JP2017198593A - がいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラム - Google Patents

がいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】がいし類の表面の付着塩分を、遠隔で且つ迅速に、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いて定量的に計測することができるようにする。【解決手段】がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方が計算され、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線が用いられてがいし類の塩分付着密度が求められるようにした。【選択図】図1

Description

本発明は、がいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、例えば送電設備,変電設備,配電設備,或いはき電設備に実際に備えられているがいし類の表面における付着塩分(主にNaCl)の定量的な計測に用いて好適な技術に関する。
送変電設備は、沿岸部,山岳地,工業地域,降雪地域など、多様な環境条件下に設置されており、その汚損の種類も多様である。さらに、日本各地において火山活動に伴う火山灰の降灰も少なくなく、火山灰の降灰による絶縁性能の低下も懸念されている。
がいし類の汚損監視の目的は、主に、1)管内における汚損区分の制定,2)短期的・長期的な汚損トレンド監視に基づく保守計画の策定,3)がいし類毎の優劣比較とされている(非特許文献1)。
がいし類の汚損度の測定については、従来、筆あらい法やソルトメータを用いてパイロットがいし類の付着物質を水に溶解させて電気伝導度を計測することにより、等価の電気伝導度を有するNaClの密度に換算した等価塩分付着密度(ESDD:Equivalent Salt Deposit Density の略)として評価されている。
がいし類の付着塩分の分布状況の偏り(「不平等汚損」と呼ぶ)により、同等の塩分付着量であっても、周方向の或る特定の方向に局所的な導電路が生じて局部アーク放電の発生を招いたり、長手方向の不平等汚損によって電圧分担に偏りが生じたりすることが想定される。このため、付着分布を高い空間分解能で計測できることが望ましい。しかしながら上記段落の方法では、がいし類の表面における付着物質の分布を高い空間分解能で計測することが困難である。
汚損塩の種類(言い換えると、組成)も放電現象の観点で重要な項目である。我が国における主ながいし類の汚損源は海塩である。がいし類に付着した塩分の組成は時々刻々と変化することが知られている。これは潮解性の高い塩類が高湿度の環境下で先に脱落することによって汚損物全体の組成比が変化するためである(非特許文献2,非特許文献3)。したがって、塩分付着密度(SDD:Salt Deposit Density の略)及びその組成の計測は重要である。
このように、不平等汚損やNaCl以外の成分の影響は、がいし類の絶縁性能や長期信頼性に影響を及ぼす虞がある。実際に、現場における事故発生状況を確認すると、不平等汚損や多様な塩類の汚損条件での事故状況は、平等汚損或いは単独塩によるものとは異なるといった報告がなされている(非特許文献3)。このため、がいし類の表面に関する付着物質の付着分布の監視は、特に汚損状況の正確な評価や地域毎の汚損原因の特定のために重要である。
また、レーザー誘起ブレイクダウン分光によるがいし汚損計測への適用に関しては、ハンドホールド型のがいし表面塩分密度計測装置の開発に関する報告がある(非特許文献4,5、及び、特許文献1)。これらの報告では、炭酸ガスレーザーとYAGレーザーとを用いたダブルパルスにより、がいし表面の損傷を低減した計測を行っている。また、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いたがいし付着塩分の遠隔計測としては、Nd:YAGレーザーの3倍高調波(波長:355 nm)を用いて、ポリマーがいしに付着させた塩分を60 m の離隔距離で検知した例が報告されているが、塩分付着密度と発光強度との間の関係は報告されていない(非特許文献6)。塩分付着密度(SDD)の遠隔計測としては、10 m の離隔距離において人工汚損がいしの塩分付着密度を0.1 mg/cm2 まで計測した例が報告されているが(非特許文献7)、超重汚損地域(SDD>0.12 mg/cm2)以上の汚損区分において適用することができれば、実用上有効である。
特開2013−15404号公報
CIGRE Task Force 33.04.03「Insulator Pollution Monitoring」,ELECTRA,No.152,pp.79−90,1994年 一般社団法人電気協同研究会「配電機材に対する劣化環境の定量評価」,電気協同研究,第69巻第3号,2013年 下田修ほか「がいし付着塩分の組成とせん絡電圧の関係」,技術第一研究所報告,研究報告71026,1971年 Laser Cross,No.303,2013年6月 Laser Cross,No.313,2014年4月 M.Bengtssonほか「Remote laser−induced breakdown spectroscopy for the detection and removal of salt on metal and polymetric surfaces」,Applied Spectroscopy,Vol.60,Issue 10,pp.1188−1191,2006年 藤吉晋一郎ほか「レーザー塩害観測装置の開発」,レーザー研究,第20巻第12号,pp.29−36,1992年
しかしながら、従来のがいし類の汚損計測は、パイロットがいしの汚損採取によって行われているため、オフサイト且つオフライン計測であるという問題がある。
これを、レーザー誘起ブレイクダウン分光(LIBS:Laser Induced Breakdown Spectroscopy の略)を用いた手法に置き換えることができれば、がいし類の付着物質の多成分計測且つリアルタイム計測を遠隔にて実施し得ると期待される。
また、がいし類の汚損の程度については、一般汚損地域(具体的には、SDD<0.01 mg/cm2)から特殊地域(具体的には、SDD>0.35 mg/cm2)までの広範囲に及ぶ区分が規定されている(一般社団法人電気協同研究会「配電機材に対する劣化環境の定量評価」,電気協同研究,第69巻第3号,2013年)。
これに対し、発明者は、がいし類の表面の付着塩分をレーザー誘起ブレイクダウン分光を用いて定量的に計測する技術を構築するために計測対象物(即ち、がいし類)へのレーザー光の照射によるプラズマ光の発光強度について分析を行い、レーザー誘起ブレイクダウン分光を利用した計測によって得られる特定の発光線(即ち、発光波長,分析線の波長)の発光スペクトルを用いることによって付着塩分を定量的に計測し得ることを見出した。
発明者は、また、単一の発光線(即ち、発光波長,分析線の波長)の発光スペクトルのみを用いた場合には、発光の飽和や自己吸収と想定される事象により、低濃度から高濃度までの広範囲について高感度の計測を行うことは困難であるという事実に直面した。
そこで、本発明は、がいし類の表面の付着塩分を、遠隔で且つ迅速に、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いて定量的に計測することができるがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムを提供することを目的とする。また、本発明は、がいし類の表面の付着塩分を、上記に加え、低濃度から高濃度までの広範囲に及ぶ計測が必要な場合への対応として、広範囲の濃度ついて高感度に、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いて定量的に計測することができるがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明のがいし類の汚損の計測方法は、がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方が計算され、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められるようにしている。
また、本発明のがいし類の汚損の計測装置は、がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを有するようにしている。
また、本発明のがいし類の汚損の計測プログラムは、がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する処理と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
したがって、これらのがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによると、パルスレーザー光を用いるようにしているので、がいし類の付着物質の、遠隔・非接触での計測が行われ得る。これにより、計測を行う作業者が充電部に触れることなく、がいし類に付着した汚損物の情報が得られる。
これらのがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによると、また、レーザー光は小さな領域に集光することが可能であるため、がいし類の表面の付着物質分布が高い空間分解能で計測され得る。
これらのがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによると、また、発明者が見出した知見によればNaの発光波長818.33 nm や819.48 nm の発光強度は高く(言い換えると、高感度であり)且つ塩分付着密度の変化に対して飽和し難い(即ち、塩分付着密度の増加に伴う強度変化の頭打ちが生じ難い)ので、低密度から高密度までの広い範囲に亙ってがいし類の表面の塩分付着密度が計測され得る。
また、従来用いられてきた筆あらい法などでは各種付着物質を同定することができないために付着物質を同定するためにはイオンクロマトグラフィーなどの別の分析装置を用いる必要があるのに対し、本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによると、塩分の主たる構成元素であるナトリウム「Na」,塩素「Cl」のみならず他の元素も計測対象になり得る。
ここで、本発明の説明においては発光波長を小数点以下第二位まで記載するようにしており、小数点以下第三位以降を考慮した厳密な発光波長と対比した場合に四捨五入の範囲で見かけ上の差違が有る場合がある。
本発明のがいし類の汚損の計測方法は、さらに、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方が計算され、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められるようにしても良い。
また、本発明のがいし類の汚損の計測装置は、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを更に有するようにしても良い。
また、本発明のがいし類の汚損の計測プログラムは、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する処理と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とを更にコンピュータに行わせるようにしても良い。
これらの場合には、発明者が見出した知見によれば塩分付着密度が低い場合もNaの発光波長589.00 nm や589.59 nm の発光強度は高感度であるので、塩分付着密度が低い場合に特に良好な精度で塩分付着密度が計測され得る。
本発明のがいし類の汚損の計測方法は、さらに、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が837.59 nm のClの発光強度が計算され、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められるようにしても良い。
また、本発明のがいし類の汚損の計測装置は、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が837.59 nm のClの発光強度を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを更に有するようにしても良い。
また、本発明のがいし類の汚損の計測プログラムは、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が837.59 nm のClの発光強度を計算する処理と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とを更にコンピュータに行わせるようにしても良い。
これらの場合には、発明者が見出した知見によれば塩分付着密度が高い場合もClの発光波長837.59 nm の発光強度は高感度であるので、塩分付着密度が高い場合に特に良好な精度で塩分付着密度が計測され得る。
本発明のがいし類の汚損の計測方法は、さらに、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度が計算され、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められるようにしても良い。
また、本発明のがいし類の汚損の計測装置は、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する手段と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを更に有するようにしても良い。
また、本発明のがいし類の汚損の計測プログラムは、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する処理と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とを更にコンピュータに行わせるようにしても良い。
これらの場合には、発明者が見出した知見によれば塩分付着密度が高い場合もClの発光波長837.59 nm の発光強度は高感度であるので、塩分付着密度が高い場合に特に良好な精度で塩分付着密度が計測され得ることに加え、Oは計測する物理量に対して発光強度が一定であるので、Oを基準元素として計測対象元素であるClとの発光強度比が用いられることにより、レーザー照射条件の変化に対して影響の少ない検量線が得られる。
また、本発明のがいし類の汚損の計測方法は、がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度が計算され、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められるようにしている。
また、本発明のがいし類の汚損の計測装置は、がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する手段と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを有するようにしている。
また、本発明のがいし類の汚損の計測プログラムは、がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する処理と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
これらのがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによると、発明者が見出した知見によれば塩分付着密度が高い場合もClの発光波長837.59 nm の発光強度は高感度であるので、塩分付着密度が高い場合に特に良好な精度で塩分付着密度が計測され得ることに加え、Oは計測する物理量に対して発光強度が一定であるので、Oを基準元素として計測対象元素であるClとの発光強度比が用いられることにより、レーザー照射条件の変化に対して影響の少ない検量線が得られる。
本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによれば、測定器を充電部から十分に離して計測することができるので、充電線路のがいし類を安全に計測することが可能であり、したがって安定供給に貢献することが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによれば、また、がいし類の表面の付着物質分布を高い空間分解能で計測することができるので、塩分付着分布の偏りによる局所的な導電路の形成等をも検出することが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによれば、また、低密度から高密度までの広い範囲に亙ってがいし類の表面の塩分付着密度を計測することができるので、がいし類の監視手法としての有用性の向上が可能になる。
本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによれば、また、種々の元素を計測対象とすることができるので、塩分付着密度と等価塩分付着密度とに寄与する多元素の同定が可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての有用性の向上が可能になる。
また、本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムは、発光波長が589.00 nm,589.59 nm のNaの発光強度も利用するようにした場合には、塩分付着密度が低い場合に特に良好な精度で塩分付着密度を計測することができるので、付着塩分が低密度であっても良好な計測を行うことが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
また、本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムは、発光波長が837.59 nm のClの発光強度も利用するようにした場合には、塩分付着密度が高い場合に特に良好な精度で塩分付着密度を計測することができるので、付着塩分が高密度であっても良好な計測を行うことが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
また、本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムは、Clの発光強度とOの発光強度との比も利用するようにした場合には、塩分付着密度が高い場合に特に良好な精度で塩分付着密度を計測することができるので、付着塩分が高密度であっても良好な計測を行うことが可能になり、さらに、レーザー照射条件の変化に対して影響の少ない検量線を得ることができるので、レーザー照射条件の変動に強く且つ塩分付着密度について低密度から高密度までの広い範囲で適用が可能である検量線を設定することが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
また、本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムは、Clの発光強度とOの発光強度との比が用いられる場合には、塩分付着密度が高い場合に特に良好な精度で塩分付着密度を計測することができるので、付着塩分が高密度であっても良好な計測を行うことが可能になり、さらに、レーザー照射条件の変化に対して影響の少ない検量線を得ることができるので、レーザー照射条件の変動に強く且つ塩分付着密度について低密度から高密度までの広い範囲で適用が可能である検量線を設定することが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
本発明のがいし類の汚損の計測方法の実施形態の一例を示すフローチャートである。 実施形態のがいし類の汚損の計測方法をがいし類の汚損の計測プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現されるがいし類の汚損の計測装置の機能ブロック図である。 レーザー光の照射及び発光スペクトルの計測を行う態様の一例を示す概念図である。 本発明のがいし類の汚損の計測方法の他の実施形態の一例を示すフローチャートである。 実施例1における塩分付着密度が0.008 mg/cm2 のときのNaの発光線(発光波長:589.00 nm,589.59 nm)を含む波長帯域の発光スペクトルを示す図である。 実施例1における塩分付着密度が0.248 mg/cm2 のときのNaの発光線(発光波長:589.00 nm,589.59 nm)を含む波長帯域の発光スペクトルを示す図である。 実施例1におけるレーザーエネルギー別の各塩分付着密度に対するNa(発光波長:589.00 nm)の発光強度を示す図である。 実施例1における塩分付着密度が0.008 mg/cm2 のときのNaの発光線(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)及びOの発光線(発光波長:777.19 nm)を含む波長帯域の発光スペクトルを示す図である。 実施例1における塩分付着密度が0.515 mg/cm2 のときのNaの発光線(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)及びOの発光線(発光波長:777.19 nm)を含む波長帯域の発光スペクトルを示す図である。 実施例1におけるレーザーエネルギー別の各塩分付着密度に対するNa(発光波長:819.48 nm)の発光強度を示す図である。 実施例1におけるレーザーエネルギー別の各塩分付着密度に対するO(発光波長:777.19 nm)の発光強度を示す図である。 実施例1における塩分付着密度が0.026 mg/cm2 のときのClの発光線(発光波長:837.59 nm)及びOの発光線(発光波長:844.64 nm)を含む波長帯域の発光スペクトルを示す図である。 実施例1における塩分付着密度が0.515 mg/cm2 のときのClの発光線(発光波長:837.59 nm)及びOの発光線(発光波長:844.64 nm)を含む波長帯域の発光スペクトルを示す図である。 実施例1におけるレーザーエネルギー別の各塩分付着密度に対するCl(発光波長:837.59 nm)の発光強度を示す図である。 実施例1におけるレーザーエネルギー別の各塩分付着密度に対するO(発光波長:844.64 nm)の発光強度を示す図である。 実施例1におけるレーザーエネルギー別の各塩分付着密度に対するO(発光波長:844.64 nm)の発光強度に対するCl(発光波長:837.59 nm)の発光強度の比を示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図3に、本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムの実施形態の一例を示す。
本実施形態のがいし類の汚損の計測方法は、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方が計算され(S1−1,S1−2)、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度(SDD:Salt Deposit Density の略)とのNa高波長SDD検量線が用いられてがいし類20の塩分付着密度が求められ(S1−3)、また、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方が計算され(S2−1,S2−2)、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのNa低波長SDD検量線が用いられてがいし類20の塩分付着密度が求められ(S2−3)、さらに、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が837.59 nm のClの発光強度が計算され(S3−1,S3−2)、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのCl波長SDD検量線が用いられてがいし類20の塩分付着密度が求められ(S3−3)、その上で最終的な塩分付着密度が決定される(S4)ようにしている(図1参照)。
本実施形態のがいし類の汚損の計測装置は、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのNa高波長SDD検量線を用いてがいし類20の塩分付着密度を求める手段と、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのNa低波長SDD検量線を用いてがいし類20の塩分付着密度を求める手段と、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が837.59 nm のClの発光強度を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのCl波長SDD検量線を用いてがいし類20の塩分付着密度を求める手段とを有するようにしている。
上記がいし類の汚損の計測方法及びがいし類の汚損の計測装置は、がいし類の汚損の計測プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施・実現され得る。ここでは、がいし類の汚損の計測プログラムがコンピュータ上で実行されることによってがいし類の汚損の計測方法が実施されると共にがいし類の汚損の計測装置が実現される場合を説明する。
本実施形態のがいし類の汚損の計測プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、がいし類の汚損の計測装置10でもある)の全体構成を図2に示す。
このコンピュータ10(がいし類の汚損の計測装置10)は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されているがいし類の汚損の計測プログラム17に従ってコンピュータ10全体の制御並びにがいし類の汚損の計測に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、コンピュータ10(以下、「がいし類の汚損の計測装置10」と呼ぶ)の制御部11には、がいし類の汚損の計測プログラム17が実行されることにより、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する処理を行うNa高波長強度計算部11aと、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのNa高波長SDD検量線を用いてがいし類20の塩分付着密度を求める処理を行う第一の密度特定部11bと、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する処理を行うNa低波長強度計算部11cと、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのNa低波長SDD検量線を用いてがいし類20の塩分付着密度を求める処理を行う第二の密度特定部11dと、がいし類20の表面にパルスレーザー光8が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が837.59 nm のClの発光強度を計算する処理を行うCl波長強度計算部11eと、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度とのCl波長SDD検量線を用いてがいし類20の塩分付着密度を求める処理を行う第三の密度特定部11fとが構成される。
ここで、本発明では、がいし類の表面の監視に係る計測を行う手法として、レーザー誘起ブレイクダウン分光(LIBS:Laser Induced Breakdown Spectroscopy の略)が用いられる。
レーザー誘起ブレイクダウン分光は、レーザー光を測定対象物に集光することによってプラズマを発生させ、そのプラズマからの発光を分光することにより、測定対象物に含有される元素の種類及び濃度を測定する手法である。なお、レーザー誘起ブレイクダウン分光自体は周知の技術であるので(例えば、D.A.Cremers and L.J.Radziemski「Handbook of Laser−Induced Breakdown Spectroscopy」,John Wiley & Sons,Ltd.)、ここでは詳細については省略する。
レーザー誘起ブレイクダウン分光は、他の成分分析法に比べ、(1)サンプル前処理をせずに成分分析が可能であること、(2)非接触計測や遠隔計測が可能であること、(3)リアルタイム計測が可能であること、(4)様々な物質を同時に計測することが可能であること、(5)高空間分解能があること、などの利点がある。
また、本発明が対象とする「がいし類」には、態様や用途などの区分・種類の範囲として少なくとも、例えば、磁器製のがいし類やポリマー材料を外被材としたがいし類などが含まれ、懸垂がいし,長幹がいし,相間スペーサ,避雷器,がい管,ブッシング,中実SP(Station Post の略)がいし,及び配電用がいしなどが含まれる。
そして、ポリマー製がいし類の外被のエロージョン進行には塩類の付着密度だけでなく組成も大きく影響することが報告されており(西村誠介ほか「シリコーンゴムのエロージョン進行に及ぼす電解質種類の影響」,一般社団法人電気学会 電線・ケ−ブル研究会資料,EWC11001,2011年)、塩類の組成は劣化による寿命評価を行う上で無視できない項目の一つである。このような背景のもと、レーザー誘起ブレイクダウン分光の特徴である付着密度計測と多成分計測(言い換えると、組成の同定,多元素の同定)との同時計測が、ポリマー製がいし類の診断に対して有用な特性として活用され得る。
また、本発明は、計測対象となるがいし類について、電圧印加の有無や設置環境について特別な制限を課していない。例えば鉄塔などに取り付けられて実際に用いられているがいし類を対象として計測が行われる。そして、例えば、鉄塔に取り付けられているがいし類を対象として計測する際には、計測距離が30〜50 m 程度になることが想定される。
本実施形態では、図3に示す態様(言い換えると、計測系)により、計測対象(言い換えると、監視対象)のがいし類20へのレーザー光の照射が行われてがいし類の付着物質の付着分布が遠隔で計測される。
なお、本実施形態では、図3に示す装置構成の中に、当該装置によって行われるレーザー光照射及び発光スペクトル計測を制御する制御装置(コンピュータ)としてがいし類の汚損の計測装置10が組み込まれている。ただし、レーザー光照射及び発光スペクトル計測を制御する制御装置(コンピュータ)とがいし類の汚損の計測装置10とは別々のものとして構成されるようにしても良い。
そして、本実施形態では、図3に示す態様により、概要としては、がいし類20の表面にレーザー光8が集光され、レーザー装置1の近傍に設置された望遠鏡3がプラズマからの発光9を受光する。さらに、光ファイバー7を介して、分光装置(分光器4,検出器5を含む)でそのスペクトルが計測される。
そして、レーザー光8の集光点が掃引されることにより、がいし類20の表面における塩分濃度分布が計測される。これにより、がいし類20の表面の付着塩分濃度分布が、遠隔で迅速に計測され得る。
本実施形態では、レーザー誘起ブレイクダウン分光を行うための機序が、具体的には、レーザー装置1,タイミングコントローラ2,望遠鏡3,分光器4,検出器5,及びがいし類の汚損の計測装置10を有するものとして構成される。
プラズマを生成するためのレーザー装置1としては、例えば、パルス繰り返しが10 Hz であるQスイッチNd:YAGレーザーが用いられる。そして、第二高調波(波長:532 nm)が計測対象のがいし類20に照射される。
そして、レーザー装置1から出射された、例えば、ビーム径:〜1 cm 程度の範囲,エネルギー:50〜150 mJ 程度の範囲(一層具体的には、100 mJ 程度)のレーザー光8(パルスレーザー光)が、拡大集光光学系6によって計測対象のがいし類20の表面に入射・集光され、プラズマを生成する。
拡大集光光学系6は、例えばレーザー装置1から計測対象のがいし類20までの距離や集光後のレーザービーム径(言い換えると、スポット径)が考慮されるなどした上で、適当な構成に適宜調整・設定される。拡大集光光学系6は、具体的には例えば、図3に示す例のように凸レンズ6Aと凹レンズ6Bとの組み合わせとして構成され、レーザー装置1から出射されたレーザー光8のビーム径を凹レンズ6Bによって拡大してから所定距離(既知)離れた位置の計測対象のがいし類20の表面に凸レンズ6Aによって集光するように調整・設定されることが考えられる。
その上で、計測対象のがいし類20の表面において生じたプラズマからの発光9が、望遠鏡3(例えば、ニュートン式望遠鏡)によって光ファイバー7(例えば、バンドルファイバー)の端面に集光され、当該光ファイバー7を介して分光器4へと導かれる。
そして、分光器4によって分析対象の元素の発光波長の発光スペクトルが分離され、当該分離された発光スペクトルが検出器5によって受光される。
プラズマからの発光9を受光するための検出器5としては、例えば、イメージインテンシファイア付CCD(ICCD:Intensified Charge Coupled Device の略)カメラ、或いは、高電子増倍管とバンドパスフィルタとの組み合わせなどが用いられる。
なお、必要に応じ、検出器5と撮像対象である計測対象のがいし類20との間(具体的には例えば、望遠鏡3の対物レンズ若しくは対物境の前、またはバンドルファイバの前)に、ND(Neutral Density の略)フィルタやバンドパスフィルタ等の光学フィルタが配設されるようにしても良い。
また、レーザー装置1によるレーザー光8の照射と検出器5によるプラズマ発光9の受光(言い換えると、露光開始時間)との遅延時間は、タイミングコントローラ2によって制御される(検出器5に関しては、具体的にはゲート遅延時間が制御される。尚、検出器5のゲート幅は検出器5内の制御機能によって制御される)。
そして、検出器5により、計測対象のがいし類20の表面において生じたプラズマからの発光9についての分析対象の元素の発光スペクトルが、がいし類の汚損の計測装置10へと出力される。ここで、検出器5から出力される、発光スペクトルに対応する信号のことを「スペクトルデータ」と呼ぶ。
なお、複数パルスのレーザー光によるプラズマ発光スペクトルが積算されて発光強度が算定される(言い換えると、1データとされる)ようにしても良い。発光強度を算定する際の発光スペクトルの積算の回数は、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、50回程度に設定され得る。
そして、がいし類の汚損の計測方法の手順として、本実施形態では、大まかに、Na高波長(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)の発光スペクトルを利用してがいし類表面の塩分付着密度の定量的な計測を行う処理(S1)と、Na低波長(発光波長:589.00 nm,589.59 nm)の発光スペクトルを利用してがいし類表面の塩分付着密度の定量的な計測を行う処理(S2)と、Cl波長(発光波長:837.59 nm)の発光スペクトルを利用してがいし類表面の塩分付着密度の定量的な計測を行う処理(S3)と、最終的な塩分付着密度の決定を行う処理(S4)とを有するようにしている。
具体的には、まず、Na高波長(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)の発光スペクトルの計測が行われる(S1−1)。
S1−1の処理としては、図3に示す態様によって計測対象のがいし類20へのレーザー光の照射が行われ、レーザー誘起ブレイクダウン分光により、発光波長(発光線,分析線の波長)が818.33 nm であるNaの発光スペクトルと819.48 nm であるNaの発光スペクトルとのうちの少なくとも一方が計測される。
発光波長が818.33 nm や819.48 nm のNaの発光スペクトルを計測する際の分光器4のグレーティング及び入射スリット幅は、特定の値に限定されるものではないものの、例えば、刻線数:300 Gr/mm 程度,入射スリット幅:50 μm 程度に設定されることが考えられる。
また、検出器5としてICCDカメラが用いられる場合の、発光波長が818.33 nm や819.48 nm のNaの発光スペクトルを計測する際のゲート幅,ゲート遅延時間,及びゲインは、特定の値に限定されるものではないものの、例えば、ゲート幅:3 μs 程度,ゲート遅延時間:2 μs 程度,及びゲイン:1程度に設定されることが考えられる。
本実施形態では、発光波長818.33 nm と819.48 nm とのうちの少なくとも一方を含むNaに係る発光スペクトルが、スペクトルデータとして、検出器5から出力される。
続いて、Na高波長の発光強度の計算が行われる(S1−2)。
S1−2の処理としては、S1−1の処理によって計測されて取得された発光スペクトルが用いられて発光強度(S1−1の処理での計測に対応する、発光波長818.33 nm のNaの発光強度と発光波長819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方)が計算される。
本実施形態では、S1−1の処理において検出器5から出力されるスペクトルデータががいし類の汚損の計測装置10へと入力され、制御部11のNa高波長強度計算部11aにより、発光強度が計算される。なお、発光スペクトルを用いての発光強度の計算の仕方自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する。
そして、Na高波長強度計算部11aにより、計算された発光強度の値が、メモリ15に記憶させられる。
続いて、Na高波長の利用による、計測対象のがいし類の塩分付着密度の特定が行われる(S1−3)。
S1−3の処理としては、S1−2の処理によって計算された発光強度が、予め定められた「Na高波長(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)の発光強度と塩分付着密度との間の関係」(即ち、塩分付着密度を求める検量線である)に当てはめられることにより、計測対象のがいし類20についての塩分付着密度(単位:mg/cm2)が特定される。なお、「Na高波長の発光強度と塩分付着密度との間の関係」のことを「Na高波長SDD検量線」と呼ぶ。Na高波長SDD検量線は各種発光波長(818.33 nm,819.48 nm)別に設定される。
Na高波長SDD検量線の設定のため、塩分付着密度が既知である汚損物が表面に付着している複数の試験片のそれぞれについて上述のS1−1及びS1−2の処理と同様にレーザー光の照射が行われて発光強度(S1−1の処理での計測に対応する、発光波長818.33 nm のNaの発光強度と発光波長819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方)が計算され、これにより、塩分付着密度(既知)とNa高波長の発光強度との組み合わせデータが複数組整備される。
なお、試験片までの離隔距離として確保可能な距離に制約がある場合などには、計測対象のがいし類20を対象とした実際の計測における計測対象のがいし類20までの離隔距離(言い換えると、集光焦点距離)と比べて試験片までの離隔距離(集光焦点距離)が短く変更されると共に、試験片に照射されるレーザー光の強度(言い換えると、レーザーエネルギー密度)が、実際の計測でのレーザー照射強度(レーザーエネルギー密度)に対応するもの(言い換えると、同等のもの)になるように、試験片までの離隔距離(集光焦点距離)に応じて調整されるようにしても良い。
そして、この複数の組み合わせデータに基づいて発光強度と塩分付着密度との間の関係が推定され(例えば、折線・曲線グラフや近似関数として推定される)、当該推定された関係がNa高波長SDD検量線として設定される。なお、Na高波長SDD検量線は連続的な増加傾向を示すものになる。
Na高波長SDD検量線を設定するための塩分付着密度(既知)と発光強度との組み合わせデータの個数は、特定の個数に限定されるものではないものの、少なくとも、発光強度と塩分付着密度との間の連続的な増加傾向を適切に再現し得る程度の個数であることが好ましい。
また、Na高波長SDD検量線を設定するための組み合わせデータの整備のために使用される試験片としては、塩分付着密度が様々であるものが準備されて使用されることが好ましく、少なくとも、がいし類における塩分付着密度として想定される範囲(具体的には例えば、がいし類の汚損の程度に関する区分における一般汚損地域に相当するSDD<0.01 mg/cm2 から特殊地域に相当するSDD>0.35 mg/cm2 までの範囲)をカバーする塩分付着密度に設定されたものが準備されて使用されることが好ましい。
また、表面に汚損物が付着していない試験片が含まれるようにしても良い。この場合には、塩分付着が無い状態(即ち、塩分付着密度が0(ゼロ)であるとき)の発光強度のデータがNa高波長SDD検量線を設定するための組み合わせデータに含められる。
本実施形態では、Na高波長SDD検量線はがいし類の汚損の計測プログラム17内に予め規定され、そして、第一の密度特定部11bにより、S1−2の処理においてメモリ15に記憶された発光強度(S1−1の処理での計測に対応する、発光波長818.33 nm のNaの発光強度と発光波長819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方)の値が読み込まれ、当該値がNa高波長SDD検量線に当てはめられて計測対象のがいし類20の表面の塩分付着密度が特定される。
そして、第一の密度特定部11bにより、特定された塩分付着密度の値が、Na高波長を利用した場合の塩分付着密度の値として、メモリ15に記憶させられる。
次に、Na低波長(発光波長:589.00 nm,589.59 nm)の発光スペクトルの計測が行われる(S2−1)。
S2−1の処理としては、図3に示す態様によって計測対象のがいし類20へのレーザー光の照射が行われ、レーザー誘起ブレイクダウン分光により、発光波長(発光線,分析線の波長)が589.00 nm であるNaの発光スペクトルと589.59 nm であるNaの発光スペクトルとのうちの少なくとも一方が計測される。
発光波長が589.00 nm や589.59 nm のNaの発光スペクトルを計測する際の分光器4のグレーティング及び入射スリット幅は、特定の値に限定されるものではないものの、例えば、刻線数:300 Gr/mm 程度,入射スリット幅:50 μm 程度に設定されることが考えられる。
また、検出器5としてICCDカメラが用いられる場合の、発光波長が589.00 nm や589.59 nm のNaの発光スペクトルを計測する際のゲート幅,ゲート遅延時間,及びゲインは、特定の値に限定されるものではないものの、例えば、ゲート幅:3 μs 程度,ゲート遅延時間:2 μs 程度,及びゲイン:1程度に設定されることが考えられる。
本実施形態では、発光波長589.00 nm と589.59 nm とのうちの少なくとも一方を含むNaに係る発光スペクトルが、スペクトルデータとして、検出器5から出力される。
続いて、Na低波長の発光強度の計算が行われる(S2−2)。
S2−2の処理としては、S2−1の処理によって計測されて取得された発光スペクトルが用いられて発光強度(S2−1の処理での計測に対応する、発光波長589.00 nm のNaの発光強度と発光波長589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方)が計算される。
本実施形態では、S2−1の処理において検出器5から出力されるスペクトルデータががいし類の汚損の計測装置10へと入力され、制御部11のNa低波長強度計算部11cにより、発光強度が計算される。
そして、Na低波長強度計算部11cにより、計算された発光強度の値が、メモリ15に記憶させられる。
続いて、Na低波長の利用による、計測対象のがいし類の塩分付着密度の特定が行われる(S2−3)。
S2−3の処理としては、S2−2の処理によって計算された発光強度が、予め定められた「Na低波長(発光波長:589.00 nm,589.59 nm)の発光強度と塩分付着密度との間の関係」(即ち、塩分付着密度を求める検量線である)に当てはめられることにより、計測対象のがいし類20についての塩分付着密度(単位:mg/cm2)が特定される。なお、「Na低波長の発光強度と塩分付着密度との間の関係」のことを「Na低波長SDD検量線」と呼ぶ。Na低波長SDD検量線は各種発光波長(589.00 nm,589.59 nm)別に設定される。
Na低波長SDD検量線の設定のため、塩分付着密度が既知である汚損物が表面に付着している複数の試験片のそれぞれについて上述のS2−1及びS2−2の処理と同様にレーザー光の照射が行われて発光強度(S2−1の処理での計測に対応する、発光波長589.00 nm のNaの発光強度と発光波長589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方)が計算され、これにより、塩分付着密度(既知)とNa低波長の発光強度との組み合わせデータが複数組整備される。
なお、試験片までの離隔距離として確保可能な距離に制約がある場合などには、計測対象のがいし類20を対象とした実際の計測における計測対象のがいし類20までの離隔距離(言い換えると、集光焦点距離)と比べて試験片までの離隔距離(集光焦点距離)が短く変更されると共に、試験片に照射されるレーザー光の強度(言い換えると、レーザーエネルギー密度)が、実際の計測でのレーザー照射強度(レーザーエネルギー密度)に対応するもの(言い換えると、同等のもの)になるように、試験片までの離隔距離(集光焦点距離)に応じて調整されるようにしても良い。
そして、この複数の組み合わせデータに基づいて発光強度と塩分付着密度との間の関係が推定され(例えば、折線・曲線グラフや近似関数として推定される)、当該推定された関係がNa低波長SDD検量線として設定される。なお、Na低波長SDD検量線は連続的な増加傾向を示すものになる。
Na低波長SDD検量線を設定する際の組み合わせデータの個数及び試験片についての考え方は上述のNa高波長SDD検量線の設定の場合と同様である。
本実施形態では、Na低波長SDD検量線はがいし類の汚損の計測プログラム17内に予め規定され、そして、第二の密度特定部11dにより、S2−2の処理においてメモリ15に記憶された発光強度(S2−1の処理での計測に対応する、発光波長589.00 nm のNaの発光強度と発光波長589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方)の値が読み込まれ、当該値がNa低波長SDD検量線に当てはめられて計測対象のがいし類20の表面の塩分付着密度が特定される。
そして、第二の密度特定部11dにより、特定された塩分付着密度の値が、Na低波長を利用した場合の塩分付着密度の値として、メモリ15に記憶させられる。
次に、Cl波長(発光波長:837.59 nm)の発光スペクトルの計測が行われる(S3−1)。
S3−1の処理としては、図3に示す態様によって計測対象のがいし類20へのレーザー光の照射が行われ、レーザー誘起ブレイクダウン分光により、発光波長(発光線,分析線の波長)が837.59 nm であるClの発光スペクトルが計測される。
発光波長が837.59 nm のClの発光スペクトルを計測する際の分光器4のグレーティング及び入射スリット幅は、特定の値に限定されるものではないものの、例えば、刻線数:300 Gr/mm 程度,入射スリット幅:50 μm 程度に設定されることが考えられる。
また、検出器5としてICCDカメラが用いられる場合の、発光波長が837.59 nm のClの発光スペクトルを計測する際のゲート幅,ゲート遅延時間,及びゲインは、特定の値に限定されるものではないものの、例えば、ゲート幅:5 μs 程度,ゲート遅延時間:1 μs 程度,及びゲイン:100〜200程度に設定されることが考えられる。
本実施形態では、発光波長837.59 nm を含むClに係る発光スペクトルが、スペクトルデータとして、検出器5から出力される。
続いて、Cl波長の発光強度の計算が行われる(S3−2)。
S3−2の処理としては、S3−1の処理によって計測されて取得された発光スペクトルが用いられて発光強度が計算される。
本実施形態では、S3−1の処理において検出器5から出力されるスペクトルデータががいし類の汚損の計測装置10へと入力され、制御部11のCl波長強度計算部11eにより、発光強度が計算される。
そして、Cl波長強度計算部11eにより、計算された発光強度の値が、メモリ15に記憶させられる。
続いて、Cl波長の利用による、計測対象のがいし類の塩分付着密度の特定が行われる(S3−3)。
S3−3の処理としては、S3−2の処理によって計算された発光強度が、予め定められた「Cl波長(発光波長:837.59 nm)の発光強度と塩分付着密度との間の関係」(即ち、塩分付着密度を求める検量線である)に当てはめられることにより、計測対象のがいし類20についての塩分付着密度(単位:mg/cm2)が特定される。なお、「Cl波長の発光強度と塩分付着密度との間の関係」のことを「Cl波長SDD検量線」と呼ぶ。
Cl波長SDD検量線の設定のため、塩分付着密度が既知である汚損物が表面に付着している複数の試験片のそれぞれについて上述のS3−1及びS3−2の処理と同様にレーザー光の照射が行われて発光強度が計算され、これにより、塩分付着密度(既知)とCl波長の発光強度との組み合わせデータが複数組整備される。
なお、試験片までの離隔距離として確保可能な距離に制約がある場合などには、計測対象のがいし類20を対象とした実際の計測における計測対象のがいし類20までの離隔距離(言い換えると、集光焦点距離)と比べて試験片までの離隔距離(集光焦点距離)が短く変更されると共に、試験片に照射されるレーザー光の強度(言い換えると、レーザーエネルギー密度)が、実際の計測でのレーザー照射強度(レーザーエネルギー密度)に対応するもの(言い換えると、同等のもの)になるように、試験片までの離隔距離(集光焦点距離)に応じて調整されるようにしても良い。
そして、この複数の組み合わせデータに基づいて発光強度と塩分付着密度との間の関係が推定され(例えば、折線・曲線グラフや近似関数として推定される)、当該推定された関係がCl波長SDD検量線として設定される。なお、Cl波長SDD検量線は連続的な増加傾向を示すものになる。
Cl波長SDD検量線を設定する際の組み合わせデータの個数及び試験片についての考え方は上述のNa高波長SDD検量線の設定の場合と同様である。
本実施形態では、Cl波長SDD検量線はがいし類の汚損の計測プログラム17内に予め規定され、そして、第三の密度特定部11fにより、S3−2の処理においてメモリ15に記憶された発光強度の値が読み込まれ、当該値がCl波長SDD検量線に当てはめられて計測対象のがいし類20の表面の塩分付着密度が特定される。
そして、第三の密度特定部11fにより、特定された塩分付着密度の値が、Cl波長を利用した場合の塩分付着密度の値として、メモリ15に記憶させられる。
次に、最終的な塩分付着密度の決定が行われる(S4)。
上述の処理の結果として複数の塩分付着密度の値が得られた場合には、最終的な塩分付着密度は、例えば、これら塩分付着密度の値の最小値から最大値までの範囲として決定されたり、これら塩分付着密度の値の平均値として決定されたり、或いは、これら塩分付着密度のうちの大きい方の値として決定されたりなどされるようにしても良い。なお、複数の塩分付着密度の値が特定されることにより、結果の相互チェックが行われることも可能になる。
そして、制御部11は、計測対象のがいし類20の塩分付着密度を、表示部14に表示したり、データファイルとして記憶部12に保存したりした上で、当該のがいし類20についての塩分付着密度の計測に関する処理を終了する。
ここで、上述の実施形態ではNaの発光強度やClの発光強度がそのまま用いられるようにしているが、酸素「O」の発光スペクトルが計測されて発光強度が計算された上でNaの発光強度やClの発光強度とOの発光強度との比が用いられるようにしても良い。Oの発光強度との比が用いられる場合には以下に説明する利点が得られる。
すなわち、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いた計測では、ターゲット上におけるレーザーエネルギー密度などのレーザー照射条件が変化すると、それによって発光強度が変化する。したがって、例えば鉄塔に取り付けられているがいし類を対象とする遠隔でのレーザー誘起ブレイクダウン分光を用いた計測では、レーザー光のビームプロファイルが大気中での伝播において変化することなどにより、近距離での計測と比べ、ターゲット上におけるレーザー集光条件などのレーザー照射条件を一定にすることが難しいと考えられる。このため、計測誤差が大きくなる可能性がある。
しかしながら、計測する物理量に対して発光強度が一定である元素が存在すれば、その元素を基準元素として計測対象元素との発光強度比を用いることにより、レーザー照射条件の変化に対して影響の少ない検量線が得られる。
そして、発明者が見出した知見によれば、大気中に存在するO(具体的には例えば、発光波長:777.19 nm,844.64 nm)の発光強度は、レーザー照射条件が同じであれば塩分付着密度に対してほぼ一定であるため、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いたNaやClの発光波長を利用する計測における基準元素になり得る。この場合に用いられるOの発光波長は、特定の波長に限定されるものではなく、Oの発光波長であれば何れの波長であっても構わない。この点において、Oに係る上記の発光波長777.19 nm や844.64 nm はあくまでも一例である。発明者が見出した知見によれば、特に、Na高波長を利用する計測とCl波長を利用する計測とにおいて基準元素になり得る。付け加えると、Cl波長を利用する計測においてO(発光波長:844.64 nm)の発光強度が特に良好な基準になり得る。
この場合には、具体的には、S1−1の処理等と同様に図3に示す態様によって計測対象のがいし類20へのレーザー光の照射が行われ、レーザー誘起ブレイクダウン分光により、発光波長(発光線,分析線の波長)が例えば777.19 nm であるOの発光スペクトルと844.64 nm であるOの発光スペクトルとのうちの少なくとも一方が計測される。
なお、比の算出に用いられるNaやClの発光波長とOの発光波長との差がそれほど大きくない場合には、分光器4の性能によっては一回の計測で、比の算出に用いられる複数の発光スペクトルが同時に計測されて取得され得る。
続いて、上記計測によって取得された発光スペクトルが用いられて発光強度(上記計測に対応する、発光波長777.19 nm のOの発光強度と発光波長844.64 nm のOの発光強度とのうちの少なくとも一方)が計算される。
そして、上述のS1−2,S2−2,S3−2の処理によって計算されたNaの発光強度やClの発光強度とOの発光強度との比(言い換えると、Oの発光強度に対するNaの発光強度やClの発光強度の比)が算出される。
この場合には、例えば、図2に示すがいし類の汚損の計測装置10(がいし類の汚損の計測プログラム17を含む)における制御部11の、Na高波長強度計算部11aによってNa高波長の発光強度に加えてO波長の発光強度が計算されたり、Na低波長強度計算部11cによってNa低波長の発光強度に加えてO波長の発光強度が計算されたり、或いは、Cl波長強度計算部11eによってCl波長の発光強度に加えてO波長の発光強度が計算されたりする。
また、この場合には、Na,Clの発光強度とOの発光強度との比が、予め定められた「〈Na,Clの発光強度とOの発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係」(即ち、塩分付着密度を求める検量線である)に当てはめられることにより、計測対象のがいし類についての塩分付着密度(単位:mg/cm2)が特定される。この場合の検量線はNa,Clの各種発光波長とOの各種発光波長との組み合わせ別に設定される。
したがって、塩分付着密度を求める検量線の設定のため、塩分付着密度が既知である汚損物が表面に付着している複数の試験片のそれぞれについて上述の処理と同様にレーザー光の照射が行われてNa,Clの発光強度とOの発光強度とが計算されると共にNa,Clの発光強度とOの発光強度との比が算出され、これにより、〈塩分付着密度(既知)〉と〈Na,Clの発光強度とOの発光強度との比〉との組み合わせデータが複数組整備される。
そして、この複数の組み合わせデータに基づいて〈Na,Clの発光強度とOの発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係が推定され(例えば、折線・曲線グラフや近似関数として推定される)、当該推定された関係が塩分付着密度を求める検量線として設定される。なお、検量線は連続的な増加傾向を示すものになる。
また、この場合には、例えば、図2に示すがいし類の汚損の計測装置10(がいし類の汚損の計測プログラム17を含む)における制御部11の、第一の密度特定部11bによって〈Na高波長の発光強度とO波長の発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係として推定された塩分付着密度を求める検量線が用いられて塩分付着密度が特定されたり、第二の密度特定部11dによって〈Na低波長の発光強度とO波長の発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係として推定された塩分付着密度を求める検量線が用いられて塩分付着密度が特定されたり、或いは、第三の密度特定部11fによって〈Cl波長の発光強度とO波長の発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係として推定された塩分付着密度を求める検量線が用いられて塩分付着密度が特定されたりする。
なお、Clの発光強度とOの発光強度との比が用いられる場合には、具体的には例えば、図1に示す実施形態におけるS3の処理においてClの発光強度のみが用いられる代わりにClの発光強度とOの発光強度との比が用いられる(即ち、〈Clの発光強度とOの発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係として推定された、塩分付着密度を求める検量線が用いられる)ようにしたり、図4に示す実施形態におけるS5の処理においてClの発光強度のみが用いられる代わりにClの発光強度とOの発光強度との比が用いられる(即ち、〈Clの発光強度とOの発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係として推定された、塩分付着密度を求める検量線が用いられる)ようにしたりしても良い。
発明者が見出した知見によれば、また、大気中に存在する窒素「N」の発光強度も、レーザー照射条件が同じであれば塩分付着密度に対してほぼ一定であるため、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いたNaやClの発光波長を利用する計測における基準元素になり得る。この場合に用いられるNの発光波長は、特定の波長に限定されるものではなく、Nに係るものであれば何れの波長であっても構わない。
発明者が見出した知見によれば、さらに、計測対象であるがいしの母材や表面釉薬に含有されている元素の発光強度も、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いたNaやClの発光波長を利用する計測における基準元素になり得る。具体的には例えば、磁器製がいし類の磁器母材には珪素「Si」,アルミニウム「Al」,鉄「Fe」,チタン「Ti」,カルシウム「Ca」,マグネシウム「Mg」,及びカリウム「K」が含まれている場合があり、また、がいしの表面釉薬にはSi,Al,Fe,Ti,Ca,Mg,K,及びジルコニウム「Zr」が含まれている場合があり、これら元素の発光強度がNaやClとの発光強度比の基準として用いられるようにしても良い。特に、Si及びKの発光波長はNaやClの発光波長と近く、基準元素として好ましい。
また、上述の実施形態ではNa高波長(発光波長:818.33 nm,819.48 nm),Na低波長(発光波長:589.00 nm,589.59 nm),及びCl波長(発光波長:837.59 nm)の全てのそれぞれについて発光スペクトルを利用した塩分付着密度が特定されるようにしている。ここで、発明者が見出した知見によれば、塩分付着密度が低い場合にNa低波長の発光強度は高感度であり、また、塩分付着密度が高い場合にCl波長の発光強度は高感度である。したがって、Na高波長の発光スペクトルを利用して特定された塩分付着密度が中程度である場合には、Na低波長やCl波長の発光スペクトルを利用する計測が行われることなく、Na高波長の発光スペクトルを利用する計測のみによって塩分付着密度が決定されるようにしても良い。
さらに言えば、Cl波長(発光波長:837.59 nm)の発光スペクトルを利用する計測のみによって塩分付着密度が決定されるようにしても良い。あるいは、Clの発光強度とOの発光強度との比のみが用いられて(即ち、〈Clの発光強度とOの発光強度との比〉と〈塩分付着密度〉との間の関係として推定された、塩分付着密度を求める検量線のみが用いられて)塩分付着密度が決定されるようにしても良い。
また、図4に示すように、Na高波長の発光スペクトルを利用(S1)して特定された塩分付着密度が低密度である場合(S2:Yes)にはNa低波長の発光スペクトルを利用する計測(S3)が更に行われた上で最終的な塩分付着密度が決定され(S6)、一方、Na高波長の発光スペクトルを利用(S1)して特定された塩分付着密度が高密度である場合(S2:No 且つ S4:Yes)にはCl波長の発光スペクトルを利用する計測(S5)が更に行われた上で最終的な塩分付着密度が決定される(S6)ようにしても良い。なお、図4に示す例では、Na高波長の発光スペクトルを利用(S1)して特定された塩分付着密度が低密度でも高密度でもない場合(S2:No 且つ S4:No)、言い換えると塩分付着密度が中程度である場合にはNa高波長の発光スペクトルを利用する計測のみによって塩分付着密度が決定される(S6)。
さらに言えば、図4におけるS1,S2,S3,及びS6のみが行われるようにしても良く(尚、この場合には、S2の処理において「No」のときはそのままS6の処理へと進む)、或いは、同図におけるS1,S4,S5,及びS6のみが行われるようにしても良い(尚、この場合には、S1の処理の次にS4の処理へと進む)。
なお、上記の場合に、塩分付着密度が低密度であるか否かを判定する基準としての密度の閾値(「低密度閾値」と呼ぶ)は、特定の値に限定されるものではなく、例えば検量線を設定するための計測や検量線の設定結果等が踏まえられるなどした上で、適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、低密度閾値は、0.05〜0.3 mg/cm2 程度の範囲で適当な値に適宜設定され得る。そして、Na高波長の発光スペクトルを利用(S1)して特定された塩分付着密度が低密度閾値未満であるとき、塩分付着密度が低密度であると判定される(即ち、S2:Yes)。
上記の場合に、また、塩分付着密度が高密度であるか否かを判定する基準としての密度の閾値(「高密度閾値」と呼ぶ)は、特定の値に限定されるものではなく、例えば検量線を設定するための計測や検量線の設定結果等が踏まえられるなどした上で、適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、高密度閾値は、0.3〜0.5 mg/cm2 程度の範囲で適当な値に適宜設定され得る。そして、Na高波長の発光スペクトルを利用(S1)して特定された塩分付着密度が高密度閾値より大きいとき、塩分付着密度が高密度であると判定される(即ち、S4:Yes)。
以上のように構成されたがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによれば、パルスレーザー光を用いるようにしているので、がいし類の付着物質の、遠隔・非接触での計測が行われ得る。これにより、計測を行う作業者が充電部に触れることなく、がいし類に付着した汚損物の情報が得られる。このため、測定器を充電部から十分に離して計測することができるので、充電線路のがいし類を安全に計測することが可能であり、したがって安定供給に貢献することが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
以上のように構成されたがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによれば、また、レーザー光は小さな領域に集光することが可能であるため、がいし類の表面の付着物質分布を高い空間分解能で計測することができるので、塩分付着分布の偏りによる局所的な導電路の形成等をも検出することが可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての信頼性の向上が可能になる。
以上のように構成されたがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムによれば、また、塩分の主たる構成元素であるナトリウム「Na」,塩素「Cl」のみならず他の種々の元素を計測対象とすることができるので、塩分付着密度と等価塩分付着密度とに寄与する多元素の同定が可能になり、延いては、がいし類の監視手法としての有用性の向上が可能になる。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
すなわち、本発明の要点は、少なくともNa高波長(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)の発光スペクトルを利用してがいし類表面の塩分付着密度の計測を行うことであり、必要に応じ、Na低波長(発光波長:589.00 nm,589.59 nm)の発光スペクトルを利用するがいし類表面の塩分付着密度の計測を組み合わせたり、Cl波長(発光波長:837.59 nm)の発光スペクトルを利用するがいし類表面の塩分付着密度の計測を組み合わせたりするようにしても良いことである。したがって、この要点に係る計測を行うことができるのであれば、その他の構成や具体的な機序は特定のものには限定されない。
例えば、上述の実施形態では図3に示す態様によって計測対象のがいし類20へのレーザー光の照射が行われるようにしているが、本発明において用いられ得るレーザー光の照射の態様は図3に示すものに限られるものではなく、レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いた計測が可能なものであれば種々のものが用いられ得る。具体的には例えば、上述の実施形態ではパルス幅が10 ns のQスイッチNd:YAGレーザーの第二高調波(波長:532 nm)が用いられるようにしているが、基本波(波長:1064 nm)が用いられるようにしても良い。また、CO2レーザーが用いられるようにしたり、パルス波幅がフェムト秒からピコ秒の範囲であるTi:Al23レーザー,Nd:YAGレーザー,或いはYb:YAGレーザーなどが用いられるようにしたりしても良い。
塩分付着密度の計測手法としての本発明の妥当性を検証するための、計測対象物(即ち、がいし類)へのレーザー光の照射によるプラズマ光の発光強度についての分析の実施例を図5乃至図13を用いて説明する。
本実施例では、磁器製のがいし類を模擬するために一般的な磁器製のがいし類と同様の材質及び焼成方法によって作成された直径68 mm の円盤状の磁器製の試験片(「磁器がいしサンプル」と呼ぶ)に汚損物を付着させた上で、Nd:YAGレーザーの第二高調波を用いたレーザー誘起ブレイクダウン分光を用いた計測が行われた。
磁器がいしサンプル表面への汚損物の付着は、磁器がいし類の人工汚損試験(例えば、電気学会電気規格調査会「交流電圧絶縁試験」,JEC−0201,1988年)において用いられる手法の一つであるどぶ漬け法(例えば、電気学会編「がいし」,1983年)によって行われた。このとき、可溶性物質には並塩が用いられ、不溶性物質にはとの粉が用いられた。並塩は95%以上がNaClである。また、汚損液の濃度は、精製水1 L に対して0.1〜10.0 g の並塩が投入されることによって調整された。との粉の投入量は、精製水1 L に対して1 g とされた。
レーザー誘起ブレイクダウン分光を用いた計測に先立ち、磁器がいしサンプルの汚損物付着密度が筆洗い法(下田修ほか「がいし付着塩分の組成とせん絡電圧の関係」,技術第一研究所報告,研究報告71026,1971年)によって計測された。5種類の汚損液の塩分濃度と塩分付着密度との間の関係として表1に示す結果が得られた。表中の値は同一条件で汚損した20個の磁器がいしサンプルの平均値である。
Figure 2017198593
表1に示す結果から、塩分付着密度(SDD)は、汚損液の塩分濃度の増加に対して線形に増加していることが確認された。
そして、塩分付着密度が0.008,0.026,0.054,0.248,及び0.515 mg/cm2 の各磁器がいしサンプルに対し、レーザーエネルギーが10 mJ,15 mJ,及び25 mJ のときの、Na I(発光波長:589.00 nm,589.59 nm,818.33 nm,819.48 nm),Cl I(発光波長:837.59 nm),及びO I(発光波長:777.19 nm,844.64 nm)の発光強度が測定された。なお、分光器について、刻線数は300 Gr/mm,入射スリット幅は10 μm とされた。
各発光線の発光強度は以下の手順によって求められた。
(1) 各発光スペクトルの生データから、レーザー照射なしで計測したバックグラウンドスペクトルを差し引く。
(2) 各スペクトルに対して5点移動平均を行う。
(3) 各発光スペクトルの裾と考えられる波長を結ぶ直線を各発光スペクトルのベースラインとし、ベースラインから発光ピークまでの強度を発光強度とする。
(4) 同じ条件で取得した3回のデータに対し、発光強度の平均値及び標準偏差を求める。
《塩分に由来するNaの発光線及びOの発光線の特性》
まず、各レーザーエネルギーに対する、NaのD1線(発光波長:589.59 nm)及びD2線(発光波長:589.00 nm)の発光強度の塩分付着密度依存性が測定された。なお、検出器としてのICCDカメラについて、ゲート幅:20 ns,ゲート遅延時間:2 μs,及びゲイン:1とされた。
レーザーエネルギーが10 mJ である場合について、塩分付着密度が0.008 mg/cm2 のときの発光スペクトルとして図5Aに示す結果が得られ、また、塩分付着密度が0.248 mg/cm2 のときの発光スペクトルとして図5Bに示す結果が得られた。
図5Aに示す結果から、塩分付着密度が0.008 mg/cm2 のときはD1線,D2線共に急峻なピークを示していることが観測された。一方で、図5Bに示す結果から、塩分付着密度が0.248 mg/cm2 になるとスペクトルの半値幅が大きくなってD1線,D2線共に発光の自己吸収が生じていることが観測された。
また、レーザーエネルギーを変化させたときの、0.054 mg/cm2 までの各塩分付着密度に対するNaのD2線の発光強度が測定された。そして、レーザーエネルギー別の、塩分付着密度(SDD)の変化に対するNaのD2線の発光スペクトルの強度変化として図6に示す結果が得られた。図6中には、参考のため、塩分及びとの粉が付着していない磁器がいしサンプルに関する測定値が塩分付着密度が0(ゼロ)の位置に示されている。なお、今回使用した磁器がいしサンプルには、母材や表面釉薬にNaが含有されているため、塩分付着の無いサンプルでもD2線の発光が観測されている。
図6に示す結果から、全てのレーザーエネルギーにおいて、D2線の発光強度は塩分付着密度の増加に対して線形に増加していることが確認された。
これらのことから、塩分付着密度の変化に応じてNa低波長(589.00 nm,589.59 nm)の発光強度が変化することが確認され、したがってNa低波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を作成すると共にNa低波長の発光強度を計測・計算することによって塩分付着密度を特定することが可能であることが確認された。また、Na低波長の発光強度は塩分付着密度が低い場合も高感度であることが確認された。
次に、各レーザーエネルギーに対する、Na(発光波長:818.33 nm 及び 819.48 nm)並びにO(発光波長:777.19 nm)の発光強度の塩分付着密度依存性が測定された。なお、検出器としてのICCDカメラについて、ゲート幅:20 ns,ゲート遅延時間:2 μm,及びゲイン:1とされた。また、Naの発光線(即ち、分析線の波長)とOの発光線との差は大凡41〜42 nm 程度であり、この程度の波長帯域であれば、従来の一般的な分光器を用いた一回の計測で同時に取得され得る。
レーザーエネルギーが10 mJ である場合について、塩分付着密度が0.008 mg/cm2 のときの発光スペクトルとして図7Aに示す結果が得られ、また、塩分付着密度が0.515 mg/cm2 のときの発光スペクトルとして図7Bに示す結果が得られた。
図7Aに示す結果から、塩分付着密度が0.008 mg/cm2 においてもNa(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)の発光線が明瞭に観測された。一方で、図7Bに示す結果から、塩分付着密度が0.515 mg/cm2 においては、発光線幅の広さから発光の自己吸収が生じていると考えられる。
レーザーエネルギーが10 mJ である場合と15 mJ である場合とについて、0.515 mg/cm2 までの各塩分付着密度に対するNa(発光波長:819.48 nm)の発光強度が測定された。そして、レーザーエネルギー別の、塩分付着密度(SDD)の変化に対するNa(発光波長:819.48 nm)の発光スペクトルの強度変化として図8に示す結果が得られた。
図8に示す結果から、レーザーエネルギーが10 mJ である場合も15 mJ である場合も共に、Na(発光波長:819.48 nm)の発光強度は塩分付着密度の増加に対して単調増加していることが確認された。
これらのことから、塩分付着密度の変化に応じてNa高波長(発光波長:818.33 nm,819.48 nm)の発光強度が変化することが確認され、したがってNa高波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を作成すると共にNa高波長の発光強度を計測・計算することによって塩分付着密度を特定することが可能であることが確認された。
また、レーザーエネルギーが10 mJ である場合と15 mJ である場合とについて、0.054 mg/cm2 までの各塩分付着密度に対するO(発光波長:777.19 nm)の発光強度が測定された。そして、レーザーエネルギー別の、塩分付着密度(SDD)の変化に対するO(発光波長:777.19 nm)の発光スペクトルの強度変化として図9に示す結果が得られた。
図9に示す結果から、塩分付着密度が0.026〜0.054 mg/cm2 の範囲では、塩分付着密度の増加に対してOの発光強度は若干増加する傾向にあることが観測された。これは、塩分の付着により、プラズマが生成するレーザーエネルギーの閾値が変化するためであると考えられた。一方、塩分付着密度が0.054 mg/cm2 〜の範囲では、Oの発光強度は塩分付着密度の変化に対してほぼ一定であることが観測された。これは、Oは主に大気由来の元素であると共に、塩分の付着密度が或る一定以上になると、プラズマが生成するレーザーエネルギーの閾値の変化が小さくなるためであると考えられた。
《塩分に由来するClの発光線及びOの発光線の特性》
各レーザーエネルギーに対する、Cl(発光波長:837.59 nm)及びO(発光波長:844.64 nm)の発光強度の塩分付着密度依存性が測定された。なお、検出器としてのICCDカメラについて、ゲート幅:0.5 μs,ゲート遅延時間:1 μs,及びゲイン:1とされた。上述のNaに対してClの発光強度は低いため、Naの発光計測と比較してゲート幅を大きくした。Clの発光線(即ち、分析線の波長)とOの発光線との差は約7 nm であり、この程度の波長帯域であれば、従来の一般的な分光器を用いた一回の計測で同時に取得され得る。
レーザーエネルギーが10 mJ 及び15 mJ である場合は、塩分付着密度が0.008 mg/cm2 のときにはClの発光は明確には観測されず、0.026 mg/cm2 以上の塩分付着密度において観測された。レーザーエネルギーが25 mJ である場合は、0.008 mg/cm2 の塩分付着密度においてもClの発光は観測された。
計測結果の一例として、レーザーエネルギーが10 mJ である場合について、塩分付着密度が0.026 mg/cm2 のときの発光スペクトルとして図10Aに示す結果が得られ、また、塩分付着密度が0.515 mg/cm2 のときの発光スペクトルとして図10Bに示す結果が得られた。
また、レーザーエネルギー別の、塩分付着密度(SDD)の変化に対するCl(発光波長:837.59 nm)の発光スペクトルの強度変化として図11に示す結果が得られた。
図11に示す結果から、全てのレーザーエネルギーにおいて、Cl(発光波長:837.59 nm)の発光強度は塩分付着密度の増加に対して単調に増加していることが観測された。
これらのことから、塩分付着密度の変化に応じてCl波長(837.59 nm)の発光強度が変化することが確認され、したがってCl波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を作成すると共にCl波長の発光強度を計測・計算することによって塩分付着密度を特定することが可能であることが確認された。また、Cl波長の発光強度は塩分付着密度が高い場合も、SDDに対する増加率(傾き)が大きく、高精度な計測が可能であることが確認された。
また、レーザーエネルギー別に、0.515 mg/cm2 までの各塩分付着密度に対するO(発光波長:844.64 nm)の発光強度が測定された。そして、レーザーエネルギー別の、塩分付着密度(SDD)の変化に対するO(発光波長:844.64 nm)の発光スペクトルの強度変化として図12に示す結果が得られた。
図12に示す結果から、Oの発光強度は塩分付着密度の変化に対してほぼ一定であることが観測された。
《発光強度比の塩分付着密度依存性》
各レーザーエネルギーに対する、O(発光波長:844.64 nm)の発光強度に対するCl(発光波長:837.59 nm)の発光強度の比の塩分付着密度依存性が測定された。
具体的には、レーザーエネルギー別に、0.515 mg/cm2 までの各塩分付着密度に対するO(発光波長:844.64 nm)及びCl(発光波長:837.59 nm)の発光強度が測定された。そして、レーザーエネルギー別の、塩分付着密度(SDD)の変化に対する、O(発光波長:844.64 nm)の発光スペクトルの強度に対するCl(発光波長:837.59 nm)の発光スペクトルの強度の比の変化として図13に示す結果が得られた。
図13に示す結果から、図11に示すCl(発光波長:837.59 nm)の発光強度の変化と比較し、何れの塩分付着密度においても、レーザーエネルギーの変化に対する発光強度の比の変化は十分に小さいことが観測された。
このことから、O(発光波長:844.64 nm)の発光強度に対するCl(発光波長:837.59 nm)の発光強度の比を用いることにより、レーザー照射条件の影響を抑制することが可能であり(言い換えると、レーザー照射条件の変動に強く)、且つ、塩分付着密度について低密度から高密度までの広い範囲で適用が可能である検量線を設定することが可能であることが確認された。
さらに、以上のことから、O(発光波長:777.19 nm)の発光強度に対するNa(発光波長:819.48 nm)の発光強度の比を用いることにより、レーザー照射条件の影響を抑制することが可能であり(言い換えると、レーザー照射条件の変動に強く)、且つ、塩分付着密度について低密度から高密度までの広い範囲で適用が可能である検量線を設定することが可能であることが推認された。
本発明のがいし類の汚損の計測方法、計測装置、及び計測プログラムは、例えば送電設備,変電設備,配電設備,或いはき電設備などに備えられるがいし類における塩分付着密度の定量的な計測を精度良く行うことができるので、あくまで一例として挙げると、懸垂がいし,長幹がいし,相間スペーサ,避雷器,がい管,ブッシング,中実SPがいし,及び配電用がいしなどにおいて利用価値が高い。
10 がいし類の汚損の計測装置
17 がいし類の汚損の計測プログラム

Claims (15)

  1. がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方が計算され、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められることを特徴とするがいし類の汚損の計測方法。
  2. さらに、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方が計算され、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められることを特徴とする請求項1記載のがいし類の汚損の計測方法。
  3. さらに、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられて発光波長が837.59 nm のClの発光強度が計算され、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められることを特徴とする請求項1または2記載のがいし類の汚損の計測方法。
  4. さらに、前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度が計算され、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められることを特徴とする請求項1または2記載のがいし類の汚損の計測方法。
  5. がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルが用いられてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度が計算され、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線が用いられて前記がいし類の塩分付着密度が求められることを特徴とするがいし類の汚損の計測方法。
  6. がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを有することを特徴とするがいし類の汚損の計測装置。
  7. 前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを更に有することを特徴とする請求項6記載のがいし類の汚損の計測装置。
  8. 前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が837.59 nm のClの発光強度を計算する手段と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを更に有することを特徴とする請求項6または7記載のがいし類の汚損の計測装置。
  9. 前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する手段と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを更に有することを特徴とする請求項6または7記載のがいし類の汚損の計測装置。
  10. がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する手段と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める手段とを有することを特徴とするがいし類の汚損の計測装置。
  11. がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が818.33 nm のNaの発光強度と819.48 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する処理と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とをコンピュータに行わせることを特徴とするがいし類の汚損の計測プログラム。
  12. 前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が589.00 nm のNaの発光強度と589.59 nm のNaの発光強度とのうちの少なくとも一方を計算する処理と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とを更にコンピュータに行わせることを特徴とする請求項11記載のがいし類の汚損の計測プログラム。
  13. 前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いて発光波長が837.59 nm のClの発光強度を計算する処理と、前記発光波長の発光強度と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とを更にコンピュータに行わせることを特徴とする請求項11または12記載のがいし類の汚損の計測プログラム。
  14. 前記がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する処理と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とを更にコンピュータに行わせることを特徴とする請求項11または12記載のがいし類の汚損の計測プログラム。
  15. がいし類の表面にパルスレーザー光が照射されて受光される発光スペクトルを用いてClの発光強度(発光波長:837.59 nm)及びOの発光強度を計算する処理と、前記Oの発光強度に対する前記Clの発光強度の比と塩分付着密度との検量線を用いて前記がいし類の塩分付着密度を求める処理とをコンピュータに行わせることを特徴とするがいし類の汚損の計測プログラム。
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