なお、本発明において、「凹凸形状の平均的な高さ」とは、凹部と凸部との間の高低差の平均値であり、原子力間顕微鏡(AFM)を用いカンチレバーで試料表面を走査して観察することで測定できる。また、「凹凸形状の平均的な横幅」とは、凹部と凹部との間の距離の平均値であり、原子力間顕微鏡(AFM)を用いカンチレバーで試料表面を走査して観察することで測定できる。「凹凸形状の平均傾斜角」とは、基板に対して鉛直方向に切った任意の断面における、凹凸を形取る稜線の基板水平方向に対する傾斜角の平均値であり、原子力間顕微鏡(AFM)を用いカンチレバーで試料表面を走査して観察することで測定できる。
合金層2の膜厚は、200〜300nmが好ましい。200nm未満であると、成膜後に基板へのHO吸着等が生じ、その後の光電変換層の形成に悪影響を及ぼす。300nmを超えると凹凸形状の平均的な高さ、及び凹凸形状の平均傾斜角が増大し、光電変換層に欠陥を生じさせるなどの悪影響を及ぼす。
透明電極層3は、ZnO、SnO、In、ITO、CdO、CdSnO、CdSなどの透明性導電材料で構成される。
透明導電層3の膜厚は、70〜100nmが好しい。70nm未満であると、合金層2からAgが拡散して合金層に欠陥が生じたり、リークパスが発生することがある。100nmを超えると透明性導電材料による光の吸収が増大し、裏面電極の光の反射率が低下することがある。
光電変換層5としては、特に限定はない。nip接合構造の半導体層で構成される。具体的には、微結晶シリコン系半導体層、アモルファスシリコン系半導体層、アモルファスシリコンゲルマニウム系半導体層、CIGS系半導体層等が挙げられる。
光電変換層5の膜厚は、特に限定は無い。例えば、アモルファスシリコン系薄膜の場合、150〜500nmが好ましい。また、微結晶シリコン系薄膜の場合、1500〜2500nmが好ましい。また、CIGS系薄膜の場合、1000〜2500nmが好ましい。
光電変換層5は、2層以上積層してもよい。また、2層以上積層する場合、同じ種類の薄膜を2層以上積層してもよく、異なる種類の薄膜を2層以上積層してもよい。
表面電極6は、ZnO、SnO、In、ITO、CdO、CdSnO、CdSなどの透明性導電材料、またはこれらの透明性導電材料とPt、Ag、Al、Ti等の金属材料とで構成される。
表面電極6の膜厚は、特に限定は無い。好ましくは20〜200nmであり、より好ましくは50〜100nmである。表面電極6の膜厚が上記範囲内であれば、表面電極6と光電変換層5との屈折率に起因する干渉を大幅に低減することができ、太陽光を最もロスなく取り込むことができる。
次に、本発明の裏面電極の製造方法を含めた、薄膜太陽電池の製造方法について説明する。
まず、基板1にAgを主成分としNiを添加した合金層2を形成する。合金層2の形成方法として、以下の(1)、(2)の方法が挙げられる。
(1)純Agと純Niの2種類のターゲットを同時に用い、O濃度0.5〜6.0%のArガス雰囲気下でスパッタリング法により成膜して形成する方法。
(2)Ag−Ni合金ターゲットを用いて、O濃度0.5〜3.5%のArガス雰囲気下で、スパッタリング法により成膜する方法。
上記(1)、(2)の方法で成膜することで、平均的な高さが160〜600nmで、凹凸の平均的な横幅が500〜1000nmで、平均傾斜角が20〜60°の凹凸形状が表面に形成された合金層を形成できる。
上記(1)の方法において、凹凸形状の平均的な高さと横幅を上記範囲内で大きくするには、Ni濃度を大きくすればよく、上記範囲内で小さくするには、Ni濃度を小さくすればよい。凹凸形状の平均傾斜角を上記範囲内で大きくするには、Ni濃度を大きくすればよく、上記範囲内で小さくするには、Ni濃度を小さくすればよい。
上記(2)の方法において、凹凸形状の平均的な高さと横幅を上記範囲内で大きくするには、O濃度を大きくすればよく、上記範囲内で小さくするには、O濃度を小さくすればよい。凹凸形状の平均傾斜角を上記範囲内で大きくするには、O濃度を大きくすればよく、上記範囲内で小さくするには、O濃度を小さくすればよい。
上記(1)の方法において、スパッタリング時におけるArガス中のO濃度は、0.5〜6.0%であり、3.0〜6.0%がより好ましい。
上記(2)の方法において、スパッタリング時におけるArガス中のO濃度は、0.5〜3.5%であり、0.8〜1.5%が好ましく、0.8〜1.0%がより好ましい。Arガス中のO濃度が0.5%未満であると、Niの酸化が促進されず凹凸が成長しないので、目的の凹凸形状を形成できず、拡散反射率が低下する。また、3.5%を超えると、NiおよびAgの酸化が促進されて目的の凹凸形状を形成できず、拡散反射率及び全反射率が低下する。
本発明において、合金層の形成工程では、合金層のNi含有量が0.15〜0.75at%となるように成膜することが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは0.2〜0.4at%であり、特に好ましくは0.3〜0.4at%である。合金層のNi濃度が0.15at%未満であると、酸化Niの生成量が少なくなり、凹凸が成長しないという理由で拡散反射率が低下する。また、0.75%を超えると、酸化Niの生成量が多くなり凹凸が成長しすぎるという理由で拡散反射率及び全反射率が低下する。合金層のNi含有量の調整は、上記(1)の方法においては、各ターゲットに投入するパワーを調整して行う。すなわち、Ni含有量を高めたい場合は、Niターゲットに投入するパワーを高めればよく、Ni含有量を低くしたい場合は、Niターゲットに投入するパワーを下げればよい。また、上記(2)の方法においては、Ag−Ni合金ターゲット中のNi含有量を調整して行う。
合金層の形成工程は、基板温度を150〜300℃に制御して行うことが好ましい。基板温度は200〜250℃が特に好ましい。基板温度が200℃未満であると、Niの酸化が促進されず、350℃を超えるとNiの酸化に加えAgの酸化が促進されるためである。上記範囲内であれば、Agの酸化を抑えつつNiを選択的に酸化できる。
次に、このようにして形成した合金層2上に透明電極層3を形成する。透明電極層3の形成方法は、特に限定は無い。スパッタ法など従来公知の方法を用いて形成できる。
次に、透明電極層3上に、光電変換層5を形成する。光電変換層5の形成方法は、特に限定は無い。例えば、プラズマCVD法など従来公知の方法により形成できる。
次に、光電変換層5上に、表面電極6を形成する。表面電極6の形成方法は、特に限定は無い。スパッタ法や印刷法など従来公知の方法を用いて形成できる。
このようにして製造される薄膜太陽電池は、光電変換層5で吸収されずに裏面電極4まで到達した光を乱反射して光電変換層5内に効率よく閉じ込めることができ、光の利用効率が高く、発電効率に優れる。
以下、実施例を用いて、本発明についてさらに詳しく説明する。
<測定方法>
・全反射率及び拡散反射率の測定:積分球付の分光光度計(Perkin Elmer社製)を用いて測定した。
・合金層の表面状態:原子力間顕微鏡(AFM)を用いカンチレバーで、20μm×20μmの範囲で試料表面を走査して、凹凸形状の平均的な高さ、平均的な横幅、平均傾斜角を測定した。
<試験例1>
(例1−1)
ガラス基板をスパッタリング装置に導入した。基板温度を250℃に調整し、真空ポンプによりスパッタリング装置内の圧力を1.5×10−6Torrまで真空引きを行った。そして、ArとOとの混合ガス(Oを6%含有)をスパッタリング装置に導入し、圧力を5×10−3Torrに保持した。ターゲットとして、純Agと純Niの2種類のターゲットを用い、純Agターゲットのスパッタパワーを200W、純Niのスパッタパワーを13Wとし、成膜速度20nm/分で成膜して、膜厚200nm、Ni含有量0.3at%のAg−Ni合金層を形成した。このAg−Ni合金層は、凹凸形状の平均的な高さは400nmで、平均的な横幅は700nm、平均傾斜角は45°であった。走査型電子顕微鏡の観測結果(20000倍)を図2に記す。
得られたAg−Ni合金層上に、スパッタパワーを200W、製膜圧力を0.1×10−3Torr、製膜速度を20nm/分の条件でZnO膜を70nm成膜し、裏面電極を作製した。
(例1−2)
例1−1において、純Niのスパッタパワーを20Wとした以外は、例1−1と同様に成膜して、膜厚200nm、Ni含有量0.5at%のAg−Ni合金層を形成した。このAg−Ni合金層は、凹凸形状の平均的な高さは450nmで、平均的な横幅は800nm、平均傾斜角は45°であった。そして、このAg−Ni合金層上に、例1−1と同様の方法でZnO膜を成膜し、裏面電極を作製した。
(例1−3)
例1−1において、純Niのスパッタパワーを30Wとした以外は、例1−1と同様に成膜して、膜厚200nm、Ni含有量0.7at%のAg−Ni合金層を形成した。このAg−Ni合金層は、凹凸形状の平均的な高さは380nmで、平均的な横幅は660nm、平均傾斜角は50°であった。そして、このAg−Ni合金層上に、例1−1と同様の方法でZnO膜を成膜し、裏面電極を作製した。
(例1−4)
例1−1において、純Niのスパッタパワーを40Wとした以外は、例1−1と同様に成膜して、膜厚200nm、Ni含有量1.0at%のAg−Ni合金層を形成した。このAg−Ni合金層は、凹凸形状の平均的な高さは430nmで、平均的な横幅は500nm、平均傾斜角は60°であった。そして、このAg−Ni合金層上に、例1−1と同様の方法でZnO膜を成膜し、裏面電極を作製した。
(例1−5)
例1−1において、ターゲットとして、純Agのみを用いた以外は、例1−1と同様に成膜して、膜厚200nmのAg層を形成した。このAg層は、凹凸形状の平均的な高さは3nm未満で、平均的な横幅は100nmで、平均傾斜角は2°であった。そして、このAg層上に、例1−1と同様の方法でZnO膜を成膜し、裏面電極を作製した。
(例1−6)
例1−1において、ターゲットとして、Ag−Al合金(Alを0.3at%含有)を用いた以外は、例1−1と同様に成膜して、膜厚200nm、Al含有量0.3at%のAg−Al合金層を形成した。このAg−Al合金層は、凹凸形状の平均的な高さは100nmで、平均的な横幅は500nmで、平均傾斜角は40°であった。そして、このAg−Al合金層上に、例1−1と同様の方法でZnO膜を成膜し、裏面電極を作製した。
例1−1〜1−6の裏面電極について、波長300〜1200nmの光を照射し、拡散反射率及び全反射率を測定した。結果を図3〜5に記す。図3は、例1−1〜1−5の裏面電極の全反射率を示す図であり、図4は、同裏面電極の拡散反射率を示す図であり、図5は、例1−6の裏面電極の全反射率及び拡散反射率を示す図である。
図3〜5に示すように、平均的な高さが160〜600nmで、平均的な横幅が500〜1200nmで、平均傾斜角が20〜60°の凹凸形状がAg−Ni合金層の表面に形成されている例1−1〜1−4の裏面電極は、全反射率及び拡散反射率が高かった。なかでも、合金層のNiの含有量が0.15〜0.75at%である例1−1〜1−3の裏面電極は、500〜950nmの光に対する全反射率及び拡散反射率のいずれもが80%以上と高かった。
一方、Ag−Ni合金層の代わりにAg層を形成した例1−5、Ag−Al合金層を形成した例1−6は、いずれも拡散反射率が低かった。
<試験例2>
ガラス基板をスパッタリング装置に導入した。基板温度を250℃に調整し、真空ポンプによりスパッタリング装置内の圧力を1.5×10−6Torrまで真空引きを行った。そして、下記表1に示すO濃度のArとOとの混合ガスをスパッタリング装置に導入し、圧力を5×10−3Torrに保持した。ターゲットとして、Ag−Ni合金ターゲット(Ni含有量0.3at%)を用い、スパッタパワーを200Wとし、成膜速度20nm/分で成膜して、膜厚200nm、Ni含有量0.3at%のAg−Ni合金層を形成した。得られたAg−Ni合金層上に、スパッタパワーを200W、製膜圧力を0.1×10−3Torr、製膜速度を20nm/分の条件でZnO膜を70nm成膜し、裏面電極を作製した。得られた裏面電極について、波長700nmの光を照射し、拡散反射率及び全反射率を測定した。結果を表1に記す。
表1に示すように、O濃度0.5〜3.5%の雰囲気下でNi含有量0.15〜0.75at%の合金層を形成した例2−1〜2−3の裏面電極は、全反射率が80%以上、拡散反射率が40%以上であった。
<試験例3>
例1−5、および例2−2の裏面電極上に、微結晶シリコンのn層を40nm、微結晶シリコンのi層を2000nm、微結晶シリコンのp層を15nm順次積層して、nip接合型の光電変換層を形成し、さらにその上にITO層を70nm積層して、サブストレート型の薄膜太陽電池を製造した。得られた薄膜太陽電池の特性を評価した結果を表2に示す。
表2に示すように、Ag−Ni合金層を裏面電極に用いることで太陽電池の特性は向上することを確認した。

Claims (11)

  1. 支持基板上に、裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層してなる薄膜太陽電池の、前記支持基板上に形成される裏面電極であって、
    前記裏面電極は、Agを主成分としNiを添加した合金層と、該合金層に積層して形成される透明電極層とを少なくとも含み、
    前記合金層の表面には、平均的な高さが160〜600nmで、平均的な横幅が500〜1200nmで、平均傾斜角が20〜60°の凹凸形状が形成されていることを特徴とする裏面電極。
  2. 波長500〜950nmの光に対する全反射率が80%以上であり、かつ、拡散反射率が40%以上である請求項1に記載の裏面電極。
  3. 前記合金層は、Niの含有量が0.15〜0.75at%である請求項1又は2に記載の裏面電極。
  4. 前記合金層は、膜厚が200〜300nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の裏面電極。
  5. 前記合金層は、純Agと純Niの2種類のターゲットを同時に用い、O濃度0.5〜6.0%のArガス雰囲気下でスパッタリング法により成膜して得られたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の裏面電極。
  6. 前記合金層は、Ag−Ni合金ターゲットを用いて、O濃度0.5〜3.5%のArガス雰囲気下で、スパッタリング法により成膜して得られたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の裏面電極。
  7. 支持基板上に、裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層してなる薄膜太陽電池の、前記支持基板上に形成される裏面電極の製造方法であって、
    Agを主成分としNiを添加した合金層の形成工程と、該合金層上に透明電極層を形成する工程とを少なくとも含み、
    前記合金層の形成工程は、純Agと純Niの2種類のターゲットを同時に用いて、O濃度0.5〜6.0%のArガス雰囲気下で、スパッタリング法により成膜して前記合金層を形成することを特徴とする裏面電極の製造方法。
  8. 支持基板上に、裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層してなる薄膜太陽電池の、前記支持基板上に形成される裏面電極の製造方法であって、
    Agを主成分としNiを添加した合金層の形成工程と、該合金層上に透明電極層を形成する工程とを少なくとも含み、
    前記合金層の形成工程は、Ag−Ni合金ターゲットを用いて、O濃度0.5〜3.5%のArガス雰囲気下で、スパッタリング法により成膜して前記合金層を形成することを特徴とする裏面電極の製造方法。
  9. 得られる前記合金層のNiの含有量が0.15〜0.75at%である請求項7又は8に記載の裏面電極の製造方法。
  10. 前記合金層の形成工程は、基板温度を150〜300℃に制御して行う請求項7〜9のいずれか1項に記載の裏面電極の製造方法。
  11. 支持基板上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の裏面電極、光電変換層及び表面電極の順に積層したことを特徴とする薄膜太陽電池。
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