図1は、本発明が適用されるハイブリッド式ショベルを示す側面図である。
ハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
図2は、本発明の実施例に係るハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示されている。
機械式駆動部としてのエンジン11と、発電も行うアシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等の油圧アクチュエータは、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続されている。
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続されている。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続されている。
インバータ20、旋回用電動機21、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24で負荷駆動系が構成される。
ここで、旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転が可能な電動機であり、例えば、永久磁石がロータ内部に埋め込まれるIPM(Interior Permanent Magnetic)モータである。旋回用電動機21は、力行運転を行なう場合には、上部旋回体3を旋回駆動するための電動アクチュエータとして機能する。また、旋回用電動機21は、回生運転を行なう場合には、上部旋回体3の旋回に対する旋回制動力を発生させる電動発電機(ブレーキ)として機能する。
メカニカルブレーキ23は、上部旋回体3の旋回に対する旋回制動力を発生させるブレーキの一例であり、上部旋回体3に機械的にブレーキをかけておくパーキングブレーキとして機能する。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続されている。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
図3は蓄電系120の構成を示すブロック図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータ100とDCバス110とを含む。第2の蓄電器としてのDCバス110は、第1の蓄電器としてのキャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値及びキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。また、上述では、蓄電器の例としてキャパシタ19を示したが、キャパシタ19の代わりにリチウムイオン電池等の充電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18及び20のそれぞれと昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
図2に戻り、コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としてのコントローラである。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUが実行することにより実現される装置である。
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動アシスト運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動アシスト運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切り替え制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。また、コントローラ30は、後述のようにキャパシタに充電する量(充電電流又は充電電力)の制御も行なう。
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切り替え制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。また、旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
旋回用電動機21の回転速度(角速度ω)はレゾルバ22により検出される。コントローラ30は、旋回用電動機21の角速度ωに基づいて推定旋回回生電力(エネルギ)を演算で求める。そして、コントローラ30は、演算で求めた推定旋回回生電力に基づいて、キャパシタ19のSOC(State Of Charge)の回生見込み目標値を演算により求める。コントローラ30は、キャパシタ19のSOCを、求めた回生見込み目標値に近づけるようにハイブリッド式ショベルの各部を制御する。
上述のような構成のハイブリッド式ショベルによる作業では、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させるといった複合操作が行われる場合がある。このとき、コントローラ30は、油圧旋回ショベルの動きを再現した態様で、電動旋回ショベルであるハイブリッド式ショベルを動作させることができる。
ここで、図4を参照しながら、複合操作が行われる場合における、油圧旋回ショベルの動きと電動旋回ショベルの動きの違いを説明する。なお、図4は、油圧旋回ショベルに搭載される油圧回路と電動旋回ショベルに搭載される油圧回路とを比較するための図であり、左側が油圧旋回ショベルの油圧回路を示し、右側が電動旋回ショベルの油圧回路を示す。
図4に示すように、双方の油圧回路は何れも2つのメインポンプ14a、14bを有する。また、双方の油圧回路は、ブーム4を上昇させる操作が行われると、合流切換弁を開いて第1メインポンプ14aが吐出する作動油を第2メインポンプ14bが吐出する作動油に合流させ、合流後の作動油をブームシリンダ7のボトム側油室7bに流入させる。このように、双方の油圧回路は、ブーム4を上昇させる際には共通の作動油の流れを生じさせる。
しかしながら、旋回機構2を旋回させる場合には、それぞれの油圧回路が異なる作動油の流れを生じさせる。具体的には、図4に示すように、旋回機構2を旋回させる操作が行われると、油圧旋回ショベルの油圧回路は、油圧モータ用流量制御弁を通じて、第1メインポンプ14aが吐出する作動油を旋回用油圧モータに供給する。また、旋回機構2を旋回させる操作とブーム4を上昇させる操作が同時に行われると、油圧旋回ショベルの油圧回路は、第1メインポンプ14aが吐出する作動油の一部分を旋回用油圧モータに供給し、他の部分をブームシリンダ7に供給する。
一方、旋回機構2を旋回させる操作が行われた場合であっても、電動旋回ショベルの油圧回路は、旋回用電動機21によって旋回機構2が旋回駆動されるため、旋回機構2を旋回させるために作動油を用いることはない。また、旋回機構2を旋回させる操作とブーム4を上昇させる操作が同時に行われた場合であっても、電動旋回ショベルの油圧回路は、旋回機構2を旋回させることなくブーム4を上昇させる際の作動油の流れと同じ作動油の流れを生じさせる。
そのため、旋回機構2を旋回させる操作とブーム4を上昇させる操作が同時に行われた場合には、油圧旋回ショベルの動きと電動旋回ショベルの動きの間に違いが生じる。具体的には、油圧旋回ショベルでは、第1メインポンプ14aが吐出する作動油の一部が旋回機構2を旋回させるために利用される分、ブームシリンダ7に流入する作動油の量が減少するため、電動旋回ショベルに比べてブーム4の動きが遅くなる。言い換えれば、電動旋回ショベルにおけるブーム4の動きが、油圧旋回ショベルにおけるブーム4の動きよりも速くなる。その結果、油圧旋回ショベルの操作に慣れた操作者は、電動旋回ショベルを操作する際に違和感を抱く。コントローラ30は、油圧旋回ショベルの操作に慣れた操作者が抱くこの違和感を緩和し或いは解消させるようにする。
ここで、図5及び図6を参照しながら、旋回機構2とブーム4の複合操作の際に、電動旋回ショベルとしてのハイブリッド式ショベルを油圧旋回ショベルのように動作させるための仕組み(以下、「第1仮想油圧旋回システム」とする。)について説明する。なお、図5は、2つのメインポンプ14L、14Rを備えた電動旋回ショベルに搭載される第1仮想油圧旋回システムの構成を示す図であり、図6は、第1仮想油圧旋回システムを動作させるためのコントローラ30における制御の流れを示すブロック図である。
図5に示すように、本実施例では、メインポンプ14は、右側ポンプ14R及び左側ポンプ14Lで構成される。なお、右側ポンプ14Rは、図4の電動旋回ショベルにおける第1メインポンプ14aに相当し、左側ポンプ14Lは、図4の電動旋回ショベルにおける第2メインポンプ14bに相当する。
また、右側ポンプ14R及び左側ポンプ14Lは、それぞれ、右側レギュレータ50R、左側レギュレータ50Lによって吐出量及び吐出圧が制御される。以下は、右側レギュレータ50Rの説明であるが、左側レギュレータ50Lについても同様の説明が適用される。
右側レギュレータ50Rは、右側ネガコン用レギュレータ51R及び右側馬力制御用レギュレータ52Rを含む。なお、「ネガコン」は、ネガティブコントロール制御を表す。
右側ネガコン用レギュレータ51Rは、圧力室51Raを有し、圧力室51Raで受ける制御圧(以下、「第一制御圧」とする。)に応じて右側ポンプ14Rの吐出量を変化させるように動作する。
圧力室51Raは、右側センターバイパス管路60Rの最下流に配置される右側絞り61Rの上流側で生成される圧力(以下、「ネガコン圧」とする。)、及び、比例弁53を通じて導入される圧力(以下、「第1導入圧」とする。)のうちの大きい方を第1制御圧として受ける。
右側馬力制御用レギュレータ52Rは、3つの圧力室52Ra、52Rb、52Rcを有し、それら3つの圧力室52Ra、52Rb、52Rcのそれぞれで受ける制御圧の合計値(以下、「第2制御圧」とする。)に応じて右側ポンプ14Rの吐出量を変化させるように動作する。
圧力室52Raは、右側ポンプ14Rの吐出圧(以下、「右側ポンプ吐出圧」とする。)を制御圧として受け、圧力室52Rbは、左側ポンプ14Lの吐出圧(以下、「左側ポンプ吐出圧」とする。)を制御圧として受け、圧力室52Rcは、馬力制御用比例弁54を通じて導入される圧力(以下、「第2導入圧」とする。)を制御圧として受ける。
右側レギュレータ50Rは、第1制御圧により発生する推力(圧力×受圧面積)に応じて動く第1ピストン51Rpのストロークと、圧力室52Ra、52Rb、52Rcのそれぞれで受ける制御圧により発生する推力の合計値に応じて動く第2ピストン52Rpのストロークとのうち大きい方のストロークに応じて右側ポンプ14Rの吐出量を変化させる。具体的には右側レギュレータ50Rは、最終的なストロークが小さいほど、右側ポンプ14Rの吐出量を増大させる。
比例弁53は、左側ポンプ14Lの吐出量に影響を与えることなく、右側ポンプ14Rの吐出量を調整するための弁である。具体的には、比例弁53は、例えば、コントローラ30からの電流指令に応じて、パイロットポンプ15が吐出する作動油の、右側ネガコン用レギュレータ51Rの圧力室51Raへの流入を制御して第1導入圧を調整する。
馬力制御用比例弁54は、メインポンプ14のポンプ馬力を調整するための弁である。具体的には、馬力制御用比例弁54は、メインポンプ14のポンプ馬力を調整するために、右側ポンプ14R及び左側ポンプ14Lのそれぞれの吐出量を調整する。馬力制御用比例弁54は、例えば、コントローラ30からの電流指令に応じて、パイロットポンプ15が吐出する作動油の、右側馬力制御用レギュレータ52Rの圧力室52Rcへの流入、及び、左側馬力制御用レギュレータ52Lの圧力室52Lcへの流入を制御する。そして、馬力制御用比例弁54は、圧力室52Rc及び圧力室52Lcのそれぞれにおける制御圧としての第2導入圧を調整する。
このように、比例弁53の第1導入圧は、右側ポンプ14Rの吐出量のみに影響するのに対し、馬力制御用比例弁54の第2導入圧は、右側ポンプ14R及び左側ポンプ14Lのそれぞれの吐出量に影響する。そのため、コントローラ30は、右側ポンプ14Rの吐出量のみを調整する場合には、比例弁53に対する電流指令を調整する。
ここで再び図5を参照する。右側センターバイパス管路60R上には、右側ポンプ14Rが吐出する作動油を各種油圧アクチュエータに供給するための右側流量制御弁17Ra、17Rb、17Rcが配置されている。また、左側センターバイパス管路60L上には、左側ポンプ14Lが吐出する作動油を各種油圧アクチュエータに供給するための左側流量制御弁17La、17Lb、17Lcが配置されている。また、ブームシリンダ7は、流量制御弁17Lbに接続されている。さらに、右側ポンプ14Rとブームシリンダ7との間は管路62によって流体的に連通可能とされ、管路62上には合流切換弁63が配置されている。
合流切換弁63は、複合操作が行われた場合に所定の油圧アクチュエータに流入する作動油の量を増大させるための弁である。本実施例では、合流切換弁63は、コントローラ30からの制御指令に応じて管路62を連通させ、右側ポンプ14Rが吐出する作動油を左側ポンプ14Lが吐出する作動油に合流させ、合流後の作動油をブームシリンダ7のボトム側油室に流入させる。
具体的には、図6に示すように、コントローラ30は、右ポンプ流量算出部301において、右ポンプ14Rの回転速度、吐出圧、及びネガコン圧と、左ポンプ14Lの吐出圧と、ポンプ馬力制御指令とに基づいて、右ポンプ14Rが吐出すべき作動油の量(以下、「第1目標流量」とする。)を算出する。
具体的には、右ポンプ流量算出部301は、ネガコン圧に基づいて右ポンプ14Rのネガコン制御吐出流量を算出する。一方で、右ポンプ流量算出部301は、右ポンプ14Rの吐出圧と、左ポンプ14Lの吐出圧と、ポンプ馬力制御指令とに基づいて馬力制御吐出流量を算出する。その上で、右ポンプ流量算出部301は、ネガコン制御吐出流量及び馬力制御吐出流量のうちの小さい方を第1目標流量とする。
なお、ポンプ馬力制御指令は、メインポンプ14のポンプ馬力を調整するための指令であり、例えば、図示しない動作モード切換スイッチによって「高」、「標準」、「低」の3段階で切り換えられる。
また、コントローラ30は、油圧旋回相当流量算出部300において、上部旋回体3の旋回速度に基づいて油圧旋回相当流量を算出する。
「油圧旋回相当流量」とは、本実施例の電動旋回ショベルが仮に油圧旋回ショベルであった場合に、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる操作が行われたときに、旋回用電動機21による旋回と同じように上部旋回体3を旋回させるために旋回用油圧モータに供給される作動油の量を表す。なお、油圧旋回相当流量と旋回速度との対応関係は、旋回速度が大きいほど油圧旋回相当流量が大きくなるように、予め算出式として登録され、或いは、参照マップ等に登録される。
その後、コントローラ30は、減算器において、第1目標流量から油圧旋回相当流量を減算して、第2目標流量を算出する。
その後、コントローラ30は、フィルタ部302において、第2目標流量を所定範囲内の値に制限して第3目標流量を算出する。例えば、フィルタ部302は、第2目標流量が所定の最小流量未満の場合には、その所定の最小流量を第3目標流量として出力する。すなわち、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回速度にかかわらず、右ポンプ14Rの吐出量が所定レベルに維持されるようにする。油圧アクチュエータを駆動せずに上部旋回体3を旋回させる場合に、或いは、油圧アクチュエータをゆっくりと駆動しながら上部旋回体3を旋回させる場合に、右ポンプ14Rの吐出量が過度に低減されてしまうのを防止するためである。
その後、コントローラ30は、比例弁電流指令生成部303において、比例弁53に対して出力するための電流指令を第3目標流量に基づいて生成する。
なお、コントローラ30は、比例弁53に対する電流指令の生成とは別に、馬力制御用比例弁電流指令生成部304において、馬力制御用比例弁54に対して出力するための電流指令をポンプ馬力制御指令に基づいて生成する。
以上の構成により、コントローラ30は、操作装置26の出力に基づいて、ブーム4を上昇させる操作が行われたことを検知すると、合流切換弁63に対して制御指令を出力し、管路62を連通させる。その結果、コントロール30は、右側ポンプ14Rが吐出する作動油と左側ポンプ14Lが吐出する作動油とを合流させてブームシリンダ7のボトム側油室に流入させる。
このとき、コントローラ30は、操作装置26の出力に基づいて、上部旋回体3を旋回させる操作が行われたことを検知すると、比例弁53に対して電流指令を出力し、右側ネガコン用レギュレータ51Rの圧力室51Raに第1導入圧を導入させる。その結果、コントロール30は、右側ポンプ14Rの吐出量を減少させる。
このようにして、第1仮想油圧旋回システムは、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる場合には、上部旋回体3を停止させたままブーム4を上昇させる場合に比べ、ブームシリンダ7のボトム側油室に流入する作動油の量を減少させ、旋回速度に応じてブーム4の動きを鈍化させることができる。
その結果、第1仮想油圧旋回システムは、電動旋回ショベル上で、油圧旋回ショベルの動きを正確に再現することができ、油圧旋回ショベルの操作に慣れた操作者が電動旋回ショベルを操作する際に抱く違和感を緩和し或いは解消させることができる。
また、第1仮想油圧旋回システムは、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる場合には、合流切換弁63を開いた上で、右側ポンプ14Rの吐出量を減少させることによって、ブームシリンダ7のボトム側油室に流入する作動油の量を減少させる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1仮想油圧旋回システムは、右側ポンプ14Rの吐出量を減少させることなく、流量制御弁としての合流切換弁63の開度を低下させることによって合流切換弁63を通る作動油の量を減少させ、ブームシリンダ7のボトム側油室に流入する作動油の量を減少させてもよい。この場合、合流切換弁63を通る作動油の量は、旋回用電動機の旋回速度が大きいほど少なくなるように調整される。
次に、図7を参照しながら、第1仮想油圧旋回システムを動作させるためのコントローラ30における制御の流れの別の1例について説明する。
図7は、ポジティブコントロール制御(以下、「ポジコン」とする。)が採用された場合における制御の流れを示し、ネガコンが採用された場合における制御の流れを示す図6のブロック図に対応する。また、図7のブロック図は、図6の「右ポンプネガコン圧」の代わりに、「レバー26Aの操作量」、「レバー26Bの操作量」、及び「ペダル26Cの操作量」を右ポンプ流量算出部301の入力として有する。なお、ポジコンが採用される場合には、レギュレータ51Rは、比例弁53を通じて導入される圧力のみに応じて右側ポンプ14Rの吐出量を変化させるように動作する。
図7に示す制御の流れでは、右ポンプ流量算出部301は、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cのそれぞれの操作量に基づいて右ポンプ14Rが各種油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を算出する。そして、右ポンプ流量算出部301は、それぞれの流量の合計値である、右ポンプ14Rのポジコン制御吐出流量を算出する。一方で、右ポンプ流量算出部301は、右ポンプ14Rの吐出圧と、左ポンプ14Lの吐出圧と、ポンプ馬力制御指令とに基づいて馬力制御吐出流量を算出する。その上で、右ポンプ流量算出部301は、ポジコン制御吐出流量及び馬力制御吐出流量のうちの小さい方を第1目標流量とする。以降の制御の流れは、図6に示す制御の流れと同じであるため、その説明を省略する。
このように、第1仮想油圧旋回システムにおいて、右ポンプ流量算出部301は、ネガコンが採用される場合ばかりでなく、ポジコンが採用される場合にも適切な第1目標流量を出力することができる。
次に、図8及び図9を参照しながら、旋回機構2とブーム4の複合操作の際に、電動旋回ショベルとしてのハイブリッド式ショベルを油圧旋回ショベルのように動作させるための仕組みの別の例(以下、「第2仮想油圧旋回システム」とする。)について説明する。なお、図8は、1つのメインポンプを備えた電動旋回ショベルに搭載される第2仮想油圧旋回システムの構成を示す図であり、図9は、第2仮想油圧旋回システムを動作させるためのコントローラ30における制御の流れを示すブロック図である。
図8に示す第2仮想油圧旋回システムは、メインポンプ14が1つの油圧ポンプで構成される点で、2つの油圧ポンプで構成される図5の第1仮想油圧旋回システムと相違する。そのため、図8に示す第2仮想油圧旋回システムは、図5に示す第1仮想油圧旋回システムの左側部分と、合流切換弁63とが省略されたような構成を有する。
また、ネガコン用レギュレータ51の圧力室51aには、センターバイパス管路60の最下流に配置される絞り61の上流側で生成されるネガコン圧が導入され、図5に示す第1仮想油圧旋回システムのようにコントローラ30によって制御される比例弁による圧力が導入されることはない。そのため、ネガコン用レギュレータ51は、圧力室51aで受けるネガコン圧に応じてメインポンプ14の吐出量を変化させるように動作する。
また、馬力制御用レギュレータ52は、1つの油圧ポンプ(メインポンプ14)の馬力を制御するのみであるため、メインポンプ14の吐出圧を制御圧として受ける圧力室52aと、馬力制御用比例弁55を通じて導入される圧力を制御圧として受ける圧力室52bとを有するのみである。そのため、馬力制御用レギュレータ52は、それら2つの圧力室52a、52bのそれぞれで受ける制御圧の合計値に応じてメインポンプ14の吐出量を変化させるように動作する。
レギュレータ50は、ネガコン圧により発生する推力(圧力×受圧面積)に応じて動く第1ピストン51pのストロークと、圧力室52a及び52bのそれぞれで出受ける制御圧により発生する推力の合計値に応じて動く第2ピストン52pのストロークとのうち大きい方のストロークに応じてメインポンプ14の吐出量を変化させる。具体的には、レギュレータ50は、最終的なストロークが小さいほど、メインポンプ14の吐出量を増大させる。
馬力制御用比例弁55は、メインポンプ14のポンプ馬力を調整するための弁である。具体的には、馬力制御用比例弁55は、メインポンプ14のポンプ馬力を調整するために、メインポンプ14の吐出量を調整する。より具体的には、馬力制御用比例弁55は、例えば、コントローラ30からの電流指令に応じて、パイロットポンプ15が吐出する作動油の、馬力制御用レギュレータ52の圧力室52bへの流入を制御する。圧力室52bの圧力を調整するためである。
このように、馬力制御用比例弁55の導入圧は、メインポンプ14の吐出量に影響する。そのため、コントローラ30は、メインポンプ14の吐出量を調整する場合には、馬力制御用比例弁55に対する電流指令を調整する。
ここで再び図8を参照する。センターバイパス管路60上には、メインポンプ14が吐出する作動油を各種油圧アクチュエータに供給するための流量制御弁17a、17b、17cが配置されている。また、ブームシリンダ7は、流量制御弁17bに接続されている。
上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる場合、メインポンプ14が吐出する作動油は、流量が調整された上で、流量制御弁17bを通じてブームシリンダ7のボトム側油室に流入する。
具体的には、図9に示すように、コントローラ30は、メインポンプ流量算出部301Aにおいて、メインポンプ14の回転速度、吐出圧、及びネガコン圧と、ポンプ馬力制御指令とに基づいて、メインポンプ14が吐出すべき作動油の第1目標流量を算出する。
また、コントローラ30は、油圧旋回相当流量算出部300において、上部旋回体3の旋回速度に基づいて油圧旋回相当流量を算出する。
その後、コントローラ30は、減算器において、第1目標流量から油圧旋回相当流量を減算して第2目標流量を算出する。
その後、コントローラ30は、フィルタ部302において、第2目標流量を所定範囲内の値に制限して第3目標流量を算出する。
その後、コントローラ30は、比例弁電流指令生成部303において、馬力制御用比例弁55に対して出力するための電流指令を第3目標流量に基づいて生成する。
以上の構成により、コントローラ30は、操作装置26の出力に基づいて、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる操作を検知すると、馬力制御用比例弁55に対して電流指令を出力し、馬力制御用レギュレータ52の圧力室52bに導入圧を導入させる。その結果、コントロール30は、メインポンプ14の吐出量を減少させることができる。
このようにして、第2仮想油圧旋回システムは、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる場合には、上部旋回体3を停止させたままブーム4を上昇させる場合に比べ、ブームシリンダ7のボトム側油室に流入する作動油の量を減少させ、旋回速度に応じてブーム4の動きを鈍化させることができる。
その結果、仮想油圧旋回システムは、1つのメインポンプを備えた電動旋回ショベル上であっても、油圧旋回ショベルの動きを正確に再現することができ、油圧旋回ショベルの操作に慣れた操作者が電動旋回ショベルを操作する際に抱く違和感を緩和し或いは解消させることができる。
また、第2仮想油圧旋回システムは、既存の馬力制御用比例弁55を利用して、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる場合に、メインポンプ14の吐出量を減少させ、ブーム4の動きを鈍化させることができる。このように、第2仮想油圧旋回システムは、専用の比例弁を別途設ける必要なく、油圧旋回ショベルの動きを正確に再現することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2仮想油圧旋回システムは、既存の馬力制御用比例弁55とは別に専用の比例弁を備えていてもよい。具体的には、第2仮想油圧旋回システムは、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる場合に、その専用の比例弁を通じてネガコン用レギュレータ51の圧力室51aに圧力を導入し、メインポンプ14の吐出量を減少させ、ブーム4の動きを鈍化させるようにしてもよい。
また、第2仮想油圧旋回システムは、上部旋回体3を旋回させながらブーム4を上昇させる場合には、メインポンプ14の吐出量を減少させることによって、ブームシリンダ7のボトム側油室に流入する作動油の量を減少させる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2仮想油圧旋回システムは、メインポンプ14の吐出量を減少させることなく、図示しない専用の流量制御弁の開度を低下させることによって、ブームシリンダ7のボトム側油室に流入する作動油の量を減少させてもよい。この場合、その専用の流量制御弁を通る作動油の量は、旋回用電動機の旋回速度が大きいほど少なくなるように調整される。
また、第2仮想油圧旋回システムは、第1仮想油圧旋回システムと同様、ネガコンが採用された場合ばかりでなく、ポジコンが採用された場合にも適用可能である。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、仮想油圧旋回システムは、ブーム上げ旋回操作が行われた場合にメインポンプの吐出量を減少させ、ブームの動きを鈍化させることによって、油圧旋回ショベルの動きを再現する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。仮想油圧旋回システムは、例えば、ブーム下げ旋回操作、アーム開き旋回操作、アーム閉じ旋回操作等の他の複合操作の際に、メインポンプの吐出量を減少させ、ブーム又はアームの動きを鈍化させることによって、油圧旋回ショベルの動きを再現してもよい。
また、上述の実施例では、エンジン11と電動発電機12とを油圧ポンプであるメインポンプ14に接続してメインポンプを駆動する、いわゆるパラレル型のハイブリッド式ショベルに本発明を適用した例について説明した。しかしながら、本発明は、エンジン11で電動発電機12を駆動し、電動発電機12が生成した電力を蓄電系120に蓄積してから蓄積した電力のみによりメインポンプ14を駆動する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド式ショベルにも適用することもできる。この場合、電動発電機12は、エンジン11によって駆動させることによる発電運転のみを行なう発電機としての機能を備えている。
また、エンジンが搭載されずに電動機のみで油圧ポンプを駆動する電気式ショベルにも本発明を適用することができる。この場合、蓄電系120には、コンバータを介して外部電源が接続され、蓄電系120の蓄電部(キャパシタ19)には、その外部電源から電力が供給されて充電される。