JP2013190411A - 金属表面付着成分の濃度計測方法および装置 - Google Patents

金属表面付着成分の濃度計測方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】金属表面に付着している微量成分を感度良く測定可能とする。また、同軸照射方式のLIBSでダブルパルスで計測する場合における、レーザーエネルギーを低くしなおかつ低濃度まで精度良く計測可能とする。
【解決手段】検査対象である金属表面6にパルス状のレーザー光を照射して付着物質をアブレーションし、その後アブレーションによりプラズマ化された物質からの発光を計測し、分光することにより、金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求める金属表面付着成分の濃度計測方法において、1mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第1のレーザー光11と15mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第2のレーザー光12とを同軸照射によりターゲット6の表面に順次照射するようにしている。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属表面付着成分の濃度計測方法及び装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、金属表面に付着した微量成分例えば原子力発電所の使用済み燃料を長期保存するために用いるコンクリートキャスク内の金属製キャニスタの表面に付着する塩分の測定に好適な濃度計測方法および装置に関する。
原子炉の使用済み核燃料の再処理までの中間貯蔵方式として、使用済み燃料を金属製貯蔵容器(キャニスタ)に収納して密封し、さらにコンクリート製貯蔵容器(コンクリートキャスク)に収めてから中間貯蔵施設の建屋に貯蔵することが考えられている。このコンクリートキャスク方式貯蔵施設における除熱機能は、コンクリートキャスクと建屋の双方で担保されている。コンクリートキャスクにおける除熱は、コンクリートキャスクの底部と上部に換気口を備え、キャニスタを冷却することにより温められた空気が上昇することにより起こる自然通風によって、コンクリートキャスク内を換気する自然空冷方式が採用されている。また、建屋における徐熱も、煙突効果を有する排気塔と換気口を備え、自然通風によって、建屋内を換気する自然空冷方式が採用されている。そして、この中間貯蔵施設は、安全性を考慮して多くの場合海岸の近くに建設されている。
したがって、海からの強風などで海岸から運ばれてきた塩分粒子が空気中に含まれていることがあり、その塩分が建屋内に止まらずさらにコンクリートキャスク内に侵入し、使用済み核燃料を密封しているキャニスタの表面に付着し、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking:SCC)を引き起こす可能性がある。SCCの発生を防止するためには、キャニスタ表面に付着する塩分濃度がSCCの発生に対する限界の表面付着物質濃度を超えないようにする必要がある。このためには、キャニスタ表面に付着する塩分濃度を正確に測定する必要がある。
従来、キャニスタ表面に付着する塩分を測定する方法としては、表面に付着する塩分を布でふき取ってその布に付着する塩分を化学的計測等で測定するスミヤ法や、レーザーで塩分を除去して雰囲気ごとコンクリートキャスクの外に取り出す排気経路上でレーザー光を海塩粒子に照射してその反射光を受けてスペクトルに分光して付着量を測定する方法(特許文献1)が提案されている。
後者の特許文献1記載の測定方法は、伝送ファイバを介してコンクリートキャスクの外に設置したレーザ装置からキャニスタの外周面にレーザ光を照射し、キャニスタ外周面に付着した海塩粒子をレーザー光によりブラスト除去する一方、除去された海塩粒子をコンクリートキャスク内に引き込んだ吸引ホースによってアブレーションプルームをコンクリートキャスクの外に真空引きなどで採取し、測定部・測定ヘッドに海塩粒子を取り込んでから、海塩粒子にレーザを照射してその反射光を受けてスペクトルに分光して検出器でスペクトルから海塩粒子の濃度即ち付着量を測定しようとするものである。
ここで、キャニスタ外周面から除去された海塩粒子は、吸引ホースを通してコンクリートキャスクの外に吸引される。このとき、測定ヘッド内ではレーザを照射してその反射光を測定装置に送る。そして、測定装置では、スペクトルに分光して検出器でスペクトルから海塩粒子の濃度即ち付着量を測定するようにしている。このため、測定ヘッド内に除去された海塩粒子を測定の間滞留させることが必要である。そこで、送風機の駆動を停止することあるいは測定ヘッドを送風機に対して遮断するなどの対策をとることにより、吸引ホース内を移動する海塩粒子の流れを測定ヘッド内で一旦停止させるようにしている。
また、本発明者等により、レーザー誘起ブレイクダウン分光法(LIBS:Laser-Induced Breakdown Spectroscopy)を用いた金属表面に付着したCl濃度を計測する実験が使用済み燃料の金属キャニスタに対して行われ、プラズマを生成させるレーザー(第1のレーザー1)とプラズマを加熱もしくは再励起させるレーザー(第2のレーザー光)との2つのレーザー光をターゲットに対して垂直並びに水平に入射させる方式(直交照射方式)によって、SUS304LのSCC発生限界Cl濃度0.8g/mよりも高い感度(0.1g/m)を有することが明らかにされている(非特許文献1)。この直交照射方式のLIBS計測の場合、空気中でプラズマを生成させるため、100mJ以上の強いレーザーエネルギーを必要としている。
特開2007−271634号
江藤修三、谷純一、白井孝治、藤井隆:「ステンレス表面に付着した塩分のレーザーによる非接触計測」、財団法人電力中央研究所 地球工学研究所・環境科学研究所 研究概要―2010年度研究成果―(2011)。
しかしながら、付着成分を布でふき取るスミヤ法では、塩をふき取った布が放射化してしまうため、放射性廃棄物が増える問題がある。また遠隔での測定が困難であるため、測定を行う作業員が被爆する危険性がある。さらにリアルタイムでの計測が不可能であるという問題点があった。さらに少量の塩分の測定の場合、測定精度が悪いという問題点がある。
また、特許文献1記載の塩分濃度測定法は、レーザーによりキャニスタから剥離させた塩分粒子をコンクリートキャスクの外の測定ヘッドに引き込んでから濃度測定するようにしているので、測定ヘッドに到達する前に吸引ホースの途中の管壁に塩分が付着するため、剥離させた塩分粒子の全量を測定ヘッドに取り込んで測定することができない。また、測定ヘッドを送風機に対して遮断するなどの手段により海塩粒子を測定ヘッドで一旦停止させるため、流れを止めた時に既に測定ヘッドを通過していたり、測定ヘッドに達していない塩分も測定ヘッドに取り込めない。このため、測定精度の悪いものとなる。したがって、特許文献1記載の塩分濃度測定法によれば、定量化・定量評価できないばかりか、SCCの発生を評価する指標としても感度の悪いものとなる。
また、特許文献1記載の塩分濃度測定法は、レーザー光によるブラスト除去で金属製キャニスク表面から吹き飛ばした海塩粒子やマグネシウム、ナトリウムなどのその他の付着成分を含むプルームをコンクリートキャニスタの外の測定ヘッドに取り込んでからレーザー光を当てて反射光を計測するようにしているので、何らかの発光成分が存在することだけしか判明せず、塩素の発光強度を特定できないために、塩分の濃度が正確に測定できない。
さらに、特許文献1記載の塩分濃度測定装置は、コンクリートキャスク内の金属製キャニスタの表面に付着する塩分を取り除くブラスト部と、海塩粒子やその他の付着成分を含むプルームを吸引してからコンクリートキャスクの外に取りだしてからレーザを照射してその反射光を測定装置に送る計測部・測定ヘッドとに分けられた大がかりで複雑な構造となるため、狭隘な空間では金属表面の直近でアブレーション直後の塩分粒子などの微量付着成分を検出することができない。
また、非特許文献1記載のLIBS計測により狭隘な空間での金属表面に付着している微量成分の計測を想定した場合、例えばコンクリートキャスク内に貯蔵された状態のキャニスタの付着塩分を計測する場合、コンクリートキャスク内に挿入する計測装置を、キャニスタとコンクリートキャスクの隙間よりも小さくする必要がある。つまり、上述のような狭隘部での計測や取り回しの容易さを考慮すると、レーザー照射部の小型化が実用上必要となる。しかしながら、直交照射方式の非特許文献1記載のLIBS計測の場合、ターゲット直上数mmの空間に対して平行に入射する必要があるため、平行に入射させるための光学系を組むスペースを狭隘な空間で確保することは難しい。
また、LIBS計測において、ターゲットに照射されるレーザー光のエネルギーが高いと、アブレーションにより生成されるプラズマの温度が高くなるため、発光強度も高くなるが、金属に対する入熱も大きくなって金属表面の引っ張り残留応力を誘起させる可能性がある。キャニスタ表面におけるアブレーションの影響を極力小さくするには、レーザーエネルギーはできる限り低い方が望ましいが、この条件は、励起効率を高くすることと相反するため、その両立は難しいものである。そこで、同軸照射方式でダブルパルス照射を行う場合には、試験片へのダメージが懸念されるため、レーザーエネルギーを下げる必要があり、発光強度の低下が懸念される。
本発明は、同軸照射方式のLIBSにより、金属表面に付着している微量成分を感度良く測定できる方法及び装置を提供することを目的とする。また、本発明は、同軸照射方式のLIBSでダブルパルスで計測する場合における、レーザーエネルギーを低くしなおかつ低濃度まで精度良く計測が可能な金属表面付着成分の濃度計測方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測方法は、1mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第1のレーザー光と15mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第2のレーザー光とを同軸照射によりターゲットの表面に順次照射し、金属表面付着成分をアブレーションし、プラズマ化された物質からの発光スペクトルを計測し、前記金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求めるようにしている。ここで、第1のレーザー光は1mJ以上30mJ以下のレーザーエネルギーで、第2のレーザー光は15mJ以上30mJ以下のレーザーエネルギーであることが好ましく、より好ましくは第1のレーザー光及び第2のレーザー光はともに30mJのレーザーエネルギーであることである。
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の金属表面付着成分の濃度計測方法において、ベースラインIを窒素(N)の発光スペクトルIと白色光ノイズに起因するベースラインIの和で表わす数式1と白色光ノイズに起因するベースラインIとを用いて、前記発光スペクトルに対して計測波長域でフィッティングを行って測定対象となる金属表面付着成分のスペクトルピーク波長における窒素の発光強度を求め、前記金属表面付着成分のスペクトルピーク波長におけるスペクトル強度から前記白色光ノイズに起因するベースラインIと前記窒素の発光スペクトルIを差し引いて前記金属表面付着成分のスペクトル強度を求めることにより、前記Nの自己吸収の効果を補正するようにしている。
Figure 2013190411
ただし、A、wはそれぞれ定数であり、λはNの輝線波長、λは波長である。
さらに、請求項5記載の発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測方法は、請求項4記載の方法によってNの自己吸収の効果を補正した計測対象となる金属表面付着成分を示す発光線の発光強度と酸素の発光線の発光強度との発光強度比と前記金属表面付着成分濃度との相関関係を用いて、計測時の前記金属表面付着成分の発光強度と酸素の発光線の発光強度比から前記金属表面付着成分濃度を求めるようにしている。
さらに、請求項5記載の発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測方法は、請求項4記載の方法によってNの自己吸収の効果を補正した計測対象となる金属表面付着成分を示す発光線の発光強度と白色光ノイズのベースラインとの発光強度比と前記金属表面付着成分濃度との相関関係を用いて、計測時の前記金属表面付着成分の発光強度と白色光ノイズのベースラインとの発光強度比から前記金属表面付着成分濃度を求めるようにしている。
また、請求項7記載の金属表面付着成分の濃度計測装置は、狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する装置において、少なくともレーザーと分光手段と受光素子及び前記レーザーと前記受光素子を制御するコントローラを備えており前記狭隘な空間の外に配置される濃度計測装置本体と、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを含み前記狭隘な空間に前記金属表面に沿って挿入される光伝送部とを備え、前記光伝送部を介して前記金属表面に1mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第1のレーザー光と15mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第2のレーザー光とを同軸照射により順次照射して前記金属表面の付着物質のアブレーションとプラズマ化を行い、前記プラズマ化された物質からの発光を前記光伝送部を介して前記狭隘な空間の外の前記分光手段に導いて分光すると共に前記受光素子で発光スペクトルを得ることにより、前記金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求めるようにしている。
本発明によれば、直交照射方式の非特許文献1記載のLIBS計測の場合よりも、低いエネルギーで金属表面に付着している微量成分例えばClの濃度を感度良く測定でき、尚且つ、1.0g/m以下の0.05g/mの低濃度まで精度良く計測が可能ある。
本発明者等の実験によると、被検査金属の表面でのアブレーションがほとんど起きない例えば10mJ以下といった低いレーザーエネルギーであっても、これを第1のレーザー光として用い、Cl発光強度とベースライン強度との発光強度比が高い条件で最もレーザーエネルギーが低い30mJのレーザーエネルギーの第2のレーザー光を用いたDPの場合、30mJのレーザーエネルギーのSPの時よりも、Clの発光強度が1.5倍程度増加されたという結果が得られた。そして、この発光強度の増加は、第1のレーザー光のレーザーエネルギIが1mJといった非常に低い値でも認められた。
つまり、同軸照射によるダブルパルスの場合、低いレーザーエネルギーでもシングルパルスと比べて高い発光強度が得られ、同じ発光強度であればより低いレーザーエネルギーでターゲットへの影響を抑えて付着成分の検出ができる。レーザーエネルギー強度に対する金属表面への微量付着成分例えばClの発光強度はあるレベルでサチレーションを起こすという結果が得られたので、あまり強くしても意味がない。できるだけ少ない(小さい)レーザーエネルギーで照射することによって、発光スペクトルを検出し、尚かつそれを可能な限り強く検出したい。
本発明者等の実験による実測例では、0.05〜1.0g/mのCl濃度範囲で発光強度比が単調増加する傾向が得られ、特に表面塩分濃度0.1g/m以下の塩素に対する測定感度があることが確認され、尚かつ0.1g/m以下0.05g/mの範囲でもClの発光強度のCl濃度に対する線形性が保たれることから、Clの発光強度を指標に用いることで0.1g/m以下のCl濃度の定量計測が行えることが判明した。これにより、金属表面付着成分が金属に影響を与える濃度、例えば金属製キャニスタの塩分に因る応力腐食割れを引き起こす可能性がある塩分濃度(SCC発生限界付着量:例えばSUS304Lの場合には0.8g/m)よりも1桁以上低い濃度まで測定することができる。応答性は良いほど応力腐食割れ前に予測することができる。したがって、定期検査のときに検査した時系列的に付着量が測定できれば、その値を外挿して将来的にいつ頃SCC発生限界付着量に達するのか予測できる。これにより、SCC発生限界付着量に達する前に十分な時間がとれるので有効な対策をたてることが可能となる。
また、遠隔かつリアルタイムでの測定が可能であるため、使用済み燃料を保存するために用いるコンクリートキャスク内の金属製キャニスタの表面に付着する塩分の測定に用いる場合には、作業員が被爆する危険性もなく、またスミヤ法では問題となっている新たに発生する放射性廃棄物(塩をふき取った布)もなくなる。さらに少量の付着塩分であっても、濃度に比例した発光強度が得られるため、塩分の濃度が正確に測定できる。したがって、SCCの発生を評価する指標としても感度の良いものとなるばかりか、定量化・定量評価が可能となる。
また、狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法及び装置によれば、狭隘な空間の外に濃度計測装置本体を配置し、狭隘な空間に金属表面に沿って挿入される光伝送部を介して金属表面に第1のレーザー光及び第2のレーザー光を同軸照射しているので、コンクリートキャスク内に収容された金属製キャニスタの外面に付着する塩分濃度を金属表面の引っ張り残留応力をほとんど誘起させずに測定することができる。しかも、LIBS計測を行う際のキャニスタ表面におけるアブレーションの影響を極力小さくしながらも、金属表面付着成分の励起効率を高くすることを両立させたものである。
また、請求項2記載の発明によると、Cl発光強度とベースライン強度との発光強度比が飽和寸前の高い条件で尚且つ最もレーザーエネルギーが低い照射となるので、ターゲットへの無用な影響を抑えて感度良く付着成分の検出ができる。例えば、表面塩分濃度0.1g/m以下の塩素に対する測定感度が得られる。さらに、請求項3によると、第1のレーザー光及び第2のレーザー光はともに30mJのレーザーエネルギーであることで発光スペクトルをより強く検出できる。
また、請求項4記載の発明によると、金属表面付着成分のスペクトル強度をNの自己吸収の効果を補正して求めることができるので、金属表面付着成分の付着量を精度良く定量化できる。このことは、本発明者等の実験において、金属表面付着成分の発光強度を前述の数式1を用いてNの発光スペクトルの影響を補正することにより、0.05〜1.0g/mのCl濃度範囲で測定対象となる金属表面付着成分の濃度・付着量と発光強度が単調増加する傾向が得られたことからも明らかである(図19参照)。
一方、本発明者等の実験により、Clの発光強度はCl濃度0.2g/m以上において低下する傾向が判明した。特に、同軸照射方式のDPでは0.4g/mより大きなCl濃度では変動係数が大きく、Clの発光強度から金属表面に付着するClの付着量・濃度を定量化すること、即ち、金属表面付着成分のスペクトル強度から金属表面付着成分の付着量を定量化することを困難にしている。この原因として、プラズマが十分に生成していないことに加えて自己吸収も関係していると考えられた。そこで、測定対象となる金属表面付着成分例えばClやCaに起因する自己吸収の影響を明らかにしようとしたが、測定対象となる金属表面付着成分に起因する自己吸収はなく、Cl濃度が1.0g/mの時にNのスペクトルに顕著な自己吸収が観測されているという知見を得た。これらの結果より、Nの顕著な自己吸収により、Clのスペクトルのベースラインの傾きが大きくなり、Clの発光強度の算出に影響を及ぼしたことが理由の一つと考えられた。
依って、本発明によると、上述のNの自己吸収の効果を測定対象となる金属表面付着成分のスペクトル強度から除外できるので、付着量に応じたスペクトル強度を誤差無く算出して金属表面付着成分の付着量を精度良く定量化できる。
さらに、請求項5または6記載の発明によると、Nの自己吸収の効果を補正して測定対象となる金属表面付着成分のスペクトル強度を求め、この金属表面付着成分のOあるいはIに対する発光強度比を用いることにより、高いCl濃度において生じるプラズマ発光の強度低下の効果を補正することができるので、Cl濃度を換算する場合の誤算出の問題を解決できる。しかも、グラフの線形性が向上するため、付着微量成分の測定の指標として選択した元素と付着微量成分の付着濃度との相関がより精度良く求められるので、濃度の定量化が精度の良いものとなる。この発光強度比ICl/I並びに発光強度比ICl/Iは、Cl濃度に対して線形性が得られる指標として有用であり、これらの指標とCl濃度との関係は、検量線として実測データに反映できるものである。勿論、Cl以外の金属表面付着成分に対しても同様である。
本発明者等の実験により、Clの発光強度は、図13に示すように、Cl濃度0.2g/m以上において低下する傾向が表れ、0.4g/mより大きなCl濃度では変動係数が大きくなり、金属表面に付着するClの付着量・濃度に対するClの発光強度の傾きが逆になる問題が判明した。つまり、1つの発光強度に対応するCl濃度が2つ導かれる誤算出の問題が発生する。
しかしながら、DPにおいてClの発光強度比を指標に用いることで、Iに対するIClの発光強度が、0.05〜1.0g/mの範囲においてCl濃度に対して単調増加する傾向を得た。ちなみに、Clの発光強度とClのベースラインIwとの強度比とCl濃度との相関関係を用いれば、シングルパルスにおいても、0.05〜0.2g/mまで発光強度比が単調に高くなることから、高精度に定量計測できることが確認された。また、図6に示すように、Cl濃度が0.1g/m以のときのスペクトル強度並びに波形と1.0g/mにおけるスペクトル強度並びに波形とは、明らかに異なったものとなるので、2つの解(Cl濃度)が算出されても、計測スペクトルを比較すれば容易にいずれのCl濃度が正しいかは容易に判断できる。これらの指標を用いることによりダブルパルスにおけるClの発光強度を指標に用いることで、表面塩分濃度0.1g/m以下の範囲でも高精度に定量計測ができることが確認された。
よって、測定対象となる金属表面付着成分たるClの上述の発光強度比を指標に用いることで0.1g/m以下のCl濃度の定量計測が行える。また、Iに対するIClの発光強度の比を用いることで、SUS304LのSCC発生限界である0.8g/mを越えたかどうかを判別できる。
また、本発明の金属表面付着成分の濃度計測装置において、レーザー光伝送用光学系と発光計測用光学系とを内蔵し先端開口部が金属表面に固定される密封可能な中空管で光伝送部を構成する場合、レーザー照射時に、シール部材と金属表面とが密着することで、照射部を固定して安定化すると同時に中空管内を減圧可能とすることから、真空化により空気のプラズマ化を抑制できるので、付着微量成分からのプラズマのみが発生し、計測精度が向上する。
ダブルパルス(DP)における同軸照射方式を説明する概念図である。 シングルパルス(SP)および直交照射方式ダブルパルス(DP)におけるClの発光強度のCl濃度依存性を示すグラフである。 レーザー照射とICCDカメラでの受光との時間的関係を示す説明図である。 発光強度とベースラインの定義を説明する元素毎のグラフであり、(A)はClの発光スペクトル、(B)はOの発光スペクトル、(C)はCaの発光スペクトルを示す。 800〜860nmにおけるCl濃度0.1および1.0g/mにおける発光スペクトルを示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 SUS304Lおよび316Lにおける発光スペクトルの比較を行ったグラフであり、左側はシングルパルス、右側はダブルパルスの場合を示す。 SPにおけるCl濃度0.1g/mの時のClの発光強度のレーザーエネルギー依存性を示すグラフである。 Cl、O、Caの発光強度の第1のレーザー光のレーザーエネルギーI依存性を示すグラフである。 Clの発光強度の第1及び第2のレーザーの照射間隔t12依存性を示す説明図である。 Oの発光強度のt12依存性を示すグラフである。 Caの発光強度のt12依存性を示すグラフである。 Cl、O、Caの発光強度の受光遅延時間t依存性を示すグラフである。 Clの発光強度のCl濃度依存性を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 Clの発光強度のCl濃度依存性(線形表示)を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 Cl発光強度の変動係数のCl濃度依存性を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 Oの発光強度のCl濃度依存性を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 Ca IIの発光強度のCl濃度依存性を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 白色光ノイズに起因するベースラインI,窒素のスペクトル強度IN,塩素のスペクトル強度ICl,酸素のスペクトル強度Iの定義(Cl濃度1.0g/m)を示すグラフである。 ClのCl濃度依存性(線形表示)を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 に対するIClの比のCl濃度依存性(DPでは、破線でアイガイドを示した。)を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 に対するIClの比のCl濃度依存性を示すグラフであり、上はシングルパルス、下はダブルパルスの場合を示す。 ゲート幅を500ns、受光遅延時間1.7μsとした際のCl発光強度とベースライン強度のレーザーエネルギー依存性を示すグラフである。 ダブルパルス(DP)における直交照射方式を説明する概念図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測方法は、金属表面に付着している微量成分例えば塩分などの濃度を測定するものであって、検査対象である金属表面にパルス状のレーザー光を照射して付着物質をアブレーションし、その後アブレーションによりプラズマ化された物質からの発光を計測し、分光することにより、金属表面に付着する微量成分を特定しその濃度を求めるようにするものである。
本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法並びに装置の概念を、図1に示す実験装置を引用して説明する。図1は、金属表面付着成分の濃度計測方法を実施する同軸照射方式の概念図である。この付着物質計測システムは、被検査金属6の表面にレーザー光11を照射して付着物質をアブレーションする第1のレーザー(アブレーション用レーザー)1と、被検査金属6の表面の追加のアブレーション及び第1のレーザー光11でアブレーションされた物質の雰囲気(アブレーションプルーム)中の原子の励起・加熱(プラズマ化)を行う第2のレーザー光12を照射する第2のレーザー2と、プラズマ化された物質からの発光を波長毎に分解する分光器4と、該分光器4を経て分光されたプラズマ化された物質からの発光を制御された時間差をもって受光し発光スペクトルを得るゲート機能を有する受光素子5と、第1レーザー1、第2レーザー2及び受光素子5のゲート開放開始時間との間の時間差を制御するコントローラ3並びに受光素子5からの電気信号を取り込み、保存し、必要に応じて積算し、解析するコンピュータ8とを備え、発光スペクトルのピークの波長から励起原子を特定し、そのピーク高さから付着物質濃度を測定するようにしたものである。分光器4は、取り込んだ光をスペクトルに分解し、更に受光素子5を用いてスペクトル強度分布(波長依存性を有する発光強度の分布)を測定する。
第1及び第2のレーザーとしては、金属表面にレーザー光11,12を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化するに十分なピークパワーのレーザー、例えばNd:YAGレーザー、ファイバーレーザー、チタンサファイアレーザー、ガラスレーザー、COレーザー、エキシマレーザー等といったパルスレーザーの類が用いられる。つまり、パルスレーザーであれば、ナノ秒レーザーでも、超短パルスレーザーでも実施可能である。そして、コントローラ3によって第1のレーザー1のトリガ信号に対する第2のレーザー2のQスイッチの遅延時間が設定されることにより、第1のレーザー光11に対し第2のレーザー光12が所定の時間差(遅れ時間)をもって生成される。また、第1のレーザー1と第2のレーザー2とは同じ種類のレーザーでも良いし、異なるレーザーでも良い。
ここで、第1のレーザー光11のレーザーエネルギーは少なくとも1mJ以上、第2のレーザー光12のレーザーエネルギーは少なくとも15mJ以上とすることが必要である。本発明者等のCl発光強度とレーザーエネルギー依存性についての実験の結果、図7に示すように、10mJ以下のレーザーエネルギーではアブレーションがほとんど起きないため、Cl発光強度は計測ノイズと同レベルになった。一方、15mJ以上のレーザーエネルギーでは、Cl発光強度、ベースライン強度とも単調増加した。しかも、同実験系においては、レーザーエネルギーを15mJ以上に設定することにより、Cl濃度0.1g/m以上の感度があることがわかった。さらに、1段目のレーザー照射即ち第1のレーザー光11のレーザーエネルギIが発光強度に与える影響を実験した結果、図8に示すように、Clの発光強度はIに対して単調に高くなる傾向が得られた。SPの時には、図7に示すように、10mJ以下ではほとんどClの発光が確認されなかったことから、第1のレーザー光11のレーザーエネルギIが10mJ以下においては第2のレーザー光12を15mJ以上にして追加熱や再励起など行っても、その効果は十分に得られないと考えられた。しかし、10mJといった、Clの発光が確認されなかったような低いレーザーエネルギーであっても、これを第1のレーザー光11として用いた場合のDP(I=10mJ、I30mJ)においては、SP(I=0mJ,I=30mJ)の時よりも、Clの発光強度が1.5倍程度増加されたという結果が得られた。そして、この発光強度の増加は、図8に示すように、第1のレーザー光11のレーザーエネルギIが1mJといった非常に低い値でも認められた。つまり、同軸照射によるダブルパルスの場合、低いレーザーエネルギーでも発光強度がシングルパルスと比べて高くなる、換言すれば、同じ発光強度であればより低いレーザーエネルギーでターゲットへの影響をより抑えて付着成分の検出ができることを知見するに至った。
他方、ターゲットに影響を与えるエネルギーの閾値は、プラズマが出来なくなる10mJであることから、それを超えるレーザーエネルギーの場合にはエネルギーの大きさに比例してターゲットへの影響が大きくなる。つまり、使用者がどの程度の影響までを許容するのかで、利用できるレーザエネルギーの上限値が決まる。そして、レーザーエネルギーが高いほどClの発光強度は高くなる傾向にある。このため、ターゲットに与える影響が許容できる範囲内でレーザーエネルギーを高く設定することが被検査金属の表面に付着する成分の検出において望ましい。したがって、レーザーエネルギーの上限値は、より低いレーザーエネルギーで必要な発光強度が得られるという観点において決められることが望ましい。例えば、レーザーエネルギーが100mJ以上であれば空気中でプラズマが生成されるため、同軸照射でなくともダブルパルス照射を実施することは可能である。しかしながら、ターゲットの表面と平行に第2のレーザー光を照射する光学系を組み込むスペースを狭隘な空間に確保することは困難である。しかも、100mJであれば、同軸照射による方がより強い発光強度を得られることから望ましい。しかも、この点において、レーザーエネルギーの上限値を100mJ以下とすることは意味がある。また、Cl発光強度とベースライン強度との発光強度比のレーザーエネルギー依存性によれば、図22に示すように、発光強度比は15〜30mJの領域で単調増加するものの30mJを超え35mJ以上になると飽和する傾向にあった。そして、この発光強度比は図20並びに図21に示すように、Cl濃度に対して線形性が得られる指標として有用である。したがって、発光強度比が高い条件で最もレーザーエネルギーが低い30mJ付近をレーザー照射条件の適切な上限値とすることは格別なる意義がある。
以上のことから、第1のレーザー光11のレーザーエネルギーは少なくとも1mJ以上100mJ以下の範囲であり、好ましくは15mJ以上35mJ以下の範囲、より好ましくは15mJ以上30mJ以下の範囲とすることである。また、第2のレーザー光12のレーザーエネルギーは少なくとも15mJ以上100mJ以下の範囲であり、好ましくは15mJ以上30mJ以下の範囲である。ここで、小さいレーザーエネルギーの方がターゲット・被検査金属6に対する影響が小さく、かつ同軸照射によるダブルパルスの場合、第2のレーザー光12に先行する第1のレーザー光11については、1mJ程度の小さいレーザーエネルギーでも15mJ以上の第2のレーザー光12の照射によって発光強度の増加が認められることから、第1のレーザー光11のレーザーエネルギーを10mJ以下、第2のレーザー光12のレーザーエネルギーを15mJ以上と互いに異なる強さのレーザーエネルギーとしても良い。しかしながら、より強い発光強度を得るには第1のレーザー光11に対してもレーザーエネルギーを高くする方が望ましい。このことから、第1のレーザー光11及び第2のレーザー光12のレーザーエネルギーは、ともに15mJ以上30mJ以下とすることが好ましく、より好ましくはともに発光強度比が高い条件で最もレーザーエネルギーが低い30mJ程度とすることである。
この第1のレーザー1と第2のレーザー2とは、第1のレーザー光11で被検査金属(サンプル)6の表面をアブレーションした後、第2のレーザー光12で被検査金属6の表面の追加のアブレーション及び第1のレーザー光11でアブレーションされた物質の雰囲気(アブレーションプルーム)を再加熱または再励起するように配置される。例えば本実施形態の場合、第1のレーザー光と第2のレーザー光とをサンプル6の表面に対して垂直にして順に照射させる同軸照射式を採用している。
ここで、第1のレーザー光11と第2のレーザー光12とのレーザー光照射時間差としては、第1のレーザー1によるアブレーションの後、白色光ノイズが減少し尚かつ励起原子がアブレーションプルーム中に残っている状態が確保される時間であり、例えば0.5μs〜5μsの範囲で与えることが好ましい。また、金属表面の付着微量成分をアブレーションする場合、レーザーのピークパワーが小さいことから白色ノイズは弱いが、この場合においても、受光素子5のゲート開始時間が早ければ、白色光ノイズが輝線強度に比べて強いので、計測できず、遅いと輝線強度が減衰してしまって感度が出ない。そこで、この場合における、受光素子のゲート開放開始とその直前のレーザー光の照射との時間差は、ダブルパルスによる場合と同様に、1μs〜10μsの範囲に調整されることが好ましい。ちなみに、発光強度比の観点から適切な測定条件は、受光遅延時間1.7μs、ゲート幅500ns、レーザーエネルギー30mJであった。
尚、実験装置では、レーザー光の照射によるアブレーション並びにアブレーションプルームからの発光の計測は、光学レンズやミラーなどを用いた光学系によって行うようにしているが、場合によっては、直接光ファイバーによって導光することにより、照射したり、分光器4に取り込むようにしても良い。光ファイバーは通常紫外域(波長200nm以下)の光は通さないため、真空紫外域等の発光を測定する場合に有効である。勿論、レンズを用いて光ファイバーに集光することにより分光される光強度を増加し、測定感度を向上することも好ましい。また、光ファイバーとしてバンドルファイバーを用い、光ファイバーの出射形状をライン状にして分光器のスリット形状に合わせることにより、光ファイバーと分光器の結合効率を向上させるようにしても良い。また、レーザー光の集光と発光の集光を同軸に設定することも可能である。これにより、システムを簡便にすることができる。
分光器4としては、本実施形態では、回折格子により波長情報を空間情報に変換する分光器を用いているが、これに限らず、例えばバンドパスフィルターを用いることも可能である。測定対象物質が一つまたは少数に限られている場合、その発光線と近傍のバックグラウンドの波長に合わせたバンドパスフィルターを用意し、それぞれのバンドパスフィルターを通した後の光強度を測定することにより、バックグラウンドに対する発光の強度、すなわち測定対象物質の発光線強度を測定することが可能である。この場合、バックグラウンド測定用バンドパスフィルターとして、二つ以上の波長のバンドパスフィルターを用いることで測定の信頼性を向上することができる。以上のようにバンドパスフィルターを用いて分光することにより、装置構成を格段に簡素化することができると共に、製作コストを格段に下げることが可能となる。
受光系としては分光器4とICCDカメラ5、または分光器4と光電子増倍管(図示省略)を用いることが好ましい。ゲート機能を有する受光素子5としては、本実施形態の場合、ICCDカメラを用いている。ICCDカメラは回折格子を有する分光器により空間情報に変換された波長毎の強度分布(スペクトル)を一度に取得することが可能であり、多数の物質の発光スペクトルを同時に取得することが可能であり、多数の物質の計測を一度に行うことができる。また、高い時間分解能でゲートをかけることができるため、前述したようにゲート開放開始までの遅れ時間とゲート開放時間を調整することにより、プラズマの制動輻射によるバックグラウンドノイズを低減することが可能である。さらにイメージインテンシファイアにより信号強度を増強することが可能であるため、測定のS/N比を向上することができる。しかしながら受光素子5としてはICCDカメラに限る必要はなく、たとえば、通常のCCDカメラや線形フォトダイオード等の線形受光素子を用いることも可能である。この場合も回折格子を有する分光器と同時に用いることにより、多数の物質を一度に計測することが可能である。また、受光素子として、光電子増倍管やフォトダイオード等の単一受光素子を用いることも可能である。この場合、波長毎の強度分布(スペクトル)を一度に取得することはできないため、多数の物質の計測を同時に行うことはできないが、単一または少数の物質のみを測定すればよい場合、または多数の物質の計測でも、各物質を同時に測定しなくてもよい場合は適用可能である。例えば、単一または少数の物質のみを測定すればよい場合、上述したようにバンドパスフィルターと共に用いて、測定対象物質の発光波長とその近傍のバックグラウンド波長を1点もしくは数点同時に測定すればよい。これにより装置を格段に簡便にすることが可能となると共に、製作コストを低くすることができる。また、多数の物質の計測でも各物質を同時に測定しなくてもよい場合には、例えば回折格子を有する分光器と共に用いて、回折格子を回転させながら波長毎の強度分布(スペクトル)を測定すればよい。時間に対して変動の少ない現象を測定する場合は有効である。
本実施形態の場合には、ICCDカメラ5にはスペクトル強度分布を分析する各種解析プログラムなどを実装したコンピュータ8が接続され、ICCDカメラ5で撮像した周波数毎の発光強度の情報を入力して、このデータを保存し、あるいは積算し、解析して発光スペクトルとしてディスプレーに表示したり、周波数毎の発光強度の情報から金属表面の塩分の有無、さらには塩分濃度等を計測する。このコンピュータ8は、図示していないが記憶装置を備え、金属表面に既知の濃度の微量成分を付着させてレーザ光を照射したときに発生するプラズマの発光のスペクトル強度分布等を予め記憶させたり、検量線を備えることにより、参照データとの発光強度の比較あるいは検量線の参照により目的物質・原子の濃度変化などを検出するように設けることが好ましい。尚、発光スペクトルを保存し、必要に応じて積算したり、解析する必要がない場合には、パソコン8を必要とせず、ICCDカメラ5に付属のモニターディスプレイに単に発光スペクトルを表示してモニターするようにしても良い。
以上のように構成された本発明の金属表面の付着物質濃度の計測方法並びに装置によると、金属表面に付着した微量成分の濃度の計測を以下に示すようにして実施できる。
ここで、第1のレーザー1及び第2のレーザー2から照射されるレーザー光11,12は、1つの光伝送部を介してターゲット6の表面に導かれる同軸照射であるため、一方のレーザの出力を0とすることによりシングルパルスで、双方のレーザーから出力することでダブルパルスと、任意に簡単に切り替えることができる。シングルパルスの場合、ターゲットである被検査金属6の表面に対してレーザー光を照射し、付着成分をアブレーションさせ、発光を観測する。また、ダブルパルスの場合には、第1のレーザー光11と第2のレーザー光12とは、共にターゲット6の表面に対して垂直となるように順次照射される。発光は光ファイバーや光学系などの光伝送部を介して検出され、回折格子を有する分光器4により分光され、ICCDカメラ5により受光される。ICCDカメラ5は、回折格子を有する分光器4により空間情報に変換された波長毎の強度分布(スペクトル)を一度に取得することが可能であり、多数の物質の発光スペクトルを同時に取得することが可能であり、多数の物質の計測を一度に行うことができる。
ここで、837.59nmの塩素の発光線、517.26nmのマグネシウムの発光線、518.36nmのマグネシウムの発光線、833.31nmの塩素の発光線は塩分の存在を示唆するものであり、いずれかの発光線を用いることによりそれら発光線の発光強度と塩分濃度とは比例関係にあることから、塩分の存在とその濃度が求められる。
なお、図示していないが、本発明の金属表面の付着物質濃度の計測装置は、コンクリートキャスクの中の金属製キャニスタの表面(外表面)に付着する塩分の濃度を計測する場合に適している。この場合、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを含みコンクリートキャスクとその中に収容されている金属製キャニスタとの間、即ち、コンクリートキャスクの内周面と金属製キャニスタの外表面との間の狭隘な空間(狭隘部)にキャニスタの表面に沿って光伝送部(スコープ)を挿入するようにしている。
したがって、金属製キャニスタの表面に付着している塩分濃度を計測する場合には、レーザーと分光器などを含む解析装置とをコンクリートキャスクの外に配置し、コンクリートキャスク内に挿入される光伝送部を介して金属製キャニスタの表面にレーザー光を照射して塩分をアブレーションすると共にプラズマ化し、発光を光伝送部を介して狭隘な空間の外の解析装置に光ファイバを介して導き、分光すると共に受光素子で発光スペクトルを得ることにより、金属製キャニスタの表面に付着する微量成分を特定しかつその濃度を求めることができる。
ここで、光伝送部は、図示していないが、中空管にレーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系あるいは双方を兼ねた光ファイバーを内蔵したものであり、検査対象である金属即ち金属製キャニスタの表面に対向する照射部例えば金属表面と密着するシール部材などのスペーサが具備されており、レーザー照射時に、シール部材と金属製キャニスタの表面(金属表面)とが密着することで、照射点を固定することが好ましい。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では、コンクリートキャスクに収容された金属製キャニスタの表面に付着した塩分の濃度を求める場合について主に説明したが、これに特に限られるものではく、広く金属全般に適用できるものであって、金属表面に付着するあらゆる微量成分の有無とその濃度を求めることができる。しかも、この金属表面は、狭隘な空間に面しているものに限られず、開放された空間に面するものに対しても適用可能である。
また、ダブルパルスによる場合、2つのレーザー光11,12は同軸に配置された二つのレーザー光11,12の間で焦点位置をずらしたり、また第2のレーザー光12を金属表面に対して斜交させることにより照射面の大きさを変えることで、ピークパワー上限値以下となるようにレーザー光のエネルギと照射面の面積を調整することでも同様の効果を得ることができる。しかも、同軸に配置する場合には装置の構成が簡便となる利点がある。
(1)現場適用性の高い照射方法の検討
LIBSには、1本のレーザー光を用いて行う方法(SP:シングルパルス計測)と、2つのレーザー光を用いて行う方法(DP:ダブルパルス計測)とがある。DPでは、プラズマを生成させるレーザー(レーザー1)とプラズマを加熱もしくは再励起させるレーザー(レーザー2)の2つを用いる。DPの代表的な方式として、図23に示すように2つのレーザー光をターゲットに対して水平、垂直に入射させる方式(直交照射方式)と、図1に示すように同一光路上に重ね合わせて照射する方式(同軸照射方式)がある。
直交照射方式の場合、レーザー2がターゲットに直接照射されないため、レーザー2のエネルギーを高くしても試験片に与える影響は小さい。一方、レーザー光を直交させるための光軸合わせが重要となる。特に、レーザー2はターゲット直上数mmの空間に対して平行に入射する必要があるため、例えば狭隘部での計測を想定した場合、平行に入射させるための光学系を組むスペースを設けることが難しい。同軸照射方式では、2つのレーザー光を重ね合わせた後の光路は、SPでもDPでも同じであり、直交入射方式と比較するとターゲットに対して平行にレーザー光を入射させるための光学系が不要となる。そのため、レーザー光集光部において、同軸照射方式の方がより光学部品点数が少なく、光学系を組むためのスペースを小さくすることが可能となる。
今までに行ったSPの結果より、Clの発光を計測するためには、後述する通り837nmの輝線が適している。また、図2に示すように、直交照射方式DPにて計測を行った場合には、Cl濃度1.0g/m以下においてClの発光強度とCl濃度とにおおよその比例関係が見られた。このことから、プラズマの励起を十分に行うことができれば、より広いCl濃度範囲において、Cl発光強度を用いた定量計測が可能になると考えられる。それに加えて、実機で計測を行う場合は、光軸調整の手間を考慮し、光学部品点数を少なくするといった装置構成の簡略化が必要である。そこで、今回はより実機への適用性が高い同軸照射方式によるDPを行い、SPとの比較を行った。また、Clの発光強度を別の強度で規格化した指標を用いることで、SPにおいてCl濃度に対する線形性が向上することが示されている。そこで、SPにおいてClの発光強度と他の強度との比を求めて、SPにおける定量計測の改善を試みた。
(1)実験方法
ここでは、実験で用いた試験片と実験方法について述べる。始めに、実験で用いた試験片の概要について触れ、次のその試験片を用いた実験系について述べる。
(1−1)付着塩分試験片
本実験では、試験片として75mm×75mm 厚み2mmのSUS304LおよびSUS316L冷間圧延材を用いた。これら2つの材質は、実機適用に際し、経済的に有利な実機の候補材に挙げられている。塩分が付着しやすいように、耐水研磨紙600番を用いて、試験片を湿式研磨した。その後、Cl濃度を調整するために本試験片を80度に加熱したヒーターの上に乗せて、直上から希釈した人工海水を数回に分けて噴霧し、試験片にほぼ均一に塩分を付着させた。Cl濃度は、同様に噴霧した試験片に対してイオンクロマトグラフィを用いて測定した。表1に試験片に噴霧されたCl濃度を示す。Cl濃度とCl発光強度の関係を詳しく調べるために、SUS304LとSUS316Lに対してCl濃度を変えて噴霧した。また、発光スペクトルに対する材質の影響を調べるために、両者の試験片の一部はCl濃度を同じにした。
Figure 2013190411
(1−2)レーザー照射系と受光系
実験は、図1に示した同軸照射方式で行った。実験では、レーザー1、2共にQスイッチNd:YAGレーザー装置(Continuum, Powerlite8010,繰り返し10Hz)を用いて、第2高調波を試験片に照射した。同軸照射を行うためにレーザー1と2の偏光面を直交させ、偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて2つのレーザー光を重畳させた。レーザー光は、焦点距離250mmの平凸レンズを用いて試験片表面に集光した。試験片表面のスポット径は約1.0mmである。
プラズマの発光は、分光器(Roper Scientific, Acton SpctraPro 2300i)とICCDカメラ(Roper Scientific, PI−MAX 1k Unigen II)を用いて受光した。また、受光効率を向上させるために、平凸レンズを用いて集光光学系を構築した。高次光を遮るために、受光用のバンドルファイバーの手前に、ロングウェーブパスフィルタ(カットオフ波長600nm)を設置した。分光器の入射スリットの幅は、10mmに設定した。ICCDカメラの動作とレーザー光照射の時間的関係を図3に示す。タイミングコントローラを用いて、レーザー光照射とICCDカメラのゲート開放を同期させて、受光遅延時間(t)とレーザー1、2の照射間隔(t12)を設定した。
試験片は、自動ステージを用いて1mm/shotの速さで横方向に移動させ、レーザー光が常に新しい面に照射されるようにした。そして、試験片両端を除く50個の照射点より得られる発光スペクトルを発光強度の算出に用いた。
(1−3)発光強度の算出
発光スペクトルの解析では、まず得られた発光スペクトルに対して11点の隣接平均を行った。以降で示す発光スペクトルは、50個の発光スペクトルの積算平均である。発光強度を求める場合には、1回の計測で得られる50個の発光スペクトルそれぞれに対して発光強度を求め、各発光強度の平均値と標準偏差を算出した。図4に、表2の条件でSPを行った各元素の発光スペクトルを示す。バックグラウンド光の影響を排除するために、発光スペクトルの裾両端を結ぶ直線をベースラインとして定義し、スペクトルピーク波長における強度から、スペクトルピーク波長におけるベースラインまでの強度(以降、ベースライン強度)を差し引いたものを各元素の発光強度とした。
(2)実験結果
SPと同軸照射方式によるDPそれぞれの実験結果を比較した。SPを行う際には、レーザー1のエネルギー(I)を0mJ、レーザー2のエネルギー(I)を30mJに設定した。また、各元素の発光強度の実験パラメータ依存性を求めた。それぞれの実験結果を比較するために、特に記載しない限り、表2に示す条件で実験を行った。
Figure 2013190411
(2−1)発光スペクトルの特徴
Clの輝線が含まれる830nm付近の波長域に注目して、条件毎に発光スペクトルを比較した。800〜860nmの波長域を一度に計測するために刻線数600g/mm、ブレーズ波長500nmのグレーティングを用い、SUS316Lを対象として計測を行った結果を図5に示す。ここでは、Cl濃度が高い場合と低い場合の典型的な例として、Cl濃度0.1と1.0g/mの場合のスペクトルを示す。830〜845nmで観測されるClとFeの輝線は重畳しているため、図5では一つのスペクトルピークに見える。
SPでは、Cl濃度0.1g/mと1.0g/mにおいて大きなスペクトルの変化は見られなかったが、1.0g/mの方が全体的にスペクトルの強度が低下した。一方、DPでは、Cl濃度が0.1g/mの時にNのピークが見られたが、1.0g/mではスペクトルピークにおける強度が低下し、自己吸収が生じていることが示唆された。自己吸収は、プラズマが光学的に厚い場合(例えば、電子密度が高い場合)に見られる現象であり、自己吸収が起きると、スペクトル幅が広がると同時にスペクトルピーク波長における形状が凹型になる。OもNと同様に空気に含まれる元素であるが、このようなスペクトル形状の変化は見られない一方、Cl濃度が高い時に発光強度が他の元素と比較して低下する傾向だった。一方、ClやCaのスペクトルを見ると、Cl濃度によって著しいスペクトルの変化は見られず、自己吸収は生じていない。一方、SPの場合にはCl濃度が1.0g/mでも自己吸収は見られなかった。Clの発光強度に注目すると、SPよりもDPの方が高くなった。
SUS316Lには、SUS304Lには無いモリブデン(Mo)が2〜3%含まれている。今回計測する波長域(800〜860nm)においてMoの輝線は4本存在する。そこで、発光スペクトルに対するモリブデンの影響を調べた。図6にSUS304LおよびSUS316Lを用いた際に得られた発光スペクトルを示す。図ではCl濃度が高い場合と低い場合の典型的な例として、0.1g/mと1.0g/mの時のスペクトルを示した。SUS304LとSUS316Lにおけるスペクトル形状を比較すると、Cl濃度やSP、DPに対して違いは見られなかった。また、スペクトルの強度の変化は、1回の計測におけるばらつきの範囲内であり、顕著な強度の差はSUS304LとSUS316Lとの間で見られなかった。したがって、発光スペクトルに対してモリブデンの影響はほとんどないと考えられる。
今回計測された輝線の帰属結果を表3に示す。空気に含まれる元素(N)、SUSに含まれる元素(Fe)、人工海水に含まれる元素(Cl、Ca)が計測された。酸素(O)は、人工海水にも空気中にも含まれる元素である。Caだけがイオンの輝線であり、他は中性粒子の輝線と評価した。849nmと854nmの輝線は、NISTの原子スペクトルデータベースよりFe IかCa IIに帰属されるが、Cl濃度0.0g/mの試験片を用いた際にこの二つの輝線が見られないこと、二つの輝線の発光強度とCa IIのA係数の比率に対応が見られることから、Ca IIと帰属した。Clの輝線は3本計測されたが、Clの発光強度を求める際は、最も強度の高い837.594nmの輝線を用いた。
Figure 2013190411
以上、各元素の発光スペクトルの特徴について述べた。DPでは、Cl濃度が1.0g/mにおいてNの自己吸収が見られた。自己吸収は、本来ターゲットにたくさん含まれている元素によって起こると考えられている、このためターゲットに含まれていないNの自己吸収の影響を受けることは全く予測できず、新規な知見であった。これによりClのベースラインに変化が観測されるため、発光強度の算出において自己吸収が影響することが考えられる。また、SUS304LとSUS316Lとで発光スペクトルを比較した結果、両者のスペクトルに顕著な違いは見られず、発光強度の算出に材質が影響しないことを確認した。
(2−2)レーザーエネルギー依存性
発光強度に最も影響する実験条件の一つに、Iが挙げられる。SPにおいては、図 7に示すようにClの発光強度がレーザーエネルギーに対して単調に高くなる結果だった。
一方、DPにおけるI依存性については、例えばコンクリートに含まれた塩分に関する報告がいくつかなされているが、付着塩分に関する報告はほとんどない。SPとDPの比較においては、DPでのIをSPでのレーザーエネルギーと等しくなるようにして実験を行う例が多い。これは、I=0mJに設定すればSPの条件と全く同じになることが背景の一つに挙げられる。そこで、Iを30mJに固定し、Iを変化させた条件で実験を行った。この時、図6に示す832.075nmのFeの輝線はすぐ隣のClの輝線と重畳していたために、発光強度を求めなかった。
図8より、Clの発光強度は1段目のレーザー照射即ち第1のレーザー光11のレーザーエネルギIに対して単調に高くなる傾向が得られた。一方、図7に示すようにSPの時に10mJ以下ではほとんどClの発光が確認されなかったことから、I=10mJ以下においては追加熱や再励起などのDP固有の効果は十分で無いと考えられる。しかし、このような低いレーザーエネルギーを用いた場合においても、SPに相当するI=0mJの時よりもI=10mJの時の方が、Clの発光強度が1.5倍程度増加した。これは、塩分がSUS表面からはじき出されることで、効率的に塩分が励起されたことが示唆される。また、I=0mJ(換言すれば、SP)ではOの発光強度が顕著に高くなった。DPでは、レーザー1の照射により生じるプラズマの衝撃波で空気が希薄化され、空気に含まれる元素の発光強度が低下し、試料に含まれる元素の発光強度が高くなることが一般的に知られている。しかし、図7より、I≦10mJにおいて有意なClの発光強度は得られておらず、レーザー1照射時に衝撃波が生じるほどのプラズマは生成していないと考えられる。そのため、空気の希薄化の効果によりOの発光強度が低下したとは考えにくい。この場合、I=0mJでは先に述べた塩分の効率的な励起が無いために、代わりに空気の励起にレーザーエネルギーが費やされたと考えられる。ちなみに、レーザーエネルギーとCl発光強度との関係を求めた図7に示される結果からは、I=が15mJのときのClの発光強度は、エラーバーを考慮しても有意に0よりも大きな発光強度が得られていることから、十分に有意な値を示していると言える。このことから、レーザーエネルギー強度は、15mJ以上でClの有意な発光強度が得られることが明らかとなった。
元素別に発光強度のI依存性をみると、Iの増加に対して共に発光強度が増加する割合はClとOでほぼ同程度であり、Caはそれよりも低い割合だった。これは、OとClのスペクトルの上準位のエネルギーがそれぞれ10.39eV、10.98eVと同程度であること、OとClが中性原子のスペクトルであるのに対し、Caはイオンのスペクトルであることが理由と考えられる。
(2−3)レーザー照射間隔依存性
DPでは、t12が発光強度に大きな影響を与える実験パラメータの一つであり、さらにt12はI、Iとも関連性がある。そこで、(I、I)=(15、30)、(30、15)、(30、30)mJの時のt12依存性を調べた。
Clの発光強度のt12依存性を図9に示す。(I、I)=(30、30)mJの時にt12=0.5msにおいて、Clの発光強度は最大値を取った。(I、I)=(15、30)、(30、15)mJの時は、t12=0.2msにおいてClの発光強度は最大値を取った。t12=0msは、45、60mJのSPに相当するが、以上の結果からレーザーエネルギーの合計が45、60mJの場合、SPよりもDPの方がより高いClの発光強度を得られることが分かる。これは、(2−2)レーザーエネルギー依存性で述べたように、空気の希薄化の効果によるものと考えられる。また、t12=0.2msにおいては(I、I)=(15、30)、(30、15)mJの時のClの発光強度がほぼ等しくなる一方、t12=5.0msにおいては(I、I)=(15、30)、(30、30)mJの時のClの発光強度がほぼ等しくなる傾向が得られた。これは、t12が小さい場合にはIとIの合計によりClの発光強度が決定され、t12が大きい場合にはIによりClの発光強度が決定されることを意味している。したがって、DPを行う場合はIよりもIの方がClの発光強度およびt12依存性に影響を及ぼすと考えられる。
次にOの発光強度のt12依存性を図10に示す。Oの発光強度は、t12と共に指数関数的に低下したが、これも空気の希薄化の効果と考えられ、t12が大きいほどレーザー2が照射された時点で空気の密度が減衰していたためと考えられる。
Caの発光強度のt12依存性が図11に示すようにClとほぼ同じ傾向を示すのは、どちらも人工海水に含まれる元素であることが理由に挙げられる。しかし、Caの発光強度が最大となるt12の値は、Clに対する値よりも若干長く、(I、I)=(15、30)、(30、15)mJの時に0.5ms、(I、I)=(30、30)mJの時に1.0msとなった。XeClレーザーを用いたLIBSの結果において、イオンの発光の立ち上がりが中性原子のそれに比べて遅いことが示されており、今回の実験もイオンと中性原子の違いが原因と考えられる。
以上のようにCl、O、Caの発光強度のt12依存性に関して、IおよびIが与える影響を明らかにした。今回の実験条件において、IよりもIの方が発光強度のt12依存性に対して影響が大きかった。また、Clの発光強度はt12<1.0msにおいて最大となる傾向が得られた。
(2−4)受光遅延時間依存性
適切なtの値を明らかにするために、DPにおけるt依存性を調べた。各元素の発光強度のt依存性を図12に示す。Caだけがt=1.0msで最大値を取り、ClとOはtに対して単調に低下した。ClとOが中性原子の輝線であるのに対し、Caはイオンの輝線である。これより、イオンか中性原子かによってt依存性が異なることが示唆される。Clの発光強度は、tが小さいほど高くなるが、t=0sの場合には輝線の線幅も広くなるため、Clのすぐ隣にある838.777nmのFeの輝線との重畳が懸念される。そのため、t>0.5msがスペクトルを解析する上で適切な値と考えられる。
(2−5)Cl濃度依存性
定量計測の可能性を検討するために、Cl発光強度のCl濃度依存性を求めた。図13にClの発光強度のCl濃度依存性を示す。Clの発光強度は、SPと比較してDPの場合に2〜4倍程度高くなった。また、SUS304LとSUS316Lとで顕著な発光強度の違いは見られなかった。Clの発光強度はCl濃度0.2g/m以上において低下する傾向であった。この原因として、プラズマが十分に生成していないこと、加えて自己吸収も関係していると考えられる。図5より、ClやCaのスペクトルには顕著な自己吸収が観測されないが、Cl濃度が1.0g/mの時にNのスペクトルに顕著な自己吸収が観測されている。これらの結果より、Nの顕著な自己吸収により、Clのスペクトルのベースラインの傾きが大きくなり、Clの発光強度の算出に影響を及ぼしたことが理由の一つと考えられる。
図13におけるCl濃度0.1g/mまでの結果を線形スケールで図14に示す。Cl濃度0〜0.1g/mの範囲においてSPとDPの結果に対して線形フィッティングを行うと、それぞれR2乗誤差0.711、0.970の精度でCl濃度への換算式が得られた。
また、各Cl濃度での計測において発光強度のばらつきに違いが見られた。図15にCl発光強度の変動係数(発光強度の標準偏差/発光強度の平均値)を示す。0.4g/mより大きなCl濃度ではDPよりもSPの方が変動係数は小さく、それ以下のCl濃度では逆の傾向となった。DPでは、SUS表面からはじき出される塩分量が多いため、Cl濃度が大きい場合には、はじき出された塩分が空気中を漂い、第2のレーザー光12の照射を妨げることが原因と考えられる。一方、Cl濃度が低い場合には、そのような効果が表れず、DPによる効率的な塩分の励起が行われた結果、変動係数が小さくなったと考えられる。
図16に示すように、Oの発光強度は、SPとDPの両方において、Cl濃度と共に発光強度が単調に低下した。このことから、アブレーションの対象である塩分が増加することにより、プラズマが十分に生成されなくなることが考えられる。人工海水には、酸化物の形態で酸素も含まれているが、Cl濃度0.0g/mの場合においてもOのスペクトルが計測されることから、今回観測されたOは主に空気に含まれていたものと考えられる。
図17にCa IIの発光強度のCl濃度依存性を示す。Ca IIの発光強度は、Clの場合と同様にCl濃度とともに高くなった後に低下する傾向が得られた。これは、Ca IIとClが共に塩分に含まれている元素であるためと考えられる。しかし、発光強度が増加から低下に転じるCl濃度は、Clの場合と異なり0.4〜1.0g/mの間であった。図5より、Ca IIとNの輝線が離れているため、Ca IIの輝線においてNの自己吸収によってベースラインが高くなる影響は小さい。そのため、Cl濃度0.4g/m以上においてCaの発光強度が低下するのはNの自己吸収では無く、プラズマが十分に励起されなくなることが主な理由と考えられる。また、SPでは0.2g/m以上において計測のばらつきが大きく、有意な発光強度の変化は見られなかった。
プラズマを十分に励起させるためには、レーザーエネルギーを大きくすることが考えられるが、実用化を考えるとレーザーエネルギーを高く設定することは現実的な計測条件でない。また、Cl濃度が高い場合にはNの自己吸収が生じるが、レーザーエネルギーを高くすると電子密度が増加するため、更に光学的厚みが大きくなり自己吸収が大きくなることが予想される。さらに、実環境で垂直に設置した金属試験片に付着する塩分量は、一万時間を越えても2mg/m程度と非常に低濃度だった。そのため、今回の結果より、Cl濃度が少なくとも0.05g/m以上に達した場合にLIBS計測によるCl濃度のモニタリングが可能になると考えられる。
(3)定量計測に関する考察
(2−5)Clの発光強度のCl濃度依存性は、図13に示したように、0.1g/m以下のCl濃度において良好な線形性が見られるが、Cl濃度が0.2g/m以上の場合、Clの発光強度が低下するため、Cl発光強度からCl濃度を求める場合に0.2g/m以下の値として誤認する可能性がある。Clの発光強度の低下について、Nの自己吸収がベースラインに影響を及ぼすことが原因の一つと考えられる。一方、LIBSにおける定量計測の一つに、各元素の発光強度比を求める方法がある。ここでは、Nの自己吸収の補正と二つの基準となる発光強度に着目した発光強度比とCl濃度との線形性について検討する。
(3−1)Nの自己吸収の影響の補正
ここで、ClのベースラインIは、Nの発光スペクトルIと白色光ノイズに起因するベースラインIの和で表わすことにする。即ち、ClのベースラインIは、白色光ノイズに起因するベースラインIとNの自己吸収の影響(Nの発光スペクトルI)を足し合わせたものである。白色光ノイズは、イオンと電子との再結合や、電子の制動放射によるプラズマが生じた初期に特に強く生じる発光(白色光)であり、プラズマの状態を示す指標になる。今回計測した波長域が840±15nm程度と比較的狭いため、白色光ノイズの強度の波長依存性はほとんどないと仮定できることから、ベースラインIはグラフでは平坦な形をしている。Nの発光スペクトルIは、Nの輝線波長を中心としたガウス関数で、数式1の様に表現される。
Figure 2013190411
ここで、A、wはそれぞれ定数であり、λはNの輝線波長(820.036nm)である。ちなみに、定数A、wの値は、得られた発光スペクトルに対してフィッティングを行う際に、最も実験データと一致する様な関数を得る操作により一意に求まる。始めに、計測した波長域で最もスペクトル強度が低い波長域847.5〜848.5nmの平均値を白色光ノイズに起因するベースラインIとして定義した。そして、図18のように、実験で得られた発光スペクトルに対して、(1)式とIを用いて827nm〜830nmの波長域(計測波長域)でフィッティングを行った。このようにして、Clのスペクトルピーク波長におけるスペクトル強度からIとIを差し引いてClのスペクトル強度IClを求めた。その後、Clの発光強度IClと白色光ノイズのベースラインIの発光強度の比ICl/Iを算出した。また、同様にしてOの発光強度Iを算出した。そして、Oのスペクトル強度IとClの発光強度IClとの発光強度の比ICl/Iを求めた。もっとも、Oの輝線波長はNの輝線波長から離れているので、Nの自己吸収の影響(I)をほとんど受けず、白色光ノイズのベースラインIとの差がなくなるので、Clの発光強度IClと同じ解析によらずとも、Oのスペクトルピーク波長における発光強度からIを差し引くだけでOのスペクトル強度Iを求めても良い。
図19に、上述の(1)式を用いて求めた0.1g/m以下におけるClの発光強度IClのCl濃度依存性を示す。図14とほぼ同様の結果が得られ、本解析方法を用いても、0.1g/m以下のCl濃度においてClの発光強度とCl濃度とに線形性があることを確認した。
(3−2)各元素の発光強度比
発光強度比を求める場合には、計測対象の元素と共に、計測環境(この場合はCl濃度)の違いによって元素の濃度変化が小さい元素が用いられる。今回の場合、Oの発光強度に対するClの発光強度比を用いた。
図20にOに対するClの発光強度比のCl濃度依存性を示す。発光強度は、上述の(1)式を用いてNの発光スペクトルの影響を補正している。DPの場合、ばらつきがあるものの0.05〜1.0g/mのCl濃度範囲で発光強度比が単調増加し、4.0g/mにおいて値が低下する傾向が得られた。これより、Oに対するClの発光強度比は、Cl濃度がSUS304Lに対するSCC発生限界である0.8g/mを越えたかどうかの指標になる可能性がある。また、Cl濃度が高い場合(例えば図5の1.0g/mの結果)に明らかにCl濃度が低い場合と全体のスペクトル形状が異なるため、Cl濃度を誤認する可能性は無いと考えられる。発光強度比が飽和する傾向となるのは、発光強度の低下が原因と考えられる。プラズマが十分に励起されなくなる効果が各元素において見られるため、比を取ることでその効果が打ち消されるためと考えられる。SPにおいて、Oに対するClの発光強度比が有意なCl濃度依存性を示さなかった。これは、Clに比べてOの発光強度が相対的に高かったことから、塩分が十分に励起されていないことが原因と考えられる。
(3−3)ベースラインとの発光強度比
前述したCl濃度を換算する場合の誤算出の課題は、発光スペクトルのベースラインを用いることでも解決できる。図6より、Cl濃度が高い条件(1.0g/m)と低い条件(0.1g/m)のそれぞれの場合の結果を比較すると、Cl濃度が低い場合には、発光強度がスペクトル全域に渡って高くなる傾向にある。この特徴を利用して、(3−1)Nの自己吸収の影響の補正で述べたIを用いてClの発光強度との比を求めると図21のようになる。SPの場合にはばらつきが大きいものの、0.05〜0.2g/mまで発光強度比が単調に高くなり、0.2g/m以上で飽和する傾向が得られた。これより、Iで規格化することにより、プラズマの状態の違いを補正することが可能と考えられる。DPにおけるClのベースラインに対するCl発光強度の比は0.2g/m以上のCl濃度でやや減少するが、SPとほぼ同様の傾向が得られた。
以上のように、Oに対するClの発光強度比およびClのIに対するClの発光強度比に着目し、高いCl濃度範囲におけるClの発光強度の低下に関する補正を検討した。これらの発光強度比を用いることにより、高いCl濃度において生じるプラズマ発光の強度低下の効果を補正することが可能と考えられる。また、発光強度はレーザー照射ごとにばらつきがあるため、今回適用したような内部規格化を行うことが望ましい。
以上の結果より、LIBSを用いたキャニスタ付着塩分計測において、現場適用性の高い同軸照射方式を用いた方法の可能性について以下の結果を得た。
(1)同軸照射方式の適用とスペクトルの特徴
同軸照射方式を用いた今回の実験条件において、SP(I=0mJ)の場合よりもDPの方が2〜4倍程度高いClの発光強度が得られた。また、実機の候補材であるSUS304LとSUS316Lとで顕著な発光強度の違いは見られず、どちらの材質に対しても計測結果に大きな変化が無いことを確認した。800〜860nmの波長範囲で発光スペクトルを計測した結果、Cl濃度が1.0g/m程度になるとNの自己吸収が生じることが示唆され、Clの発光強度を求める際、ベースライン強度が高くなることにより発光強度の算出に影響を及ぼすことが明らかになった。
(2)発光強度の実験パラメータ依存性
Cl濃度やレーザーエネルギー等の種々の実験パラメータに対する依存性を求めた。レーザーエネルギーに対する依存性に関しては、SPにおいてほとんど発光が得られなかったレーザーエネルギー(≦10mJ)においても、Iに比例して各元素の発光強度は増加した。実用的な範囲を想定して、適切な計測条件を求めた結果、DPにおいてI=I=30mJ、t12=1.0ms、t=0.5msの条件がClの発光強度を算出するのに適していると判断した。この場合、Cl濃度が0.1g/m以下の範囲において、Cl発光強度とCl濃度とに線形性があることを確認し、R2誤差0.970の精度でCl濃度の較正直線を得た。また、0.4g/m以下のCl濃度範囲において、Cl発光強度の変動係数はSPの場合0.2以下であり、DPの場合には0.15以下となった。この結果より、今回の計測条件ではDPの方がより高い精度で計測が可能である。
(3)発光強度比を用いた定量計測の検討
Cl濃度が高い場合に発光強度が低下する問題を解決するために、発光強度比に着目して定量計測の可能性を検討した。DPを用いた場合、Iに対するIClの発光強度が、0.05〜1.0g/mの範囲においてCl濃度に対して単調増加する傾向を得た。また、SPにおいて、Clの発光強度とIとの強度比を用いることにより、0.05〜0.2g/mまで発光強度比が単調に高くなり、0.2g/m以上で飽和する傾向が得られた。これらの指標を用いることにより、Cl濃度が高い場合にCl発光強度が低下する結果を補正できることを示した。
これらの結果を考慮すると、今回の実験条件の場合、DPにおけるClの発光強度を指標に用いることで0.1g/m以下のCl濃度の定量計測が行えると考えられる。また、Iに対するIClの発光強度の比を用いることで、SUS304LのSCC発生限界である0.8g/mを越えたかどうかを判別できる可能性がある。
このように、Cl発光強度を用いてCl濃度の検量線を引くことの見通しは得られたが、実機に適用する際にはCl発光強度に対する実環境の影響を評価することが望まれる。
以上、パルスレーザーの照射により金属表面の付着物質をアブレーションする本発明による表面塩分濃度の非接触測定を行った結果、シングルパルスおよびダブルパルス計測の両方法において表面塩分濃度0.1g/m以下の塩素に対する測定感度があることが確認された。また、SUS304Lへの損傷を低減させるためにレーザー光強度を下げて実験を行った結果、シングルパルス計測でも計測可能であることは、ベースラインと発光強度の比をとった結果から明らかとなった。しかも、計測可能なCl濃度範囲が0.05〜4.0g/mと拡張されていることが明らかにされた。また、発光強度と濃度とに比例関係が見られなかったが、濃度0.1 g/m程度の感度があることが判明した。一方、ダブルパルス計測では両者がほぼ比例関係であり、感度補正などを考慮することにより、濃度の定量測定を行うことが可能であることが判明した。
1 第1のレーザー
2 第2のレーザー
3 時間差を与えるコントローラ
4 分光装置
5 ゲート機能を有する受光素子(ICCDカメラ)
6 検査対象となる微量成分が付着した金属表面
8 パソコン
11 第1のレーザー光
12 第2のレーザー光

Claims (7)

  1. 1mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第1のレーザー光と15mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第2のレーザー光とを同軸照射によりターゲットの表面に順次照射し、金属表面付着成分をアブレーションし、プラズマ化された物質からの発光スペクトルを計測し、前記金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求める金属表面付着成分の濃度計測方法。
  2. 前記第1のレーザー光は1mJ以上30mJ以下のレーザーエネルギーで、前記第2のレーザー光は15mJ以上30mJ以下のレーザーエネルギーである請求項1記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
  3. 前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光は、ともに30mJのレーザーエネルギーである請求項1記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
  4. ベースラインIを窒素(N)の発光スペクトルIと白色光ノイズに起因するベースラインIの和で表わす数式1と白色光ノイズに起因するベースラインIとを用いて、前記発光スペクトルに対して計測波長域でフィッティングを行って測定対象となる金属表面付着成分のスペクトルピーク波長における窒素の発光強度を求め、前記金属表面付着成分のスペクトルピーク波長におけるスペクトル強度から前記白色光ノイズに起因するベースラインIと前記窒素の発光スペクトルIを差し引いて前記金属表面付着成分のスペクトル強度を求めることにより、前記Nの自己吸収の効果を補正することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
    Figure 2013190411
    ただし、A、wはそれぞれ定数であり、λはNの輝線波長、λは波長である。
  5. 請求項4記載の方法によってNの自己吸収の効果を補正した前記金属表面付着成分を示す発光線の発光強度と酸素の発光線の発光強度との発光強度比と前記金属表面付着成分濃度との相関関係を用いて、計測時の前記金属表面付着成分の発光強度と酸素の発光線の発光強度比から前記金属表面付着成分濃度を求めることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
  6. 請求項4記載の方法によってNの自己吸収の効果を補正した前記金属表面付着成分を示す発光線の発光強度と白色光ノイズのベースラインとの発光強度比と前記金属表面付着成分濃度との相関関係を用いて、計測時の前記金属表面付着成分の発光強度と白色光ノイズのベースラインとの発光強度比から前記金属表面付着成分濃度を求めることを特徴とする金属表面付着成分の濃度計測方法。
  7. 狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する装置において、少なくともレーザーと分光手段と受光素子及び前記レーザーと前記受光素子を制御するコントローラを備えており前記狭隘な空間の外に配置される濃度計測装置本体と、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを含み前記狭隘な空間に前記金属表面に沿って挿入される光伝送部とを備え、前記光伝送部を介して前記金属表面に1mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第1のレーザー光と15mJ以上100mJ以下のレーザーエネルギーの第2のレーザー光とを同軸照射により順次照射して前記金属表面の付着物質のアブレーションとプラズマ化を行い、前記プラズマ化された物質からの発光を前記光伝送部を介して前記狭隘な空間の外の前記分光手段に導いて分光すると共に前記受光素子で発光スペクトルを得ることにより、前記金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求める金属表面付着成分の濃度計測装置。
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